(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近時、より薄く降伏応力の大きい板材をレベリング矯正する需要が増加しており、このような板材もローラレベラで矯正することができれば非常に便利である。しかし、レベリングロールを上述したような最大要求板厚に合わせた大きなロール径およびそれに対応したロールピッチにすると、このような薄くかつ降伏応力が大きな板材に対して、充分な矯正能力を発揮することができない。ローラレベラにより板厚の薄い板材を充分に矯正するためには、レベリングロールを小径にし、それに対応するロールピッチにする必要があるが、このようなレベラで板厚の厚い板材を矯正しようとすると、その際に生じる大きな矯正反力によってロールおよびベアリング等が破損する可能性がある。また、レベリングロールを小径にした場合には、降伏応力の高い材料では伝達トルクが不足する。
【0008】
さらに、板厚の薄い板材の場合、厚い板材に比べて耳波、中伸び、幅方向の反りが発生しやすいが、ローラレベラではこれらの矯正は困難である。また、最近では、表面品質要求が厳しく、洗浄機能と防錆機能を持つ水溶性の液をスプレーしながら矯正することがあるが、降伏応力の高い材料をローラレベラにより矯正しようとすると、この液によりスリップして製品表面に傷がつくことがある。
【0009】
したがって、薄くて降伏応力の高い板材から6mm程度の比較的厚い板材までを一台のローラレベラで対応することは困難である。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ローラレベラにおける厚い板材に対する矯正性能を維持したまま、ローラレベラでは矯正が困難な薄く降伏応力が大きい板材も充分にレベリング矯正することができるレベラ設備および板材の矯正方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、板材を矯正するレベラ設備であって、板材を矯正する押圧機構およびハウジングを有するレベラ本体と、前記レベラ本体に着脱可能であり、ローラレベラ用の上下のレベリングロール群を有する第1のロールカセットと、前記レベラ本体に着脱可能であり、テンションレベラ用の上下のレベリングロール群を有する第2のロールカセットと、を備え、前記第1のロールカセットと前記第2のロールカセットとが交換可能であり、前記レベラ本体に前記第1のロールカセットを装着した際にローラレベラが構成され、前記レベラ本体に前記第2のロールカセットを装着した際にテンションレベラが構成されるよう構成されて
おり、前記レベラ本体の入側および出側にそれぞれ設けられた、ブライドルロールを有する一対のブライドルロールユニットと、前記ローラレベラが構成された際には、前記一対のブライドルロールユニットにより板材に張力を付与せずに、前記第1のロールカセットの前記上下のローラレベラ用レベリングロール群の間に板材が通板された状態で、前記押圧機構により前記ローラレベラ用レベリングロール群を介して板材に押圧力を与えて板材を矯正するよう前記レベラ設備を制御するよう構成され、前記テンションレベラが構成された際には、前記一対のブライドルロールユニットにより前記板材に張力を与えつつ、前記第2のロールカセットの前記上下のテンションレベラ用レベリングロール群の間に板材を通板させ、前記押圧機構により前記テンションレベラ用レベリングロール群を介して板材に押圧力を与えて板材を矯正するよう前記レベラ設備を制御するよう構成された制御装置と、を更に備えていることを特徴とするレベラ設備を提供する。
【0012】
第1の観点のレベラ設備において、前記ローラレベラ用レベリングロール群及び前記テンションレベラ用レベリングロール群を駆動する駆動機構をさらに備え、前記第1のロールカセットは、前記駆動機構からの駆動力を前記ローラレベラ用レベリングロール群に伝達する第1の動力伝達機構を備え、前記第2のロールカセットは、前記駆動機構からの駆動力を前記テンションレベラ用レベリングロール群に伝達する第2の動力伝達機構を備えることができる。この場合、前記第1の動力伝達機構の減速比は、前記第2の動力伝達機構の減速比よりも大きくすることができる。また、前記第2のロールカセットは、前記テンションレベラ用レベリングロール群の背面側に設けられた中間ロール群を有し、前記第2の動力伝達機構は、前記駆動機構からの駆動力を前記中間ロール群を構成する中間ロールに伝達するよう構成されることができる。また、前記第1のロールカセットのローラレベラ用レベリングロールの直径をD
RLとし、前記第2のロールカセットのテンションレベラ用レベリングロールの直径をD
TLとしたときに、0.3D
RL<D
TL<0.6D
RLを満たすようにすることができる。
【0014】
第1の観点のレベラ設備において、前記
一対のブライドルロール
ユニットのうち少なくとも出側のものはピンチロール機能を有
し、前記制御装置は、前記レベラ本体に前記第1のロールカセットを装着してローラレベラを構成し、前記
一対のブライドルロール
ユニットにより板材に張力を付与せずにかつピンチロール機能を発揮させずに、前記第1のロールカセットの前記上下のローラレベラ用レベリングロール群の間に板材を通板させ、前記押圧機構により前記ローラレベラ用レベリングロール群を介して板材に押圧力を与えて板材を矯正する第1のモードと、前記レベラ本体に前記第1のロールカセットを装着してローラレベラを構成し、前記
一対のブライドルロール
ユニットにより板材に張力を付与せずに、前記
一対のブライドルロールユニットのうち出側のブライドルロールユニットのピンチロール機能を発揮させて、板材に引き抜きカを与えつつ前記第1のロールカセットの前記上下のローラレベラ用レベリングロール群の間に板材を通板させ、前記押圧機構により前記ローラレベラ用レベリングロール群を介して板材に押圧力を与えて板材を矯正する第2のモードと、前記レベラ本体に前記第2のロールカセットを装着してテンションレベラを構成し、前記
一対のブライドルロール
ユニットにより前記板材に張力を付与しつつ、前記第2のロールカセットの前記上下のテンションレベラ用レベリングロール群の間に板材を通板させ、前記押圧機構により前記テンションレベラ用レベリングロール群を介して板材に押圧力を与えて板材を矯正する第3のモードと、により板材の矯正を行うように前記レベラ設備を制御するよう構成されることができる。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の第2の観点では、
板材を矯正する板材の矯正方法であって、板材を矯正する押圧機構およびハウジングを有するレベラ本体と、前記レベラ本体に着脱可能であり、ローラレベラ用の上下のレベリングロール群を有する第1のロールカセットと、前記レベラ本体に着脱可能であり、テンションレベラ用の上下のレベリングロール群を有する第2のロールカセットと、
前記レベラ本体の入側および出側にそれぞれ設けられた、ブライドルロールを有する一対のブライドルロールユニットとを備えたレベラ設備
の前記レベラ本体に装着された前記第1のロールカセットを前記第2のロールカセットに交換してテンションレベラを構成することと、前記レベラ本体に装着された前記第2のロールカセットを前記第1のロールカセットに交換してローラレベラを構成することと、前記レベラ本体に前記第1のロールカセットを装着してローラレベラを構成した際に、前記
一対のブライドルロール
ユニットにより板材に張力を付与せずに、前記第1のロールカセットの前記上下のローラレベラ用レベリングロール群の間に板材が通板された状態で、前記押圧機構により前記ローラレベラ用レベリングロール群を介して板材に押圧力を与えて板材を矯正すること
と、前記レベラ本体に前記第2のロールカセットを装着してテンションレベラを構成した際に、前記
一対のブライドルロール
ユニットにより前記板材に張力を与えつつ、前記第2のロールカセットの前記上下のテンションレベラ用レベリングロール群の問に板材を通板させ、前記押圧機構により前記テンションレベラ用レベリングロール群を介して板材に押圧力を与えて板材を矯正すること
と、を含むことを特徴とする板材の矯正方法を提供する。
【0017】
第2の観点の板材の矯正方法において、前記
一対のブライドルロール
ユニットのうち少なくとも出側のものはピンチロール機能を有
し、前記レベラ本体に前記第1のロールカセットを装着してローラレベラを構成し、前記
一対のブライドルロール
ユニットにより板材に張力を付与せずにかつピンチロール機能を発揮させずに、前記第1のロールカセットの前記上下のローラレベラ用レベリングロール群の間に板材を通板させ、前記押圧機構により前記ローラレベラ用レベリングロール群を介して板材に押圧力を与えて板材を矯正する第1のモードと、前記レベラ本体に前記第1のロールカセットを装着してローラレベラを構成し、前記
一対のブライドルロール
ユニットにより板材に張カを付与せずに、前記
一対のブライドルロールユニットのうち出側のブライドルロールユニットのピンチロール機能を発揮させて、板材に引き抜き力を与えつつ前記第1のロールカセットの前記上下のローラレベラ用レベリングロール群の間に板材を通板させ、前記押庄機構により前記ローラレベラ用レベリングロール群を介して板材に押圧力を与えて板材を矯正する第2のモードと、前記レベラ本体に前記第2のロールカセットを装着してテンションレベラを構成し、前記
一対のブライドルロール
ユニットにより前記板材に張力を付与しつつ、前記第2のロールカセットの前記上下のテンションレベラ用レベリングロール群の間に板材を通板させ、前記押圧機構により前記テンションレベラ用レベリングロール群を介して板材に押圧力を与えて板材を矯正する第3のモードと、を板材の厚さおよび降伏応力により使い分けて板材の矯正を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、レベラ本体に対して、ローラレベラ用の上下のレベリングロール群を有する第1のロールカセットと、テンションレベラ用の上下のレベリングロール群を有する第2のロールカセットとを着脱可能とし、第1のロールカセットが装着されたときにローラレベラが構成され、第2のロールカセットが装着されたときにテンションレベラが構成される。このため、板材の厚さや降伏応力に応じてローラレベラとテンションレベラとを使い分けることができる。特に、レベラ本体に第1のロールカセットを装着してローラレベラを構成し、一対のブライドルロールユニットのブライドルロールにより板材に張力を付与せずにかつピンチロール機能を発揮させずに板材を矯正する第1のモードと、レベラ本体に第1のロールカセットを装着してローラレベラを構成し、一対のブライドルロールユニットのブライドルロールにより板材に張力を付与せずに、ブライドルロールユニットのうち出側のブライドルロールユニットのピンチロール機能を発揮させて、板材に引き抜き力を与えつつ板材を矯正する第2のモードと、レベラ本体に第2のロールカセットを装着してテンションレベラを構成し、一対のブライドルロールユニットのブライドルロールにより板材に張力を付与しつつ板材を矯正する第3のモードとにより板材の矯正を行うことができる。このため、板材の厚さおよび降伏応力によりこれらを使い分けることができ、一つの設備で極めて広い範囲の板厚および降伏応力範囲の板材に対してレベリング矯正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るレベラ設備を示す概略構成図である。本実施形態のレベラ設備100は、図示しないペイオフリールから繰り出した連続した板材1に対してレベリング矯正を行うものであり、レベラ本体10と、レベラ本体10に対して着脱可能であり、ローラレベラ用の上下のレベリングロール群を有する第1のロールカセット20と、同じくレベラ本体に着脱可能であり、テンションレベラ用の上下のレベリングロール群を有する第2のロールカセット30と、レベラ本体10の前後にそれぞれ設けられた、ブライドルロールを有するブライドルロールユニット40a,40bとを備えている。
図1は、レベラ本体10に第1のロールカセット20が装着された状態を示している。また、レベラ設備100の各構成部の動作は、制御部60により制御されるようになっている。板材1としては、鋼板、チタン板、アルミ板等の金属板を挙げることができる。
【0021】
レベラ本体10は、フレームと押圧機構を有しており、図示するように、第1のロールカセット20が装着されたときにローラレベラが構成される。この場合には、ブライドルロールにより板材1に張力を与えずに、第1のロールカセット20の上下のレベリングロール群の間に板材1が通板された状態で、レベラ本体10の押圧機構によりレベリングロール群を介して板材1に押圧力を与え、ローラレベラとしての機能が発揮される。なお、後述するように、ブライドルロールユニット40a,40bはピンチロール機能を有しており、ローラレベラとしての機能を発揮させる際に、出側のブライドルロールユニット(本実施形態の場合にはブライドルロールユニット40b)のピンチロール機能を発揮させて、板材1に引き抜き力を与えつつ板材1の矯正を行うことも可能となっている。すなわち、ローラレベラとして機能する際には、ピンチロール機能を発揮させないモードおよびピンチロール機能を発揮させるモードの2モードで板材1の矯正を行うことが可能であり、テンションレベラとして機能する場合を加えて合計で3モードの矯正が可能である。
【0022】
一方、第1のロールカセット20と第2のロールカセット30はレベラ本体10に対して着脱可能であることから、これらを交換することが可能である。すなわち、レベラ本体10から第1のロールカセット20を取り外して、第2のロールカセット30を装着することによりテンションレベラが構成される。この場合は、破線で示すようにブライドルロールにより板材1に張力を与えつつ、第2のロールカセット30の上下のレベリングロール群の間に板材が通板された状態で、押圧機構により前記レベリングロール群を介して板材に押圧力を与え、テンションレベラとしての機能が発揮される。
【0023】
なお、上記のように構成されるローラレベラ、テンションレベラが、液体(例えば水に微量の油成分を添加したもの)を供給しながら板材の矯正を行うものである場合には、レベラ本体10の板材搬送方向下流側に、板材1を乾燥するためのエアーブロワー50を設置することが好ましい。
【0024】
次に、レベラ本体10に第1のロールカセット20を装着してローラレベラを構成した状態について説明する。
図2はレベラ本体10に第1のロールカセット20を装着した状態を示す正面図、
図3はその側面図、
図4はその平面図である。
【0025】
レベラ本体10は、ハウジング11と、ハウジング11の上部に設けられたケーシング15と、ハウジング11におけるケーシング15の下側に設けられた上フレーム12と、ハウジング11の下部に設けられた下フレーム13とを有している。また、レベラ本体10は、ハウジング11の外部に固定された、第1のロールカセット20および第2のロールカセット30のロールを駆動するためのモータ53等を有する駆動機構10aを有している。第1のロールカセット20が装着されている本例の場合には、駆動機構10aの駆動力は、第1のロールカセット20内に設けられた動力伝達機構29により伝達される。第1のロールカセット20はレベラ本体10のハウジング11から突出するように装着され、突出した部分に動力伝達機構29が設けられる。なお、動力伝達機構29に対応して、上フレーム12および下フレーム13もハウジング11から突出するように設けられている。
【0026】
ハウジング11の上部のケーシング15には、板材1を矯正するための押圧力を与える押圧機構としての圧下シリンダ14aおよび14bが収納される。圧下シリンダ14aおよび14bは、板材1の幅方向の両端側に2基ずつ設けられている(
図3参照。ただし、
図3では圧下シリンダ14aのみ図示)。ケーシング15には、圧下シリンダ14aおよび14bの他、昇降シリンダ51が収納されている。これら圧下シリンダ14aおよび14b、ならびに昇降シリンダ51のピストンの先端部分に設けられた取り付け部16にて上フレーム12に取り付けられている。
【0027】
上フレーム12の両側面には、ロールカセット20または30を保持するためのグリップシリンダ18が収納されている(本例では第1のロールカセット20が保持されている)。
【0028】
上フレーム12の下には、板幅方向に複数(本実施形態では9個)の油圧式ウェッジ19が配置されている。この油圧式ウェッジ19は、所定のセンサの検出値に基づいて、上フレーム12や下フレーム13の撓み、ならびに圧下シリンダ14a,14bや、第1のロールユニット20のロール群およびロールフレーム等の圧縮変形が最小になるように制御される。なお、加圧制御方式としては、油圧ウェッジを用いる方式の他、電動ウェッジを用いる方式や油圧クラウニングシリンダを用いる方式があり、油圧ウェッジ方式に限定されない。
【0029】
油圧ウェッジ19の下方には、ロールカセット20または30が装着される空間を有している。本例の場合には、その空間に第1のロールカセット20が装着されている。
【0030】
図2に示すように、第1のロールカセット20は、上カセット20aおよび下カセット20bを有している。上カセット20aは、上ロールフレーム21と、長尺状をなす複数本(本例では7本)の上レベリングロール22とを有している。また、下カセット20bは、下ロールフレーム25と、長尺状をなす複数本(本例では8本)の下レベリングロール26とを有している。上レベリングロール22と下レベリングロール26とは、千鳥状に配置されており、上下レベリングロール群を構成する。上ロールフレーム21の両側面には、上フレーム12に取り付けられているグリップシリンダ18と連結されるグリップシリンダ受け18aが取り付けられている。
【0031】
第1のロールカセット20は、ローラレベラとして機能するため、上レベリングロール22および下レベリングロール26としては大径ロールが用いられ、例えば直径が70mmであり、ロールピッチは105mmである。下ロールフレーム25には、第1のロールカセット20を着脱する際の移動のための車輪64が取り付けられている。
【0032】
第1のロールカセット20が装着された際には、上カセット20aおよび下カセット20bが適宜の位置決め用の部材で位置決めされる。
【0033】
レベラ本体10の下フレーム13には、レール65aが設けられたレールベース65が装着されている。レールベース65は、
図2の紙面に対して垂直な方向に伸び、第1のロールカセット20と第2のロールカセット30とを交換する際に、これらが車輪64を介してレール部材65上のレール65aに沿って移動されるようになっている。
【0034】
図5および
図6は、第1のロールカセット20の詳細構成を示す正面図および側面図である。上ロールフレーム21と上レベリングロール22との間には、長尺状の上中間ロール23が設けられ、さらに中間ロール23をバックアップする短尺の上バックアップロール24が複数配置されている。これら上レベリングロール22、上中間ロール23、上バックアップロール24は、上ロールフレーム21に支持されるように設けられている。
【0035】
また、下ロールフレーム25と下レベリングロール26との間には、長尺状の下中間ロール27が設けられ、さらに中間ロール27をバックアップする短尺の下バックアップロール28が複数配置されている。これら下レベリングロール26、下中間ロール27、下バックアップロール28は、下ロールフレーム25に支持されるように設けられている。なお、上中間ロール23および下中間ロール27の直径は70mmが例示され、上バックアップロール24および下バックアップロール28の直径は100mmが例示される。
【0036】
図6に示すように、動力伝達機構29は、上レベリングロール22および下レベリングロール26の軸に接続されたユニバーサルジョイント29a、およびそれに接続されたピニオンネスト29bを有しており、第1のロールカセット20は、この動力伝達機構29を含んでいる。第1のロールカセット20は、上ロールフレーム21および下ロールフレーム25がレベラ本体10のハウジング11から突出するように装着され、そのハウジング11から突出した部分に動力伝達機構29が収容される(
図3、4参照)。レベラ本体10の駆動機構10aは、上下レベリングロール22,26を駆動するための複数のモータ52と、モータ52に接続されたユニバーサルジョイント53とを有しており、動力伝達機構29のピニオンネスト29bは、駆動機構10aのユニバーサルジョイント53に対して着脱可能となっている。したがって、第1のロールカセット20がレベラ本体10に装着された際には、駆動機構10aのモータ52からの駆動力がユニバーサルジョイント53、ならびに動力伝達機構29のピニオンネスト29bおよびユニバーサルジョイント29aを介して上レベリングロール22および下レベリングロール26に伝達される。また、第1のロールカセット20を取り外す際には、動力伝達機構29ごと取り外される。
【0037】
次に、第2のロールカセット30について説明する。
図7および
図8は第2のロールカセット30の詳細構成を示す側面図および正面図である。これらの図に示すように、第2のロールカセット30の基本構成は第1のロールカセット20と同じであり、上カセット30aおよび下カセット30bを有している。上カセット30aは、上ロールフレーム31と、長尺状をなす複数本の上レベリングロール32とを有している。また、下カセット30bは、下ロールフレーム35と、長尺状をなす複数本の下レベリングロール36とを有している。上レベリングロール32と下レベリングロール36とは、千鳥状に配置されており、上下レベリングロール群を構成する。ただし、第2のロールカセット30はテンションレベラを構成するものであることから、上レベリングロール32および下レベリングロール36の径が小径であり、例えば30mmであり、ロールピッチは80mmである。また、上レベリングロール32および下レベリングロール33の本数は、第1のロールカセット20の上レベリングロール22および下レベリングロール23の本数よりも少なくてもよく、本例では上レベリングロール32の本数が6本、下レベリングロール36の本数が7本である。
【0038】
また、第1のロールカセット20と同様、上ロールフレーム31と上レベリングロール32との間には、長尺状の上中間ロール33が設けられ、さらに上中間ロール33をバックアップする短尺の上バックアップロール34が複数配置され、これら上レベリングロール32、上中間ロール33、上バックアップロール34は、上ロールフレーム31に支持される。また、下ロールフレーム35と下レベリングロール36との間には、長尺状の下中間ロール37が設けられ、さらに下中間ロール37をバックアップする短尺の下バックアップロール38が複数配置され、これら下レベリングロール36、下中間ロール37、下バックアップロール38は、下ロールフレーム35に支持される。なお、上中間ロール33および下中間ロール37の直径は65mmが例示され、上バックアップロール34および下バックアップロール38の直径は75mmが例示される。
【0039】
第2のロールカセット30がレベラ本体10に装着された際には、上カセット30aおよび下カセット30bが適宜の位置決め用の部材で位置決めされる。
【0040】
なお、第2のロールカセット30においても、第1のロールカセット20と同様、上ロールフレーム31の上部に、グリップシリンダ受けが取り付けられており、下ロールフレーム35には、第2のロールカセット30を着脱する際の移動のための車輪が取り付けられている。
【0041】
図8に示すように、第2のロールユニット30は、上中間ロール33および下中間ロール37の軸に接続されたユニバーサルジョイント39a、およびそれに接続されたピニオンネスト39bを有する動力伝達機構39を含んでいる。第2のロールカセット30も第1のロールカセット20と同様、上ロールフレーム31および下ロールフレーム35がレベラ本体10のハウジング11から突出するように装着され、そのハウジング11から突出した部分に動力伝達機構39が収容される。動力伝達機構39のピニオンネスト39bは、駆動機構10aのユニバーサルジョイント53に対して着脱可能となっている。したがって、第2のロールカセット30がレベラ本体10に装着された際には、駆動機構10aのモータ52からの駆動力がユニバーサルジョイント53、ならびに動力伝達機構39のピニオンネスト39bおよびユニバーサルジョイント39aを介して上中間ロール33および下中間ロール37に伝達される。また、第2のロールカセット30を取り外す際には、動力伝達機構39ごと取り外される。
【0042】
テンションレベラに適用する第2のロールカセット30ではレベリングロール32,36が小径であることが多く、レベリングロール32,36にユニバーサルジョイントを取り付けることが困難な場合が多い。その場合には、本実施形態のように、第2のロールカセット30において、中間ロール33,37を駆動することが有効である。また一般に、ローラレベラに比べて薄い板を矯正するテンションレベラでは板の送り速度を高くすることができ、テンションレベラ構成時に板の送り速度を高くすることは加工効率上も好ましい。そのため、動力伝達機構39の減速比は、動力伝達機構29の減速比よりも小さいことが好ましい。
【0043】
上述のように、ローラレベラ用の第1のロールカセット20におけるレベリングロール22,26の直径として70mmを例示し、テンションレベラ用の第2のロールカセット30におけるレベリングロール32,36の直径として30mmを例示したが、これらの直径の比率には好ましい範囲が存在する。具体的には、レベリングロール22,26の直径をD
RLとし、レベリングロール32,36の直径をD
TLとすると、0.3D
RL<D
TL<0.6D
RLを満たすことが好ましい。
【0044】
なお、
図9、10に示すように、第1のロールカセット20および第2のロールカセット30は、中間ロールを設けずに、レベリングロール22,26およびレベリングロール32,36の背面に直接バックアップロール24,28およびレベリングロール34,38を設けたものであってもよい。
【0045】
次に、ブライドルロールユニット40a,40bの詳細について説明する。
図11、12はブライドルロールユニット40a,40bを示す概略構成図であり、
図11はブライドルロールにより板材1に張力を付与していない状態、
図7はブライドルロールにより板材1に張力を付与している状態を示す。これらに示すように、ブライドルロールユニット40a,40bは、いずれも3つのブライドルロール41,42,43を有しており、中央のブライドルロール42が上下に移動可能となっている。
図11に示すように、ブライドルロール42が上昇位置にあって、板材1に張力を付与していない状態から、
図12に示すように、ブライドルロール42を下降位置まで下降させることにより、板材1はブライドルロール41,42,43に巻き掛けられた状態となり、板材1に張力が付与される。ブライドルロール41,43は、板材1の搬送路の下に固定的に設けられており、ブライドルロール42が上昇位置にあるときには送りロールとして機能する。
【0046】
ブライドルロール41,43の上方には、それぞれ板材1を押さえる押さえロール44,45が設けられており、ブライドルロール41と押さえロール44とによりピンチロール46が構成され、ブライドルロール43と押さえロール45とによりピンチロール47が構成される。押さえロール44,45は油圧サーボ機構を有しており、この油圧サーボ機構により板材1の押さえ力を制御することができるようになっている。
【0047】
レベラ本体10に第1のロールカセット20が装着されてローラレベラを構成している際には、ブライドルロールユニット40a,40bの真ん中のブライドルロール42を上昇位置に位置させて、板材1に張力を付与せずに板材1の矯正を行う。このとき、レベリングロール22,26による曲げのみで板材1の矯正を行う第1のモードと、出側のブライドルロールユニット40bのピンチロール46,47(押さえロール44,45)を作動させて板材1に引き抜き力(押さえ力)を付加する第2モードの2つのモードをとることができる。
【0048】
一方、レベラ本体10に第2のロールカセット30が装着されてテンションレベラを構成している際には、ブライドルロールユニット40a,40bの中央のブライドルロール42を下降位置に位置させることにより板材1に張力を付与しながら、レベリングロール32,36による曲げを与えて板材1を矯正する。このとき、押さえロール44,45を下降させてピンチロール46,47を機能させて板材1に押さえ力を付与することにより、板材1に付与される張力をより大きくすることができる。押さえロール44,45は、油圧サーボ機構により、必要以上の力が与えられないように押さえ力が制御される。
【0049】
次に、このように構成されるレベラ設備100により板材1の矯正を行う際の動作について説明する。
【0050】
レベラ設備100をローラレベラとして機能させる場合には、レベラ本体10に第1のロールカセット20を装着してローラレベラを構成する。このとき、ブライドルロールユニット40a,40bの中央のブライドルロール42を上昇位置に位置させて板材1に張力を付与しない状態とし、図示しないペイオフリールから繰り出された板材1を
図1の矢印方向に搬送させて、レベラ本体10と第1のロールユニット20とで構成されるローラレベラにより板材1の矯正を行う。
【0051】
ローラレベラにおいては、第1のモードおよび第2のモードの2つのモードで板材1の矯正を行うことができる。第1のモードの板材1の矯正に際しては、ブライドルロールユニット40a,40bにより板材1へ張力を付与せず、かつピンチロール機能を発揮させずに、レベラ本体10に装着された第1のロールカセット20の上レベリングロール22と下レベリングロール26との間に板材1を挿入し、駆動機構10aのモータ52により、ユニバーサルジョイント53、ならびに駆動伝達機構29のピニオンクスト29bおよびユニバーサルジョイント29aを介して上レベリングロール22および下レベリングロール26を駆動させることにより板材1を搬送させながら、圧下シリンダ14aおよび14bにより上レベリングロール22と下レベリングロール26の間の板材1に押し込み力を与えて板材1に曲げを付与する。したがって、基本的にレベリングロール22,26による押し込み量のみが矯正効果を左右する。このとき、板材1の押し込み量の上限は、レベリングロール22,26のトルクによって決定される。
【0052】
上記第1のモードの矯正においては、板材1が薄くなり降伏応力が大きくなると、大きな押し込み量が必要となるが、押し込み量には限界がある。このため、第2のモードでは、出側のブライドルロールユニット40bのピンチロール46,47により板材1を押さえて引き抜き力を与える。これにより、板材1の送りを補助して、レベリングロール22,26のトルクを補うことがでるので、レベリングロール22,26による押し込み量を増加させることができる。このため、より薄く降伏力の大きい板材1のレベリング矯正を行うことが可能となる。このときの押さえ力は、押さえロール44,45の油圧サーボ機構により制御することができる。
【0053】
しかし、板材1がより薄くかつより降伏応力が大きいものとなると、ローラレベラでは第2のモードでも十分に矯正することが困難となる。また、薄い板材の場合、厚い板材に比べて耳波、中伸び、幅方向の反りが発生しやすいが、ローラレベラではこれらの矯正は困難である。
【0054】
そのような場合は、第1のロールカセット20をレベラ本体10から取り外して、第2のロールカセット30を装着し、さらにブライドルロールユニット40a,40bのブライドルロールを作動させて、板材1に張力を付与するようにすることにより、テンションレベラを構成し、第3のモードにより板材1の矯正を行う。
【0055】
この際の第1のロールカセット20と第2のロールカセット30との交換について
図13を参照して説明する。なお、
図13においては簡略化のためレールの記載を省略している。第1のロールカセット20がレベラ本体10に装着され、第2のロールカセット30が待機位置72に存在する
図13(a)の状態から、第1のロールカセット20の下カセット20bに上カセット20aを預けた状態とし、
図13(b)に示すように、適宜の移動手段を用いて車輪によりレールベース65のレール上を走行させて待機位置71に移動させる。そして、
図13(c)に示すように、待機位置72から適宜の移動手段を用いて第2のロールカセット30をレールベース65のレール上を走行させて本体10内に所定の位置に装着する。これにより、第2のロールカセット30を用いたテンションレベラによるレベリング動作が可能となる。
【0056】
このようにレベラ本体10と第2のロールカセット30で構成されるテンションレベラによる第3のモードによる板材1の矯正に際しては、ブライドルロールユニット40a,40bの中央のブライドルロール42を下降位置まで下降させて板材1に張力を与えた状態で、第2のロールカセット30の上レベリングロール32と下レベリングロール36との間に板材1を挿入し、駆動機構10aのモータ52により、ユニバーサルジョイント53、ならびに駆動伝達機構39のピニオンネスト39bおよびユニバーサルジョイント39aを介して上中間ロール33および下中間ロール37を駆動させながら、圧下シリンダ14aおよび14bにより、上レベリングロール32と下レベリングロール36の間の板材1に押し込み力が与えられ、伸びと曲げにより板材1が矯正される。このとき、押さえロール44,45により板材1に押さえ力を付与することにより、張力をより大きくすることができる。押さえロール44,45は、油圧サーボ機構により、必要以上の力が与えられないように押さえ力が制御される。
【0057】
テンションレベラによる第3のモードでは、ブライドルロールユニット40a,40bにより張力を付与することにより、板材1がレベリングロール32,36になじみやすくなり、かつ小径ロールであることから、ローラレベラよりも押し込み量を大きくして板材1のレベリングロール32,36への巻き付きを大きくすることができる。このため、ローラレベラでは矯正できない薄くて降伏応力の大きい板材を矯正することが可能となる。
【0058】
本実施形態では、一台のレベラ設備により、ローラレベラおよびテンションレベラとして使用することが可能であり、これらより上記3つのモードによる板材1を矯正が可能である。このため、板材の厚さおよび降伏応力によりこれらを使い分けることができ、一つの設備でありながら、極めて広い範囲の板厚および降伏応力範囲の板材に対してレベリング矯正することができる。
【0059】
具体例を
図14に示す。
図14は、横軸に板厚をとり、縦軸に降伏応力をとって、幅1600mmのステンレス鋼板(SUS304)における矯正可能領域を示す図である。このようにローラレベラにおける第1のモードのみで矯正を行うよりも、第1〜第3モードで矯正を行うことにより矯正範囲が著しく広がることがわかる。特に、テンションレベラによる第3のモードにより、薄くかつ降伏応力が高い範囲の矯正可能範囲が広がり板厚0.5mmで降伏応力が1200MPaという極めて薄く高降伏応力の範囲まで矯正可能となる。なお、
図14の第3のモードの範囲は、ローラレベラを用いた場合よりも広がった範囲を示し、実際には第3のモードにより破線部分まで使用が可能である。実際の操業に際しては、
図14の適用可能範囲に基づいてモードを変更するようにすればよい。
【0060】
このように、本実施形態によれば、レベラ本体10に対して、ローラレベラ用の大径のレベリングロールを有する第1のロールカセット20と、テンションレベラ用の小径のレベリングロールを有する第2のロールカセット30とを着脱可能とし、第1のロールカセット20が装着されたときにローラレベラが構成され、ブライドルロールを作動させずに、板材1に押圧力を与えてローラレベラとしての機能を発揮させ、第2のロールカセット30が装着されたときにテンションレベラが構成され、ブライドルロールを作動させることにより板材1に張力を与えつつ、板材に押圧力を与えてテンションレベラとしての機能を発揮させる。このため、板材1の厚さに応じてローラレベラとテンションレベラとを使い分けることができる。特に、レベラ本体10に第1のロールカセット20を装着してローラレベラを構成し、ブライドルロールユニット40a,40bにより板材に張力を付与せずにかつピンチロール機能を発揮させずに板材1を矯正する第1のモードと、レベラ本体10に第1のロールカセット20を装着してローラレベラを構成し、ブライドルロールユニット40a,40bにより板材1に張力を付与せずに、出側のブライドルロールユニット40bのピンチロール機能を発揮させて、板材に引き抜き力を与えつつ板材を矯正する第2のモードと、レベラ本体に第2のロールカセット30を装着してテンションレベラを構成し、ブライドルロールユニット40a,40bにより板材1に張力を付与しつつ板材1を矯正する第3のモードとにより板材の矯正を行うことができる。このため、板材1の厚さおよび降伏応力によりこれらを使い分けることができ、一つの設備で極めて広い範囲の板厚および降伏応力範囲の板材1に対してレベリング矯正することができる。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、レベリングロールの上ロールを下ロールに対して押圧する装置を示したが、下ロールを上ロールに対して押圧するようにしてもよい。また、本発明の範囲を逸脱しない限り、上記実施形態の構成要素を一部取り除いたものも本発明の範囲内である。