(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199722
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】トレッド用ゴムシートの切断装置およびトレッド用ゴムシートの切断方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/52 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
B29D30/52
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-254343(P2013-254343)
(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公開番号】特開2015-112738(P2015-112738A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】早▲崎▼ 直樹
【審査官】
鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−62296(JP,A)
【文献】
特開平7−52251(JP,A)
【文献】
特開2007−283563(JP,A)
【文献】
特開2009−202471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に形成されたトレッド用ゴムシートを所定の長さに切断するトレッド用ゴムシートの切断装置であって、
超音波カッターを用いて、前記トレッド用ゴムシートを切断する切断手段と、
切断された前記トレッド用ゴムシートの切断面を加熱する加熱手段とが設けられており、
前記加熱手段が前記切断手段に一体化して取り付けられている
ことを特徴とするトレッド用ゴムシートの切断装置。
【請求項2】
前記加熱手段が一対のヒーターであり、
さらに前記一対のヒーターのON/OFFを個別に切り替えることができる制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトレッド用ゴムシートの切断装置。
【請求項3】
切断された後、所定時間が経過した前記トレッド用ゴムシートが、次工程に供給されないように制御する制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトレッド用ゴムシートの切断装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のトレッド用ゴムシートの切断装置を用いて、前記トレッド用ゴムシートを所定の長さに切断するトレッド用ゴムシートの切断方法であって、
前記超音波カッターを用いて前記トレッド用ゴムシートを切断した後、前記トレッド用ゴムシートの切断面を加熱する
ことを特徴とするトレッド用ゴムシートの切断方法。
【請求項5】
前記トレッド用ゴムシートの切断面を、40〜90度に加熱することを特徴とする請求項4に記載のトレッド用ゴムシートの切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のトレッド用ゴムシートを所定の長さに切断するトレッド用ゴムシートの切断装置および前記切断装置を用いたトレッド用ゴムシートの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤの製造工程においては、帯状に形成されたトレッド用ゴムシートを所定の長さに切断し、切断されたトレッド用ゴムシートを成形ドラム上に巻き回して両端の切断面同士をジョイントすることにより、トレッド部を成形している(特許文献1、2)。
【0003】
このとき、従来は、ジョイントに先立って各切断面(ジョイント面とも言う)にジョイント糊を塗布し、その後、ジョイントを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−103654号公報
【特許文献2】特開2012−171274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このジョイント糊によるジョイントは、ジョイント糊の粘着力を適切に発揮させるために、ジョイント糊の塗布後、時間をおいて行う必要があり、時間経過による生産効率の低下や、ジョイントを行うまでに切断面に異物が付着することによるジョイント部の剥離が生じる恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、ジョイント糊を使用しなくても充分なジョイントを可能にして、生産効率の低下やトレッド部のジョイント部の剥離の発生を抑制することができるトレッド用ゴムシートの切断装置および前記切断装置を用いたトレッド用ゴムシートの切断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
請求項1に記載の発明は、
帯状に形成されたトレッド用ゴムシートを所定の長さに切断するトレッド用ゴムシートの切断装置であって、
超音波カッターを用いて、前記トレッド用ゴムシートを切断する切断手段と、
切断された前記トレッド用ゴムシートの切断面を加熱する加熱手段と
が設けられており、
前記加熱手段が前記切断手段に一体化して取り付けられている
ことを特徴とするトレッド用ゴムシートの切断装置である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
前記加熱手段が一対のヒーターであり、
さらに前記一対のヒーターのON/OFFを個別に切り替えることができる制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のトレッド用ゴムシートの切断装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、
切断された後、所定時間が経過した前記トレッド用ゴムシートが、次工程に供給されないように制御する制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトレッド用ゴムシートの切断装置である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のトレッド用ゴムシートの切断装置を用いて、前記トレッド用ゴムシートを所定の長さに切断するトレッド用ゴムシートの切断方法であって、
前記超音波カッターを用いて前記トレッド用ゴムシートを切断した後、前記トレッド用ゴムシートの切断面を加熱する
ことを特徴とするトレッド用ゴムシートの切断方法である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、
前記トレッド用ゴムシートの切断面を、40〜90度に加熱することを特徴とする請求項4に記載のトレッド用ゴムシートの切断方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ジョイント糊を使用しなくても充分なジョイントを可能にして、生産効率の低下やトレッド部のジョイント部の剥離の発生を抑制することができるトレッド用ゴムシートの切断装置および前記切断装置を用いたトレッド用ゴムシートの切断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るトレッド用ゴムシートの切断装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。
【0016】
図1は本実施の形態に係るトレッド用ゴムシートの切断装置を示す正面図である。なお、図示は省略するが、
図1のトレッド用ゴムシートの切断装置に供給されたトレッド用ゴムシートは、ストッパ2の間を紙面に対して垂直方向に搬送される。
【0017】
本実施の形態に係るトレッド用ゴムシートの切断装置の基本的な構成は、従来のトレッド用ゴムシートの切断装置と同様である。
【0018】
即ち、
図1に示すように、トレッド用ゴムシートの切断装置は、複数のフリーベア3を備えたフリーベアテーブル1と、搬送される帯状のトレッド用ゴムシートの幅方向の両端を保持する一対のストッパ2と、トレッド用ゴムシートを切断するカッターが取り付けられており、トレッド用ゴムシートの幅方向(紙面の左右方向)に沿って走行する切断手段5とを備えている。
【0019】
しかし、本実施の形態に係るトレッド用ゴムシートの切断装置は、切断手段5において帯状のトレッド用ゴムシートを切断するカッターとして超音波カッター4を用いている点、また、切断されたトレッド用ゴムシートの切断面を所定の温度に加熱する加熱手段としてのヒーター9が設けられている点において、従来のトレッド用ゴムシートの切断装置と異なる。
【0020】
本実施の形態では、超音波カッター4を挟んだ一対のヒーター9が切断手段5に一体化して取り付けられており、各ヒーター9のON、OFFを個別に切り替える制御手段(図示せず)が設けられている。そして、切断手段5が帯状のトレッド用ゴムシートの幅方向に沿って走行する際、超音波カッター4の後方を走行する方のヒーター9をONにすることにより、超音波カッター4により切断されたトレッド用ゴムシートの切断面が加熱される。
【0021】
また、切断手段5に取り付けられた超音波カッター4およびヒーター9は、それぞれ昇降可能であって、切断時や加熱時には降下し、待機時には上昇するように制御されている。
【0022】
なお、
図1においては、ヒーター9が超音波カッター4と一体化されて、切断手段5に取り付けられているが、別々に設けられていてもよい。
【0023】
上記した本実施の形態に係るトレッド用ゴムシートの切断装置を用いたトレッド用ゴムシートの切断は、以下のように行われる。
【0024】
先ず、紙面に対して垂直方向に搬送されて、フリーベアテーブル1上に載置されたトレッド用ゴムシートの両側端を一対のストッパ2により保持する。これにより、切断中のトレッド用ゴムシートが幅方向にずれることを抑制することができる。
【0025】
次に、超音波カッター4を下降させてトレッド用ゴムシートに接触させる。そして、切断手段5をトレッド用ゴムシートの幅方向の一方から他方(例えば、
図1中の左から右方向)に向かって走行させる。これにより、トレッド用ゴムシートが切断されるが、このとき、トレッド用ゴムシートは、前記したように、両側端がストッパ2により保持されているため、幅方向にずれることなく正確に切断される。
【0026】
そして、超音波カッター4を使用してトレッド用ゴムシートを切断しているため、切断後のトレッド用ゴムシートの切断面を従来のカッターで切断した場合よりも極めて平滑にすることができる。そして、平滑な切断面同士をジョイントすることにより、従来のようにジョイント糊を使用しなくても、充分な密着性を得ることができる。
【0027】
具体的な超音波カッターとしては、例えば、日本エマソン社製「DCX」などを挙げることができる。
【0028】
本実施の形態においては、さらに、超音波カッター4の下降に合わせて、超音波カッター4の後方のヒーター9を下降させて、超音波カッター4に追従するように走行させる。これにより、トレッド用ゴムシートの切断面が所定の温度に加熱される。
【0029】
トレッド用ゴムシートの切断面が所定の温度に加熱されることにより、超音波カッター4により平滑に切断された切断面の粘着性を向上させることができ、切断面の密着性をより向上させることができる。
【0030】
ヒーター9には、暖めたエアーをトレッド用ゴムシートの切断面に吹き付けるエアーヒーターを好ましく用いることができ、具体的なエアーヒーターとしては、例えば、INFLIDGE社製「DAC−8D SEN200V−1000W−AS]などを挙げることができる。
【0031】
以上のように、本実施の形態によれば、従来と異なり、ジョイント糊を使用しなくても、適切にトレッド用ゴムシートの切断面同士を突き合わせてジョイントすることが可能となる。このように、ジョイント糊を使用しないため、切断作業も成形ドラムへの供給の直前に行えばよく、生産効率の低下や切断面への異物の付着を充分に抑制することができる。この結果、成形されたトレッド部のジョイント部における剥離の発生を充分に抑制することができる。
【0032】
そして、ジョイント糊を使用せずにジョイントを行うことにより、ジョイント部分の界面が確認できないようになるため、空気入りタイヤの外観品質の向上に貢献することができると共に、過酷な使用状況下でのトレッド部のジョイント部における剥離の発生を充分に抑制することができる。
【0033】
なお、トレッド用ゴムシートの切断にあたって、トレッドジョイント部の重量バラツキを抑えると共に、接着面積を大きくすることにより接着力を上げるという観点から、超音波カッター4のカット角度は10〜35度が好ましく、10〜25度であることがより好ましい。
【0034】
そして、切断面の粘着性を適切に向上させ、且つ、加熱によるゴムの劣化を防止するという観点から、トレッド用ゴムシートの切断面は40〜90度に加熱することが好ましい。
【0035】
また、切断されたトレッド用ゴムシートは、そのまま放置しておくと、ジョイント糊を使用していない場合でも、切断面に異物が付着する恐れがあるため、切断後、所定時間が経過したトレッド用ゴムシートは、成形ドラムなどの次工程に供給されないように制御されていることが好ましい。経過時間としては、トレッド用ゴムシートの幅や厚みにより、適宜設定すればよいが、一般に、1〜2分程度とすることが好ましい。
【0036】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 フリーベアテーブル
2 ストッパ
3 フリーベア
4 超音波カッター
5 切断手段
9 ヒーター