特許第6199904号(P6199904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199904
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】流体ディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   A61M 35/00 20060101AFI20170911BHJP
   A61N 5/06 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   A61M35/00 Z
   A61N5/06 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-557105(P2014-557105)
(86)(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公表番号】特表2015-506797(P2015-506797A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】FR2013050294
(87)【国際公開番号】WO2013121145
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】1251482
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100133950
【弁理士】
【氏名又は名称】向井 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100125438
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 公知
(72)【発明者】
【氏名】デュケ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】マルティンス−レイス サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】モロー フランシス
(72)【発明者】
【氏名】ルーレット フロランス
【審査官】 田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−525769(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0014011(US,A1)
【文献】 特表2009−532079(JP,A)
【文献】 米国特許第7291140(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 35/00
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体貯蔵器(1)と、
本体部(6)とを有し、
前記本体部(6)には、
前記流体貯蔵器(1)に接続された流体吐出部材(3)と、
前記流体吐出部材(3)を駆動する駆動部材(4)と、
前記流体吐出部材(3)に接続された流体吐出口(73)と前記流体吐出口(73)からの流体を皮膚に塗布する塗布壁(74)とが形成された吐出塗布ヘッド(7)と、
スペクトルの範囲が400nmから700nmである単色光を発する発光源(51)を、少なくとも一つ有するモジュール(5)とが収容されており、
前記吐出塗布ヘッド(7)は発光源収容部(78)を有し、前記本体部(6)は前記モジュール(5)を収容するモジュール収容部(65)を有し、前記モジュール収容部(65)は前記発光源収容部(78)と連通することにより前記発光源(51)が前記吐出塗布ヘッド(7)の前記発光源収容部(78)内へと延伸する流体ディスペンサーであって、
前記モジュールがさらに、電子回路(52)、電力供給手段(53)、前記電力供給手段を起動する起動手段(54)、およびタイマー(55)を備え、
これらが前記本体部(6)の前記モジュール収容部(65)に収容されており、
全体としてペン型の形状を有し、前記本体部(6)が前記吐出塗布ヘッド(7)と前記貯蔵器(1)との間に配置されており、
前記本体部(6)は、楕円形の水平断面を有し、前記本体部(6)に、前記吐出部材(3)と、前記駆動部材(4)と、前記モジュール(5)用の前記モジュール収容部(65)とが設けられており、前記吐出部材(3)が、前記駆動部材(4)と前記モジュール収容部(65)との間に配置されており、前記駆動部材(4)が、前記本体部(6)のうち、湾曲の大きい部分に配置されており、
前記駆動部材(4)が、前記吐出口(73)に流体を吐出する方向と略垂直な駆動方向に移動可能であると共に、前記吐出塗布ヘッド(7)の塗布壁(74)は、前記ペン型の形状の長手方向の軸に対して前記駆動部材(4)を設けた側と反対側の部分が下方に向けて下がる湾曲した傾斜面を有している
ことを特徴とする流体ディスペンサー。
【請求項2】
前記モジュール(5)が取り外し可能な状態で前記モジュール収容部(65)に収容されていること、
を特徴とする請求項1に記載の流体ディスペンサー。
【請求項3】
前記モジュール(5)が前記吐出塗布ヘッド(7)に固定されることにより、前記モジュール(5)および前記吐出塗布ヘッド(7)が一体化されてユニット(U)が形成され、当該ユニット(U)が、前記本体部(6)上および前記本体部(6)内部に取り外し可能な状態で取着されること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体ディスペンサー。
【請求項4】
前記発光源(51)が約660nmの赤色光を発すること
を特徴とする請求項1に記載の流体ディスペンサー。
【請求項5】
前記発光源(51)が前記塗布壁(74)を介して光を発し、前記塗布壁(74)が、少なくとも局所的に、前記発光源(51)から発せられる光に対して透明および/または透光性を有する材料からなり、前記発光源(51)は、前記材料を介して肌に対して光を発すること
を特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項6】
前記吐出口(73)が、前記発光源(51)が発する光の方向と略平行な方向に沿って前記塗布壁(74)に開口していること
を特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項7】
前記発光源(51)に電力を供給する電力供給手段(55)をさらに備え、前記電力供給手段(55)は前記塗布壁(74)が肌と接触しているときのみ起動されること
を特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項8】
前記塗布壁(74)が作用して、前記発光源(51)に電力を供給する前記電力供給手段(53)を起動するように切り換えること
を特徴とする請求項に記載の流体ディスペンサー。
【請求項9】
前記貯蔵器(1)が、前記本体部(6)に取り外し可能な状態で接続されたケース(2)内に配置された取り外し可能かつ交換可能なカートリッジ状であること
を特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の流体ディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体貯蔵器と、流体貯蔵器に接続された流体吐出部材と、流体吐出部材を駆動する駆動部材と、流体吐出部材に接続された流体吐出口と、流体吐出口からの流体を皮膚に塗布する塗布壁とを有する流体ディスペンサーに関する。このディスペンサーは、塗布器とも称せるものであり、化粧品や医薬品の分野、そしてより一般的には、皮膚の治療やケアの分野において、好適に応用できる。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、皮膚、爪、粘膜、髪などの塗布面に塗布するために、流体を吐出、あるいは計量して吐出することができるディスペンサーは、既に数多く存在している。吐出部材は一般的に、一本または複数本の指で圧力を加えられた押下部材によって駆動されるポンプまたは弁である。
貯蔵器からの流体は、ポンプ室内あるいは弁内で加圧された後、吐出口に押し出される。吐出口は、通常、肌に接触する塗布壁に設けられている。塗布壁は、吐出された流体を、肌のより広い範囲、あるいはより狭い範囲に、むらなく塗るために用いられる。
【0003】
当然、このような肌の治療の効果は、主に、塗布される流体の特性や、塗布の質に左右される。また、肌の種類や質にも左右される。本発明の目的は、流体を塗布する前に肌を整えることによって、肌の治療の効果を改善することである。 また、別の目的は、流体を塗布しながら、また塗布した後においても、肌の治療を行うことである。
そのために、本発明は、400ナノメートル(nm)から700nmの範囲のスペクトルにあって抗炎症性作用および/または皮膚再生代謝を刺激する刺激作用を有する単色光を発する少なくとも一つの発光源、たとえば発光ダイオード(LED)をさらに有するディスペンサーとすることを提案する。
【0004】
この種の光はすでに、炎症治療、コラーゲン合成の促進、脈管形成の改善、皮膚線条あるいは瘢痕組織の修復の加速、さらには痛みの軽減に関する研究機関において用いられている。したがって、肌に、青色から赤色の範囲の純粋色、すなわち「単色」の放射光を当てることは、すでに知られている。しかしながら、そのような効果があるのは、特に、赤色光および近赤外光である。赤外光は、約700nm、あるいはそれ以上の波長の熱放射である。この光は、治療範囲を温め、血液循環を刺激し、組織を温め、線維芽細胞を活性化する。赤色光は、新たにコラーゲンを生成することにより、主に、肌再生の代謝を刺激する。これは、コラーゲン新合成(neosynthesis)と呼ばれる。このような光を生成するのに、LEDや、低出力レーザー療法(LLT)用の低出力レーザーを用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/185553号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/198004号
【0006】
本発明は、流体の塗布前、塗布中、および/または塗布後に肌を治療するために、従来のディスペンサー/塗布器を、この種の一つまたは複数個の発光源と関連付けたり組み合わせたりするための構成を特に提供するものである。流体の効果は、このように、肌質に作用することによって最適化される。特許文献1および特許文献2には、この種の治療用装置について記載されている。これらの装置の操作および形状は、個人が美容を目的として用いるのに適したものではない。
【発明の概要】
【0007】
従来の装置の課題を克服するため、本発明は、流体貯蔵器と、本体部とを有し、前記本体部には、前記流体貯蔵器に接続された流体吐出部材と、前記流体吐出部材を駆動する駆動部材と、前記流体吐出部材に接続された流体吐出口と前記流体吐出口からの流体を皮膚に塗布する塗布壁とが形成された吐出塗布ヘッドと、スペクトルの範囲が400ナノメートル(nm)から700nmであって抗炎症性作用および皮膚再生代謝を刺激する刺激作用の一方または両方を有する単色光を発する発光ダイオード(LED)などの発光源を少なくとも一つ有するモジュールとが収容されており、前記吐出塗布ヘッドが発光源収容部を有し、前記本体部が前記モジュールを収容するモジュール収容部を有し、前記モジュール収容部が前記発光源収容部と連通することにより前記発光源が前記吐出塗布ヘッドの前記発光源収容部内へと延伸する流体ディスペンサーを提案する。
【0008】
これにより、前記ディスペンサーはコンパクトな形状を有する。
前記モジュールが、取り外し可能な状態で前記モジュール収容部に収容されていれば有利である。
実施例では、前記モジュールは前記吐出塗布ヘッドに固定されることにより、前記モジュールおよび前記吐出塗布ヘッドが一体化されたユニットが形成され、当該ユニットが、前記本体部上および前記本体部内部に取り外し可能な状態で取着される。
【0009】
別の特徴として、前記本体部は楕円形の水平断面(横断面)を有し、前記本体部に、前記吐出部材と、前記駆動部材と、前記モジュール用の前記モジュール収容部とが設けられており、前記吐出部材は、前記駆動部材と前記モジュール収容部の間に配置されていれば有利であり、前記駆動部材は、前記本体部のうち、湾曲の大きい部分に配置されていれば有利である。
【0010】
前記ディスペンサーは、全体としてペン型の形状をしており、前記本体部は、前記吐出塗布ヘッドと前記貯蔵器の間に配置されているのが好ましい。
これによりユーザーは、本発明に係るディスペンサーをペンのように扱って、自分で、特に顔に、塗布することができる。
前記発光源が約660nmの赤色光を発することとすれば有利である。
【0011】
別の有利な特徴として、前記発光源は、前記塗布壁から光を発する。前記発光源は、前記塗布壁を介して光を発するのが好ましい。前記塗布壁は、少なくとも局所的に、前記発光源から発せられる光に対して透明および/または透光性を有する材料からなり、前記発光源は、前記材料を介して肌に向けて光を発すれば有利である。前記塗布壁は、前記発光源からの光を案内または伝搬するのが好ましい。これにより、前記塗布壁は、二つの機能、すなわち、前記発光源からの光を伝送/案内するという第一の機能と、吐出された流体を塗布/延展するという、より一般的な第二の機能とを果たす。前記塗布壁を光の案内および伝搬に用いる点は、特に有利な特徴である。 本実施例に固有のもう一つの利点は、前記光源と肌との距離が一定不変であることであり、これは、その距離が、前記光源に対してそれ自体が一定不変の距離を有する前記塗布壁によって定まることに由来する。したがって、出射される光の出力や、前記光源と前記塗布壁との距離や、前記塗布壁の拡散性や特徴に応じて、正確に、肌に放射/照射する期間の長さを決めることが可能である。したがって、ユーザーは、一度だけ光を当てれば、確実に所望の効果を得られる。また、光は前記塗布壁を通して発せられる。これはすなわち、前記塗布壁によって流体が前記光源から隔離されていることを意味するため、前記光源が流体で汚れることがない。
【0012】
本発明の別の有利な態様では、前記吐出口は、前記発光源が発する光の方向と略平行な方向に沿って前記塗布壁に開口している。このことは、流体が露光段階の直後に、直接、肌に吐出され塗布されることを意味し、その際、前記駆動部材を押下すること以外には前記ディスペンサーの操作は不要である。すなわち、露光段階および吐出/塗布段階は、前記ディスペンサーが一定の方向を向いた状態で実施される。
【0013】
本発明のもう一つの特に有利な特徴によると、前記ディスペンサーはさらに、前記発光源に電力を供給する電力供給手段を備え、この手段は、前記塗布壁が肌と接触しているときのみ起動される。前記塗布壁が作用して、前記発光源(51)に電力を供給する前記電力供給手段(53)を起動するように切り換えれば有利である。これは、肌があらかじめ前記塗布壁と前記発光源の間の距離によって定められる距離にあるときのみ光が出射されることを意味する。その結果、意図的にも偶発的にも、目などの敏感な器官が照射されることがない。実際、目に前記塗布壁を当てることは、まずないであろう。
【0014】
前記塗布壁を、前記発光源に電力を供給する前記電力供給手段を起動するスイッチとして用いる際には、任意の公知技術を利用することができる。たとえば、機械式スイッチのように、前記塗布壁を少し動かすことが考えられる。また、前記塗布壁は、熱、接触、存在等を感知する接触要素として用いることもできる。
実施例では、前記塗布壁は、前記発光源を収容する発光源収容部を備える吐出伝送ヘッドからなる。したがって、前記発光源は、その収容部に完全に保護されている。前記発光源が損傷したり汚染されたりすることはない。
【0015】
また、本発明の別の有利な様態において、前記駆動部材は、前記吐出口を介して流体を吐出する方向と略垂直な駆動方向に移動可能である。したがって、前記ディスペンサーは、人差し指で前記駆動部材を水平方向に押してペンのように持って使うことができ、前記ディスペンサーを極めて正確に固定することができる。
本発明の別の態様において、前記発光源は、電子回路と、電力供給手段と、前記電力供給手段を起動する起動手段と、タイマーとをさらに含むモジュールの一部を形成している。前記電力供給手段のトリガーとなる前記起動手段は、圧力、接触、存在、熱などを感知するセンサーを備えていてもよく、あるいは、電気接触器として形成されていてもよい。
【0016】
実施例において、前記貯蔵器は、前記本体部に取り外し可能な状態で接続されたケース内に配置された、取り外し可能かつ交換可能なカートリッジ状になっている。これにより、前記ディスペンサーは、二つの組み立て部品、すなわち、前記貯蔵器と前記ケースとからなる下部組み立て部品と、前記本体部と前記吐出部材と前記駆動部材と前記吐出塗布ヘッドと前記モジュールと、必要に応じて、前記塗布壁を覆うキャップとからなる上部組み立て部品とを備える。
【0017】
本発明の趣旨は、肌を治療可能な一つまたは複数個の発光源と、流体を肌の上で延展可能な塗布器とを、一つのディスペンサーに組み込むことである。ペンのようなコンパクトな構成および人間工学に基づいた形状により、容易に用いることができる。
本発明は、以下に、図面を参照して、より詳細に記載されている。図面は、本発明の実施例を非限定的に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の流体ディスペンサーの縦断面図である。
図2図1の流体ディスペンサーの分解斜視図である。
図3図1の流体ディスペンサーのうち円で囲んだ上部を大きく拡大し、モジュールの構成要素のいくつかを概略的に示す図である。
図4図3と同様に、取り外した状態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の非限定的な実施例におけるディスペンサーの構成および動作を詳細に説明するため、図1から図3を合わせて参照する。
本ディスペンサーは、流体の貯蔵器1と、貯蔵器1を収容するケース2と、具体的にはポンプである吐出部材3と、具体的には当該ポンプ3内に組み込まれた、ポンプ3を駆動する駆動部材4と、一つ(または複数)の発光源51を有するモジュール5と、ポンプ3と駆動部材4とモジュール5とを収容する本体部6と、さらには吐出ヘッド7とを備える。本ディスペンサーは、オプションとして、吐出ヘッド7を覆う保護キャップ8を備えていてもよい。
【0020】
モジュール5を除き、本ディスペンサーのすべての構成要素が射出成形プラスチックにより形成されている。本ディスペンサーは、図1におおよそ原寸大で示されている。なお、本ディスペンサーは円対称ではなく、全体的に、モジュール5に向けて一方向に膨出している。本ディスペンサーは、ペンのように把持されることが意図されており、上述の膨出部が手のひらのほうに向いていて、駆動部材4は人差し指と接触することが意図されている。
【0021】
なお、図2において、ケース2の上部および本体部6は、楕円形または卵型の細長い水平断面形状を有する。駆動部材4が、本体部6のうち湾曲の大きい部分に配置されていれば有利である。よって、本ディスペンサーは一方の方向が他方の方向より細い構成となっており、したがって、ペンのように、手の中に保持しやすい。ユーザーは、直感的に、駆動部材4が人差し指の下にくるようにディスペンサーを把持することになる。本ディスペンサーは、本体部6のモジュール5側上と駆動部材4側上の、主に、親指と中指の間に把持される。
【0022】
流体貯蔵器1は、従動ピストン13を摺動自在に収容するシリンダー11を備えた、円筒状の区間を有していてもよい。従動ピストン13より下のシリンダー11による吸引を防ぐため、シリンダー11は通気口12を有している。シリンダー11は、その上部に、雌ねじ15を備えた固定リング14を有している。シリンダー11から流体が抽出されるに連れて、従動ピストン13は、記シリンダー11内を従来の方式で移動する。したがって、貯蔵器1内に空気が入ることがない。これは、ある特定の非限定的な実施例である。本発明においては、吸気口があるものもないものも含め、その他あらゆる貯蔵器を利用できる。
【0023】
貯蔵器1は、ケース2内に配置される。ケース2の主な機能は、貯蔵器1を保護し、覆い隠すことである。上述のように、ケース2は、複合的な幾何学的形状を有しており、上部の水平断面は、楕円形または卵型である。しかしながら、ケース2の内部は、貯蔵器1を軸方向に収容する収容部となっている。このように、ケース2は、図1および3に示されるように、貯蔵器1の一方の側から一方向に膨出していると言える。ケース2は、後述するように、本体部6と係合するための開口縁部26を有する。
【0024】
吐出部材3は、具体的にはポンプであり、ポンプ室32が形成されたポンプ本体部31を備える。ポンプ室32は、その底部において、吸入弁33を介して貯蔵器1と連通し、かつ、その上部に排出弁34を有する。駆動部材4は、好ましくはポンプ本体部3に一体化される部分を構成する可塑性を有する壁状部材であるので、ポンプ3は、特定の種類のポンプ、具体的には、「ダイアフラム」ポンプである。たとえば人差し指などの指で変形可能な壁状部材4を押下すると、ポンプ室32の有効体積が減少し、これにより中に収容されている流体が加圧され、吸入弁33が閉じ、排出弁34が開き、そこから加圧されている流体が押し出される。この種のポンプおよびその動作は、「ダイアフラム」ポンプの分野において公知である。
【0025】
ポンプ3のこの特定の構成は、本発明にとって必須ではない。本発明の範囲を逸脱しない限り、別の種類のポンプを用いることが可能である。
駆動部材4を備えるポンプ3は、たとえばポンプ3およびその駆動部材4上にオーバーモルド形成された本体部6に内蔵される。本体部6には、リング14の雌ねじ15が係合可能な雄ねじを有する組み立て用ブッシング61が形成されており、これにより、貯蔵器1の開口が、ポンプ3の、吸入弁33が存在する入口に接続される。別の種類の部品、例えば、スナップ留めやバヨネット留めの部品を用いて貯蔵器1を本体部6に、概ねポンプ3の入口に接続してもよい。
【0026】
本発明においては、貯蔵器1がカートリッジのように交換できるように、貯蔵器1を取り外し可能に本体部6に接続するのが好ましい。そのため、ケース2は、その開口縁部26において、本体部6の下端に形成されたフランジ62にスナップ留めされている。空になった貯蔵器1を交換する際には、本体部6からケース2を外してから、貯蔵器1を回して、本体部6のねじ式ブッシング61から貯蔵器1を外せばよい。たとえば、貯蔵器1の開口を当初はフィルムで塞いでおき、貯蔵器1がねじ式ブッシング61にねじ込まれる際に、本体部6または吸入弁33に固定された部材によって穴が開けられることとしてもよい。
【0027】
これにより、二つの組み立て部品、すなわち、貯蔵器1およびケース2からなる下部組み立て部材と、本体部6およびそこに取り付けられたすべての構成要素からなる下部組み立て部材とを形成することができる。
排出弁34の出口において、本体部6には、後述のように、吐出口73に通じる排出筒67が形成されている。本体部6にはまた、内部にモジュール5を収容するモジュール収容部65が形成されている。本体部6には、たとえば一つまたは複数個のLEDである光源が延伸する第一スロット63が形成されている。本体部6は、後述する役割を有する第二スロット64を形成している。
【0028】
吐出塗布ヘッド7は、透明または透光性を有するプラスチック材料を、たとえば射出成形することで形成された非対称の部材である。ヘッド7は、排出筒67を吐出口73に接続する排出経路72が内部に形成された排出管71を含む。たとえば、排出管71は、排出筒67に圧入されていてもよい。
ヘッド7はまた、吐出口73が開口している塗布壁74を含む。図に示された実施例では、塗布壁74は、主に、吐出口73の右側に伸びており、湾曲した傾斜を形成している。なお、後述のように、塗布壁74は、光導波路77として機能する特に厚みのある部分を有する。光導波路77を形成する特に厚みのある部分には、発光源(群)51を収容する発光源収容部78が形成される。ヘッド7はまた、固定用周縁部76を備え、それによりヘッド7が確実に本体部6に永続的かつ安定的に保持される。 ヘッド7はまた、第二スロット64内を延伸する伝送ピンまたはタブ75を含み、これによりモジュール収容部65内まで貫通する。塗布壁74は、少なくとも部分的または局所的に、可視光および赤外光に対して透明または透光性を有する材料からなっている。たとえば、塗布壁74、さらにはヘッド7全体を、コポリエステルまたはスチレンで形成することができる。
【0029】
吐出部材3の駆動部材4を駆動することにより、流体を塗布面74上の吐出口73から吐出可能であることは、すでに理解された。駆動部材4は、流体を貯蔵器1から取り出し、ポンプ室32内で加圧し、排出弁34、排出筒67、および排出経路72を通じて吐出口73まで押し出す。吐出された流体が塗布壁74に達すると、ユーザーは流体を、肌などの塗布面上に塗布し広げることができる。流体は、クリーム、ジェル、軟膏などの、粘性のある製品であることが好ましい。
【0030】
モジュール5は、一つまたは複数個の発光源51、たとえば一つまたは複数個のLEDを備えた、電子モジュールである。各LEDは単色光を発する。たとえば、青色LEDおよび/または赤色LEDを用いることができる。モジュール5は、上部に一つまたは二つのLEDを備えた小型ケース状であってもよい。モジュール5は、たとえばバッテリーである電力供給手段53と、たとえば小型のプリント基板である電子回路52と、電力供給手段53による発光源51への電力供給のトリガーとなる起動手段54と、発光源51へ電力を供給する期間を決定するタイマー55とを備える。すなわち、起動手段54は、光源51に電力を供給する段階の開始時点を決定し、タイマー55がその段階の終了時点を決定する。当然、モジュール5は、その他の機能を実行できるその他の電子部品を備えていてもよい。
【0031】
モジュール5は、本体部6に形成されたモジュール収容部65の内部に配置され、保持されている。 このように搭載された状態において、光源51は、本体部6の第一スロット63を通り、ディスペンサヘッド7内に形成された発光源収容部78の内部へと延伸している。発光源収容部78の大部分は、発光源51の発する光に対して透明または透光性を有する材料からなる塗布壁74から構成される。そのため、発光源51が発する光のスペクトルは、400nmから700nmの、紫外線から赤外線の範囲であればよい。たとえば、波長が約660nmの赤色光を用いることができる。このような光に晒された肌は、とりわけ皮膚再生代謝を刺激され、コラーゲンを生成する。
【0032】
このように、光は発光源収容部78内で発せられ、光導波路77を形成する特に厚みのある部分によって導かれ、その後、塗布壁74から出て、塗布面74に接する肌に到達する。塗布壁74を構成する透明または透光性を有する材料は、そこを通過した光を全方向に拡散し、肌の表面全体に均一に配光するのが好ましい。吐出ヘッド7全体がそのような拡散材料から構成されていれば、排出管71を含む吐出ヘッド7のすべての構成要素が光の案内および伝搬の役割を果たすと考えられる。
【0033】
また、伝送ピン75は、塗布面74から、第二スロット64を通ってモジュール収容部65内へと延伸し、起動手段54と直接的または間接的に協働する。伝送ピン75は、塗布壁74からモジュール5に情報を渡す導体、ガイド、または送信部として機能する。たとえば、伝送ピン75は、塗布面74に対するスラスト力を起動手段54に伝送するものであってもよい。この構成では、起動手段54は、スラスト力検出部、あるいは、単純に、スラスト力を感知する電気接触器を備えていてもよい。起動手段54は、圧力を感知すると、光源51への電力供給を開始させる。伝送ピン75は、熱や、他の要素との接触や、光の欠如を伝送するよう構成されていてもよい。また、電気、熱または光の導体など、その他の伝送部材を用いることも可能である。これらの構成においては、起動手段54を、熱や光の存在または欠如を検知するセンサーとする構成としてもよい。 また、塗布壁74が電気接触器を備えていてもよい。従来技術には、情報を起動手段に伝送するための様々な技術が存在する。本発明においては、塗布壁74が肌に接触したときのみ光源51を起動することを目的とする。このような、肌への接触は、圧力、熱の伝送、電流、および/または塗布壁74に影を生じさせる。これらのパラメーターのうち一つまたは複数個が伝送ピン75によってモジュール5に伝送され、それが光源51への電力供給のトリガーとなる。これにより、偶発的、あるいは肌に有害なトリガーはすべて排除される。起動後、発光源51には、タイマー55によってあらかじめ定められた期間だけ電力が供給される。この期間は、流体が塗布された肌の領域を治療するのに十分な期間とされる。しかしながら、塗布壁74が肌に接触しなくなると、電力がオフになり、それにより、タイマーが停止され、偶発的な発光を阻止する。塗布部が短期間、肌から離された場合には、タイマーを一時停止するだけで、リセットされないようにすることもできる。
【0034】
なお、光源51と肌との距離は、肌が接触する塗布面74によって決定される。したがって、光源51の電力と、光源51から塗布面74までの距離と、光源51が起動され肌に所望の治療が行われる期間とを、正確に決定することができる。また、光源51は、塗布壁74の下に配置されているので流体と直接接触する必要がなく、したがって、流体で汚れることがない。
【0035】
また、故障や誤作動の場合には、モジュール5は、収容部65から容易に取り外して新しいモジュールと交換することができる。モジュール5は、このように単純な交換品の形となっている。また、モジュール5は、単に、電力供給手段53を交換または充電するために、収容部65から取り外せるものとしてもよい。
塗布壁74は簡単に清掃できるため、肌は、確実に、一定かつ再現可能な方法で、発光源51からの光に晒される。
【0036】
図4は、ヘッド7およびモジュール5が、本体部6上において、一体化されたユニットUを形成している変形例を示す図である。図4は、ユニットUを搭載、あるいは取り外す際の経過状態を示している。モジュール5は、モジュール収容部65に通じる単一スロット66にすでに通されている。排出管71は、排出筒67と、位置合わせされている。
本発明は、肌領域を、あらかじめ、同時に、および/または、後から、適切な光によって治療することによって、従来のディスペンサー/塗布器の効果を大幅に改善する。
図1
図2
図3
図4