【実施例】
【0034】
a)まず、固体酸化物形燃料電池モジュールの全体の構成について説明する。尚、以下では、「固体酸化物形」を省略する
図2に示すように、燃料電池モジュール1は、燃料ガス(例えば都市ガスが改質された改質ガス:詳しくはその中の水素)と酸化剤ガス(例えば空気:詳しくはその中の酸素)との供給を受けて発電を行う装置である。
【0035】
この燃料電池モジュール1は、断熱容器3を備えるとともに、断熱容器3内に、燃料電池スタック5と、(混合器の機能を有する)気化器7と、改質器9と、排ガス燃焼器11と、起動バーナー13とを備えている。
【0036】
また、燃料電池モジュール1は、燃料電池スタック5に対して空気を供給する空気供給経路15と、気化器7に対して原燃料ガスを供給する原燃料ガス供給経路17と、気化器7に対して改質水を供給する改質水供給経路19と、燃焼ガスから凝縮水を回収する凝縮水回収経路21と、起動バーナー13に対して混合気を供給する混合気供給経路23とを備えている。
【0037】
以下、各構成について詳細に説明する。
燃料電池スタック5は、図示しないが、発電単位である板状の燃料電池セルが複数個(例えば19段)積層された装置である。この燃料電池セルは、いわゆる燃料極支持膜形タイプの燃料電池セルであり、周知の(燃料流路に接する様に配置された)燃料極と、(例えばジルコニアからなる)固体電解質体と、(空気流路に接する様に配置された)空気極とを備えている。
【0038】
気化器7は、
図3に示すように、周知の混合器を兼ねる装置であり、第1チャンバー31と第2チャンバー33とが隣接して設けられている。
第1チャンバー31は、小室31aと、その小室31aに小孔31bを介して連通した(蛇行状の流路を有する)大室31cとを備えている。
【0039】
この気化器7では、大室31cに原燃料ガスが供給されるとともに、小室31aに改質水が供給される。また、第2チャンバー33には、(燃料電池スタック5から排出されたオフガスである)排ガスの燃焼後の燃焼ガスが供給され。この高温の燃焼ガスによって、小室31a等が加熱される構造となっている。
【0040】
従って、気化器7では、改質水は、(燃料ガスで加熱された)小室31a内にて気化されて水蒸気となり、その水蒸気は小孔31bを介して大室31cに導入され、大室31cにて原燃料ガスと水蒸気とが混合されて、混合ガスとなる。
【0041】
図2に戻り、改質器9は、内部に改質用の触媒(例えばルテニウム又はニッケル)を備えた装置であり、この改質器9内に導入される原燃料ガスが水蒸気改質されることにより、原燃料ガスより水素の割合が多い(水素リッチの)燃料ガスが生成される。
【0042】
排ガス燃焼器11は、燃料電池スタック5から排出された(未反応成分を含む)排ガスを、ほぼ完全に燃焼させる装置である。
起動バーナー13は、燃料電池スタック5等の断熱容器3内に配置された各種の装置を加熱する装置であり、各種の装置の下方に配置されている。
【0043】
この起動バーナー13は、(空気と原燃料ガスとが混合された)混合気を燃焼させることによって、主として燃料電池スタック5をその稼働温度(例えば700℃)まで加熱するとともに、前記気化器7を加熱することによって改質水を蒸発させる。
【0044】
空気供給経路15は、上流側より、空気中のゴミ等を除去するフィルタ41と、空気を燃料電池スタック側に送る空気ポンプ(カソードポンプ)43と、空気の流量を計測する第1流量センサ45と、空気の逆流を防止する第1逆止弁47とを備えている。
【0045】
原燃料ガス供給経路17は、上流側より、流路を電気的に開閉する第1、第2電磁弁51、53と、原燃料ガスを気化器7側に送る燃料ポンプ55と、原燃料ガスが一時的に滞留するタンク57と、原燃料ガスの流量を計測する第2流量センサ59と、原燃料ガスから硫黄分を除去する脱硫器61と、原燃料ガスの逆流を防止する第2逆止弁63と、配管がU字状に形成されたU字部65と、原燃料ガスの逆流を防止する第3逆止弁67とを備えている。
【0046】
このうち、第2逆止弁63の開弁圧は例えば2kPaであり、第3逆止弁67の開弁圧は例えば6kPaである。これにより、燃料電池モジュール1の運転時には、例えば、第2逆止弁63については、その上流側は下流側より2kPa以上圧力が高く、第3逆止弁67については、その上流側は下流側より6kPa以上圧力が高くなる。
【0047】
また、
図4に示すように、前記U字部65とは、原燃料ガス供給経路17の配管が、第2逆止弁63と第3逆止弁67の間において、地上側に向かって下方に凸となるように湾曲してU字状に形成されたものである。よって、このU字部65の両側の上下方向に延びる配管に付着した水分は、重力によってU字部65の底部に向かって下降して、U字部65に溜まることになる。
【0048】
図2に戻り、改質水供給経路19は、上流側より、(後述する)凝縮水を溜める凝縮水タンク71から凝縮水を汲み出して、改質水として気化器7側に送る水ポンプ73と、改質水からゴミ等を除去する水フィルタ75と、改質水の流量を計測する第3流量センサ77とを備えている。
【0049】
凝縮水回収経路21は、上流側より、排ガス燃焼器11から(気化器7を介して)排出される燃焼ガスを冷却し、冷却した燃焼ガスから凝縮水を生成させる熱交換器79と、熱交換器79によって冷却された燃焼ガス中より回収された凝縮水を蓄える凝縮水タンク71とを備えている。
【0050】
なお、凝縮水回収経路21と改質水供給経路19とは、凝縮水タンク71を介して一つの経路として構成されている。
混合気供給経路23は、空気と原燃料ガスとの混合気を起動バーナー側に送る経路であり、空気を起動バーナー13側に送る経路23aと、原燃料ガスを起動バーナー13側に送る経路23bとが、途中で接続されたものである。
【0051】
この空気を起動バーナー13側に送る経路23aには、空気ポンプ81が配置され、原燃料ガスを起動バーナー13側に送る経路23bには、電磁弁(開閉弁)83が配置されている。
【0052】
b)次に、本実施例の燃料電池モジュール1の全体的な動作について説明する。
燃料電池モジュール1によって、発電を行う場合には、まず、電磁弁83を開として、空気ポンプ81を作動させる。これによって、混合気が起動バーナー13に供給され、起動バーナー13にて混合気が燃焼することによって、燃料電池スタック5が稼働温度に上昇する。なお、同時に気化器7等も加熱される。
【0053】
次に、空気ポンプ43を作動させる。これによって、燃料電池スタック5の各燃料電池セルの空気極側に空気が供給される。
それとともに、両電磁弁51、53を開として、燃料ポンプ55を作動させる。これによって、原燃料ガスが気化器7に供給される。
【0054】
同時に、水ポンプ73を作動させる。これによって、改質水が気化器7に供給される。
そして、原燃料ガスと改質水との供給を受けた気化器7では、上述した加熱によって改質水が蒸発して水蒸気が発生する。この水蒸気は原燃料ガスと混合されて混合ガスが生成し、この混合ガスが改質器9に送られる。
【0055】
改質器9では、触媒によって、混合ガスが水蒸気改質され、(水素リッチの)燃料ガスが生成する。
この燃料ガスは、燃料電池スタック5の各燃料電池セルの燃料極側に供給される。
【0056】
従って、各燃料電池セルでは、空気と燃料ガスとの供給を受けて発電が行われ、この発電による直流電流が、燃料電池スタック5から外部に供給される。
また、発電に使用された残余の空気と燃料ガスとは、排ガス燃焼器11に送られて、ほぼ完全に燃焼が行われる。
【0057】
この燃焼によって高温となった燃焼ガスは、気化器7の第2チャンバー33に送られて気化器7(第1チャンバー31)の加熱に使用された後に、断熱容器3外に排出され、熱交換器79に送られる。
【0058】
熱交換器79では、燃焼ガスが外部の空気で冷却されることによって、その温度が冷却される。この冷却に伴って、燃焼ガス中に含まれている水分が凝縮水となって取り出され、凝縮水が凝縮水タンク71に溜められる。
【0059】
c)次に、本実施例の作用効果について説明する。
本実施例では、燃料ポンプ55と(混合器を兼ねる)気化器7との間に、燃料ポンプ55側から気化器7側への原燃料ガスの流れのみを許可する(所定の開弁圧を有する)第2逆止弁63及び第3逆止弁67を備えている。
【0060】
これによって、第2逆止弁63の上流側(即ち燃料ポンプ55側)の圧力を、第2逆止弁63の下流側の圧力より、例えば2kPa以上高めることができる。同様に、第3逆止弁67の上流側の圧力を、第3逆止弁67の下流側の圧力より、例えば6kPa以上高めることができる。
【0061】
これにより、燃料供給圧力(即ち第3逆止弁67の上流側の圧力)を気化器7内の圧力(気化圧)よりも、例えば6kPa以上高くすることができるので、燃料供給圧力が気化圧の変動を受けにくくなる。
【0062】
つまり、上述したように、気化器7の第1チャンバー31に水と原燃料ガスとを供給して気化させて混合する装置においては、燃料供給圧力と気化圧とが同程度であると、燃料供給圧力は気化圧の影響を受けやすくなり、気化圧が変動すると燃料供給圧力も同様に変動してしまうが、本実施例では、気化圧よりも燃料供給圧力を大きくしているので、気化圧が変動しても燃料供給圧力は変動しにくくなる。
【0063】
これによって、燃料供給圧力の変動を抑制できるので、改質器9に供給される原燃料ガスの流量の変動も抑制することができる。その結果、燃料電池スタック5に供給される燃料ガスの流量が変動しにくくなるので、発電電力が安定するという顕著な効果を奏する。
【0064】
また、気化器7の第1チャンバー31における気化圧が、燃料供給圧力より上回った状態で燃料電池スタック5の発電を継続すると、気化器7で発生した水蒸気が配管を逆流して配管内で結露し、その結露水によって、燃料ポンプ55や第2流量センサ59や脱硫器61等の故障の原因となることがあるが、本実施例では、燃料供給圧力を気化圧より高くしているので、水蒸気の逆流が生じにくい。これによって、結露水による機器の故障を未然に防止することができる。
【0065】
更に、本実施例では、原燃料ガスの配管において、燃料ポンプ55と気化器7との間(詳しくは第2逆止弁63と第3逆止弁67との間)に、地上側に曲がったU字部65を備えているので、配管抵抗が上昇する。よって、この点からも、原燃料ガスの圧力変動を低減できるので、燃料流量の変動を抑制して、発電電力を安定化することができる。
【0066】
しかも、このU字部65があることによって、万一水蒸気が逆流しても、その結露水は配管のU字部65の底に滞留するので、燃料ポンプ55や第2流量センサ59や脱硫器61などの故障を防止することができる。
【0067】
なお、本実施例では、原燃料ガス供給経路17に、第2逆止弁63と第3逆止弁67との両方を設けたが、第2逆止弁63の設置は必要である(即ち第3逆止弁67は省略可能である)。
【0068】
なお、両方の逆止弁63、67を設けた方が、電圧ハンチングを抑制しつつ、万一水蒸気が逆流したとしても、燃料ポンプ55等の補機類の破損を抑制することができるため、より好ましい。
【0069】
d)次に、本実施例の変形例について説明する。
上述した実施例では、原燃料ガス供給経路17に、第2逆止弁63と第3逆止弁67との両方を設けたが、両逆止弁63、67に代えて、周知のオリフィスを配置してもよい。これによって、オリフィスの上流側の圧力を下流側の圧力を高めることができるので、(圧力を高めるという点においては)前記両逆止弁63、67と同様な効果を奏する。
【0070】
なお、両方の逆止弁63、67ともオリフィスに変更してもよいが、どちらか一方のみをオリフィスに変更してよい。また、第2逆止弁63に代えてオリフィスを配置し、第3逆止弁27を省略してもよい。
[実験例]
次に、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
【0071】
<実験例1>
本実験例1では、前記実施例と同様な燃料電池モジュールにおいて、第2逆止弁及び第3逆止弁として、開弁圧が1psiの試料1の逆止弁を用い、下記の条件で発電を行って、燃料電池スタックの電圧(スタック電圧)を調べた。なお、燃料電池スタックは燃料電池セルが19枚積層されたものである。
【0072】
<運転条件>
運転温度:680℃
発生電流:55A
空気流量:26.1L/min
原燃料ガス流量:2.08L/min
その結果を、
図5に示すが、(開弁圧の高い)試料1の逆止弁を用いた場合は、スタック電圧の平均は13.416Vで、3σ(標準偏差)は、0.110であった。
【0073】
また、第2逆止弁及び第3逆止弁として、開弁圧が1/3psiの試料2の逆止弁を用い、同様な運転条件で発電を行って、同様にスタック電圧を調べた。
その結果を、同じく
図5に示すが、(開弁圧の低い)試料2の逆止弁を用いた場合は、スタック電圧の平均は13.617Vで、3σは、0.157であった。
【0074】
つまり、この実験から、開弁圧の高い逆止弁を使用した方は、スタック電圧の変動が少ないことが分かる。
<実験例2>
次に、どの程度の開弁圧であれば(即ち、逆止弁の上流側の圧力を下流側よりどの程度上昇させれば)、好ましい結果が得られるかを調べた。
【0075】
具体的には、気化器の前に取り付けてある第3逆止弁の開弁圧を変更しながら実験を行った。
その結果、開弁圧が6kPa以上であれば、スタック電圧の変動が小さく(例えば0.5V以下)、好ましい効果が得られた。
【0076】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、本発明は、水蒸気改質やオートサーマルを行う改質器を備えた燃料電池モジュールに適用できる。
【0077】
(2)また、前記実施例では、混合器を兼ねる気化器を用いたが、別体の気化器と混合器を用いてよい。その場合は、気化器にて改質水を蒸発させ、その水蒸気を(原燃料ガスとともに)混合器に供給する。
【0078】
(3)更に、前記実施例では、排ガス燃焼器や改質器等の補助器を、燃料電池スタックと別体に記載したが、それらの補助器を燃料電池スタックと一体に(例えば積層するように)構成してもよい。