(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1が開示するような紫外線を照射する構成では、その光源付近に可視光を遮断するためのフィルタを設ける必要がある。そのため、装置コストが増大するという問題がある。また、蛍光色と置換される近似色も予め登録された特定の色であるため、置換された近似色が、ユーザが受け入れ可能な色でない場合も発生し得る。
【0009】
また、特許文献2が開示する技術では、特許文献1のようなフィルタを設ける必要がない。しかしながら、特許文献2が開示する技術においても、検出された蛍光色は、予め対応づけられた特定の非蛍光色に置換されるため、置換された近似色が、ユーザが受け入れ可能な色でない場合も発生し得る。
【0010】
さらに、特許文献1、2が開示する技術では、検出された蛍光色は全て色再現範囲内の色に置換される。そのため、例えば、原稿画像上では蛍光色が付与されているが、蛍光色として再現したくない領域も色再現範囲内の色として再現されてしまう。
【0011】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、画像データに含まれる蛍光色をユーザの意図したとおりに再現することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は以下の技術的手段を採用している。まず、本発明は、画像データに含まれる蛍光色を検知し、検知された蛍光色を対応づけられた色で置換する画像処理装置を前提とする。そして、本発明に係る画像処理装置は、色範囲保持部、再現色保持部、画素抽出部、表示制御部、再現色選択受付部及び蛍光色再現部を備える。色範囲保持部は、検知対象の蛍光色の色範囲を保持する。再現色保持部は、
前記色範囲と対応づけられた、当該色範囲に属する色の再現に使用される複数の再現色候補の色情報を保持する。画素抽出部は、
前記画像データから、
前記色範囲保持部に保持された色範囲に基づいて蛍光色を含む画素を抽出する。表示制御部は、
前記画素抽出部により抽出された画素に含まれる蛍光色に対応する複数の再現色候補の色情報を
前記再現色保持部から読み出して、読み出した各色情報に対応する色を表示部に表示する。再現色選択受付部は、
前記表示部に表示された複数の色の中から、ユーザによる再現色の選択を受け付ける。蛍光色再現部は、
前記画素抽出部が抽出した画素の色情報を
前記再現色選択受付部が受け付けた再現色に置換する。
さらに、前記画像データの蛍光色領域が文字領域を包含していない場合、前記画素抽出部は、当該蛍光色領域の幅及び高さを増大させ、当該文字領域及び蛍光色領域を完全に包含する矩形領域を、再現色を付与する領域として抽出する。
【0013】
この画像処理装置によれば、予め指定された色範囲に属する蛍光色を含む画素に対して複数の再現色候補が提示される。そして、ユーザは、提示された再現色から自己の好みに応じた色を選択することができる。したがって、ユーザが受け入れられない再現色よって蛍光色が置換されることを防止することができる。
【0014】
この画像処理装置において、色範囲保持部は、色空間において隣接する複数の色範囲を保持する構成を採用することができる。この構成において、画像処理装置は、検出レベル変更部をさらに備える。検出レベル変更部は、色範囲保持部に保持されている複数の色範囲の中から、画素抽出部による画素抽出に使用する色範囲を選択することで、検出対象の蛍光色の色範囲を変更する。この構成では、画像データに含まれる蛍光色の検出レベルを調整することができる。したがって、ユーザは、画像データに含まれる一部の蛍光色を再現することや、明度や彩度がより高い蛍光色を用紙上に再現することが可能になる。
【0015】
以上の画像処理装置は、有彩色検知部、登録色選択受付部及び登録部をさらに備えることができる。有彩色検知部は画像データに含まれる有彩色を検知する。登録色選択受付部は、有彩色検知部により検知された1又は複数の有彩色から、ユーザによる有彩色の選択を受け付ける。登録部は、登録色選択受付部が受け付けた有彩色の色情報に基づいて、当該色情報を含む色範囲を色範囲保持部に新たに登録する。この構成によれば、ユーザは、所望の蛍光色が検出されない場合、画像データに基づいて新たな蛍光色(色範囲)を登録することができる。
【0016】
また、上述の画像処理装置において、画素抽出部は、蛍光色を含む画素とともに、画像データにおける当該蛍光色を含む画素が分布する領域に存在する文字部分の分布情報に基づいて決定される画素を抽出する構成を採用することもできる。この構成では、例えば、画素抽出部が抽出する画素の領域、すなわち、再現色に置換される画素の領域を、文字部分の幅や高さに応じて変更することが可能になる。
【0017】
以上の画像処理装置において、再現色選択受付部が受け付けた再現色は、当該再現色に置換される蛍光色の色範囲に対応づけられたデフォルトの再現色として設定する構成を採用することもできる。
【0018】
一方、他の観点では、本発明は、画像データに含まれる蛍光色を検知し、検知された蛍光色を対応づけられた色で置換する他の画像処理装置を提供することもできる。すなわち、本発明に係る他の画像処理装置は、色範囲保持部、再現色保持部、画素抽出部、検出レベル変更部及び蛍光色再現部を備える。色範囲保持部は、色空間において隣接する複数の色範囲として検知対象の蛍光色の色範囲を保持する。再現色保持部は、
前記色範囲と対応づけられた、当該色範囲に属する色の再現に使用される再現色の色情報を保持する。画素抽出部は、
前記画像データから、色範囲保持部に保持された色範囲に基づいて蛍光色を含む画素を抽出する
とともに、前記画像データにおける当該蛍光色を含む画素が分布する領域に存在する文字部分の分布情報に基づいて決定される画素を抽出する。検出レベル変更部は、
前記色範囲保持部に保持されている
前記複数の色範囲の中から、
前記画素抽出部による画素抽出に使用する色範囲を選択することで、検出対象の蛍光色の色範囲を変更する。蛍光色再現部は、
前記画素抽出部が抽出した画素の色情報を
前記再現色保持部に保持された再現色に置換する。
さらに、前記画像データの蛍光色領域が文字領域を包含していない場合、前記画素抽出部は、当該蛍光色領域の幅及び高さを増大させ、当該文字領域及び蛍光色領域を完全に包含する矩形領域を、再現色を付与する領域として抽出する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像データに含まれる蛍光色をユーザの意図したとおりに再現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。以下では、デジタル複合機として本発明を具体化する。
【0022】
図1は本実施形態におけるデジタル複合機の全体構成の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、複合機100は、画像読取部120及び画像形成部140を含む本体101と、本体101の上方に取り付けられたプラテンカバー102とを備える。複合機100の前面には、ユーザが複合機100に複写開始やその他の指示を与えたり、複合機100の状態や設定を確認したりすることができる操作パネル200が設けられている。
【0023】
本体101の上部には、画像読取部120が設けられている。画像読取部120は、ラインイメージセンサ125を備える走査光学系121により原稿の画像を読み取り、その画像のデジタルデータ(画像データ)を生成する。ラインイメージセンサ125は、受光面に入射した光像から、例えば、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色に対応する原稿の画像データを生成する。生成された画像データは、画像形成部140において用紙に印刷することができる。また、ネットワークアダプタ161によりネットワーク162を通じて他の機器へ送信することもできる。
【0024】
画像形成部140は、画像読取部120が生成した画像データや、ネットワーク162に接続された他の機器(図示せず)から受信した画像データを用紙に印刷する。画像形成部140は、手差しトレイ151、給紙カセット152、153、154等から、トナー像を転写する転写部155へ用紙を給紙する。転写部155においてトナー像が転写された用紙は排紙トレイ149へ排紙される。
【0025】
図2は複合機が備える操作パネルの外観の一例を示す図である。ユーザは、操作パネル200を用いて、複合機100に複写開始やその他の指示を与えたり、複合機100の状態や設定を確認したりすることができる。操作パネル200には、タッチパネル付きディスプレイ201や操作キー203が配置されている。ディスプレイ201は、操作ボタンやメッセージ等を表示する液晶ディスプレイ等からなる表示面と、当該表示面上の押圧位置を検出するセンサとを備える。押圧位置の検知方法は特に限定されない。抵抗膜方式、静電容量方式、表面弾性波方式、電磁波方式等、任意の方式を採用することができる。ユーザは、自身の指等を使用して、ディスプレイ201を通じて入力を行うことができる。
【0026】
図3は、複合機における制御系のハードウェア構成図である。本実施形態の複合機100は、CPU(Central Processing Unit)301、RAM(Random Access Memory)302、ROM(Read Only Memory)303、HDD(Hard Disk Drive)304及び画像読取部120、画像形成部140における各駆動部に対応するドライバ305が内部バス306を介して接続されている。ROM303やHDD304等はプログラムを格納しており、CPU301はその制御プログラムの指令にしたがって複合機100を制御する。例えば、CPU301はRAM302を作業領域として利用し、ドライバ305とデータや命令を授受することにより上記各駆動部の動作を制御する。また、HDD304は、画像読取部120により得られた画像データや、他の機器からネットワークを通じて受信した画像データの蓄積にも用いられる。
【0027】
内部バス306には、操作パネル200や各種のセンサ307も接続されている。操作パネル200は、ユーザの操作を受け付け、その操作に基づく信号をCPU301に供給する。また、ディスプレイ201は、CPU301からの制御信号にしたがって操作画面を表示する。また、センサ307は、プラテンカバー102の開閉検知センサや原稿台上の原稿検知センサ、定着器の温度センサ、搬送される用紙又は原稿の検知センサなど各種のセンサを含む。
【0028】
CPU301は、例えばROM303に格納されたプログラムを実行することで、以下の各手段(機能ブロック)を実現するとともに、これらセンサからの信号に応じて各手段の動作を制御する。
【0029】
図4は、本実施形態の複合機の機能ブロック図である。
図4に示すように、本実施形態の複合機100は、色範囲保持部401、再現色保持部402、画素抽出部403、表示制御部404、再現色選択受付部405、蛍光色再現部406、画像保持部411及び画像記憶部412を備える。
【0030】
画像保持部411は、蛍光色検知対象の画像データを一時的に保持する。画像保持部411に保持される画像データは、例えば、画像記憶部412から取得される。画像記憶部412は、上述のHDD304に確保された記憶領域であり、画像読取部120から入力された画像データやネットワーク161等を介して外部装置から入力された画像データが格納される。なお、画像読取部120から入力された画像データやネットワーク161等を介して外部装置から入力された画像データが画像保持部411に直接格納される構成であってもよい。
【0031】
色範囲保持部401は、検知対象の蛍光色の色範囲を保持する。当該色範囲は、任意の表色系を使用して定めることができる。例えば、RGB表色系の他、XYZ表色系、L
*a
*b
*表色系、L
*u
*v
*表色系等を使用することができる。色範囲は、任意の表色系で表現される色空間において一定の領域を占める色として設定することができる。例えば、特定の色を示す色情報と予め指定された色差により色範囲を指定することができる。なお、色差には、表色系に応じて、RGBデータ差、ΔE
*ab、ΔE00等を使用することができる。本実施形態では、画像データは、sRGB(standard RGB)等の絶対色空間を構成する色成分で表現された色情報を有しており、必要に応じて各表色系での表現に容易に変換可能である。画像データが、機器依存を有するRGB形式で表現された色情報を有している場合は、複合機100が、当該色情報を、絶対色空間で表現された色情報に変換する。
【0032】
色範囲保持部401に保持される色範囲は、色空間において重なりを有していなければよく、その数等は特に制限されない。例えば、色範囲保持部401には、異なる色相の複数の色範囲を登録することができる。また、色範囲保持部401には、同一の色相の複数の色範囲を登録することもできる。なお、後述のように、本実施形態では、色範囲保持部401は、蛍光色を検知する際に使用する色範囲のリストを格納している。当該リストに含まれる色範囲が検知対象の蛍光色になる。
【0033】
再現色保持部402は、色範囲保持部401に保持された色範囲と対応づけられた複数の再現色候補の色情報を保持する。再現色候補は、複合機100において印刷する際、あるいは、他の画像形成装置において印刷する印刷用のデータを作成する際に、色範囲保持部401に保持された色範囲に属する色の再現に使用される。本実施形態では、色範囲保持部401に保持された1つの色範囲に対して複数の再現色候補が対応づけられている。ユーザは、その色範囲に対応づけられた複数の再現色候補の中から所望の色を再現色として選択することができる。なお、再現色は、画像形成部140において用紙上に形成可能(印刷可能)な色範囲に属する色であればよい。例えば、再現色として、検知対象蛍光色の色範囲と同一の色相の色を採用することができる。また、再現色として、検知対象蛍光色の色範囲と異なる色相の色を採用することもできる。なお、再現色は、例えば、ユーザが、ディスプレイ201に表示させたカラーパレット等を使用して、色範囲と対応づけて予め登録することができる。
【0034】
画素抽出部403は、画像データから、色範囲保持部401に保持された色範囲に基づいて蛍光色を含む画素を抽出する。本実施形態では、画素抽出部403は、画像保持部411に格納された画像データから、色範囲保持部401に保持された色範囲に属する画素を抽出する。
【0035】
表示制御部404は、画素抽出部403により抽出された画素に含まれる蛍光色に対応する複数の再現色候補の色情報を再現色保持部402から読み出し、読み出した各色情報に対応する色を表示部に表示する。本実施形態では、ディスプレイ201が表示部として機能する。上述のように、本実施形態では、1つの色範囲に対して複数の再現色候補が設定されている。特に限定されないが、表示制御部404は、これらの複数の再現色を同時にディスプレイ201に表示する。
【0036】
再現色選択受付部405は、表示部であるディスプレイ201に表示された複数の色の中から、ユーザによる再現色の選択を受け付ける。当該選択は、例えば、操作パネル200を通じて受け付けることができる。本実施形態では、再現色選択受付部405は、タッチパネル付のディスプレイ201を通じてユーザによる再現色の選択を受け付ける。
【0037】
蛍光色再現部406は、画素抽出部404が抽出した画素の色情報を再現色選択受付部405が受け付けた再現色に置換する。当該置換は、画像保持部411に保持された画像データに対して実施される。当該置換が実施された画像データは、画像形成部140において印刷することができる。また、他の画像形成装置において印刷する印刷用の画像データとして画像記憶部412に格納することができる。あるいは、ネットワーク161等を介して外部装置へ送信することも可能である。
【0038】
また、複合機100は、検出レベル変更部407をさらに備える。以下で詳述するように、色範囲保持部401は、検出レベル変更部407による蛍光色検知レベルの変更を実現するために、色空間において隣接する複数の色範囲を保持している。検出レベル変更部407は、色範囲保持部401に保持されている複数の色範囲の中から、画素抽出部403による画素抽出に使用する色範囲を選択することで、検出対象の蛍光色の色範囲を変更する。特に限定されないが、本実施形態では、色範囲保持部401に、画素抽出部403が画素を抽出する際に使用する色範囲のリストが格納されている。検出レベル変更部407は当該リストに含まれる色範囲を変更することで、画素抽出部403による画素抽出に使用する色範囲を選択する。
【0039】
例えば、色範囲保持部401は、黄色の蛍光色に対応する色範囲Xと、色空間において当該色範囲に隣接するより薄い黄色の蛍光色の色範囲Yと、より濃い黄色の蛍光色の色範囲Zとを保持しているとする。ユーザによる検出レベル変更が指示されていない場合、上述の色範囲リストには、例えば、色範囲X及び色範囲Zが含まれている。この場合、色範囲Yに属する色の画素は、画素抽出部403により抽出されない。ユーザがより薄い蛍光色の抽出を希望する場合、ユーザは、操作パネル200を通じて、検出レベル変更部407に色範囲Yの追加を指示する。このとき、検出レベル変更部407は上述の色範囲リストに色範囲Yを追加する。これにより、画素抽出部403は色範囲Yに属する色の画素も抽出することになる。
【0040】
一方、検出レベル変更が指示されていない状態において、ユーザが濃い蛍光色の抽出のみを希望する場合、ユーザは、操作パネル200を通じて、検出レベル変更部407に色範囲Xの削除を指示する。このとき、検出レベル変更部407は上述の色範囲リストから色範囲Xを削除する。これにより、画素抽出部403は色範囲Zに属する色の画素のみを抽出し、色範囲Xに属する色の画素は抽出しなくなる。
【0041】
図5は、複合機100が実施する再現色選択手順の一例を示すフロー図である。当該手順は、例えば、ユーザが操作パネル200を通じて蛍光色モードの実行指示を入力したことをトリガとして開始する。蛍光色モードは、通常の画像形成処理では極めて薄い色あるいは白色として印刷物上に再現されてしまう蛍光色を、より適切に印刷物上に再現するための画像形成処理を実行するモードである。蛍光色モードの実行が指示された複合機100は、色範囲保持部401に保持された色範囲に基づいて画像データに含まれる蛍光色を検知する。その結果、色範囲保持部401に保持された色範囲に属する色を積極的に検知しない通常の画像形成処理に比べてより確実に蛍光色を検知することができる。
【0042】
手順が開始すると、複合機100(例えば、画像保持部411)は、画像データ指定を要求する画面をディスプレイ201に表示し、ユーザによる画像データの指定が完了するまで待機する(ステップS501No)。ユーザは、蛍光色検知対象となる画像データを指定する。指定方法は、特に限定されない。例えば、画像記憶部412に格納されている画像データを蛍光色検知対象の画像データに指定する場合は、画像記憶部412に格納されている画像データの一覧をディスプレイ201に表示し、当該一覧から読み出す画像データを選択すればよい。選択された画像データは、画像記憶部412から読み出されて画像保持部411に保持される。
【0043】
また、蛍光色検知対象の画像データは画像読取部120で読み取ることもできる。この場合、蛍光色検知対象の原稿を複合機100にセットし、読取開始を複合機100に指示する。画像読取部120により読み取られた画像データは画像保持部411に保持される。なお、画像保持部411に保持される画像データは複数頁であってもよいが、ここでは1頁である例に基づいて説明する。
【0044】
画像データの指定が完了すると、画素抽出部403は、画像保持部411に保持された画像データから、色範囲保持部401に保持された色範囲に基づいて蛍光色を含む画素を抽出する(ステップS501Yes、S502)。画素抽出部403は、その抽出結果を表示制御部404に通知する。当該通知を受けた表示制御部404は、画素抽出部403により抽出された画素に含まれる蛍光色に対応する複数の再現色候補の色情報を再現色保持部402から読み出して、読み出した各色情報に対応する色をディスプレイ201に表示する(ステップS503)。
【0045】
また、表示制御部404は、再現色候補を表示した旨を再現色選択受付部405に通知する。当該通知を受けた再現色選択受付部405は、ユーザにより再現実行指示が入力されるまで、再現色の選択(デフォルトからの再現色変更)を受け付ける(ステップS504、S505No)。
【0046】
図6は、このときディスプレイ201に表示される、再現色選択画面の一例を示す図である。この例では、再現色選択画面601は、画像データ上で画素抽出部403が検出した蛍光色を表示するための検出結果表示領域602、再現色候補を表示するとともに、再現色の選択に使用される再現色選択領域603を備える。特に限定されないが、本実施形態では、再現色選択領域603に、再現色候補の色が付された複数の「再現色選択」ボタンが表示されている。また、再現色選択画面601は、再現色の選択を決定するために使用される「決定」ボタン605、選択を中止して画像データの指定に戻るために使用される「戻る」ボタン606及び検出レベル変更部407による検出レベルの変更を実行するために使用される「検出レベル調整」ボタン604を備える。加えて、再現色選択画面601は、後述する領域自動調整を実行するか否かを選択するチェックボックス607を備える。
【0047】
図6では、画素抽出部403が異なる色相に属する5色の蛍光色(例えば、黄色、燈色、紫色、青色、桃色の5色)を検出し、検出された各蛍光色について、それぞれ5色の再現色候補が再現色選択領域603に表示された例を示している。
図6に示すように、検出結果表示領域602には、画像データのプレビュー画像が表示される。ここでは、互いに異なる色範囲に属する蛍光色621、622、623、624、625、626が画像データに含まれている。
図6の例では、蛍光色を網掛けにより示している。
【0048】
この例では、画素抽出部403は、蛍光色621〜625を蛍光色として抽出している。画素抽出部403により抽出された蛍光色には、領域名が付与される。特に限定されないが、ここでは、領域名としてアルファベットが付与される。
図6では、蛍光色621の領域が領域A、蛍光色622の領域が領域B、蛍光色623の領域が領域C、蛍光色624の領域が領域D、蛍光色625の領域が領域Eになっている。なお、蛍光色626は、画像データ中には記録されているが、画素抽出部403により抽出されなかった(検知対象の色範囲外であった)蛍光色である。
【0049】
再現色選択領域603には、画素抽出部403が検出した特定の蛍光色に対応づけられた再現色候補の5色が横方向に再現色候補群631、632、633、634、635として表示されている。また、この例では、蛍光色が5色検出されたため、各蛍光色に対応する再現候補色群631〜635が縦方向に5つ(領域A、領域B、領域C、領域D、領域Eの順)表示されている。ここでは、領域Aが黄色の蛍光色、領域Bが橙色の蛍光色、領域Cが紫色の蛍光色、領域Dが青色の蛍光色、領域Eが桃色の蛍光色であるとする。また、
図6では、便宜上、再現色候補の色を「黄1」、「黄2」のように、「検知蛍光色」+「数字」で表現している。
【0050】
ユーザが、再現色選択領域603において、各蛍光色に対応する再現色候補(再現色選択ボタン)から1つの再現色を選択すると、その再現色が暫定的に選択状態になる。本実施形態では、デフォルトとして、各再現色候補群631〜635の最も左の再現色が選択されている。
図6では、破線で囲まれた再現色候補が選択中の再現色になっている。この例では、ユーザは、上から2段目(領域B)の再現色として、再現色候補群632の左から2番目を選択している。また、上から4段目(領域D)の再現色として、再現色候補群634の左から2番目を選択している。さらに、上から5段目(領域E)の再現色として、再現色候補群635の左から5番目を選択している。当該状態でユーザが「決定」ボタン605を選択すると、暫定的に選択されていた各再現色が対応する蛍光色の再現色として再現色選択受付部405に入力される(ステップS505Yes)。
【0051】
再現色選択受付部405は、受け付けた再現色を蛍光色再現部406に入力する。当該入力に応じて、蛍光色再現部406は、画像保持部411に保持された画像データにおいて、画素抽出部404が抽出した画素の色情報を再現色選択受付部405が受け付けた再現色に置換する(ステップS506)。
【0052】
特に限定されないが、本実施形態では、再現色選択受付部405は選択された再現色を各色範囲のデフォルトの再現色として登録するか否かをユーザに問い合わせる(ステップS507)。当該問い合わせは、例えば、表示制御部404を通じて行うことができる。
【0053】
図7は、このときディスプレイ201に表示される再現色登録画面の一例を示す図である。この例では、再現色登録画面701は、画像データ上で画素抽出部403が検出した蛍光色を表示するための検出結果表示領域702及び選択された再現色を表示する登録対象表示領域703を備える。また、再現色登録画面701は、選択された再現色をデフォルトに設定するために使用される「登録する」ボタン705、選択された再現色をデフォルトに設定しないために使用される「登録しない」ボタン706を備える。この例では、「黄1」、「橙2」、「紫1」、「青2」、「桃5」がそれぞれ領域A(黄色の蛍光色)、領域B(橙色の蛍光色)、領域C(紫色の蛍光色)、領域D(青色の蛍光色)、領域E(桃色の蛍光色)の再現色として選択されたことを示している。
【0054】
当該状態でユーザが「登録する」ボタン705を選択すると、選択された再現色が、当該再現色に置換される蛍光色の色範囲に対応づけられたデフォルトの再現色として設定される(ステップS507Yes、S508)。本実施形態では、再現色のデフォルトを示す情報は表示制御部404に保持される。表示制御部404は、再現色選択画面601の再現色選択領域603に再現色候補群を表示する際に、デフォルトの再現色を、上述のように、最も左に配置して表示する。
【0055】
一方、再現色登録画面701において、ユーザが「登録しない」ボタン706を選択すると、デフォルトの再現色が変更されることなく手順が終了する(ステップS507No)。
【0056】
以上のように、この複合機100によれば、予め指定された色範囲に属する蛍光色を含む画素について、複数の再現色候補が提示される。そして、ユーザは、提示された再現色から自己の好みに応じた色を選択することができる。したがって、ユーザが受け入れられない再現色よって蛍光色が置換されることを防止することができる。
【0057】
続いて、再現色選択画面601の領域自動調整について説明する。チェックボックス607にチェックが入力されている場合、画素抽出部403は、画像データ中の文字部分の分布情報に基づいて再現色付与領域を調整する。すなわち、画素抽出部403は、蛍光色を含む画素とともに、画像データにおける当該蛍光色を含む画素が分布する領域に存在する文字部分の分布情報に基づいて決定される画素を抽出する。
【0058】
図8は、再現色付与領域調整の一例を示す図である。
図8(a)に示すように、画像データでは、蛍光色が文字部分上に完全に重なっていない状態にあるとする。この場合、画素抽出部403は、画像データの文字部分を包含する領域801を認識するとともに、上述の色範囲に属する蛍光色の領域802を認識する。なお、文字部分の認識には、OCR(Optical Character Recognition)等の公知の任意の手法を使用することができる。そして、文字部分を包含する文字領域は、例えば、認識された文字の幅や高さに基づいて設定することができる。また、文字間に間隔が存在する場合でも、予め定められた距離以下の間隔であれば、一連の文字領域と認識するようにすればよい。
【0059】
蛍光色領域802が文字領域801を包含していない場合、画素抽出部403は、
図8(b)に示すように、蛍光色領域802の幅及び高さを増大させ、文字領域801及び蛍光色領域802を完全に包含する矩形領域803を、再現色を付与する領域として抽出する。この場合、文字を構成する画素は文字の色情報を含むため、画素抽出部403は、文字領域801に含まれる画素のうち、文字を構成しない画素を再現色により置換される画素として抽出する。なお、特に限定されないが、本実施形態では、再現色選択画面601において領域自動調整のチェックボックス607にチェックが入力されている場合、検出結果表示領域602では、
図8(b)に示す蛍光色領域802と矩形領域803とが画像データのプレビュー画像上に表示される。
【0060】
この構成では、例えば、画素抽出部403が抽出する画素の領域、すなわち、再現色に置換される画素の領域を、文字部分の幅や高さに応じて適宜変更することが可能になる。そのため、蛍光色ラインの描き方に起因して、蛍光色ラインに薄い箇所(高明度、高彩度)が存在する場合でも、蛍光色を適切に再現することが可能になる。
【0061】
なお、上述の例では、蛍光色領域の幅や高さを増大させることで、文字領域を包含させる構成としたが、文字部分と重なっていない蛍光色領域を再現色により置換される画素から除外する構成であってもよい。例えば、
図8(b)の例では、文字領域801の右端において、文字領域801の外側にはみ出ている矩形領域803を、再現色により置換される画素から除外する構成にしてもよい。
【0062】
次いで、再現色選択画面601の検出レベル変更について説明する。
図6に示す例において、画像データに含まれる蛍光色626は、色が薄い(明度が高い)等の理由により、画素抽出部403に蛍光色として検知されていない。この場合、蛍光色626は、用紙上に印刷されないことになる。このような、より薄い蛍光色の再現をユーザが希望する場合、ユーザは、再現色選択画面601の「検出レベル調整」ボタン604を選択することで、蛍光色の検出レベルを変更することができる。
【0063】
図9は、複合機100が実施する検出レベル調整手順の一例を示すフロー図である。当該手順は、ユーザが再現色選択画面601の「検出レベル調整」ボタン604を選択したことをトリガとして開始する。
【0064】
図10は、本手順が開始したときに、検出レベル変更部407が表示制御部404を通じてディスプレイ201に表示させる検出レベル調整画面の一例を示す図である。この例では、検出レベル調整画面1001は、画像データ上で画素抽出部403が検出した蛍光色を表示するための検出結果表示領域1002、検出可能な蛍光色の色範囲を拡大するために使用される「拡大」ボタン1003、検出可能な蛍光色の色範囲を縮小するために使用される「縮小」ボタン1004、検出レベル調整を中止して再現色選択画面601に戻るために使用される「戻る」ボタン1006を備える。
【0065】
上述のように、より薄い蛍光色を検知可能とする場合、ユーザは、検出レベル調整画面1001において、「拡大」ボタン1003を選択する(ステップS901Yes)。この場合、検出レベル変更部407は、上述のように、より薄い蛍光色の色範囲を色範囲リストに追加する(ステップS902)。特に限定されないが、本実施形態では、各蛍光色について、それぞれより薄い蛍光色の色範囲が色範囲保持部401に保持されており、ユーザが「拡大」ボタン1003を選択すると、全ての蛍光色についてより薄い蛍光色の色範囲が追加される。このとき、検出レベル調整画面1001の検出結果表示領域1002には、より薄い蛍光色の色範囲が検出対象に追加された結果、
図11に示すように、蛍光色626が領域Aとして画素抽出部403に検出されるようになる。
【0066】
当該状態で、ユーザが、検出レベル調整画面1001において、「縮小」ボタン1003を選択すると、新たに追加された色範囲が色範囲リストから削除される(ステップS903Yes、S904)。このような、検出レベルの調整は、ユーザにより「戻る」ボタン1006が選択されるまで、連続的に実施することができる(ステップS905No、S901)。検出レベル調整画面1001において、ユーザが「戻る」ボタン1006を選択すると、検出レベル調整が確定される(ステップS901No、S903No、S905Yes)。
【0067】
一方、ユーザが濃い蛍光色の抽出のみを希望する場合、検出レベル調整画面1001において、「縮小」ボタン1004を選択する(ステップS901No、S903Yes)。この場合、検出レベル変更部407は、上述のように、薄い蛍光色の色範囲を色範囲リストから削除する(ステップS904)。これにより、画素抽出部403は濃い蛍光色の画素のみを抽出するようになる。
【0068】
なお、色範囲リストに対する色範囲の追加や色範囲の削除は、本実施形態のように、全ての蛍光色について一時に実施されてもよいが、特定の色相に対して個別に実施する構成であってもよい。
【0069】
この構成では、画像データに含まれる蛍光色の検出レベルを調整することができる。したがって、ユーザは、画像データに含まれる一部の蛍光色を再現することや、明度や彩度がより高い蛍光色を再現することが可能になる。
【0070】
ところで、本実施形態の複合機100は、ユーザにより検知対象の蛍光色を任意に追加することもできる。このような検知対象蛍光色の追加を実現するため、複合機100は、有彩色検知部408、登録色選択受付部409及び登録部410を備える。
【0071】
有彩色検知部408は画像データに含まれる有彩色を検知する。本実施形態では、有彩色検知部408は、画像保持部411に保持された画像データに含まれる有彩色を検知する。また、本実施形態では、有彩色検知部408は、高彩度、高明度の色を検知するように設定されている。
【0072】
登録色選択受付部409は、有彩色検知部408により検知された1又は複数の有彩色から、ユーザによる有彩色の選択を受け付ける。当該選択は、例えば、操作パネル200を通じて受け付けることができる。本実施形態では、登録色選択受付部409は、タッチパネル付のディスプレイ201を通じてユーザによる有彩色の選択を受け付ける。
【0073】
登録部410は、登録色選択受付部409が受け付けた有彩色の色情報に基づいて、当該色情報を含む色範囲を色範囲保持部401に新たに登録する。なお、登録色選択受付部409は、有彩色の選択とともに、当該有彩色と対応づけて再現色保持部に保持される色情報の選択を受け付ける構成を採用することもできる。
【0074】
図12は、複合機100が実施する蛍光色登録手順の一例を示すフロー図である。当該手順は、例えば、ユーザが操作パネル200を通じて蛍光色登録の実行指示を入力したことをトリガとして開始する。
【0075】
手順が開始すると、有彩色検知部408は、画像保持部411に保持された画像データから、予め指定された、高彩度、高明度の有彩色を含む画素を検出する(ステップS1201)。有彩色検知部408は、検出した有彩色をディスプレイ201に表示し、ユーザによる選択が完了するまで待機する(ステップS1202No、S1204No)。
【0076】
図13は、このときディスプレイ201に表示される、登録色選択画面の一例を示す図である。この例では、登録色選択画面1301は、画像データ上で有彩色検知部408が検出した有彩色を表示するための検出結果表示領域1302、登録色候補を表示するとともにユーザによる選択を受け付ける登録色選択部1303、ユーザの選択を確定する際に選択される「決定」ボタン1305、選択を終了する際に使用される「終了」ボタン1306を備える。
【0077】
登録色選択画面1301において、登録色選択部1303には、有彩色検知部408が検出した有彩色のうち、例えば、明度が高い順に3つの有彩色が表示される。登録色選択部1303は、各登録色候補で着色された矩形画像1311、1312、1313及び各矩形画像に対応する有彩色の選択に使用される「登録」ボタン1314、1315、1316を備える。この例では、登録色選択部1303において左方に表示されている登録色候補1311に対応する「登録」ボタン1314が選択された状態を示している。
【0078】
当該状態においてユーザが「決定」ボタン1305を選択すると、登録色選択受付部409は、ユーザにより選択された有彩色を示す色情報を登録部410に入力する(ステップS1202Yes)。当該入力に応じて登録部410は、予め登録部410に指定されている色差(例えば、ΔE
*ab=5等)の情報とともに、入力された色情報を色範囲保持部401に登録する(ステップS1203)。なお、新規に登録された色範囲に対応づける再現色の選択は、このときに、ディスプレイ201に表示させたカラーパレット等を使用してユーザが実施してもよい。また、色範囲保持部401に登録された後に、新たな色範囲に再現色を対応づけてもよい。
【0079】
本実施形態では、登録色選択部1303に表示されている有彩色が色範囲保持部401に登録された場合、登録色選択受付部409は有彩色検知部408にその旨を通知する。当該通知を受けた有彩色検知部408は、登録色選択部1303から選択された有彩色を削除し、他の登録色候補を登録色選択部1303に表示する。
【0080】
本実施形態では、以上のような、登録色の選択は、ユーザにより「終了」ボタン1306を選択するまで、連続的に実施することができる(ステップS1204No)。登録色選択画面1301において、ユーザが「終了」ボタン1306を選択すると、蛍光色登録手順が終了する(ステップS1204Yes)。
【0081】
以上のように、複合機100では、ユーザは、所望の蛍光色が検出されない場合、画像データに基づいて新たな色範囲を登録することができる。
【0082】
なお、以上では、有彩色検知部408が登録色の候補を自動的に選択して表示する構成とした。しかしながら、ユーザが自身の指等を使用して、検出結果表示領域1302に表示されたプレビュー画像上で登録を希望する有彩色が存在する位置を指定することで、指定された位置の有彩色を色範囲保持部401に登録する構成であってもよい。
【0083】
以上説明したように、本発明によれば、画像データに含まれる蛍光色をユーザの意図したとおりに再現することができる。
【0084】
なお、上述した各実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、複合機の操作パネルを通じた操作に基づいて説明をしたが、当該複合機と通信可能に接続された情報処理端末を介して複合機に対する操作が行われてもよい。この場合、上述の実施形態における操作パネル200のディスプレイ201の機能は、情報処理端末が具備する、ディスプレイ等の表示手段及びキーボード等の入力手段により提供される。
【0085】
また、上記実施形態では、特に好ましい形態として、複合機100が、再現色選択機能及び蛍光色検出レベル調整機能を備える構成としたが、再現色選択機能のみを備える構成や、蛍光色検出レベル調整機能のみを備える構成としてもよい。また、蛍光色新規登録機能は、本発明に必須の構成要素ではなく、蛍光色新規登録機能を備えない構成を採用することもできる。
【0086】
さらに、
図5、
図9及び
図12に示したフローチャートは、等価な作用を奏する範囲において、各ステップの順序を適宜変更可能である。例えば、
図5では、複合機100に蛍光色モードの実行指示が入力された後に画像データを指定する構成としているが、画像データが指定された後に蛍光色モードの実行指示が入力される構成であってもよい。
【0087】
加えて、上述の実施形態では、デジタル複合機として本発明を具体化したが、デジタル複合機に限らず、プリンタ、複写機等の任意の画像処理装置に本発明を適用することも可能である。