【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 http://scitation.aip.org/content/aip/journal/rsi/84/11/10.1063/1.4831800 平成25年11月19日掲載
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記計算ユニットは、前記第1の周波数の掃引中に取得された前記第1の復調信号、および前記第2の復調信号に基づき、粗い絶対距離を計算するように構成される、請求項1〜8のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で説明する種々の例示の実施形態の特徴は、別段指示がない限り、互いに組み合わせ可能であることを理解されたい。さらに具体的には、
図1および
図2に示される実施形態の特徴は組み合わせてよく、
図2は、場合によっては
図1のデバイス100のより詳細な実施形態として理解してもよい。さらに、以下、測定データを評価するための、および絶対距離を計算するための2つのアプローチ、すなわち、合成波長アプローチ(SWA)および組み合わせ縞数アプローチ(CFNA)を、例として実証する。これら2つのアプローチを、例えば、組み合わせることができる。例として、SWAによる粗い絶対距離または中間絶対距離を使用して、CFNAにおける可能な縞数組み合わせの範囲を決定することができる。これら2つのアプローチを組み合わせる他の例も可能であり、本明細書における開示内容に包含される。
【0010】
以下、位置または絶対距離測定のために本明細書で使用される干渉法を、ファブリ・ペロー干渉計キャビティを使用するファブリ・ペロー干渉計のための例として説明する。しかしながら、いずれのタイプの干渉計および干渉計キャビティも使用することができる。
【0011】
図1を参照すると、絶対距離測定用デバイス100が示されている。デバイス100は、Aで示される第1の波長可変光源110と、Bで示される第2の光源120とを含むことができる。第1の波長可変光源110は、第1の可変周波数の第1の波長λ
a光を放出するように構成されてよく、第2の光源120は、第2の周波数の第2の波長λ
b光を放出するように構成されてよい。第1の波長光を第1の変調周波数f
aによって変調することができ、第2の波長光を第2の変調周波数f
bによって変調することができる。第1の変調周波数f
aおよび第2の変調周波数f
bは異なっている。以下、インデックスa、bを使用して、それぞれ第1の波長可変光源110(光源A)および第2の光源120(光源B)に関連する量間で区別する。
【0012】
第1の波長可変光源110の第1の光を、例えば、光ファイバ111によって光結合器130に誘導することができ、第2の光源120から放出される第2の光を、例えば、光ファイバ121によって、例えば、同じ光結合器130に誘導することができる。光結合器130は、第1の光および第2の光を重畳するように構成されてよい。重畳された第1および第2の光を、例えば光ファイバ131を介して、ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140に誘導することができる。全ての光ファイバ111、121、131は、例えば、SMF(単一モードファイバ)であってよい。
【0013】
ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140は、第1の共振器鏡141および第2の共振器鏡142を含むことができる。第1の共振器鏡141は、半透明であってよく、入射光の一部を逆反射する。他の部分は、第1の共振器鏡141および共振器キャビティを横断し、第2の共振器鏡142で反射する。特定のタイプのファブリ・ペロー干渉計キャビティ140によっては、反射した光は、第1の共振器鏡141によって光ファイバ131に戻るように部分的に渡されるか、または、共振器キャビティ内に戻され、共振器内をさらに1回以上往復する。以下、共振器内の(往復)回数をpで示す。
【0014】
特に、ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140は、例えば、特許文献1に記載されるように、共焦のファブリ・ペロー干渉計キャビティとして構成されてよい。共焦のファブリ・ペロー干渉計キャビティ140は、p=2以上を使用することができる。さらに、このような干渉計共振器の共焦特性は、第2の共振器鏡142の傾斜角の影響をほとんど受けない。第2の共振器鏡142を変位する物体に結合することができるため、例えば、物体の振動また移動によって引き起こされる場合があるミスアライメントに対する安定性は、特に、物体の長距離の変位経路を監視すべき場合、多くの用途において重要な特性となる場合がある。数ミリメートルか数センチメートルを超える変位経路のための共焦のファブリ・ペロー干渉計に関する特許文献1の開示内容は、参照により本明細書に援用する。
【0015】
デバイス100は、さらに、ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140に結合され、検出された干渉パターンに基づいて少なくとも1つの干渉測定信号151を提供するように構成される干渉計型検出器150を含むことができる。干渉計型検出器150は、例えば、光ファイバ131に結合されてよく、この場合、ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140によって反射する光は利用可能である。ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140によって反射した光は、第2の共振器鏡142によって反射した光に対する、第1の共振器鏡141によって反射した光の重畳に起因する場合がある。この場合、重畳は、第1の共振器鏡141で生じる場合がある。他の実施形態では、干渉計型検出器150をファブリ・ペロー干渉計キャビティ140に結合して、ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140によって伝えられた光を検出することができる。双方の場合、および他の可能とされる場合、干渉計型検出器150によって提供された干渉測定信号151は、ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140から出力された干渉型の光の検出された干渉パターンに基づく。
【0016】
デバイス100はさらに、評価回路180を含むことができる。評価回路180は、復調ユニット160および計算ユニット170を含むことができる。干渉計型検出器150は、干渉測定信号151を復調ユニット160に供給するために復調ユニット160に結合されてよい。復調ユニット160は、第1の変調周波数f
aに関連付けられた第1の復調信号161a、および、第2の変調周波数f
bに関連付けられた第2の復調信号161bを生成するように構成されてよい。したがって、第1の変調周波数f
aで変調された第1の波長可変光源110、および、光結合器130と組み合わせた、第2の変調周波数f
bで変調された第2の光源120は、「周波数分割多重化」をもたらすが、復調ユニット160は、「周波数分割逆多重化」をもたらす。さらに以下でより詳細に説明するように、第1の復調信号161aは、(移動可能な)第2の共振器鏡142によって反射した第1のレーザ110の測定光と、第1の共振器鏡141によって反射した第1の光源110の参照光との間の位相Φ
aを回復する。同様に、第2の復調信号161bは、(移動可能な)第2の共振器鏡142によって反射した第2のレーザ120の測定光と、第1の共振器鏡141によって反射した第2の光源120の参照光との間の位相Φ
bを回復する。
【0017】
第1の復調信号161aおよび第2の復調信号161bを、計算ユニット170へ供給することができる。計算ユニット170は、第1の可変周波数の掃引中に取得した第1の復調信号161aを評価することによって、および、第2の復調信号161bを評価することによって、絶対距離x
1を計算するように構成されてよい。さらに、第2の光源が波長可変である場合、計算ユニット170は、第2の可変周波数の掃引中に取得された第2の復調信号161bをさらに評価することによって、絶対距離x
1を計算するように構成されてよい。
【0018】
以下でより詳細に説明するように、従来の技術では絶対距離測定を得るために必要とされ得る任意の基準長または長さ標準を使用することなく、絶対距離x
1の計算を行うことができる。さらに、絶対距離測定を行うために、(第2の)基準干渉計は必要とされない。干渉計キャビティ、例えば、ファブリ・ペロー干渉計キャビティと組み合わせて、周波数分割多重化の技術を使用することによって、非常に単純、ロバスト、安価な装置が、例えば、光学フィルタ、キャビティ・ビーム・スプリッタ、多数の干渉計型検出器などの使用を必要とせずに、実現可能である。
【0019】
図2は、絶対距離測定用の例示のデバイス200を示す。デバイス100と関連して、第1の波長可変光源110、第2の光源120、光結合器130、ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140、干渉計型検出器150、復調ユニット160、および、計算ユニット170のより詳細な実施形態を例として
図2に示す。これらのより具体的なユニットは単なる例示であり、選択的にデバイス100と組み合わせたり、デバイス100に組み込まれたりしてよいことに留意されたい。さらに、デバイス200は、レーザ制御回路210を含むことができる。一般に、レーザ制御回路210の機能の1つまたは複数を有する制御回路(図示せず)を使用して、デバイス100の第1の波長可変光源110および第2の光源120を制御することもできる。
【0020】
第1の光源110および第2の光源120をそれぞれ、1つまたは複数のレーザ、例えば、ダイオード・レーザAおよびBによって実施することができる。光結合器130は、例えば、第1の結合器231、第2の結合器232、第3の結合器233、および/または第4の結合器234を含むことができる。第1のレーザ110(レーザA)を第1の結合器231に接続することができ、第2のレーザ120(レーザB)を第2の結合器232に接続することができる。第1の結合器231および第2の結合器232はそれぞれ、第3の結合器233へ出力を提供することができ、これによって、周波数分割多重化をもたらすことができる。第1の結合器231のさらなる出力を第1の
ガスセル235に接続することができ、第2の結合器232のさらなる出力を第2の
ガスセル236に接続することができる。第3の結合器233の出力を、例えば、第4の結合器234を介して、ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140の干渉計ヘッド243の入力に接続することができる。干渉計ヘッド243を、光ファイバ131、例えば、SMFによって第4の結合器234の出力に結合することができる。
【0021】
干渉計ヘッド243は、第1の共振器鏡141、および、例えば、コリメータ244を含むことができる。第1の共振器鏡141は、例えば、干渉計ヘッド243につながる光ファイバ131のコアの光出射面によって形成されてよい。コリメータ244は、共振器キャビティ140において平行光線を提供することができる。第2の共振器鏡142は移動可能であってもよく、絶対距離x
1から絶対距離x
2へ変位するように示される。絶対距離測定のゼロ点を、第1の共振器鏡141によって定めることができる。第1の共振器鏡141、例えば、光ファイバ131の光出射面(端面)において、干渉が発生する。
【0022】
第1のレーザ110および第2のレーザ120双方は、安定化レーザであってよい。さらに、これらレーザ110、120の1つまたは双方は、周波数掃引開始周波数から周波数掃引終了周波数までの周波数掃引を可能にするために波長可変であってよい。そして、さらに別の態様では、ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140から反射した光からのレーザ特定相情報を回復するための周波数分割多重化を可能にするために、レーザ110および120のそれぞれが変調される。第1のレーザ110についてのこれらの態様は、例としてここで説明されている。第2のレーザ120についても以下同様であるが、簡潔にするために、繰り返しの言及を省略する。
【0023】
波長λ
aに対応する第1の可変周波数の波長可変範囲によって定められる周波数帯域は、波長λ
bに対応する第2の周波数から間隔があけられている。第2の周波数が可変周波数でもある場合、第2の可変周波数の波長可変範囲によって定められる第2の周波数帯域は、第1の可変周波数の第1の周波数帯域から間隔があけられてよい。すなわち、双方の周波数帯域は重なり合わないものとすることができる。
【0024】
第1のレーザ110によって放出される波長λ
aをフィードバック回路によって制御することができる。例として、レーザ制御回路210は、復調器(DEMOD 5)211a、制御器(PID A)212a、波長制御ユニット(CONa)213a、発振器214a、および、例えば、コンパレータ215aを含むことができる。発振器214aは、第1の変調周波数、ω
a=2πf
aを生成することができる。復調器211aは、第1の変調周波数ω
aを使用して、第1の検出器237(例えば、
ガスセルフォトダイオード)から受信した信号を復調する。したがって、復調器211aは、第1の検出器237からの信号を復調することによって、フィードバック・プロセス変数を提供する。コンパレータ215aは、プロセス変数を設定点(例えば、0)と比較することができ、その差異を出力する。制御器212aは、波長制御ユニット213aに送ることができる制御信号を計算することができる。波長制御ユニット213aはレーザ波長を制御する。例として、レーザ波長制御は、レーザ電流、レーザ温度、またはその両方を制御することを含むことができる。例として、第1のレーザ110の周波数掃引は、レーザ温度の制御に基づくことができる。すなわち、当該レーザ波長制御は、制御された温度のランピングをもたらすように構成されてよい。(周波数掃引中に行われる場合もある)レーザ波長安定化は、レーザ電流の制御に基づいてよい。さらに、レーザ電流変調を使用して、第1の変調周波数ω
aによってレーザ波長λ
aを変調することができる。
【0025】
レーザ制御回路210はさらに、復調器(DEMOD 6)211b、制御器(PID B)212b、波長制御ユニット(CONb)213b、発振器214b、およびコンパレータ215bを含むことができる。これらのユニットはそれぞれ、対応するユニット211a、212a、213a、214aおよび215aと機能的に同等であってよく、繰り返しの言及を避けるために、上記説明を参照する。したがって、復調器211bは、第2の検出器(例えば、
ガスセルフォトダイオード)238から信号を受信することができ、発振器214bは、第2の変調周波数、ω
b=2πf
bを生成することができる。
【0026】
レーザ制御回路210はさらに、第1のレーザ110の周波数掃引動作をトリガするトリガ216aを含むことができる。対応するトリガ(図示せず)は、周波数掃引動作が第2のレーザ120によっても行われるものとする場合、レーザ制御回路210に含まれてよい。さらに、第2のレーザ120が周波数掃引を行うようにも構成される場合、第2のレーザ120の温度制御は、例えば、制御された温度のランピングをもたらす必要がある場合もあり、そうでない場合もある。
【0027】
図2に示される実施形態と異なるレーザ制御回路210の実施形態も可能である。一般に、レーザ制御回路210は、双方のレーザ110、120を波長基準の異なる周波数にロックする2つのフィードバック・ループを提供することができる。1つまたは複数の
ガスセル235、236を波長基準として使用する場合、双方のレーザ110、120を、
ガスセル235、236に含有される気体の異なる吸収線にロックすることができる。これらのレーザ安定化フィードバック・ループを、レーザ電流制御に基づいて、継続的に動作させることができる。周波数掃引は、第1の温度から第2の温度まで、各レーザ110、120における温度を上昇させることによって行われてよい。さらに、レーザ波長変調は、各レーザ安定化フィードバック・ループによって制御されたレーザ電流のレーザ電流変調によって行われてよい。
【0028】
図3および6は、例として、レーザ110、120の周波数掃引をどのように行うことができるのかを示す。例として、第1のレーザ110は説明のためとして考慮する。周波数掃引の開始時間t=0を、例えば、トリガ216aによってトリガする。
【0029】
周波数掃引開始時間t=0で開始し、かつ、周波数掃引終了時間t=Tまで継続すると、レーザ110のレーザ温度はT
1からT
2まで変化するように制御される。T
2とT
1との間の温度差T
2−T
1は、例えば、5℃、10℃、または
図6において例として示されるように14℃以上である場合がある。
【0030】
定められた波長のずれを生じさせるために、レーザ波長λ
aを、掃引中に第1の分子吸収
ガスセル235の様々な吸収線にロックする。
図6は、T
1からT
2へと温度が変わる時の、アセチレン12分子吸収
ガスセルの波長掃引復調信号を例示する。レーザ温度制御は、温度T
1における温度制御間隔601、および、温度T
2における温度制御間隔602内であるが、例えば、取得された波長精度内ではない、レーザ波長を保持することができる。このため、先に説明したフィードバック・ループによって、波長を、例えば、0Vの復調信号にロックすることができる。このフィードバック・ループは、より感度が高いレーザ電流を制御するため、波長を吸収線にロックすることで、例えば、δλ/λ=10
−7程度の各吸収線におけるレーザ波長λ
aおよびλ
bの安定性を実現する。波長基準(例えば、
ガスセル235、236)は、それぞれ、レーザ波長λ
a、λ
bを安定化させるために使用されるだけではなく、絶対波長較正基準をもたらすためにも使用され得ることに留意されたい。そのように、レーザ波長λ
aおよびλ
bは、周知である吸収波長として定めることができる。
【0031】
例として、第1のレーザ110(レーザA)を、1516.44130nmの波長を有するアセチレン12の吸収線R17にロックすることができ、第2のレーザ120(レーザB)を、1535.3928nmの波長を有するアセチレン12の吸収線P17にロックすることができる。別の可能性は、第1のレーザ110を前述のアセチレン12の吸収線R17にロックすること、および、第2のレーザ120を、1543.6237nmの波長を有するアセチレン13の吸収線P18に固定することである。双方の場合では、および他の場合では、第1のレーザ110の波長掃引範囲、または、使用される場合、第2のレーザ120の波長掃引範囲は、それぞれのレーザ110、120がロックされる吸収線の間の波長距離よりも著しく小さくなる。
【0032】
復調ユニット160は、第1の復調器(DEMOD 1)261、および第2の復調器(DEMOD 2)262を含むことができる。復調器261および復調器262は、第1の変調周波数ω
aを生成する発振器214aに結合されてよい。第1の復調器261は、第1の変調周波数ω
aを有する(
図1の干渉計型検出器150に対応する)干渉計型検出器(D3)250によって提供される測定信号を復調するように構成されてよく、第2の復調器262は、例えば、2ω
aの第1の変調周波数の高調波を有する測定信号を復調するように構成されてよい。したがって、例として、第1の復調器261および第2の復調器262を、発振器214aの出力に結合することができる。
【0033】
復調ユニット160はさらに、第3の復調器(DEMOD 3)263、および第4の復調器(DEMOD 4)264を含むことができる。第3の復調器263および第4の復調器264を、発振器214bの出力に結合することができる。第3の復調器263は、第2の変調周波数ω
bを有する干渉測定信号を復調するように構成されてよく、第4の復調器264は、例えば、2ω
bの第2の変調周波数の高調波を有する干渉測定信号を復調するように構成されてよい。
【0034】
したがって、第1の復調器261が第1のレーザ波長に関連付けられた復調信号を生じさせ、第2の復調器262が、90度でシフトした第1のレーザ波長に関連付けられた復調信号を生じさせる、直交検波方法を用いてもよい。これら2つの復調された信号を、例えば、計算ユニット170の第1のプロセッサ(P1)271に送ることができる。第1のプロセッサ271は、第1の復調器261および第2の復調器262の出力に基づいて、第1のレーザ波長λ
aに関連付けられた干渉型位相Φ
aを回復するように構成されてよい。この目的を達成するために、第1のプロセッサ271は、例えば、その非線形性によって、第1のプロセッサ271によって計算された(測定済み)実位相を補正するように適用可能であるルックアップ・テーブル・メモリ(LUT)にアクセスすることができる。その非線形性による実位相の位相補正は以下でさらに説明される。第1のプロセッサ271は、第1の波長λ
aに関連する干渉パターンの時間依存位相Φ
a(t)を出力することができる。
【0035】
第3の復調器263および第4の復調器264は、第2のレーザ周波数ω
bが第1のレーザ周波数ω
aの代わりに使用される以外は、第1の復調器261および第2の復調器262に関する開示内容に従って動作するように構成される。第3の復調器263の出力および第4の復調器264の出力を、例えば、計算ユニット170の第2のプロセッサ(P2)272に渡すことができる。第2のプロセッサ272は、第3の復調器263および第4の復調器264の出力に基づいて、時間依存位相Φ
b(t)を計算するように構成される。さらにまた、ルックアップ・テーブル(LUT)には、例えば、ここに含まれる非線形性に対する計算された実位相を補正するために、第2のプロセッサ272によってアクセスすることができる。
【0036】
計算ユニット170は、位相Φ
a(t)およびΦ
b(t)に基づいた時間依存絶対距離x(t)を導出することができる。例として、位相Φ
a(t)およびΦ
b(t)を、計算ユニット170の第3のプロセッサ273(P3)に渡す。第3のプロセッサ273は、時間依存絶対距離x(t)を導出するように構成されてよい。以下でさらに詳細に説明するように、絶対距離x(t)を計算するために、複数の方法およびそれらの変形を利用可能である。これらの方法のそれぞれにおいて、少なくとも1つの周波数掃引(例えば、第1のレーザ110の周波数掃引)が必要とされる。さらに、少なくともこれらの方法のうちのいくつかにおいて、第2のレーザ120の周波数掃引も行われる。
【0037】
以下、絶対距離測定の原理を説明する。最初に、1つのレーザのみ(例えば、第1のレーザ110または第2のレーザ120)を考慮し、表記を容易にするためにインデックスa、bを省略する。ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140によってもたらされた正弦波干渉パターンの強度(例えば、光パワー)は、式
I(Φ)=I
0(1+Vcos(Φ)) (1)
で近似され得る。ここで、Vは干渉コントラスト、I
0は平均光パワー、および、Φは(移動可能な)第2の共振器鏡142によって反射した測定光と第1の共振器鏡141によって反射した参照光との間の光位相遅延である。以下で位相とも呼ばれるこの位相遅延Φは、
Φ=4πpnx/λ (2)
で示される。ここで、xは(
図1ではx
1で示される)実際のキャビティ長、λはレーザ波長、nは干渉計キャビティ140内の媒体の屈折率、および、pは、測定モードが単光路(p=1)か、複光路(p=2)か、またはその他であるかを示す。
【0038】
移動する第2の共振器鏡142の変位Δx(または、より一般には、共振器の長さ変化)は、
Δx=(λ/4πpn)ΔΦ (3)
に従って、位相変化ΔΦに正比例する。
【0039】
1つのレーザのみをさらに考慮すると、このレーザの波長λを掃引することによって、かつ、対応する位相変化ΔΦを測定することによって、干渉計キャビティ長を得ることができる。測定光と参照光との間の光路差x
ftiは、ν
maxからν
minへレーザ放射周波数を変更し、かつ、
x
fti=ΔΦ
ftic/(4πpnΔν
fti) (4)
に従って、周波数間隔
Δν
fti=ν
max−ν
min
に反比例する時に測定された位相差ΔΦ
ftiに比例する。ここで、cは光の速度である。式(3)は、全誤差δx/xを、本明細書の開示内容に従って達することができる、約10
−7もしくは10
−8と同等またはそれ以下に低減するために、非常に大きい波長可変範囲が必要であることを示す。十分な大きさの波長可変範囲を有するレーザは、ほとんどの商業目的には高価すぎるはずである。今日の、より低価だが依然精密な半導体ダイオード・レーザの波長可変範囲Δλ
ftiは典型的には、ほぼδλ/λ=10
−3程度のものである。例として、例えば、δλ/λ=10
−2もしくは10
−3と同等またはそれ以下の波長可変範囲Δλ
ftiを有する半導体ダイオード・レーザ110、120を、本明細書の開示内容に従って使用することができる。
【0040】
したがって、1つのレーザのみを使用する場合、ある位置を再び見つけるのに重要である、波長掃引測定の繰り返し精度は、いくつかの誤差原因によって、ほぼ10
−4程度の精度δx/xに限定されることになる。誤差原因の1つは周期的非線形性であり、これは、測定された変位が実際の変位に正比例していないが、波長に比例する距離で周期的に繰り返す偏差があることを意味する。かかる位相偏差は、反射器のアライメントによって、2πまたは4πで周期的であってよい。2πの周期的非線形性は、干渉計キャビティ140内のレーザ光線の多数の反射によって、および、波長変調の非正弦伝達関数によって引き起こされる場合があるのに対して、4πの周期的非線形性は、反射器のミスアライメントによる二重変調によって引き起こされる場合があり、これは、光の一部分が一度キャビティを横断し、その他の部分がキャビティを二度横断することを意味する。他の誤差原因は、例えば、レーザ波長安定化フィードバック・ループによる場合がある波長の不確実性、および、主に、光ファイバ回路内の寄生キャビティによって引き起こされる位相ノイズである。
【0041】
さらに、著しい測定誤差は、(以下、波長掃引ともいう)周波数掃引中にキャビティのドリフトによって引き起こされる場合がある。波長掃引測定δx
ftiの誤差は、
δx
fti=(λ/Δλ
fti)δx
drift (5)
によって示される。ここで、λは中心レーザ波長であり、Δλ
ftiは波長掃引の波長のずれであり、δx
driftは波長掃引中のキャビティのドリフトである。式(5)は、キャビティのドリフトが、典型的にはほぼ10
3程度である、絶対波長λの波長変化Δλ
ftiに対する比率で乗じられるため、全測定誤差に対する高い寄与度を有する場合があることを示す。したがって、波長掃引中に生じるキャビティのドリフトを補正することは重要である。
【0042】
キャビティのドリフトを補正するために、第2のレーザ120(例えば、レーザB)を使用することができる。キャビティのドリフトによって補正されたレーザAの波長変化による位相のずれは、
ΔΦ
a,fti,corr=ΔΦ
a,fti−(n
aλ
b/n
bλ
a)ΔΦ
b (6)
で示される。ここで、ΔΦ
a,ftiは第1のレーザ110(すなわち、レーザA)の測定された位相のずれであり、n
aは波長λ
aにおける屈折率であり、n
bは波長λ
bにおける屈折率であり、ΔΦ
bは、第2のレーザ120(すなわち、レーザB)で測定されたキャビティのドリフトによる位相変化である。そして、キャビティのドリフトによって補正された絶対距離は、
x
fti=ΔΦ
a,fti,corrc/(4πpn
aΔν
a,fti) (7)
によって示される。ここで、Δν
a,ftiは周波数掃引中の第1のレーザ110の周波数波長可変範囲である。
【0043】
本明細書で開示されたキャビティのドリフトの補正は、第2のレーザ120の利用のみに基づくことができることに留意されたい。基準長または標準長も第2の干渉計(すなわち、基準長または標準長を測定するための基準干渉計)も、キャビティのドリフトの補正に使用する必要はない。
【0044】
数学的観点から、ここで、絶対距離を計算するための問題点は、現時点で解決されることになる(例えば、式7を参照)。しかしながら、実際には、ΔΦ
a,ftiおよびΔΦ
bの測定値は正確ではない場合があり、したがって、x
ftiには、絶対距離x
1の粗い推定値を与えるだけでよい。
【0045】
直交検波方法
以下、例として、直交検波方法を開示する。復調ユニット160は、直交検波方法に従って、干渉計型検出器150、250からの干渉計測定信号を処理することができる。より具体的には、1つのレーザに関連付けられたファブリ・ペロー干渉計キャビティ140において観察される干渉信号のそれぞれに直交検波方法を適用することができる。したがって、以下の説明は、第1の波長光および第2の波長光のそれぞれに適用可能であり、表記を容易にするためにインデックスを省略する。
【0046】
第2の共振器鏡142の変位が1つの縞を超えると、直交検波方法によって、一定の感度で変位およびその方向双方を検出することができる。直交検波方法において、90度の位相のずれがある2つの信号を使用して、干渉型位相Φを回復する。
【0047】
既に述べたように、ここで直交信号は、周波数ω=2πfを有するレーザ波長を変調することによってもたらされる高周波数搬送波測定信号を復調することによって生成されてよい。上述したように、これは、レーザ電流を変調することによって実現可能である。
【0048】
δΦ=−(4πpnx/λ
2)δλ:=β (8)
によって示される変調度βは、キャビティ長xに線形に左右される。
【0049】
式(1)に従って、レーザ波長変調は、
I(Φ)=I
0(1+Vcos(βsinωt+Φ)) (9)
によって記される検出信号における変調を誘起する。
【0050】
検出器強度I(Φ)を、搬送周波数ωの高調波における振幅変調を示すベッセル関数J
i(β)によって、正弦および余弦項に分割することができる。
【0051】
I
DC=I
0+I
0VJ
0(β)cos(Φ)
I
ω=−I
0VJ
1(β)sin(ωt)sin(Φ)
I
2ω=I
0VJ
2(β)cos(2ωt)cos(Φ) (10)
として、
I=I
DC+I
ω+I
2ω+…
【0052】
これらの強度信号のそれらの変調周波数における復調は、下記の非時間依存方程式につながる。
【0053】
I
DC=I
0+I
0VJ
0(β)cos(Φ)
I
ω,demod=−I
0VJ
1(β)sin(Φ)
I
2ω,demod=I
0VJ
2(β)cos(Φ) (11)
位相Φを回復するための様々な方法がある。第1の例示の方法によれば、基本周波数ωで検出器信号を復調することによって示される検出器DC信号I
DCと信号I
ω,demodとを使用することによって、位相Φを回復することができる。第2の方法によれば、基本周波数ωおよびその第1の高調波2ωにおける復調によって示される信号I
ω,demodおよびI
2ω,demodを使用することができる:
Φ=arctan(J
2(β)I
ω,demod/−J
1(β)I
2ω,demod) (12)
【0054】
絶対距離xは、
x=(λ/2p)(N+(1/2π)Φ) (13)
による位相Φに関連している。
【0055】
双方のレーザ110、120の位相情報を回復するために、当該位相情報をレーザの変調周波数によって符号化するが、これは、検出器DC信号が重畳されるため、直交信号成分として当該信号を使用することができないからである。結果として、双方のレーザを、異なる周波数、すなわち、ω
a≠ω
bで変調しなければならない。周波数分割多重方法によって、式(12)に従って、すなわち、下記の関係式を使用して、双方の位相を回復することができる。
【0056】
Φ
a=arctan(J
2(β)I
ωa,demod/−J
1(β)I
2ωa,demod)
Φ
b=arctan(J
2(β)I
ωb,demod/−J
1(β)I
2ωb,demod) (14)
【0057】
ベッセル関数を求めるために、距離xを知る必要があるが、未知である。その理由から、復調器出力信号を、下記の波長掃引の結果によって正規化する:
S=X
2f/X
2f,max
SQ=X
f/X
f,max (15)
【0058】
この式ではそれぞれ、X
2fは第2の復調器262および第4の復調器264の復調器出力信号であり、X
fは第1の復調器261および第3の復調器263の復調器出力信号である。下記では、Sは同相復調信号とも呼ばれ、SQは直交復調信号とも呼ばれる。そして、正規化された直交および同相復調信号の逆正接、例えば、
Φ=arctan(SQ/S) (16)
によって、位相Φを示すことができる。
【0059】
式(15)の正規化を、例えば、復調ユニット160において、または、計算ユニット170において行うことができる。
【0060】
キャビティ・ドリフト補償
図4Aは、λ
a(t=0)からλ
a(t=T)までの波長掃引中の第1のレーザ110の同相復調信号S
aおよび直交復調信号SQ
aを示す。例として、約Δλ
a=2 pmにわたる波長掃引を示す。
図4Bは、リサージュ図形によって表されるような、第1のレーザ110の波長掃引中のファブリ・ペロー干渉計キャビティ140から反射した第1のレーザ光の対応する位相変化を示す。この位相変化は、とりわけ、波長変化およびキャビティのドリフトによるものである。
【0061】
図5Aは、第1のレーザ110の波長掃引中にx
1からx
2までキャビティがドリフトする場合の、第2のレーザ120の反射した光に関連付けられた同相復調信号S
bおよび直交復調信号SQ
bを示す。この場合、第2のレーザ120の第2の波長λbは、第1のレーザ110のλ
a(t=0)からλ
a(t=T)までの波長掃引中、一定に保たれる。
図5Bは、第1のレーザ110の波長掃引中にx
1からx
2までキャビティがドリフトする場合の、第2のレーザ120の反射した光について検出された位相変化を示す。したがって、
図5Bで示されるようなΔΦ
b(Δx)はキャビティのドリフトに基づいている。
【0062】
したがって、第2のレーザ120を使用して、第1のレーザ110の周波数掃引中にキャビティのドリフトを追跡することができる。これによって、式(6)で設定されるようにキャビティのドリフトによって補正される波長掃引による位相のずれを計算することが可能になる。次いで、式(7)を使用して、キャビティのドリフトによって補正された絶対距離x
ftiを計算することができる。
【0063】
上述したように、式(6)の入力された位相ずれ量は、実際には、誤差の影響を受けるため、式(7)は絶対距離の粗い推定値を与えるだけである。
【0064】
非線形性の補正
式(6)の位相ずれ量の誤差は、復調信号S、SQから計算される位相の周期的非線形性によって引き起こされる可能性がある。位相偏差の非線形性は、2πまたは4πの周期を有する場合がある。
図9は、レーザ110、120双方に対して測定された110mm長のキャビティのこれらの非線形性を示す。そのデータは、各レーザ110、120のレーザ波長を線形に掃引することによって、かつ、移動平均を測定された位相変化データから減じることによって得られる。
【0065】
双方のレーザの波長掃引から抽出された周期的非線形性を使用して双方の位相のずれΦ
aおよびΦ
bを補正することができる。
図9に示される非線形性によって補正された位相データは、第1のレーザ光に対するプロセッサ271のLUTに、および、第2のレーザ光に対するプロセッサ272のLUTに格納されてよい。
【0066】
Φ
aの周期的非線形性およびΦ
bの周期的非線形性を、第1のレーザ110および第2のレーザ120それぞれの2つの波長掃引によって得ることができる。これらの2つの波長掃引を、下記でCP1(補正プロセス1)およびCP2(補正プロセス2)それぞれによって示す。CP1および/またはCP2を、デバイスの初期調整のために、すなわち、通常のデバイス動作の前に行うことができる。
【0067】
CP1において、第1のレーザ110の波長掃引をλ
a,minからλ
a,maxまで行うことができる。位相Φ
aおよびΦ
bを記録して、
ΔΦ
a,corr=ΔΦ
a−(n
aλ
b/n
bλ
a)ΔΦ
b (17)
による継続的なキャビティ・ドリフト補正を行うことができる。
【0068】
その後、移動平均フィルタを使用することによって、Φ
aデータを平滑化することができ、平滑化されたΦ
aデータをΦ
aデータから減じることができる。そして、そのように導出されたΦ
aの位相非線形性を使用して、第1のプロセッサ271のLUTに格納された線形位相データを補正することができる。すなわち、CP1を使用して、対応する位相補正された位相データによって、LUTに格納された初期の線形位相データを上書きすることができる。
【0069】
CP2において、第2のレーザ120の波長掃引をλ
b,minからλ
b,maxまで行うことができる。位相Φ
aおよびΦ
bを記録し、
ΔΦ
b,corr=ΔΦ
b−(n
bλ
a/n
aλ
b)ΔΦ
a (18)
による継続的なキャビティ・ドリフト補正を行うことができる。
【0070】
その後、移動平均フィルタを使用することによって、Φ
bデータを平滑化することができ、平滑化されたΦ
bデータをΦ
bデータから減じることができる。そして、そのように導出されたΦ
bの位相非線形性を使用して、第2のプロセッサ272のLUTに格納された線形位相データを補正することができる。すなわち、CP2を使用して、対応する位相補正された位相データによってLUTに格納された初期の線形位相データを上書きすることができる。
【0071】
CP2は波長可変な第2のレーザ120を必要とすることに留意されたい。しかしながら、様々な場合において、例えば、位相補正が適用されない場合、上述されるような他のプロセスを使用することによって位相補正を行う場合、または、例えば、CP1中に得られたΦ
aの位相非線形性も使用してΦ
bデータを補正する場合、第2のレーザ120を波長可変レーザとすべきではない。
【0072】
以下、2つの異なるアプローチである、合成波長アプローチ(SWA)および組み合わせ縞数アプローチ(CFNA)を概説する。これらのアプローチを使用して、デバイス動作中に精確な絶対距離測定値を得ることができる。双方のアプローチを、(例えば、CP1および/またはCP2によって、例えば、初期化手続き中により早期に得られるような)非線形性が補正された位相データを使用するか、低分解能で十分な場合は、非線形性が補正されていない線形位相データを使用することができる。
【0073】
合成波長アプローチ(SWA)
SWAは、高精度で絶対距離xを測定するスキームであり、これには、絶対距離の正確な測定が可能な多くのプロセスが含まれ得る。これらのプロセスのそれぞれは例示であり、例えば、他のプロセスによって置き換えることができる。さらに、必要とされる精度によって、これらプロセスの1つまたは複数を省略することができる。
【0074】
SWA P1(粗い絶対距離測定)
以下SWA_P1と呼ばれる、SWAの第1のプロセス(P1)において、粗い絶対距離を測定することができる。そのためには、既に本明細書において説明したように、第1のレーザ110の波長掃引を行う。(干渉型)位相Φ
a(t=0)およびΦ
a(t=T)が記録される(これらの位相は、既にそれらの非線形性によって補正されており、すなわち、位相補正されたLUT位相データに基づいて計算可能である)。さらに、位相Φ
bは、第1のレーザ110の波長掃引中に記録される。同様に、位相自体の非線形性によって既に補正されているΦ
bの位相値を使用することができる。その後、式(7)に従って、粗い絶対距離x
ftiを計算することができる。したがって、粗い絶対距離は、第1の復調信号に基づき、かつ、第1の周波数が掃引される一方、第2の周波数が固定され得る間に得られた第2の復調信号に基づく。
【0075】
すなわち、第1の周波数間隔にわたって第1の変調周波数によって変調された第1の光の第1の可変周波数を掃引すること;第1の光をファブリ・ペロー干渉計キャビティに入力すること;第1の変調周波数およびその高調波周波数を有するファブリ・ペロー干渉計キャビティによって生成された、検出された干渉パターンに基づいて干渉測定信号を復調することによって第1の位相のずれを測定すること;第2の変調周波数によって変調された第2の光の第2の周波数を生成すること;第2の光をファブリ・ペロー干渉計キャビティに入力すること;第2の変調周波数およびその高調波周波数を有する干渉測定信号を復調することによって第2の位相のずれを測定すること;ならびに第1の周波数間隔、第1の位相のずれおよび第2の位相のずれに基づいて、絶対距離の粗い値を計算することを含む方法によって、絶対距離の粗い値を得ることができる。
【0076】
SWA_P2(中間絶対距離測定)
以下SWA_P2と呼ばれる、SWAの後続のプロセス(P2)において、中間絶対距離x
sを測定することができる。2つの実波長λ
a、λ
bより大きい「合成」波長Λについて、中間絶対距離x
sの決定を行うことができる。合成波長Λが、例えば、SWA_P1において得られた粗い絶対距離の不確実性より大きい場合、合成波長の干渉次数(すなわち、縞数)を明確に決定することができる。この整数の干渉次数およびその端数部分から、より精確な中間絶対距離x
sを計算することができる。すなわち、SWA_P2において、計算ユニット170は、縞数N
sおよび合成波長Λの位相に基づいて、中間絶対距離x
sを計算するように構成される。
【0077】
より具体的には、2つのレーザの信号を混合することによって生じさせるビーティング・パターンの位相である合成位相Φ
sは、
Φ
s=Φ
a−Φ
b (19)
によって計算される。
【0078】
合成波長は、
λ
a<λ
bとする、
Λ=λ
aλ
b/(n
aλ
b−n
bλ
a) (20)
として定められる。
【0079】
例えば、SWA_P1から決定されるような、粗い絶対距離x
ftiを使用して、合成波長の縞数N
sを決定することができる。N
sは、
【0080】
【数1】
によって表される、条件N
s<2px
fti/Λを満たす最大整数として定められる。
【0081】
この結果を合成位相Φ
smod(2π)と共に使用して、中間の精確な絶対距離x
sを、
x
s=(N
s+Φ
s/2π)Λ/2p (22)
に従って決定することができる。
【0082】
合成縞数N
sを明確に割り当てるために、(例えば、SWA_P1によって行われる)粗い絶対距離測定の完全な不確実性δxは、式
δx<Λ/2p (23)
によって表される合成波長の1/2pを超えてはならない。
【0083】
この関係式は、δxが、例えば、測定デバイス100、200において使用されるダイオード・レーザによって引き起こされる、粗い絶対距離測定の精度限界を伴う所与の限界値であるため、合成波長Λに対するより低い限界値を定める。したがって、δxは、合成位相の不確実性δΦ
sに対して耐性があるように、できるだけ小さくなるように選択されるべきである。例として、市販のダイオード・レーザによって測定された合成位相δΦ
sの不確実性は、やがて、ほぼδΦ
s/2π=0.02程度になる場合がある。
【0084】
Φ
aおよびΦ
bの位相補正された値が、プロセスCP1およびCP2に従って以前に計算されていたとすると、実位相Φ
aおよびΦ
bの非線形性を補正するLUTのデータを適用することによって、補正された合成位相値を得ることができる。
図8Aおよび拡大した
図8Bは、実位相Φ
a、Φ
bの曲線、ドリフトするキャビティの合成位相Φ
s、および、Φ
aおよびΦ
bの補正された値を使用することによって、例えば、Φ
aおよびΦ
bの非線形性を補正するLUTを適用することによって得られる、補正された合成位相Φ
s,corrの曲線を示す。
【0085】
非線形性および信号ノイズによって、中間絶対距離x
sの不確実性は依然、約δx<λ/4の不確実性を伴う場合がある。この不確実性をnm範囲までさらに低減するために、高精度の絶対距離を得るためにSWA_P3と呼ばれる下記プロセスにおいて、合成縞数と実縞数との間の割り当てを行うことができる。
【0086】
SWA_P3(高精度の絶対距離測定)
以下でSWA_P3と呼ばれる、SWAのさらなるプロセス(P3)において、高精度の絶対距離を決定することができる。レーザ110、120のうちの1つの干渉次数(すなわち、縞数)を決定することによって、高精度の絶対距離を得ることができる。そのように、nm範囲における絶対距離の不確実性を得ることができる。例として、例えば、SWA_P2の合成波長評価から導出される中間絶対距離x
sを使用して、第2のレーザ120の縞数N
bを決定することができる。縞数N
bは、
【0087】
【数2】
として表される、条件N
b<2px
s/λ
bを満たす最大整数として定められる。
【0088】
x
0=(N
b+Φ
b/2π)λ
b/2p (25)
に従って縞数N
bから高精度の絶対距離x
0を決定する。
【0089】
例えば、nm範囲の不確実性をもたらすように、明確な縞数割り当てを確実にするために、(例えば、SWA_P2によって)中間絶対距離測定の全体の不確実性、すなわち、δΦ
sは、位置不確実性δx=λ
b/(2p)に対応する関係式
δΦ
s<2πλ/Λ (26)
によって表される、実波長と合成波長との比率、2πλ/Λに等しい位相不確実性を超えてはならない。λはできるだけ大きいものを選択すべきであることは明らかである。ここで提示される実施例において、例えば、λ
b>λ
a、したがってλ=λ
bは選択可能である。しかしながら、λ=λ
aも使用することができる。
【0090】
図7は、SWAにおいて現れる、信号曲線および位相曲線を例示する。
図7(a)および7(b)は、第1および第2のレーザ光をそれぞれ復調することによって得られる信号S
a、S
bを示す。
図7(c)は、S
a+S
bによって生成されるビーティング・パターンを示す。ビーティング・パターンの周期性を有する合成位相Φ
sは、
図7(d)に示される。
【0091】
図7(e)〜7(h)は、先に説明したような、SWAのプロセスP2およびP3を示す。
図7(h)を参照すると、粗い絶対距離x
ftiは、例えば、SWA_P1、または粗い絶対距離測定のための別の方法によって既に決定されている。その後、δx
ftiが十分小さいものであるとすると、合成波長の縞数N
sを式(21)に従って計算することができる。
【0092】
そして、中間の精確な絶対距離x
sを、例えば、SWA_P2における合成縞数N
sと(位相補正されている場合がある)合成位相Φ
sとに基づいて、式(22)に従って計算することができる(
図7(g)を参照)。
【0093】
次いで、例えば、SWA_P3を使用して、中間絶対距離x
sと式(24)とに基づいて、縞数N
b(またはN
a)を計算することができ(
図7(f)〜7(e)を参照)、式(25)に従って縞数N
bと第2の波長光の位相とに基づいて、または、式(25)と同様に、縞数N
aと第1の波長光の位相とに基づいて、高精度の絶対距離x
0を計算することができる。したがって、計算ユニット170は、縞数N
b(またはN
a)と第2の波長λ
bの位相(または第1の波長λ
aの位相)とに基づいて、高精度の絶対距離x
0を計算するように構成される。
【0094】
SWA_P1、SWA_P2およびSWA_P3は、組み合わせて行われる必要がないことに留意されたい。SWA_P2について、入力変数として必要とされる粗い絶対距離x
ftiは、SWA_P1によって決定される必要がない。さらに、SWA_P3について、入力変数として必要とされる中間の精確な絶対距離x
sは、SWA_P2と異なるプロセスによって提供されてもよい。場合によっては、SWA_P1またはSWA_P2の精度で十分である場合があり、したがって、続くプロセス(SWA_P2およびSWA_P3、またはSWA_P3)は必要とされない場合がある。
【0095】
組み合わせ縞数アプローチ(CFNA)
CFNAは、高精度の絶対距離xを計算する別のスキームを提供する。SWAとは対照的に、合成波長を使用しない。SWAと同様に、(少なくとも、位相補正された値Φ
bを得るための補正プロセスCP2が行われない場合、または、かかる位相補正された値が他の方法によって得られる場合)基本的に2つのレーザ110、120のうちの1つのみが波長可変とされるべきであるが、双方のレーザが波長可変である場合、例えば、より多くの独立したデータセットがより高い精度を得るために収集されるべきである場合、または、一貫性検査が所望される場合は、有利となり得る。したがって、様々な実施形態において、波長掃引レーザ110(例えばレーザA)だけでなく、変位追跡レーザ120(例えばレーザB)も波長可変であってよく、すなわち、周波数掃引を行うように構成されてよく、波長掃引レーザ(すなわち、波長可変動作)および変位追跡レーザ(すなわち、一定波長動作)としての双方のレーザの役割を、測定の過程において入れ替えることができる。
【0096】
また、既に上述したように、双方のレーザ波長は、2つの異なる周波数で変調されて、計算ユニット170において互いに区別可能とされる。例えば、デバイス100、200に関して、上記と同じ設定を使用することができる。すなわち、ファブリ・ペロー干渉計キャビティ140における光干渉は、2つのレーザのそれぞれについて独立して決定することができる光測定信号(同相信号およびそれらの直交信号)につながる。さらに、補正プロセスCP1およびCP2は、例えば、既に説明したような初期化手続き中に前もって行われている可能性があり、それによって、例えば、LUTのデータは、実位相Φ
a、Φ
bをそれらの非線形性について補正するように構成される。
【0097】
一般に、下記でより詳細に説明するように、CFNAは、高精度の絶対距離xを決定するために、極値原理を使用する。CFNAは、波長掃引の開始点および/または停止点における双方のレーザ光の干渉型位相における小数値を記録することと、絶対距離の粗い知識に基づく縞数組み合わせのセットの1つまたは複数を確定することと、縞数組み合わせのセットのそれぞれから特定の縞数組み合わせを選定するための極値原理を適用することと、に基づくことができる。
【0098】
CFNA_P1(開始分数位相(fractional phases)を決定するための測定)
以下でCFNA_P1と呼ばれる、CFNAの第1のプロセス(P1)において、第1のレーザ110および第2のレーザ120のレーザ波長は、それぞれ開始値λ
a,sおよびλ
b,sに設定されてよい。これは、レーザ110、120をそれぞれ、既知の波長λ
a,sおよびλ
b,sへと安定させることによって、例えば、上記のようなフィードバック・ループおよび/または
ガスセルを使用することによって行うことができる。以下、インデックスsは「開始」を意味し、インデックスeは「終了」を意味する。λ
a,sおよびλ
b,sは所望の精度まで知られる。キャビティ長、例えば、第2の共振器鏡142の絶対距離xは、後述される最初の測定の開始時には未知である。
【0099】
CFNA_P1において、干渉型位相の小数値2π∈
a,sおよび2π∈
b,s(すなわち、実位相Φ
a、Φ
b、またはΦ
aおよびΦ
bの位相補正された値)を測定することができる。双方の干渉型位相のこれらの開始小数値2π∈
a,sおよび2π∈
b,sは記録される。これは、例えば、レーザのそれぞれから生じる直交信号から独立して行われてよい。絶対位相(すなわち、開始縞数N
a,sおよびN
b,s)は未知であるが、開始分数位相値2π∈
a,sおよび2π∈
b,sは、高い干渉型精密さで測定可能である。
【0100】
CFNA_P2(第1のレーザ波長掃引)
以下でCFNA_P2と呼ばれる、CFNAの任意選択の後続のプロセス(P2)において、第1のレーザ110(レーザA)の波長λ
aが掃引される。第1のレーザ110の波長は、他の正確に知られた波長値λ
a,eに継続してシフトされる。同時に、第2のレーザ120(レーザB)の波長λ
bを、一定かつ正確な値で、例えば、その安定させた開始値λ
b,sで維持することができる。対応する干渉型の位相のずれを測定できるように、第1のレーザ110の波長を十分ゆっくりとシフトさせる。
【0101】
第1のレーザ110の波長のシフト動作中、関連する位相のずれを、レーザ波長がその安定した正確な終了値λ
a,eに達するまで継続して記録することができる。波長λ
aがその終了値λ
a,eに達すると、波長掃引中の第1のレーザ110の光の位相変位の単一値ΔΦ
a、および、波長掃引中の第2のレーザ120の光の位相変位の単一値ΔΦ
bは両方とも記録される。波長λ
bがこの動作中一定に保たれるため、非ゼロ位相変位ΔΦ
bは、キャビティ長xの変化δxにもっぱら起因することになる。その一方、位相変位ΔΦ
aは、波長掃引によって引き起こされた対象とする波長のずれ、および、キャビティ長の任意の変化δx(例えば、対象の変位δx)双方から生じる。
【0102】
CFNA_P3(xの粗い値、例えば、δxの精確な値の計算)
以下でCFNA_P3と呼ばれる、CFNAのさらなる任意選択のプロセス(P3)において、キャビティ長および第1のレーザ波長掃引中に生じたキャビティ長の変化の値xならびにδxを、例えば、以下の式のうちのいくつかを使用することによって計算することができる:
【0103】
【数3】
これは、6つの未知の数量Φ
a,s、Φ
a,e、Φ
b,s、Φ
b,e、xおよびδxによる方式である。式(32)から、波長ずれ中に生じたキャビティ長の変位δxを、
【0104】
【数4】
に従って計算することができ、これは典型的にはナノメートル範囲内で精確である。
【0105】
最初の測定CFNA_P1におけるキャビティ長x(絶対距離x)は、
【0106】
【数5】
であり、ここで、実効波長Λ
aは、
【0108】
数学的観点から、式(34)は既に問題を解決している。しかしながら、実際には、ΔΦ
aおよびΔΦ
bの測定された値は十分に正確でない場合があり、干渉型変位検知に固有の位相ノイズおよび他の測定誤差によって実状から逸脱する場合がある。位相測定における誤差φは、
【数7】
によって表される位置についての誤差Σにつながることに留意されたい。
【0109】
実効波長Λ
aは、波長のずれλ
a,e−λ
a,sが典型的には、λ
a,sのほんのわずかの端数に過ぎないので、λ
a,sよりも著しく長い。実際、同じ位相誤差φは、
【数8】
の実際の位置誤差につながる。
【0110】
換言すると、評価された位置xについての誤差は、Σ=σ(Λ
a/λ
a,s)=σλ
a,s/(λ
a,e−λ
a,s)である。これは、Λ
a/λ
a,sのレバレッジ係数による誤差の振幅を示し、約10
3であってよい。すなわち、10nmの実際の位置の誤差は、評価された絶対距離xの10μmの誤差につながることになる。したがって、評価された絶対距離xの誤差は、λ
a/2pの測定ピッチよりかなり大きくなる場合がある。したがって、実際に、式(34)は、絶対距離xの粗い推定値を与えるのみであってよい。
【0111】
xの粗い値の決定を、CFNA_P3と異なるプロセスによって行うこともできることに留意されたい。
【0112】
CFNA_P4(xの精確な値の計算)
以下でCFNA_P4と呼ばれる、CFNAのさらなるプロセス(P4)において、式(27)〜(32)の他のいくつかを活用して、xの評価についての誤差を低減する。測定ピッチ内の位相∈
a,s、∈
a,e、∈
b,s、∈
b,eの端数部分を測定することができるため、以下の式を使用してもよい。
【0113】
Φ
a,s=2π(N
a,s+∈
a,s) (38)
Φ
a,e=2π(N
a,e+∈
a,e) (39)
Φ
b,s=2π(N
b,s+∈
b,s) (40)
Φ
b,e=2π(N
b,e+∈
b,e) (41)
【0114】
当技術分野では干渉次数とも呼ばれる、整数縞数N
a,s、N
a,e、N
b,s、N
b,eは未知である。これらの式と式(27)〜(30)とを組み合わせると、以下の式が得られる。
【0116】
次いで、xの粗い絶対距離値を、式(42)および(43)に入力して、縞数N
a,s、N
b,sの粗い値を出す。例として、xの粗い値を、CFNA_P3またはSWA_P2によって計算することができるが、粗い絶対距離値xを得るために、他の手順も使用してよい。
【0117】
その後、縞数の可能性のある組み合わせ[N
a,s;N
b,s]が確定される。開始時の縞数N
a,sおよびN
b,sについての典型的な不確実性は既知であるため(例えば、正または負の既知の整数M)、[N
a,s;N
b,s]の可能な組み合わせ全てのセットを、それぞれ、Mの許容範囲内でN
a,s、N
b,sの粗い値周辺の縞数組み合わせによって示すことができる。
【0118】
そして、式(42)と(43)との間でxを消去する条件である、項
【数10】
を計算する。
【0119】
可能な組み合わせ[N
a,s;N
b,s]全てのうち、
【数11】
が0であるか、または0に最も近い組み合わせ[N’
a,s;N’
b,s]を決定することができる。次いで、この最小組み合わせ[N’
a,s;N’
b,s]に基づき、絶対距離xの精確な値を、例えば、式(42)または式(43)から計算することができる。
【0120】
換言すれば、式(46)は、最小組み合わせ[N’
a,s;N’
b,s]を決定するために、[N
a,s;N
b,s]の可能な組み合わせ全てに対して最小化される。最少組み合わせ[N’
a,s;N’
b,s]は、高精度でxの未知の値を与える。
【0121】
CFNA_P5(xの精確な値の計算)
以下でCFNA_P5と呼ばれる、CFNAの別のプロセス(P5)において、式(42)〜(45)の他のいくつか、すなわち、例えば、式(44)〜(45)を活用して、絶対距離xの精確な値を計算することができる。CFNA_P5を、CFNA_P4の代わりに、または、CFNA_P4に加えて行うことができる。
【0122】
CFNA_P1に従って、双方の干渉型位相の開始小数値2π∈
a,sおよび2π∈
b,sを決定した後、CFNA_P5において、第1のレーザ110の周波数掃引および第2のレーザ120の周波数掃引を行って、2つのデータセットを配信後、これを活用してxの精確な値を計算することができる。
【0123】
CFNA_P2に従って、例えば、CFNA_P2と同時に、第1のレーザ110の周波数掃引を行うことができるが、繰り返しを避けるために、対応する説明を参照する。第1のレーザ110の周波数掃引の終了時に、干渉型位相の終了小数値2π∈
a,eを記録する。
【0124】
第1のレーザ110の周波数掃引終了後、第2のレーザ120の周波数掃引を行うことができる。第2のレーザ120の波長を、別の正確に知られる波長値λ
b,eに継続してシフトする。同時に、第1のレーザ110(レーザA)の波長λ
aを、一定かつ精確な値で、例えば、その安定させた終了値λ
b,eで維持することができる。対応する干渉型の位相のずれを測定できるように、第2のレーザ120の波長を十分ゆっくりとシフトさせる。第2のレーザ120の周波数掃引終了時に、干渉型位相の終了小数値2π∈
b,eを記録する。
【0125】
したがって、絶対位相(すなわち、終了縞数N
a,eおよびN
b,e)は未知であるが、干渉型位相の終了小数値2π∈
a,eおよび2π∈
b,eを高い干渉型精密さで測定することができる。
【0126】
その後、xの粗い絶対距離値を式(44)および(45)に入力して、縞数N
a,e、N
b,eの粗い値を出す。例として、xの粗い絶対距離値を、CFNA_P3またはSWA_P2に従って計算しておくことができるが、粗い絶対距離値xを得るために、他の手順も使用することができる。
【0127】
そして、[N
a,e;N
b,e]の可能な組み合わせを確定する。掃引動作の終了時の縞数N
a,eおよびN
b,eについての典型的な不確実性は既知であるため(例えば、正または負の既知の整数M)、[N
a,e;N
b,e]の可能な組み合わせ全てを、それぞれ、Mの許容範囲内でN
a,e、N
b,eの粗い値周辺の縞数組み合わせによって示すことができる。
【0128】
そして、項
【数12】
を計算することができる。
【0129】
可能な組み合わせ[N
a,e;N
b,e]全てのうち、
【数13】
が0であるか、または0に最も近い組み合わせ[N’
a,e;N’
b,e]を決定することができる。次いで、この最小組み合わせ[N’
a,e;N’
b,e]に基づき、絶対距離xの精確な値を、例えば、式(44)または式(45)から計算することができる。
【0130】
換言すれば、式(47)は、最小組み合わせ[N’
a,e;N’
b,e]を決定するために、[N
a,e;N
b,e]の可能な組み合わせ全てに対して最小化される。最少組み合わせ[N’
a,e;N’
b,e]は、例えば、(44)または(45)に基づき、xの未知の値を高精度にする。
【0131】
結論として、CFNAにおいて、既知の第1の波長λ
aにおける干渉型の第1の波長光の分数位相、および、既知の第2の波長λ
bにおける干渉型の第2の波長光の分数位相を測定するように、デバイス100、200を構成することができる。粗い絶対距離値の知識に基づいて、複数の可能な組み合わせ[N
a;N
b]を計算するように、計算ユニット170を構成することができる。また、計算ユニットは、極値原理、ならびに、干渉型の第1および第2の波長光の測定された分数位相に基づいて、複数の可能な組み合わせ[N
a;N
b]から特定の組み合わせ[N’
a;N’
b]を決定するように構成される。
【0132】
CFNA_P6(CFNA_P4およびCFNA_P5において得られた結果を組み合わせる)
双方のプロセスCFNA_P4およびCFNA_P5が行われた場合、以下でCFNA_P6と呼ばれる、CFNAの別のプロセス(P6)において、CFNA_P4およびCFNA_P5において得られた最小の組み合わせまたはCFNA_P4およびCFNA_P5において得られた絶対距離値xを組み合わせることができる。例として、精確な絶対距離値x(CFNA_P4)および精確な絶対距離値x(CFNA_P5)を、例えば、平均してさらなる絶対距離値xを導出することによって、組み合わせることができる。平均することは、0の条件から最小の組み合わせの距離を評価することと、これらの距離に基づいて平均値に重みを付けることとを伴う。あるいは、またはさらに、CFNA_P4およびCFNA_P5において得られた可能な組み合わせのセットまたは絶対距離値xに基づいて一貫性検査を行うことができる。例として、精確な絶対距離値x(CFNA_P4)および精確な絶対距離値x(CFNA_P5)が所定の閾値、例えば、λ/4またはλ/8とはるかに異なる場合、測定誤差が推定されることになる。
【0133】
したがって、結論として、CFNAにおいて、既知の周波数掃引開始第1波長λ
a,sおよび既知の周波数掃引終了第1波長λ
a,eにおける干渉型の第1の波長光の2つの分数位相を測定するように、かつ、既知の周波数掃引開始第2波長λ
b,sおよび既知の周波数掃引終了第2波長λ
b,eにおける干渉型の第2の波長光の2つの分数位相を測定するように、デバイス100、200を構成することができる。周波数掃引開始時の粗い絶対距離値の知識に基づいて、可能な組み合わせの2つのセット[N
a,s;N
b,s]および[N
a,e;N
b,e]をそれぞれ計算するように、計算ユニットを構成することができる。ここで、N
a,s、N
b,sはそれぞれ、周波数掃引開始第1波長λ
a,sおよび周波数掃引開始第2波長λ
b,sにおける縞数であり、N
a,e、N
b,eはそれぞれ、周波数掃引終了第1波長λ
a,eおよび周波数掃引終了第2波長λ
b,eにおける縞数である。
【0134】
さらに、計算ユニット170は、極値原理、干渉型の第1の波長光の2つの分数位相、および干渉型の第2の波長光の2つの分数位相に基づいて、組み合わせの各セットの特定の組み合わせ[N’
a,s;N’
b,s]および特定の組み合わせ[N’
a,e;N’
b,e]を決定するように構成可能である。
【0135】
したがって、一態様によれば、干渉法による位置または絶対距離測定用デバイスは、第1の周波数間隔にわたって第1の変調周波数によって変調された第1の光の第1の可変周波数を掃引するための手段を含むように、第1の光を干渉計キャビティに入力するように、第1の変調周波数およびその高調波周波数を有する干渉計キャビティによって生成された干渉型の第1の波長光に基づいて干渉測定信号を復調することによって第1の位相のずれを測定するための手段と、第2の変調周波数によって変調された第2の周波数の第2の光を干渉計キャビティに入力することによって、第2の変調周波数およびその高調波周波数を有する干渉型の第2の波長光に基づいて干渉測定信号を復調することによって第2の位相のずれを測定するための手段を含むように、ならびに、第1の周波数間隔、第1の位相のずれおよび第2の位相のずれに基づいて絶対距離の粗い値を計算するための手段を含むように、構成可能である。
【0136】
干渉法による位置または絶対距離測定用デバイスはさらに、絶対距離の粗い値に基づいて、合成波長Λ=λ
aλ
b/(n
aλ
b−n
bλ
a)の縞数N
sを計算するように構成される手段を含むことができる。ここで、n
aは第1の波長λ
aにおける干渉計キャビティ内の屈折率であり、n
bは、第2の波長λ
bにおける干渉計キャビティ内の屈折率である。
【0137】
干渉法による位置または絶対距離測定用デバイスはさらに、既知の第1の波長λ
aにおける干渉型の第1の波長光の分数位相と、既知の第2の波長λ
bにおける干渉型の第2の波長光の分数位相とを測定するための手段を含むように、絶対距離の粗い値に基づいてN
a、N
bの複数の可能な組み合わせを計算するための手段であって、N
aは既知の第1の波長λ
aにおける縞数であり、N
bは既知の第2の波長λ
bにおける縞数である手段を含むように、ならびに、極値原理と、干渉型の第1および第2の波長光の測定された分数位相とに基づいて、N
a、N
bの複数の可能な組み合わせからN
a、N
bの特定の組み合わせを決定するための手段を含むように、構成可能である。
【0138】
干渉法による位置または絶対距離測定用デバイスはさらに、第2の周波数間隔にわたって第2の光の第2の周波数を掃引するための手段を含むように、既知の周波数掃引開始第1波長λ
a,sおよび既知の周波数掃引終了第1波長λ
a,eにおける干渉型の第1の波長光の2つの分数位相を測定するための手段と、既知の周波数掃引開始第2波長λ
b,sおよび既知の周波数掃引終了第2波長λ
b,eにおける干渉型の第2の波長光の2つの分数位相を測定するための手段とを含むように、絶対距離の粗い値に基づいて、N
a,s、N
b,sの第1の組み合わせのセットとN
a,e、N
b,eの第2の組み合わせのセットとを計算するための手段であって、N
a,s、N
b,sはそれぞれ、周波数掃引開始第1波長λ
a,sおよび周波数掃引開始第2波長λ
b,sにおける縞数であり、N
a,e、N
b,eはそれぞれ、周波数掃引終了第1波長λ
a,eおよび周波数掃引終了第2波長λ
b,eにおける縞数である手段を含むように、ならびに、極値原理と、干渉型の第1の波長光の2つの分数位相と、干渉型の第2の波長光の2つの分数位相と基づいて、第1の組み合わせのセットからのN
a,s、N
b,sの特定の組み合わせと、第2の組み合わせのセットからのN
a,e、N
b,eの特定の組み合わせとを決定するための手段を含むように、構成可能である。
【0139】
図10は、地点Aにおける干渉計デバイスの中断および完全停止、ならびに、例えば、数分後または数時間後の、地点Bにおけるシステム・リスタートを示す。典型的には、測定の一時停止中に、物体は、例えば、振動などの外部からの影響などによって引き起こされた変位の影響を受ける。開示内容に従って、絶対距離測定用デバイス100、200は、地点Bにおいて、すなわち、システムが再び稼動し測定が再開される時に、物体の精確な絶対距離を取得することができる。これによって、干渉型位置測定デバイスの実際的な多様性が大幅に向上する。地点Bから開始して、デバイスが測定を再開して、新しい絶対距離を決定した時、後続のxの決定を、従来の漸増変位測定アプローチを適用することによって行うことができる。例えば、特許文献1に記載された漸増変位測定は、1つのレーザ(例えば、レーザ110)を単に要する場合がある。