(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
帯状の正極板とこの正極板よりも熱伝導性が高く帯状の負極板とを帯状で多孔質樹脂からなるセパレータを介して互いに重ねて軸線回りに扁平状に捲回した電極体であって、前記正極板の幅方向片側の端縁部が前記セパレータから軸線方向の一方側に向けて扁平渦巻き状に突出する正極突出捲回部を有する電極体と、
前記電極体の前記正極突出捲回部に端子接続部で接続する正極端子部材と、を備える電池であって、
扁平な前記電極体は、
前記軸線方向及び電極体厚み方向に直交する電極体幅方向の一方側に位置し、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータが半円筒状に曲げられて互いに重なる一方側湾曲端部と、
前記電極体幅方向の他方側に位置し、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータが半円筒状に曲げられて互いに重なる他方側湾曲端部と、を有し、
前記正極板のうち最も小さな曲率半径で曲げられた正極最内周湾曲部は、前記一方側湾曲端部内に配置されてなり、
前記正極突出捲回部のうち前記端子接続部に接続する正極接続部から前記電極体の前記一方側湾曲端部のうち前記電極体幅方向の一方側の端までの前記電極体幅方向の寸法を距離Haとし、前記正極接続部から前記電極体の前記他方側湾曲端部のうち前記電極体幅方向の他方側の端までの前記電極体幅方向の寸法を距離Hbとしたとき、
前記距離Ha及び前記距離Hbが、Ha≧1.1Hbを満たす位置で、前記正極接続部に前記端子接続部を接続してなる
電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
扁平状捲回型の電極体では、過充電などで電極体が異常発熱した場合、正極板のうち最も小さな曲率半径で(最も大きな曲率で)曲げられた最内周の湾曲部(正極最内周湾曲部)とこれに対向する負極板との間において、最も短絡が生じ易い。その理由は、以下である。即ち、捲回型の電極体では、径方向内側の部位ほど熱がこもり易い。電極体のうち短絡が生じ易い部分は、セパレータを介して正極板と負極板が対向する部分であるので、それよりも径方向内側に位置する負極板やセパレータのいわゆる捨て巻き部分を除いて考えると、前述の正極最内周湾曲部及びこれに対向する負極板が最も径方向内側に位置する。このため、正極最内周湾曲部の近傍で最も温度が高くなる。
【0005】
セパレータは、温度が高くなると熱収縮するので、セパレータのうち正極最内周湾曲部に面する部分で、セパレータがその幅方向(電極体の軸線方向)に熱収縮して寸法が小さくなる。この収縮が大きく生じると、正極最内周湾曲部とこれに対向する負極板との間にセパレータが介在しない部分が生じ、正極板(その正極最内周湾曲部)と負極板が接触して短絡が生じることがある。
【0006】
加えて、電池の厚み方向(扁平状捲回型の電極体の厚み方向)に荷重を掛けた状態で電池を使用する場合でも、電極体の電極体幅方向の両端に位置する湾曲部(一方側湾曲端部及び他方側湾曲端部)では、セパレータに掛かる荷重(面圧)が小さくなるので、セパレータが移動し易く、セパレータが大きく熱収縮し易い。特に電極体幅方向の両端のそれぞれの湾曲部(一方側湾曲端部及び他方側湾曲端部)のうち正極板の最内周の部分は、その径方向内側に正極板及び負極板が重なる部分が存在しないために、それに面するセパレータが移動し易く、セパレータが大きく熱収縮し易いと考えられる。
【0007】
また、正極板の正極電極箔にアルミニウムを、負極板の負極電極箔に銅を用いている場合など、正極板の熱伝導性が負極板の熱伝導性よりも低い場合、相対的に正極板における熱引きが悪くなるので、電極体の中でも軸線方向の正極電極箔が突出している側(正極突出捲回部側)で温度が高くなる。このため、電極体のうち正極突出捲回部側でセパレータがその幅方向(電極体の軸線方向)に大きく熱収縮し、正極板と負極板が接触して短絡が生じ易い。つまり、扁平状捲回型の電極体が異常発熱した場合には、正極最内周湾曲部のうち正極突出捲回部側(軸線方向の一方側)において、最も短絡が生じ易い。
【0008】
加えて、正極突出捲回部のうち正極端子部材の端子接続部に接続する正極接続部が、正極最内周湾曲部の近くに存在するほど、電極体が異常発熱した場合に、更に正極最内周湾曲部で短絡が生じ易くなることが判ってきた。その理由は、以下であると推測される。即ち、正極端子部材の端子接続部を電極体の正極突出捲回部に溶接などで接続して正極接続部を形成するにあたり、正極突出捲回部をなす正極板の端縁部を電極体の厚み方向に押圧して端縁部を束ねると、セパレータに応力が掛かり、正極接続部に向けてセパレータがその長手方向に引っ張られる。このため、正極接続部の近くに正極最内周湾曲部があると、正極最内周湾曲部に面するセパレータ(特にそのうち電極体の軸線方向の正極突出捲回部側)に大きな応力(セパレータの長手方向に掛かる引張応力)が生じる。このような応力が生じた部分のセパレータは、温度が高くなると応力を解消し、延伸前の状態に戻ろうと収縮する。このため、この収縮が大きく生じると、正極板の正極最内周湾曲部(特にそのうち電極体の軸線方向の正極突出捲回部側)とこれに対向する負極板が接触して短絡が生じると推測される。
【0009】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、扁平状捲回型の電極体が異常発熱した場合に、電極体のうち正極最内周湾曲部の正極突出捲回部側(軸線方向の一方側)において、短絡が生じるのを適切に抑制できる電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、帯状の正極板とこの正極板よりも熱伝導性が高く帯状の負極板とを帯状で多孔質樹脂からなるセパレータを介して互いに重ねて軸線回りに扁平状に捲回した電極体であって、前記正極板の幅方向片側の端縁部が前記セパレータから軸線方向の一方側に向けて扁平渦巻き状に突出する正極突出捲回部を有する電極体と、前記電極体の前記正極突出捲回部に端子接続部で接続する正極端子部材と、を備える電池であって、扁平な前記電極体は、前記軸線方向及び電極体厚み方向に直交する電極体幅方向の一方側に位置し、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータが半円筒状に曲げられて互いに重なる一方側湾曲端部と、前記電極体幅方向の他方側に位置し、前記正極板、前記負極板及び前記セパレータが半円筒状に曲げられて互いに重なる他方側湾曲端部と、を有し、前記正極板のうち最も小さな曲率半径で曲げられた正極最内周湾曲部は、前記一方側湾曲端部内に配置されてなり、前記正極突出捲回部のうち前記端子接続部に接続する正極接続部から前記電極体の前記一方側湾曲端部のうち前記電極体幅方向の一方側の端までの前記電極体幅方向の寸法を距離Haとし、前記正極接続部から前記電極体の前記他方側湾曲端部のうち前記電極体幅方向の他方側の端までの前記電極体幅方向の寸法を距離Hbとしたとき、前記距離Ha及び前記距離Hbが、Ha≧1.1Hbを満たす位置で、前記正極接続部に前記端子接続部を接続してなる電池である。
【0011】
この電池によれば、扁平状捲回型の電極体が異常発熱した場合に、電極体のうち最も短絡の生じ易い部分、即ち、正極最内周湾曲部の正極突出捲回部側(軸線方向の一方側)において、短絡が生じるのを適切に抑制できる
【0012】
更に、上記の電池であって、前記電極体を収容すると共に、自身の端子固定壁部に前記正極端子部材を固定して外部に延出させる電池ケースを備え、前記電極体は、前記電極体幅方向が前記端子固定壁部と直交し、かつ、前記他方側湾曲端部が前記一方側湾曲端部よりも前記端子固定壁部側となる形態で、前記電池ケース内に収容されてなる電池とすると良い。
【0013】
更に、上記のいずれかに記載の電池であって、前記距離Ha及び前記距離Hbは、Ha≦2.5Hbを満たす電池とすると良い。
【0014】
更に、上記の電池であって、前記電極体のうち前記一方側湾曲端部と前記他方側湾曲端部との間に位置する中央部の前記電極体幅方向の寸法を寸法Heとし、前記正極接続部の前記電極体幅方向の寸法を寸法Hcとしたとき、前記寸法Hcは、Hc≦0.5Heを満たす大きさとされてなる電池とすると良い。
【0015】
更に、上記のいずれかに記載の電池であって、前記電極体の厚みを厚みWaとしたとき、前記距離Ha及び前記距離Hbは、Ha≧Wa、かつ、Hb≧Waを満たす電池とすると良い。
【0016】
更に、上記のいずれかに記載の電池であって、前記正極突出捲回部の前記正極接続部は、扁平渦巻き状の前記正極突出捲回部をなす前記端縁部のうち、前記電極体厚み方向に見て、前記正極端子部材の前記端子接続部に重なる重なり部のすべてからなり、このすべての重なり部が束ねられて前記端子接続部に溶接されてなる電池とすると良い。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1及び
図2に、本実施形態に係る電池10を示す。また、
図3に、蓋部材23、正極端子部材60及び負極端子部材70等を示す。また、
図4に、電極体30及びこれに接続する正極端子部材60を示す。また、
図5〜
図7に、電極体30及びこれを展開した状態を示す。なお、以下では、電池10の電池厚み方向BH、電池横方向CH及び電池縦方向DHを、
図1及び
図2に示す方向と定めて説明する。また、電極体30の軸線方向EH、電極体厚み方向FH及び電極体幅方向GHを、
図2、
図4〜
図6に示す方向と定めて説明する。
【0019】
この電池10は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両などに搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池である。この電池10は、直方体状の電池ケース20と、この電池ケース20内に収容された扁平状捲回型の電極体30と、電池ケース20に支持された正極端子部材60及び負極端子部材70等から構成されている。また、電池ケース20内には、非水系の電解液27が保持されている。
【0020】
このうち電池ケース20は、金属(具体的にはアルミニウム)により形成されている。この電池ケース20は、上側のみに矩形状の開口部21hを有する有底角筒状のケース本体21と、このケース本体21の開口部21hを封口する矩形板状の蓋部材(端子固定壁部)23とから構成されている(
図1〜
図3参照)。蓋部材23のうち、その長手方向(電池横方向CH)の中央付近には、非復帰型の安全弁23vが設けられている。また、この安全弁23vの近傍には、電解液27を電池ケース20内に注入する際に用いられる注液孔23hが設けられており、封止部材25で気密に封止されている。
【0021】
また、蓋部材23のうち、その長手方向の両端近傍には、電池ケース20の内部から外部に延出する形態の正極端子部材60及び負極端子部材70がそれぞれ固設されている。具体的には、正極端子部材60及び負極端子部材70は、それぞれ、電池ケース20内で電極体30に接続する一方、蓋部材23を貫通して電池ケース20の外部に延出する第1端子部材61,71と、蓋部材23上に配置されて第1端子部材61,71に加締め固定されたクランク状の第2端子部材62,72とから構成されている。
【0022】
正極端子部材60の第1端子部材61は、後述する電極体30のうち正極突出捲回部30cの正極接続部30cjに接続(溶接)する矩形板状の端子接続部61jを有する。また、負極端子部材70の第1端子部材71は、電極体30のうち負極突出捲回部30dの負極接続部30djに接続(溶接)する矩形板状の端子接続部71jを有する。正極端子部材60及び負極端子部材70は、これらにバスバや圧着端子など電池外の接続端子を締結するための金属製の締結部材65,75と共に、蓋部材23の内側(ケース内側)に配置された樹脂製の第1絶縁部材67,77、及び、蓋部材23の外側(ケース外側)に配置された樹脂製の第2絶縁部材68,78を介して、蓋部材23に固定されている。
【0023】
次に、電極体30について説明する(
図2、
図4〜
図7参照)。この電極体30は、その軸線(捲回軸)AXが電池横方向CHと平行となるように横倒しにした状態で、電池ケース20内に収容されている(
図2参照)。この電極体30は、帯状の正極板31と帯状の負極板41とを、帯状で多孔質樹脂からなる2枚のセパレータ51,51を介して互いに重ねて(
図7参照)、軸線AX周りに捲回し、扁平状に圧縮したものである(
図5及び
図6参照)。
【0024】
正極板31は、芯材として、アルミニウムからなる帯状の正極電極箔32を有する。この正極電極箔32の幅方向(
図5及び
図7中、上下方向)の一部(
図5及び
図7中、上方の部位)は、長手方向(
図7中、左右方向)に帯状に正極電極箔32が露出して延びる露出部32mとなっている。一方、この露出部32m以外の部分(
図5及び
図7中、下方)の両主面には、それぞれ長手方向に帯状に延びる正極活物質層33,33が形成されている。この正極活物質層33は、正極活物質と導電材と結着剤から形成されている。本実施形態では、正極活物質としてリチウム・コバルト・ニッケル・マンガン複合酸化物
を、導電材としてアセチレンブラック(AB)を、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用いている。
【0025】
負極板41は、芯材として、銅からなる帯状の負極電極箔42を有する。この負極電極箔42の幅方向(
図5及び
図7中、上下方向)の一部(
図5及び
図7中、下方の部位)は、長手方向(
図7中、左右方向)に帯状に負極電極箔42が露出して延びる露出部42mとなっている。一方、この露出部42m以外の部分(
図5及び
図7中、上方)の両主面には、それぞれ長手方向に帯状に延びる負極活物質層43,43が形成されている。この負極活物質層43は、負極活物質と結着剤と増粘剤とから形成されている。本実施形態では、負極活物質として天然黒鉛を、結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)を、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いている。
【0026】
正極板31のうち幅方向LHの片側LAに位置する端縁部31c(露出部32mの端縁側の一部)は、セパレータ51から軸線方向EHの一方側EC(
図2中、左方、
図5及び
図7中、上方)に向けて扁平渦巻き状をなして突出し、電極体30の正極突出捲回部30cを形成している。また、負極板41のうち幅方向MHの片側MAに位置するの端縁部41c(露出部42mの端縁側の一部)は、セパレータ51から軸線方向EHの他方側ED(
図2中、右方、
図5及び
図7中、下方)に向けて扁平渦巻き状をなして突出し、電極体30の負極突出捲回部30dを形成している。また、これら正極突出捲回部30cと負極突出捲回部30dとの間に位置する部分が、電極体30の本体部30eである。従って、この電極体30は、軸線方向EHに見て、正極突出捲回部30cと負極突出捲回部30dと本体部30eとからなる(
図5及び
図2参照)。
【0027】
また、この電極体30は、電極体幅方向GHに見て、一方側湾曲端部30fと他方側湾曲端部30gと中央部30hとからなる(
図5、
図6及び
図4参照)。具体的には、一方側湾曲端部30fは、電極体幅方向GHの一方側GA(
図2、
図4及び
図6中、下方)に位置し、正極板31、負極板41及びセパレータ51が半円筒状に曲げられて互いに重なる部位である。また、他方側湾曲端部30gは、電極体幅方向GHの他方側GB(
図2、
図4及び
図6中、上方)に位置し、正極板31、負極板41及びセパレータ51が半円筒状に曲げられて互いに重なる部位である。また、中央部30hは、一方側湾曲端部30fと他方側湾曲端部30gとの間に位置する扁平状の部位である。そして、この電極体30は、電極体幅方向GHが蓋部材23と直交し、かつ、他方側湾曲端部30gが一方側湾曲端部30fよりも蓋部材23側となる形態で、電池ケース20内に収容されている(
図2及び
図4参照)。
【0028】
この電極体30の電極体幅方向GHの寸法Hdは、Hd=54mmである。また、電極体30の厚み(電極体厚み方向FHの寸法)Waは、Wa=12mmである。また、電極体30の軸線方向EHの寸法は、130mmである。また、半円筒状の一方側湾曲端部30f及び他方側湾曲端部30gの電極体幅方向GHの寸法(径)Hfは、電極体30の厚みWaの半分(Hf=0.5Wa)であり、それぞれHf=6mmである。従って、中央部30hの電極体幅方向GHの寸法Heは、He=Hd−2Hf=Hd−Wa=42mmである。
【0029】
また、この電極体30では、電極体30のうち短絡が生じ易い部分、即ち、セパレータ51を介して正極板31及び負極板41が重なる部分のうち、最内周に位置する部分(次述する正極最内周湾曲部31r、負極対向部41r及びセパレータ対向部51rからなる部分)は、2つの湾曲端部30f,30gのうち一方側湾曲端部30f内に配置されている(
図6参照)。
【0030】
正極最内周湾曲部31rは、正極板31のうち最も小さな曲率半径(最も大きな曲率)で曲げられた、捨て巻き後捲回始点から最初に折り曲げられる部位である。また、負極対向部41rは、負極板41のうち正極最内周湾曲部31rの径方向内側に位置し、セパレータ51(セパレータ対向部51r)を介して正極最内周湾曲部31rに対向する部位である。また、セパレータ対向部51rは、セパレータ51のうち正極最内周湾曲部31rと負極対向部41rとの間に介在する部位である。なお、負極板41及びセパレータ51は、それぞれ長手方向の寸法が正極板31よりも長くされており、電極体30のうち最も径方向内側に位置する部分には、正極板31とは対向しない負極板41の捨て巻き部41z及びセパレータ51の捨て巻き部51zが存在している(
図6参照)。
【0031】
次に、電極体30と正極端子部材60及び負極端子部材70との接続について説明する(
図2及び
図4参照)。電極体30のうち正極突出捲回部30cの正極接続部30cjには、正極端子部材60のうち矩形板状の端子接続部61jが接続している。具体的には、正極接続部30cjは、扁平渦巻き状の正極突出捲回部30cをなす正極板31の端縁部31cのうち、電極体厚み方向FHに見て端子接続部61jに重なる(電極体厚み方向FHに端子接続部61jを投影したときに端子接続部61jに重なる)矩形板状の重なり部31ckのすべてからなる。そして、この矩形板状のすべての重なり部31ckは、互いに重なるように1つに束ねられて、端子接続部61jに一体に溶接されている。この正極接続部30cjの電極体幅方向GHの寸法Hcは、Hc=17mmである。前述のように電極体30のうち中央部30hの電極体幅方向GHの寸法Heは、He=42mmであるので、Hc=0.40Heであり、Hc≦0.5Heを満たしている。
【0032】
また、正極接続部30cjから電極体30の一方側湾曲端部30fのうち電極体幅方向GHの一方側GAの端30ftまでの電極体幅方向GHの寸法(距離Ha)は、Ha=23mmである。また、正極接続部30cjから電極体30の他方側湾曲端部30gのうち電極体幅方向GHの他方側GBの端30gtまでの電極体幅方向GHの寸法(距離Hb)は、距離Hb=14mmである。従って、本実施形態では、これら距離Ha及び距離Hbは、Ha=1.64Hbであり、Ha≧1.1Hbを満たしている。加えて、Ha≦2.5Hbをも満たしている。また、前述のように、電極体の厚みWaは、Wa=12mmであるので、Ha=1.92Wa、Hb=1.17Waであり、Ha≧Wa、かつ、Hb≧Waを満たしている。
【0033】
一方、電極体30のうち負極突出捲回部30dの負極接続部30djには、負極端子部材70のうち矩形板状の端子接続部71jが接続している。具体的には、負極接続部30djは、扁平渦巻き状の負極突出捲回部30dをなす負極板41の端縁部41cのうち、電極体厚み方向FHに見て端子接続部71jに重なる(電極体厚み方向FHに端子接続部71jを投影したときに端子接続部71jに重なる)矩形板状の重なり部41ckのすべてからなる。そして、この矩形板状のすべての重なり部41ckは、互いに重なるように1つに束ねられて、端子接続部71jに一体に溶接されている。
【0034】
次いで、上記電池10の製造方法について説明する。まず、電極体30を形成する。即ち、正極板31と負極板41と2枚のセパレータ51,51を用意し、正極板31と負極板41とをセパレータ51,51を介して互いに重ね(
図7参照)、巻き芯を用いて軸線AX周りに捲回する。その後、これを扁平状に圧縮して電極体30を形成する。その際、前述のように、2つの湾曲端部30f,30gのうち、セパレータ51を介して正極板31及び負極板41が重なる部分のうち最内周に位置する部分(正極最内周湾曲部31r、負極対向部41r及びセパレータ対向部51rからなる部分)が属する方を、一方側湾曲端部30fとする(
図6参照)。
【0035】
また別途、蓋部材23と、第1端子部材61,71と、第2端子部材62,72と、締結部材65,75と、第1絶縁部材67,77と、第2絶縁部材68,78とをそれぞれ用意する。そして、これらを用いて、蓋部材23に正極端子部材60及び負極端子部材70をそれぞれ固設する(
図3参照)。
【0036】
次に、正極端子部材60及び負極端子部材70をそれぞれ電極体30にそれぞれ接続する。具体的には、正極端子部材60の端子接続部61jと、扁平渦巻き状の正極突出捲回部30cをなす正極板31の端縁部31cのうち、電極体厚み方向FHに端子接続部61jに重なる重なり部31ckのすべてとを、電極体厚み方向FHに押圧する。そして、互いに重なって1つに束ねられたすべての重なり部31ckを端子接続部61jに溶接する(
図4参照)。これにより、正極突出捲回部30cに正極接続部30cjが形成される。この正極接続部30cjは、前述のように、距離Ha=23mm及び距離Hb=14mm(Ha=1.64Hb)となる位置に配置する。
【0037】
また、負極端子部材70の端子接続部71jと、扁平渦巻き状の負極突出捲回部30dをなす負極板41の端縁部41cのうち、電極体厚み方向FHに端子接続部71jに重なる重なり部41ckのすべてとを、電極体厚み方向FHに押圧する。そして、互いに重なって1つに束ねられたすべての重なり部41ckを端子接続部71jに溶接する(
図2参照)。これにより、負極突出捲回部30dに負極接続部30djが形成される。
【0038】
次に、ケース本体21を用意し、このケース本体21内に電極体30を収容した後、ケース本体21と蓋部材23を溶接して電池ケース20を形成する(
図1及び
図2参照)。その後、電解液27を注液孔23hから電池ケース20内に注液し、封止部材25で注液孔23hを気密に封止する。その後は、この電池について、初充電や各種検査を行う。かくして、電池10が完成する。
【0039】
(実施例及び比較例)
次いで、実施形態に係る電池10の効果を検証するために行った試験の結果について説明する。実施例3として、実施形態に係る電池10を用意した。この電池10では、前述のように、正極接続部30cjから電極体30の電極体幅方向GHの一方側GAの端30ftまでの距離HaがHa=23mm、他方側GBの端30gtまでの距離HbがHb=14mmであり、Ha=1.64Hb(Ha/Hb=1.64)である。また、正極最内周湾曲部31rを含む一方側湾曲端部30fが電池ケース20の底部20w側に位置する(他方側湾曲端部30gが電池ケース20の蓋部材23側に位置する)形態で、電極体30が電池ケース20内に収容されている。なお、表中には、「一方側湾曲端部の位置」の欄に「底部側」と表記した。
【0040】
また、実施例1,2,4,5として、距離Ha及びHbの値は異なるが、それ以外は実施例3(実施形態)の電池10と同様にした電池を用意した。なお、実施例1では、距離Ha=20mm、距離Hb=17mm(Ha/Hb=1.18)とした。また、実施例2では、距離Ha=21mm、距離Hb=16mm(Ha/Hb=1.31)とした。また、実施例4では、距離Ha=26mm、距離Hb=11mm(Ha/Hb=2.36)とした。また、実施例5では、距離Ha=28mm、距離Hb=9mm(Ha/Hb=3.11)とした。
【0041】
また、実施例6〜9として、実施例1〜5とは逆に、一方側湾曲端部を蓋部材側に(他方側湾曲端部を底部側に)配置した形態の電池を用意した。表中には、「一方側湾曲端部の位置」の欄に「蓋部材側」と表記した。なお、実施例6は、実施例1と対応しており、距離Ha=20mm、距離Hb=17mm(Ha/Hb=1.18)である。また、実施例7では、距離Ha=22mm、距離Hb=15mm(Ha/Hb=1.47)とした。また、実施例8は、実施例4と対応しており、距離Ha=26mm、距離Hb=11mm(Ha/Hb=2.36)である。また、実施例9は、実施例5と対応しており、距離Ha=28mm、距離Hb=9mm(Ha/Hb=3.11)である。
【0042】
一方、比較例1として、Ha=Hb=18.5mm(Ha/Hb=1.00)とし、それ以外は実施例3の電池10と同様にした電池を用意した。また、比較例2として、距離Ha=17mm、距離Hb=20mmとし、それ以外は実施例3の電池10と同様にした電池を用意した。また、比較例3として、比較例2とは逆に、一方側湾曲端部を蓋部材側に配置した電池を用意した。また、比較例4として、距離Ha=14mm、距離Hb=23mm(Ha/Hb=0.61)とし、かつ、一方側湾曲端部を蓋部材側に配置した電池を用意した。
【0043】
次に、実施例1〜9及び比較例1〜4の各電池について、「過充電試験」を行って、電池の最高温度をそれぞれ求めた。具体的には、5C(20A)の電流値で電池電圧が15Vとなるまで過充電し、その後、定電圧充電(CV充電)に移行して通電を継続し、電池の最高温度(℃)をそれぞれ計測した。電池温度の測定は、電池ケースの幅広な側面にT型熱電対を貼り付けて測定した。
【0045】
表1から判るように、実施例1〜4,6〜8に係る各電池では、過充電試験における電池の最高温度が110〜122℃の低い温度であった。その理由は、以下であると推測される。即ち、前述のように、正極端子部材の端子接続部を電極体の正極突出捲回部に溶接して正極接続部を形成するにあたり、正極突出捲回部をなす正極板の端縁部を電極体厚み方向FHに押圧して端縁部を束ねると、セパレータに応力が掛かって、正極接続部に向けてセパレータがその長手方向KHに引っ張られる。しかし、これらの電池では、正極最内周湾曲部が正極接続部から適切に離れて存在するので、正極最内周湾曲部に面するセパレータのうちセパレータ対向部(特にその正極突出捲回部側)に掛かる応力(セパレータの長手方向KHに掛かる引張応力)が小さくなる。このため、このセパレータ対向部は、温度が高くなったときに生じる収縮が小さくなる。
【0046】
従って、過充電試験で電極体が異常発熱したときに、正極最内周湾曲部(特にその正極突出捲回部側)において、これに面するセパレータのセパレータ対向部がその幅方向JH(電極体の軸線方向EH)に大きく熱収縮してしまうのを抑制できる。よって、最も短絡が生じ易い正極最内周湾曲部の正極突出捲回部側(軸線方向EHの一方側EC)において、正極最内周湾曲部とこれに対向する負極板の負極対向部との間で短絡が生じるのを適切に抑制できた。その結果、電池の最高温度が低く抑えられたと推測される。
【0047】
実施例1に比して実施例2で電池の最高温度が低いのは、実施例2に係る電池の方がHa/Hbの値が大きく、正極接続部が正極最内周湾曲部からより離れて存在するためと考えられる。同様に、実施例2に比して実施例3で電池の最高温度が低いのは、実施例3に係る電池の方がHa/Hbの値が大きく、正極接続部が正極最内周湾曲部からより離れて存在するためと考えられる。
【0048】
一方、実施例3に比して実施例4で電池の最高温度が高いのは、実施例4に係る電池ではHa/Hbの値が大き過ぎるため、逆に、他方側湾曲端部(特にその最内周部)において短絡が生じ易くなるからと推測される。即ち、実施例4に係る電池では、正極接続部が一方側湾曲端部(正極最内周湾曲部)から大きく遠ざかる一方で、他方側湾曲端部に近づき過ぎる。このため、一方側湾曲端部(正極最内周湾曲部)では短絡がより生じ難くなるが、他方側湾曲端部(特にその最内周部)において短絡が生じ易くなると推測される。同様に、実施例4に比して実施例5で電池の最高温度が高いのは、実施例5に係る電池ではHa/Hbの値が大き過ぎるため、逆に、他方側湾曲端部(特にその最内周部)において短絡が生じ易くなるからと推測される。
【0049】
また、実施例6に比して実施例7で電池の最高温度が低いのは、実施例7に係る電池の方がHa/Hbの値が大きく、正極接続部が正極最内周湾曲部からより離れて存在するためと考えられる。一方、実施例7、実施例8、実施例9の順に電池の最高温度が高いのは、実施例8に係る電池ではHa/Hbの値が大きく、実施例9に係る電池では更に大き過ぎるため、逆に、他方側湾曲端部(特にその最内周部)において短絡が生じ易くなるからと考えられる。
【0050】
また、Ha/Hbの値が等しい実施例1と実施例6とを比較したとき、実施例1の方が電池の最高温度が低いのは、実施例1に係る電池では、一方側湾曲端部が底部側(他方側湾曲端部が蓋部材側)に位置するために、正極接続部から蓋部材までの正極端子部材(その第1端子部材)の寸法が短くなり、より短い寸法の正極端子部材を通じて電池外部に放熱できたからと考えられる。これは、Ha/Hbの値が等しい実施例4と実施例8とを比較したとき、実施例4の方が電池の最高温度が低く、Ha/Hbの値が等しい実施例5と実施例9とを比較したとき、実施例5の方が電池の最高温度が低いことからも裏付けられる。
【0051】
これらに対し、比較例1〜4に係る各電池では、過充電試験における電池の最高温度が127〜140℃の高い値であった。その理由は、以下であると推測される。即ち、前述のように、熱のこもり易さや正極板の熱伝導性の相対的な低さから、過充電で電極体が異常発熱したとき、正極最内周湾曲部のうち正極突出捲回部側において、最も短絡が生じ易い。更に、正極端子部材の端子接続部を電極体の正極突出捲回部に溶接して正極接続部を形成するにあたり、正極突出捲回部をなす正極板の端縁部を電極体厚み方向FHに押圧して端縁部を束ねると、セパレータに応力が掛かり、正極接続部に向けてセパレータがその長手方向に引っ張られる。このため、正極接続部の近くに正極最内周湾曲部があると、正極最内周湾曲部に面するセパレータ(特にそのうち電極体の軸線方向の正極突出捲回部側)に大きな応力(セパレータの長手方向に掛かる引張応力)が生じる。このような応力が生じた部分のセパレータは、温度が高くなると応力を解消し、延伸前の状態に戻ろうと収縮する。このため、この収縮が大きく生じると、正極板の正極最内周湾曲部(特にそのうち電極体の軸線方向の正極突出捲回部側)とこれに対向する負極板が接触して短絡が生じたと推測される。
【0052】
次に、実施例10〜13及び比較例5〜7に係る各電池として、電極体の電極体幅方向GHの寸法Hdを前述のHd=54mmからHd=84mmに変更すると共に、軸線方向EHの寸法を前述の130mmから105mmに変更し、厚みWa(=12mm)は同様とした電池を用意した。更に、実施例10に係る電池では、距離Ha=35mm、距離Hb=30mm(Ha/Hb=1.17)とした。また、実施例11に係る電池では、距離Ha=45mm、距離Hb=20mm(Ha/Hb=2.25)とした。また、実施例12に係る電池では、距離Ha=53mm、距離Hb=12mm(Ha/Hb=4.42)とした。なお、これら実施例10〜12に係る各電池では、一方側湾曲端部を電池ケースの底部側に配置した。また、実施例13に係る電池では、実施例10とは逆に、一方側湾曲端部を電池ケースの蓋部材側に配置した。
【0053】
一方、比較例5に係る電池では、距離Ha=32.5mm、距離Hb=32.5mm(Ha/Hb=1.00)とした。また、比較例6に係る電池では、距離Ha=30mm、距離Hb=35mm(Ha/Hb=0.85)とした。なお、これら比較例5,6に係る各電池では、一方側湾曲端部を電池ケースの底部側に配置した。また、比較例7に係る電池では、
比較例6とは逆に、一方側湾曲端部を電池ケースの蓋部材側に配置した。
【0055】
次に、実施例10〜13及び比較例5〜7の各電池について、前述の「過充電試験」を行って、電池の最高温度(℃)をそれぞれ求めた。但し、過充電を行う際の電流値は4Cとした。その結果を表2に示す。表2から判るように、実施例10,11,13に係る各電池では、過充電試験における電池の最高温度が120〜126℃の低い値であった。その理由は、前述の実施例1〜5,7,8に係る各電池で、過充電試験における電池の最高温度が低く抑えられた理由と同様であると考えられる。
【0056】
実施例10に比して実施例11で電池の最高温度が低いのは、実施例11に係る電池の方がHa/Hbの値が大きく、正極接続部が正極最内周湾曲部からより離れて存在するためであると考えられる。一方、実施例11に比して実施例12で電池の最高温度が高いのは、実施例12に係る電池ではHa/Hbの値が大き過ぎるため、逆に、他方側湾曲端部(特にその最内周部)において短絡が生じ易くなるからと考えられる。また、Ha/Hbの値が等しい実施例10と実施例13とを比較したとき、実施例10の方が電池の最高温度が低いのは、実施例10に係る電池では、一方側湾曲端部が底部側にあるために、正極接続部から蓋部材までの正極端子部材の寸法が短くなり、より短い寸法の正極端子部材を通じて外部に放熱できたからであると考えられる。
【0057】
これらに対し、比較例5〜7係る電池では、過充電試験における最高温度が高く133〜145℃であった。その理由は、前述の比較例1〜4に係る各電池で、過充電試験における電池の最高温度が高かった理由と同様であると考えられる。
【0058】
以上で説明したように、電池10では、電極体30の正極突出捲回部30cのうち正極端子部材60の端子接続部61jに接続する正極接続部30cjを、正極板31の正極最内周湾曲部31rから適切に遠ざけて配置している。具体的には、正極最内周湾曲部31rを電極体30の2つの湾曲端部30f,30gのうち一方側湾曲端部30f内に配置した上で、正極接続部30cjから電極体30の電極体幅方向GHの一方側GAの端30ftまでの距離Haと、正極接続部30cjから電極体30の電極体幅方向GHの他方側GBの端30gtまでの距離Hbとが、Ha≧1.1Hbを満たす位置に、正極接続部30cjを配置している。
【0059】
前述のように、正極端子部材60の端子接続部61jを電極体30の正極突出捲回部30cに溶接して正極接続部30cjを形成するにあたり、正極突出捲回部30cをなす正極板31の端縁部31cを電極体厚み方向FHに押圧して端縁部31cを束ねると、セパレータ51に応力が掛かって、正極接続部30cjに向けてセパレータ51がその長手方向KHに引っ張られる。しかし、この電池10では、正極最内周湾曲部31rが正極接続部30cjから適切に離れて存在するので、正極最内周湾曲部31rに面するセパレータ51のうちセパレータ対向部51r(特にそのうち電極体30の軸線方向EHの正極突出捲回部30c側)に掛かる応力(セパレータ51の長手方向KHに掛かる引張応力)が小さくなる。このため、このセパレータ対向部51rは、温度が高くなったときに生じる収縮が小さくなる。
【0060】
従って、電極体30が異常発熱した場合に、正極最内周湾曲部31r(特にその正極突出捲回部30c側)において、これに面するセパレータ51のセパレータ対向部51rがその幅方向JH(電極体30の軸線方向EH)に大きく熱収縮してしまうのを抑制できる。よって、最も短絡が生じ易い正極最内周湾曲部31rの正極突出捲回部30c側(軸線方向EHの一方側EC)において、正極最内周湾曲部31rとこれに対向する負極板41の負極対向部41rとの間で短絡が生じるのを適切に抑制できる。
【0061】
ところで、電池10において、一方側湾曲端部30fを蓋部材23側に配置する形態(電極体幅方向GHが蓋部材23と直交し、一方側湾曲端部30fが他方側湾曲端部30gよりも蓋部材23側となる形態)で、電極体30を電池ケース20内に収容してもよい。しかし、電池10のように、他方側湾曲端部30gを蓋部材23側に配置する形態(電極体幅方向GHが蓋部材23と直交し、他方側湾曲端部30gが一方側湾曲端部30fよりも蓋部材23側となる形態)で、電極体30を電池ケース20内に収容するのが、より好ましい。
【0062】
前述のように、正極端子部材60の端子接続部61jが接続する正極接続部30cjから電極体30の一方側GAの端30ftまでの距離Haは、正極接続部30cjから電極体30の他方側GBの端30gtまでの距離Hbよりも長くされている(具体的には、Ha≧1.1Hb)。即ち、距離Hbは、距離Haよりも短くされている。従って、一方側湾曲端部30fを蓋部材23側に配置するよりも、他方側湾曲端部30gを蓋部材23側に配置した方が、正極接続部30cjから蓋部材23までの正極端子部材60(その第1端子部材61)の寸法を短くでき、より短い寸法の正極端子部材60を通じて外部に放熱でき、放熱性を良好にできるからである。
【0063】
また、距離Haを距離Hbより大きくし過ぎる、つまり、正極端子部材60の接続する正極接続部30cjが、一方側湾曲端部30f(正極最内周湾曲部31r)から大きく遠ざかる一方で、他方側湾曲端部30gに近づき過ぎると、一方側湾曲端部30f内に位置する正極最内周湾曲部31rでは短絡がより生じ難くなるが、他方側湾曲端部30g(特にその最内周部)において短絡が生じ易くなり好ましくない。これに対し、この電池10では、距離Ha及び距離Hbを、Ha≦2.5Hbとしている。これにより、電極体30の一方側湾曲端部30f(特に正極最内周湾曲部31r)で短絡が生じるのを適切に抑制すると共に、電極体30の他方側湾曲端部30g(特にその最内周部)で短絡が生じることも適切に抑制でき、電極体30に短絡が生じるのをバランス良く抑制できる。
【0064】
また、正極接続部30cjの電極体幅方向GHの寸法Hcが大き過ぎると、距離Ha及び距離Hbが短くなるので、電極体30の一方側湾曲端部30f(特に正極最内周湾曲部31r)や他方側湾曲端部30g(特にその最内周部)で短絡が生じ易くなる。これに対し、この電池10では、正極接続部30cjの電極体幅方向GHの寸法Hcを、電極体30の中央部30h電極体幅方向GHの寸法Heに対し、Hc≦0.5Heを満たす大きさとしている。これにより、距離Ha及び距離Hbを適切に長く取ることができる。従って、電極体30の一方側湾曲端部30f(特に正極最内周湾曲部31r)や他方側湾曲端部30g(特にその最内周部)で短絡が生じるのをより適切に抑制できる。
【0065】
また、前述の距離Ha及び距離Hbが電極体30の厚みを厚みWaに対して小さ過ぎると、電極体30の一方側湾曲端部30f(特に正極最内周湾曲部31r)や他方側湾曲端部30g(特にその最内周部)で短絡が生じ易くなる。これに対し、この電池10では、距離Ha及び距離Hbを、Ha≧Wa、かつ、Hb≧Waを満たす大きさとしている。これにより、距離Ha及び距離Hbの大きさを確保できる。従って、電極体30の一方側湾曲端部30f(特に正極最内周湾曲部31r)や他方側湾曲端部30g(特にその最内周部)で短絡が生じるのをより適切に抑制できる。
【0066】
また、この電池10では、正極突出捲回部30cの正極接続部30cjが、扁平渦巻き状の正極突出捲回部30cをなす正極板31の端縁部31cのうち、電極体厚み方向FHに見て、正極端子部材60の端子接続部61jに重なる重なり部31ckのすべてからなり、このすべての重なり部31ckが束ねられて端子接続部61jに溶接されている。このようにした電池10では、正極端子部材60の端子接続部61jを正極突出捲回部30cに溶接するにあたり、セパレータ51のうち正極最内周湾曲部31rに面するセパレータ対向部51rに、特に大きな応力(セパレータ51の長手方向KHに掛かる引張応力)が生じ易い。このため、電極体30が異常発熱した場合に、このセパレータ対向部51rが大きく収縮し易い。これに対し、この電池10では、前述のように、正極最内周湾曲部31rを電極体30の一方側湾曲端部30f内に配置した上で、Ha≧1.1Hbを満たす形態に正極接続部30cjを配置している。このため、上述の形態を採用した場合でも、正極最内周湾曲部31rに面するセパレータ対向部51rが大きく収縮するのを抑制でき、正極最内周湾曲部31rとこれに対向する負極対向部41rとの間で短絡が生じるのを適切に抑制できる。
【0067】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。