特許第6199898号(P6199898)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199898
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】滑り軸受の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/14 20060101AFI20170911BHJP
   F16C 33/12 20060101ALI20170911BHJP
   B23K 20/04 20060101ALI20170911BHJP
   C22C 12/00 20060101ALI20170911BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20170911BHJP
   C22F 1/04 20060101ALN20170911BHJP
   C22F 1/16 20060101ALN20170911BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20170911BHJP
【FI】
   F16C33/14 Z
   F16C33/12 A
   B23K20/04 B
   B23K20/04 F
   C22C12/00
   C22C21/00 E
   !C22F1/04 A
   !C22F1/16 A
   !C22F1/00 627
   !C22F1/00 631A
   !C22F1/00 683
   !C22F1/00 694A
   !C22F1/00 691B
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-553577(P2014-553577)
(86)(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公表番号】特表2015-514933(P2015-514933A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】AT2013050022
(87)【国際公開番号】WO2013110110
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2016年1月19日
(31)【優先権主張番号】A95/2012
(32)【優先日】2012年1月25日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】504101245
【氏名又は名称】ミーバ グライトラガー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ファルコ ラングバイン
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ヘーディケ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン ホルツィンガー
【審査官】 上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第01331961(US,A)
【文献】 特開平08−257768(JP,A)
【文献】 特公昭52−025387(JP,B1)
【文献】 特開2009−228776(JP,A)
【文献】 特開平09−079264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/14
B23K 20/04
C22C 12/00
C22C 21/00
F16C 33/12
C22F 1/00
C22F 1/04
C22F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層(2)と滑り軸受層(3)とを有する滑り軸受(1)の製造方法であって、
前記支持層(2)は圧延クラッドによって前記滑り軸受層(3)と結合され
圧延クラッドの前に前記支持層(2)の表面に表面構造(4)が溝状凹み部(6)を有する溝構造の形態で形成され、次いで該表面構造(4)上に前記滑り軸受層(3)が圧延される滑り軸受(1)の製造方法において、
前記溝状凹み部(6)は前記滑り軸受(1)の周方向に長く延在し、圧延クラッドにより前記溝構造にアンダーカット部(10)が形成され、
前記溝状凹み部(6)が所定の溝深さを有し、該溝深さは下限0.1mm及び上限0.9mmの範囲から選択されることを特徴とする滑り軸受(1)の製造方法。
【請求項2】
圧延クラッドの前に前記支持層(2)の表面に少なくとも一部領域に結合層(14)又は結合粒子が塗布されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記結合粒子が、Cu、Sb、Al、Zn、Bi、Sn、Fe、Mg、Mn、Ni、Ti、V含む群より選択される請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記結合粒子が、少なくとも100粒子/cm2の面積密度で塗着されることを特徴とする請求項又はに記載の方法。
【請求項5】
前記溝構造が、前記支持層(2)の表面の代わりに、又は、前記支持層(2)の表面に加えて、結合層(14)の表面に形成されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項6】
支持層(2)と、該支持層(2)と結合された滑り軸受層(3)と、を有し、
前記支持層(2)が、隆起部(5)と溝状凹み部(6)とを備えた表面構造(4)を有しており、前記滑り軸受層(3)が、前記支持層(2)と材料接合による結合に加えて形状係合的に結合されている滑り軸受(1)において、
前記溝状凹み部(6)は、前記滑り軸受(1)の周方向に長く延在すると共にアンダーカット部(10)を有し、
前記溝状凹み部(6)が所定の溝深さを有し、該溝深さは下限0.1mm及び上限0.9mmの範囲から選択されることを特徴とする滑り軸受(1)。
【請求項7】
前記滑り軸受層(3)と前記支持層(2)との間に少なくとも一部領域に結合層(14)が配置され、又は、結合粒子が塗着されることを特徴とする請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項8】
前記結合粒子が、Cu、Sb、Al、Zn、Bi、Sn、Fe、Mg、Mn、Ni、Ti、V含む群より選択された請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項9】
前記結合粒子が、少なくとも100粒子/cm2の面積密度で塗着されていることを特徴とする請求項又はに記載の滑り軸受(1)。
【請求項10】
前記表面構造(4)が、前記支持層(2)の表面の代わりに、又は、前記支持層(2)の表面に加えて、結合層(14)の表面内に形成されていることを特徴とする請求項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項11】
前記凹み部(6)、特に溝列の溝が、下限0.1mm及び上限0.9mmの範囲より選択された幅、即ち溝幅(7)を有することを特徴とする請求項6〜10の何れか一項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項12】
前記滑り軸受層(3)が、ホワイトメタル又はアルミニウムベース合金からなることを特徴とする、請求項11のいずれか項に記載の滑り軸受(1)。
【請求項13】
前記滑り軸受層(3)が、Sn、In、Bi、Pb、Ag含む群より選択された軟質金属を有しており、前記滑り軸受層内の軟質金属の割合が、少なくとも20重量%及び最大95重量%であることを特徴とする請求項6〜11のいずれか一項に記載の滑り軸受(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持層が圧延クラッドによって滑り軸受層と結合されている、支持層と滑り軸受層とを有する滑り軸受の製造方法、並びに支持層及び支持層と結合された滑り軸受層を有する滑り軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
滑り軸受層、例えば軸受金属層又は滑り層にホワイトメタル合金を使用することは、従来技術において既に広い範囲で文書化されている。これについては、例えばオーストリア特許第505664号明細書又はオーストリア特許第506450号明細書の参照を求める。
【0003】
鋼基体上にホワイトメタル合金を析出させることは、通常は鋼基体上にホワイトメタル合金を注ぐことによって行う。なぜなら鋼とホワイトメタルとの圧延クラッドは両結合材料の成形能力が非常に異なるために困難を来たすからである。
【0004】
通常は基体材料と、これと結合される滑り軸受材との強度差が大きい場合は、中間層を挿入して強度差を緩和する。その1例はスズ含有率の高いアルミニウム合金と鋼の複合体であり、この材料複合体を圧延クラッド可能にするために純アルミニウムからなる中間層が挿入される。
【0005】
原理的に鋼ホワイトメタル複合体のクラッドは従来技術においても既に言及されている。例えば上に引用したAT506450B1により、軸受金属層がせいぜい結合面の領域で融点以上に加熱されることが確保されている場合は、ホワイトメタルからなる軸受金属層と支持シェルとの結合にクラッドが適することが知られている。その理由は、この明細書によると結合強度はホワイトメタル合金の微粒構造によって改善される。このために微粒性は非常に急激な冷却によって達成される。しかしながらこの明細書からクラッドそれ自体については何も読み取ることができない。むしろこの明細書に記載されたすべての例は、スズ又は亜鉛ベースの付着媒介層の使用、若しくははんだ層の使用も説明している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、圧延クラッドされた滑り軸受複合材料の結合強度を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、一方では冒頭に記載した方法と、他方では冒頭に記載した滑り軸受によって解決され、この方法により圧延クラッドの前に支持層の表面に表面構造が形成され、次いで表面構造上に滑り軸受層が圧延されるようになっており、滑り軸受においては支持層が表面構造を有していて、滑り軸受層は材料接合による結合に加えて形状係合的に支持層と結合されている。
【0008】
表面構造によって複合体の製造に利用できる表面が拡大され、それによって上下層の付着が改善され得ることが有利である。加えて表面構造は、滑り軸受の構造強度は支持層を通して得られるので本来硬くあるべきか若しくは硬くなければならない支持層と比べて、より軟質の滑り軸受層が側方に滑動するのを妨げる。このように側方に滑動するのを強く妨げると、クラッド中に滑り軸受層内に高い流体静力学的応力状態が生じる。その結果として両材料、即ち支持層と滑り軸受層内の成形度が高まり、さらに新たに表面が形成されて、両層の低温溶接を招き、ひいては両層の結合を助長する。そのうえ表面構造によって両層の形状係合的な結合が達成され、これも同様に両層の結合強度を助長するように作用する。
【0009】
表面構造は溝構造として形成されて、表面は溝列を有することが好ましい。溝構造の利点は、相応の成形ロール又はエンボスロールを使用することにより、この構造は工業生産プロセスで簡単に設けられることである。溝構造を設けることは、圧延クラッド法でより良好に実施可能である。そのうえ溝構造によって滑り軸受層内の応力状態が拡大され、その結果として上述した効果をさらに改善し、ひいては支持層上における滑り軸受層の結合強度も追加的に高めることができる。
【0010】
圧延クラッド中に溝構造内にアンダーカット部が形成されるようにすることもできる。アンダーカット部により滑り軸受層が溝で「引っ掛かる」ことによって、形状係合が改善されて結合強度はさらに高められる。
【0011】
複合体の付着強度若しくは.結合強度をさらに改善するために、他の実施形態に従い、圧延クラッドの前に支持層の表面に少なくとも一部領域に結合層が塗布され、又は結合粒子が塗着されるようにしてよい。
【0012】
結合粒子がCu、Sb、Al、Zn、Bi、Sn、Fe、Mg、Mn、Ni、Ti、V並びにこれらの混合物を含む群より選択されることが好ましい。それにより比表面積が溝構造と比べて高められ、ひいては結合強度が改善され得る点が有利である。
【0013】
結合粒子が少なくとも100粒子/cm2の面積密度で塗着されるとさらに有利である。これにより少なくとも若干の粒子は表面構造の内部に配置されるようにでき、したがって結合粒子によって高められた結合強度が、表面の構造化されていない領域だけでなく構造内部でも得られる。このことはさらに圧延クラッド中に滑り軸受層が滑動するのを爪立て効果によって妨げるのを助長し、そのため結合粒子は結合が作られた後だけでなく、既にその前に結合が形成されている間にも作用するのである。
【0014】
溝構造は支持層の表面の代わりに、又は支持層の表面に加えて結合層の表面でも形成でき、若しくは存在できる。それにより結合層は、クラッドに続く熱処理において、拡散に基づいて混晶を形成し、ひいては混晶形成によって結合強度を高める働きだけでなく、形状係合に基づいて機械的に結合強度を高める働きもする。さらにそれによって表面構造を設けることが容易になり、結合層は通常は基体層より軟質である。基体層が追加的に表面構造を有する場合には、表面構造の深さを小さくして形成できる。それによって表面構造を形成するのに必要な力は、これが機械的に設けられる限り、減らすことができ、ひいては特に表面構造を形成するための工具の耐用期間を増すことができる。
【0015】
滑り軸受の実施形態に従い、溝列は下限0.1mm及び上限0.9mmの範囲より選択された溝幅の溝を有し、及び/又は溝は、下限0.1mm及び上限0.9mmの範囲より選択された溝深さを有するようにされてよい。溝幅及び/又は溝深さが0.9mmを超えると、滑り軸受層内に応力状態を作り出すという前述の効果は不十分にしか達成されないことが確認された。なぜなら溝は滑り軸受層の材料によって不十分に、即ち一部不完全にしか満たされないからである。溝深さ及び/又は溝幅が0.1mmを下回る場合も、上述した効果はなお達成されるものの、より低い程度でしか達成されず、結合強度の改善もより低い程度でしか達成されないことが観察された。
【0016】
滑り軸受層がホワイトメタル又はアルミニウムベース合金からなることが好ましい。なぜなら滑り軸受に採用されるそのような合金は、公知のように非常に高い順応性を有するからである。それによって基体層と滑り軸受層との間の形状係合もより良好に実現できる。
【0017】
また、滑り軸受層がSn、In、Bi、Pb、Ag、並びにこれらの混合物を含む群より選択された軟質金属を有し、滑り軸受層に占める軟質金属の割合が少なくとも20重量%、最大95重量%であると有利である。なぜならそれによって一方では軟質金属の割合に基づいてこれらの合金の改善された滑り特性と並んで、表面構造に対する順応性、ひいては型充填係数が改善され得て、表面構造内への圧入が改善されるからであり、他方では最大割合を制限することにより滑り軸受層は十分な固有強度を有するからである。
【0018】
以下に本発明の理解を深めるために、図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図面はそれぞれ簡略化して表現されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】滑り軸受の側面図である。
図2】複合体として構成された滑り軸受の一部を示す図である。
図3】形状係合的な複合体の1実施形態に従う滑り軸受の一部を示す図である。
図4】形状係合的な複合体の別の実施形態に従う滑り軸受の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
最初に確認しておくと、種々異なる説明がなされている実施形態において同一部材には同じ参照符号若しくは同じ部材記号を付けており、説明全体に含まれている開示内容は同じ参照符号若しくは同じ部材記号を付けた同一部材に準用され得る。また、説明中で選択された位置の指示、例えば上、下、横などは、直接説明され、且つ示されている図面に関するものであり、位置が変化したときは新しい位置に準用するものとする。
【0022】
図1は滑り軸受1を側面図で示す。滑り軸受1は支持層2と滑り軸受層3を有し、若しくは支持層2と滑り軸受層3からなる。
【0023】
閉じられていない滑り軸受1は、少なくともほぼ180°の重なり角度範囲を有する半シェル構成と並んで、それとは異なる重なり角度範囲、例えば少なくともほぼ120°又は少なくともほぼ90°を有することもできる。そのため滑り軸受要素1は3分の1シェル又は4分の1シェルとして形成して、それぞれ別の軸受シェルと軸受ホルダ内で組み合わせることができる。本発明による滑り軸受1は好適には軸受ホルダのより高い負荷のかかる領域に組み込まれる。
【0024】
滑り軸受1の他の実施形態、例えば軸受ブッシュとしての構成も可能である。
【0025】
支持層2は通常は硬質材料からなる。支持シェルとも呼ぶ支持2の材料として、青銅、黄銅などを使用できる。本発明の好適な実施形態において支持層2は鋼からなる。
【0026】
図1に示す実施形態において滑り軸受層3は支承される部材、例えばシャフトと直接接触する滑り層として形成されている。
【0027】
しかし本発明の枠内で2層構成と並んで、滑り軸受1を2層以上で構成する可能性もある。この場合は滑り軸受層3は軸受金属層であり、その上に続いてなおも滑り層が取り付けられる。その際に、この軸受金属層と滑り層との間に少なくとも1個の中間層、例えば拡散阻止層及び/又は結合層が配置される可能性がある。
【0028】
そのような多層滑り軸受の設計構成は原理的に従来技術により公知であるため、これに関しては関連する従来技術の参照を求める。
【0029】
滑り軸受層3は、支持層2の材料を基準にしてより軟質の材料からなる。特に滑り軸受層3はホワイトメタルからなる。ホワイトメタルは、例えばSnSb7Cu3,5Cdl、PbSbl4Sn9CuNiCdAs、PbSnl5SnlOAs、SnSb7Cu3,5、SnSb8Cu3、SnSb8Cu3,5NiCd、SnSblOCu4NiCdAsCr又はSnSbl2Cu5,5NiCdAsの組成を有するが、従来技術により公知の他の組成も可能である。
【0030】
ホワイトメタル合金と並んで他の合金、例えばアルミニウムベース合金、特に軟質金属の割合が高いアルミニウムベース合金、又は鉛青銅も使用できる。
【0031】
本発明でいう軟質金属はSn、In、Bi、Pb及びAgを含む群より選択された金属として理解され、この群の少なくとも2種類の元素の混合物も可能である。
【0032】
非ホワイトメタル合金、例えばアルミニウムベース合金中の軟質金属の割合が高いとは、本発明の趣旨において軟質金属の割合が少なくとも20重量%と理解される。特に軟質金属の割合は20重量%〜40重量%である。
【0033】
これに対してホワイトメタル合金において軟質相の割合は最大95重量%、例えば40重量%〜85重量%であってよい。
【0034】
鉛青銅において軟質金属の割合は最大20重量%であってよい。
【0035】
ここで考慮すべきは、軟質金属の割合はこれらの合金の用途に応じて、つまり軸受金属層か滑り層によって変わることであり、好適には滑り層合金は軸受金属合金と比べて軟質相成分の割合がより高いことが好ましい。
【0036】
しかしながら原理的に逆の構成、つまり軸受金属合金中の軟質相成分の割合を滑り層に対してより高くすることも可能であるが、これらの構成は特殊用途に限られる。
【0037】
このようなアルミニウムベース合金の例はAlSn40Cu、AlSn40、AlSn25Cu、AlSn25、AlSn25CuMn、AlSn20Cu、AlSn20CuMnであり、従来技術により公知の他のアルミニウムベース合金も使用できる。
【0038】
他の使用可能な合金は、例えばPbSn9Sbl5である。
【0039】
滑り軸受層3は圧延クラッドによって支持層2と結合される。このために公知のように支持層2と滑り軸受層3とを重ね合わせて表面を互いに密着させ、次にこの固定されていない複合体を2個以上の圧延ロールを有する圧延台に送り、両層をこれらの圧延ロールの間に通すことによって互いに結合させる。
【0040】
続いてこれによって生じた複合材料、即ちそれぞれの滑り軸受要素の前製品をさらにプレスで最終的な(半)シェルに成形する。必要に応じてその前により大きい板から、製造しようとする滑り軸受要素の寸法に少なくともほぼ対応する条片を裁断することができる。成形後も、例えば精密穿孔によって後加工を行うことができる。
【0041】
この原理的な工程方法は既に従来技術において十分文書化されているので、これ以上の詳細については関連する従来技術の参照を求める。
【0042】
図2には本発明の第1の実施形態が示されている。
【0043】
一部のみ側面図で示された滑り軸受1の前製品は、やはり支持層2と滑り軸受層3を有し、若しくは支持層2と滑り軸受層3からなる。
【0044】
支持層2は表面構造4を備えている。この表面構造は隆起部5、及びと隆起部5の間に配置された凹み部6を有している。凹み部6は、全面が隆起部5に囲まれているように形成されてよい。この場合に凹み部6は、例えば平面図で円形、楕円形、正方形、長方形、六角形又は一般に多角形の断面を有する。この場合、それぞれ隣り合う2個の凹み部6の間隔は、0.05mm〜0.5mmであることができる。
【0045】
しかしながら表面構造4は溝列として形成されていることが好ましい。この溝列は、隆起部5を形成するランド部によって互いに分離された、互いに隣り合う若干の溝、即ち溝状凹み部6によって形成される。この場合、溝状凹み部6はその長手方向延在が滑り軸受1の周方向及び/又は半径方向及び/又は対角方向、即ち半径方向に対して斜めに延びることできる。しかしながら溝状凹み部6はこれによって作製される滑り軸受1の周方向若しくは圧延方向に延びることが好ましい。なぜならそうするとロールギャップ内で別様に形成される流体静力学的応力状態に起因して、より良好な変形挙動のためにより良好な充填度が達成され得るからである。
【0046】
溝状凹み部6は好適には溝幅7が下限0.1mm及び上限0.9mmの範囲、特に下限0.3mm及び上限0.7mmの範囲より選択された溝幅7を有する。ここで溝幅とは、凹み部6を限定する隆起部6の側面の中心間の距離である。
【0047】
溝深さ8は下限0.1mm及び上限0.9mmの範囲、特に下限0.4mm及び上限0.8mmの範囲より選択されていることが好ましい。溝深さ8は凹み部6の底面9の最も深い点から測って、それぞれの凹み部6に続く隆起部5の最大高さに対応している。
【0048】
底面9は製造公差の範囲内で少なくともほぼ平面状に形成されてよい。しかしながら底面9に丸味を付けて、底面9が凹み部6の方向で凸状に延びる可能性もある。
【0049】
さらに隆起部5の側面は断面で見て直線状に延びてよい。しかしまたこの側面は凹み部6に向って湾曲して延びることもできる。
【0050】
ここで、底面9及び/又はこれらの側面が平面部分若しくは直線部分及び湾曲部分の組合せからなるという可能性もある。
【0051】
もちろんこれらの構成は前述の取り囲まれた凹み部6若しくは取り囲んでいる隆起部5にも適用され得る。
【0052】
原理的に他の構成形態も可能である。
【0053】
さらに、凹み部6の一部が互いに異なる深さで形成され、及び/又は隆起部5一部が互いに異なる高さで形成されることも可能である。
【0054】
最も単純で好適な場合に表面構造は、相応の表面輪郭を有していてプロファイル化しようとする表面に押し当てられる少なくとも1個の成形ロール、即ちプロファイルロール又はエンボスロールによって作製される。表面構造4を複数の成形ロールを用いて複数のステップで作製することも可能である。しかしながら表面構造4を得るために、例えばサンドブラストによる他の機械的方法、あるいは例えば腐食によるまた化学的方法も可能である。しかしながらこれらは好適な方法ではない。なぜならそれによって表面の正確な構造をあらかじめ決定することができないか、若しくは不正確にしかできないからである。
【0055】
表面構造はレーザ又は電子ビームなどによっても設けることができる。
【0056】
支持層2に表面構造4を形成した後、支持層2を滑り軸受層3と重ね合わせて両層を一緒に圧延する。圧延中に滑り軸受層3の材料は一部凹み部6内に押しのけられ、続いて両材料の低温溶接が先行した後で形状係合が形成される。必要に応じて結合しようとする両材料の少なくとも一方、特に滑り軸受層3の材料をクラッドの前に加熱する。このとき温度は材料の融点の最高70%、特に最高50%とする。
【0057】
クラッド、即ち圧延は圧下率5%〜60%で実施することが好ましい。これに応じて結合しようとする両層の層厚減少を考慮しなければならない。滑り軸受層3の硬さの方が小さいために、圧延時に層厚は支持層2の層厚より多く減少する。層厚減少の程度は圧下率を選択することによりあらかじめ決定できる。例えば滑り軸受層3の層厚は初期層厚の20%〜70%の値だけ減少される。必要に応じて支持層2の層厚も、例えば初期層厚の5%〜30%の値だけ減少される。
【0058】
圧延クラッドは1回以上のステップで行うことができる。その際に1回の圧延工程当たりの層厚減少は初期層厚の1%〜10%であってよい。
【0059】
圧延クラッドはより大きい圧下率、特に30%〜50%で実施されてもよい。この実施形態の結果が図3に示されている。
【0060】
図3図2と同様に支持層2、及び圧延クラッド後に支持層2と結合された滑り軸受層3を示している。しかしながらこの実施形態では圧延クラッド中の成形の程度は、滑り軸受層3の材料が凹み部6に一部押しのけられただけでなく、加えて表面構造4の隆起部5、この場合は溝の間のランド部も少なくとも一部変形されて、ランド部は−断面図で見ると−キノコ状にアンダーカット部10を伴って形成されるように選択された。その際に隆起部5の上端面11が湾曲して、少なくともほぼ凹状輪郭を形成することも観察された。この変形若しくは成形は、既述したように圧延クラッド中に滑り軸受層3内に生じる応力状態によって助長される。それにより隆起部5は頭部領域12において脚部領域13におけるよりも大きく変形するのである。
【0061】
アンダーカット部10により両層相互の幾何的噛合い、即ち形状係合が助長され、ひいては複合材料の結合強度が改善される。
【0062】
図3には滑り軸受1の別の実施形態が破線で示されている。この実施形態では支持層2と滑り軸受層3との間に、支持層2と結合された結合層14が配置されている。結合層14は圧延クラッドの前に支持層2上に塗布されるか、若しくは、例えば電気めっき又は相応の浸漬法によって支持層2上に析出される。
【0063】
結合層14の材料は、銅、スズ、アルミニウム、銅、ニッケル、アンチモン、亜鉛、ビスマス、鉄、マグネシウム、マンガン、チタン、バナジウム、並びにこれらの合金を含む、若しくはこれらからなる群より選択されてよい。
【0064】
図3に示された実施形態では、結合層14の層厚は表面構造4が完全に結合層14内に形成されるように選択される。これに対して支持層の表面2にはそのような表面構造4は少なくともほとんどないか、若しくは完全にない。
【0065】
結合層14は原則として支持層2より軟らかいため、それにより表面構造4をより少ない圧力で設けることができるという利点が得られる。そのうえ結合層14はさらに、圧延クラッドに続く複合材料の熱処理において結合層14の成分と滑り軸受層3の材料から混晶が形成されることを可能にし、このことはまた層の結合強度の改善に寄与する。例えば銅との混晶が形成され得る。
【0066】
結合層14の代替として、結合強度を改善するために支持層2の既に構造化された表面に結合粒子が散布されてよい。
【0067】
本発明の趣旨において結合粒子とは、そのような粒子がない構成と比べて支持層2上における滑り軸受層3の付着を改善させるように作用する粒子として理解される。
【0068】
結合粒子はCu、Sb、Al、Zn、Bi、Sn、Fe、Mg、Mn、Ni、Ti、V、並びにこれらの混合物を含む群より選択されてよい。
【0069】
結合粒子は面積密度100粒子/cm2以上、特に面積密度500粒子/cm2〜120000粒子/cm2、好適には500粒子/cm2〜5000粒子/cm2で塗着されると特に有利である。
【0070】
さらに試験を実施した結果、結合粒子の最大直径が30μm〜300μmであると結合強度にとって有利であることが判明した。
【0071】
ここで最大直径とは、1個の粒子の最大直径寸法である。
【0072】
結合粒子は刻み目として作用しないように、少なくともほぼ円形、又は少なくともほぼ塊茎状若しくは少なくともほぼ立方体状の外見を有することが好ましい。しかしまた原理的にはそれらとは異なる、例えば縦長の外見を有する結合粒子も使用可能である。
【0073】
図4は、滑り軸受1(図1)のための前製品の別の実施形態を示す。この実施形態では支持層2の表面に表面構造が形成されている。この既にプロファイル化された表面に続いて部分的に結合層14が塗布され、特に凹み部6内で析出される。続いて上述したようにこの材料複合体上に滑り軸受層3が圧延される。この実施形態では結合強度を改善するために上述したように、混晶形成の利点が得られる。
【0074】
これと代替的に、表面構造4が少なくとも一部は支持層2に、そしてまた少なくとも一部は結合層14に形成されるようにされてよい。
【0075】
この箇所で注記すると、通常の方法ステップ、例えば支持層の表面2の脱脂などは詳述しなかったが、これらは需要若しくは必要があれば実施すべきであることは言うまでもない。
【0076】
実施例は1個の滑り軸受1若しくは特定の滑り軸受1の製造方法の可能な実施形態を説明若しくは示しているが、個々の実施形態を種々組み合わせることも可能であり、この変形形態は本発明による技術的行為に関する教示に基づき、当該技術分野に従事する当業者の技量の範囲に属する。
【0077】
念のため最後に指摘すると、滑り軸受1若しくはその構成部材の構造を理解しやすくするために、一部縮尺通りではなく及び/又は拡大し及び/又は縮小して示した。
【符号の説明】
【0078】
1 滑り軸受
2 支持層
3 滑り軸受層
4 表面構造
5 隆起部
6 凹み部
7 溝幅
8 溝深さ
9 底面
10 アンダーカット部
11 端面
12 頭部領域
13 脚部領域
14 結合層
図1
図2
図3
図4