(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199819
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】廃熱の供給制御システム及び廃熱の供給制御方法
(51)【国際特許分類】
F27D 17/00 20060101AFI20170911BHJP
F27D 19/00 20060101ALI20170911BHJP
F27D 21/00 20060101ALN20170911BHJP
【FI】
F27D17/00 101Z
F27D19/00 A
F27D19/00 Z
!F27D21/00 G
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-137846(P2014-137846)
(22)【出願日】2014年7月3日
(65)【公開番号】特開2016-14515(P2016-14515A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2016年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】万代 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】竹田 太一
【審査官】
河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−127038(JP,A)
【文献】
特開昭54−080210(JP,A)
【文献】
特開2009−236326(JP,A)
【文献】
特開昭62−029889(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01788332(EP,A1)
【文献】
特開2014−087836(JP,A)
【文献】
特開昭55−150401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 17/00 − 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の排気ガスを熱源として再利用しその排気ガスの供給先の温度を制御する廃熱の供給制御システムであって、
高温の排気ガスを排出する廃熱源と、
前記廃熱源に連結された連結管を介して前記廃熱源の排気ガスが供給される熱処理炉と、
前記連結管に接続され、前記連結管内の排気ガスを外気中に排出する第一排気管と、
前記連結管と前記第一排気管との接続部分よりも前記熱処理炉側に設けられ、その開度が可変で前記熱処理炉に供給する排気ガスの流量を調整可能な第一弁と、
前記第一排気管に設けられ、その開度が可変で外気中に排出する排気ガスの流量を調整可能な第二弁と、
前記熱処理炉の炉内温度に応じて前記第一弁及び前記第二弁の開度を制御する弁制御部と、を備え、
前記弁制御部は、前記第一弁の開度を大きくするときには前記第二弁の開度を小さくし、前記第一弁の開度を小さくするときには前記第二弁の開度を大きくして、前記熱処理炉に供給する排気ガスの流量と前記第一排気管から排出する排気ガスの流量を同時に制御可能であることを特徴とする廃熱の供給制御システム。
【請求項2】
前記熱処理炉を加熱する加熱装置と、
前記加熱装置の出力を制御する加熱制御部と、をさらに備え、
前記廃熱源からの排気ガスだけでは前記熱処理炉の炉内を設定温度まで昇温することができない場合、前記加熱制御部は、前記熱処理炉の炉内温度に応じて前記加熱装置の出力を制御可能であることを特徴とする請求項1に記載の廃熱の供給制御システム。
【請求項3】
前記熱処理炉に外気を取り入れる吸気管と、
前記吸気管に設けられ、その開度が可変で前記熱処理炉に供給する外気の流量を調整可能な第三弁と、をさらに備え、
前記弁制御部は、前記熱処理炉の炉内温度と設定温度の差に応じて前記第三弁の開度を調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃熱の供給制御システム。
【請求項4】
前記熱処理炉から出る排気ガスを他の熱処理装置に熱源として供給可能としたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の廃熱の供給制御システム。
【請求項5】
前記廃熱源及び前記熱処理炉で行う熱処理はアルミニウムのT6処理であって、
前記廃熱源は溶体化炉であるとともに前記熱処理炉は時効炉であることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の廃熱の供給制御システム。
【請求項6】
廃熱源から排出される高温の排気ガスを熱処理炉の熱源として再利用するとともに前記熱処理炉の炉内温度を制御する廃熱の供給制御方法であって、
前記廃熱源からの排気ガスを前記熱処理炉に供給する排気ガスと外気中に排出する排気ガスに分けるとともに、前記熱処理炉に供給する排気ガスの流量と外気中に排出する排気ガスの流量を開閉弁の開度調整によって同時に制御し、
前記熱処理炉の炉内温度を監視しつつ、前記熱処理炉に供給する流量を大きくするときには外気中に排出する排気ガスの流量を小さくし、前記熱処理炉に供給する流量を小さくするときには外気中に排出する排気ガスの流量を大きくすることを特徴とする廃熱の供給制御方法。
【請求項7】
前記熱処理炉の炉内温度が設定温度よりも高い場合に、前記熱処理炉に外気を取り入れて炉内温度を低下させることを特徴とする請求項6に記載の廃熱の供給制御方法。
【請求項8】
前記熱処理炉を昇温させる加熱装置を設け、
前記加熱装置の出力を、前記熱処理炉に供給する排気ガスの流量に略比例させることを特徴とする請求項6又は7に記載の廃熱の供給制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温の排気ガスを熱源として再利用しその排気ガスの供給先の温度を制御する廃熱の供給制御システム及び廃熱の供給制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属に対して熱処理を施し、強度や靱性等の機械的性質を向上させることは広く一般に行われており、アルミニウム合金に対してはJISでも定められているT6処理という熱処理がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
T6処理では、高温の溶体化炉と、溶体化炉よりも低温の時効炉の二つの炉を用いてアルミニウム合金のワークに熱処理を施す。
まず、溶体化炉において、500℃前後の雰囲気下でワークに溶体化処理を行い、溶け込んでいない元素を均一に溶け込ませる。
次に、水槽にワークを浸けて焼入れ処理を行う。
最後に、時効炉において、200℃前後の雰囲気下でワーク中に溶けている元素の析出を早める時効処理を行う。これにより、早く必要な強度を得ることができる。
【0004】
しかし、従来のT6処理では、溶体化炉から排出される高温の排気ガスをそのまま外気中に放出する一方で、時効炉では室温から200℃前後まで昇温させていたので、炉内を昇温させるための加熱装置の燃料コストが嵩み、またそのようにエネルギーを無駄にすることは環境面からも好ましくなかった。
【0005】
そこで、
図3に示すように、溶体化炉10と時効炉20を連結管1で連結し、その連結管1を介して溶体化炉10からの排気ガスを時効炉20に供給する廃熱の供給制御システムが開発されている。
この廃熱の供給制御システムにおいては、連結管1に弁5,6(コントロールダンパー)が二つ設けられ、時効炉20へ供給される高温の排気ガスの流量が制御される。
【0006】
時効炉20の炉内温度が設定温度よりも低い場合には弁5の開度を大きくして、時効炉20へ流れる排気ガスの流量を多くする。一方、炉内温度が設定温度よりも高い場合には弁5の開度を小さくして、時効炉20へ流れ込む排気ガスの量を制限する。
そして、時効炉20へ供給される排気ガス以外の排気ガスは排気管2(煙突)から外気中に排出される。
【0007】
この廃熱の供給制御システムによると、外気中に捨てていた溶体化炉10からの廃熱を、時効炉20を加熱する熱源として再利用するので、時効炉20における燃料コストを削減でき、大幅な省エネとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−255823号公報
【特許文献2】特開平9−31581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、時効炉20では炉内温度を設定温度に近付け、その状態で一定時間保持する必要があるが、溶体化炉10の炉内温度が上がり過ぎたらバーナー11出力を下げ、それに伴って溶体化炉10から排出される排気ガスの量も減るというように、溶体化炉10から排出される排気ガスの流量が安定しないので、弁5の開閉制御を行っても時効炉20に供給される排気ガスの流量が十分には安定せず、時効炉20における精密な温度制御が難しいという問題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的とするところは、燃料コストを低減できるとともに、再利用する排気ガスの流量が安定しなくても精密に温度制御可能な廃熱の供給制御システム及び廃熱の供給制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の廃熱の供給制御システムは、高温の排気ガスを熱源として再利用しその排気ガスの供給先の温度を制御する廃熱の供給制御システムであって、高温の排気ガスを排出する廃熱源(10)と、前記廃熱源(10)に連結された連結管(1)を介して前記廃熱源(10)の排気ガスが供給される熱処理炉(20)と、前記連結管(1)に接続され、前記連結管(1)内の排気ガスを外気中に排出する第一排気管(2)と、前記連結管(1)と前記第一排気管(2)との接続部分よりも前記熱処理炉(20)側に設けられ、その開度が可変で前記熱処理炉(20)に供給する排気ガスの流量を調整可能な第一弁(31)と、前記第一排気管(2)に設けられ、その開度が可変で外気中に排出する排気ガスの流量を調整可能な第二弁(32)と、前記熱処理炉(20)の炉内温度に応じて前記第一弁(31)及び前記第二弁(32)の開度を制御する弁制御部(41)と、を備え、前記弁制御部(41)は、前記第一弁(31)の開度を大きくするときには前記第二弁(32)の開度を小さくし、前記第一弁(31)の開度を小さくするときには前記第二弁(32)の開度を大きくして、前記熱処理炉(20)に供給する排気ガスの流量と前記第一排気管(2)から排出する排気ガスの流量を同時に制御可能であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の廃熱の供給制御システムは、前記熱処理炉(20)を加熱する加熱装置(21)と、前記加熱装置(21)の出力を制御する加熱制御部(41)と、をさらに備え、前記廃熱源(10)からの排気ガスだけでは前記熱処理炉(20)の炉内を設定温度まで昇温することができない場合、前記加熱制御部(41)は、前記熱処理炉(20)の炉内温度に応じて前記加熱装置(21)の出力を制御可能であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の廃熱の供給制御システムは、前記熱処理炉(20)に外気を取り入れる吸気管(4)と、前記吸気管(4)に設けられ、その開度が可変で前記熱処理炉(20)に供給する外気の流量を調整可能な第三弁(33)と、をさらに備え、前記弁制御部(41)は、前記熱処理炉(20)の炉内温度と設定温度の差に応じて前記第三弁(33)の開度を調整可能であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の廃熱の供給制御システムは、前記熱処理炉(20)から出る排気ガスを他の熱処理装置に熱源として供給可能としたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の廃熱の供給制御システムは、前記廃熱源(10)及び前記熱処理炉(20)で行う熱処理はアルミニウムのT6処理であって、前記廃熱源(10)は溶体化炉(10)であるとともに前記熱処理炉(20)は時効炉(20)であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の廃熱の供給制御方法は、廃熱源(10)から排出される高温の排気ガスを熱処理炉(20)の熱源として再利用するとともに前記熱処理炉(20)の炉内温度を制御する廃熱の供給制御方法であって、前記廃熱源(10)からの排気ガスを前記熱処理炉(20)に供給する排気ガスと外気中に排出する排気ガスに分けるとともに、前記熱処理炉(20)に供給する排気ガスの流量と外気中に排出する排気ガスの流量を開閉弁の開度調整によって同時に制御し、前記熱処理炉(20)の炉内温度を監視しつつ、前記熱処理炉(20)に供給する流量を大きくするときには外気中に排出する排気ガスの流量を小さくし、前記熱処理炉(20)に供給する流量を小さくするときには外気中に排出する排気ガスの流量を大きくすることを特徴とする。
【0017】
また、請求項7に記載の廃熱の供給制御方法は、前記熱処理炉(20)の炉内温度が設定温度よりも高い場合に、前記熱処理炉(20)に外気を取り入れて炉内温度を低下させることを特徴とする。
【0018】
また、請求項8に記載の廃熱の供給制御方法は、前記熱処理炉(20)を昇温させる加熱装置(21)を設け、前記加熱装置(21)の出力を、前記熱処理炉(20)に供給する排気ガスの流量に略比例させることを特徴とする。
【0019】
なお、ここでいう第n弁(n:一,二,三)とは、開度を段階的又は連続的に変えることができるバルブやダンパーをいう。
【0020】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、弁制御部は、第一弁の開度を大きくするときには第二弁の開度を小さくし、第一弁の開度を小さくするときには第二弁の開度を大きくして、熱処理炉に供給する排気ガスの流量と第一排気管から排出する排気ガスの流量を同時に制御可能であるので、第一弁の廃熱源側の圧力が安定し、それに伴い熱処理炉に供給される排気ガスの流量が安定する。
よって、燃料コストを低減でき、しかも再利用する廃熱源からの排気ガスの流量が安定しなくても、排気ガスが供給される熱処理炉を精密に温度制御可能である。
【0022】
また、本発明によれば、廃熱源からの排気ガスだけでは熱処理炉の炉内を設定温度まで昇温することができない場合、加熱制御部は、熱処理炉の炉内温度に応じて加熱装置の出力を制御可能であるので、加熱装置の出力は最低限となり、燃料コストが低廉である。
【0023】
また、弁制御部は、熱処理炉の炉内温度と設定温度の差に応じて第三弁の開度を調整可能であるので、さらに精密な温度制御が可能である。
【0024】
また、熱処理炉から出る排気ガスを他の熱処理装置に熱源として供給可能としたので、さらに省エネである。
【0025】
特に、廃熱源及び熱処理炉で行う熱処理はアルミニウムのT6処理であって、廃熱源は溶体化炉であるとともに熱処理炉は時効炉であると、溶体化炉が時効炉よりも高温であるので、効率よく低温の時効炉を排気ガスで加熱することができ、別途時効炉を加熱装置で加熱する必要がない場合が多く、無駄がない。
【0026】
また、加熱装置の出力を、熱処理炉に供給する排気ガスの流量に略比例させるので、設定温度まで短時間で昇温可能である。
【0027】
なお、本発明の廃熱の供給制御システム及び廃熱の供給制御方法のように、弁制御部が、第一弁の開度を大きくするときには第二弁の開度を小さくするように、熱処理炉に供給する排気ガスの流量と第一排気管から排出する排気ガスの流量を同時に制御可能な点は、上述した特許文献1及び2には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る廃熱の供給制御システムを示す概略図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る廃熱の供給制御システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】従来例に係る廃熱の供給制御システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第一実施形態)
図1及び
図2を参照して、本発明の第一実施形態に係る廃熱の供給制御システム及び廃熱の供給制御方法を説明する。
この廃熱の供給制御システムは、アルミニウム合金のワークに対してT6処理を行う際の廃熱リサイクルに関するもので、主に溶体化炉10と、時効炉20と、連結管1と、第一排気管2と、第一弁31と、第二弁32と、制御部41と、を備える。
そして、特に第一弁31と第二弁32の制御方法に特徴を有する。
ここで、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0030】
溶体化炉10は、ワークに溶体化処理を行うために内部をバーナー11で加熱する。その設定温度は500℃前後であり、第一温度センサー12によって所定の時間間隔で炉内温度を測定するとともに、制御部41が監視してバーナー11の出力をフィードバック制御している。
そして、高温の排気ガスが溶体化炉10から排出される。
【0031】
時効炉20は、ワークに時効処理を行うための炉であり、内部を加熱するためのヒーター21(バーナーであってもよい)が設けられている。時効炉20の設定温度は溶体化炉10より低温の200℃前後であり、第二温度センサー22によって所定の時間間隔で炉内温度を測定している。
時効炉20と溶体化炉10は連結管1で連結され、その連結管1を介して時効炉20には廃熱源である溶体化炉10から高温の排気ガスが供給される。
また、連結管1と第一排気管2との接続部分よりも時効炉20側の連結管1の部位には第一弁31が設けられており、第一弁31はその開度が可変のバルブ又はダンパーである。そして、第一弁31の開度を段階的又は連続的に調節することによって、時効炉20に供給する排気ガスの流量を調整可能となっている。
【0032】
第一排気管2は、連結管1に接続されており、連結管1内の排気ガスのうち時効炉20に供給されない排気ガスを外気中に排出する。つまり、溶体化炉10からの排気ガスを時効炉20に供給する排気ガスと外気中に排出する排気ガスに分けている。
【0033】
第二排気管3は、時効炉20に接続されており、時効炉20の排気ガスを外気中に排出する。
図1では第二排気管3が第一排気管2に接続されているが、これに限られるものではなく、第一排気管2と第二排気管3がそれぞれ排気ガスを排出可能であってもよい。
【0034】
そして、第二弁32が、第一排気管2と第二排気管3との接続部分よりも時効炉20側(溶体化炉10側)の第一排気管2の部位に設けられている。第二弁32の開度は可変で、外気中に排出する排気ガスの流量を段階的又は連続的に調整可能であり、物としては第二弁32と第一弁31は同一の物である。
この第二弁32を備えることで、第二弁32の開度を小さくしたときには、第一排気管2から外気中へ自由に排気されることを防止し、時効炉20への排気ガスの流量を増大させ易くしている。
【0035】
吸気管4は、第一弁31よりも時効炉20側の連結管1の部位に接続されており、時効炉20に常温の外気を取り入れる。
また、吸気管4には第三弁33が設けられ、その開度が可変で時効炉20に供給する外気の流量を調整可能である。
【0036】
また、第二排気管3には第四弁34が設けられるとともに、連結管1と第一排気管2との接続部分よりも溶体化炉10側の連結管1の部位には第五弁35が設けられている。
第三弁33、第四弁34、第五弁35も第一弁31と同じ物であり、取付けられている箇所がそれぞれ異なるだけである。
【0037】
制御部41は、第一弁31や第二弁32、温度センサー12,22等のシステムの構成要素から信号を送受信し、システム全体を制御するCPUからなる。制御部41によって、第一弁31や第二弁32等の弁や、バーナー11やヒーター21等の加熱装置に対してフィードバック制御(PID制御)する。
【0038】
RAM42は、キーボードやタッチパネル等の入力装置44によって入力されモニター45に表示される溶体化炉10及び時効炉20の設定温度や、それぞれの炉での加熱時間の設定値等を記憶する。
ROM43は、本実施形態に係るシステム全体を制御する制御プログラムを記憶する。
【0039】
以上のように構成された廃熱の供給制御システムにおける廃熱の供給制御方法について説明する。
制御部41は、溶体化炉10の第一温度センサー12で計測した溶体化炉10の炉内温度の信号を受信し、それが設定温度(500℃前後)よりも低いときにはバーナー11の出力を上げる。この出力に略比例させて制御部41は第五弁35の開度を大きくし(表1参照)、連結管1を通じて排気ガスを溶体化炉10から排出する。
【0041】
次に、制御部41は、時効炉20の第二温度センサー22で計測した時効炉20の炉内温度の信号を受信し、それが設定温度(200℃前後)よりも低いときには、第一弁31の開度を大きくして溶体化炉10から時効炉20に取り入れる排気ガスの量を増大させる。
一方制御部41は、これと同時に第二弁32の開度を第一弁31の開度に略反比例させる(表2参照)。つまり、第一弁31の開度を大きくするときには第二弁32の開度を小さくする。
【0043】
また、制御部41は、第四弁34の開度を第一弁31の開度と同じにして、時効炉20の内の圧力が上がり過ぎないように、取り入れた排気ガスの分だけ第二排気管3を通じて時効炉20から排気ガスを排出させる。
【0044】
そして、時効炉20の炉内温度が設定温度より高くなってしまった場合には、制御部41は第一弁31の開度を小さくして時効炉20に取り入れる排気ガスの量を減少させ、それと同時に第二弁32の開度を大きくして、第一排気管2から外気中に排出する排気ガスの流量を増大させる。
このように、第一弁31と第二弁32を同時に制御することで、時効炉20に供給する高温の排気ガスの流量と外気中に排出する排気ガスの流量を同時に制御している。
【0045】
また、時効炉20の炉内温度が設定温度よりも高くそれが1℃以内である場合には、表3に示すように、制御部41は温度の微調整のために第三弁33の開度を大きくして、時効炉20に外気を取り入れて時効炉20の炉内温度を低下させる。このとき、炉内温度と設定温度の差が大きいほど第三弁33の開度を大きくする。
【0047】
本実施形態においては、溶体化炉10から排出される排気ガスの温度が時効炉20の設定温度よりも十分高いので、時効炉20のヒーター21を稼働させなくても時効炉20を十分加熱できる。
仮に溶体化炉10を一次停止させた場合等のように、溶体化炉10からの排気ガスだけでは時効炉20の炉内を設定温度まで昇温することができない場合、制御部41は第一弁31の開度を大きく保つとともに、補助的にヒーター21の出力を上げて時効炉20を昇温させることができる。
【0048】
以上のように構成された廃熱の供給制御システム及び廃熱の供給制御方法によれば、制御部41は、第一弁31の開度を大きくするときには第二弁32の開度を小さくし、第一弁31の開度を小さくするときには第二弁32の開度を大きくして、時効炉20に供給する排気ガスの流量と第一排気管2から排出する排気ガスの流量を同時に制御可能であるので、第一弁31の溶体化炉10側の圧力が安定し、それに伴い時効炉20に供給される排気ガスの流量が安定する。
【0049】
つまり、時効炉20を昇温させる場合だけでなく連結管1内の排気ガスの流量が少ない場合にも、第一弁31の開度を大きくし、それと同時に第二弁32の開度を小さくして外気中に排出される排気ガスの流量を減らすことで、時効炉20に供給される排気ガスの流量が安定する。
よって、時効炉20における燃料コストを低減でき、しかも再利用する溶体化炉10からの排気ガスの流量が安定しなくても、排気ガスが供給される時効炉20を精密に温度制御可能である。
また、制御部41は、時効炉20の炉内温度と設定温度の差に応じて第三弁33の開度を調整可能であるので、さらに精密な温度制御が可能である。
【0050】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る廃熱の供給制御方法を説明する。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
システムの構成自体は第一実施形態で説明したものと同じであり、制御方法が異なる。
【0051】
第一実施形態においては、時効炉20のヒーター21は補助的に使用されただけであったが、本実施形態においては、ヒーター21の使用を前提とする。
すなわち、表4に示すように、制御部41がヒーター21の出力を大きくしたときには、それに略比例させて第一弁31の開度も大きくする。
この場合も、第二弁32の開度は第一弁31の開度とは略反比例させて、時効炉20への排気ガスの供給を安定させる。
【0053】
この廃熱の供給制御方法によると、時効炉20に供給する排気ガスの流量(第一弁31の開度)をヒーター31の出力に略比例させるので、設定温度まで短時間で昇温可能である。
【0054】
なお、第一,第二実施形態において、溶体化炉10から排出された廃熱(排気ガス)を時効炉20において再利用したが、この組合せに限られるものではなく、例えば炉以外の他の廃熱源からの排気ガスであってもよい。もちろん、精密な温度制御を行う炉は時効炉20に限られず、他の熱処理炉であってよい。
【0055】
また、安定して高温の排気ガスが供給される場合であれば、排気ガスが供給されるその熱処理炉(時効炉20)にヒーター21等の加熱装置が無くてもよい。
【0056】
また、吸気管4は連結管1に接続されているが、これに限られるものではなく、時効炉20に直接吸気管4が接続されていてもよい。
さらには、吸気管4を備えなくてもよい。
【0057】
また、第一弁31と第二弁32さえあれば最低限の温度制御はできるので、第三弁33、第四弁34、第五弁35は無くてもよい。
【0058】
また、第二排気管3を他の熱処理装置に接続して時効炉20から出る排気ガスをその熱処理装置の熱源としてもよく、その場合、さらに省エネとなる。
また、一つの制御部41が二つの炉と全ての弁31,32,33,34,35の制御を行ったが、これに限られるものではなく、制御部41を複数備えて役割を分担させてもよい。
【0059】
また、連結管1の内径と第一排気管2の内径が異なっていてもよく、この場合であっても本実施形態に係る制御で時効炉20内の温度を微調整可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 連結管
2 第一排気管(排気管)
3 第二排気管
4 吸気管
5 弁
6 弁
10 溶体化炉(廃熱源)
11 バーナー
12 第一温度センサー
20 時効炉(熱処理炉)
21 ヒーター(加熱装置)
22 第二温度センサー
31 第一弁
32 第二弁
33 第三弁
34 第四弁
35 第五弁
41 制御部(弁制御部、加熱制御部)
42 RAM
43 ROM
44 入力装置
45 モニター