(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光照射部は、前記第1光を前記表面に対して第1角度で照射し、前記第2光を前記表面に対して第1角度よりも小さい第2角度で照射することを特徴とする請求項1に記載の変位計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態の変位計測装置について説明する。
[第1実施形態]
・構成
図1は、第1実施形態の変位計装置の全体構成を説明するための図である。第1実施形態の変位計測装置は、外力によって生じる床(以下、「床スラブ」と記す)面101の面方向の変位である層間変位を計測する装置である。層間変位は複数の方向の成分を含むが、第1実施形態では、変位計測装置が
図1中に示した矢線dで示す方向(以下、「平面方向」と記す)の層間変位を計測する場合について説明する。
【0014】
図1に示した変位計測装置は、屈折部材104と、レーザ照射装置105と、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ103と、を備えている。屈折部材104は、変位を検出する矢線dで示す方向と交差する斜面からなる表面(
図2に示す表面104b)と、一の方向に平行な平面からなる裏面(
図2に示す裏面104a)とを有している。レーザ照射装置105は、屈折部材104の表面104bに向けて第1レーザ光p
rと第2レーザ光p
gとを照射する。CCDイメージセンサ103は、表面104bにおいて屈折し、裏面104aから出射した第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gを受光する受光面(
図2に示す受光面103a)を有し、受光面103aにおいて第1レーザ光prが受光される第1受光位置及び受光面103において第2レーザ光p
gが受光される第2受光位置を検出する。
【0015】
第1実施形態では、屈折部材104が相対的に変位が生じ得る天井面102の側に固定される。レーザ光照射装置105は、相対的に変位が生じ得る床スラブ面101の側に固定される。なお、第1実施形態は、レーザ照射装置105を床スラブ面101に設け、CCDイメージセンサ103を天井面に設ける構成に限定されるものではない。第1実施形態は、レーザ照射装置105を天井面102に設け、CCDイメージセンサ103を床スラブ面101に設けてもよい。さらに、レーザ照射装置105とCCDイメージセンサ103との位置関係は、両者を相対的に変位し得る位置に対向するように固定するのであれば、どのようなものであってもよい。
【0016】
上記した構成のうち、第1実施形態では、CCDイメージセンサ103を二次元のCCDイメージセンサとした。二次元のCCDイメージセンサでは、例えば、受光した光を電荷に変換する複数のフォトトランジスタと、電荷を転送する転送部とが平面上に配置されている。第1実施形態では、複数のフォトトランジスタの光を受光する面全体を、CCDイメージセンサ103の受光面103aと記す。
【0017】
ただし、第1実施形態の受光部はCCDイメージセンサに限定されるものでなく、光強度を測定できる素子であればどのような構成であってもよい。
レーザ照射装置105は、約700nmの波長を有するレーザ光を出力するレーザ光源と、約550nmの波長を有するレーザ光を出力するレーザ光源とを有する。約700nmの波長を有するレーザ光は赤色を有するレーザ光となり、約500nmの波長を有するレーザ光は緑色を有するレーザ光となる。
図1に示した第1レーザ光p
rは、赤色を有するレーザ光であり、第2レーザ光p
gは、緑色を有するレーザ光である。
【0018】
さらに、第1実施形態の変位計測装置は、第1受光位置と第2受光位置との間の距離を検出する距離検出部100を備えている。距離検出部100は、CCDイメージセンサ103から出力される第1受光位置と第2受光位置との距離から第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gが出射される裏面104a上の2点を検出し、検出された2点間の距離を出力する機能を有する小型のコンピュータである。第1実施形態では、汎用的なコンピュータに第1受光位置と第2受光位置との距離及び層間変位量を算出するためのソフトウェアをインストールし、距離検出部100として機能させた。
【0019】
図2は、
図1に示した屈折部材104を説明するための図である。屈折部材104は、第1レーザ光p
rと第2レーザ光p
gとを各々の波長に対応する屈折角で屈折させる。屈折部材104は、透明な光学ガラスでなる三角柱のプリズムであり、矢線dの方向に平行な裏面104aが受光面103aと重なるように配置されている。屈折部材104は、矢線dの方向と交差する斜面である表面104bを有している。
図2のように、x,y,zの方向を定義した場合、表面104bの傾斜は、y方向についてはz成分が変化し、x方向についてはz成分が一定の値を有するように表される。
【0020】
表面104bから屈折部材104に入射した第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gは、表面104bにおいて各々の波長に対応する屈折角で屈折する。そして、屈折角の相違により、裏面104aにおける第1レーザ光p
rの出射位置と第2レーザ光p
gの出射位置とに距離ΔL
tが生じる。第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gは、屈折部材104の裏面104aから出射し、受光面103aに受光される。CCDイメージセンサ103は、第1レーザ光p
rの出射位置と第2レーザ光p
gの出射位置とを、受光面103aにおける第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gの受光位置とする。第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gの受光位置は、CCDイメージセンサ103が、裏面104aを撮像することによって検出される。
【0021】
・動作
以下、第1実施形態の変位計測装置が層間変位を計測する動作について具体的に説明する。
図3は、外力によって
図2に示した平面方向に層間変位が生じた場合の変位計測装置の動作を説明するための図である。
図3では、層間変位により、
図1に示した床スラブ面101が
図2に示した天井面102に対して相対的にIに示す位置(位置I)からIIに示す位置(位置II)まで移動する。
図3では、このときに生じる層間変位の変位量を、図中にδとして記す。
【0022】
ここで、
図3では、位置Iにおいて第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gが屈折部材140に入射する点を点a、位置IIにおいて第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gが屈折部材140に入射する点を点a’とする。また、
図1では、点aを通り、裏面104aに垂直な直線と裏面104aとの交点を点b、点bを通り、裏面104aに垂直な直線と裏面104aとの交点を点b’とする。
【0023】
また、
図3では、点aから屈折部材140に入射した第1レーザ光p
rが出射する裏面104a上の点を点c、点aから屈折部材140に入射した第2レーザ光p
gが出射する裏面104a上の点を点dとする。さらに、
図3では、点a’から屈折部材140に入射した第1レーザ光p
rが出射する裏面104a上の点を点c’、点a’から屈折部材140に入射した第2レーザ光p
gが出射する裏面104a上の点を点d’とする。また、第1実施形態では、裏面104aと表面104bとがなす角度をθとする。さらに、
図3では、表面104bと、点b、c、d、b’、c’、d’を通る直線との交点を点oとする。
【0024】
点aから屈折部材104に入射した第1レーザ光p
rは、表面104bにおいて波長に対応する屈折率n
rで屈折し、点cから出射される。点aから屈折部材104に入射した第2レーザ光p
gは、表面104bにおいて波長に対応する屈折率n
gで屈折し、点cから距離ΔL
t1を隔てた点dから出射される。また、点a’から屈折部材104に入射した第1レーザ光p
rは、表面104bにおいて波長に対応する屈折率n
rで屈折し、点c’から出射される。点a’から屈折部材104に入射した第2レーザ光p
gは、表面104bにおいて波長に対応する屈折率n
gで屈折し、点c’から距離ΔL
t2を隔てた点d’から出射される。なお、「L」は、点bから図中の点oまでの距離である。
【0025】
図4(a)、(b)は、屈折部材104の裏面104a上に現れる点c、d、c’、d’を説明するための図である。
図4(a)は層間変位が起こる以前(レーザ照射装置105が位置Iにある)に現れる点c、dを説明するための図であり、
図4(b)は層間変位が起こった後(レーザ照射装置105が位置IIにある)に現れる点c’、d’を説明するための図である。
【0026】
図4(a)に示したように、層間変位前においては、第1レーザ光p
rによって点cに光強度のピークを持つ輝点が現れる。また、第2レーザ光p
gによって点dに光強度のピークを持つ輝点が現れる。そして、層間変位後においては、
図4(b)のように、第1レーザ光p
rによって点c’に光強度のピークを持つ輝点が現れる。また、第2レーザ光p
gによって点d’に光強度のピークを持つ輝点が現れる。
図1等に示したCCDイメージセンサ103は、屈折部材104の裏面104a上の輝点を撮像する。撮像によって第1レーザ光p
rと第2レーザ光p
gが受光面103において受光された位置が検出される。撮像された画像のデータは、距離検出部100に出力される。
【0027】
距離検出部100は、CCDイメージセンサ103によって撮像された輝点の中心から裏面104a上の点c、d間の距離及び点c’、d’間の距離を検出し、検出された距離を出力する。そして、検出された距離から
図3に示した変位量δを算出する。
ただし、第1実施形態は、距離検出部100が変位量δを算出する構成に限定されるものではなく、画像データから裏面104a上の点c、d間の距離及び点c’、d’間の距離を検出する機能のみを有するものであってもよい。そして、距離検出部100は、点c、d間の距離及び点c’、d’間の距離を他のコンピュータやリムーバルメモリ等に出力し、他のコンピュータによって変位量δを算出するものであってもよい。さらに、距離の出力は、紙に距離を印字して出力するものであってもよいし、図示しないディスプレイ画面に表示するものであってもよい。
【0028】
・変位量の算出
図5は、検出された点c、d間の距離及び点c’、d’間の距離から変位量δを算出する方法を説明するための図である。層間変位の前後において、第1レーザ光p
rと第2レーザ光p
gとは、等しい入射角θで屈折部材104の表面104bに入射する。屈折部材104に入射した第1レーザ光p
rは、表面104bにおいて屈折角θ
rで屈折する。また、第2レーザ光p
gは、表面104bにおいて屈折角θ
gで屈折する。なお、屈折角θ
r、θ
gは、レーザ光の波長に対応する屈折率よって決定する値である。ここで、第1レーザ光p
rの屈折率をn
r、第2レーザ光p
gの屈折率をn
gとすると、第1レーザ光prの屈折角θ
r、第2レーザ光pgの屈折角θ
gと、第1レーザ光p
rの屈折部材104に対する屈折率n
r、第2レーザ光p
gの屈折部材104に対する屈折率n
gとの間には、以下の式(1)、(2)の関係がある。なお、式(1)、(2)において、θは第1レーザ光p
r、第2レーザ光p
gの表面104bに対する入射角である。
【0029】
θ
r=n
r・θ …式(1)
θ
g=n
g・θ …式(2)
層間変位の前(変位前)において、点b、c間の距離l
r1と屈折角θ
rとの間には、以下の式(3)の関係がある。式(3)に示す関係から、式(3−i)のように、距離l
r1が求められる。
【0030】
tan(θ
r−θ)=l
r1/(L・tanθ) …式(3)
l
r1=Ltanθ・tan(θ
r−θ) …式(3−i)
また、変位前において、点b、d間の距離l
gと屈折角θ
gとの間には、以下の式(4)の関係がある。式(4)に示す関係から、式(4−i)のように、距離l
g1が求められる。
【0031】
tan(θ
g−θ)=l
g1/(L・tanθ) …式(4)
l
g1=L・tanθ・tan(θ
g−θ) …式(4−i)
なお、式(3−i)、(4−i)のいずれにおいても、「L」は屈折部材104の点bから点oまでの距離である。
距離l
r1と距離l
g1との差分をとることにより、式(5−i)のように、
図5に示したΔL
t1が求められる。ΔL
t1は、
図1に示した距離検出部100によって検出される点c、d間の距離である。
【0032】
ΔL
t1=lg
1−lr
1
=L・tanθ{tan(θ
g−θ)−tan(θ
r−θ)}…式(5−i)
また、変位後においても同様に、以下の式(3−ii)、式(4−ii)によって、点b’、c’間の距離l
r2と点b’、d’間の距離l
g2とが求められる。
l
r2=L・tanθ・tan(θ
r−θ) …式(3−ii)
l
g2=L・tanθ・tan(θ
g−θ) …式(4−ii)
距離l
r2と距離l
g2との差分をとることにより、式(5−ii)のように、
図5に示したΔL
t2が求められる。ΔL
t2は、
図1に示した距離検出部100によって検出される点c’、d’間の距離である。
【0033】
ΔL
t2=lg
2−lr
2
=(L−δ)tanθ{tan(θ
g−θ)−tan(θ
r−θ)}…式(5−ii)
ΔL
t1と、ΔL
t2と、
図5に示した変位量δと、の間には、式(6)に示す関係がある。
ΔL
t1−ΔL
t2=δ・tanθ{tan(θ
g−θ)−tan(θ
r−θ)}…式(6)
式(6)より、以下の式(7)のように、変位量δを求めることができる。
【0034】
δ=(ΔL
t1−ΔL
t2)/(tanθ{tan(θ
g−θ)−tan(θ
r−θ)})
…式(7)
上記した式(7)において、θ、θ
r、θ
gの値は既知である。また、第1実施形態では、式(7)に示したΔL
t1、ΔL
t2の値を距離検出部100から得ることができる。第1実施形態の変位計測装置は、距離検出部100によって検出されたΔL
t1、ΔL
t2の値を順次式(7)に代入することにより、変位量δを計測することができる。
【0035】
このような第1実施形態によれば、撮像画像から得られる距離を比較的単純な式(7)に順次代入することによって変位量δを算出することができるため、構造物に変位が加わっている間にも変位量δを動的に計測することができる。変位量δを動的に算出することができる点は、構造物に人工的に外力を加えて行う実験において有効である。即ち、実験において動的に構造物の変位を検出することができれば、実験者は、構造物に加わる変位をモニタしながら構造物に加える外力の程度を調整することができる。
【0036】
また、第1実施形態は、シミュレーションよりも計算にかかる負荷が小さい演算によって変位量δを算出することができる。このため、第1実施形態は、シミュレーションによって誤差を補正する構成よりも装置規模の小型化に有利である。
また、第1実施形態は、
図1、2に示した平面方向(矢線dの方向)に生じる変位の変位量だけを抽出して計測することができる。
【0037】
さらに、第1実施形態は、第1レーザ光の受光位置点と第2レーザ光の受光位置との距離(差分)を使って構造物の変位を検出している。このため、第1実施形態は、構造物に生じた変位を増幅して可視化し、変位量を検出し易くすることができる。さらに、第1レーザ光の受光位置と第2レーザ光の受光位置は、構造物の局所変形によって同様に変動する。このため、第1実施形態は、構造物の局所変形による誤差が少ない変位量を得ることができる。
【0038】
なお、本発明の第1実施形態は、以上説明した構成に限定されるものではない。例えば、上記した構成では、2つのレーザ光源を有するレーザ照射装置によって第1レーザ光と第2レーザ光とを照射した。しかし、第1実施形態のレーザ照射装置は、2つのレーザ光源を有する構成に限定されるものでなく、レーザ光の波長を比較的高速に交互に切替えることが可能な1つの光源を有するレーザ照射装置であってもよい。
【0039】
また、上記した第1実施形態では、第1レーザ光を赤色のレーザ光とし、第2レーザ光を緑色のレーザ光とした。しかし、第1実施形態は、このような構成に限定されるものではない。例えば、第1レーザ光と第2レーザ光は、いずれも撮像可能な波長であればどのような波長であってもよい。ただし、ΔL
t1及びΔL
t2の値は、第1レーザ光の波長と第2レーザ光の波長との差が大きいほど大きくなるために計測しやすくなる。
【0040】
また、第1レーザ光と第2レーザ光との波長の相違によって十分なΔL
t1及びΔL
t2の値が得られない場合、第2レーザ光の波長に対応する屈折率が大きい材料でなる屈折部材を採用することが考えられる。また、第1実施形態の屈折部材は、単一の材料でなるものに限定されるものではなく、互いに異なる材料でなる複数の部位を有するものであってもよい。
【0041】
図6は、材料が異なる複数の層を有する屈折部材114を説明するための図である。屈折部材114は、互いに絶対屈折率が異なる部材で成る層114a、114b、114cの3層構造を有している。層114a、114b、114cは、屈折部材の表面から裏面にかけて積層されている。そして、層114aは、第1レーザ光p
rに対して屈折率n
r1、を有し、かつ、第2レーザ光p
gに対して屈折率n
g1を有する。層114bは、第1レーザ光p
rに対して屈折率n
r2、を有し、かつ、第2レーザ光p
gに対して屈折率n
g2を有する。また、層114cは、第1レーザ光p
rに対して屈折率n
r3、を有し、かつ、第2レーザ光p
gに対して屈折率n
g3を有する。屈折部材114によれば、第1レーザ光及び第2レーザ光を3回屈折させ、屈折部材114の表面から裏面にかけて第1レーザ光及び第2レーザ光を大きく屈折させることができる。
【0042】
また、層114a、114b、114cに、第1レーザ光に対する屈折率と第2レーザ光に対する屈折率との相違が大きい材料を用いることにより、屈折部材114は、点c、d間及び点c’、d’間の距離を大きくとることできる。
また、上記した第1実施形態では、波長の異なる第1レーザ光と第2レーザ光とを使って点c、d間及び点c’、d’間に距離を生じさせている。しかし、第1実施形態は、このような構成に限定されるものではない。例えば、第1レーザ光と第2レーザ光とを同じ波長を有するレーザ光としてもよい。このような場合、レーザ光照射装置は、第1レーザ光を屈折部材の表面に対して予め定められた角度(第1角度)で照射し、第2レーザ光を表面に対して第1角度よりも小さい角度(第2角度)で照射する。このようにすれば、波長が同一の第1レーザ光と第2レーザ光とを屈折部材において異なる屈折角で屈折させることができる。このとき、式(1)から式(7)はそのままでは適用できないが、第1角度および第2角度をそれぞれθ1、θ2として式(1)から式(7)の該当部分を読み替えれば変位量を算定することができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の変位計測装置を説明する。第2実施形態の変位計測装置は、構造物の回転方向の変位を検出するものである。第2実施形態の説明において、第1実施形態で説明した構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
【0044】
図7(a)、(b)は、回転方向の変位を説明するための図である。
図7(a)は、変位が生じる前の床スラブ面101上に置かれたレーザ照射装置105を示している。
図7(b)は、外力が加わったことによって床スラブ面101に回転方向の変位が生じた状態を示している。
図7(a)、(b)中に示した軸sは、床スラブ面101に平行な軸を示し、軸tは、床スラブ面101に対して鉛直な軸を示している。
【0045】
第2実施形態では、軸sが軸s’まで傾き、軸tが軸t’まで傾いた場合、レーザ光照射装置105が床スラブ面101の変位に伴って回転方向に変位する。床スラブ面101及びレーザ光照射装置105の回転方向の変位は、図中に示した軸uを中心軸にして発生する。なお、
図7(a)、(b)では、変位の中心軸を便宜上紙面奥行方向の軸として示したが、中心軸は、紙面手前方向に向かう軸であってもよい。
【0046】
・構成
図8(a)、(b)は、第2実施形態の屈折部材804を説明するための図である。
図8(a)は、床スラブ面101に変位が生じていない状態でレーザ照射装置105から屈折部材804に向けて第1レーザ光p
r、p
gが照射されている状態を示している。
図8(b)は、床スラブ面101に回転方向の変位が生じ、レーザ照射装置105が軸uを中心にして回転角αだけ回転した状態で屈折部材804に第1レーザ光p
r、p
gを照射している状態を示している。
【0047】
図8(a)、(b)に示したように、屈折部材804は、平板の形状を有していて、第1レーザ光p
r、第2レーザ光p
gが照射される軸uと平行な平面である裏面804aと、裏面804aと平行な表面804bと、を有している。
図8(a)に示したように、変位が生じていない状態では、第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gは、表面804bに対して垂直に入射する。このとき、第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gは、表面804bにおいて屈折することなく屈折部材804内に進む。
【0048】
図8(b)に示したように、床スラブ面101が回転角αだけ回転すると、第1レーザ光p
r、第2レーザ光p
gは、回転角α傾いた状態で表面804bに対して照射される。このとき、第1レーザ光p
r、第2レーザ光p
gは、表面804bで屈折し、各々の波長に対応する屈折角で屈折する。波長に対応する屈折角の相違により、第1レーザ光p
rが裏面804a上から出射する位置と、第2レーザ光p
gが裏面804a上から出射する位置とが相違する。このため、第1レーザ光p
r、第2レーザ光p
gが出射する裏面804a上の位置には2つの輝点が生じる。
【0049】
第2実施形態においても、
図1に示したCCDイメージセンサ103は、屈折部材804の裏面804aから出射した第1レーザ光p
r、第2レーザ光p
gによって生じる2つの輝点を撮像する。撮像により、第1レーザ光p
r、第2レーザ光p
gが受光面103aにおいて受光された位置が検出される。CCDイメージセンサ103は、撮像した輝点の画像のデータを
図1に示した距離検出部100に出力する。距離検出部100は、CCDイメージセンサ103によって撮像された輝点の中心から点f、gを検出する。点f、g間の距離を
図8(b)中にΔL
t3と記す。
【0050】
・変位量の算出
図9は、検出された点f、g間の距離から回転角αを算出する方法を説明するための図である。回転方向の変位が生じている場合、第1レーザ光p
r、第2レーザ光p
gは、点eから屈折部材804の表面804bに入射する。そして、表面804bにおいて第1レーザ光p
rは屈折角θ
rで屈折し、第2レーザ光p
gは屈折角θ
gで屈折する。屈折した第1レーザ光p
rは裏面804aの点fから出射し、第2レーザ光p
gは裏面804aの点gから出射する。
【0051】
以上のことから、ΔL
t3と屈折角θ
r、θ
gとは、以下の式(8)に示す関係を有している。なお、式(8)において、tは屈折部材804の厚さを示している。
ΔL
t3=t(tanθ
g−tanθ
r) …式(8)
また、第1レーザ光p
rの屈折部材804における屈折率をn
r、第2レーザ光p
gの屈折部材804における屈折率をn
gとすると、屈折角と屈折率の関係は、以下のように表される。
【0052】
θ
r=n
r・α …式(9−i)
θ
g=n
g・α …式(9−ii)
式(8)と式(9−i)、(9−ii)において、ΔL
t3は計測によって得られる。また、屈折部材804の厚さt、屈折率n
r、n
gは既知の値である。以上のことから、第2実施形態では、ΔL
t3に対応する回転角αを予め計算しておき、距離検出部100の図示しないメモリに回転角計測データとして記憶させておくものとした。そして、第2実施形態では、距離検出部100が、検出したΔL
t3の値を回転角計測データと比較して回転角αを求めている。
【0053】
図10は、回転角計測データを例示した図である。
図10の縦軸はΔL
t3を示し、横軸は回転角αを示している。距離検出部100は、ΔL
t3を回転角計測データの縦軸に対照し、検出されたΔL
t3に対応する回転角αを検出する。そして、検出された回転角αを出力する。
以上説明した第2実施形態は、回転方向に生じる変位の変位量だけを抽出して計測することができる。
【0054】
[第3実施形態]
また、本発明の変位計測装置は、上記したように、平面方向の変位を計測する計測装置と回転方向の変位を計測する装置とを別々に構成するものに限らない。第3実施形態は、平面方向の変位と回転方向の変位の両方を計測する変位計測装置について説明する。
図11は、第3実施形態の変位計測装置を示した図である。
図11において、
図1、
図8に示した構成と同様の構成については同様の符号を付し、説明を略す。
【0055】
第3実施形態の変位計測装置は、屈折部材104、804と、屈折部材104、804と重ね合わされて固定されたCCDイメージセンサ103と、第1レーザ光p
r及び第2レーザ光p
gを照射するレーザ照射装置105と、レーザ照射装置105から照射された第1レーザ光p
rを分割して第3レーザ光p
r1、第4レーザ光p
r2を生成すると共に、レーザ照射装置105から照射された第2レーザ光p
gを分割して第5レーザ光p
g1及び第6レーザ光p
g2を生成し、第3レーザ光p
r1及び第5レーザ光p
g1を表面804bに向け、第4レーザ光p
r2及び第6レーザ光p
g2を表面104bに向けるハーフミラー111及びミラー112と、を備えている。
【0056】
ハーフミラー111は、第1レーザ光p
rを分割して第3レーザ光p
r1、第4レーザ光p
r2を生成し、第3レーザ光p
r1を透過すると共に第4レーザ光p
r2を反射する。また、ハーフミラー111は、第2レーザ光p
gを分割して第5レーザ光p
g1、第6レーザ光p
g2を生成し、第5レーザ光p
g1を透過すると共に第6レーザ光p
g2を反射する。透過された第3レーザ光p
r1と第5レーザ光p
g1とは反射部材804の表面804bに向かう。反射された第4レーザ光p
r2と第6レーザ光p
g2とは、ミラー112に向かい、ミラー112によって反射されて反射部材104の表面104bに向かう。
【0057】
第3実施形態の変位計測装置によれば、第1実施形態または第2実施形態に示した変位計測装置に他の屈折部材、ハーフミラー111及びミラー112を追加して平面方向の変位と回転方向の変位の両方を同時に計測することができる。
なお、第3実施形態の変位計測装置は、第3レーザ光p
r1、第5レーザ光p
g1を表面804bに向けて照射し、第4レーザ光p
r2、第6レーザ光p
g2を表面104bに向けて照射する構成に限定されるものではない。第3実施形態の変位計測装置は、第3レーザ光p
r1、第5レーザ光p
g1を表面104bに向けて照射し、第4レーザ光p
r2、第6レーザ光p
g2を表面804bに向けて照射するものであってもよい。
【0058】
さらに、第3実施形態は、CCDイメージセンサ103が屈折部材104、804の両方を撮像する構成に限定されるものではない。例えば、第3実施形態は、屈折部材104を撮像するCCDイメージセンサと屈折部材804を撮像するCCDイメージセンサとを別個に設けてもよい。また、CCDイメージセンサ103が屈折部材104、804の両方を撮像する場合、例えば、
図1に示した距離検出部100において、撮像された画像を一方の端部から走査し、最初に現れた赤色の輝点の中心と次に現れる緑色の輝点の中心との距離を検出し、次に現れる赤色の輝点の中心と次に現れる緑色の輝点の中心との距離を検出するようにしてもよい。