(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者の検討によれば、上述したような電力線のレイアウトを採用すると、フロントモータとして比較的出力が大きいものを用いる場合に、以下のような問題が発生することがわかった。
【0007】
特許文献1の自動二輪車では、電力線の撓み部分でステアリング操舵時の相対的移動の影響が低減されるように見える。しかしながら、フロントモータの出力を大きくしようとする場合、バッテリから供給される電圧を高くする必要があるので、それに応じて電力線の径が大きくなり、電力線の可撓性が低下する。そのため、電力線の撓み部分を大きくする必要があるので、特許文献1のレイアウトを採用すると、フロントフォークから電力線が大きく張り出してしまう。
【0008】
このように、従来、バッテリに対するフロントモータの相対的な移動を十分に考慮した電力線レイアウトは提案されていない。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フロントモータを備えた鞍乗型車両において、フロントサスペンションからの電力線の張り出しを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態による鞍乗型車両は、車体フレームと、前記車体フレームに取り付けられたバッテリと、前記車体フレームに対してステアリング軸線周りに回動可能なステアリング装置と、前記ステアリング装置に連結されたフロントサスペンションと、前記フロントサスペンションに、車軸周りに回転可能に取り付けられた前輪と、ステータと、前記前輪とともに前記車軸周りに回転するロータと、を含み、前記バッテリから電力を供給されて動力を発生させるフロントモータと、前記バッテリと前記フロントモータとを電気的に接続する電力線と、前記電力線の移動を前記フロントサスペンションのストローク方向に規制する規制機構と、を備える。
【0011】
ある実施形態において、前記フロントサスペンションは、前記ステアリング装置に取り付けられたサスペンション上部と、前記サスペンション上部に対して前記ストローク方向に移動可能に取り付けられたサスペンション下部とを含む。
【0012】
ある実施形態において、前記規制機構は、前記ストローク方向に平行に延びるパイプ状のガイド部を含み、前記電力線の一部は、前記ガイド部に挿通されている。
【0013】
ある実施形態において、前記ガイド部は、前記サスペンション下部に固定されており、前記ガイド部と前記電力線とは、前記サスペンション下部の前記サスペンション上部に対する移動に応じて一体的に移動する。
【0014】
ある実施形態において、前記規制機構は、前記サスペンション上部に設けられた収納部であって、前記電力線の一部が撓められた状態で収納される収納部を含む。
【0015】
ある実施形態において、前記電力線は、前記ステアリング軸線近傍を経由して前記バッテリと前記フロントモータとを接続している。
【0016】
ある実施形態において、前記車体フレームは、ヘッドパイプを含み、前記ステアリング装置は、前記ヘッドパイプに挿通されたステアリングシャフトを含み、前記電力線は、前記ヘッドパイプを迂回する部分を含む。
【0017】
ある実施形態において、上述した構成を有する鞍乗型車両は、前記電力線の、前記ヘッドパイプを迂回する部分を覆うカバーを備える。
【0018】
ある実施形態において、前記電力線は、車両前方から見たとき、車両中心線を跨いでいる。
【0019】
ある実施形態において、上述した構成を有する鞍乗型車両は、後輪と、前記後輪を駆動するための動力を発生させるリアモータとを備え、前記バッテリは、前記リアモータにも電力を供給する。
【0020】
本発明の実施形態による鞍乗型車両は、電力線の移動をフロントサスペンションのストローク方向に規制する規制機構を備えているので、バッテリに対するフロントモータの相対的な移動に伴う電力線の撓みを、ストローク方向に沿った電力線の移動により吸収することができる。そのため、電力線を、フロントサスペンションからの張り出しを抑えてレイアウトすることができる。
【0021】
フロントサスペンションは、典型的には、ステアリング装置に取り付けられたサスペンション上部と、サスペンション上部に対してストローク方向に移動可能に取り付けられたサスペンション下部とを含む。フロントサスペンションがテレスコピック式の場合、サスペンション上部およびサスペンション下部の一方がアウターチューブを含み、他方がインナーチューブを含む。具体的には、正立式では、サスペンション上部がインナーチューブを含み、サスペンション下部がアウターチューブを含む。これに対し、倒立式では、サスペンション上部がアウターチューブを含み、サスペンション下部がインナーチューブを含む。
【0022】
規制機構による電力線の移動規制は、規制機構が、ストローク方向に平行に延びるパイプ状のガイド部を含むことによって好適に実現される。このようなガイド部に電力線の一部を挿通することにより、ガイド部内における電力線の移動をストローク方向に規制することができる。
【0023】
ガイド部は、典型的には、サスペンション下部に固定されており、ガイド部と電力線とは、サスペンション下部のサスペンション上部に対する移動に応じて一体的に移動する。
【0024】
規制機構は、サスペンション上部に設けられた収納部であって、電力線の一部が撓められた状態で収納される収納部を含むことが好ましい。このような収納部は、電力線の撓みを吸収する領域として機能する。
【0025】
電力線は、典型的には、ステアリング軸線近傍を経由してバッテリとフロントモータとを接続している。この場合、電力線は、ヘッドパイプを迂回する部分を含んでいてもよいし、ヘッドパイプおよびステアリングシャフトを貫通する部分を含んでいてもよい。
【0026】
電力線の、ヘッドパイプを迂回する部分を覆うカバーを鞍乗型車両が備えていると、電力線の損傷を防止することができる。
【0027】
電力線が、車両前方から見たとき、車両中心線を跨いでいると、車両幅方向への電力線の張り出しをいっそう抑えることができる。
【0028】
また、本発明の実施形態は、鞍乗型車両が後輪を駆動するための動力を発生させるリアモータを備えており、バッテリがリアモータにも電力を供給する構成においても好適に用いられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の実施形態によると、フロントモータを備えた鞍乗型車両において、フロントサスペンションからの電力線の張り出しを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0032】
図1に、本発明の実施形態による鞍乗型車両1を示す。
図1に示すように、鞍乗型車両1は、オンロード型の自動二輪車である。なお、本発明の実施形態による鞍乗型車両は、ここで例示するオンロード型の自動二輪車1に限定されない。本発明の実施形態による鞍乗型車両は、いわゆるオフロード型、モペット型、スクータ型等の他の型式の自動二輪車であってもよい。また、本発明の実施形態による鞍乗型車両は、乗員が跨って乗車する任意の車両を意味し、二輪車に限定されない。本発明の実施形態による鞍乗型車両は、車体を傾けることによって進行方向を変える型式の三輪車(LMW)等であってもよく、ATV(All Terrain Vehicle)等の他の鞍乗型車両であってもよい。
【0033】
以下の説明において、前、後、左、右は、それぞれ自動二輪車1の乗員から見たときの前、後、左、右を意味するものとする。図面に付した符号F、Re、L、Rは、それぞれ前、後、左、右を表す。
【0034】
自動二輪車1は、
図1に示すように、車体フレーム10、ステアリング装置20、フロントサスペンション30、前輪2および後輪3を備えている。自動二輪車1は、さらに、前輪2を駆動するための動力を発生させるモータ(以下では「フロントモータ」と呼ぶ)40と、後輪3を駆動するための動力を発生させるモータ(以下では「リアモータ」と呼ぶ)5と、フロントモータ40およびリアモータ5に電力を供給するバッテリ6とを備えている。
【0035】
車体フレーム10は、その最前部に位置するヘッドパイプ11と、ヘッドパイプ11の後方に位置するバッテリケース12およびモータケース13とを含む。車体フレーム10は、乗員が着座するシート7を支持している。
【0036】
車体フレーム10を構成するバッテリケース12は、バッテリ6を収容する。つまり、バッテリ6は、車体フレーム10に取り付けられている。バッテリケース12は、上面が開口した箱状であり、バッテリケース12の上面を覆うようにケースカバー12Cが設けられている。
【0037】
バッテリ6は、例えばリチウムイオン電池である。バッテリ6は、車体フレーム10に対して脱着可能であってよい。バッテリ6の個数は1に限定されず、複数(つまり2つ以上)のバッテリ6がバッテリケース12に収容されてもよい。バッテリ6は、低電圧系の配線と、高電圧系の配線の両方に電力を供給する。低電圧系の配線は、灯火器やECUなどの補機へ電力を供給する配線であり、一般的には12V前後の電圧を供給する。高電圧系の配線は、フロントモータ40およびリアモータ5に電力を供給する(つまり駆動力を発生させるための電力を供給する)配線であり、低電圧系の配線よりも高い電圧を供給する、低電圧系とは別系統の配線である。
【0038】
なお、バッテリ6は、必ずしも車体フレーム10に直接取り付けられている必要はない。本願明細書において、「バッテリ6が車体フレーム10に取り付けられている」とは、バッテリ6が車体フレーム10に直接取り付けられている場合と、バッテリ6が車体フレーム10に間接的に(つまり車体フレーム10以外の部材を介して)取り付けられている場合の両方を含む。
【0039】
モータケース13は、リアモータ5を含む後輪駆動系を収容する。リアモータ5によって駆動される後輪3は、リアアーム8に取り付けられている。リアモータ5で発生した動力は、不図示のベルトまたはチェーンによって後輪3に伝達される。バッテリケース12およびモータケース13の後方に、リアサスペンション9が配置されている。リアサスペンション9の上端は、バッテリケース12の後壁部に取り付けられている。リアサスペンション9の下端は、例えばリンク機構を介してモータケース13に支持されている。
【0040】
ステアリング装置20は、ヘッドパイプ11に挿通されたステアリングシャフト21と、ステアリングシャフト21の上端部に取り付けられたハンドル22とを含む。ステアリング装置20は、車体フレーム10に対してステアリング軸線(ステアリングシャフト21の中心軸)sa周りに回動可能である。
【0041】
フロントサスペンション30は、ステアリング装置20に連結されている。フロントサスペンション30は、ステアリング装置20に取り付けられた部分(以下では「サスペンション上部」と呼ぶ)31と、サスペンション上部31に対してストローク方向SDに移動可能に取り付けられた部分(以下では「サスペンション下部」と呼ぶ)32とを含む。
【0042】
フロントサスペンション30がテレスコピック式の場合、サスペンション上部31およびサスペンション下部32の一方がアウターチューブを含み、他方がインナーチューブを含む。
図1に例示している自動二輪車1では、フロントサスペンション30は、倒立式であり、サスペンション上部31がアウターチューブを含み、サスペンション下部32がインナーチューブを含む。これに対し、フロントサスペンション30が正立式である場合には、サスペンション上部31がインナーチューブを含み、サスペンション下部32がアウターチューブを含む。
【0043】
サスペンション上部31およびサスペンション下部32の両方に亘って、リンク機構33が取り付けられている。リンク機構33は、フロントサスペンション30の回り止めとして機能する。
【0044】
前輪2には、車軸50が挿通されている。前輪2は、フロントサスペンション30に、車軸50周りに回転可能に取り付けられている。
【0045】
フロントモータ40は、前輪2近傍に配置されている。フロントモータ40は、バッテリ6から電力を供給されて動力を発生させる。フロントモータ40としては、例えば、DCブラシレスモータを好適に用いることができる。
【0046】
本実施形態では、フロントサスペンション30は、車両幅方向における一側(
図1の例では車両左側)にのみ配置されており(つまりフロントフォークは車両左側に配置された一本だけであり、車両右側には配置されていない)、前輪2とフロントモータ40とに挿通される車軸50を、片持ちで支持する。
【0047】
フロントモータ40と、バッテリ6とは、電力線60によって電気的に接続される。電力線60は、高電圧系の配線(高圧線)である。高圧線である電力線60の直径は、例えば5mm(20sq)以上である。
【0048】
本実施形態における自動二輪車1は、電力線60の移動をフロントサスペンション30のストローク方向SDに規制する規制機構61をさらに備えている。規制機構61は、後に詳述するように、ガイド部62と、収納部63とを有する。
【0049】
以下、片持ち式のフロントサスペンション30および規制機構61の具体的な構成を説明する。まず、
図2、
図3および
図4を参照しながら、片持ち式のフロントサスペンション30の具体的な構成を説明する。
図2は、前輪2周辺の分解斜視図であり、
図3は、前輪2周辺の断面図である。
図4は、前輪2周辺を車両右側から見た側面図である。
【0050】
既に説明したように、フロントサスペンション30は、車軸50を片持ちで支持する。
図2および
図3に示すように、車軸50は、車両前方から見たとき、車両中心線L1(
図3参照)に対して車軸50に平行な第1方向(ここでは左方向L)に位置する第1の部分50aと、車両中心線L1に対して第1方向とは反対の第2方向(ここでは右方向R)に位置する第2の部分50bとを含む。そして、車軸50は、第1の部分50aにおいてはフロントサスペンション30によって支持されているが、第2の部分50bにおいてはフロントサスペンション30によって支持されていない。
【0051】
車軸50は、前輪2の中央に配置されたセンターハブ51とフロントモータ40とに挿通されている。センターハブ51は、円筒状であり、前輪2に対してボルト51aによって固定されている。また、車軸50は、センターハブ51内で一対のベアリング(ここではボールベアリング)52aおよび52bによって回転可能に支持されている。車両前方から見たとき、一対のベアリング52aおよび52bのうちの一方のベアリング52aは、車両中心線L1に対して一側(ここでは車両左側)に位置し、他方のベアリング52bは、車両中心線L1に対して他側(ここでは車両右側)に位置する。なお、センターハブ51は、必ずしも前輪2と別体である必要はなく、前輪2と一体に形成されていてもよい。
【0052】
フロントモータ40は、ステータ41と、ロータ42と、これらを収容する筐体43とを含む。ステータ41は、ボルト41aによって筐体43に固定されている。ロータ42は、前輪2とともに車軸50周りに回転する。ロータ42は、ワンウェイクラッチまたは減速器を介してセンターハブ51に連結されている。
【0053】
フロントモータ40は、前輪2とフロントサスペンション30との間に配置されている。つまり、フロントモータ40は、車両前方から見たとき、車両中心線L1に対して車軸50がフロントサスペンション30によって支持されているのと同じ側(つまり第1の部分50a側)で、フロントサスペンション30によって支持されている。
【0054】
フロントモータ40は、フロントサスペンション30に固定されており、前輪2には取り付けられていない。具体的には、フロントモータ40の筐体43と、サスペンション下部32とがキー構造によって固定されており、そのことによって、フロントモータ40がフロントサスペンション30に対して固定されている。勿論、フロントモータ40をフロントサスペンション30に対して固定するための構成はここで例示したものに限定されず、ボルトによる固定等、種々の構成を用いることができる。
【0055】
自動二輪車1は、
図2、
図3および
図4に示すように、車軸50に支持されたブレーキキャリパ70と、前輪2に取り付けられたブレーキディスク71とをさらに備える。ブレーキディスク71は、ボルト71aによって前輪2に締結されている。
【0056】
ブレーキキャリパ70は、ブレーキキャリパ70と車軸50との間に配置されたブラケット72を介して車軸50に支持されている。ブラケット72は、センターハブ51に対してフロントモータ40およびフロントサスペンション30とは反対側に配置されたブレーキハブ53に取り付けられている。ブレーキハブ53は、円筒状であり、車軸50が挿通される。また、ブレーキハブ53は、車軸50に対してセレーション嵌合によって連結されている。そのため、ブレーキハブ53に取り付けられたブラケット72は、車軸50に対する回り止め機構を有しているといえる。
【0057】
ブレーキキャリパ70は、フロントサスペンション30に対して前輪2と同じ側に配置されている。また、ブレーキキャリパ70は、車両前方から見たとき、前輪2よりも車両幅方向における外側に配置されている。言い換えると、車両前方から見たとき、フロントサスペンション30は、車両中心線L1に対して一側(ここでは車両左側)に位置し、ブレーキキャリパ60は、車両中心線L1に対して他側(ここでは車両右側)に位置する。
【0058】
車軸50周辺に位置する複数の部材(フロントモータ40やベアリング52a、52bなど)は、軸端ナット(締結部材)54によって共締めされている。
【0059】
続いて、
図5および
図6を参照しながら、規制機構61の具体的な構成を説明する。
図5は、規制機構61を車両左側から見た側面図であり、
図6は、規制機構61を車両前方から見た平面図である。なお、
図5および
図6では、一部の構成要素を省略したり、切り欠いて示したりしている。
【0060】
図5および
図6に示すように、規制機構61は、ガイド部62と、収納部63とを有する。
【0061】
ガイド部62は、パイプ状であり、ストローク方向SDに平行に延びる。ガイド部62に、電力線50の一部が挿通されている。ガイド部62は、典型的には、アルミニウム合金などの金属材料から形成されている。
【0062】
ガイド部62は、サスペンション下部32に直接または間接的に固定されている。本実施形態では、ガイド部62の下端部がフロントモータ40に取り付けられており、ガイド部62は、フロントモータ40を介してサスペンション下部32に固定されている。電力線60は、ガイド部62内の適当な箇所(一箇所であってもよいし、複数箇所であってもよい)でガイド部62に固定されている。そのため、ガイド部62と電力線60とは、サスペンション下部32のサスペンション上部31に対する移動に応じて一体的にストローク方向SDに移動する。
【0063】
収納部63は、サスペンション上部31に設けられている。収納部63には、電力線60の一部が撓められた状態で収納される。収納部63は、箱状であり、典型的には、金属材料(例えばアルミニウム合金)から形成されている。なお、収納部63の具体的な形状は、
図6などに例示しているものに限定されない。
【0064】
ガイド部62の一部(上端部)は、収納部63の左側下部から収納部63内に挿入されており、フロントサスペンション30のストロークに応じて収納部63内で摺動する。フロントサスペンション30のストローク量は、例えば100mm〜150mmである。電力線50は、フロントモータ40に接続されている方の端部から、ガイド部62内および収納部63内を経由し、収納部63の右側下部に位置する開口部63aを通して車体フレーム10側に延びている。フロントサスペンション30のストローク時のガイド部62の摺動に応じ、電力線50のうち、収納部63内でガイド部62から露出している部分もストローク方向SDに移動する(
図6参照)。
【0065】
図6に示すように、電力線60は、車両前方から見たとき、車両中心線L1を跨いでいる。また、電力線60は、
図1に示すように、ステアリング軸線sa近傍を経由してバッテリ6とフロントモータ40とを接続している。
図7は、ステアリング軸線sa近傍を車両下方から見た平面図であり、
図8は、ステアリング軸線sa近傍を示す斜視図である。
【0066】
図7および
図8に示すように、電力線50は、ヘッドパイプ11を迂回する部分(以下では「迂回部分」と呼ぶ)60aを含む。迂回部分60aを覆うように、カバー81および82が設けられている。カバー81および82は、典型的には、金属材料(例えばアルミニウム合金)から形成されている。ここでは、迂回部分60aは、2つのカバー81および82によって覆われている。一方のカバー81は、サスペンション上部31に取り付けられており、他方のカバー82は、サスペンション下部32に取り付けられている。なお、迂回部分60aを覆うカバーの数や形状は、ここで例示した構成に限定されるものではない。また、電力線50は、ヘッドパイプ11およびステアリングシャフト21を貫通するように配置されてもよい。
【0067】
上述したように、本実施形態における自動二輪車1は、電力線60の移動をフロントサスペンション30のストローク方向SDに規制する規制機構61を備えているので、バッテリ6に対するフロントモータ40の相対的な移動に伴う電力線60の撓みを、ストローク方向SDに沿った電力線60の移動により吸収することができる。そのため、電力線60を、フロントサスペンション30からの張り出しを抑えてレイアウトすることができる。
【0068】
規制機構61による電力線60の移動規制は、規制機構61が、本実施形態のように、ストローク方向SDに平行に延びるパイプ状のガイド部62を含むことによって好適に実現される。このようなガイド部62に電力線60の一部を挿通することにより、ガイド部62内における電力線60の移動をストローク方向SDに規制することができる。
【0069】
また、規制機構61は、本実施形態のように、サスペンション上部31に設けられ、電力線60の一部が撓められた状態で収納される収納部63を含むことが好ましい。このような収納部63は、電力線60の撓みを吸収する領域として機能する。
【0070】
さらに、
図7および
図8に示したように、電力線60の、ヘッドパイプ11を迂回する部分(迂回部分)60aを覆うカバー81および82が設けられていると、電力線60の損傷を防止することができる。
【0071】
また、
図6に示したように、電力線60が、車両前方から見たとき、車両中心線L1を跨ぐように配置されていると、車両幅方向への電力線60の張り出しをいっそう抑えることができる。
【0072】
また、本実施形態における自動二輪車1は、前輪2とフロントモータ40とに挿通される車軸50を片持ちで支持するフロントサスペンション30を備えている。つまり、フロントサスペンション30が片持ち式である。そのため、車軸を2本のフォークで左右両側から支持する一般的なフロントサスペンションを用いる場合に比べ、前輪2の着脱作業性が向上する。
【0073】
前輪2の着脱作業性をいっそう向上させる観点からは、フロントモータ40は、
図3などに示したように、車両前方から見たとき、車両中心線L1に対して車軸50がフロントサスペンション30によって支持されているのと同じ側で、フロントサスペンション30によって支持されていることが好ましい。つまり、フロントモータ40は、前輪2とフロントサスペンション30との間に配置されていることが好ましい。
【0074】
また、本実施形態のように、車軸50周辺に位置する複数の部材が、軸端ナット(締結部材)54によって共締めされている構成を採用すると、部材点数の削減を図ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、フロントモータ40は、フロントサスペンション30に固定されており、前輪2には取り付けられていない。このような構成を採用すると、前輪2を取り外す際にフロントモータ40を外す必要がないので、前輪2の着脱作業性がいっそう向上する。
【0076】
自動二輪車1は、
図1などに示したように、フロントサスペンション30の回り止めとして機能するリンク機構33をさらに備えることが好ましい。リンク機構33により、サスペンション下部32がサスペンション上部31に対して回転することを防止できる。
【0077】
また、ブレーキキャリパ70がブラケット72を介して車軸50に支持されている場合(例えば
図3参照)、本実施形態のように、ブラケット72が車軸50に対する回り止め機構を有することにより、減速時の回転トルクを受け止めることができる。
【0078】
重量のバランス、および、フロントモータ40等の駆動機構のレイアウトの自由度の観点からは、ブレーキキャリパ70は、車両前方から見たとき、前輪2よりも車両幅方向における外側に配置されていることが好ましい。言い換えると、車両前方から見たとき、フロントサスペンション30が車両中心線L1に対して一側に位置し、ブレーキキャリパ70は車両中心線L1に対して他側に位置することが好ましい。
【0079】
また、車両前方から見たとき、一対のベアリング52aおよび52bのうちの一方のベアリング52aは、車両中心線L1に対して一側に位置し、他方のベアリング52bは、車両中心線に対して他側に位置することが好ましい。これにより、タイヤ荷重を分担して保持することができるので、ベアリング52aおよび52bの小型化および長寿命化が可能となる。
【0080】
なお、上記説明では、リアモータ5を備えた自動二輪車1を例示したが、本発明は、リアモータ5に代えて、後輪を駆動するための動力を発生させる内燃機関(エンジン)を備えた自動二輪車にも好適に用いられる。