【文献】
株式会社サンギ,知覚過敏抑制に関する新しい研究成果発表,2008年 7月,p.1-5,URL,http://www.sangi-co.com/vcms_lf/sangi20080704-.pdf
【文献】
KAWAMATA, H. et al.,Potassium Nitrate Enhances Occlusion of Dentinal Tubulesby Nano-Hydroxyapatite,Journal of Dental Research,2008年,Vol.87,p.2265,URL,http://www.sangi-co.com/vcms_lf/paper_o_200801.pdf
【文献】
KAWAMATA, H. et al.,Investigation of Dentinal Surface Coating byNano-hydroxyapatite,88th General Session & Exhibition of the IADR,2010年 7月,URL,http://www.sangi-co.com/vcms_lf/paper_o_201002.pdf
【文献】
株式会社サンギ,歯科用成分ナノ粒子ハイドロキシアパタイトの新しい研究成果,2010年 7月,p.1-7,URL,http://www.sangi-co.com/vcms_lf/release20100715.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
リン酸一水素カルシウムの配合量が、リン酸一水素カルシウム・2水和物換算で、0.5〜25重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の口腔用組成物。
【背景技術】
【0002】
冷たい物や熱い物、甘い物や酸っぱい物などを口にしたときに、鋭い電撃的な歯の痛みを感じることがある。これは、一般に知覚過敏と呼ばれているが、歯周炎等により歯肉が痩せて歯根部の象牙質が露出した場合や、エナメル質が欠損して象牙質が露出した場合に起きることから、象牙質知覚過敏症とも呼ばれている。この象牙質知覚過敏症は、象牙質表面の象牙細管が開口し、そこにブラッシングや温度などの物理的及び化学的な刺激が加わることで発症すると言われているが、その発症メカニズムは、様々な説があり十分に解明されていない。現在では、ブラッシングや温度などの刺激が加わり象牙細管内液が移動するという「動水力学説」が有力であると考えられている。
【0003】
また、効果的に審美性が得られるブリーチング処置においても知覚過敏の問題が危惧されており、象牙質知覚過敏症を抑制する方法が望まれている。
【0004】
この象牙質知覚過敏症を抑制する手段の1つである象牙質細管を封鎖する方法としては、例えば、酸性フッ素リン酸−タンニン酸溶液成分と、塩化ランタン水溶液成分と、フルオロアパタイト系ガラス粉末を含有する歯科用知覚過敏治療剤を用いる方法(特許文献1)や、シュウ酸化合物溶液とカルシウム化合物溶液からなる象牙質知覚過敏治療剤を用いる方法(特許文献2)が提案されている。また、ハイドロキシアパタイトを用いた象牙細管を封鎖する方法として、粒子径が1.0μm〜5.0μmのハイドロキシアパタイトを使用する知覚過敏症用組成物を用いる方法(特許文献3)や、粒子径が900nm以下であるハイドロキシアパタイトの焼結体粒子を象牙細管封鎖材に用いることによる象牙細管の封鎖材を用いる方法(特許文献4)などが提案されている。
【0005】
また、知覚過敏の緩和、抑制剤として硝酸カリウムが使用されており、硝酸カリウムを用いた口腔用組成物として、硝酸カリウムとフッ化第一スズを含有した知覚過敏抑制歯磨き剤(特許文献5)や、硝酸カリウムを含有する口腔用組成物にアミノ酸及びその塩又は核酸及びその塩を配合した口腔用組成物(特許文献6)や、カリウム塩とアルミニウム塩を特定の濃度で含有する口腔用組成物(特許文献7)や、硝酸カリウム、還元パラチノースを配合した口腔用組成物(特許文献8)などが提案されている。
【0006】
ところで、リン酸一水素カルシウム・2水和物(第二リン酸カルシウム)は、歯磨用基剤、清掃剤、研磨剤等として用いられており、リン酸一水素カルシウム・2水和物を用いた口腔用組成物としては、例えば、歯表面の歯垢を除去して歯をより白くする目的で、平均粒子径3.5〜10μm、かつ崩壊強度0.1〜5g/個の、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム及びハイドロキシアパタイトから選ばれる粒子の凝集粒子を含有する歯磨剤組成物(特許文献9)や、歯をあまり傷付けることなく、歯の着色物を効果的に除去する目的で、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、シリカ、ハイドロキシアパタイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ゼオライト、複合アルミノケイ酸塩、ベンガラ等の研磨剤として用いられている粉体から作成した、平均粒径が100〜500μmで、崩壊強度が0.1〜10g/個である顆粒と、モース硬度2〜6で、平均粒径が0.5〜5μmであるゼオライト、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム無水物、第三リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト及び水酸化アルミニウムから選ばれる1種以上の研磨性粉体を含有する歯磨剤組成物(特許文献10)などが提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の歯牙象牙質細管の封鎖能を有する口腔用組成物としては、ハイドロキシアパタイト、硝酸カリウム、及びリン酸一水素カルシウムを含有するものであれば特に制限されるものではなく、本発明の口腔用組成物の形態としては、固体、固形物、液体、液状、ゲル体、ペースト状、ガム状等のいずれの形態であってもよく、具体的には、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨類、洗口剤、軟膏剤等を例示することができる。
【0014】
本発明の口腔用組成物は、ハイドロキシアパタイト、硝酸カリウム、及びリン酸一水素カルシウムの3成分を含有することにより、歯牙象牙質細管封鎖率の相乗的な向上という予想外の効果を奏する。すなわち、これら3成分のうちの2成分を配合しても、象牙細管封鎖率の相乗的な向上効果はみられないが、これら3成分を配合することによりはじめて歯牙象牙質細管封鎖率の相乗的な向上効果が認められる(詳細は、実施例参照。)。
【0015】
本発明において使用されるハイドロキシアパタイトは、リン酸カルシウムの1種であり、通常の方法で合成されるものの他、天然硬組織としてサケ等の食用魚の魚骨、豚骨、牛骨等から得られるものであってもよい。通常、ハイドロキシアパタイトは、化学量論的にはCa
10(PO
4)
6(OH)
2からなる組成で示されるが、Ca/Pモル比が1.67にならない非化学量論的なものであっても、ハイドロキシアパタイトの性質を示すと共にアパタイト構造をとることができ、例えば、Ca/Pモル比1.4〜1.8程度の合成ハイドロキシアパタイトも本発明におけるハイドロキシアパタイトに含まれる。
【0016】
本発明において使用されるハイドロキシアパタイトは、結晶性、低結晶性、非晶質のいずれであってもよいが、う蝕予防効果の点から、低結晶性又は非晶質のハイドロキシアパタイトであることが好ましい(以下、低結晶性ハイドロキシアパタイト及び非晶質のハイドロキシアパタイトを「アモルファスハイドロキシアパタイト」と称する。)。なお、「低結晶性」とは、X線回折ピークが、高結晶性の粉体に比べてブロードな結晶質のものをいい、「非晶質」とは、X線回折パターンが幅広いハローを示し、結晶の特徴を示す回折パターンが得られないものをいう。このようなアモルファスハイドロキシアパタイトは、例えば、湿式合成法により合成したアパタイトを凍結乾燥若しくは100℃以下の温度で乾燥し、又は300℃程度以下の温度で焼成して得ることができる。
【0017】
本発明のハイドロキシアパタイトは、通常、粉末状か、水に懸濁した状態で使用され、レーザー回折/散乱式粒子径分布分析装置(LA-950、堀場製作所)で測定した最大粒径が100μm以下であることが好ましく、粒径の下限は、製造上0.001μm程度である。また、平均粒径は、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜5μmであることがより好ましい。なお、ハイドロキシアパタイトのBET法による比表面積は、100m
2/g以下程度である。また、必要に応じて、粉末化後に、乾燥処理、多孔化処理、静電処理等を施したものを用いることができる。
【0018】
本発明の口腔用組成物におけるハイドロキシアパタイトの配合量としては、歯牙象牙質細管の封鎖性向上の点からは多いほど好ましいが、粘度等の製剤上の観点も考慮すると、0.5〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましく、5〜10重量%であることがさらに好ましい。ハイドロキシアパタイトの歯牙象牙質細管の封鎖作用については従来から知られており、上記のように歯牙象牙質細管の封鎖性向上の点からは多いほど好ましいが、本発明においては、硝酸カリウム及びリン酸一水素と併用することにより、相乗的にその効果を高めることができることから、高価なハイドロキシアパタイトの使用量を低減することができる。
【0019】
本発明において使用される硝酸カリウムは、化学式でKNO
3で表される硝酸塩の一種で、食品添加物、一級試薬、特級試薬等どのようなものでも用いることができる。この硝酸カリウムは、イオン化したカリウムが神経伝達を抑え、知覚過敏の痛みを和らげる効果があることから、最近では知覚過敏向け歯磨剤にも使用されているが、歯牙象牙質細管を封鎖する能力は有していない(比較例8〜11参照)。しかしながら、本発明では、この硝酸カリウムをハイドロキシアパタイト及びリン酸一水素カルシウムと併用することにより、歯牙象牙質細管の封鎖性を顕著に向上させるという予想外の効果が奏される。
【0020】
本発明の口腔用組成物における硝酸カリウムの配合量としては、歯牙象牙質細管の封鎖性向上の点からは多いほど好ましいが、粘度等の製剤上の観点も考慮すると、2.5〜10重量%であることが好ましく、5〜10重量%であることがより好ましい。
【0021】
本発明において使用されるリン酸一水素カルシウムは、化学式でCaHPO
4で表されるリン酸カルシウムの1種であり、無水物であっても、水和物であっても良い。リン酸一水素カルシウムとしては、吸湿性及び安定性の点から化学式CaHPO
4・2H
2Oで表されるリン酸一水素カルシウム・2水和物(DCPD)が好ましい。リン酸一水素カルシウム・2水和物は、医薬品賦形剤、カルシウム強化剤、歯磨用基剤、飼料添加剤、合成樹脂改質剤、釉薬原料、窯業原料として広く用いられている。本発明において使用されるリン酸一水素カルシウム・2水和物は、食品添加物、日本薬局方、医薬部外品原料規格2006等、どのようなものであってもよい。また、リン酸一水素カルシウムとして、例えば、無水リン酸カルシウムを用いた場合、該無水リン酸カルシウムは吸湿性であるため、本発明の口腔用組成物の調整時又は使用時において、安定なリン酸一水素カルシウム・2水和物として存在する。
【0022】
本発明の口腔用組成物におけるリン酸一水素カルシウムの配合量としては、歯牙象牙質細管の封鎖性向上の点からは多いほど好ましいが、粘度等の製剤上の観点も考慮すると、リン酸一水素カルシウム・2水和物換算で、0.5〜25重量%であることが好ましく、1〜20重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることがさらに好ましい。本発明では、リン酸一水素カルシウム・2水和物は、それ単独でも歯牙象牙質細管の封鎖能を有し歯牙象牙質細管の封鎖に寄与することを明らかとしたが(比較例12〜17参照)、ハイドロキシアパタイト及び硝酸カリウムと併用した場合にその封鎖性を顕著に向上させることができる。
【0023】
また、本発明の口腔用組成物においては、極めて高い封鎖能を実現する場合はリン酸一水素カルシウムに比してハイドロキシアパタイトを多量に用いることが好ましく、所定の高い封鎖能を安価に実現する場合は、ハイドロキシアパタイトに比してリン酸一水素カルシウムを多量に用いることが好ましい。
【0024】
本発明の口腔用組成物は、前述の必須3成分に加えて、口腔用組成物に通常使用される添加剤、湿潤剤、発泡剤、香料、甘味料、防腐剤等の各種成分を含有することができる。これらの成分の具体例を下記に示す。なお、本発明の口腔用組成物に配合できる成分はこれらの成分に限定されるものではない。
【0025】
研磨剤としては、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、研磨性沈降シリカ、研磨性ゲルシリカなどのシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、ゼオライト、酸化チタン、ケイ酸ジルコニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト、合成樹脂等を例示することができる。
【0026】
湿潤剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、キシリトール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、イソプロピレングリコールなどの多価アルコール等を例示することができる。
【0027】
発泡剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、非イオン性界面活性剤等を例示することができる。
【0028】
増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ゼラチン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ローカストビーンガム、グアーガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を例示することできる。
【0029】
結合剤としては、メチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコールエステル、プルラン、トラガントガム、キサンタンガム、ペクチン、ファーセラン、キトサン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ペプトン、カゼイン、コラーゲン、アルブミン、アラビアガム、カラヤガム、オイドラギット、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール・ジメチルアミノアセテート、セルロースアセテート・ジブチルヒドロキシプロピルエーテル等を例示することができる。
【0030】
乳化剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ソルビタン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリオキシエチレン、ラウロマクロゴール、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルリン酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、N−アシルザルコシン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド類、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルベタイン類等を例示することができる。
【0031】
油脂成分としては、流動パラフィン、パラフィン、セチルアルコール、及びステアリルアルコール等の高級アルコール、イソプロピルミリステート等脂肪酸エステル、ラノリン、鯨ロウ、カルナウバロウ、脂肪酸類、ミリスチン酸オクチルドデシル、アジピン酸ジイソプロピル、イソステアリン酸ヘキサデシル、オレイン酸デシル等のエステル化合物、スクワラン、スクワレン、中鎖脂肪酸トリグリセリド、シリコン等を例示することができる。
【0032】
アルコールとしては、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等の低級アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、1,5−ペンタジオール、ソルビット、ポリエチレングリコール等の多価アルコール等を例示することができる。
【0033】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤の、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖長ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アニオン性界面活性剤の、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、カチオン性界面活性剤の、アルキルアンモニウム、アルキルベンジルアンモニウム塩、両性界面活性剤の、酢酸ベタイン、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、非イオン性界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ラウリル酸デカグリセリル等を例示することができる。
【0034】
pH調整剤としては、クエン酸及びその塩、リン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、アスパラギン酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、コハク酸及びその塩、グルクロン酸及びその塩、フマル酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、アジピン酸及びその塩、塩酸などの無機酸、フッ化水素酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等などの水酸化アルカリ金属、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミンなどのアミン類等を例示することができる。
【0035】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、メチルパラベン、エチルパラベン、安息香酸ナトリウム等を例示することができる。
【0036】
安定化剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸或いはその塩類等を例示することができる。
【0037】
香料としては、メントール、ペパーミント、スペアミント等の精油、ユーカリ油、オレンジ油、レモン油、ウインダーグリーン油、チョウジ油、ハッカ油、タイム油、セージ油、カルボン、リナロール、オイゲノール、アネトール、ハーブミント等を例示することができる。
【0038】
安定化剤としては、ビタミンC、ビタミンEおよびこれらの誘導体、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等を例示することができる。
【0039】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル、アセスルファームカリウム、ペリラルチン、p−メトキシシンナミックアルデヒド、キシリトール等を例示することができる。
【0040】
その他の薬効成分としては、アラントイン、酢酸トコフェロール、イソプロピルフェノール、トリクロサン、クロルヘキシジン、クロロフィル、フラボノイド、トラネキサム酸、ヒノキチオール、塩化セチルピリジニウム、フッ化ナトリウム、フッ化第1錫、モノフルオロリン酸ナトリウム、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、プロテアーゼ、アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸類、アズレン、アラントイン、塩化リゾチーム、オオバクエキス、ポリリン酸類、塩化ナトリウム等を例示することができる。
【0041】
なお、これら任意成分の配合量は、本発明の効果を妨げず、薬剤学的に許容できる範囲で適宜使用される。また、本発明の口腔用組成物の製造において、ハイドロキシアパタイト、硝酸カリウム、リン酸一水素カルシウムや、その他の任意成分は、製造過程のいかなる過程で添加してもよい。
【実施例1】
【0042】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記実施例に限定されるものではない。
【0043】
[ハイドロキシアパタイトの製造]
攪拌下の水酸化カルシウム懸濁液中に、30質量%濃度のリン酸水溶液を、pH10になるまで滴下し、生成したゲル状物質を室温で1日間放置して熟成した。その後、ゲル状物質をガラスフィルターで濾過し、残った物質を100℃の空気中で乾燥を行うことにより、ハイドロキシアパタイト粉末を得た。得られたハイドロキシアパタイト粉末は、最大粒径が約40μm、最小粒径が約0.05μm、平均粒径が約5μmであった。
【0044】
[硝酸カリウム]
硝酸カリウムは、和光純薬工業株式会社製、試薬特級を使用した。
【0045】
[リン酸一水素カルシウム・2水和物]
リン酸一水素カルシウム・2水和物は、太平化学産業株式会社製、医薬部外品原料規格2006を使用した。
【0046】
[実施例及び比較例の口腔用組成物の調製]
下記組成の練歯磨剤、洗口剤、及び象牙細管封鎖剤を常法に従って製造し、象牙細管封鎖性試験を行なった。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
【表7】
【0054】
【表8】
【0055】
【表9】
【0056】
【表10】
【0057】
【表11】
【0058】
【表12】
【0059】
【表13】
【0060】
【表14】
【0061】
【表15】
【0062】
【表16】
【0063】
【表17】
【0064】
【表18】
【0065】
【表19】
【0066】
【表20】
【0067】
【表21】
【0068】
【表22】
【0069】
【表23】
【0070】
【表24】
【0071】
【表25】
【0072】
【表26】
【0073】
【表27】
【0074】
[象牙質細管封鎖性試験]
健全なヒト抜去歯を用いて、象牙質と象牙細管が露出されるように切片を切り出し、厚さ約500μmに研磨し、超音波洗浄した。実施例及び比較例の歯磨剤、洗口剤、象牙細管封鎖剤それぞれ25gを蒸留水で40mLに調整したものをテスト溶液とした。試験面以外をマスキングした切片をテスト溶液に37℃で1日9分間浸透させ、5日間の浸漬処理を行なった。
【0075】
浸漬終了後、象牙質処理面の表面を電界放出型走査電子顕微鏡FE-SEM(S-4500、日立製)で観察した(1,500、2,000倍)。
図1〜
図7に、未処理及び浸漬試験終了後の歯牙象牙質処理面の表面の電子顕微鏡写真を示す。
図1〜
図7から明らかなように、本発明の口腔用組成物を用いて処理したものは、歯牙象牙質細管の封鎖性が確認できた。
【0076】
また、象牙細管内の通液試験を行った。象牙細管内の通液試験は、「O.W. Reeder et al,J.Dent.Res.,57,(2);187-193,1978」に示されるパシュレーらの方法にしたがい、
図8に示すスプリットチャンバー(分割細孔)装置を作製して実施した。同装置の入口のチャンバーと出口のチャンバーとの間に象牙質の切片を挟み、入口のチャンバーにテスト溶液を入れ、象牙質表面を処理した。また、処理前と処理後その入口のチャンバーに圧力でリンゲル液を入れ、出口のチャンバーへの通過量によって、象牙細管通液性を確認した。
【0077】
なお、歯磨剤の比較例として、知覚過敏抑止効果を謳って販売されている市販品歯磨剤(歯牙象牙細管の封鎖性が知られている乳酸アルミニウムを配合)を使用した(比較例1)。
【0078】
それぞれのテスト溶液の象牙質細管通液抑制効果は、処理前のリンゲル液の通過量と処理後の通過量との差をとり、象牙細管の通液抑制率をパーセントとして下記の計算式により計算した。
【0079】
封鎖率(%)=(処理前の通過量−処理後の通過量)/(処理前の通過量)×100
【0080】
その結果を表28に示す。
【0081】
【表28】
【0082】
比較例3〜7、及び比較例12〜17等に示されるように、ハイドロキシアパタイト及びリン酸一水素カルシウム・2水和物は、単独で歯牙象牙細管封鎖能を有しており、配合量が多くなるに従い封鎖率が高くなっている。他方、比較例8〜11に示されるように、硝酸カリウムは、単独では歯牙象牙細管封鎖能を有していない。
【0083】
また、比較例3と比較例19及び22,比較例4と比較例25及び28,比較例5と比較例31及び34,比較例6と比較例37及び40,比較例7と比較例43及び45等から明らかなように、ハイドロキシアパタイトに硝酸カリウムを配合しても、ハイドロキシアパタイト単独の場合と封鎖率が変わらず、封鎖性の向上はみられない。同様に、比較例12と比較例20, 比較例13と比較例41,比較例14と比較例26, 比較例15と比較例32, 比較例16と比較例38, 比較例17と比較例23等から明らかなように、リン酸一水素カルシウム・2水和物に硝酸カリウムを配合しても、リン酸一水素カルシウム・2水和物単独の場合と封鎖率が変わらず、封鎖性の向上はみられない。
【0084】
さらに、比較例18と比較例3及び12,比較例21と比較例3及び17, 比較例24と比較例4及び14, 比較例27と比較例4及び17, 比較例30と比較例5及び15, 比較例33と比較例5及び12, 比較例36と比較例6及び16, 比較例39と比較例6及び13, 比較例42と比較例7及び17,比較例44と比較例7及び14等から明らかなように、ハイドロキシアパタイト及びリン酸一水素カルシウム・2水和物の2成分を配合した場合には、ハイドロキシアパタイト又はリン酸一水素カルシウム・2水和物をそれぞれ単独で配合した場合の封鎖率の和とほぼ同様であり、これらの併用による相乗的な封鎖促進効果はみられない。
【0085】
これに対して、ハイドロキシアパタイト、硝酸カリウム及びリン酸一水素カルシウム・2水和物の3成分を配合した本発明の口腔用組成物を用いた場合は、相乗的な封鎖率の向上効果がみられる。
具体的に、例えば、実施例1(封鎖率:29.6%)又は実施例5(封鎖率:34.5%)と比較例18(封鎖率:9.3%),実施例2(封鎖率:49.0%)又は実施例6(封鎖率:53.7%)と比較例21(封鎖率:28.7%),実施例9(封鎖率:51.3%)と比較例24(封鎖率:23.9%),実施例8(封鎖率:59.9%)又は実施例12(封鎖率:65.1%)と比較例27(封鎖率:34.6%),実施例13(封鎖率:51.9%)又は実施例17(封鎖率:56.3%)と比較例33(封鎖率:21.9%),実施例21(封鎖率:70.6%)と比較例39(封鎖率:32.4%),実施例22(封鎖率:85.7%)と比較例36(封鎖率:45.7%),実施例28(封鎖率:100%)と比較例44(封鎖率:53.4%),実施例26(封鎖率:100%)又は実施例30(封鎖率:100%)と比較例42(封鎖率:64.6%)等から、3成分併用の相乗効果は明らかである。