特許第6199861号(P6199861)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスアールアイ インターナショナルの特許一覧

特許6199861ガス混合物を分離する落下式マイクロビーズ対向流プロセス
<>
  • 特許6199861-ガス混合物を分離する落下式マイクロビーズ対向流プロセス 図000002
  • 特許6199861-ガス混合物を分離する落下式マイクロビーズ対向流プロセス 図000003
  • 特許6199861-ガス混合物を分離する落下式マイクロビーズ対向流プロセス 図000004
  • 特許6199861-ガス混合物を分離する落下式マイクロビーズ対向流プロセス 図000005
  • 特許6199861-ガス混合物を分離する落下式マイクロビーズ対向流プロセス 図000006
  • 特許6199861-ガス混合物を分離する落下式マイクロビーズ対向流プロセス 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199861
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】ガス混合物を分離する落下式マイクロビーズ対向流プロセス
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/08 20060101AFI20170911BHJP
   B01D 53/62 20060101ALN20170911BHJP
   B01J 20/20 20060101ALN20170911BHJP
   B01J 20/34 20060101ALN20170911BHJP
   C01B 32/50 20170101ALN20170911BHJP
【FI】
   B01D53/08ZAB
   !B01D53/62
   !B01J20/20 B
   !B01J20/34 B
   !C01B32/50
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-514906(P2014-514906)
(86)(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公表番号】特表2014-516785(P2014-516785A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】US2012041717
(87)【国際公開番号】WO2012170925
(87)【国際公開日】20121213
【審査請求日】2015年6月1日
(31)【優先権主張番号】61/495,196
(32)【優先日】2011年6月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/489,586
(32)【優先日】2012年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501228071
【氏名又は名称】エスアールアイ インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】SRI International
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100102808
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 憲通
(74)【代理人】
【識別番号】100128646
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 恒夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100134393
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】ホーンボステル,マーク,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナン,ゴパラ,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】サンジョルジョ,エンジェル
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−536682(JP,A)
【文献】 米国特許第02544214(US,A)
【文献】 米国特許第02635706(US,A)
【文献】 特公平02−012607(JP,B2)
【文献】 特表2008−531820(JP,A)
【文献】 特表2010−516738(JP,A)
【文献】 特開平05−161843(JP,A)
【文献】 特開平04−219112(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/106218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/12
B01D 53/34−53/85
B01D 53/14−53/18
B01J 20/00−20/34
C01B 32/00−32/991
B01J 8/00− 8/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流から二酸化炭素(CO)を連続的に除去する方法であって、
除去対象の前記二酸化炭素を含む前記ガス流を準備することと、
前記ガス流が上昇するにつれて、前記二酸化炭素を該ガス流から、リアクタの吸着部の構造化充填材を落下する、CO選択性を備える炭素系吸着剤のマイクロビーズへと吸着させることと、
前記リアクタの移行部において前記炭素系吸着剤のマイクロビーズから他の成分を除去することと、
前記リアクタの蒸留部において前記炭素系吸着剤のマイクロビーズを蒸気で直接加熱して、除去対象の前記二酸化炭素を脱着させることと、
前記リアクタの前記蒸留部において除去対象の前記二酸化炭素が除去された後に、前記炭素系吸着剤のマイクロビーズを空気で直接冷却することと、
前記リアクタの前記吸着部へと前記炭素系吸着剤のマイクロビーズを再循環させることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記炭素系吸着剤が球状粒物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭素系吸着剤が、1気圧のCOでおよそ20重量%のCO容量および他の排ガス成分を上回る良好なCO選択性を有する改良型炭素吸着剤(ACS)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス流1キログラム(kg)当たりおよそ1kg〜5kgの前記炭素系吸着剤を添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着部における滞留時間がおよそ6秒〜10秒になるような速度で前記炭素系吸着剤を落下させるとともに、前記ガスを供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記炭素系吸着剤を、およそ1バールの蒸気を用いて前記蒸留部において少なくとも摂氏110度(℃)に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
準備、吸着、加熱及び冷却を連続的に行う、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ガス流から二酸化炭素を連続的に除去するリアクタであって、
前記ガス流が上方へと送出される一方で、該ガス流から前記二酸化炭素を除去する、CO選択性を備える炭素系吸着剤のマイクロビーズが落下する構造化充填材を有する吸着部と、
前記炭素系吸着剤のマイクロビーズから他の成分を除去する、前記吸着部と接続された移行部と、
前記炭素系吸着剤のマイクロビーズを蒸気で直接加熱して、該炭素系吸着剤から前記二酸化炭素を除去する、および、該二酸化炭素が除去された後の前記炭素系吸着剤を空気で直接冷却する、前記移行部と接続された蒸留部と、
前記蒸留部から前記吸着部へと前記炭素系吸着剤のマイクロビーズを還送する、前記蒸留部および前記吸着部と接続された手段と、
を備える、リアクタ。
【請求項9】
前記炭素系吸着剤が、1気圧のCOでおよそ20重量%のCO容量および他の排ガス成分を上回る良好なCO選択性を有する改良型炭素吸着剤(ACS)を含む、請求項8に記載のリアクタ。
【請求項10】
前記蒸留部が、前記炭素系吸着剤をおよそ1バールの蒸気で少なくとも摂氏110度(℃)に加熱する、請求項8に記載のリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、ガス混合物を吸着分離する、また不純物の吸着分離によりガスを精製する、落下式マイクロビーズプロセス及びその均等物に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき2011年6月9日付で出願された米国仮特許出願第61/495,196号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする)に対する優先権を主張するものである。
【0003】
[政府支援の陳述]
本発明は、エネルギー省(NETL)により授与された契約番号DE−NT0005578の下で政府の支援を受けて為されたものである。政府は本発明に或る一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
ガス混合物の分離は様々な理由から必要とされている。プロセスによっては、例えばポリエチレンの生成のための製油所ガス流からのエチレンの分離では、生成物がガスの混合物として生じるものがある。またプロセスによっては、廃棄物流を処理して環境汚染物質を取り除かなければ、廃棄物流を放出することができないものもある。別の例では、排出流から溶媒蒸気を分離することで、揮発性溶媒を回収しプロセスに再利用することができる。別の例では、発電所からの温室効果ガスの排出を、排ガスから二酸化炭素(CO)を分離し、隔離に適した純粋なCO流を得ることによって排除することができる。
【0005】
現在の分離プロセスは不十分で費用のかかるものである。例えば、圧力スイングプロセスには、プロセスガス流の圧力を上げたり下げたりする必要があることから高コストであるという欠点がある。温度スイングプロセスには、高表面積の固体は一般的に伝熱性が低いことから、吸着剤の効率的な加熱及び冷却が難しいという欠点がある。
【発明の概要】
【0006】
1つの実施の形態では、ガス流から成分を除去する方法が提供される。1つの実施の形態では、該方法は、除去対象の成分を含むガス流を準備することと、ガス流が上昇するにつれて、成分をガス流から、リアクタの吸着部を落下する吸着剤のマイクロビーズへと吸着させることとを含む。
【0007】
1つの実施の形態では、ガス流から成分を除去する第2の方法が提供される。1つの実施の形態では、該方法は、除去対象の成分を含むガス流を準備することと、ガス流が上昇するにつれて、成分をガス流から、リアクタの吸着部を落下する吸着剤のマイクロビーズへと吸着させることと、リアクタの蒸留部において吸着剤を加熱することであって、吸着剤から成分を放出することと、吸着剤を冷却するとともに、リアクタの吸着部へと吸着剤を再循環させることであって、吸着工程を行うこととを含む。
【0008】
1つの実施の形態では、ガス流から選択成分を除去するリアクタが提供される。1つの実施の形態では、リアクタは、ガス流が上方へと送出される一方で吸着剤のマイクロビーズが落下する吸着部と、吸着剤から他の成分を除去する、吸着部と接続された移行部と、吸着剤から選択成分を除去する、移行部と接続された蒸留部とを備える。
【0009】
本発明の教示は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて考慮することで容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】炭素吸着剤技術を擁する発電所の一実施形態のプロセスフロー図である。
図2】炭素吸着剤リアクタの一実施形態を示す図である。
図3】リアクタ及び蒸留部(stripper)に残るガスの組成を示すグラフ図である。
図4】ガス流から特定の成分を除去するフロー図である。
図5】炭素吸着剤リアクタの吸収部のブロック図である。
図6】吸収部のより詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
理解を容易にするために、複数の図面に共通する同一要素を指定するのに、可能な限り同一の符号を使用している。
【0012】
本開示は、ガス混合物を吸着分離、例えば排ガスから二酸化炭素(CO)を吸着分離し、またクロロシランからの不純物、例えば三塩化ホウ素の吸着分離によりガスを精製する落下式マイクロビーズプロセス及びその均等物を提供する。本明細書で開示される落下式マイクロビーズプロセスは、現在利用されている技術よりも効率的にガス混合物から成分を除去する方法を提供する。
【0013】
図1に、炭素吸着剤技術を擁する発電所の一実施形態のプロセスフロー図100を示す。一実施形態では、発電所で炭素を多く含む燃料の燃焼が利用され、これにより大量のCOが生じる。COの大気中への放出は望ましいものではない。
【0014】
一実施形態では、石炭(例えば粉砕したイリノイ6号炭)をボイラー102に送出し、そこで石炭を空気の存在下で燃焼させる。高温排ガスが熱交換器を通過し、そこで排ガスが冷却された後、NO除去工程及びSO除去工程へと送られる。排ガスが選択的触媒還元(SCR)ユニット104を通過し、そこでNOがアンモニア(NH)によって窒素ガス(N)及び水(HO)へと還元される。次いで排ガスがバグハウス106に移動し、そこで繊維性フィルターを用いることで、フライアッシュが除去される。誘引通風機108を用いることで、排ガスを排ガス脱硫(FGD)ユニット110へと送出し、そこで二酸化硫黄(SO)をライムストーン及び空気と反応させることで、亜硫酸カルシウム及び硫酸カルシウム(ジプサム)を形成する。ジプサムを取り出した後、排ガスをリアクタ112に送出する。リアクタ112内において、COを排ガスから取り出し(これにより大部分がN2、O2及び残りは水蒸気となる)、COコンプレッサ114へと送り、化学原料として使用するか又は隔離する。COリーン(lean)排ガスは排気筒へと送られ、大気中へと排出される。
【0015】
ボイラー102により生じる蒸気サイクルを利用して、タービン116を回し、それにより発電機118を作動させ、電力を生産する。蒸気はコンデンサ120及び給水予熱システム122を通じて再循環され、プロセスフロー100が完成する。
【0016】
図2に、リアクタ112のより詳細なブロック図を示す。リアクタ112は落下式マイクロビーズリアクタと称されることもある。リアクタ112には、吸着部202と、移行部204と、蒸留部206と、脱水/冷却部224とが含まれる。
【0017】
一実施形態では、リアクタ112は、落下式マイクロビーズシステムを用いた連続プロセスをもたらす。一実施形態では、排ガスが排ガス流208を通じてリアクタ112へと流入すると、排ガスは上方へと流れ、固体吸着剤はガスの流れに対向して移動するようにカラムを落下する。
【0018】
一実施形態では、固体吸着剤は、該吸着剤がリアクタを何回も循環することができるように硬質でかつ耐摩耗性を有するように設計することができる。吸着剤は流入したガスから特定の成分を除去する性能が高く、除去対象の特定の成分に対する容量が大きいものであり得る。吸着剤は、高い吸着速度及び脱着速度、低い吸着脱着熱、高い熱水安定性、低い熱容量、並びに高い熱伝導率を有するものとする。吸着剤には、固体がカラムを円滑に流れ落ちることができるように球状粒物質が選択され得る。
【0019】
除去対象の特定の成分がCOである一実施形態では、吸着剤は、高表面積炭素系吸着剤、例えば改良型炭素吸着剤(ACS)を含み得る。一実施形態では、ACSが吸着剤として使用されるが、任意のタイプのガス混合物を上記の特徴を満たす任意のタイプの吸着剤によって分離することができることに留意されたい。例えば、本プロセス及びリアクタシステムは、石炭工場、ガスタービン、ディーゼルエンジン及び同様の燃焼システムからの排出ガスからCOを除去するのにも使用することができる。
【0020】
このタイプのリアクタプロセスを、天然ガス源から、又は合成ガス若しくは改質ガスから、又はフィッシャートロプシュ法によるガス排出若しくは再循環ループからCOを除去するのにも使用することができる。このシステムは、半導体用途においてガスを精製又は分離するのにも使用することができる。例えば、SiF、クロロシラン、ブロモシラン等のSiのハロゲン化物、及びBF、BCl、PCl、OPCl等のドープガスを分離又は精製することができる。同様に、このシステムを用いて、シラン、ボラン又はホスフィン等の水素化物を精製することができる。
【0021】
このシステムを、乳牛システム又はフィードロット牛システムからNHを除去するのにも使用することができる。このシステムは、工業用地、病院又は畜産業務による悪臭を発生する分子を除去するのにも使用することができる。
【0022】
ACSは上述の吸着剤の所望の特徴を示す。例えば、ACSは、高いCO容量(1気圧(atm)のCOでおよそ20重量%)と、他の排ガス成分を上回る良好なCO選択性とを有する。COの吸着は、吸着剤の細孔において極めて低い活性化エネルギー(およそ5キロジュール(kJ)/モル未満)で行われ、それにより吸着剤の迅速な循環が可能となる。比較的低い脱着熱(28kJ/モル)によって、このプロセスの再生に対する熱要件が低いことが示唆される。蒸気による直接加熱をCO脱着に使用することができる。適度に高い温度で再生するACSを、吸着剤上に吸着した水分の蒸発冷却によって冷却することができる。直接加熱及び冷却は、ガスの必要性を固体熱交換器に限定することにより、プロセスを単純化する。大量の排ガスを少量(small inventory)の吸着剤で分離することができる。
【0023】
吸着剤の寿命は、1年で50000回を超える吸着/脱着サイクルに耐えることができるものでもよい。ACS粒の球形性(直径およそ100ミクロン(μm)〜300μm)によって、玉軸受(ball bearing)のように傾斜面上での円滑な流れが可能となる。ACSの液体のようなこの自由流動特徴によって、気固接触デバイスとしての市販の構造充填の使用が可能となる。水と比較した吸着剤の低い熱容量(およそ1ジュール(J)/グラム(g)/ケルビン(K))によって、ACSを再生温度まで加熱するのに必要とされる熱エネルギーが最小限に抑えられる。0.8ワット(w)/メートル(m)・KというACSの熱伝導率によって、表面とマイクロビーズの内部との間で迅速な熱平衡が為される。ACSは基本的に疎水性であり、凝縮水とACSとの間で弱い相互作用を示す。凝縮水を脱着するのに要する熱エネルギーは、分子篩(ゼオライト)、アルミナ、及びシリカに見られるような酸化物表面から水を蒸発するのに要する熱エネルギーよりも著しく低い。
【0024】
吸着部202には構造充填剤が含まれ得る。構造充填は、排ガスから吸着剤へのCOのより良好な吸収を促すように設計され得る。
【0025】
充填物質はガス混合物及び固体吸着剤の両方の均一な流れを維持するのにも役立つ。このことが、最小限の圧力降下でガスと固体吸着剤との良好な接触をもたらす。
【0026】
吸着部202の設計は、比較的低い圧力降下、例えばおよそ0.1 inHO/ft充填〜1.0 inHO/ft充填をもたらす。例えば、およそ2.4フィート(ft)/秒(s)の気流速度では、測定される圧力降下はおよそ0.4 inHO/ft充填(0.014psi/ft)であった。発電所で発生する排ガスが大量であることから、圧力降下が低いことは重要である。この低い圧力降下は、ガスの流れに対して高い圧力降下を引き起こす吸着剤粒の固定床、密集移動(dense moving)床又は流動床を使用する従来のリアクタとは大きく異なるものである。高い圧力降下はCO捕集コストを増大させる。このため低い圧力降下は、効率の向上及びコストの低下をもたらす。
【0027】
加えて、適切な吸着剤(例えばCO除去ではACS)の使用によって、ACS吸着剤の迅速なCO吸着脱着速度及び優れた耐摩耗性から、吸着剤の迅速な循環が可能となる。このことが小型リアクタ設計を可能にし、システムの資本コストを削減し得る。
【0028】
図2を更に参照すると、排ガスが吸着部202を通って上昇し、吸着剤マイクロビーズが吸着部202を落下する。これは図5に高度に示されている。図5は、吸着部202において、どのように吸着剤マイクロビーズ502が落下し、排ガスが上昇するかを示すものである。
【0029】
上昇する排ガスからCOを除去し、排気流210を通じて低COガスを取り除く。吸着剤マイクロビーズは、排ガス流208から幾らかのN及びOを捕集することもある。このプロセスは図6により詳細に示されている。図6は、流222を通じて加えられる吸着剤マイクロビーズ502を示すものである。吸着剤マイクロビーズ502が流222を通じて流入し、吸着部202を落下する一方で、該吸着剤マイクロビーズ502がガス流610を通じて流入した排ガスと接触し、CO濃度の増大に伴い、吸着剤マイクロビーズ502により多くのCOが吸着される。マイクロビーズ606には、吸着剤マイクロビーズ502より多くのCOを含むマイクロビーズ604より多くのCOを含むマイクロビーズ602よりも多くの吸着COが含まれている。これに対して、吸着剤マイクロビーズ502が吸着部202を下方に移動するにつれて、N及びOの濃度が低下するが、これは吸着剤マイクロビーズ502が吸着したN及びOを放出し、N及びOが排気流210とともに除去されるためである。一実施形態では、吸着は、吸着部202において周囲温度近く(例えば約20℃〜30℃)、およそ1atmの圧力で行うことができる。
【0030】
高CO吸着剤マイクロビーズが移行部204へと落下する。移行部204は、残留する吸着したN及びOを脱着させるのに用いられる。N及びOは、固体吸着剤が下部の蒸留部206からの上方へと流れる純粋なCO流と接触すると脱着する。脱着したN及びOは吸着部202へと押し戻され、低COガス流210と混合する。上方へと流れるCO流が吸着剤マイクロビーズによって吸着され、蒸留部206へと下方に戻される。
【0031】
吸着剤マイクロビーズが移行部204を下方へと移動するにつれて、吸着剤マイクロビーズでは、COの分圧の増大及び軽質ガスの分圧の低減が起こる。これによって、吸着剤マイクロビーズはより多くのCOを吸着するとともに、N及びOを脱着することになる。移行部204の底では、吸着剤は純粋なCOで飽和状態にある。
【0032】
蒸留部206では、蒸気がガス流214を通じて導入される。一実施形態では、蒸気はおよそ1バールの圧力である。蒸気が吸着されると、吸着剤の温度が上昇し、それによりCOの脱着が起こる。さらにこの蒸気はCO分圧の低減にも作用し、COの更なる除去が増進される。脱着したCOが蒸留部の外へと上方に流れ、そこで脱着したCOは純粋なCOとしてガス流212を通じて引き抜かれる。
【0033】
脱水/冷却部224では、吸着剤マイクロビーズを回収した後、吸着剤マイクロビーズをガス流220からの低温の乾燥空気に接触させることによって冷却及び再生する。吸着剤マイクロビーズを、空気との熱的接触によって空気を高温にし、また吸着した水蒸気の蒸発によって空気を加湿させることで冷却する。高温の加湿空気をコンデンサ218において冷却及び乾燥させ、吸着部202へと還送するようにポンプ216によって送り出し、残留するCOを捕集する。
【0034】
次いで低温乾燥吸着剤を吸着剤還送管222に通してリアクタ112の上部の吸着部202へと還送し、再びサイクルを始動させる。一実施形態では、リアクタ112には、吸着剤を蒸留部206から吸着部202へと還送させる任意の手段が含まれ得る。一実施形態では、この手段は、例えばコンベア、エレベータ、空気圧式リフト等の機械的手段を含み得る。
【0035】
吸着工程及び脱着工程の両方の速度が迅速であることで、吸着部202及び蒸留部206の期間を非常に短くすることが可能となる。例えば、滞留時間は、ガス1kgに付きおよそ1kg〜20kgの吸着剤を添加する場合で、およそ6秒〜10秒であり得る。
【0036】
図3に、15% COの供給ガス流を、COを含まないリーンガス流及び純粋なCO生成ガス流へと分離する際の吸着剤マイクロビーズシャワー及び蒸気蒸留の有効性を示すグラフ300を示す。x軸302は実行時間(秒)を示し、y軸304は複数の菱形で構成される線で示される蒸留部206に残る生成ガス中のCO(%)を示し、y軸306は複数の三角形で構成される線で示される吸着部202に存在するリーンガス流210中のCO(%)を示す。吸着部202に関しては、308の時点で吸着剤の流れを開放する。y軸306に関するグラフに示されるように、数秒以内にリーンガス流中のCOの量が急減する。314の時点で、吸着剤の流れを停止すると、リーンガス流中のCOの量が再び急増する。
【0037】
y軸304に示されるように、蒸留部206に関しては、310の時点で蒸気を開放する。蒸気が導入されると、COが吸着剤から急速に脱着され、生成ガス流212中のCOガスの濃度が急増し、生成流は純粋なCOになる。312の時点で、蒸気を停止すると、COガスの濃度は再び急減する。
【0038】
図4に、ガス流から特定の成分を除去する方法400のフロー図を示す。一実施形態では、方法400は上記のリアクタ112によって行うことができる。
【0039】
この方法は工程402から開始する。方法400の工程404では、除去対象の成分を含むガス流を準備する。例えば、ガス流はCO量が高い発電所の排ガス流とすることができる。除去対象の成分は排ガス流中のCOとすることができる。
【0040】
方法400の工程406では、ガス流が上昇するにつれて、成分をガス流から、リアクタの吸着部を落下する吸着剤のマイクロビーズへと吸着させる。吸着剤のマイクロビーズ及びガス流は、吸着部を通過する際にガス流と吸着剤のマイクロビーズとが積極的に混合するように構造充填物質中を流れることができる。一実施形態では、吸着剤は上記のACS吸着剤とすることができる。

【0041】
方法400の工程408では、リアクタの蒸留部において吸着剤を加熱することで、吸着剤から成分を放出させる。例えば、高温蒸気を用いて、吸着剤を加熱することで、吸着剤から吸着したCOを放出することができる。次いで純粋なCOガス流を通じてCOを除去することができる。
【0042】
方法400の工程410では、吸着剤を冷却して、吸着剤をリアクタの吸着部へと再循環させることで、吸着工程を行う。例えば、乾燥空気又は冷却した再循環COリーンガスを用いて、吸着剤を冷却及び乾燥することができる。蒸気を脱着することができ、吸着剤を蒸発冷却によって冷却することができる。次いで、吸着剤を吸着部へと還送することで、上記工程406においてガス流からの成分の吸着を繰り返すことができる。方法400は工程412で終了する。
【実施例】
【0043】
上記プロセスの実施例を例示的な操作範囲とともに以下に示す。実施例は図1図2とを併せて検討することができる。下記で述べる実施例は直径およそ6インチ、高さおよそ20フィートのリアクタシステムで実行した。
【0044】
一実施例では、COを石炭火力発電所で生じ得る模擬排ガスから除去した。主な非濃縮性成分は、窒素(約68%)、二酸化炭素(約15%)及び酸素(約17%)である。
【0045】
このプロセスに使用される高表面積活性炭吸着剤は、約10:1というN及びOに対するCO選択性を有する。そのためこのプロセスでは、N及びOが上部画分を形成し、COが下部画分へと分離する。
【0046】
15%という模擬排ガスCO濃度では、炭素吸着剤は5wt%〜6wt%(炭素吸着剤1kg当たりのCOのkg)を吸着する。本実施例で述べられるパラメータでは、およそ5秒〜6秒という吸着部202での滞留時間は、排ガスからCOを効率的に分離するのに十分であった(例えば90%を超える捕集効率)。リアクタ112の上部への炭素吸着剤の流れは、排ガスからCOが完全に吸着されるように排ガス1kg当たり5kgの吸着剤に設定する。
【0047】
吸着剤はリアクタ112のカラムを継続的に落下し、蒸留部206からの純粋なCOの上方への流れに曝される。移行部では、吸着部202で吸着された少量のN及びOが放出され、吸着部202へと還送されて、最終的に上部画分とともに排出される。吸着剤が蒸留部206の上部に到達した時点で、吸着剤は純粋なCOで飽和状態にある。純粋な(例えば純度90%を超える)CO生成物を、移行部204においてガス流212を通じてリアクタ112から除去する。
【0048】
吸着剤を蒸留部206へと下方に流し続け、吸着剤を1バールの圧力で対向する蒸気の流れと接触させる。蒸気が吸着され、それにより吸着剤が110℃超へと加熱される。この温度及び純粋な蒸気雰囲気で、吸着したCOが脱着され、COガスの上方への流れが生じる。
【0049】
次いで吸着剤が蒸留部206の冷却部へと流れ落ち、そこで僅かな乾燥空気の流れを用いて、吸着した水蒸気を脱着し、固体を周囲温度近くまで冷却する。この時点で、空気圧式コンベアを用いて、吸着剤をリアクタ112の上部へと還送する。
【0050】
様々な実施形態を上に示しているが、これらは例示的なものに過ぎず、限定するものではないことを理解されたい。そのため、好ましい実施形態の幅及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ規定されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6