(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0013】
(インクジェット記録装置1の構成)
図1を参照して、インクジェット記録装置1について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る搬送装置300を備えたインクジェット記録装置1の概略構成を示す模式図である。インクジェット記録装置1は、装置筐体10と、装置筐体10の内部の下方に配置される給紙部20と、インクジェット記録方式の画像形成部30と、用紙排出部40とを備える。
【0014】
給紙部20は給紙カセット200を備える。給紙カセット200は、装置筐体10に着脱自在に装着される。給紙カセット200内には、複数の被記録媒体Pが重ねられた状態で収納されている。被記録媒体Pは、例えば、普通紙、再生紙、薄紙、又は厚紙のような紙である。
【0015】
画像形成部30は、搬送装置300と記録ヘッド390とを備える。搬送装置300は、第1用紙搬送部310と、記録ヘッド390に対向して配置される第2用紙搬送部350とを備える。第2用紙搬送部350は、第1用紙搬送部310と用紙排出部40との間に配置される。なお、画像形成部30は、乾燥装置(図示せず)を備えていてもよい。乾燥装置は、被記録媒体P上に吐出されたインク滴を乾燥させる。
【0016】
第1用紙搬送部310は略C字形の用紙搬送路311を有する。第1用紙搬送部310は、給紙カセット200の一端側の上方に配置されている給紙ローラー312と、用紙搬送路311の入口側に設けられる第1搬送ローラー対313と、用紙搬送路311の途中に設けられる第2搬送ローラー対314と、用紙搬送路311の出口側に設けられるレジストローラー対315と、ガイド板316とを備える。
【0017】
図1において、X軸は、被記録媒体Pの搬送方向Dに直交する方向に平行である。Y軸は、ガイド部材361上における被記録媒体Pの搬送方向Dに平行である。Z軸は、ガイド部材361に直交する方向に平行である。本実施形態では、Z軸は鉛直方向であり、X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交する。
【0018】
ガイド板316は給紙ローラー312と第1搬送ローラー対313との間に配置されている。給紙ローラー312は、給紙カセット200内の被記録媒体Pを1枚ずつ取り出す。ガイド板316は、給紙ローラー312が取り出した被記録媒体Pを第1搬送ローラー対313に案内する。
【0019】
第1搬送ローラー対313は、ガイド板316によって案内される被記録媒体Pを挟んで用紙搬送路311に送出する。具体的には次の通りである。第1搬送ローラー対313は、フィードローラー313a及びリタードローラー313bを有する。フィードローラー313aとリタードローラー313bとは互いに対向し、互いに圧接する。フィードローラー313aは回転し、被記録媒体Pを搬送方向Dに送出する。リタードローラー313bは、1枚の被記録媒体Pが送られた場合、フィードローラー313aに従動して回転する。一方、複数枚の被記録媒体Pが重なって送られた場合、リタードローラー313bは、被記録媒体Pを送出する方向の逆方向に回転して、又は停止して、フィードローラー313aに接触している被記録媒体Pから他の被記録媒体Pを分離する。その結果、1枚の被記録媒体Pがフィードローラー313aによって送り出される。
【0020】
第2搬送ローラー対314は、第1搬送ローラー対313が送出した被記録媒体Pを挟んでレジストローラー対315に向けて搬送する。レジストローラー対315は、レジストローラー対315に当接して停止した被記録媒体Pの斜行補正を行う。そして、レジストローラー対315は、印字タイミングと被記録媒体Pの搬送とを同期させるために被記録媒体Pを一時待機させた後、被記録媒体Pを印字タイミングに合わせて第2用紙搬送部350に送出する。
【0021】
第2用紙搬送部350は、速度検知ローラー351と、吸着ローラー352と、駆動ローラー353と、テンションローラー354と、一対のガイドローラー356と、無端状の搬送ベルト355と、吸引部360とを備える。搬送ベルト355は、速度検知ローラー351、駆動ローラー353、テンションローラー354、及び一対のガイドローラー356に張設されている。搬送ベルト355は、被記録媒体Pが載置される搬送面と、搬送面に対向する搬送裏面とを有する。駆動ローラー353等の各ローラーの回転軸はX軸に平行である。搬送ベルト355には複数の吸引孔(図示せず)が形成される。複数の吸引孔の各々は、搬送面から搬送裏面まで貫通する。
【0022】
速度検知ローラー351は、ガイド部材361よりも被記録媒体Pの搬送方向Dの上流に配置される。速度検知ローラー351は、パルス板(図示せず)を含む。速度検知ローラー351は、搬送ベルト355に接触して回転する。速度検知ローラー351と一体となって回転するパルス板の回転速度を測定することにより、搬送ベルト355の回転速度が検知される。速度検知ローラー351は、記録ヘッド390の下部における搬送ベルト355の蛇行補正の影響を抑制する。
【0023】
吸着ローラー352は、搬送ベルト355を介してガイド部材361のうち搬送方向Dの上流端部に配置される。吸着ローラー352は、被記録媒体Pを搬送ベルト355及びガイド部材361に押し付けつつ、被記録媒体Pを搬送方向Dに搬送する。吸着ローラー352は、吸引部360によって被記録媒体Pの全体が均等に吸引されるように、被記録媒体Pのカールを軽減する。その結果、被記録媒体Pの搬送ベルト355への密着性を高めることができる。
【0024】
被記録媒体Pが吸着ローラー352に進入するときの吸着ローラー352への衝突振動を緩和するため、吸着ローラー352の慣性モーメントは小さいほうが好ましく、吸着ローラー352は軽いことが好ましい。例えば、吸着ローラー352は、アルミニウム製の中空のパイプ又は複数のリブを用いた中空のパイプを用いて形成される。吸着ローラー352の表面がアルミニウムによって形成される場合、吸着ローラー352の表面の摩耗を抑制するためアルマイト処理を施すことが好ましい。ここで、アルマイト処理とは、アルミニウムを陽極として酸性の処理浴中で電気分解することにより、アルミニウムの表面を電気化学的に酸化させ、酸化アルミニウム皮膜を生成させることをいう。なお、アルマイト処理により、吸着ローラー352は、電気的に絶縁状態となる。ただし、吸着ローラー352に導電性が必要な場合は、吸着ローラー352の表面にはアルマイト処理が施されない。
【0025】
なお、レジストローラー対315による被記録媒体Pの搬送速度と搬送ベルト355による被記録媒体Pの搬送速度との差が発生する場合がある。しかし、吸着ローラー352が搬送ベルト355上の被記録媒体Pに押圧力を付与し、レジストローラー対315と吸着ローラー352との間で被記録媒体Pを撓ませることにより、搬送速度の差を解消することができる。
【0026】
駆動ローラー353は、速度検知ローラー351に対して被記録媒体Pの搬送方向Dに間隔をおいて配置されている。速度検知ローラー351と駆動ローラー353によってガイド部材361上の搬送ベルト355は平面に維持される。駆動ローラー353は、摩擦力によって搬送ベルト355と密着する。例えば、搬送ベルト355がポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリカーボネート(PC)のような樹脂から形成されている場合、駆動ローラー353の表面には、エチレンプロピレンジエン(EPDM)、ポリウレタン樹脂、又はニトリルゴム(NBR)のようなゴム材を巻くことが好ましい。特に、画像形成部30が水系インクを用いて被記録媒体Pに画像を形成する場合、駆動ローラー353に巻かれるゴム材の膨潤を抑制するため、エチレンプロピレンジエン(EPDM)を駆動ローラー353に巻くことが好ましい。
【0027】
搬送ベルト355がエチレンプロピレンジエン(EPDM)のようなゴム材を含む場合、駆動ローラー353の表面は金属によって形成されてもよい。駆動ローラー353の表面がアルミニウムによって形成される場合、駆動ローラー353の表面の摩耗を抑制するため駆動ローラー353の表面にアルマイト処理を施すことが好ましい。アルマイト処理によって駆動ローラー353は電気的に絶縁状態になる。ただし、駆動ローラー353に導電性が必要な場合は、駆動ローラー353の表面にはアルマイト処理が施されない。なお、駆動ローラー353と搬送ベルト355とは電気的に導通している場合、搬送ベルト355を電気的に接地させて、インクの飛翔精度の低下を抑制できる。この場合、搬送ベルト355を形成するゴム材に導電性を付与する。
【0028】
駆動ローラー353は、モーター(図示せず)によって回転駆動され、搬送ベルト355を反時計回りに回転させる。搬送ベルト355の速度にムラがある場合、搬送ベルト355に対して速度ムラ補正制御が実行されることがある。速度ムラ補正制御とは、搬送ベルト355の速度のムラを補正して搬送ベルト355の速度を一定にする制御のことである。速度ムラ補正制御を実行する場合、駆動ローラー353の慣性モーメントは小さい方が好ましく、駆動ローラー353は軽いことが好ましい。例えば、駆動ローラー353は、アルミニウム製の中空のパイプ又は複数のリブを用いた中空のパイプを用いて形成される。一方、速度ムラ補正制御を実行しない場合、慣性によるフライホイール効果によって駆動ローラー353の回転動作を安定させるため駆動ローラー353の重さを重くすることが好ましい。この場合、駆動ローラー353は、中実の金属を用いて形成される。
【0029】
テンションローラー354は、搬送ベルト355のガイド部材361に対する上流端に配置される。テンションローラー354は、搬送ベルト355が撓まないように搬送ベルト355にテンションを付与する。テンションローラー354の一方端部の位置を変化させることで搬送ベルト355の自動蛇行補正が実行される。
【0030】
搬送ベルト355は、搬送ベルト355に吸着された被記録媒体Pを搬送する。搬送ベルト355は、例えば、ポリアミドイミド(PAI)又はポリイミド(PI)で形成されることが好ましい。この場合、搬送ベルト355の厚みのムラが抑制される。
【0031】
一対のガイドローラー356は、吸引部360の下方に配置される。一対のガイドローラー356は固定的に配置されて、搬送ベルト355の内周面(搬送裏面)で囲まれた空間を維持する。一対のガイドローラー356のうち駆動ローラー353に近いガイドローラー356は、搬送ベルト355の駆動ローラー353への巻き掛け量を維持する。一対のガイドローラー356のうちテンションローラー354に近いガイドローラー356は、搬送ベルト355の蛇行補正を安定して行うため、搬送ベルト355のテンションローラー354への巻き掛け量を維持する。
【0032】
吸引部360は、搬送ベルト355を介して記録ヘッド390と対向するように搬送ベルト355の搬送裏面側に配置されている。吸引部360は、ガイド部材361と、空気流通室362と、単数又は複数の吸引装置363とを備える。
【0033】
空気流通室362は中空の箱形状を有し、空気流通室362の上部は開放されている。つまり、空気流通室362の上部には開口が形成される。ガイド部材361は、空気流通室362の上部開口を覆う(塞ぐ)。ガイド部材361は、搬送ベルト355を介して被記録媒体Pを支持する。
【0034】
吸引装置363は、空気流通室362に連通して配置され、空気流通室362の空気を吸引して空気流通室362に負圧を発生させる。結果として被記録媒体Pが空気流通室362の上部に搬送ベルト355及びガイド部材361を介して吸引される。ここで、負圧とは、基準圧よりも低い圧力のことである。本明細書では、基準圧は大気圧である。負圧を「P
N」、絶対圧を「P
A」、基準圧を「P
R」と表すと、負圧P
Nは(P
A−P
R)の絶対値である(P
N=|P
A−P
R|)。絶対圧は絶対真空を0としたときの圧力である。空気流通室362は減圧室として機能する。
【0035】
記録ヘッド390は、単数又は複数のインクジェットヘッド390k、単数又は複数のインクジェットヘッド390c、単数又は複数のインクジェットヘッド390m及び単数又は複数のインクジェットヘッド390yにより構成されている。インクジェットヘッド390k、390c、390m、及び390yの各々は、インクを吐出する。
【0036】
用紙排出部40は、搬送ガイド400と、排出ローラー対410と、排出トレイ420とを備える。搬送ガイド400は、第2用紙搬送部350よりも被記録媒体Pの搬送方向Dの下流に配置される。排出トレイ420は、装置筐体10に形成された排出口430から外部に突出するように装置筐体10に固定されている。
【0037】
搬送ガイド400は、搬送ベルト355から搬送される被記録媒体Pを排出ローラー対410に案内する。搬送ガイド400を通過した被記録媒体Pは、排出ローラー対410によって排出口430の方向に送出され、排出口430を介して排出トレイ420に排出される。
【0038】
(実施形態1)
[基本構成]
図1〜
図3を参照して、本発明の実施形態1に係る搬送装置300の基本構成を説明する。
図2は、吸引部360を示す側面図である。
図3は、空気流通室362の底部362aを示す平面図である。平面視における貫通孔365aと排気口362bとの位置関係を明確にするため、
図3では、ファン363a及びファン軸363bの記載を省略する。
【0039】
吸引部360は、搬送ベルト355を介して被記録媒体Pを吸引する。吸引部360のガイド部材361には、複数の溝364aが設けられる。複数の溝364aの各々は、長円状であり、被記録媒体Pの搬送方向Dに沿って延びる。溝364aの搬送方向Dに沿った長さは、54mmである。溝364aの搬送方向Dに直交する方向の長さは、6mmである。複数の溝364aは、搬送方向D及び搬送方向Dに直交する方向に沿って千鳥足状に配列される。複数の溝364aの各々には、貫通孔365aが設けられる。貫通孔365aの直径は、6mmである。貫通孔365aは、溝364aの一方端部、他方端部、又は中央部に配置される。例えば、各貫通孔365aは、搬送方向Dに直交する方向に沿って、千鳥足状に配置される。
【0040】
空気流通室362の底部362aには、排気口362bが形成される。排気口362bの直径は、50mmである。排気口362bを介して、吸引装置363は空気流通室362に連通する。底部362aは、第1領域A1と第2領域A2とを有する。第1領域A1は、貫通孔365aに対向する。第2領域A2は、第1領域A1に隣接する。排気口362bは第2領域A2に形成される。
【0041】
搬送ベルト355の搬送面上に被記録媒体Pが載置された状態で吸引装置363を駆動すると、空気流通室362内に負圧が発生する。吸引装置363は、ファン363a、ファン軸363b、及びファン排気口363cを含む。負圧は、排気口362b、ガイド部材361の複数の貫通孔365a及び複数の溝364a、並びに搬送ベルト355の複数の吸引孔を介して被記録媒体Pに作用する。吸引装置363によって吸引された空気は、ファン排気口363cから吸引部360の外部へ排出される。被記録媒体Pは、搬送ベルト355の回転に伴って搬送方向Dに搬送される。搬送ベルト355の厚みは、100μmである。搬送ベルト355に形成された吸引孔の直径は、2mmである。
【0042】
図3は、貫通孔365aの配置と、底部362aの第1領域A1、第2領域A2、及び排気口362bの配置との位置関係を示す。第1領域A1に隣接する第2領域A2に、排気口362bは位置する。このため、貫通孔365aと排気口362bとは、平面視において重ならない。すなわち、排気口362bは貫通孔365aの直下に位置しない。
【0043】
以上、
図1〜
図3を参照して説明したように、搬送装置300において、排気口362bが第2領域A2に形成されるため、貫通孔365aと排気口362bとは、対向して配置されない。これにより、記録ヘッド390がインクを異常吐出した場合に、貫通孔365aを介して空気流通室362内に流れ込むインクが排気口362bに直接流れ込まない。従って、インクによるファン363aの汚れが抑制される。その結果、吸引装置363の吸引力を長期間安定して得ることができる。
【0044】
なお、溝364aに設けられた貫通孔365aの位置は、排気口362bの位置及び排気口周縁362cの形状に応じて変更することができる。これにより、吸引装置363及び排気口362bの位置を変更することなく、ファン363aの汚れを抑制することが可能となる。
【0045】
[排気口362bの変形例]
図2及び
図4を参照して、実施形態1の排気口362bの変形例について説明する。
図4は、貫通孔365aと排気口362bとの位置関係を示す平面図である。当該位置関係を明確にするため、
図4では、ファン363a及びファン軸363bの記載を省略する。変形例は、
図3で示した排気口362bに対して、排気口362bの直径が小さい点で異なる。
【0046】
変形例におけるファン363aは小型サイズである。ファン363aを小型サイズにすることにより、排気口362bの直径を小さくすることができる。ファン363aの大きさは、貫通孔365aの各々の離隔距離に応じて決定されるため、貫通孔365aと排気口362bとが重ならない。従って、貫通孔365aの位置を変更することなく、ファン363aの汚れを抑制することが可能となる。
【0047】
(実施形態2)
[基本構成]
図5を参照して、本発明の実施形態2に係る搬送装置300の基本構成を説明する。
図5は、吸引部360を示す側面図である。実施形態2は、実施形態1に対して、空気流通室362が突出部362dを有する点で異なる。
【0048】
実施形態2に係る搬送装置300において、空気流通室362は、第2領域A2上に突出部362dを有する。突出部362dは、排気口362bの周縁362cに沿って突出する。具体的には、突出部362dは、例えば、リブ又は土手である。底部362aの水平面からの突出部362dの突出高は、1〜2mmである。但し、空気流通室362の深さDrに応じて、突出部362dの突出高を増減することができる。底部362aにおいて、突出部先端362eが第2領域A2の水平面よりも高くなる。従って、異常吐出したインクが空気流通室362に流れ落ちた場合であっても、突出部362dはインクを堰き止めることができる。
【0049】
[突出部362dの変形例]
図6及び
図7を参照して、実施形態2の突出部362dの変形例について説明する。
図6(a)は、突出部362dを示す側面図である。
図6(b)は、突出部362dを示す平面図である。平面視における突出部先端362eと排気口362bとの位置関係を明確にするため、
図6(b)では、ファン363a及びファン軸363bの記載を省略する。
図7(a)〜(c)は、突出部362dを示す側面図である。変形例は、
図5で示した突出部362dに対して、突出部362dが直立形状でない点で異なる。
【0050】
図6(a)及び(b)に示すように、突出部先端362eが形成する領域の面積S1は、排気口362bの周縁362cが形成する領域の面積S2よりも大きい。突出部362dは、Z軸方向に沿った断面形状において斜めに突出する。Z軸方向から平面視する場合に、突出部先端362eは排気口362bの外側に位置する。
【0051】
以上、
図6(a)及び(b)を参照して説明したように、異常吐出したインクは、突出部362dに到達すると、突出部362dの形状に応じて排気口362bの外側に返される。従って、インクが排気口362bに流れ込むことをさらに抑制することができる。
【0052】
なお、突出部362dが斜めに突出する場合、Z軸方向からの平面視において、突出部先端362eが形成する領域は、第1領域A1と重ならないことが好ましい。これにより、異常吐出によって貫通孔365aから流れ落ちるインクが、突出部362d上に直接落下することを回避することができる。
【0053】
また、
図7(a)に示すように、突出部362dは、Z軸方向に沿った断面形状において、逆L字型であってもよい。同様に、
図7(b)に示すように、突出部362dは円弧形状を含んでいてもよい。突出部362dを上記形状とすると、突出部362dは水平面を有する。従って、突出部362dが排気口362bに向かって傾斜する部分が少ないため、異常吐出したインクが突出部362d上に直接落下した場合であっても、インクが排気口362bに流れ込む量を抑えることができる。その結果、Z軸方向からの平面視において、突出部先端362eが形成する領域から、排気口周縁362cが形成する領域を除いた部分が、第1領域A1に重なる配置が可能となる。
【0054】
また、
図7(c)に示すように、突出部362dは、Z軸方向に沿った断面形状において、鉛直上向きに突出する部分と、斜めに突出する部分とを組み合わせる形状であってもよい。Z軸方向に沿った断面形状において、斜めに突出する部分の長さは、
図6(a)によって示した突出部362dの長さより短くてもよい。これにより、Z軸方向からの平面視において、突出部先端362eが形成する領域を小さくすることができる。従って、異常吐出によって貫通孔365aから流れ落ちるインクが、突出部362d上に直接落下することを抑制することができる。
【0055】
(実施形態3)
[基本構成]
図8を参照して、本発明の実施形態3に係る搬送装置300の基本構成を説明する。
図8は、吸引部360を示す側面図である。実施形態3は、実施形態1及び実施形態2に対して、空気流通室362が連絡部362fを有する点で異なる。
【0056】
実施形態3では、空気流通室362は、連絡部362fを有する。連絡部362fは、排気口362bを介して底部362aに連通する。連絡部362fの下端は、吸引装置363に連通する。具体的には、連絡部362fは、例えば、ダクトである。連絡部362fは、Z軸方向に沿って平行な直筒形状である。連絡部362fのY軸方向に沿った断面形状は、例えば、円、楕円、矩形、又は多角形である。連絡部362fは、空気流通室362側の開口端と、吸引装置363側の開口端362gとを含む。連絡部362fの空気流通室側の開口端は、排気口周縁362cに設けられる。吸引装置側の開口端362gは、吸引装置363に設けられる。
【0057】
負圧は、吸引装置側の開口端362g、空気流通室側の開口端(排気口362b)、複数の貫通孔365a、複数の溝364a、及び搬送ベルト355の複数の吸引孔を介して被記録媒体Pに作用する。吸引装置363は、
図1に示すように第2用紙搬送部350の内部に配置されるが、設計に応じて、第2用紙搬送部350の外部に配置されてもよい。
【0058】
図8を参照して説明したように、空気流通室362は連絡部362fを有する。これにより、Z軸方向に沿った連絡部362fの長さに応じて、排気口362bとファン363aとの間に距離が生じる。このため、異常吐出したインクが空気流通室362に流れ落ちた場合であっても、インクがファン363aに到達しにくい。
【0059】
なお、
図8に示すように、連絡部362fは底部362aに鉛直方向に沿って設けられるが、連絡部362fは鉛直方向に対して斜めに傾設されてもよい。Z軸方向から平面視する場合、空気流通室側の開口端(排気口362b)により形成される領域と、吸引装置側の開口端362gにより形成される領域とが重ならないことが好ましい。従って、異常吐出したインクは、斜めに設けられた連絡部362fの内壁に付着するため、インクはファン363aに到達しにくい。
【0060】
また、
図8に示すように、連絡部362fの流路は直線であるが、階段状であってもよい。流路を階段状とすることにより、異常吐出したインクは、連絡部362fの内壁に付着するため、ファン363aに到達しにくい。
【0061】
以上、図面(
図1〜
図8)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(4))。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
(1)
図1、
図2、及び
図5〜
図8で示した吸引装置363はファンであるが、真空ポンプであってもよい。
【0063】
(2)
図2及び
図3を参照して説明したように、ガイド部材361には、溝364aに連通して貫通孔365aが形成される。但し、ガイド部材361には、溝364aを設けずに貫通孔365aを設けてもよい。
【0064】
(3)
図2〜
図8を参照して説明した排気口周縁362cの形状は円であるが、円以外(例えば、楕円、矩形、又は多角形)であってもよい。第2領域A2の位置及び形状に応じて、排気口周縁362cの形状を変更することができる。これにより、吸引装置363及び貫通孔365aの位置を変更することなく、インクによるファン363aの汚れを容易に抑制できる。
【0065】
(4)
図3〜4で示したように、1つの溝364aには1つの貫通孔365aが形成されているが、複数の貫通孔365aが形成されてもよい。