特許第6199701号(P6199701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199701
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/00 20060101AFI20170911BHJP
   A62C 37/50 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   A62C37/00
   A62C37/50
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-229868(P2013-229868)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-89421(P2015-89421A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】杉山 泰周
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】 菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−280642(JP,A)
【文献】 実開昭51−032997(JP,U)
【文献】 特開平06−253563(JP,A)
【文献】 特開平07−116285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 37/00 − 37/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作により定常位置と所定の動作位置との間で動作する複数の端末機器と、
所定の事象を判別した場合に前記端末機器を定常位置とは異なる所定の動作位置に制御する制御部と、
を備えた消火設備に於いて、
前記制御部、操作部による一括復帰操作の受付けを検出した場合、前記動作位置に制御されている前記複数の端末機器の全てを順次、前記定常位置復帰させる制御を行う一括復帰部を備え、
前記一括復帰部は、火災検出信号又は障害検出信号の入力を受付けた場合、前記複数の端末機器を一括して前記定常位置に復帰させる制御を中断又は禁止することを特徴とする消火設備。
【請求項2】
遠隔操作により定常位置と所定の動作位置との間で動作する複数の端末機器と、
所定の事象を判別した場合に前記端末機器を定常位置とは異なる所定の動作位置に制御する制御部と、
を備えた消火設備に於いて、
前記制御部は、前記複数の端末機器を起動制御して前記定常位置と前記動作位置との間の動作時間を計測すると共に計測した複数の動作時間の中から最大動作時間を検出し、前記最大動作時間に所定の余裕時間を加えたインターバル時間設定するインターバル時間設定部と、
操作部による一括復帰操作の受付けを検出した場合、前記動作位置に制御されている前記複数の端末機器の全てを、前記インターバル時間をおいて順次起動して前記定常位置へ復帰させる制御を行う一括復帰部と、
備えたことを特徴とする消火設備。
【請求項3】
請求項2記載の消火設備に於いて、前記制御部は、点検時に前記インターバル時間設定部により、前記複数の端末機器を起動制御して前記定常位置と前記動作位置との間の動作時間を計測することを特徴とする消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災が起きた場合に予作動弁を開放してスプリンクラーヘッドから放水させる予作動式スプリンクラー消火設備などの消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプリンクラーヘッドの破損などによる誤放水を防止する消火設備として例えば予作動式のスプリンクラー消火設備が知られている。
【0003】
予作動式スプリンクラー消火設備は、防護区画毎に設置した予作動弁装置、閉鎖型のスプリンクラーヘッド、火災感知器及び予作動弁制御盤で構成される。スプリンクラーヘッドを接続した予作動弁装置の2次側配管には加圧消火用水又は圧縮空気を充填しており、火災感知器により火災を検出した場合(シングルインターロック制御)、または火災検出とスプリンクラーヘッド作動による減圧検出の両方を判別した場合(ダブルインターロック制御)、予作動弁装置を開放してスプリンクラーヘッドから加圧消火用水を放水させる。
【0004】
一方、スプリンクラーヘッドが破損した場合は、火災感知器による火災検出が判別されていないことから予作動弁装置の開放は行われず、誤放水を確実に防止することができる。
【0005】
予作動弁装置は、開閉駆動機構を備えた本弁として機能する予作動弁と、予作動弁制御盤からの制御信号により遠隔的に開閉制御を受けて予作動弁を開閉させる作動用電動弁を備えている。
【0006】
また、スプリンクラーヘッドを接続した予作動弁装置の2次側配管の末端には、末端試験弁とオリフィスを設けており、点検の際に、末端試験弁を開放操作してオリフィスで決まるスプリンクラーヘッドが一台作動した場合に相当する水量を排水管に流し、これによりスプリンクラーヘッドが作動したと同じ状態を擬似的に作りだし、予作動弁制御盤で点検に伴う擬似的な火災検出と末端試験弁の開放操作による減圧検出に基づき、予作動弁装置の作動用電動弁を開放制御し、これにより予作動弁を試験的に開放し、流水検知信号が得られることを確認している。
【0007】
このような点検操作は防護区画毎に順番に行い、点検が終了した後に、予作動弁制御盤に設けた操作部を使用して、複数の予作動弁装置に設けている作動用電動弁を閉鎖位置に復帰制御して予作動弁を閉鎖し、定常監視状態に復帰させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−189372号公報
【特許文献2】特開平4−276271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の予作動弁制御盤による予作動弁装置の定常監視状態への復帰にあっては、操作表示部として機能する液晶表示パネルに操作画面を表示して遠隔的に復帰操作を行うが、端末機器の種類が複数あることと、接続する端末機器の台数が制御盤ごとに決められていないために、同時に復旧動作をした場合には大電流が流れる場合があり、個別に端末機器を復旧させる遠隔操作が必要である。この遠隔復帰操作は制御対象とする作動用電動弁を1台ずつ選択して復帰操作を行うようにしており、点検により開放位置にある多数の作動用電動弁を復帰させるまでに手間と時間がかかる問題がある。
【0010】
これは予作動式スプリンクラー設備を含む作動用電動弁などの端末機器を備えた各種の消火設備の制御盤に共通に使用可能な遠隔操作機能を設けたことに起因している。この操作画面を使用した遠隔操作機能は、監視領域に設置している端末機器を選択して遠隔操作を可能とするため、例えば、初期画面から複数の操作選択画面を経て端末機器を特定して遠隔操作を実行する操作画面に遷移する階層構造をとるようにしている。
【0011】
例えば、初期画面として遠隔操作を選択可能な監視画面を表示し、監視画面で遠隔操作を選択すると操作確認画面を経由して種別選択画面に遷移し、種別選択画面で遠隔操作する端末機器の種別を選択すると領域選択画面に遷移し、領域選択画面で端末機器の設置フロアー等を選択すると動作選択画面に遷移し、動作選択画面で選択したフロアーの端末機器の起動又は復帰を選択すると操作実行画面に遷移し、操作実行画面で遠隔操作を実行すると選択した端末機器を起動又は復帰する遠隔操作が行われる。また、遠隔操作による端末機器の動作が完了すると、最初の監視画面に戻り、次の端末機器の遠隔操作を可能とする。
【0012】
このため点検により開放している予作動弁装置の作動用電動弁を遠隔的に復帰させる場合にも、監視画面、操作確認画面、種別選択画面、領域選択画面、動作選択画面及び操作実行画面といった画面操作に伴う画面遷移を必要とし、また、操作実行画面により選択した作動用電動弁に対し復帰操作を指示して復帰動作が完了すると、最初の監視画面に戻り、これを作動用電動弁毎に繰り返す必要があるため、点検により開放位置にある多数の作動用電動弁を復帰させるまでに大変な手間と時間がかかる問題がある。
【0013】
本発明は、点検などにより定常位置から所定の動作位置に制御した作動用電動弁などの複数の端末機器を、簡単且つ容易に、定常位置に復帰可能とする消火設備提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(消火設備)
本発明は、
遠隔操作により定常位置と所定の動作位置との間で動作する複数の端末機器と、
所定の事象を判別した場合に端末機器を定常位置とは異なる所定の動作位置に制御する制御部と、
を備えた消火設備に於いて、
制御部、操作部による一括復帰操作の受付けを検出した場合、所定の動作位置に制御されている複数の端末機器の全てを順次、定常位置に復帰させる制御を行う一括復帰部を備え、
一括復帰部は、火災検出信号又は障害検出信号の入力を受付けた場合、複数の端末機器を一括して定常位置に復帰させる制御を中断又は禁止することを特徴とする。
【0017】
(インターバル時間の実測設定)
また、本発明は、
遠隔操作により定常位置と所定の動作位置との間で動作する複数の端末機器と、
所定の事象を判別した場合に端末機器を定常位置とは異なる所定の動作位置に制御する制御部と、
を備えた消火設備に於いて、
制御部は、複数の端末機器を起動制御して定常位置と動作位置との間の動作時間を計測すると共に計測した複数の動作時間の中から最大動作時間を検出し、最大動作時間に所定の余裕時間を加えたインターバル時間設定するインターバル時間設定部と、
操作部による一括復帰操作の受付けを検出した場合、動作位置に制御されている複数の端末機器の全てを、前記インターバル時間をおいて順次起動して定常位置へ復帰させる制御を行う一括復帰部と、
を備えたことを特徴とする
【0018】
制御部は、点検時にインターバル時間設定部により、複数の端末機器を起動制御して定常位置と動作位置との間の動作時間を計測する。
【発明の効果】
【0019】
(基本的な効果)
本発明の消火設備によれば、制御部に、操作部による一括復帰操作の受付けを検出した場合、所定の動作位置に制御している複数の端末機器を、例えば遠隔操作により全開位置と全閉位置との間で開閉動作する作動用電動弁の全てを順次、定常位置に復帰させる制御を行う一括復帰部を設けるようにしたため、作動用電動弁を1台ずつ選択して復帰操作を行うようにした場合に比べ、例えば点検により開放位置にある多数の作動用電動弁を復帰させる操作が簡単且つ容易となり、復帰に要する時間を短縮可能とする。
【0020】
(順次起動制御による効果)
また、一括復帰部は、複数の端末機器を、動作の重複を回避する所定のインターバル時間をおいて順次起動制御して定常位置へ復帰させるため、作動用電動弁を一台ずつ制御することを前提に駆動回路及び信号線を決めている場合に、一回の起動制御で流す駆動電流を制限して駆動回路や信号線に加わる負担を低減して障害発生を未然に防止可能とする。
【0021】
(火災又は障害による一括復帰の中断又は禁止による効果)
また、一括復帰部は、火災検出信号又は障害検出信号の入力を受付けた場合、複数の端末機器を一括して定常位置に復帰する制御を中断又は禁止するようにしたため、火災などの異常検出時に作動用電動弁などを定常位置に一括復帰させることで、放水遅れや放水不能等の事態になることを防止可能とする。
【0022】
(インターバル時間の実測設定)
また、制御部は、複数の作動用電動弁を起動制御して定常位置と動作位置との間の動作時間を計測すると共に計測した複数の動作時間の中から最大動作時間を検出し、最大動作時間に基づいて決定したインターバル時間を一括復帰部に設定するようにしたため、インターバル時間と実際の動作時間とのずれを必要最小限に抑制することを可能とし、複数の予作動弁装置に設けた作動用電動弁の復帰動作を重複することなく順次起動した場合の制御遅れを抑制することで、例えば点検の済んだ複数の予作動弁装置の復帰に要する時間を短縮可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】予作動式スプリンクラー消火設備の概略を示した説明図
図2図1の予作動弁制御盤における機能構成の実施形態を示したブロック図
図3】予作動弁を遠隔操作する操作画面の画面遷移を示した説明図
図4】監視画面を示した説明図
図5】操作確認画面を示した説明図
図6】機器選択画面を示した説明図
図7】領域選択画面を示した説明図
図8】動作選択画面を示した説明図
図9】遠隔操作実行画面を示した説明図
図10】一括操作実行画面を示した説明図
図11】定常状態で制御弁を開放位置に制御するスプリンクラー消火設備の概略を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0024】
[湿式予作動スプリンクラー消火設備の概要]
図1は、本発明の消火設備の一例として、予作動弁装置の2次側配管に加圧消火用水を充水した湿式予作動スプリンクラー消火設備の概要を示した説明図である。
【0025】
図1に示すように、建物の地下階などのポンプ室には消火ポンプ10を設置し、モータ12により駆動する。モータ12はポンプ制御盤14により起動・停止の運転制御を受ける。モータ12により駆動された消火ポンプ10は水源水槽15からの消火用水を吸入し、建物の高さ方向に配置した給水本管16に加圧した消火用水を供給する。
【0026】
消火ポンプ10に対しては起動に使用する圧力タンク18を設ける。圧力タンク18は給水本管16に接続し、配管内の加圧消火用水を導入して内部の空気を圧縮している。圧力タンク18には圧力スイッチ20を設け、圧力スイッチ20は給水本管16の管内圧力が規定圧力以下に低下する減圧を検出してポンプ制御盤14に減圧検出信号を出力し、これによってモータ12を駆動して消火ポンプ10を起動する。
【0027】
給水本管16からは建物の例えば階別の防護区画毎に分岐管22を引き出している。分岐管22の分岐部分には予作動弁装置24を設けている。予作動弁装置24の2次側の分岐管22には閉鎖型のスプリンクラーヘッド26を設けている。またスプリンクラーヘッド26を設置した防護区画には火災感知器36を設置し、火災感知器36からの感知器線を、自火報受信機35を介して予作動弁制御盤34に接続している。分岐管22の末端側には末端試験弁28を設け、その2次側を、オリフィス30を介して排水管32に接続している。予作動弁装置24のスプリンクラーヘッド26を接続した2次側配管には規定圧力となる加圧消火用水を充水している。
【0028】
予作動弁装置24は、予作動弁40、作動用電動弁42、作動用減圧検出器44、及び流水検知器46を備える。作動用減圧検出器44及び流水検知器46としては、減圧検出でオンする圧力スイッチを使用する。
【0029】
予作動弁40の開放は作動用電動弁42により行う。作動用電動弁42は通常の監視状態では閉鎖状態にある。作動用電動弁42を予作動弁制御盤34からの火災検出と減圧検出に基づく開放制御信号により開放制御すると、予作動弁40が開閉駆動機構開の動作により開放状態となり、1次側から2次側に加圧消火用水を供給して作動したスプリンクラーヘッド26から放水させる。予作動弁40の2次側に設けているスプリンクラーヘッド26の作動による減圧は、作動用減圧検出器44で検出する。また予作動弁40の開放による2次側への流水は流水検知器46で検出する。
【0030】
予作動弁40が開放すると、その1次側に接続している給水本管16の圧力も低下し、この減圧を圧力タンク18に設けている圧力スイッチ20で検出して、ポンプ制御盤14が消火ポンプ10を起動する。
【0031】
予作動スプリンクラー消火設備の点検にあっては、末端試験弁28を開放操作してオリフィス30で決まるスプリンクラーヘッド26の一台の作動に相当する量の消火用水を排水管32に流して、スプリンクラーヘッド26が作動したと同じ試験放水を行い、予作動弁制御盤34は、試験放水に伴う作動用減圧検出器44による減圧検出制御して予作動弁40を開閉駆動機構開により開放し、流水検知器46から流水検知信号が獲られることで、予作動弁装置24が正常に動作することを確認している。
【0032】
このような予作動弁装置24の点検は、防護区画毎に順次行われ、点検が終了した場合、予作動弁制御盤34の操作により開放位置にある全ての作動用電動弁42を閉鎖制御することで予作動弁40を閉鎖位置に復帰させる。
【0033】
この点検を終了した場合の予作動弁装置24の復帰操作につき、本実施形態の予作動弁制御盤34は、予作動弁装置24の個別復帰操作に加え、全ての予作動弁装置24を復帰させる一括復帰操作を可能とする。
【0034】
[予作動弁制御盤の構成]
(予作動弁制御盤の概要)
図2は予作動弁制御盤の機能構成の実施形態を示したブロック図である。図2に示すように、予作動弁制御盤34は、制御部48、液晶表示パネル50、表示部52、操作部54、警報部56を備え、図1に示した例えば各フロアーに設けた複数の防護区画毎に、予作動弁装置24を接続している。
【0035】
予作動弁装置24は、図1に示した火災感知器36、予作動弁40、作動用電動弁42及び作動用減圧検出器44を取り出して示している。なお、火災感知器36は予作動弁装置24の防護区画に設置しているが、説明の都合上、予作動弁装置24の中に示している。
【0036】
制御部48は、例えばプログラムの実行により実現される機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0037】
制御部48に対しては防護区画毎の予作動弁装置24側に設けた火災感知器36を感知器線により接続し、また作動用電動弁42及び作動用減圧検出器44を信号線により接続している。尚、予作動弁40はその開閉駆動機構に対し作動用電動弁42の開放制御で加圧消火用水の排水又は供給を受けて開放する。
【0038】
また、液晶表示パネル50はタッチパネルを備え、制御部48の指示により予作動弁制御盤34の制御動作に必要な各種の画面表示を行い、表示画面の操作ボタンを操作することで、制御動作に必要な各種の操作入力を可能とする。このため予作動弁装置の遠隔操作についても、液晶表示パネル50の画面表示を使用して行う。
【0039】
表示部52は、予作動弁制御盤34の制御動作に必要な各種の表示灯を設けている。操作部54は、予作動弁制御盤34の制御動作に必要な各種の操作スイッチを設けている。警報部56には火災警報、障害警報を音響出力するスピーカなどを設けている。
【0040】
(制御部の構成)
予作動弁制御盤34の制御部48は、例えばダブルインターロック制御として、防護区画毎に、火災感知器36による火災検出と作動用減圧検出器44による減圧検出の両方を判別した場合に、予作動弁装置24に設けた作動用電動弁42に開放制御信号を出力して遠隔的に開放制御し、これに伴い予作動弁40を開放動作してスプリンクラーヘッド26から加圧消火用水を散水させる制御を行う。
【0041】
また、制御部48は、別パターンとして、火災感知器36による火災検出ができない障害検出、例えば伝送障害、断線、短絡、連動停止、商用電源断などの障害検出と減圧検出器による減圧検出の両方を判別した場合に、作動用電動弁42に開放制御信号を出力して開放制御し、これにより予作動弁装置24を開放動作してスプリンクラーヘッド26から加圧消火用水を放水させる。
【0042】
(制御部の一括復帰機能)
制御部48は、端末機器として機能する予作動弁装置24に設けた作動用電動弁42を個別的に選択して遠隔制御する機能に加え、一括復帰部60を設けており、一括復帰部60は、操作部として機能する液晶表示パネルの一括復帰実行画面による一括復帰操作の受付けを検出した場合、点検などにより全開位置に制御している複数の作動用電動弁42を一括して定常位置となる全閉位置に復帰する制御を行う。
【0043】
一括復帰部60による一括復帰制御は、複数の作動用電動弁42を、動作の重複を回避する所定のインターバル時間をおいて順次起動制御して全閉位置へ復帰させる。このため予作動弁制御盤34は、作動用電動弁42を一台ずつ制御することを前提に駆動回路及び信号線を決めていることから、一回の起動制御で流す駆動電流を制限して駆動回路や信号線に加わる負担を低減して障害発生を未然に防止可能としている。
【0044】
ここで、制御部48は、一括復帰部60の順次起動に使用するインターバル時間として、複数の作動用電動弁42を起動制御して全閉位置と全開位置との間の動作時間を計測すると共に計測した複数の動作時間の中から最大動作時間を検出し、この最大動作時間に基づいて決定したインターバル時間を設定する。このため、複数の予作動弁装置24に設けた作動用電動弁42の復帰動作を重複することなく順次起動した場合の制御遅れを抑制することで、例えば点検の済んだ複数の予作動弁装置24の復帰に要する時間を短縮可能とする。
【0045】
また、一括復帰部60は、火災検出信号又は障害検出信号の入力を受付けた場合、複数の作動用電動弁42を一括して全閉位置に復帰する制御を中断又は禁止する。このため、火災などの異常検出した場合に作動用電動弁42を全閉位置への一括復帰の終了を中断又は禁止して、予作動弁装置の開放状態を維持することで、閉鎖位置に復帰した後に開放させることによって放水遅れや放水不能等の事態になることを防止可能とする。
【0046】
[作動用電動弁42の遠隔操作]
次に予作動弁制御盤34の液晶表示パネル50に対する画面表示を利用した作動用電動弁42を個別選択による遠隔操作と、一括復帰部60による一括復帰操作を説明する。
【0047】
図3は予作動弁を遠隔操作する操作画面の画面遷移を示した説明図である。また、図4図10図3に示した監視画面、操作確認画面、機器選択画面、領域選択画面、動作選択画面、個別操作実行画面及び一括復帰実行画面の詳細を示す。
【0048】
ここで、監視画面は請求項の第1画面に対応し、機器選択画面は請求項の第2画面に対応し、領域選択画面は請求項の第3画面に対応し、動作選択画面は請求項の第4画面に対応し、個別操作実行画面は請求項の第5画面に対応し及び一括復帰実行画面は請求項の第6画面に対応することから、括弧書きでそれを示している。
【0049】
(個別選択による遠隔操作)
図3に示すように、監視画面62は、液晶表示パネル50に初期表示されており、遠隔操作を選択可能とする第1画面として機能する。
【0050】
担当者が特定の防護区画に設けた作動用電動弁42を選択して遠隔操作する場合は、監視画面62において遠隔操作を選択すると操作確認画面64に遷移し、遠隔操作の選択を確認すると機器選択画面66に遷移する。
【0051】
機器選択画面66は第2画面として機能し、遠隔操作する端末機器の種別及び個別操作又は一括復帰操作を選択可能とする。そこで機器選択画面66について作動用電動弁42の個別操作を選択すると領域選択画面68に遷移する。
【0052】
領域選択画面68は第3画面として機能し、作動用電動弁42を設置したフロアフロアー等の監視領域を選択可能とする。そこで領域選択画面68により特定のフロアフロアーを選択すると動作選択画面70に遷移する。動作選択画面70は第4画面として機能し、作動用電動弁42の動作位置(全開位置)への起動又は定常位置(全閉位置)への復帰を選択可能とする。そこで動作選択画面70により例えば復帰を選択すると個別操作実行画面72へ遷移する。
【0053】
個別操作実行画面72は第5画面として機能し、領域選択画面68で選択したフロアーに設置している特定の作動用電動弁42を選択して、動作選択画面70で選択した例えば復帰の遠隔操作の実行を可能とし、復帰の遠隔操作を実行すると、選択した作動用電動弁42の復帰制御が行われ、復帰完了で最初の監視画面62に遷移する。
【0054】
(一括復帰の遠隔操作)
一方、複数の作動用電動弁42を遠隔操作により一括復帰する場合には、個別遠隔操作の場合と同様に、監視画面62から操作確認画面64を経て機器選択画面66に遷移し、機器選択画面66で一括復帰操作を選択する。機器選択画面66で一括復帰操作を選択すると、一括復帰部60の機能により、一括復帰実行画面74に遷移する。
【0055】
一括復帰実行画面74は第6画面として機能し、全開位置に制御している全ての作動用電動弁42における一括復帰操作の実行を可能とする。そこで一括復帰実行画面74において、一括復帰操作の実行を行うと、点検などにより全開位置に制御している全ての作動用電動弁42に対し、動作の重複を回避する所定のインターバル時間をおいて順次閉鎖方向に動作する起動制御を行って全閉位置へ復帰させる。この一括復帰操作の実行により全ての作動用電動弁42が全閉位置に復帰すると、最初の監視画面62に遷移する。
【0056】
(監視画面)
図4に示すように、監視画面62は、タイトル「防災設備監視中」として通常監視状態で表示している初期画面であり、情報閲覧ボタン75と遠隔操作選択ボタン76を設けている。点検終了による複数の作動用電動弁42を遠隔操作により個別復帰又は一括復帰する場合は遠隔操作選択ボタン76にタッチ操作すると、図5の操作確認画面に遷移する。
【0057】
(操作確認画面)
図5に示すように、操作確認画面64は、端末機器の遠隔制御を確認する画面であり、操作確認ボタン78を設け、端末機器の遠隔操作を誤ると消火設備に支障を来たす可能性があることから、操作確認を行うようにしている。操作確認画面64の操作確認ボタン78をタッチ操作すると図6の機器選択画面66に遷移する。なお、操作確認画面64は必ずしも設ける必要はなく、省略しても良い。
【0058】
(機器選択画面)
図6に示すように、機器選択画面66には、機器選択ボタンとして例えば、ポンプ選択ボタン81と電動弁選択ボタン80を設けており、それ以外の端末機器は、一覧表示ボタン83の操作により端末機器をリスト表示したダイヤログを開いて選択可能とする。このような端末機器の選択機能に加え、本実施形態にあっては、全開位置に制御している作動用電動弁42を一括復帰させる遠隔操作を選択可能とする一括復帰ボタン82を新たに設けている。
【0059】
機器選択画面66で端末機器として例えば電動弁選択ボタン80をタッチ操作すると図7の領域選択画面68に遷移する。また、機器選択画面66で一括復帰ボタン82をタッチ操作すると図10の一括復帰実行画面74に遷移する。
【0060】
(領域選択画面)
図7に示すように、領域選択画面68は例えば各階のフロアーを一つの監視領域として選択可能としており、1階と2階のフロアー選択ボタン84−1,84−2を設けており、それ以外の階については、前ボタン85と次ボタン86のタッチ操作により2階分ずつ切り替え表示する。領域選択画面68で例えば1階のフロアー選択ボタン84−1をタッチ操作すると、図8の動作選択画面70に遷移する。
【0061】
(動作選択画面)
図8に示すように、動作選択画面70は、端末機器として選択した予作動弁装置に設けている作動用電動弁42を全閉位置から全開位置に開放制御するための起動選択ボタン88と、作動用電動弁42を全開位置(動作位置)から全閉位置(定常位置)に復帰制御するための復帰選択ボタン90を設けている。動作選択画面70で例えば復帰選択ボタン90をタッチ操作すると、図9の個別操作実行画面72に遷移する。
【0062】
(個別操作実行画面)
図9に示すように、個別操作実行画面72には、制御端末表示部91を設け、上ボタン92又は下ボタン94のタッチ操作に応じて現在選択している1階AAフロアーに設置している復帰制御を行う作動用電動弁42の番号、例えば「010161」を表示して制御対象として選択可能としている。
【0063】
また、個別操作実行画面72には遠方復帰実行ボタン96を設けており、遠方復帰実行ボタン96をタッチ操作すると、制御端末表示部91に表示している選択した作動用電動弁42に閉鎖制御信号が出力され、定常位置となる全閉位置への復帰制御が行われる。この作動用電動弁42の復帰制御が完了すると図4に示した監視画面62に遷移する。
【0064】
(一括復帰実行画面)
図10に示すように、一括復帰実行画面74には、一括復帰制御を行う場合の注意書き97に続いて、一括復帰実行ボタン98と一括復帰停止ボタン100を設けている。一括復帰実行ボタン98をタッチ操作すると、点検終了などにより全開位置にある全ての作動用電動弁42に対し、動作の重複を回避する所定のインターバル時間をおいて、閉鎖制御信号が順次出力され、作動用電動弁42の個別的な遠隔操作を必要とすることなく、全ての作動用電動弁42が全閉位置となる定常位置に復帰される。全ての作動用電動弁42の復帰制御が完了すると図4に示した監視画面62に遷移する。
【0065】
また、作動用電動弁42の一括復帰制御を行っている間に、一括復帰制御を停止を必要とする事態、例えば火災が発生した場合には、一括復帰停止ボタン100をタッチ操作することで、一括復帰制御を途中で停止することができる。
【0066】
[インターバル時間の設定機能]
制御部48は、例えば点検モードを設定した状態で、全ての予作動弁装置24に設けた全閉位置にある作動用電動弁42の各々に順次起動信号を出力して全開位置を検出するまでの動作時間Tdを計測し、その中の最大動作時間(Td)maxを求め、最大動作時間(Td)maxに所定の余裕時間ΔTを加えたインターバル時間Ti、即ち
Ti=(Td)max+ΔT
を一括復帰部60に設定する。
【0067】
このようなインターバル時間Tiの設定により、一括復帰部60は、点検終了などにより全ての作動用電動弁42を一括復帰制御する場合、全閉位置にある複数の作動用電動弁42を、所定のインターバル時間Tiをおいて順次起動制御して動作するが、この場合のインターバル時間Tiを、全ての作動用電動弁42を全開位置と全閉位置との間で動作して計測した最大動作時間(Td)maxに基づいて設定しているため、インターバル時間Tiと実際の動作時間とのずれを必要最小限に抑制することを可能とし、複数の作動用電動弁42の一括復帰に要する時間を短縮可能とする。
【0068】
[開放位置を定常位置とする消火設備]
図11は定常状態で作動用電動弁42を開放位置に制御する湿式スプリンクラー消火設備の概略を示した説明図である。
【0069】
図11に示すように、消火ポンプ10、モータ12、ポンプ制御盤14、水源水槽15、給水本管16の構成は図1の実施形態と同様になる。
【0070】
給水本管16からは建物の階ごとに、作動用電動弁42として機能する制御弁102及び流水検知装置104を介して分岐管22を引き出しており、流水検知装置104の2次側の分岐管には閉鎖型のスプリンクラーヘッド26を接続している。
【0071】
制御弁102はモータ駆動により開閉制御できる電動弁を使用する。制御弁102は定常監視状態で開放位置に保持し、開放位置が定常位置となる。このため給水本管16の管内圧力は、分岐管22に設けた開放状態にある制御弁102及び流水検知装置104を通って2次側のスプリンクラーヘッド26まで供給されている。なお、制御弁102としては、図1に示した作動用電動弁42を設けた予作動弁40を使用しても良い。
【0072】
流水検知装置104は流水検知スイッチ106を備えている。流水検知スイッチ106は、2次側の分岐管22に接続しているスプリンクラーヘッド26が火災による熱を受けて作動したときの消火用水の放出によって発生する水流による弁開放又は圧力低下等を検出してオンし、流水検知信号を、スプリンクラー制御盤108に出力する。
【0073】
分岐管22の端末は末端試験弁28とオリフィス30を介して排水管32に接続している。消火設備を点検する場合に、末端試験弁28を開いて流す水流により擬似的に流水検知装置104を作動してポンプ運転の試験動作や制御弁102の試験動作を行わせる。
【0074】
スプリンクラー制御盤108は制御弁102に対し制御信号を出力する。スプリンクラーヘッド26の防護区画には火災感知器36を設置し、火災検出信号を自火報受信機35に出力し、自火報受信機35で火災が判断されると、スプリンクラー制御盤108に対し火災信号を移報信号として出力する。
【0075】
スプリンクラー制御盤108は、設備の運用を開始する初期状態で、分岐管22に設けている制御弁102を開放状態となる定常位置に開制御している。火災による熱気流を受けてスプリンクラーヘッド26が作動すると、作動したスプリンクラーヘッド26からの放水により2次側の圧力が低下し、このときの流水により流水検知装置104の弁体が開いて流水検知スイッチ106がオンし、スプリンクラー制御盤108で流水検知を報知する。
【0076】
スプリンクラーヘッド26からの放水により2次側の圧力が低下に伴い給水本管16の圧力も低下し、この減圧を圧力タンク18に設けている圧力スイッチ20で検出して、ポンプ制御盤14がポンプ10を始動する。
【0077】
火災の鎮火を確認した場合は、スプリンクラー制御盤108による放水停止操作により制御弁102を閉制御し、作動したスプリンクラーヘッド26からの放水を停止し、併せてポンプ制御盤14に指示してポンプ運転を停止する。
【0078】
一方、スプリンクラーヘッド26が火災以外の原因、例えば防護区画での改修工事などにより物が当って破損して作動した場合、スプリンクラー制御盤108は、流水検知信号が得られても火災検出信号が得られないことから、流水検知信号を受信してから所定時間を経過しても火災検出信号を受信しない場合は、制御弁102に閉鎖制御信号を出力して閉鎖し、破損による作動しているスプリンクラーヘッド26からの放水を停止して水損を抑制する。
【0079】
また、消火設備の点検にあっては、末端試験弁28を開いて流す水流により擬似的に流水検知装置104を作動し、スプリンクラー制御盤108で流水検知スイッチ106から流水検知信号を受信することで流水検知装置104の動作を確認する。また、スプリンクラー制御盤108は、流水検知信号を受信してから所定時間を経過しても、点検の場合は火災検出信号を受信しないことから、制御弁102に閉鎖制御信号を出力して閉鎖して試験放水を停止し、これにより流水検知信号が受信できなくなることで、制御弁102が正常動作したことを確認する。
【0080】
また、消火設備の点検が終了した場合には、点検により全閉位置となっている全ての制御弁102を全開位置に復帰させる一括復帰操作をスプリンクラー制御盤108で行って通常監視状態に復帰させる。
【0081】
スプリンクラー制御盤108には、図2に示した予作動弁制御盤34の場合と同様に、一括復帰部60の機能を備えた制御部48を設けている。このためスプリンクラー制御盤108は、図3乃至図10に示した同じ操作画面を使用して制御弁102の個別的な遠隔制御に加え、点検により全閉位置(動作位置)に制御した全ての制御弁102の一括復帰操作による全閉位置(定常位置)へ復帰させるため、所定のインターバル時間をおいて順次起動制御を行う。
【0082】
[本発明の変形例]
(操作画面)
上記の実施形態に示した端末機器の個別遠隔装置又は一括復帰操作に使用する操作画面は一例であり、必要に応じて適宜の選択項目を段階的に設定する画面階層構成としても良い。
(端末機器)
上記の実施形態は、遠隔操作する端末機器として、予作動弁装置に設けた作動用電動や流水検知装置と共に設けた制御弁を例にとっているが、これ以外の端末機器の遠隔操作についても、同様に適用できる
【0083】
(シングルインターロック)
上記の実施形態は、火災感知器による火災検出と減圧検出器による減圧検出の両方を判別した場合に予作動弁装置を開放制御してスプリンクラーヘッドから加圧消火用水を散水させるダブルインターロック制御の予作動式スプリンクラー消火設備を例にとっているが、火災感知器による火災検出を判別した場合に予作動弁装置を開放制御してスプリンクラーヘッドから加圧消火用水を散水させるシングルインターロック制御の予作動式スプリンクラー消火設備についても、同様に適用できる。
【0084】
このシングルインターロック制御も、火災感知器による火災検出で予作動弁装置を開放制御するパターン以外に、火災感知器による火災検出ができない障害検出、例えば伝送障害、断線、短絡、連動停止、商用電源断などの障害検出を判別した場合に、予作動弁装置を開放制御してスプリンクラーヘッドから加圧消火用水を放水させる。
【0085】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0086】
10:消火ポンプ
14:ポンプ制御
24:予作動弁装置
34:予作動弁制御盤
36:火災感知器
40:予作動弁
42:作動用電動弁
44:作動用減圧検出器
46:流水検知器
48:制御部
50:液晶表示パネル
60:一括復帰部
62:監視画面
64:操作確認画面
66:機器選択画面
68:領域選択画面
70:動作選択画面
72:個別操作実行画面
74:一括復帰実行画面
82:一括復帰ボタン
98:一括復帰実行ボタン
102:制御弁
104:流水検知装置
106:流水検知スイッチ
108:スプリンクラー制御盤

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11