(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199825
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】静電容量式タッチパネルとその入力操作位置検出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20170911BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
G06F3/041 522
G06F3/044 124
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-154521(P2014-154521)
(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公開番号】特開2016-31691(P2016-31691A)
(43)【公開日】2016年3月7日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095636
【弁理士】
【氏名又は名称】早崎 修
(72)【発明者】
【氏名】吉川 治
(72)【発明者】
【氏名】今井 貴夫
【審査官】
▲高▼瀬 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0154965(US,A1)
【文献】
特開2013−152635(JP,A)
【文献】
特開2014−035606(JP,A)
【文献】
特表2010−533329(JP,A)
【文献】
特表2013−539884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁パネルの第1方向に等間隔で第1方向と直交する第2方向に沿って配線される複数の検出電極S(n)と、
絶縁パネルの第2方向に等間隔で第1方向に沿って形成され、それぞれ前記複数の検出電極S(n)と絶縁間隔を隔てて交差する複数の駆動領域DV(m)と、
一定電圧の交流検出信号を発生する検出信号発生回路と、
複数の駆動領域DV(m)のいずれかの駆動領域DV(m)に交流検出信号を出力する間に、交流検出信号を出力した駆動電極群DV(m)に交差する複数の検出電極S(n)に表れる検出電圧を順に検出し、複数の駆動領域DV(m)と複数の検出電極S(n)の各交点(m、n)の入力操作体が接近しない状態での検出電圧からの電圧変化レベルR(m、n)を検出する走査手段と、
電圧変化レベルR(m、n)が所定の入力判定閾値以上となる交点(m、n)の絶縁パネル上の位置から、第1方向と第2方向の入力操作位置を検出する位置検出手段とを備えた静電容量式タッチパネルであって、
位置検出手段は、
第1方向と第2方向で隣り合う交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)を比較し、第1方向と第2方向のいずれの方向についても電圧変化レベルR(m、n)が入力判定閾値以上の極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)を検出する極値検出手段と、
交点(m0、n0)の周囲を少なくとも隣接して囲う第1交点群の8カ所の各交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m、n)を、極大値Rmaxに対して1未満の比率に設定する足きり閾値と比較するデータ選択手段とを有し、
電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)と足きり閾値以上となる第1交点群の交点(m1、n1)を有効交点とし、有効交点の絶縁パネル上の位置と、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)とから、第1方向と第2方向の入力操作位置を検出することを特徴とする静電容量式タッチ入力装置。
【請求項2】
データ選択手段は、第1交点群の各交点(m1、n1)と、第1交点群の各交点(m1、n1)を更に隣接して囲う第2交点群の16カ所の各交点(m2、n2)の電圧変化レベルR(m、n)を、足きり閾値と比較し、
位置検出手段は、電圧変化レベルR(m、n)が、極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)と足きり閾値以上となる第1交点群の交点(m1、n1)及び第2交点群の交点(m2、n2)を有効交点とすることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式タッチ入力装置。
【請求項3】
入力操作手段は、有効交点が極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)のみである場合には、入力操作位置を検出しないことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の静電容量式タッチ入力装置。
【請求項4】
入力判定閾値近傍の極大値Rmaxに対して1未満の一定比率に設定した足きり閾値が、入力判定閾値未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の静電容量式タッチ入力装置。
【請求項5】
足きり閾値の最小値が、少なくとも交点(m、n)のベースノイズによる最大電圧変化レベルR(n、m)以上となるように、極大値Rmaxに対して一定比率に設定することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の静電容量式タッチ入力装置。
【請求項6】
絶縁パネルの第1方向に等間隔で第1方向と直交する第2方向に沿った複数の検出電極S(n)と、絶縁パネルの第2方向に等間隔で第1方向に沿った複数の駆動領域DV(m)とが、それぞれの交点(m、n)で絶縁間隔を隔てて交差し、
複数の駆動領域DV(m)のいずれかの駆動領域DV(m)に一定電圧の交流検出信号を出力する間に、交流検出信号を出力した駆動電極群DV(m)に交差する複数の検出電極S(n)に表れる検出電圧を順に検出し、複数の駆動領域DV(m)と複数の検出電極S(n)の各交点(m、n)の入力操作体が接近しない状態での検出電圧からの電圧変化レベルR(m、n)を検出し、
電圧変化レベルR(m、n)が所定の入力判定閾値以上となる交点(m、n)の絶縁パネル上の位置から、第1方向と第2方向の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルの入力操作位置検出方法であって、
全ての交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)から、第1方向と第2方向で隣り合う交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)を比較し、第1方向と第2方向のいずれの方向についても電圧変化レベルR(m、n)が入力判定閾値以上の極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)を検出する第1工程と、
交点(m0、n0)の周囲を少なくとも隣接して囲う第1交点群の8カ所の各交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m、n)を、極大値Rmaxに対して1未満の一定比率に設定する足きり閾値と比較する第2工程と、
電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)と足きり閾値以上となる第1交点群の交点(m1、n1)を有効交点とし、有効交点の絶縁パネル上の位置と、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)とから、第1方向と第2方向の入力操作位置を検出する第3工程を備えたことを特徴とする静電容量式タッチ入力装置の入力操作位置検出方法。
【請求項7】
第3工程で入力操作位置を検出した後、極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)と有効交点の電圧変化レベルR(m、n)を無視し、残る全ての交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)について第1工程から第3工程を繰り返し、
第3工程で他の入力操作位置を検出することを特徴とする請求項6に記載の静電容量式タッチ入力装置の入力操作位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力操作体が接近することにより静電容量が変化する駆動領域と検出電極の交点の絶縁パネル上の配置位置から、入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルとその入力操作位置検出方法に関し、特に、ノイズの影響を受けずに高精度に入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
指などの入力操作体による入力位置を検出する静電容量式タッチパネルには、入力操作体が接近することにより浮遊容量が増大する検出電極を検出し、その検出電極の配置位置から入力操作位置を検出する自己容量方式(1線式)と、駆動電極へ所定電圧レベルの交流の検出信号を出力し、入力操作体が接近することにより検出信号の検出電圧が低下する検出電極を検出し、その検出電極の配置位置から入力操作位置を検出する相互容量方式(2線式)とに分けられる。前者の方式は、駆動電極を配線しないので、構造が簡略化されるが、検出する浮遊容量が10乃至20pFと検出が困難な微小レベルであるので、一般には後者の相互容量方式が採用されている。
【0003】
相互容量方式を採用する静電容量式タッチパネルでは、検出信号を出力する複数の駆動電極と、検出信号により表れる検出電圧を検出する複数の検出電極を互いに直交させて配線し、駆動電極と検出電極が交差する交点毎に検出電圧の電圧変化レベルを監視し、入力操作体が接近するとこにより電圧変化レベルが所定の設定値以上となる検出電極の交点の位置から入力操作位置を検出している(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
以下、特許文献1の従来の静電容量式タッチパネル100で直交する2方向の入力操作位置を検出する方法を
図6と
図7を用いて説明する。
図6に示すように、静電容量式タッチパネル100は、絶縁パネル101の表面に、X方向に沿って菱形のパターンを連続させた13本の駆動電極D1〜D13と、Y方向に沿って菱形のパターンを連続させた12本の検出電極S1〜S12がそれぞれの交差位置(交点)を互いに絶縁して配線されている。13本の駆動電極D1〜D13は、Y方向に等ピッチで、12本の検出電極S1〜S12は、X方向に等ピッチで配線され、一方の電極の菱形のパターンが他方の電極の菱形のパターンの隙間を相補し、全体で千鳥状のパターンとして表れる形状で配線されている。
【0005】
駆動電極Dは、3本毎に一つの駆動領域DV(m)にまとめられ、駆動領域DV(m)毎にその駆動領域DV(m)に含まれる駆動電極Dに一定電圧の交流検出信号を出力し、同時に、交流検出信号を出力している駆動領域DV(m)と交差する複数の検出電極S(n)に表れる検出電圧を順に読みとる。指などの入力操作体が接近せずに駆動領域DV(m)や検出電極S(n)の浮遊容量に変動がなければ、検出電圧は、交流検出信号の出力電圧に比例する通常電圧V
0で変化しない。一方、入力操作体が交流検出信号を出力した駆動領域DV(m)と検出電圧を検出する検出電極S(n)の交点(m、n)に接近すると、駆動領域DV(m)若しくは検出電極S(n)と入力操作体間の静電容量が増大し、交流検出信号の一部が入力操作体へ流れ、検出電極S(n)に表れる検出電圧は通常電圧V
0から低下する。入力操作体とこれらの駆動領域DV(m)若しくは検出電極S(n)との距離が接近するほど、検出電圧は入力操作体が接近しない状態での通常電圧V
0から低下するので、通常電圧V
0と検出電圧の電位差を反転させて二値化した電圧変化レベルR(m、n)で、入力操作体すなわち入力操作位置と交点(m、n)との相対距離を表し、
図6に示すように、一走査期間中に検出したm行n列の電圧変化レベルR(m、n)から入力操作位置を検出する。
【0006】
図7は、例えば、入力操作位置が駆動領域DV(3)と検出電極S(5)の近傍にあるときに、一走査周期(S1)に検出した全ての交点(m、n)のm行n列の電圧変化レベルR(m、n)を示している。説明を容易にするため、同図では、各電圧変化レベルR(m、n)を10進値で表し、入力操作体が接近していない状態で検出電極S(n)から検出する検出電圧が通常電圧V
0である場合を「0」と、入力操作があったと推定する入力判定閾値を「16」としている。
【0007】
入力操作体との静電容量が無視できるほど入力操作位置から離れた交点(m、n)では、検出電極S(n)から読みとった検出電圧は、基本的に通常電圧V
0であるので、その交点(m、n)での電圧変化レベルR(m、n)は「0」となるが、ベースノイズによる影響を受けて、0から7程度の値で変動している。一方、入力操作位置近傍の交点(3、5)での電圧変化レベルR(3、5)は、その周囲の交点(m、n)と比較して極大値となり、入力判定閾値「16」を超える「73」であるので、図中X方向とY方向で極大値が検出された交点(3、5)の近傍が入力操作位置であると推定する。
【0008】
続いて、電圧変化レベルR(3、5)が極大値となった交点(3、5)とその周囲を隣接して囲う8カ所の第1交点群の各交点(m1、n1)を入力操作位置の算出に用いる有効交点とし、各有効交点の電圧変化レベルR(m、n)(図中薄墨の地色で表示)の加重平均値からX、Y方向の入力操作位置を算出する。
【0009】
すなわち、12本の検出電極S(n)の絶縁パネル101上の配線位置毎に、初期値に「16」、X方向のピッチに「32」を割り当てて重み付けする。続いて、有効交点とする検出電極S(4−6)毎にY方向に合計し、Sum(4)「137」、Sum(5)「161」、Sum(6)「57」を算出し、その総和「355」を算定すると共に、検出電極S(4−6)毎の合計値Sum(4−6)毎に、その検出電極S(4−6)の配線位置に付与された重み付けを乗じて、その総和「48560」を算出する。加重平均から求めるX方向の入力操作位置は、「48560」/「375」の136.8であり、X方向について重み付けした136.8の位置(検出電極S(4)と検出電極S(5)の間)がX方向の入力操作位置x’として検出される。
【0010】
同様に、Y方向の入力操作位置yの検出は、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)のY方向の加重平均値から求める。Y方向の位置の重み付けは、6種類の各駆動領域DV(m)間の間隔に「16」を割り当て、各駆動領域DV(m)の中間位置毎に「16」づつ繰り上げる。続いて、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)を駆動領域DV(2−4)毎にX方向に合計し、Sum(2)「36」、Sum(3)「161」、Sum(4)「158」を算出し、その総和「355」を算定すると共に、駆動領域DV(2−4)毎の合計値Sum(2−4)毎に、その駆動領域DV(2−4)のY方向中間位置に付与された重み付けを乗じて、その総和「18992」を算出する。加重平均から求めるY方向の入力操作位置は、「18992」/「355」の53.5であり、Y方向について重み付けした53.5の位置(駆動領域DV(3)と駆動領域DV(4)の間)がY方向の入力操作位置y’として検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2013−152635号公報
【特許文献2】特開2012−248035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このようにして、駆動領域DV(m)や検出電極S(n)間のピッチを補完し、一走査周期毎に高精度にX方向とY方向の入力操作位置(x、y)を検出しているが、例えば入力操作位置が隣り合う駆動領域DV(m)や検出電極S(n)の中間付近にある場合には、電圧変化レベルR(m0、n0)が極大値となる交点(m0、n0)に隣接する交点(m0’、n0’)の電圧変化レベルR(m0’、n0’)が近似する。その結果、異なる走査周期では、わずかなノイズによってもその値が逆転することがあり、異なる交点(m0’、n0’)の電圧変化レベルR(m0’、n0’)が極大値となる場合が生じる。
【0013】
例えば、一走査周期(S1)に検出した
図7に示す全ての交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)から算出したY方向の入力操作位置は、駆動領域DV(3)と駆動領域DV(4)の中間付近にあり、交点(3、5)の電圧変化レベルR(3、5)が「73」で極大値となるが、
図8に示すように、次の一走査周期(S2)ではノイズなどの影響で隣接する交点(4、5)の電圧変化レベルR(4、5)が「73」となり、電圧変化レベルR(3、5)の「71」を超えて極大値となり、更に、次の一走査周期(S3)では、再び交点(3、5)の電圧変化レベルR(3、5)が「72」となり、電圧変化レベルR(4、5)の「69」を超えて極大値となることがある。
【0014】
一方、一走査周期毎の入力操作位置の算出は、上述した通り、電圧変化レベルR(m0、n0)が極大値となる交点(m0、n0)とその周囲を隣接して囲う8カ所の第1交点群の各交点(m1、n1)とからなる各有効交点の電圧変化レベルR(m、n)の加重平均値からX、Y方向の入力操作位置を算出するので、極大値が生じる交点(m0、n0)がわずかなノイズで変化すると、有効交点となる第1交点群の各交点(m1、n1)が変わり、入力操作位置が一定であるにもかかわらず、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)から算出する入力操作位置が頻繁に移動するものとなった。その結果、検出した入力操作位置に対応するディスプレー上の位置にカーソルを表示していると、入力操作位置を移動させていないにもかかわらず、カーソルの表示位置が走査周期毎に大きく変化してしまうという問題があった。
【0015】
例えば、一走査周期(S1)(S3)では、交点(2、4)、(2、5)、(2、6)が入力操作位置の算出に用いる有効交点となるとともに、一走査周期(S2)では、一走査周期(S1)(S3)で有効交点とならない交点(5、4)、(5、5)、(5、6)が入力操作位置の算出に用いる有効交点となり、極大値となる電圧変化レベルR(m0、n0)が「4」以下のレベルでわずかに変化しても、Y方向の入力操作位置は、大きく変化する。
【0016】
同様の問題は、駆動領域DV(m)や検出電極S(n)間のピッチを超える入力操作体により入力操作を行う場合にも生じ、隣り合う交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)が極大値となる近傍で近似することにより、極大値となる交点(m0、n0)が隣り合う交点(m、n)間で走査周期毎に変化し、算出する入力操作位置が頻繁に変動することになった。
【0017】
また、この種の静電容量式タッチパネルは、入力操作体との微弱な静電容量の変化に応じた検出電圧の電圧変化レベルR(m、n)から入力操作位置を検出するので、その周囲に配置される表示装置に発生するノイズや周囲の浮遊容量に帯電する静電ノイズによる影響を受けやすいが、一交点(m、n)についての検出期間は200乃至400μsecであるので、5μsecから10μsecの期間に発生するこれらの静電ノイズは、特定の交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)にのみ表れ、従来のノイズ判定方法では判別できなかった。
【0018】
更に、極大値が入力判定閾値付近となる入力操作では、その周囲の多くの交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m、n)が入力判定閾値未満となり、入力操作位置の算定に用いる有効交点とならないので、限られた有効交点の電圧変化レベルR(m、n)から入力操作位置を算定し、その精度が低下するという問題があった。
【0019】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、入力操作位置や入力操作体の大きさにかかわらず、ノイズの影響を受けずに高精度に入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルと静電容量式タッチパネルの入力操作位置検出方法を提供することを目的とする。
【0020】
また、短時間に発生するスパイクノイズを検知し、スパイクノイズの影響を受けずに高精度に入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルと静電容量式タッチパネルの入力操作位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の目的を達成するため、請求項1の静電容量式タッチパネルは、絶縁パネルの第1方向に等間隔で第1方向と直交する第2方向に沿って配線される複数の検出電極S(n)と、絶縁パネルの第2方向に等間隔で第1方向に沿って形成され、それぞれ前記複数の検出電極S(n)と絶縁間隔を隔てて交差する複数の駆動領域DV(m)と、一定電圧の交流検出信号を発生する検出信号発生回路と、複数の駆動領域DV(m)のいずれかの駆動領域DV(m)に交流検出信号を出力する間に、交流検出信号を出力した駆動電極群DV(m)に交差する複数の検出電極S(n)に表れる検出電圧を順に検出し、複数の駆動領域DV(m)と複数の検出電極S(n)の各交点(m、n)の入力操作体が接近しない状態での検出電圧からの電圧変化レベルR(m、n)を検出する走査手段と、電圧変化レベルR(m、n)が所定の入力判定閾値以上となる交点(m、n)の絶縁パネル上の位置から、第1方向と第2方向の入力操作位置を検出する位置検出手段とを備えた静電容量式タッチパネルであって、
位置検出手段は、第1方向と第2方向で隣り合う交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)を比較し、第1方向と第2方向のいずれの方向についても電圧変化レベルR(m、n)が入力判定閾値以上の極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)を検出する極値検出手段と、交点(m0、n0)の周囲を少なくとも隣接して囲う第1交点群の8カ所の各交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m、n)を、極大値Rmaxに対して1未満の比率に設定する足きり閾値と比較するデータ選択手段とを有し、電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)と足きり閾値以上となる第1交点群の交点(m1、n1)を有効交点とし、有効交点の絶縁パネル上の位置と、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)とから、第1方向と第2方向の入力操作位置を検出することを特徴とする。
【0022】
入力操作位置が隣り合う交点(m、n)の中間にあると、隣り合う交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)が近似し、いずれかの電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxとなる。電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)を挟み、入力操作位置と逆側に位置する第1交点群の交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m、n)は、極大値Rmaxに対して大きく低下するので、足きり閾値に達せず、入力操作位置の検出に用いられない。その結果、隣り合う交点(m、n)のいずれが極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)となっても、入力操作位置の検出に、入力操作位置を挟んで逆側の交点(m1、n1)で検出される電圧変化レベルR(m、n)が用いられないので、残りの有効交点の電圧変化レベルR(m、n)から算定する入力操作位置は大きく変化しない。
【0023】
また、幅広の入力操作体が隣り合う交点(m、n)のいずれにも接近する場合にも、隣り合う交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)が近似し、いずれかの電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxとなる。電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)を挟み、幅広の入力操作体の中心位置と逆側に位置する第1交点群の交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m、n)は、極大値Rmaxに対して大きく低下するので、足きり閾値に達せず、入力操作位置の検出に用いられない。その結果、隣り合う交点(m、n)のいずれが極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)となっても、入力操作位置の検出に、入力操作体の中心位置を挟んで逆側の交点(m1、n1)で検出される電圧変化レベルR(m、n)が用いられないので、残りの有効交点の電圧変化レベルR(m、n)から算定する入力操作体の中心位置である入力操作位置は大きく変化しない。
【0024】
請求項2の静電容量式タッチパネルは、データ選択手段が、第1交点群の各交点(m1、n1)と、第1交点群の各交点(m1、n1)を更に隣接して囲う第2交点群の16カ所の各交点(m2、n2)の電圧変化レベルR(m、n)を、足きり閾値と比較し、位置検出手段は、電圧変化レベルR(m、n)が、極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)と足きり閾値以上となる第1交点群の交点(m1、n1)及び第2交点群の交点(m2、n2)を有効交点とすることを特徴とする。
【0025】
入力操作体の接近により検出電圧が変化する可能性のある第2交点群の交点(m2、n2)まで有効交点とし、その電圧変化レベルR(m、n)を入力操作位置の検出に用いる。
【0026】
請求項3の静電容量式タッチパネルは、有効交点が極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)のみである場合に、入力操作手段は入力操作位置を検出しないことを特徴とする。
【0027】
スパイクノイズが発生すると、スパイクノイズの発生時に走査していた交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)のみが異常に上昇し、その交点(m、n)が、入力判定閾値以上の極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)となる。一方、交点(m0、n0)の周囲を囲う第1交点群若しくは第1交点群と第2交点群の各交点(m1、n1/m2、n2)の検出電圧を検出している間には、スパイクノイズが発生していないので、各交点(m1、n1/m2、n2)の電圧変化レベルR(m、n)は、極大値Rmaxに対して1未満の一定比率に設定する足きり閾値未満となり、有効交点が極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)のみとなることから、スパイクノイズの発生と推定し、入力操作位置を検出しない。
【0028】
請求項4の静電容量式タッチパネルは、入力判定閾値近傍の極大値Rmaxに対して1未満の一定比率に設定した足きり閾値が、入力判定閾値未満であることを特徴とする。
【0029】
極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)の電圧変化レベルR(m0、n0)が入力判定閾値近傍である低い入力操作である場合に、その周囲の有効交点の電圧変化レベルR(m、n)が入力判定閾値未満であっても足きり閾値以上であれば、有効交点としてその交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)が入力操作位置の検出に用いられる。
【0030】
請求項5の静電容量式タッチパネルは、足きり閾値の最小値が、少なくとも交点(m、n)のベースノイズによる最大電圧変化レベルR(n、m)以上となるように、極大値Rmaxに対して一定比率に設定することを特徴とする。
【0031】
極大値Rmaxが入力判定閾値であるときに、極大値Rmaxに対して一定比率に設定する足きり閾値は最小値となり、少なくとも交点(m、n)のベースノイズによる電圧変化レベルR(n、m)以上であるので、入力操作体が接近しない状態での電圧変化レベルR(m、n)がベースノイズによる影響を受けても足きり閾値以上とならない。
【0032】
請求項6の静電容量式タッチパネルの入力操作位置の検出方法は、絶縁パネルの第1方向に等間隔で第1方向と直交する第2方向に沿った複数の検出電極S(n)と、絶縁パネルの第2方向に等間隔で第1方向に沿った複数の駆動領域DV(m)とが、それぞれの交点(m、n)で絶縁間隔を隔てて交差し、複数の駆動領域DV(m)のいずれかの駆動領域DV(m)に一定電圧の交流検出信号を出力する間に、交流検出信号を出力した駆動電極群DV(m)に交差する複数の検出電極S(n)に表れる検出電圧を順に検出し、複数の駆動領域DV(m)と複数の検出電極S(n)の各交点(m、n)の入力操作体が接近しない状態での検出電圧からの電圧変化レベルR(m、n)を検出し、電圧変化レベルR(m、n)が所定の入力判定閾値以上となる交点(m、n)の絶縁パネル上の位置から、第1方向と第2方向の入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルの入力操作位置検出方法であって、
全ての交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)から、第1方向と第2方向で隣り合う交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)を比較し、第1方向と第2方向のいずれの方向についても電圧変化レベルR(m、n)が入力判定閾値以上の極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)を検出する第1工程と、交点(m0、n0)の周囲を少なくとも隣接して囲う第1交点群の8カ所の各交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m、n)を、極大値Rmaxに対して1未満の一定比率に設定する足きり閾値と比較する第2工程と、電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)と足きり閾値以上となる第1交点群の交点(m1、n1)を有効交点とし、有効交点の絶縁パネル上の位置と、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)とから、第1方向と第2方向の入力操作位置を検出する第3工程を備えたことを特徴とする。
【0033】
第1工程により、第1方向と第2方向のいずれの方向についても電圧変化レベルR(m、n)が入力判定閾値以上の極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)を検出し、第2工程で、その交点(m0、n0)の周囲を少なくとも隣接して囲う第1交点群の8カ所の各交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m、n)を、極大値Rmaxに対して1未満の一定比率に設定する足きり閾値と比較する。第3工程では、極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)を挟み、入力操作位置と逆側に位置する第1交点群の交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m、n)は、極大値Rmaxに対して大きく低下するので、足きり閾値に達せず、入力操作位置の検出に用いられない。入力操作位置を検出した後、第1工程で極大値Rmaxとなっていた交点(m0、n0)から入力操作位置の方向で隣り合う交点(m、n)が、ノイズなどの原因で極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)となった場合には、第2工程と第3工程で、同様に、入力操作位置と逆側に位置する第1交点群の交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m、n)が入力操作位置の検出に用いられない。その結果、電圧変化レベルR(m、n)が極大値となる付近で近似する隣り合う交点(m、n)のいずれが極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)となっても、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)から算定する入力操作位置は大きく変化しない。
【0034】
請求項7の静電容量式タッチパネルの入力操作位置の検出方法は、第3工程で入力操作位置を検出した後、極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)と有効交点の電圧変化レベルR(m、n)を無視し、残る全ての交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)について第1工程から第3工程を繰り返し、第3工程で他の入力操作位置を検出することを特徴とする。
【0035】
絶縁パネル上の各交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)は、それぞれ独立した走査期間に検出するので、入力操作位置の検出に用いた有効交点の電圧変化レベルR(m、n)を無視して、次の第1工程から第3工程を繰り返し、電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxとなる他の交点(m0、n0)を検出することができ、これを繰り返して、極大値Rmaxとなる各交点(m0、n0)についての有効交点の絶縁パネル上の位置と、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)とから、第1方向と第2方向の複数の入力操作位置を検出することができる。
【発明の効果】
【0036】
請求項1と請求項6の発明によれば、隣り合う交点(m、n)の中間を入力操作、若しくは、幅広の入力操作体による入力操作を行っても、ノイズによる入力操作位置の検出誤差が小さく、入力操作位置が頻繁に大きく移動することがない。
【0037】
請求項2の発明によれば、入力操作位置の周囲の広範囲の交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)を用いて高精度に入力操作位置の検出できる。
【0038】
請求項3の発明によれば、スパイクノイズが発生した場合に入力操作位置を検出しないので、スパイクノイズの影響を受けずに入力操作位置を検出できる。
【0039】
請求項4の発明によれば、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)が入力判定閾値未満であっても足きり閾値以上であれば、その交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)を入力操作位置の検出に用い、多数の電圧変化レベルR(m、n)から精度良く入力操作位置検出を検出できる。
【0040】
請求項5の発明によれば、入力操作体が接近しない状態での電圧変化レベルR(m、n)が、ベースノイズを受けても入力操作位置の検出データとして用いられることがないので、ベースノイズの影響を受けない高精度の入力操作位置を検出できる。
【0041】
請求項7の発明によれば、絶縁パネル上の2以上の位置を同時に入力操作しても、それぞれの入力操作位置を検出でき、検出した各入力操作位置は各走査周期毎に大きく変化しない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る静電容量式タッチパネル1の駆動領域DV(m)と検出電極S(n)と、両者の交点(m、n)に表れる検出電極の電圧変化レベルR(m、n)との関係を示す説明図である。
【
図3】(a)は、駆動領域DV(m)と検出電極S(2)との交点(m、2)の電圧変化レベルR1(m、2)が極大値Rmaxとなった場合の、 (b)は、ノイズの影響を受けて、駆動領域DV(m)と検出電極S(3)との交点(m、3)の電圧変化レベルR2(m、3)が極大値Rmaxとなった場合の、入力操作位置Pと各交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)の関係を示す説明図である。
【
図4】一走査周期(S)で検出されたm行n列の全ての交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)から入力操作位置を検出する方法を示す説明図である。
【
図5】全ての交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)と、有効交点の電圧変化レベルR(m、n)から検出する入力操作位置を、異なる走査周期(S1、S2、S3)毎に示す説明図である。
【
図6】従来の静電容量式タッチパネル100の駆動領域DV(m)と検出電極S(n)と、両者の交点(m、n)に表れる検出電極の電圧変化レベルR(m、n)との関係を示す説明図である。電圧変化レベルR(m、n)との関係を示す説明図である。
【
図7】静電容量式タッチパネル100により、全ての交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)から入力操作位置を検出する従来の方法を示す説明図である。
【
図8】全ての交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)と、従来の静電容量式タッチパネル100によって検出する入力操作位置を、異なる走査周期(S1、S2、S3)毎に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の一実施の形態に係る静電容量式タッチパネル(以下、タッチパネルという)1とタッチパネル1の入力操作位置検出方法を、
図1乃至
図5を用いて説明する。
図1に示すように、このタッチパネル1は、絶縁パネル2の表面に、X方向に沿って菱形のパターンを連続させた13本の駆動電極D1〜D13と、Y方向に沿って菱形のパターンを連続させた12本の検出電極S1〜S12がそれぞれ交点を互いに絶縁して配線されている。13本の駆動電極D1〜D13は、Y方向に等ピッチで、12本の検出電極S1〜S12は、X方向に等ピッチで配線され、一方の電極の菱形のパターンが他方の電極の菱形のパターンの隙間を相補し、全体で千鳥状のパターンとして表れる形状で配線されている。
【0044】
絶縁パネル2上に格子状に配線された駆動電極D1〜D13及び検出電極S1〜S12の表面側は、これらの電極を保護するとともに、指等の入力操作体が直接これらの電極に触れて誤作動しないように、図示しない透明絶縁シートで覆われている。すなわち、本実施の形態に係るタッチパネル1は、入力操作体を透明絶縁シートに触れ、若しくは近接させて入力操作を行い、透明絶縁シートを介して入力操作体が接近することによる駆動電極Dと入力操作体間の静電容量の増大を、入力操作体近傍の検出電極S(n)に表れる検出電圧の電圧変化レベルR(m、n)から読みとり、入力操作位置を検出するものである。この検出原理のもとに、駆動電極D1〜D13間及び検出電極S1〜S12間のピッチは、それぞれ絶縁パネル2上のいずれに入力操作体を接近させる入力操作があっても、その入力操作位置が検出できるピッチとし、ここでは、例えばいずれも4mmのピッチで配線している。
【0045】
図2に示すように、各駆動電極D1〜D13は、それぞれノイズを除去するダンピング抵抗6を介して、パルス高さがVoの検出信号を矩形波交流信号にして出力する検出電圧発生回路3に接続している。また、各駆動電極D1〜D13とダンピング抵抗6の接続点には、マイコン4の入出力ポートP1〜P13が各駆動電極D1〜D13に対応して接続している。
【0046】
入出力ポートPが、その入出力ポートPを出力ポートの状態とするOFFモードである場合には、その入出力ポートが接続する駆動電極(図中のD1、D5乃至D13)の電位が出力ポートの電位(例えば「L」)レベルであれば0V、「H」レベルであればVCC)で安定し、検出電圧発生回路3から出力される矩形波交流信号の検出信号は、その入出力ポートPに接続する駆動電極D(図中のD1、D5乃至D13)に出力されない。また、入出力ポートPが、その入出力ポートPを入力ポートの状態とするONモードである場合には、その入力ポートPがハイインピーダンス状態であるので、検出電圧発生回路3から出力される矩形波交流信号は、入出力ポートP(図中のP2〜P4)へ流れ込まず、その入出力ポートPに接続する駆動電極D(図中のD2〜D4)に、矩形波交流信号による検出信号が出力される。つまり、マイコン4は、任意の順に任意の1又は2以上の入出力ポートPを出力ポートか入力ポートの状態とするだけで、その入出力ポートPが接続する駆動電極Dへの検出信号の出力を制御する。
【0047】
本実施の形態では、
図1に示すように、Y方向で隣り合う3本の駆動電極D毎に駆動領域DV(m)にまとめられ、Y方向で隣り合う駆動領域DV(m)と駆動領域DV(n’)は、その間に配線される駆動電極Dにおいて重複し、重複する駆動電極Dがいずれの駆動領域DV(m)、DV(n’)をも構成している。このようにして、絶縁パネル2に配線される13本の駆動電極Dから、6種類の駆動領域DV(m)(mは1から6までの整数)が設定される。
【0048】
マイコン4は、Y方向に沿ったこの駆動領域DV(m)の順に、駆動領域DV(m)に対応する入出力ポートPを0Nモードとして、その駆動領域DV(m)を構成する3本の駆動電極Dに同期する矩形波交流信号を出力し、パルス高さがVoの検出信号を出力する。これにより、駆動領域DV(m)毎に検出信号を出力する6回の駆動制御で、絶縁パネル2上に配線された全ての駆動電極Dへ検出信号を出力する。
【0049】
12本の検出電極S(n)(nは1から12までの整数)は、マイコン4からの制御によりマイコン4の電圧検出回路4aとの接続が切り換えられるマルチプレクサ7に接続している。マイコン4は、各駆動領域DV(m)の駆動制御期間毎に、12本の検出電極S(n)との接続を順に切り換え、切り替え接続した検出電極S(n)に表れる検出電圧をマイコン4の電圧検出回路4aへ接続する。
【0050】
電圧検出回路4aは、マイコン4がいずれかの駆動領域DV(m)に検出信号を出力している間、その駆動領域DV(m)と交差する検出電極S(n)間の静電容量C
0を介して検出電極S(n)に表れる矩形波交流信号のパルス高さ(検出電圧)を読みとる。この静電容量C
0はほぼ一定値であるので、入力操作体が接近せずに駆動領域DV(m)の浮遊容量に変動がなければ、検出電圧は、検出信号の出力電圧に比例する通常電圧V
0で変化しない。一方、入力操作体が検出信号を出力した駆動領域DV(m)若しくは検出電極S(n)に接近すると、駆動領域DV(m)若しくは検出電極S(n)と入力操作体間の静電容量が増大し、矩形波交流信号の一部が入力操作体へ流れ、検出電極S(n)に表れる検出電圧は低下する。入力操作体とこれらの駆動領域DV(m)若しくは検出電極S(n)との距離が接近するほど、検出電圧は通常電圧V
0から低下する。そこで、マイコン4は、検出信号を出力した駆動領域DV(m)と検出電圧を検出する検出電極S(n)との交点(m、n)の検出電圧の変化量を、通常電圧V
0と電圧検出回路4aが検出した検出電圧の電位差を反転させて二値化した電圧変化レベルR(m、n)で表し、電圧変化レベルR(m、n)から入力操作位置を算出する。
【0051】
上述のタッチパネル1では、一走査周期(S)で、6種類の各駆動領域DV(m)を上方から順に駆動制御して検出信号を出力し、いずれかの駆動領域DV(m)に検出信号を出力している間に、12本の各検出電極S(n)を左から順にマルチプレクサ7で選択し、選択した検出電極S(n)の検出電圧から、全ての駆動制御した駆動領域DV(m)と選択した検出電極S(n)との交点(m、n)について、
図4と
図5に例示する6行12列の電圧変化レベルR(m、n)を検出する。ここでは、各駆動領域DV(m)毎の走査周期が4msecであるので、1走査周期Sは、4msec*6行の24msecとなる。
【0052】
マイコン4の位置検出部は、1走査周期S毎に6行12列の電圧変化レベルR(m、n)を比較し、電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxとなった電圧変化レベルR(m0、n0)を所定値に設定した入力判定閾値と比較し、極大値Rmaxが入力判定閾値以上である場合にその交点(m0、n0)の近傍に入力操作体が接近したもの推定し、極大値Rmaxとなった交点(m0、n0)及びその周囲の第1交点群の交点(m1、n1)のXY方向の位置と、各交点(m0、n0)、(m1、n1)の電圧変化レベルR(m0、n0)、電圧変化レベルR(m1、n1)を用いて、入力操作位置を算出する。本発明では、特に、第1交点群の交点(m1、n1)のうち、電圧変化レベルR(m1、n1)が足きり閾値Rtd以上である交点(m1、n1)を極大値Rmaxとなった交点(m0、n0)とともに入力操作位置の検出に用いる有効交点とし、有効交点の電圧変化レベルR(m0、n0)、電圧変化レベルR(m1、n1)を用いて、交点(m0、n0)付近の入力操作位置を高精度に検出する。
【0053】
ここで、交点(m0、n0)の周囲の第1交点群の交点(m1、n1)とは、電圧変化レベルR(m0、n0)が極大値Rmaxとなった交点(m0、n0)に隣接して交点(m0、n0)を囲う交点(m1、n1)であり、交点(m0、n0)と斜めの方向で隣り合う交点を含む交点(m0、n0)の周囲8カ所の交点(m0±1、n0±1)である。また、足きり閾値Rtdは、極大値Rmaxとなった交点(m0、n0)に隣り合う交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m1、n1)であっても、極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)が移動することによって誤差の原因となる電圧変化レベルR(m1、n1)を入力操作位置の算出データから除く目的で、極大値Rmaxに対して一定比率の値に設定されるもので、本実施の形態では、足きり閾値Rtdを、極大値Rmaxの1/2に設定している。
【0054】
図3は、入力操作位置PがX方向で隣り合う検出電極S(n)間の中間位置にあり、ノイズによって極大値Rmaxとなる交点(m0、n0)がX方向で移動する状態を示している。同一の駆動領域DV(m)と各検出電極S(n)との交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)を結ぶ曲線R(m、n)は、入力操作位置Pが検出電極S(2)と検出電極S(3)の中間位置にある場合には、その中間位置で最も大きく、中間位置のX方向の左右の交点(m、2)の電圧変化レベルR(m、2)と交点(m、3)の電圧変化レベルR(m、3)はほぼ同一の大きさで、いずれかわずかに大きい側が極大値Rmaxとなる。
【0055】
一方、検出電極S(n)の検出電圧は、入力操作位置Pにかかわらず、回路の検出誤差や周辺環境の変化など不確定な要因によるベースノイズの影響を受けて変動し、各検出電極S(n)の電圧変化レベルR(m、n)も微小範囲で変動する。その結果、入力操作位置Pが一定であるにもかかわらず、ベースノイズが発生するタイミングや大きさによって、
図3(a)に示すように、交点(m、2)の電圧変化レベルR(m、2)が極大値Rmaxになる場合や、
図3(b)に示すように、交点(m、3)の電圧変化レベルR(m、3)が極大値Rmaxになる場合があり、極大値Rmaxが発生する交点(m0、n0)は、交点(m、2)と交点(m、3)間で変化しやすい。
【0056】
ここで、
図3(a)に示すように、交点(m、2)が極大値Rmaxが発生する交点(m0、n0)である場合には、X方向で隣り合う交点(m、1)は、交点(m0、n0)に隣り合う第1交点群に属するが、入力操作位置Pとの距離d1が交点(m、2)と入力操作位置Pとの距離d2の概ね3倍であるので、その電圧変化レベルR(m、1)は、極大値Rmaxである電圧変化レベルR(m、2)の1/2以下となり、足きり閾値Rtdに達しない。従って、検出電極S(1)と交差する交点(m−1、1)、(m、1)、(m+1、1)は、交点(m、2)を隣接して囲う第1交点群に属するが有効交点とはならず、これらの電圧変化レベルR((m−1、1)、R(m、1)、R(m+1、1)は、入力操作位置Pを算定するためのデータとして採用されない。
【0057】
同様に、
図3(b)に示すように、交点(m、3)が極大値Rmaxが発生する交点(m0、n0)である場合には、X方向で隣り合う交点(m、4)は、交点(m0、n0)に隣り合う第1交点群に属するが、入力操作位置Pとの距離d4が交点(m、3)と入力操作位置Pとの距離d3の概ね3倍であるので、その電圧変化レベルR(m、4)は、極大値Rmaxである電圧変化レベルR(m、3)の1/2以下となり、足きり閾値Rtdに達しない。従って、検出電極S(4)と交差する交点(m−1、4)、(m、4)、(m+1、4)は、交点(m、3)を隣接して囲う第1交点群に属するが有効交点とはならず、これらの電圧変化レベルR((m−1、4)、R(m、4)、R(m+1、4)も、入力操作位置Pを算定するためのデータとして採用されない。
【0058】
つまり、極大値Rmaxが発生する交点(m0、n0)が交点(m、2)と交点(m、3)のいずれとなっても、交点(m0、n0)について入力操作位置Pと逆側の交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m1、n1)は入力操作位置の算出に用いられず、その結果、算定する入力操作位置PはX方向で大きく変化しない。
【0059】
隣り合う交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)が極大値の付近で近似する状態は、上述したX方向で隣り合う検出電極S(n)間の中間を入力操作した場合に限らず、Y方向で隣り合う駆動領域DV(m)間の中間を入力操作した場合にも生じ、このような場合に、極大値Rmaxが発生する交点(m0、n0)がY方向で頻繁に移動しても、算定する入力操作位置PはY方向で大きく変化しない。
【0060】
また、隣り合う交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)が極大値の付近で近似する状態は、隣り合う交点(m、n)に跨がるような大きさの入力操作体で入力操作を行った場合にも生じる。例えば、駆動領域DV(m)や検出電極S(n)の配線ピッチより太い幅の指で隣り合う駆動領域DV(m)や検出電極S(n)に跨がるように入力操作を行った場合には、隣り合ういずれの交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)も極大値の付近で近似するが、いずれの交点(m、n)が極大値Rmaxが発生する交点(m0、n0)となっても、その入力操作体で覆われない外側の交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m1、n1)が入力操作位置の算出に用いられないので、算定する入力操作位置Pは大きく変化しない。
【0061】
更に、本実施の形態では、極大値Rmaxの大きさにかかわらず、足きり閾値Rtdを極大値Rmaxに対して1未満の一定比率(例えば、1/2)としている。従って、極大値Rmaxが入力判定閾値と同一若しくはわずかに高い値である場合には、極大値Rmaxが発生する交点(m0、n0)を隣接して囲う第1交点群の多くの交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m1、n1)が入力判定閾値未満となる。しかしながら、足きり閾値Rtd以上であれば、入力判定閾値未満であっても入力操作位置の算出データとして用いるので、入力判定閾値をわずかに超える感度の悪い入力操作であっても、多数の電圧変化レベルR(m1、n1)から正確に入力操作位置を算定できる。
【0062】
また、本実施の形態では、極大値Rmaxが発生する交点(m0、n0)を隣接して囲う第1交点群の全ての交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m1、n1)が足きり閾値Rtd未満である場合、すなわち、極大値Rmaxが発生する交点(m0、n0)のみが有効交点となる場合には、その極大値Rmaxが入力判定閾値以上であっても、スパイクノイズによる影響と推定し、入力操作位置を検出しない。
【0063】
すなわち、各駆動領域DV(m)毎の走査周期が4msecであり、各駆動領域DV(m)に12本の検出電極S(n)が交差する各交点(m、n)の検出期間は、350μsecである一方、一般の静電ノイズの発生期間は、5μsec乃至10μsecであるので、このようなスパイクノイズが発生すると、特定の交点(m、n)のみの電圧変化レベルR(m、n)が異常上昇し、極大値Rmaxが発生する交点(m0、n0)として検出される。しかしながら、隣接する第1交点群の交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m1、n1)は、スパイクノイズの影響を受けずに足きり閾値Rtd以上とならないので、有効交点が交点(m0、n0)のみであることから、スパイクノイズの発生と推定できる。
【0064】
マイコン4は、一走査周期(S)で、検出した全ての交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)から、入力判定閾値を超える極大値を検出し、XY方向の入力操作位置を算定すると、その入力操作位置の算定に用いた全ての有効交点の電圧変化レベルR(m、n)を「0」とし、同一走査周期(S)で検出したその他の電圧変化レベルR(m、n)に、入力判定閾値を超える別の極大値が検出された場合には、その極大値が検出された交点(m0、n0)について上記と同様の処理を繰り返して、別の入力操作位置Pを検出する。従って、本実施の形態によれば、複数の入力操作位置Pを同時に入力操作した場合にも各入力操作位置を検出できる。
【0065】
以下、本実施の形態により入力操作位置を算定する方法を、従来のタッチパネル100による方法と比較しながら、
図4と
図5を用いて説明する。
図4と
図5では、従来の方法により算定する入力操作位置と比較するために、各交点(m、n)毎に検出する6行12列の電圧変化レベルR(m、n)を、検出電極S(n)から読みとった検出電圧が通常電圧V
0である場合を「0」とした10進値で表し、従来例で説明した
図7、
図8と同一の値としている。
【0066】
入力操作体との静電容量が無視できるほど入力操作位置Pから離れた交点(m、n)では、検出電極S(n)から読みとった検出電圧は、基本的に通常電圧V
0であるので、その交点(m、n)での電圧変化レベルR(m、n)は「0」となるが、ベースノイズを受けて、0から7程度の値で変動している。一方、入力操作位置を算定するデータの判別基準となる足きり閾値Rtdは、その最小値が少なくともこのベースノイズの変動値以上の「8」以上となるように設定する必要がある。上述したように、足きり閾値Rtdは極大値Rmaxに対して1/2の一定比率に設定され、その最小値は、極大値Rmaxが入力判定閾値に等しい場合であるので、入力判定閾値を「16」とし、足きり閾値Rtdの最小値がベースノイズの影響を受けない「8」以上としている。
【0067】
図4と
図5に示す各走査周期(S)では、交点(3、5)と交点(4、5)の中間付近に入力操作位置Pがあるものとし、
図4に示す走査周期(S1)では、交点(3、5)の電圧変化レベルR(3、5)が、X方向とY方向でその周囲と比較した極大値Rmaxとなり、かつ入力判定閾値「16」を超える「73」であるので、交点(3、5)を極大値Rmaxが検出された交点(m0、n0)とし、その近傍が入力操作位置Pであると推定する。
【0068】
尚、検出された極大値が入力判定閾値未満である場合には、入力操作と無関係に、コモンモードノイズや検出誤差などにより電圧変化レベルR(m、n)が極大値となったものと推定し、以下の入力操作位置の算出を行わない。
【0069】
図4では、入力判定閾値「16」越える極大値は、駆動領域DV(3)と検出電極S(5)との交点(3,5)での「73」のみであるので、極大値Rmax「73」の1/2から足きり閾値Rtd「36.5」を求める。続いて、極大値Rmaxを検出した交点(3、5)に隣接してこれを囲う8カ所の第1交点群の各交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m1、n1)(図中薄墨の地色で表示)を足きり閾値Rtd「36.5」と比較し、足きり閾値Rtd「36.5」を超える電圧変化レベルR(m1、n1)(図中薄墨の地色に斜線を加えて表示)の交点(m1、n1)を入力操作位置の算出に用いる有効交点とする。すなわち、第1交点群の各交点(m1、n1)のうち、極大値Rmaxを検出した交点(3、5)について入力操作位置Pと逆側の駆動領域DV(2)に交差する交点(2、4−6)の電圧変化レベルR(2、4−6)は、入力操作位置の算出に用いない。
【0070】
X方向の入力操作位置xは、有効交点の電圧変化レベルR(m1、n1)のX方向の加重平均値から求める。すなわち、12本の検出電極S(n)の絶縁パネル2上の配線位置毎に、初期値に「16」、X方向のピッチに「32」を割り当てて重み付けする。検出電極S(1)の重み付けを「16」とするのは、入力操作体の影響をX方向の片側からのみ受けるからである。続いて、有効交点の電圧変化レベルR(m1、n1)を検出電極S(4−6)毎にY方向に合計し、Sum(4)「126」、Sum(5)「145」、Sum(6)「48」を算出し、その総和「319」を算定すると共に、検出電極S(6−8)毎の合計値Sum(6−8)毎に、その検出電極S(6−8)の配線位置に付与された重み付けを乗じて、その総和「43440」を算出する。加重平均から求めるX方向の入力操作位置は、「43440」/「319」の136.2であり、X方向について重み付けした136.2の位置(検出電極S(4)と検出電極S(5)の間)がX方向の入力操作位置xとして検出される。
【0071】
同様に、Y方向の入力操作位置yの検出は、有効交点の電圧変化レベルR(m1、n1)のY方向の加重平均値から求める。Y方向の位置の重み付けは、6種類の各駆動領域DV(m)間の間隔に「16」を割り当て、各駆動領域DV(m)の中間位置毎に「16」づつ繰り上げる。続いて、有効データを駆動領域DV(3、4)毎にX方向に合計し、Sum(3)「161」とSum(4)「158」を算出し、その総和「319」を算定すると共に、駆動領域DV(3、4)毎の合計値Sum(3、4)毎に、その駆動領域DV(3、4)のY方向中間位置に付与された重み付けを乗じて、その総和「17840」を算出する。加重平均から求めるY方向の入力操作位置は、「17840」/「319」の55.9であり、Y方向について重み付けした55.9の位置(駆動領域DV(3)と駆動領域DV(4)の間)がY方向の入力操作位置yとして検出される。
【0072】
図5に示すように、次の一走査周期(S2)ではノイズなどの影響で隣接する交点(4、5)の電圧変化レベルR(4、5)「73」が入力判定閾値を超える極大値となっているので、交点(4、5)に隣接してこれを囲う8カ所の第1交点群の各交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m1、n1)(図中薄墨の地色で表示)を足きり閾値Rtd「36.5」と比較し、電圧変化レベルR(m1、n1)が足きり閾値Rtd「36.5」を超える交点(m1、n1)を有効交点とし、その電圧変化レベルR(m1、n1)(図中薄墨の地色に斜線を加えて表示)から同様の方法で、X方向の入力操作位置x「135.5」とY方向の入力操作位置y「56.1」を算出する。
【0073】
更に次の一走査周期(S3)では、再び交点(3、5)の電圧変化レベルR(3、5)「72」が入力判定閾値を超える極大値となるので、交点(3、5)に隣接してこれを囲う8カ所の第1交点群の各交点(m1、n1)の電圧変化レベルR(m1、n1)(図中薄墨の地色で表示)を足きり閾値Rtd「36」と比較し、電圧変化レベルR(m1、n1)が足きり閾値Rtd「36」を超える交点(m1、n1)を有効交点とし、その電圧変化レベルR(m1、n1)(図中薄墨の地色に斜線を加えて表示)から同様の方法で、X方向の入力操作位置x「135.5」とY方向の入力操作位置y「55.8」を算出する。
【0074】
このようにして本実施の形態により各走査周期S毎に算定した入力操作位置(x、y)を、従来方法で算定した入力操作位置(x’、y’)と比較して明らかなように、極大値Rmaxを検出した交点(m0、n0)がY方向の交点(3、5)と交点(4、5)間で移動することによる入力操作位置のY方向の誤差は、従来方法によればY方向に重み付けした距離で最大「5.3」であるのに対して、本実施の形態では、最大「0.3」に縮小され、高精度に入力操作位置を検出できる。
【0075】
上記実施の形態では、極大値Rmaxを検出した交点(m0、n0)の周囲を隣接して囲う8カ所の第1交点群の各交点(m1、n1)から、電圧変化レベルR(m、n)が足きり閾値Rtdを超える交点(m1、n1)を有効交点としたが、第1交点群の各交点(m1、n1)を更に隣接して囲う8カ所の第2交点群の各交点(m2、n2)の電圧変化レベルR(m2、n2)が足きり閾値Rtdを超える場合に、その交点(m2、n2)を有効交点に含めてもよい。
【0076】
第2交点群の各交点(m2、n2)まで有効交点とすることにより、太指など入力操作体が幅広であったり、各交点(m、n)間のピッチが狭く、入力操作体が隣接する交点(m0、n0)から第1交点群の交点(m1、n1)に跨がり、隣り合う3乃至4の交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)が極大値の付近で近似する状態となっても、更にその外側に配置される第2交点群の各交点(m2、n2)の電圧変化レベルR(m2、n2)を入力操作位置の算定に用いることにより、精度良く入力操作位置を検出できる。
【0077】
また、上述の実施の形態では、足きり閾値Rtdを極大値Rmaxの1/2と一定の比率で設定したが、隣り合う交点(m、n)の各電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxの近傍で近似する場合に、その交点(m、n)間の外側の一部の交点(m、n)の電圧変化レベルR(m、n)が足きり閾値Rtd未満となれば、極大値Rmaxに対して1未満の任意の比率で設定することができる。
【0078】
更に、足きり閾値Rtdは、検出された極大値Rmaxの大きさにより、極大値Rmaxに対して異なる比率に設定してもよい。極大値Rmaxの大きさにより異なる比率で足きり閾値Rtdを設定することにより、隣り合う交点(m、n)の各電圧変化レベルR(m、n)が極大値Rmaxの近傍で近似する場合に、検出誤差の原因となる電圧変化レベルR(m、n)を入力操作位置の算定データから除く目的や、スパイクノイズを検出する目的や、入力操作による電圧変化レベルR(m、n)の感度が低い場合に入力操作位置の算定に用いる電圧変化レベルR(m、n)の数を確保する目的等異なる目的に応じて、最適な足きり閾値Rtdを設定できる。
【0079】
上述の実施の形態では、駆動領域DV(m)を複数の駆動電極Dから構成し、各駆動領域DV(m)の絶縁パネル上のY方向の形成位置は、構成する駆動電極DのY方向の中心位置としているが、1本の駆動電極Dから駆動領域DV(m)を構成し、その駆動電極Dの配線位置を駆動領域DV(m)のY方向の位置としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、格子状に形成される駆動領域DV(m)と検出電極S(n)の交点(m、n)に入力操作体が接近して静電容量が変化することにより、電圧変化レベルR(m、n)が変化する交点(m、n)の位置とその電圧変化レベルR(m、n)から入力操作位置を検出する静電容量式タッチパネルに適している。
【符号の説明】
【0081】
1 静電容量式タッチパネル
2 絶縁パネル
3 検出電圧発生回路(検出信号発生回路)
4 マイコン(位置検出手段、走査手段)
DV(m) 駆動領域
S(n) 検出電極