特許第6199720号(P6199720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199720
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20170911BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20170911BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20170911BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170911BHJP
【FI】
   H01M8/04 A
   H01M8/06 G
   C01B3/38
   !H01M8/12
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-252168(P2013-252168)
(22)【出願日】2013年12月5日
(65)【公開番号】特開2015-109234(P2015-109234A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 佑介
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 正吾
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−064662(JP,A)
【文献】 特開2004−119184(JP,A)
【文献】 特開2007−191386(JP,A)
【文献】 特開2013−191299(JP,A)
【文献】 特開2013−030285(JP,A)
【文献】 特開2013−114852(JP,A)
【文献】 特開2011−216283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/24
C01B 3/00−6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素ガスを含有する原燃料ガスを該原燃料よりも水素ガスが多い燃料ガスに改質し、該燃料ガスと酸化剤ガスとを燃料電池に供給して発電を行う燃料電池モジュールにおいて、
水から水蒸気を発生させる気化器と、
前記気化器の上流側に設けられ、前記気化器に水を供給する水供給装置と、
前記気化器の上流側に設けられ、前記気化器に前記原燃料ガスを供給する燃料供給装置と、
前記気化器の下流側に設けられ、前記水蒸気を用いて前記原燃料ガスを前記燃料ガスに改質する改質器と、
を備えるとともに、
前記燃料供給装置と前記気化器との間に、前記燃料供給装置と前記気化器との間の圧力を調節する、逆止弁又はオリフィスである調圧機構を備えており、
前記原燃料ガスを前記気化器に供給する配管において、前記燃料供給装置と前記気化器との間に、地上側に曲がったU字部を備えるとともに、
前記U字部の上流側及び下流側に、前記調圧機構を備えたことを特徴とする燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記調圧機構の上流側の圧力を、前記気化器内の気化圧よりも高くすることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記気化器は、前記原燃料ガスと前記水蒸気とを混合する混合器の機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば固体酸化物形燃料電池などの燃料電池を備えた燃料電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸化剤ガス(例えば空気)と燃料ガス(例えば水素)とを用いて発電を行う燃料電池モジュールとして、例えば固体電解質(固体酸化物)を用いた固体酸化物燃料電池を備えた燃料電池モジュールが知られている。
【0003】
この種の燃料電池モジュールにおいては、炭化水素ガスを含有する都市ガスやLPGなどの原燃料ガスを、原燃料ガスより水素の含有量が多い水素含有ガス(燃料ガス:改質ガス)に改質することが行われている。
【0004】
この改質方法としては、部分酸化(即ち原燃料ガスに酸素を供給して改質する方法)、水蒸気改質(原燃料ガスに水蒸気を供給して改質する方法)、オートサーマル(即ち部分酸化と水蒸気改質を組み合わせた方法)などの方法が知られているが、効率が最も良いものとして、水蒸気改質が知られている。
【0005】
そこで、近年では、上述した水蒸気改質を行う改質器を備えるとともに、改質器の上流側に、水から水蒸気を発生させるための気化器、水を気化器に供給する水ポンプ、原燃料ガスを気化器に供給する燃料ポンプなどを備えた燃料電池モジュールが提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−191386号公報
【特許文献2】特開2013−16401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、水ポンプで気化器に水を供給して水蒸気を発生させる際には、各種の要因によって、気化圧(気化器内の圧力)が変動することがあった。しかも、気化器には、原燃料ガスが供給されるので、気化圧が変動すると、改質器に供給される原燃料ガスの流量が変動することがあった。
【0008】
なお、気化圧が変動する要因としては、例えば供給する水量が少ない場合に、配管内の水の突沸によって水の供給が断続的になって気化圧が変動するハンチング、供給する水量が多い場合に、気化能力不足によって液水が溜まり、気化が不安定になって気化圧が変動するハンチング、燃料配管内に拡散し気化した水蒸気が結露し配管の弁を閉塞する等によって気化圧が変動するハンチングなどが考えられる。
【0009】
その結果、燃料電池に供給される(原燃料ガスの改質後の)燃料ガスの流量が変動して発電電力が不安定になるという問題があった。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、改質器に供給する燃料流量の変動を抑制して、発電電力を安定化することができる燃料電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、第1態様として、炭化水素ガスを含有する原燃料ガスを該原燃料よりも水素ガスが多い燃料ガスに改質し、該燃料ガスと酸化剤ガスとを燃料電池に供給して発電を行う燃料電池モジュールにおいて、水から水蒸気を発生させる気化器と、前記気化器の上流側に設けられ、前記気化器に水を供給する水供給装置と、前記気化器の上流側に設けられ、前記気化器に前記原燃料ガスを供給する燃料供給装置と、前記気化器の下流側に設けられ、前記水蒸気を用いて前記原燃料ガスを前記燃料ガスに改質する改質器と、を備えるとともに、前記燃料供給装置と前記気化器との間に、前記燃料供給装置と前記気化器との間の圧力を調節する、逆止弁又はオリフィスである調圧機構を備えており、前記原燃料ガスを前記気化器に供給する配管において、前記燃料供給装置と前記気化器との間に、地上側に曲がったU字部を備えるとともに、前記U字部の上流側及び下流側に、前記調圧機構を備えたことを特徴とする。
【0011】
本第1態様では、燃料供給装置(例えば燃料ポンプ)と気化器との間に、燃料供給装置と気化器との間の圧力を調節する調圧機構を備えているので、この調圧機構によって、調圧機構より上流側(燃料供給装置側)の圧力、即ち燃料供給装置によって供給される原燃料ガスの圧力(燃料供給圧力)を、調圧機構より下流側の気化器内の圧力(即ち気化圧)よりも高くすることができる。これによって、燃料供給圧力が気化圧の変動を受けにくくなる。
【0012】
つまり、気化器に水と原燃料ガスとが供給される装置においては、図1に例示するように、燃料供給圧力(原燃料ガスを供給する圧力)と気化圧とが同程度のレベル(圧力)であると(例えば燃料供給圧力L)、燃料供給圧力は気化圧の影響を受けやすくなり、気化圧が変動すると燃料供給圧力も同様に変動してしまう。
【0013】
これに対して、本第1態様では、調圧機構によって、気化圧よりも燃料供給圧力を(例えば燃料供給圧力Hのように)上昇させることができる。そのため、気化圧が燃料供給圧力より大きな場合には、気化圧が変動しても燃料供給圧力は変動しにくくなる。
【0014】
これによって、燃料供給圧力の変動を抑制できるので、改質器に供給される原燃料ガスの流量の変動も抑制することができる。その結果、燃料電池に供給される燃料ガスの流量が変動しにくくなるので、発電電力が安定するという顕著な効果を奏する。
【0015】
また、気化器の気化圧が、燃料供給装置の燃料供給圧力より上回った状態で燃料電池の発電を継続すると、気化器で発生した水蒸気が配管を逆流して配管内で結露し、その結露水によって、燃料供給装置(燃料ポンプ)や流量センサや脱硫器等の故障の原因となることがある。
【0016】
しかし、本第1態様では、調圧機構を備えているので、水蒸気の逆流が生じないように、燃料供給装置と気化器との間の圧力を調節すること(具体的には気化圧より燃料供給圧力を高めること)ができる。よって、このように圧力を調節することによって、水蒸気の逆流によって発生した結露水による装置の故障を、未然に防止することができる。
【0017】
また、本第1態様では、調圧機構は、逆止弁又はオリフィスである。
つまり、調圧機構として逆止弁又はオリフィスを用いることにより、燃料供給装置から(逆止弁又はオリフィスを介して)気化器に原燃料ガスを供給する際に、逆止弁又はオリフィスの上流側を気化器内の圧力より高めることができる。
詳しくは、例えば調圧機構として、オリフィスを用いることにより、原燃料ガスを気化器に対して吹き出すように供給することができる。よって、気化器内の気化圧の変動に影響されずに、原燃料ガスを燃料電池側に供給することが可能である。
また、調圧機構として、逆止弁を用いることにより、オリフィスとしての機能だけでなく、水蒸気の逆流を好適に防止することができる。
さらに、本第1態様では、原燃料ガスを気化器に供給する配管において、燃料供給装置と気化器との間に、地上側に曲がったU字部を備えている。
つまり、本第1態様では、原燃料ガスの配管において、燃料供給装置と気化器との間に地上側に曲がったU字部を備えているので、配管抵抗が上昇する。よって、原燃料ガスの圧力変動を低減できるので、燃料流量の変動を抑制して、発電電力を安定化することができる。
また、前記U字部がある場合には、万一水蒸気が逆流して結露水が発生しても、結露水は配管のU字部の底に滞留するので、燃料ポンプや流量センサや脱硫器などの故障を防止することができる。
なお、このU字部の上流側及び下流側には、前記調圧機構を備えている。
(2)本発明は、第2態様として、前記調圧機構の上流側の圧力を、前記気化器内の気化圧よりも高くすることを特徴とする。
本第2態様では、調圧機構の上流側の圧力を、前記気化器内の気化圧よりも高くするので、上述したように、気化圧が変動した場合でも、燃料供給圧力が変動しにくくなる。よって、原燃料ガス(従って改質後の燃料ガス)の流量が変動しにくくなるので、発電電力が安定する。
【0018】
また、本第2態様では、上述したように、配管において水蒸気の逆流を抑制できので、水蒸気の結露水による燃料供給装置や流量センサや脱硫器などの故障を防止することが可能である。
【0019】
なお、上述した効果を得るには、例えば調圧機構の上流側の圧力を、気化器内の気化圧よりも例えば6kPa以上高くすることが好ましい。
【0022】
)本発明は、第態様として、前記気化器は、前記原燃料ガスと前記水蒸気とを混合する混合器の機能を有することを特徴とする。
【0023】
本第態様では、気化器を例示している。この気化器は、水を気化させて水蒸気とするだけではなく、原燃料ガスと水蒸気とを混合する混合器の機能も有するので、効率良く気化及び混合を行うことができる。
【0027】
以下、本発明の各構成について説明する。
前記燃料電池としては、例えば、ZrO系セラミックなどを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)、高分子電解質膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)などの燃料電池が挙げられる。
【0028】
なお、燃料電池の稼動温度(即ち、イオンが電解質中を移動可能となる温度)は、燃料電池の種類ごとに異なっている。具体的に言うと、SOFCの稼動温度は700℃〜1000℃程度、PEFCの稼動温度は常温〜90℃程度、MCFCの稼動温度は650℃〜700℃程度、PAFCの稼動温度は150℃〜200℃程度である。
【0029】
また、燃料電池としては、発電単位である燃料電池セルやその燃料電池セルを複数備えた(例えば燃料電池セルを積層した)燃料電池スタックが挙げられる。
例えば燃料電池がSOFCである場合、発電セルを構成する電解質層(固体酸化物層)の形成材料としては、例えばジルコニア系、セリア系、ペロブスカイト系の電解質材料が挙げられる。ジルコニア系材料では、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、及びカルシア安定化ジルコニア(CaSZ)を挙げることができ、一般的にはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が使用される例が多い。セリア系材料ではいわゆる希土類元素添加セリアが、ペロブスカイト系材料ではランタン元素を含有するペロブスカイト型複酸化物が使われる。
【0030】
なお、発電セルとしては、例えば燃料極層と固体電解質層と空気極層とを一体に積層した構成を採用できる。
前記原燃料ガスとしては、改質によって水素を生成できる各種の原料ガス、例えば天然ガス(例えばLNG)、都市ガス、LPG、灯油、メタノール、バイオメタノールなどを採用できる。
【0031】
水供給装置としては、水ポンプが挙げられ、燃料供給装置としては、燃料ポンプが挙げられる。
なお、改質器とは、燃料電池に燃料ガスを供給する場合に、原燃料ガスを、より発電に好適な組成に改質(例えば都市ガス等をより水素成分の多い組成のガスに改質)する装置のことである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】原燃料ガスと気化圧との圧力の時間変化を例示するグラフである。
図2】実施例の燃料電池モジュールを含むシステムの構成を示すブロック図である。
図3】実施例の燃料電池モジュールに用いられる気化器の構成を模式的に示す説明図である。
図4】実施例の燃料電池モジュールに用いられるU字配管の例を示す説明図である。
図5】逆止弁の開弁圧を違えた場合のスタック電圧の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、本発明を実施するために形態の例(実施例)として、固体酸化物形燃料電池モジュールの実施例について説明する。
【実施例】
【0034】
a)まず、固体酸化物形燃料電池モジュールの全体の構成について説明する。尚、以下では、「固体酸化物形」を省略する
図2に示すように、燃料電池モジュール1は、燃料ガス(例えば都市ガスが改質された改質ガス:詳しくはその中の水素)と酸化剤ガス(例えば空気:詳しくはその中の酸素)との供給を受けて発電を行う装置である。
【0035】
この燃料電池モジュール1は、断熱容器3を備えるとともに、断熱容器3内に、燃料電池スタック5と、(混合器の機能を有する)気化器7と、改質器9と、排ガス燃焼器11と、起動バーナー13とを備えている。
【0036】
また、燃料電池モジュール1は、燃料電池スタック5に対して空気を供給する空気供給経路15と、気化器7に対して原燃料ガスを供給する原燃料ガス供給経路17と、気化器7に対して改質水を供給する改質水供給経路19と、燃焼ガスから凝縮水を回収する凝縮水回収経路21と、起動バーナー13に対して混合気を供給する混合気供給経路23とを備えている。
【0037】
以下、各構成について詳細に説明する。
燃料電池スタック5は、図示しないが、発電単位である板状の燃料電池セルが複数個(例えば19段)積層された装置である。この燃料電池セルは、いわゆる燃料極支持膜形タイプの燃料電池セルであり、周知の(燃料流路に接する様に配置された)燃料極と、(例えばジルコニアからなる)固体電解質体と、(空気流路に接する様に配置された)空気極とを備えている。
【0038】
気化器7は、図3に示すように、周知の混合器を兼ねる装置であり、第1チャンバー31と第2チャンバー33とが隣接して設けられている。
第1チャンバー31は、小室31aと、その小室31aに小孔31bを介して連通した(蛇行状の流路を有する)大室31cとを備えている。
【0039】
この気化器7では、大室31cに原燃料ガスが供給されるとともに、小室31aに改質水が供給される。また、第2チャンバー33には、(燃料電池スタック5から排出されたオフガスである)排ガスの燃焼後の燃焼ガスが供給され。この高温の燃焼ガスによって、小室31a等が加熱される構造となっている。
【0040】
従って、気化器7では、改質水は、(燃料ガスで加熱された)小室31a内にて気化されて水蒸気となり、その水蒸気は小孔31bを介して大室31cに導入され、大室31cにて原燃料ガスと水蒸気とが混合されて、混合ガスとなる。
【0041】
図2に戻り、改質器9は、内部に改質用の触媒(例えばルテニウム又はニッケル)を備えた装置であり、この改質器9内に導入される原燃料ガスが水蒸気改質されることにより、原燃料ガスより水素の割合が多い(水素リッチの)燃料ガスが生成される。
【0042】
排ガス燃焼器11は、燃料電池スタック5から排出された(未反応成分を含む)排ガスを、ほぼ完全に燃焼させる装置である。
起動バーナー13は、燃料電池スタック5等の断熱容器3内に配置された各種の装置を加熱する装置であり、各種の装置の下方に配置されている。
【0043】
この起動バーナー13は、(空気と原燃料ガスとが混合された)混合気を燃焼させることによって、主として燃料電池スタック5をその稼働温度(例えば700℃)まで加熱するとともに、前記気化器7を加熱することによって改質水を蒸発させる。
【0044】
空気供給経路15は、上流側より、空気中のゴミ等を除去するフィルタ41と、空気を燃料電池スタック側に送る空気ポンプ(カソードポンプ)43と、空気の流量を計測する第1流量センサ45と、空気の逆流を防止する第1逆止弁47とを備えている。
【0045】
原燃料ガス供給経路17は、上流側より、流路を電気的に開閉する第1、第2電磁弁51、53と、原燃料ガスを気化器7側に送る燃料ポンプ55と、原燃料ガスが一時的に滞留するタンク57と、原燃料ガスの流量を計測する第2流量センサ59と、原燃料ガスから硫黄分を除去する脱硫器61と、原燃料ガスの逆流を防止する第2逆止弁63と、配管がU字状に形成されたU字部65と、原燃料ガスの逆流を防止する第3逆止弁67とを備えている。
【0046】
このうち、第2逆止弁63の開弁圧は例えば2kPaであり、第3逆止弁67の開弁圧は例えば6kPaである。これにより、燃料電池モジュール1の運転時には、例えば、第2逆止弁63については、その上流側は下流側より2kPa以上圧力が高く、第3逆止弁67については、その上流側は下流側より6kPa以上圧力が高くなる。
【0047】
また、図4に示すように、前記U字部65とは、原燃料ガス供給経路17の配管が、第2逆止弁63と第3逆止弁67の間において、地上側に向かって下方に凸となるように湾曲してU字状に形成されたものである。よって、このU字部65の両側の上下方向に延びる配管に付着した水分は、重力によってU字部65の底部に向かって下降して、U字部65に溜まることになる。
【0048】
図2に戻り、改質水供給経路19は、上流側より、(後述する)凝縮水を溜める凝縮水タンク71から凝縮水を汲み出して、改質水として気化器7側に送る水ポンプ73と、改質水からゴミ等を除去する水フィルタ75と、改質水の流量を計測する第3流量センサ77とを備えている。
【0049】
凝縮水回収経路21は、上流側より、排ガス燃焼器11から(気化器7を介して)排出される燃焼ガスを冷却し、冷却した燃焼ガスから凝縮水を生成させる熱交換器79と、熱交換器79によって冷却された燃焼ガス中より回収された凝縮水を蓄える凝縮水タンク71とを備えている。
【0050】
なお、凝縮水回収経路21と改質水供給経路19とは、凝縮水タンク71を介して一つの経路として構成されている。
混合気供給経路23は、空気と原燃料ガスとの混合気を起動バーナー側に送る経路であり、空気を起動バーナー13側に送る経路23aと、原燃料ガスを起動バーナー13側に送る経路23bとが、途中で接続されたものである。
【0051】
この空気を起動バーナー13側に送る経路23aには、空気ポンプ81が配置され、原燃料ガスを起動バーナー13側に送る経路23bには、電磁弁(開閉弁)83が配置されている。
【0052】
b)次に、本実施例の燃料電池モジュール1の全体的な動作について説明する。
燃料電池モジュール1によって、発電を行う場合には、まず、電磁弁83を開として、空気ポンプ81を作動させる。これによって、混合気が起動バーナー13に供給され、起動バーナー13にて混合気が燃焼することによって、燃料電池スタック5が稼働温度に上昇する。なお、同時に気化器7等も加熱される。
【0053】
次に、空気ポンプ43を作動させる。これによって、燃料電池スタック5の各燃料電池セルの空気極側に空気が供給される。
それとともに、両電磁弁51、53を開として、燃料ポンプ55を作動させる。これによって、原燃料ガスが気化器7に供給される。
【0054】
同時に、水ポンプ73を作動させる。これによって、改質水が気化器7に供給される。
そして、原燃料ガスと改質水との供給を受けた気化器7では、上述した加熱によって改質水が蒸発して水蒸気が発生する。この水蒸気は原燃料ガスと混合されて混合ガスが生成し、この混合ガスが改質器9に送られる。
【0055】
改質器9では、触媒によって、混合ガスが水蒸気改質され、(水素リッチの)燃料ガスが生成する。
この燃料ガスは、燃料電池スタック5の各燃料電池セルの燃料極側に供給される。
【0056】
従って、各燃料電池セルでは、空気と燃料ガスとの供給を受けて発電が行われ、この発電による直流電流が、燃料電池スタック5から外部に供給される。
また、発電に使用された残余の空気と燃料ガスとは、排ガス燃焼器11に送られて、ほぼ完全に燃焼が行われる。
【0057】
この燃焼によって高温となった燃焼ガスは、気化器7の第2チャンバー33に送られて気化器7(第1チャンバー31)の加熱に使用された後に、断熱容器3外に排出され、熱交換器79に送られる。
【0058】
熱交換器79では、燃焼ガスが外部の空気で冷却されることによって、その温度が冷却される。この冷却に伴って、燃焼ガス中に含まれている水分が凝縮水となって取り出され、凝縮水が凝縮水タンク71に溜められる。
【0059】
c)次に、本実施例の作用効果について説明する。
本実施例では、燃料ポンプ55と(混合器を兼ねる)気化器7との間に、燃料ポンプ55側から気化器7側への原燃料ガスの流れのみを許可する(所定の開弁圧を有する)第2逆止弁63及び第3逆止弁67を備えている。
【0060】
これによって、第2逆止弁63の上流側(即ち燃料ポンプ55側)の圧力を、第2逆止弁63の下流側の圧力より、例えば2kPa以上高めることができる。同様に、第3逆止弁67の上流側の圧力を、第3逆止弁67の下流側の圧力より、例えば6kPa以上高めることができる。
【0061】
これにより、燃料供給圧力(即ち第3逆止弁67の上流側の圧力)を気化器7内の圧力(気化圧)よりも、例えば6kPa以上高くすることができるので、燃料供給圧力が気化圧の変動を受けにくくなる。
【0062】
つまり、上述したように、気化器7の第1チャンバー31に水と原燃料ガスとを供給して気化させて混合する装置においては、燃料供給圧力と気化圧とが同程度であると、燃料供給圧力は気化圧の影響を受けやすくなり、気化圧が変動すると燃料供給圧力も同様に変動してしまうが、本実施例では、気化圧よりも燃料供給圧力を大きくしているので、気化圧が変動しても燃料供給圧力は変動しにくくなる。
【0063】
これによって、燃料供給圧力の変動を抑制できるので、改質器9に供給される原燃料ガスの流量の変動も抑制することができる。その結果、燃料電池スタック5に供給される燃料ガスの流量が変動しにくくなるので、発電電力が安定するという顕著な効果を奏する。
【0064】
また、気化器7の第1チャンバー31における気化圧が、燃料供給圧力より上回った状態で燃料電池スタック5の発電を継続すると、気化器7で発生した水蒸気が配管を逆流して配管内で結露し、その結露水によって、燃料ポンプ55や第2流量センサ59や脱硫器61等の故障の原因となることがあるが、本実施例では、燃料供給圧力を気化圧より高くしているので、水蒸気の逆流が生じにくい。これによって、結露水による機器の故障を未然に防止することができる。
【0065】
更に、本実施例では、原燃料ガスの配管において、燃料ポンプ55と気化器7との間(詳しくは第2逆止弁63と第3逆止弁67との間)に、地上側に曲がったU字部65を備えているので、配管抵抗が上昇する。よって、この点からも、原燃料ガスの圧力変動を低減できるので、燃料流量の変動を抑制して、発電電力を安定化することができる。
【0066】
しかも、このU字部65があることによって、万一水蒸気が逆流しても、その結露水は配管のU字部65の底に滞留するので、燃料ポンプ55や第2流量センサ59や脱硫器61などの故障を防止することができる。
【0067】
なお、本実施例では、原燃料ガス供給経路17に、第2逆止弁63と第3逆止弁67との両方を設けたが、第2逆止弁63の設置は必要である(即ち第3逆止弁67は省略可能である)。
【0068】
なお、両方の逆止弁63、67を設けた方が、電圧ハンチングを抑制しつつ、万一水蒸気が逆流したとしても、燃料ポンプ55等の補機類の破損を抑制することができるため、より好ましい。
【0069】
d)次に、本実施例の変形例について説明する。
上述した実施例では、原燃料ガス供給経路17に、第2逆止弁63と第3逆止弁67との両方を設けたが、両逆止弁63、67に代えて、周知のオリフィスを配置してもよい。これによって、オリフィスの上流側の圧力を下流側の圧力を高めることができるので、(圧力を高めるという点においては)前記両逆止弁63、67と同様な効果を奏する。
【0070】
なお、両方の逆止弁63、67ともオリフィスに変更してもよいが、どちらか一方のみをオリフィスに変更してよい。また、第2逆止弁63に代えてオリフィスを配置し、第3逆止弁27を省略してもよい。
[実験例]
次に、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
【0071】
<実験例1>
本実験例1では、前記実施例と同様な燃料電池モジュールにおいて、第2逆止弁及び第3逆止弁として、開弁圧が1psiの試料1の逆止弁を用い、下記の条件で発電を行って、燃料電池スタックの電圧(スタック電圧)を調べた。なお、燃料電池スタックは燃料電池セルが19枚積層されたものである。
【0072】
<運転条件>
運転温度:680℃
発生電流:55A
空気流量:26.1L/min
原燃料ガス流量:2.08L/min
その結果を、図5に示すが、(開弁圧の高い)試料1の逆止弁を用いた場合は、スタック電圧の平均は13.416Vで、3σ(標準偏差)は、0.110であった。
【0073】
また、第2逆止弁及び第3逆止弁として、開弁圧が1/3psiの試料2の逆止弁を用い、同様な運転条件で発電を行って、同様にスタック電圧を調べた。
その結果を、同じく図5に示すが、(開弁圧の低い)試料2の逆止弁を用いた場合は、スタック電圧の平均は13.617Vで、3σは、0.157であった。
【0074】
つまり、この実験から、開弁圧の高い逆止弁を使用した方は、スタック電圧の変動が少ないことが分かる。
<実験例2>
次に、どの程度の開弁圧であれば(即ち、逆止弁の上流側の圧力を下流側よりどの程度上昇させれば)、好ましい結果が得られるかを調べた。
【0075】
具体的には、気化器の前に取り付けてある第3逆止弁の開弁圧を変更しながら実験を行った。
その結果、開弁圧が6kPa以上であれば、スタック電圧の変動が小さく(例えば0.5V以下)、好ましい効果が得られた。
【0076】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、本発明は、水蒸気改質やオートサーマルを行う改質器を備えた燃料電池モジュールに適用できる。
【0077】
(2)また、前記実施例では、混合器を兼ねる気化器を用いたが、別体の気化器と混合器を用いてよい。その場合は、気化器にて改質水を蒸発させ、その水蒸気を(原燃料ガスとともに)混合器に供給する。
【0078】
(3)更に、前記実施例では、排ガス燃焼器や改質器等の補助器を、燃料電池スタックと別体に記載したが、それらの補助器を燃料電池スタックと一体に(例えば積層するように)構成してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…燃料電池モジュール
5…燃料供給スタック
7…気化器
9…改質器
11…排ガス燃焼器
43、81…空気ポンプ
47、63、67…逆止弁
55…燃料ポンプ
65…U字部
73…水ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5