(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸方向に対向配置され外周部で互いに繋がる第1及び第2コアベース部と、該第1及び第2コアベース部の内周部にそれぞれ形成され周方向に互いに交互に配置された第1及び第2爪状磁極とを有するステータコアと、
前記第1及び第2コアベース部の軸方向の間に配置され、前記第1及び第2爪状磁極を互いに異なる磁極として機能させるコイル部と
を備え、前記ステータコアが軸方向に複数段配列された状態で筒状のハウジングに収容されているステータであって、
各段の前記ステータコアにはそれぞれ、該ステータコアの外周部に、前記ハウジングの内周面に設けられたハウジング側位置決め部に対して周方向に係合可能なステータ側位置決め部が形成されており、
前記複数段の前記ステータコアにおける前記ステータ側位置決め部を軸方向から見た場合、各前記ステータコア間の前記ステータ側位置決め部の位置関係が周方向に等間隔となっていることを特徴とするステータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなステータにおいて、周方向の位置決め構造を如何に簡素化するかが課題であった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、周方向の位置決めを簡素な構成で行うことが可能なステータ及びモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するステータは、軸方向に対向配置され外周部で互いに繋がる第1及び第2コアベース部と、該第1及び第2コアベース部の内周部にそれぞれ形成され周方向に互いに交互に配置された第1及び第2爪状磁極とを有するステータコアと、前記第1及び第2コアベース部の軸方向の間に配置され、前記第1及び第2爪状磁極を互いに異なる磁極として機能させるコイル部とを備え、前記ステータコアが
軸方向に複数段配列された状態で筒状のハウジングに収容され
ているステータであって、
各段の前記ステータコア
にはそれぞれ、該ステータコアの外周部
に、前記ハウジングの内周面に設けられたハウジング側位置決め部に対して周方向に係合可能なステータ側位置決め部が形成されて
おり、前記複数段の前記ステータコアにおける前記ステータ側位置決め部を軸方向から見た場合、各前記ステータコア間の前記ステータ側位置決め部の位置関係が周方向に等間隔となっている。
【0006】
この構成によれば、ステータコアの外周部には、ハウジングに対する周方向の位置決めのための位置決め部が形成されるため、簡素な構成でステータの周方向の位置決めを行うことができる。
【0007】
上記ステータにおいて、前記ステータ側位置決め部は、前記ステータコアの外周部を径方向外側に折曲成形してなる位置決め凸部であり、前記位置決め凸部は、前記ハウジングの内周面に凹設された前記ハウジング側位置決め部に嵌め込まれることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、ステータ側位置決め部(位置決め凸部)を折曲成形するだけの簡素な構成でステータの周方向の位置決めを行うことができる。
上記ステータにおいて、前記位置決め凸部は、前記ステータコアの外周部を切り欠き形成することで形成され、その位置決め凸部の成形により形成された切り欠き部から前記コイル部の端部が導出されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、コイル部の端部が位置決め凸部の成形跡である切り欠き部から導出されるため、ステータコアの形状の簡素化に寄与できる。
上記ステータにおいて、前記ステータ側位置決め部は、前記ステータコアの外周部の一部を切り欠き形成した切り欠き凹部であり、前記切り欠き凹部には、前記ハウジングの内周面に凸設された前記ハウジング側位置決め部が嵌め込まれることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ステータ側位置決め部(切り欠き凹部)を切り欠き形成するだけの簡素な構成でステータの周方向の位置決めを行うことができる。
上記ステータにおいて、前記ステータ側位置決め部は、前記ハウジング側位置決め部に対して軸方向にも係合されることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、簡素な構成でステータの軸方向の位置決めを行うことができる。
上記ステータにおいて、前記ステータ側位置決め部は、前記第1及び第2爪状磁極の少なくとも一方の周方向中心に対応する位置に形成されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、ステータコアにおける磁束の主経路から外れた位置にステータ側位置決め部が形成されるため、ステータ側位置決め部が磁束の流れの妨げになることを抑制することができる。
【0013】
上記ステータにおいて、前記ステータコアは、周方向に複数並ぶ
前記第1爪状磁極
が形成された前記第1コアベース部を有する第1コア部材と、周方向に複数並ぶ
前記第2爪状磁極
が形成された前記第2コアベース部を有し該各第2爪状磁極がそれぞれ対応する前記各第1爪状磁極間に配置された第2コア部材とからな
り、前記第1及び第2コア部材にそれぞれ形成された切り欠き部の周方向位置を一致させて構成された巻線導出孔から前記コイル部の端部が引き出されている。
【0014】
この構成によれば、第1及び第2コア部材の切り欠き部の周方向位置を合わせて巻線導出孔を構成することで、ステータコアにおける第1及び第2コア部材同士の周方向の位置決めを簡素な構成で行うことが可能となる。
【0015】
上記ステータにおいて、前記巻線導出孔と該巻線導出孔に挿通された前記コイル部の引き出し線との間に介在部材を備えていることが好ましい。
この構成によれば、介在部材によってコイル部の引き出し線が巻線導出孔に直接的に接触することを防止することが可能となり、その結果、引き出し線の損傷を抑制することができる。
【0016】
上記ステータにおいて、前記巻線導出孔は、前記引き出し線の挿通方向に対して傾斜するテーパ部を有し、前記介在部材は、前記テーパ部との係合によって前記挿通方向と直交する方向に前記引き出し線を保持する巻線保持部を有していることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、介在部材の装着によって引き出し線を巻線導出孔に対して容易に固定することが可能となる。
上記ステータにおいて、前記介在部材は、前記ステータコアに対して係止された係止部を有していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、介在部材が巻線導出孔から脱落することを抑制することができる。
上記ステータにおいて、前記第1及び第2コア部材は、それらの外周部同士が軸方向に当接するように構成され、前記巻線導出孔は、前記第1及び第2コア部材のそれぞれの前記外周部に形成された前記切り欠き部からなるとともに、前記ステータコアの径方向に開口するように構成されていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、コイル部の端部(引き出し線)をステータコアの径方向外側に引き出すことができる。
上記ステータにおいて、前記ステータ側位置決め部は、前記各段のステータコアにおいてそれぞれ、複数形成されており、前記各段のステータコアにおける複数の前記ステータ側位置決め部をひとまとまりとして見た場合、そのまとまりが前記各ステータコア間において周方向に等間隔に位置している。
上記課題を解決するモータは、上記のステータと、該ステータの内周側に配置されたロータとを備えるモータである。
【0020】
この構成によれば、ハウジングに対するステータの周方向の位置決めを簡素な構成で行うことができるモータを提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のステータ及びモータによれば、周方向の位置決めを簡素な構成で行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、モータの第1実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のブラシレスモータMは、回転軸11に固定されたロータ12の外側にヨークハウジングHに収容された環状のステータ13が配置されて構成されている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、ブラシレスモータMは、単一のモータ部を軸方向に3段積層していて、上からU相モータ部Mu、V相モータ部Mv、W相モータ部Mwの順に構成されている。即ち、ブラシレスモータMは、U相のステータ13a、V相のステータ13b、及びW相のステータ13cと、それらに径方向にそれぞれ対向する3つのロータ(
図1では、U相のロータ12aのみ図示)とから構成されている。
【0025】
図3に示すように、ステータ13におけるU相のステータ13aは、第1コア部材14及び第2コア部材15からなるステータコアSCと、コイル部16とを備える。
詳しくは、第1コア部材14は、軸方向の一方側(
図3中、上側)に設けられた略円環板状の第1コアベース部18と、第1コアベース部18の径方向外側端部から軸方向の他方側(
図3中下側)に延びる略円筒状の円筒壁19(外周部)とを有する。第1コアベース部18の内周端部(内周部)には、複数(本実施形態では12個)の第1爪状磁極21が周方向等間隔(30°間隔)に形成されている。各第1爪状磁極21は、第1コアベース部18から径方向内側に突出されるとともに軸方向に延出形成されている。
【0026】
図4及び
図5に示すように、円筒壁19には、径方向外側に突出する1つの第1位置決め凸部19aが形成されている。第1位置決め凸部19aは、円筒壁19の一部を切り欠いて径方向外側に略直角に折り曲げることで形成されている。これにより、第1位置決め凸部19aと対応する位置には、円筒壁19の径方向の内外を連通する切り欠き部19bが形成される。なお、第1位置決め凸部19a及び切り欠き部19bは矩形状に形成されている。
【0027】
また、第1位置決め凸部19aは、複数の第1爪状磁極21のうちの1つの第1爪状磁極21(
図4において第1爪状磁極21a)の周方向中心に対応する位置に形成されている。詳しくは、第1位置決め凸部19aは、軸方向視で第1爪状磁極21aの周方向中心線L1上に形成されている。
【0028】
図2〜
図4に示すように、第2コア部材15は、第1コア部材14と略同形状であって、同様に第2コアベース部22と、第2位置決め凸部23a及び切り欠き部23bを含む円筒壁23と、第2爪状磁極24とを有する。
【0029】
そして、第2コア部材15は、第2コアベース部22が第1コアベース部18に対して軸方向の他方側(
図3中、下側)に設けられて対向し、第2爪状磁極24が軸方向の一方側に延びつつ第1爪状磁極21と周方向に隣り合って配置されるように設けられている。
【0030】
また、
図4及び
図5に示すように、第2コア部材15の円筒壁23に形成された第2位置決め凸部23aは、前記第1位置決め凸部19aと同形状であって、前記第1爪状磁極21aと周方向に隣り合う第2爪状磁極24aの周方向中心に対応する位置に形成されている。詳しくは、第2位置決め凸部23aは、軸方向視で第2爪状磁極24aの周方向中心線L2上に形成されている。また、第2位置決め凸部23aと対応する位置には、円筒壁23の径方向の内外を連通する切り欠き部23bが形成される。
【0031】
第1及び第2コア部材14,15の各円筒壁19,23は、軸方向に互いに突き合わされており、第1及び第2コアベース部18,22の外周縁部を軸方向に繋ぐように構成されている。これにより、各円筒壁19,23は、ステータコアSCの外周側壁部を構成する。また、この各円筒壁19,23にて構成されるステータコアSCの外周側壁部は、各切り欠き部19b,23bで径方向に開口している。
【0032】
図3〜
図5に示すように、コイル部16は、導体が複数周回巻かれてなるものであって、第1コアベース部18と第2コアベース部22との軸方向の間に配置され、通電に基づいて、周方向に交互に配置された第1爪状磁極21と第2爪状磁極24とを互いに異なる磁極として機能させる。
【0033】
このコイル部16の一端部(第1端末線16a)は、第1コア部材14側の切り欠き部19bからステータコアSCの外周側に引き出され、コイル部16の他端部(第2端末線16b)は、第2コア部材15側の切り欠き部23bからステータコアSCの外周側に引き出されている。
【0034】
図2及び
図3に示すように、V相のステータ13bは、U相のステータ13aと略同様の構成であって、U相のステータ13aに対して、第1及び第2爪状磁極21,24の角度位置が時計回り方向に電気角で60°(機械角で5°)ずれるように積層されている。つまり、V相のステータ13bは、U相のステータ13aに対して時計回り方向に電気角で60°位相をずらして積層されている。
【0035】
また、W相のステータ13cは、U相のステータ13aと略同様の構成であって、V相のステータ13bに対して、第1及び第2爪状磁極21,24の角度位置が時計回り方向に電気角で60°(機械角で5°)ずれるように積層されている。つまり、W相のステータ13cは、V相のステータ13bに対して時計回り方向に電気角で60°位相をずらして積層されている。
【0036】
また、各相のステータ13a,13b,13cは、各相のステータコアSCにおける第1及び第2位置決め凸部19a,23aの組をそれぞれひとまとまりとして見たとき、そのまとまりが周方向に略等間隔(略120°間隔)に位置するように積層されている。
【0037】
図1に示すように、各相のステータ13a,13b,13cは、軸方向に積層された状態で円筒状のヨークハウジングHの内部に収容される。
ここで、
図2に示すように、ヨークハウジングHの内周面31には、径方向に窪む6個の位置決め凹部32(ハウジング側位置決め部)が形成されている。各位置決め凹部32は、各相のステータコアSCに形成される第1及び第2位置決め凸部19a,23aに対応した位置に形成されている。つまり、位置決め凹部32は、ヨークハウジングHの周方向に略等間隔(略120°間隔)の3カ所にそれぞれ2個ずつ形成されている。
【0038】
また、各位置決め凹部32は、ヨークハウジングHの軸方向端面から軸方向中間部まで、軸方向に直線状に延びている。つまり、位置決め凹部32の軸方向一端部は、第1及び第2位置決め凸部19a,23aを軸方向から挿入可能な開口端部となっており、位置決め凹部32の軸方向他端部は、第1及び第2位置決め凸部19a,23aと軸方向に当接可能な閉塞端部32aとなっている。なお、各位置決め凹部32の周方向幅は、第1及び第2位置決め凸部19a,23aの周方向幅と略等しく設定されている。
【0039】
そして、第1及び第2位置決め凸部19a,23aは、位置決め凹部32に対して軸方向から圧入固定されるとともに、その位置決め凹部32に対して周方向両側に係止されている(
図4参照)。これにより、ヨークハウジングHに対する各相のステータ13の周方向の位置決めがなされている。
【0040】
また、第1及び第2位置決め凸部19a,23aは、各位置決め凹部32の閉塞端部32aと軸方向に当接されている。これにより、ヨークハウジングHに対する各相のステータ13の軸方向の位置決めがなされている。なお、各位置決め凹部32の閉塞端部32aは、各位置決め凸部19a,23aの軸方向位置の相違に対応して、それぞれ軸方向位置が異なるように形成されている。
【0041】
図1に示すように、ロータ12におけるU相のロータ12aは、爪状磁極41が形成された一対のロータコア42と、それらロータコア42の軸方向の間に配置され軸方向に磁化されることで爪状磁極41を周方向に交互に異なる磁極として機能させる界磁磁石43とを備えた所謂ランデル型構造のものである。また、図示しないV相のロータ及びW相のロータは、U相のロータ12aと同様の構成であるため、その説明は省略する。
【0042】
そして、V相のロータは、U相のロータ12aに対して反時計回り方向に電気角で60°位相をずらして積層され、W相のロータは、V相のロータに対して反時計回り方向に電気角で60°位相をずらして(つまり、U相のロータ12aに対して反時計回り方向に電気角で120°位相をずらして)積層されている。つまり、ロータ12の各相における位相のずれが、ステータ13の各相における位相のずれ(時計回り方向のずれ)に対して逆方向となるように構成されている。
【0043】
次に、本実施形態の作用について説明する。
駆動回路(図示略)によってU相、V相及びW相の各コイル部16に3相の駆動電流が供給されると、ステータ13にて回転磁界が発生され、ロータ12が回転駆動される。この際、ホールIC(図示略)によって、ロータ12の回転(回転速度と方向)が検出され、その検出信号に基づいて前記駆動回路から各コイル部16に最適なタイミングで3相の駆動電流が供給される。これにより、良好に回転磁界が発生され、ロータ12が良好に連続して回転駆動される。
【0044】
ここで、本実施形態では、ステータ13の第1及び第2位置決め凸部19a,23aが、ヨークハウジングHの位置決め凹部32に対し周方向及び軸方向に係止されている。これにより、ステータ13がヨークハウジングHに対して精度良く組み付けられている。
【0045】
また、
図5に示すように、ロータ12の回転時において磁束φは、例えば第1爪状磁極21を外周側に流れて円筒壁19で周方向両側に分岐し、その分岐した磁束φはそれぞれ第2コア部材15側の円筒壁23を通って第2爪状磁極24へと内周側に流れる。ここで、第1及び第2位置決め凸部19a,23aは、第1及び第2爪状磁極21,24の周方向中心線L1,L2上に形成されている。つまり、各位置決め凸部19a,23aは、磁束φの流れを妨げ難い位置に形成されており、その結果、モータ出力の低下が抑えられるようになっている。
【0046】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)ステータコアSCの円筒壁19,23にはそれぞれ、ヨークハウジングHの内周面31に設けられた位置決め凹部32に対して周方向に係合可能な第1及び第2位置決め凸部19a,23aが形成される。このため、簡素な構成でステータ13の周方向の位置決めを行うことができる。
【0047】
(2)第1及び第2位置決め凸部19a,23aはそれぞれ、円筒壁19,23の一部を径方向外側に折曲成形することで形成される。このため、各位置決め凸部19a,23aを折曲成形するだけの簡素な構成でステータ13の周方向の位置決めを行うことが可能となる。
【0048】
(3)第1及び第2位置決め凸部19a,23aはそれぞれ、円筒壁19,23の一部を切り欠き形成することで形成され、その位置決め凸部19a,23aの成形により形成された切り欠き部19b,23bからコイル部16の各端末線16a,16bが導出される。つまり、コイル部16の各端末線16a,16bが位置決め凸部19a,23aの成形跡である切り欠き部19b,23bから導出されるため、ステータコアSCの形状の簡素化に寄与できる。
【0049】
(4)第1及び第2位置決め凸部19a,23aは、ヨークハウジングHの位置決め凹部32(閉塞端部32a)に対して軸方向にも係合されるため、簡素な構成でステータ13の軸方向の位置決めを行うことができる。
【0050】
(5)第1及び第2位置決め凸部19a,23aは、第1及び第2爪状磁極21,24の周方向中心に対応する位置にそれぞれ形成される。この構成によれば、ステータコアSCにおける磁束の主経路から外れた位置に第1及び第2位置決め凸部19a,23aが形成されるため、第1及び第2位置決め凸部19a,23aが磁束の流れの妨げになることを抑制することができる。
【0051】
(6)第1及び第2位置決め凸部19a,23aの組(及び一対の位置決め凹部32の組)は、その組のまとまりが周方向に略等間隔(略120°間隔)に位置するように構成される。このため、ステータ13からヨークハウジングHに掛かる応力を略均等とすることが可能となり、ステータ13をヨークハウジングHにバランスよく固定することが可能となる。
【0052】
(7)ロータ12は、複数の爪状磁極41がそれぞれ形成された一対のロータコア42と、それらロータコア42の軸方向の間に配置され軸方向に磁化されることで爪状磁極41を周方向に交互に異なる磁極として機能させる界磁磁石43とを備え、ステータ13及びロータ12はそれぞれ、軸方向に多段に配列される。この構成によれば、ステータ13及びロータ12を軸方向に多段に配列したモータにおいて、ヨークハウジングHに対するステータ13の周方向の位置決めを簡素な構成で行うことができる。
【0053】
(8)ステータ13は、軸方向に3段に配列されたU相、V相及びW相のステータ13a〜13cからなり、ロータ12も同様に、軸方向に3段に配列されたU相、V相及びW相のロータからなる。V相のロータ(第2段のロータ)は、U相のロータ12a(第1段のロータ)に対して反時計回り方向にずれて配置されるとともに、W相のロータ(第3段のロータ)は、V相のロータに対して反時計回り方向にずれて配置される。そして、V相のステータ13b(第2段のステータ)は、U相のステータ13a(第1段のステータ)に対して時計回り方向にずれて配置されるとともに、W相のステータ13c(第3段のステータ)は、V相のステータ13bに対して時計回り方向にずれて配置される。つまり、ロータ12の各相における位相のずれが、ステータ13の各相における位相のずれに対して逆方向となるように構成されるため、ロータ12の好適な回転を実現できる。
【0054】
(第2実施形態)
以下、モータの第2実施形態について
図7に従って説明する。なお、本実施形態では、ステータコアSCの外周部(円筒壁19,23)に形成された、コイル部16の端部(引き出し線)を導出するための巻線導出孔の構成が前記第1実施形態と異なる。従って、以下には、前記第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、
図7では、U相のステータ13aを例にとって説明する。
【0055】
図7に示すように、第1及び第2コア部材14,15の円筒壁19,23は、それらの軸方向に互いに当接する端部を一部切り欠いて形成した切り欠き部61a,61bを備えている。これら切り欠き部61a,61bは、周方向幅が互いに等しく形成されるとともに、周方向において同位置に形成されている。そして、これら切り欠き部61a,61bは、円筒壁19,23より構成されるステータコアSCの外周壁を径方向に貫通する1つの巻線導出孔61を構成している。コイル部16の端部(引き出し線16c)は、巻線導出孔61に径方向に挿通されて、ステータコアSCの外周側に引き出されている。なお、切り欠き部61a,61bの形成位置は、各コアベース部18,22における第1爪状磁極21間及び第2爪状磁極24間の部位(径方向幅が狭い部位)に対して周方向にずれた位置に設定することが好ましい。
【0056】
本実施形態のステータ13aの組み付けの際には、まず、第2コア部材15の上にコイル部16を載置し、コイル部16の引き出し線16cを第2コア部材15の切り欠き部61bに入れる。このとき、引き出し線16cは、その一部が円筒壁23の軸方向端部(切り欠き部61b)から軸方向に突出している。
【0057】
次に、第1コア部材14を第2コア部材15とでコイル部16を挟むように組み付ける。このとき、第2コア部材15側の切り欠き部61bから突出する引き出し線16cが第1コア部材14側の切り欠き部61aに嵌り込むように、第1コア部材14の周方向位置を合わせつつ、第1コア部材14の円筒壁19を第2コア部材15の円筒壁23に対して軸方向に当接させる。これにより、切り欠き部61a,61bの周方向位置が一致し、それら切り欠き部61a,61bからなる巻線導出孔61から引き出し線16cが引き出される構成となる。
【0058】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(9)第1及び第2コア部材14,15にそれぞれ形成された切り欠き部61a,61bの周方向位置を一致させて構成された巻線導出孔61からコイル部16の引き出し線16cが引き出される。この構成によれば、切り欠き部61a,61bの周方向位置を合わせて巻線導出孔61を構成することで、ステータコアSCにおける第1及び第2コア部材14,15同士の周方向の位置決めを簡素な構成で行うことが可能となる。なお、本実施形態では、第1及び第2コア部材14,15同士の周方向の位置決め精度を向上させるために、切り欠き部61a,61bの周方向幅を引き出し線16c(コイル線)の直径と略等しく設定することが好ましい。
【0059】
(10)第1及び第2コア部材14,15は、それらの円筒壁19,23(外周部)同士が軸方向に当接するように構成される。そして、円筒壁19,23にそれぞれ形成された切り欠き部61a,61bからなる巻線導出孔61は、ステータコアSCの径方向に開口するように構成される。この構成によれば、コイル部16の引き出し線16cをステータコアSCの径方向外側に引き出すことができる。
【0060】
なお、上記第2実施形態は、以下のように変更してもよい。
図8及び
図9に示すように、巻線導出孔61と引き出し線16cとの間に巻線固定部材62(介在部材)を設けてもよい。本例では、巻線固定部材62は樹脂よりなり、
図9及び
図10に示すように、略円筒状に形成されている。
【0061】
巻線固定部材62は、該巻線固定部材62の軸線方向の一方側に向かうにつれて縮径するテーパ状をなす巻線保持部63を有している。巻線保持部63には、巻線固定部材62の軸線方向に沿った直線状をなす4つのスリット63aが、巻線固定部材62の周方向において等間隔(90度間隔)に形成されている。これにより、巻線保持部63がその径方向に撓むように構成されている。
【0062】
また、巻線保持部63の先端部には、巻線固定部材62の径方向外側に突出する係止爪63b(係止部)が形成されている。係止爪63bは、円筒壁19,23の内周面に対して径方向に係止されている。
【0063】
また、本例では、各切り欠き部61a,61bは半円状に窪むように形成されており、各切り欠き部61a,61bよりなる巻線導出孔61は、ステータコアSCの径方向から見て円形をなしている。この巻線導出孔61の内周面には、ステータコアSCの径方向内側ほど縮径するテーパ部64が形成されている。テーパ部64は、ステータコアSCの径方向(引き出し線16cの挿通方向)に対して傾斜している。また、テーパ部64は、巻線保持部63の外周面と当接している。
【0064】
本例のステータ13aの組み付けの際には、まず、コイル部16を挟む態様で第1及び第2コア部材14,15同士を組み付ける。このとき、切り欠き部61a,61bの周方向位置を一致させて巻線導出孔61を形成するとともに、その巻線導出孔61にコイル部16の引き出し線16cを径方向に挿通する。
【0065】
その後、ステータコアSCの外周壁(円筒壁19,23)から外周側に引き出された引き出し線16cに巻線固定部材62を外挿する。そして、巻線固定部材62を巻線導出孔61に対して外周側から挿入する。このとき、スリット63aが形成された巻線保持部63は、巻線導出孔61のテーパ部64と当接することで巻線導出孔61の径方向内側に撓む。そして、巻線保持部63の先端部の係止爪63bは、巻線保持部63の弾性復帰により円筒壁19,23の内周面に係止される。これにより、巻線固定部材62の巻線導出孔61からの脱落が抑制されている。また、テーパ部64との係合によって巻線保持部63がその径方向内側に狭まることで、巻線保持部63によって引き出し線16cが挟持され、引き出し線16cの固定が安定する。
【0066】
このような構成によっても、切り欠き部61a,61bの周方向位置を合わせて巻線導出孔61を構成することで、ステータコアSCにおける第1及び第2コア部材14,15同士の周方向の位置決めを簡素な構成で行うことが可能となる。
【0067】
更に、本例によれば、巻線保持部63と引き出し線16cとの間に巻線固定部材62を備えるため、巻線固定部材62によって引き出し線16cが巻線導出孔61に直接的に接触することを防止することが可能となり、その結果、引き出し線16cの損傷を抑制することができる。
【0068】
また、巻線導出孔61は、引き出し線16cの挿通方向(径方向)に対して傾斜するテーパ部64を有し、巻線固定部材62は、テーパ部64との係合によって巻線固定部材62の径方向内側(引き出し線16cの挿通方向と直交する方向)に引き出し線16cを保持する巻線保持部63を有する。この構成によれば、巻線固定部材62の装着によって引き出し線16cを巻線導出孔61に対して容易に固定することが可能となる。
【0069】
また、巻線固定部材62は、円筒壁19,23の内周面に対して係止された係止爪63bを有するため、巻線固定部材62が巻線導出孔61から脱落することを抑制することができる。
【0070】
なお、巻線固定部材62の形状等の構成は、
図8〜
図10に示す例に限定されるものではない。例えば、
図11及び
図12に示すように、巻線固定部材62を径方向に2分した分割構造としてもよい。このような構成によれば、巻線固定部材62を引き出し線16cの端部から外挿することなく、引き出し線16cの中間部から装着することが可能となる。
【0071】
また、
図10及び
図11に示す巻線固定部材62において、巻線保持部63からスリット63a及び係止爪63bを省略してもよい。
また、上記例では、巻線固定部材62が巻線導出孔61に対して外周側から装着されたが、これに特に限定されるものではなく、巻線導出孔61に対して内周側から装着可能な構成としてもよい。
【0072】
また、
図7及び
図8に示す例では、ステータ13aは、内周側に第1及び第2爪状磁極21,24を有するアウタステータとして構成されたが、これに特に限定されるものではなく、外周側に第1及び第2爪状磁極を有するインナステータとして構成してもよい。
【0073】
なお、上記各実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記第1実施形態における位置決め凹部32と位置決め凸部19a,23aの凹凸関係を反対としてもよい。
【0074】
例えば、
図6に示す例では、第1及び第2コア部材14,15の円筒壁19,23は、それら円筒壁19,23の一部を軸方向先端面から切り欠いて径方向内側に略直角に折り曲げることで形成された切り欠き凹部51,52(ステータ側位置決め部)をそれぞれ有している。なお、本例の切り欠き凹部51,52は、上記実施形態の位置決め凸部19a,23a(切り欠き部19b,23b)と同様の位置に形成されている。
【0075】
一方、ヨークハウジングHの内周面31には、径方向に内側に突出する複数のハウジング側位置決め部53が形成されており、各ハウジング側位置決め部53が切り欠き凹部51,52に嵌り込んでいる。ハウジング側位置決め部53は、切り欠き凹部51,52に対して、周方向及び軸方向に係止され、これにより、第1及び第2コア部材14,15がヨークハウジングHに対して周方向及び軸方向に位置決めされている。このような構成によっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
・別体の第1及び第2コア部材14,15よりなるステータコアSCの形状等の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第1実施形態では、第1及び第2コア部材14,15に円筒壁19,23をそれぞれ設けたが、円筒壁を第1コア部材14又は第2コア部材15のみに形成した構成としてもよい。また、例えば、第1実施形態において第1及び第2コア部材14,15が一体のステータコアとしてもよい。また、第1及び第2爪状磁極21,24の個数や形状は適宜変更してもよい。
【0077】
・位置決め凸部19a,23aの形成位置、個数、形状等の構成は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1及び第2爪状磁極21,24の周方向中心線L1,L2から外れた位置に第1及び第2位置決め凸部19a,23aを形成してもよい。また、位置決め凸部をU相、V相及びW相のステータ13a〜13cにそれぞれ1つずつ、又はそれぞれ3つ以上設けてもよい。また、各位置決め凸部19a,23aは、上記実施形態のように切り欠き及び折曲成形したものでなくても、径方向外側に突出した形状であればよい。
【0078】
・上記各実施形態では、ロータ12とステータ13を3層構造にしたブラシレスモータMに適用したが、ロータとステータを4層以上の構造としたモータに適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
【0079】
(イ)請求項6に記載のモータにおいて、
前記ロータは、複数の爪状磁極がそれぞれ形成された一対のロータコアと、それらロータコアの軸方向の間に配置され軸方向に磁化されることで前記爪状磁極を周方向に交互に異なる磁極として機能させる界磁磁石とを備え、
前記ステータ及び前記ロータはそれぞれ、軸方向に多段に配列されていることを特徴とするモータ。
【0080】
この構成によれば、ステータ及びロータを軸方向に多段に配列したモータにおいて、ハウジングに対するステータの周方向の位置決めを簡素な構成で行うことができる。
(ロ)上記(イ)に記載のモータにおいて、
前記ステータ及び前記ロータはそれぞれ、軸方向に第1段、第2段及び第3段の順で3段に配列されて構成され、
第2段のロータは第1段のロータに対して周方向一方にずれて配置されるとともに、第3段のロータは前記第2段のロータに対して前記周方向一方にずれて配置され、
第2段のステータは第1段のステータに対して前記周方向一方とは反対の周方向他方にずれて配置されるとともに、第3段のステータは前記第2段のステータに対して前記周方向他方にずれて配置されていることを特徴とするモータ。
【0081】
この構成によれば、各段のロータにおける周方向のずれ方向と、各段のステータにおける周方向のずれ方向とが互いに反対であるため、ロータの好適な回転を実現できる。