特許第6199995号(P6199995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6199995コヒーレント検出スキームのための光局部発振器信号の生成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6199995
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】コヒーレント検出スキームのための光局部発振器信号の生成
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/63 20130101AFI20170911BHJP
   H04B 10/075 20130101ALI20170911BHJP
   G02F 2/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   H04B10/63
   H04B10/075
   G02F2/00
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-553754(P2015-553754)
(86)(22)【出願日】2014年1月8日
(65)【公表番号】特表2016-506208(P2016-506208A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】US2014010575
(87)【国際公開番号】WO2014113246
(87)【国際公開日】20140724
【審査請求日】2015年9月15日
(31)【優先権主張番号】13/743,654
(32)【優先日】2013年1月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391030332
【氏名又は名称】アルカテル−ルーセント
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(72)【発明者】
【氏名】金田 紀章
【審査官】 金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0277790(US,A1)
【文献】 特開2009−135930(JP,A)
【文献】 特開2011−199645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/63
G02F 2/00
H04B 10/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の混合光信号を生成するために光入力信号と光局部発振器「OLO」信号とを光学的に混合するように構成された光ハイブリッドと、
前記複数の混合光信号の第1のサブセットを第1の電気アナログ信号(例えば、120Iy)へと変換するように構成された第1の光電変換器と、
前記複数の混合光信号の第2のサブセットを第2の電気アナログ信号(例えば、120Qy)へと変換するように構成された第2の光電変換器と、
第1の電気デジタル信号(例えば、128Iy)を生成するために前記第1の電気アナログ信号をスライスするように構成された第1のスライサ回路と、
第2の電気デジタル信号(例えば、128Qy)を生成するために前記第2の電気アナログ信号をスライスするように構成された第2のスライサ回路と、
前記OLO信号と、前記光入力信号の搬送波との間の位相差についての電気的尺度であって、前記電気的尺度は、前記第1の電気アナログ信号と、前記第1の電気デジタル信号と、前記第2の電気アナログ信号と、前記第2の電気デジタル信号とを使用して生成される、電気的尺度を生成するように構成された位相検出器と
を備えている装置。
【請求項2】
前記第1の電気デジタル信号と、前記第2の電気デジタル信号とから前記光入力信号によって搬送されるデータを回復するように構成されたデコーダと、
光ビームを生成するように構成されたレーザと、
被変調光ビームを生成するために前記光ビームを光学的に変調するように構成された光IQ変調器であって、前記装置は、前記被変調光ビームを使用して、前記OLO信号を生成するように構成されている、光IQ変調器と、
前記OLO信号を生成するように前記被変調光ビームにフィルタをかけるように構成された光フィルタと、
前記電気的尺度を使用して、前記光IQ変調器を駆動するように構成された位相ロック・ループと
をさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記位相検出器は、
第1の乗算された電気信号を生成するために前記第1の電気アナログ信号と前記第1の電気デジタル信号とを乗算するように構成された第1の信号乗算器と、
第2の乗算された電気信号を生成するために前記第2の電気アナログ信号と前記第2の電気デジタル信号とを乗算するように構成された第2の信号乗算器と、
前記電気的尺度を生成するために前記第1の乗算された電気信号から前記第2の乗算された電気信号を減算するように構成された信号加算器と
を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記位相ロック・ループは、
フィルタがかけられた尺度を生成するために前記電気的尺度にロー・パス・フィルタをかけるように構成された電気ループ・フィルタと、
前記フィルタがかけられた尺度を使用して、前記光IQ変調器を駆動するように構成された電気電圧制御発振器と
を備えている、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記電気電圧制御発振器は、
前記フィルタがかけられた尺度を使用して、第1の電気無線周波数信号を生成し、また
前記フィルタがかけられた尺度を使用して、第2の電気無線周波数信号を生成するように
構成されており、
前記第1の電気無線周波数信号と第2の電気無線周波数信号とは、前記フィルタがかけられた尺度に比例した共通の無線周波数を有しており、また前記第1の電気無線周波数信号と、前記第2の電気無線周波数信号との間にはおよそ90度の固定された位相オフセットが存在しており、また
前記位相ロック・ループは、前記第1の電気無線周波数信号と第2の電気無線周波数信号とを使用して、前記光IQ変調器を駆動するように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記IQ変調器は、ネストされたマッハ・ツェンダー変調器を備えている、請求項に記載の装置。
【請求項7】
光偏波分割多重化信号を、第1の偏波を有する第1の光成分と、前記第1の偏波に直交した第2の偏波を有する第2の光成分とへと逆多重化するように構成された光偏波デマルチプレクサをさらに備えており、前記光入力信号は、前記第1の光成分と第2の光成分とのうちの一方である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の電気アナログ信号と、前記第2の電気アナログ信号とを使用して、前記光偏波デマルチプレクサのための1つまたは複数の制御信号を生成するように構成された制御装置をさらに備えている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
被変調光ビームを生成するためにコヒーレント光ビームを光学的に変調するように構成された光IQ変調器であって、装置は、前記被変調光ビームを使用して、前記OLO信号を生成するように構成されている、光IQ変調器と、
前記OLO信号を使用して、前記光入力信号に対して光ホモダイン検出を適用するように構成された光電気回路と、
を備え、
前記装置は、前記電気的尺度を使用して、前記光IQ変調器を駆動するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
フィルタがかけられた尺度を生成するために前記電気的尺度にロー・パス・フィルタをかけるように構成された電気ループ・フィルタと、
前記フィルタがかけられた尺度を使用して、前記光IQ変調器を駆動するように構成された電気電圧制御発振器であって、前記光IQ変調器は、さらに、キャリア抑制変調と、サイドバンド抑制変調とのうちの少なくとも一方を使用して、前記コヒーレント光ビームを光学的に変調するように構成されている、電気電圧制御発振器と、
前記OLO信号を生成するように前記被変調光ビームにフィルタをかけるように構成された光フィルタとをさらに備えており、
前記光フィルタは、前記被変調光ビームの第1の変調サイドバンドを通過させるように構成されており、また
前記OLO信号は、前記光フィルタを通過した前記第1の変調サイドバンドの光を含んでいる、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願の主題は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、本出願と同じ日付に出願され、また「OPTICAL POLARIZATION DEMULTIPLEXING FOR A COHERENT−DETECTION SCHEME」という名称の、Noriaki Kanedaによる米国特許出願第13/743,677号、代理人整理番号811184−US−NPの主題に関連する。
【0002】
本開示は、光通信機器に関し、より詳細には、排他的ではないが、被変調光信号のコヒーレント検出に関する。
【背景技術】
【0003】
本節は、本発明者のより良い理解を促すことができる態様について述べるものである。したがって、本節の記述は、この観点から読まれるべきであり、また何が先行技術の中にあるか、または何が先行技術の中にないかについての承認として理解されるべきではない。
【0004】
コヒーレント検出は、それが、直交位相シフト・キーイング(QPSK:quadrature phase−shift keying)や直交振幅変調(QAM:quadrature−amplitude modulation)などの進化型変調フォーマットと互換性があるので、例えば、光伝送システムにおいて使用されており、これらの進化型変調フォーマットにより、対応するシステムは、比較的高いスペクトル効率、例えば1ビット/s/Hzよりも高いスペクトル効率を達成することができるようになる。偏波多重化の使用は、ビット・レートとスペクトル効率とをおよそ2倍にさらに増大させるのに役に立つ。しかしながら、この特定の送信フォーマットの主要な課題は、高速かつ正確な偏波トラッキングが必要となり、またホモダイン検出の場合には、光局部発振器信号の位相とキャリア周波数とのロッキングが必要となることである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
光レシーバに対して適用される光入力信号の光ホモダイン検出のための光局部発振器(OLO:optical local−oscillator)信号を生成するように構成された光IQ変調器を有する光レシーバの様々な実施形態が、本明細書において開示される。光レシーバは、(i)OLO信号と、光入力信号の搬送波との間の位相差についての電気的尺度(electrical measure)を生成するように構成された位相検出器と、(ii)その電気的尺度を使用して、光IQ変調器を駆動するように構成された位相ロック・ループとをさらに有している。一実施形態においては、位相検出器は、ホモダイン検出された信号のI成分と、Q成分との両方を使用して、また光レシーバが、M−QAM変調フォーマットと互換性があることを可能にする方法で、電気的尺度を生成するように構成されている。
【0006】
一実施形態によれば、複数の混合光信号を生成するために光入力信号とOLO信号とを光学的に混合するように構成された光ハイブリッドと、複数の混合光信号の第1のサブセットを第1の電気アナログ信号(例えば、120Iy)へと変換するように構成された第1の光電変換器(optical−to−electrical converter)と、複数の混合光信号の第2のサブセットを第2の電気アナログ信号(例えば、120Qy)へと変換するように構成された第2の光電変換器と、第1の電気デジタル信号(例えば、128Iy)を生成するために第1の電気アナログ信号をスライスするように構成された第1のスライサ回路と、第2の電気デジタル信号(例えば、128Qy)を生成するために第2の電気アナログ信号をスライスするように構成された第2のスライサ回路と、OLO信号と、光入力信号の搬送波との間の位相差についての電気的尺度であって、前記電気的尺度は、第1の電気アナログ信号と、第1の電気デジタル信号と、第2の電気アナログ信号と、第2の電気デジタル信号とを使用して生成される、電気的尺度を生成するように構成された位相検出器とを備えている装置が、提供されている。
【0007】
上記の装置のいくつかの実施形態においては、装置は、第1の電気デジタル信号と第2の電気デジタル信号とから光入力信号によって搬送されるデータを回復するように構成されたデコーダをさらに備えている。
【0008】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、装置は、OLO信号を光入力信号の搬送波に対して位相ロックするために前記電気的尺度を使用するように構成されている。
【0009】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、前記電気的尺度は、以下の量に比例しており、すなわち、I’−Q’であり、式中で、I’と、Qと、Q’と、Iとは、それぞれ、第1の電気デジタル信号と、第2の電気アナログ信号と、第2の電気デジタル信号と、第1の電気アナログ信号との大きさである。
【0010】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、位相検出器は、第1の乗算された電気信号を生成するために第1の電気アナログ信号と第1の電気デジタル信号とを乗算するように構成された第1の信号乗算器と、第2の乗算された電気信号を生成するために第2の電気アナログ信号と第2の電気デジタル信号とを乗算するように構成された第2の信号乗算器と、電気的尺度を生成するために第1の乗算された電気信号から第2の乗算された電気信号を減算するように構成された信号加算器とを備えている。
【0011】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、本装置は、光ビームを生成するように構成されたレーザと、被変調光ビームを生成するために前記光ビームを光学的に変調するように構成された光IQ変調器とをさらに備えており、そこでは、本装置は、前記被変調光ビームを使用して、OLO信号を生成するように構成されている。
【0012】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、光IQ変調器は、キャリア抑制変調と、サイドバンド抑制変調とを使用して、光ビームを光学的に変調するように構成されている。
【0013】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、本装置は、OLO信号を生成するように被変調光ビームにフィルタをかけるように構成された光フィルタをさらに備えている。
【0014】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、光フィルタは、被変調光ビームの第1の変調サイドバンドを通過させるように構成されており、またOLO信号は、光フィルタを通過した第1の変調サイドバンドの光を含んでいる。
【0015】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、光フィルタは、さらに、被変調光ビームの搬送波と、第2の変調サイドバンドとをブロックするように構成されている。
【0016】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、本装置は、電気的尺度を使用して、光IQ変調器を駆動するように構成された位相ロック・ループをさらに備えている。
【0017】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、位相ロック・ループは、フィルタがかけられた尺度を生成するために電気的尺度にフィルタをかけるように構成された電気ループ・フィルタと、フィルタがかけられた尺度を使用して、光IQ変調器を駆動するように構成された電気電圧制御発振器とを備えている。
【0018】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、電気電圧制御発振器は、フィルタがかけられた尺度を使用して、第1の電気無線周波数信号を生成し、またフィルタがかけられた尺度を使用して、第2の電気無線周波数信号を生成するように構成されており、そこでは、第1の電気無線周波数信号と、第2の電気無線周波数信号とは、フィルタがかけられた尺度に比例した共通の無線周波数を有しており、また第1の電気無線周波数信号と、第2の電気無線周波数信号との間にはおよそ90度の固定された位相オフセットが存在している。位相ロック・ループは、第1の電気無線周波数信号と、第2の電気無線周波数信号とを使用して、光IQ変調器を駆動するように構成されている。
【0019】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、IQ変調器は、ネストされたマッハ・ツェンダー変調器を備えている。
【0020】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、本装置は、光偏波分割多重化信号を、第1の偏波を有する第1の光成分と、第1の偏波に直交した第2の偏波を有する第2の光成分とへと逆多重化するように構成された光偏波デマルチプレクサをさらに備えており、そこでは、光入力信号は、前記第1の光成分と第2の光成分とのうちの一方である。
【0021】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、本装置は、第1の電気アナログ信号と、第2の電気アナログ信号とを使用して、光偏波デマルチプレクサのための1つまたは複数の制御信号を生成するように構成された制御装置をさらに備えている。
【0022】
別の実施形態によれば、被変調光ビームを生成するためにコヒーレント光ビームを光学的に変調するように構成された光IQ変調器であって、装置は、前記被変調光ビームを使用して、OLO信号を生成するように構成されている、光IQ変調器と、OLO信号を使用して、光入力信号に対して光ホモダイン検出を適用するように構成された光電気回路と、OLO信号と、光入力信号の搬送波との間の位相差についての電気的尺度を生成するように構成された位相検出器であって、装置は、電気的尺度を使用して、光IQ変調器を駆動するように構成されている、位相検出器とを備えている装置が、提供されている。
【0023】
上記の装置のいくつかの実施形態においては、本装置は、フィルタがかけられた尺度を生成するために電気的尺度にフィルタをかけるように構成された電気ループ・フィルタと、フィルタがかけられた尺度を使用して、光IQ変調器を駆動するように構成された電気電圧制御発振器とをさらに備えている。
【0024】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、光IQ変調器は、さらに、キャリア抑制変調と、サイドバンド抑制変調とのうちの少なくとも一方を使用して、コヒーレント光ビームを光学的に変調するように構成されている。
【0025】
任意の上記の装置のいくつかの実施形態においては、本装置は、OLO信号を生成するように被変調光ビームにフィルタをかけるように構成された光フィルタをさらに備えており、そこでは、光フィルタは、被変調光ビームの第1の変調サイドバンドを通過させるように構成されており、またOLO信号は、光フィルタを通過した第1の変調サイドバンドの光を含んでいる。
【0026】
本発明の様々な実施形態は、以下の詳細な説明と添付の図面とからより完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本開示の一実施形態によるコヒーレント・レシーバのブロック図である。
図2】本開示の一実施形態による、図1に示されるコヒーレント・レシーバの中で使用され得る光偏波デマルチプレクサのブロック図である。
図3A】本開示の一実施形態による、図1に示されるコヒーレント・レシーバの中で使用され得る偏波制御装置のブロック図である。
図3B】本開示の一実施形態による、図1に示されるコヒーレント・レシーバの中で使用され得る偏波制御装置のブロック図である。
図4】本開示の一実施形態による、図1に示されるコヒーレント・レシーバの中で使用され得る位相検出器のブロック図である。
図5】本開示の一実施形態による、図1に示されるコヒーレント・レシーバの中で使用され得る光源のブロック図である。
図6】本開示の一実施形態による、図2に示される光偏波デマルチプレクサの中で使用され得るIQ変調器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本開示の一実施形態によるコヒーレント・レシーバ100のブロック図を示すものである。レシーバ100は、例えば、リモート・トランスミッタ(図1には明示的に示されていない)から偏波分割多重化(PDM:polarization−division−multiplexed)光入力信号102を受信し、また、例えば、以下でさらに説明されるように、その信号によって搬送されるデータを回復するために、受信信号を処理するように構成されている。次いで、レシーバ100は、出力データ・ストリーム198xおよび198yを経由して、対象とするデータの宛先に対して回復されたデータを向ける。代替的な一実施形態においては、レシーバ100は、データ・ストリーム198xおよび198yを対応する単一の出力データ・ストリームへと結合するように構成されたマルチプレクサ(図1には明示的に示されていない)を含むことができる。
【0029】
一実施形態においては、光入力信号102は、光ファイバ(図1には明示的に示されてはいない)を経由して、レシーバ100に対して配信される。光ファイバの異なるセクションは、一般的に、信号102の元の(例えば、独立して変調された)PDM成分と必ずしも揃えられていない異なる偏波の主要な状態(PSP:principal states of polarizations)を有している。この不揃いは、PDM成分のおのおのが、一般的に、PSPのおのおのの上で、非ゼロ投影を有するようにさせ、これは、PDM成分を混合させ、また光信号の偏波状態を変更する。加えて、光ファイバのPSPは、例えば、ファイバの長さに沿った変化する物理状態に起因して、時間とともに変動する傾向がある。この時間的な変化は、光入力信号102の偏波状態が、同様に時間とともに変動するようにさせる。
【0030】
光偏波デマルチプレクサ(D−MUX)106は、かなりの程度まで、光ファイバによって光入力信号102に対して課される偏波回転を取り消すのに役に立つ。より具体的には、偏波D−MUX106は、光信号108xと108yとのおのおのが、他のPDM成分からのクロストークが実際にはできるだけ少なくして、リモート・トランスミッタにおいて生成される元のPDM成分のうちのそれぞれ1つを表すようにさせるようにして、光信号108xと、108yとへと光入力信号102を逆多重化するように構成されている。偏波D−MUX106の構成は、制御装置122によって生成される多成分制御信号104を経由して制御可能である。制御信号104を動的に変化させることにより、制御装置122は、光ファイバにおける偏波回転変化を適切に追跡するように偏波D−MUX106を構成することができ、それによって、レシーバ100が、例えば、電気デジタル・ドメインにおける比較的複雑な偏波逆多重化処理についての必要性なしに、比較的直接的な方法で光信号108xおよび108yを検出し、また復号することを可能にしている。
【0031】
一実施形態においては、制御装置122は、例えば、図2および3を参照して、以下でより詳細に説明されるように、ブラインド偏波等化スキーム(blind polarization−equalization scheme)を使用して、制御信号104を生成する。このスキームの1つの有益な特徴は、それが、位相検出器140と、ループ・フィルタ144と、光局部発振器(OLO)光源148とを備えているレシーバの光位相ロック・ループにおいて実装される位相と周波数とのロッキングとは独立しており、またそれらに依存してはいないことである。様々な実施形態においては、偏波D−MUX106は、単一タップ光等化器(例えば、図2を参照)またはマルチ・タップ光等化器として実施される可能性がある。偏波D−MUX106における追加のタップを使用して、例えば、光偏波逆多重化に加えて、何らかの光分散補償処理(例えば、偏波モード分散補償)を実施することができる。
【0032】
光信号108xと、108yとのうちのおのおのは、光ハイブリッド110xと、110yとのうちの対応する一方に対して適用される。光ハイブリッド110は、(i)SおよびRとラベル付けされる2つの入力ポートと、(ii)1から4とラベル付けされる4つの出力ポートを有する。入力ポートSは、光信号108x/108yのうちの対応する一方を受信するように構成されている。入力ポートRは、OLO光源148によって生成される光基準(例えば、OLO)信号150のそれぞれの一部分(例えば、減衰されたコピー)を受信するように構成されている。OLO信号150は、例えば、図4および5を参照して、以下でより詳細に説明されるように、光入力信号102の搬送波に対して位相ロックされ、また周波数ロックされて、レシーバ100における信号108x/108yのホモダイン検出を可能にしている。
【0033】
一実施形態においては、光ハイブリッド110は、例えば、従来の3−dBの電力スプリッタ(図1に明示的に示されてはいない)を使用して、ポートSと、Rとにおいて受信される信号のおのおのを、2つの(減衰された)コピーへと分割する。次いで、約90度(π/2ラジアン)の相対的な位相シフトは、例えば、位相シフタ(図1に明示的に示されてはいない)を使用して、ポートSにおいて受信される信号の1つのコピーと、ポートRにおいて受信される信号の1つのコピーとに適用される。次いで、様々の信号のコピーは、互いに光学的に混合され、また結果として生じる4つの混合信号は、それぞれ出力ポート1〜4へと向けられる。レシーバ100において光ハイブリッド110を実装するために使用され得る例示の光ハイブリッドは、例えば、それらの両方が、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2007/0297806号および第2011/0038631号の中で説明される。
【0034】
光ハイブリッド110xおよび110yによって生成される8つの混合信号は、光電(O/E:optical−to−electrical)変換器116〜116のアレイに対して向けられる。一実施形態においては、各O/E変換器116は、差動構成の形で直列に接続された1対の光検出器(例えば、図1の中には明示的に示されていないフォトダイオード)を備えており、各光検出器は、対応する光ハイブリッド110の対応する出力ポートから受信される混合信号のうちの対応する1つの混合信号を受信するように構成されている。各対の光検出器によって生成される電気出力信号は、オプションとして、電気信号120Ix、120Qx、120Iy、および120Qyのうちの対応する1つの電気信号を生成するように増幅される。
【0035】
一実施形態においては、O/E変換器116〜116のサンプリング・レートは、クロック回復回路130によって生成されるクロック信号(CLK)によって制御される。一実施形態においては、クロック回復回路130は、クロック信号に光入力信号102の偏波当たりのシンボル・レートに等しい周波数を有するようにさせるようにして、クロック信号CLKを生成する。レシーバ100においてクロック回復回路130として使用され得るクロック回復回路の代表的な例は、例えば、米国特許第8,290,107号、第8,190,032号、第7,805,083号、および第7,209,666号の中で開示され、これらの米国特許のすべては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0036】
信号表記法が意味しているように、電気信号120Ixと120Qxとは、光信号108xについてのそれぞれ同相(I)成分と、直交(Q)成分とを表している。同様に、電気信号120Iyと120Qyとは、光信号108yについてのそれぞれI成分と、Q成分とを表している。電気信号のコピー120Ix、120Qx、120Iy、および120Qyが、制御装置122に対して供給され、この制御装置は、それらを使用して、制御信号104を生成する。電気信号のコピー120Iy、および120Qyはまた、位相検出器140に対して供給され、この位相検出器は、それらを使用して、光入力信号102の搬送波に対するOLO信号150についての位相および周波数のロッキングを可能にする。
【0037】
電気信号120Ix、120Qx、120Iy、および120Qyのおのおのは、アナログ・デジタル(A/D)スライサ回路124〜124のうちの対応する1つのアナログ・デジタル・スライサ回路においてデジタル形式へと変換される。A/Dスライサ回路124〜124によって生成されるデジタル信号128Ix、128Qx、128Iy、および128Qyは、次いで、デコーダ136と136とによって従来のやり方で復号されて、データ・ストリーム198xと198yとを生成する。信号102の生成のために、トランスミッタにおいて使用されるコンステレーション・タイプと、順方向エラー訂正(FEC:forward−error−correction)符号化(もしあれば)とに応じて、デコーダ136と136とは、例えば、それらの間の通信経路138を使用して、それらの復号化オペレーションを調整するように構成されていることもある。例えば、「FORWARD ERROR CORRECTION FOR AN OPTICAL TRANSPORT SYSTEM」という名称の米国特許出願第13/537,131号は、信号102の生成において使用される場合に、レシーバ100において経路138の使用を促すことになる4次元のPDMコンステレーションと、様々なFEC符号化スキームとを開示している。(この米国特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。)他方、トランスミッタが、別個の、また独立した通信チャネルとして各偏波を取り扱うことによって、信号102を生成するときに、通信経路138は、レシーバ100において省略され、またはディスエーブルにされる可能性がある。
【0038】
図1に示される実施形態においては、クロック回復回路130は、デジタル信号128Ixに基づいて、クロック信号CLKを生成するように構成されている。代替的な一実施形態においては、クロック回復回路130は、デジタル信号128Qx、128Iy、および128Qyのうちのどれかに基づいて、またはデジタル信号128Ix、128Qx、128Iy、および128Qyの任意の適切な組合せに基づいてクロック信号CLKを生成するように構成されている可能性がある。
【0039】
図1に示される実施形態においては、デジタル信号のコピー128Iyと128Qyとは、位相検出器140に対して供給され、この位相検出器は、電気信号120Iyと120Qyと一緒に、それらを使用して、光入力信号102の搬送波に対するOLO信号150の位相および周波数のロッキングを可能にする。より具体的には、位相検出器140によって生成される電気位相エラー信号142は、OLO信号150と、光入力信号102の搬送波との間の位相差に比例した電圧を有する。ループ・フィルタ144は、連続した時間において、位相エラー信号142を積分し、またロー・パス・フィルタをかけて、LOL光源148のための駆動信号146を生成する。一般に、ループ・フィルタ144の周波数特性は、レシーバの光位相ロック・ループの全体的な動的時間応答特性を決定する。例えば、より狭い帯域幅のループ・フィルタ144は、一般に、より正確な位相ロック、例えば、より小さな位相エラーを可能にする。しかしながら、より高い精度は、よりゆっくりした時間応答と、より狭い取込範囲とを犠牲にして生じる。
【0040】
代替的な一実施形態においては、位相検出器140は、信号128Iy、128Qy、120Iy、および120Qyの代わりに、それぞれ信号のコピー128Ix、128Qx、120Ix、および120Qxを使用するように構成されている可能性がある。
【0041】
図2は、本開示の一実施形態による、光偏波D−MUX106(図1)として使用され得る光偏波D−MUX200のブロック図を示すものである。例証の目的のために、偏波D−MUX200は、図2において、(i)光入力信号102を受信し、(ii)光信号108xおよび108yを生成し、また(iii)104〜104とラベル付けされる信号成分を有する制御信号104を受信するように構成されているように示される。図3を参照して以下でさらに説明されるように、104〜104とラベル付けされる信号成分のおのおのは、それ自体、多成分信号とすることができる。
【0042】
光入力信号102は、204xおよび104yとラベル付けされる2つの直交した偏波成分へとこの信号を分割するように構成された偏波ビーム・スプリッタ202に対して加えられる。偏波ビーム・スプリッタ202の配向は、固定され、また偏波D−MUX200の主要偏波軸(xおよびy)を規定する。上記に示されるように、光ファイバにおける偏波回転は、偏波D−MUX200の主要な偏波軸に関する光入力信号102のPDM成分の配向が、時間とともに変動するようにさせる。結果として、光信号204xおよび204yのおのおのは、一般に、光入力信号102の両方のPDM成分からの寄与を有する。しかしながら、偏波D−MUX200において実装される光信号処理は、(i)光信号108xが、光入力信号の第2のPDM成分に対応する比較的少量の(例えば、実用的な目的では、無視可能な)光を有する光入力信号102の第1のPDM成分に対応する光を主として搬送するようにさせ、また(ii)光信号108yが、光入力信号の第1のPDM成分に対応する比較的少量の光を有する光入力信号の第2のPDM成分に対応する光を主として搬送するようにさせる。光信号108xおよび108yのこれらの特性は、例えば、それらが、これらの信号の後続についての復号化が、比較的簡単であること、および対応する信号処理回路が、比較的安価であることを可能にするので、有益である。
【0043】
偏波D−MUX200における光信号処理は、図2に示されるように、バタフライ構成の形で配列された4つの光IQ変調器22011、22021、22012、および22022、を使用して実施される。より具体的には、IQ変調器22011と、22021とのうちのおのおのは、偏波維持カプラ(PMC:polarization−maintaining coupler)210によって生成される光信号204xの減衰されたコピーを受信するように構成されている。同様に、IQ変調器22012と、22022とのうちのおのおのは、偏波維持カプラ210によって生成される光信号204yの減衰されたコピーを受信するように構成されている。IQ変調器22011と、22012とによって生成される出力信号は、偏波維持カプラ210において結合されて、光信号108xを生成する。IQ変調器22021と、22022とによって生成される出力信号は、同様にして、偏波維持カプラ210において結合されて、光信号108yを生成する。
【0044】
一実施形態においては、光IQ変調器22011、22021、22012、および22022のうちのおのおのは、日本の富士通オプティカル・コンポーネンツ株式会社から部品番号FTM7967EQAとして市販されているマッハ・ツェンダー変調器を使用して、実装される可能性がある。代替的な一実施形態においては、適切なInP−ベースのマッハ・ツェンダー変調器が、同様にして使用される可能性がある。さらに別の代替的な実施形態においては、光IQ変調器22011、22021、22012、および22022のうちのおのおのは、図6に示されるIQ変調器を使用して実装される可能性がある。
【0045】
各偏波維持カプラ210は、実質的に信号の偏波状態を変更することなしに、対応する2つの光学的に結合されたポートの間で光信号をルーティングすることができる3ポート・デバイスである。光伝搬方向に応じて、偏波維持カプラ210は、光スプリッタとして、または光結合器として動作することができる。例えば、偏波維持カプラ210と、210とのうちのおのおのは、光スプリッタとして、動作する。対照的に、偏波維持カプラ210と、210とのうちのおのおのは、光結合器として、動作する。光偏波D−MUX200において、偏波維持カプラ210を実装するために使用され得る代表的な偏波維持カプラは、例えば、米国特許第6,463,195号と、第6,504,961号と、第7,203,397号と、第7,373,028号との中で開示されており、これらの米国特許のすべては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0046】
光IQ変調器22011、22021、22012、および22022のうちのおのおのは、制御信号104〜104のうちの対応する1つの制御信号を使用して、それぞれの光入力信号212を変調するように構成されており、その結果、IQ変調器によって生成される結果として生じる光出力信号222は、式(1)、すなわち、
out=Hlmin (1)
によって記述され、式中で、Soutは、光出力信号であり、Sinは、光入力信号であり、またHlmは、IQ変調器220lm(l=1,2;m=1,2)の伝達関数である。一般に、Soutと、Sinと、Hlmとのうちのおのおのは、複素数値によって表される。一実施形態においては、制御装置122は、制御信号104〜104を生成して、IQ変調器22011、22021、22012、および22022が、式(2a)〜(2i)、すなわち、
lm≡Γlm+jΦlm (2a)
Γ11[k]=Γ11[k−1]+βI[k]((I[k])+(Q[k])−R) (2b)
Φ11[k]=Φ11[k−1]+βQ[k]((I[k])+(Q[k])−R) (2c)
Γ12[k]=Γ12[k−1]+βI[k]((I[k])+(Q[k])−R) (2d)
Φ12[k]=Φ12[k−1]+βQ[k]((I[k])+(Q[k])−R) (2e)
Γ21[k]=Γ21[k−1]+βI[k]((I[k])+(Q[k])−R) (2f)
Φ21[k]=Φ21[k−1]+βQ[k]((I[k])+(Q[k])−R) (2g)
Γ22[k]=Γ22[k−1]+βI[k]((I[k])+(Q[k])−R) (2h)
Φ22[k]=Φ22[k−1]+βQ[k]((I[k])+(Q[k])−R) (2i)
によって説明される伝達関数を有するようにさせ、式中で、Γlmと、Φlmとは、それぞれ伝達関数Hlmの実数部と、虚数部とであり(式(2a)において規定されるように)、kは、タイム・スロット・インデックスであり、βは、エラー重み付け係数であり、I、Q、I、およびQは、電気信号120Ix、120Qx、120Iy、および120Qyの大きさであり(図1を参照)、またRは、信号102について生成するためにトランスミッタによって使用されているコンステレーションにおける平均の振幅を表すパラメータである。式(2a)〜(2i)のおのおのは、制御装置122が、電気信号120Ix、120Qx、120Iy、および120Qyの大きさと、以前の(すなわち、(k−1)番目のタイム・スロットにおける伝達関数Hlmの値とに基づいて、k番目のタイム・スロットについての伝達関数Hlmの値を決定することを可能にする再帰的な式であることに注意すべきである。さらに、式(2b)〜(2i)のおのおのの右辺の第2項は、信号102の偏波の現在の状態と、偏波D−MUX200の主要な偏波軸の配向との間の不揃いの尺度を提供することにも注意すべきである。
【0047】
動作するコンステレーションが、位相シフト・キーイング(PSK:phase−shift keying)コンステレーションであるときに、すべてのコンステレーション・ポイントは、コンステレーションの起源(例えば、対応する複素平面の起源)に中心を置く円の上に位置している。この場合には、パラメータRは、この円の半径を表す。動作するコンステレーションが、直交振幅変調(QAM)コンステレーションであるときに、異なるコンステレーション・ポイントは、異なる振幅を有することができ、これは、コンステレーションの起源からのそれらのそれぞれの異なる距離によって明らかにされる。この場合には、パラメータRは、例えば、式(3)を、すなわち、
【0048】
【数1】
を使用して、算出される可能性があり、式中で、Mは、QAMコンステレーションにおけるコンステレーション・ポイントの数であり、αは、トランスミッタと、レシーバとの間の信号の増幅/減衰を反映するスケーリング係数であり、またrは、QAMコンステレーションにおけるi番目のコンステレーション・ポイントの正規化された振幅である。式(3)はまた、すべてのr値が、同じであるPSKコンステレーションについて有効であることに注意すべきである。
【0049】
IQ変調器22011、22021、22012、および22022が、構成され、その結果、光伝送リンクにおいて、入力信号102に対して課される偏波回転は、完全に反転され、また信号108xと、108yとは、それぞれ、入力信号の「純粋な」第1のPDM成分と、第2のPDM成分とを表すことを次に仮定する。その場合には、パラメータRが規定されるそのやり方に起因して(例えば、式(3)を参照)、式(2b)〜(2i)における第2の項のおのおのの時間平均は、ゼロであり、またそれらのそれぞれの伝達関数(Hlm)によって明らかにされるIQ変調器22011、22021、22012、および22022の構成は、実質的に時間とともに不変のままに留まる。しかしながら、光伝送リンクにおいて、入力信号102に対して課される偏波回転が、偏波D−MUX200において完全に反転されないときには、式(2b)〜(2i)における第2の項は、ゼロへと平均化することはなく、それによって、制御装置122に、伝達関数Hlmを適切に調整するようにさせる。次いで、この調整は、偏波D−MUX200に、偏波回転をより正確に取り消し、また時間とともにその変化を追跡するようにさせる。
【0050】
エラー重み付け係数βは、その値が、比較的小さく設定されて、偏波D−MUX200によるスムーズな偏波回転トラッキングを保証する、経験的パラメータである。例えば、エラー重み付け係数βの比較的小さな値は、入力信号102が、M−QAM信号であるときに、十分な時間の平均化が、適切な偏波回転トラッキングのために起こることを可能にする。エラー重み付け係数βの比較的小さな値はまた、偏波D−MUX200が、バースト・エラーに対して過剰反応しないことを可能にしており、これは、全体的な偏波D−MUX構成の比較的ゆっくりした、また漸進的な調整を保証する。
【0051】
図3A〜3Bは、本開示の一実施形態による、制御装置122(図1)として使用され得る制御装置300のブロック図を示すものである。より具体的には、図3Aは、制御装置300の全体的なブロック図を示すものである。図3Bは、フィルタ390のブロック図を示すものであり、このフィルタの8つの例(コピー)が、図3Aに示される回路の中で使用される。制御装置300は、様々なアナログ回路をそのビルディング・ブロックとして使用して、実装した電気制御装置である。制御装置300が、16−QAMや32−QAMなどの比較的低ビットのQAMフォーマットの下で動作するように構成されたレシーバ100の中で使用されるときに、制御装置の中で使用されるアナログ回路に対する線形性要件は、あまり差し迫ったものではない。例えば、制御装置300は、比較的小さな線形ダイナミック・レンジを有するアナログ回路を使用して、実装される可能性がある。
【0052】
制御装置300は、すべてが、図3Aに示されるように相互に接続された信号発生器306と、5つの二乗回路310〜310と、2つの3入力信号加算器320〜320と、8つのアナログ信号乗算器330と、8つのフィルタ390〜390とを備えている。各フィルタ390は、すべてが図3Bに示されるように相互に接続された信号発生器326と、アナログ信号乗算器330と、遅延要素(Z−1)350と、2入力信号加算器370とを備えている。
【0053】
信号発生器306は、パラメータR(式(3)を参照)の値を記憶するレジスタ(図3Aには明示的に示されず)を有する。信号発生器306によって生成される出力信号308は、レジスタに記憶されたパラメータ値に比例した大きさを有する電気アナログ信号である。
【0054】
二乗回路310は、受信された入力信号の大きさの二乗に比例している出力信号312を生成するように構成されており、ここで、i=1、2、...、5である。図3Aに示されるように、二乗回路310〜310によって受信される入力信号は、それぞれ、電気信号120Ixと、120Qxと、308と、120Iyと、120Qyとである。
【0055】
信号加算器320は、信号312と、312とを加算し、またその合計から信号312を減算するように構成されている。信号加算器320によって生成される結果として生じる信号は、信号322である。
【0056】
信号加算器320は、同様にして、信号312と、312とを加算し、またその合計から信号312を減算するように構成されている。信号加算器320によって生成される結果として生じる信号は、信号322である。
【0057】
8つのアナログ信号乗算器330は、スケーリング・ファクタとして信号120Ixと、120Qxと、120Iyと、120Qyとを使用して、信号322と、322とを様々にスケーリングするように構成されている。8つのアナログ信号乗算器330によって生成される結果として生じるスケーリングされた信号は、信号334〜334である。信号334〜334の大きさは、以下の量に、すなわち、
信号334: I[k]((I[k])+(Q[k])−R);
信号334: Q[k]((I[k])+(Q[k])−R);
信号334: I[k]((I[k])+(Q[k])−R);
信号334: Q[k]((I[k])+(Q[k])−R);
信号334: I[k]((I[k])+(Q[k])−R);
信号334: Q[k]((I[k])+(Q[k])−R);
信号334: I[k]((I[k])+(Q[k])−R);および
信号334: Q[k]((I[k])+(Q[k])−R
に比例している。
【0058】
フィルタ390〜390は、それぞれ、式(2b)〜(2i)に対応する信号処理を実装するように構成されている。より具体的には、フィルタ390における信号発生器326と、アナログ信号乗算器330とは、スケーリング・ファクタとしてエラー重み付け係数βを使用して、信号334をスケーリングするように構成されている。次いで、結果として生じるスケーリングされた信号368は、出力信号392の再帰的なアップデートのために使用され、遅延要素350は、前記再帰的なアップデートのための適切な時間遅延を提供している。結果として、フィルタ390〜390によって生成される出力信号390〜390は、それぞれ、Γ11[k]と、Φ11[k]と、Γ12[k]と、Φ12[k]と、Γ21[k]と、Φ21[k]と、Γ22[k]と、Φ22[k]とに比例している(さらに、式(2b)〜(2i)を参照されたい)。
【0059】
信号390と、390とは、制御信号104図2)のための、それぞれ、I成分と、Q成分とを提供する。信号390と、390とは、制御信号104図2)のための、それぞれ、I成分と、Q成分とを提供する。信号390と、390とは、制御信号104図2)のための、それぞれ、I成分と、Q成分とを提供する。信号390と、390とは、制御信号104図2)のための、それぞれ、I成分と、Q成分とを提供する。
【0060】
図4は、本開示の一実施形態による、位相検出器140(図1)として使用され得る位相検出器400のブロック図を示すものである。例証の目的のために、位相検出器400は、(i)電気信号120Iyおよび120Qyと、デジタル信号128Iyおよび128Qyとを受信し、また(ii)位相エラー信号142を生成するように構成されているように、図4の中で、示される。位相検出器400のための他の信号構成もまた、可能である。例えば、位相検出器400は、代わりに、信号128Iyと、128Qyと、120Iyと、120Qyとの代わりに、それぞれ、信号128Ixと、128Qxと、120Ixと、120Qxとを使用するように構成されている可能性がある。
【0061】
位相検出器400は、式(4)、すなわち、
ε=I’−Q’ (4)
によって表される信号処理オペレーションを実装するように構成された乗算器402および404と、加算器410とを備えており、式中で、εは、位相エラー信号142の大きさであり、またI’と、Qと、Q’と、Iとは、それぞれ、電気信号128Iyと、120Qyと、128Qyと、120Iyとの大きさである(図1を参照)。式(4)は、複素数値の以下の特性に基づいており、すなわち、第1の複素数値と、第2の複素数値とが、同じ引き数を有するときに、第1の複素数値と、第2の複素数値の複素共役との積は、実数である。式(4)の右辺は、受信シンボル(電気信号120Iyと120Qyとによって表されるような)と、受信シンボルがA/Dスライサ回路124〜124によって処理された後にマッピングされる相手のコンステレーション・ポイントとの積の虚数部を表す(前記コンステレーション・シンボルが、デジタル信号128Iyおよび128Qyによって表されて)。位相ロック・エラーが、比較的小さいときに、εの値は、受信シンボルの引き数と、対応するコンステレーション・ポイントとの間の差におよそ比例している。それゆえに、図4に示されるような位相検出器400によって生成される位相エラー信号142は、OLO信号150と、光入力信号102の搬送波との間の位相ロック・エラーの尺度を提供する(さらに図1を参照されたい)。OLO信号150と、光入力信号102の搬送波との間の位相ロックを達成するために、次いで、レシーバ100は、εの絶対値を最小にする傾向があるようにして、位相検出器400によって生成される位相エラー信号142を使用して、OLO光源148を駆動することができる。
【0062】
一実施形態においては、乗算器402と、404とのうちのおのおのは、ギルバート・セルを使用して実装される可能性がある。代替的な一実施形態においては、乗算器402と、404とのうちのおのおのは、XORゲートを使用して実装される可能性がある。
【0063】
図5は、本開示の一実施形態による、OLO光源148(図1)として使用され得る光源500のブロック図を示すものである。例証の目的のために、光源500は、フィルタがかけられた位相エラー信号146を受信し、またOLO信号150を生成するように構成されているように、図5の中で、示される。
【0064】
光源500は、光IQ変調器506に光学的に結合されたレーザ(例えば、レーザ・ダイオード)502を備えている。レーザ502によって生成される1つの光ビーム504は、公称的に、光入力信号102の搬送波と同じ周波数(波長)を有している。しかしながら、例えば、光ビーム504における有限の線幅に起因した位相雑音は、一般に、光ビーム504と、光入力信号102の搬送波との間の非ゼロの周波数および位相のオフセットを引き起こす。光IQ変調器506は、周波数および位相のオフセットを取り除き、また必要な位相ロックを達成するようにするために、光ビーム504を変調するように構成されている。次いで、IQ変調器506によって生成される被変調光信号508は、光フィルタ510を使用して、フィルタがかけられて、OLO信号150を生成する。一実施形態においては、光IQ変調器506は、日本の富士通オプティカル・コンポーネンツ株式会社によって製造される上記で述べられたモデルFTM7967EQAなどのマッハ・ツェンダー変調器を使用して実装される可能性がある。代替的な一実施形態においては、光IQ変調器506は、図6に示されるIQ変調器を使用して実装される可能性がある。
【0065】
光IQ変調器506のための電気駆動信号512と512とは、電圧制御発振器(VCO:voltage−controlled oscillator)520と、増幅器516および516とを使用して、生成される。電圧制御発振器520は、電気RF信号518と、518とを生成するように構成された電子回路であり、その結果、(i)これらの2つのRF信号は、例えば、位相検出器400によって生成される位相エラー信号142にフィルタをかけることにより、ループ・フィルタ144によって生成される、フィルタがかけられた位相エラー信号146の大きさ(例えば、準dc電圧)に比例した同じ周波数を有しており、また(ii)これら2つのRF信号の間には、およそ90度の固定された位相オフセットが存在している。増幅器510と、510とは、電気RF信号516と、516とを適切に増幅し、またバイアスをかけるように構成されており、それによって光IQ変調器506に、光ビーム504に対してサイドバンド抑制変調と、キャリア抑制変調とを適用するようにさせるようにして、電気駆動信号508と、508とを生成している。結果として、IQ変調器506によって生成される被変調光信号508の光エネルギーのほとんどが、単一の変調サイドバンドの中に含まれる。光フィルタ510は、残りのキャリアと、他の比較的弱い被変調サイドバンドとを除去し、またはブロックしながら、この比較的強い変調サイドバンドを通過させる。次いで、光フィルタ510の出力は、レシーバ100の中でOLO信号150として使用される可能性がある(図1)。
【0066】
いくつかの実施形態においては、光フィルタ510は、オプションであり、また光源500から取り除かれる可能性がある。
【0067】
図6は、本開示の一実施形態による、変調器220(図2)として使用され得るIQ変調器600のブロック図を示すものである。光偏波D−MUX200(図2)における変調器220として使用されるときに、IQ変調器600は、(i)光入力信号として、光信号212を受信し、(ii)光出力信号222を生成し、また(iii)制御信号104を使用して駆動されるように構成されている。
【0068】
IQ変調器600は、ネストされたマッハ・ツェンダー変調器(MZM:Mach−Zehnder modulator)610を備えている。本明細書において使用される場合、用語「ネストされた(nested)」は、マッハ・ツェンダー変調器610のMZMアーム612と、612とのうちのおのおのが、それ自体、構成部分として、それぞれ従来のマッハ・ツェンダー変調器を含んでいることを意味している。より具体的には、MZMアーム612は、従来のマッハ・ツェンダー変調器616を含んでおり、またMZMアーム612は、従来のマッハ・ツェンダー変調器616を含んでいる。マッハ・ツェンダー変調器616と、616とのうちのおのおのは、図6の中で、矩形として示されており、変調器のアームは、図6を読むことをより簡単にするために、明示的に示されてはいない。
【0069】
マッハ・ツェンダー変調器616は、制御信号104のI−成分を使用して、駆動される。例えば、制御装置300(図3)によって生成される信号390と、390と、390と、390とのうちのおのおのは、対応する制御信号104のI−成分である。
【0070】
マッハ・ツェンダー変調器616は、制御信号104のQ−成分を使用して、同様にして、駆動される。例えば、制御装置300(図3)によって生成される信号390と、390と、390と、390とのうちのおのおのは、対応する制御信号104のQ−成分である。
【0071】
増幅器604と、604とは、マッハ・ツェンダー変調器616と、616とのための、それぞれ、電気駆動信号606と、606とを生成するように、制御信号104の、それぞれ、I−成分と、Q−成分とに対して、dcバイアスを適切に増幅し、また適用するように構成されている。
【0072】
MZMアーム612は、そのMZMアームを通して伝搬する光信号に対して約90度の位相シフトを適用するように構成された固定された位相シフタ620をさらに含んでいる。この位相シフトにより、MZMアーム612と、612とは、IQ変調器600の、それぞれ、I−変調アームと、Q−変調アームとして動作することができるようになる。
【0073】
MZMアーム612と、612とのうちのおのおのは、オプションの構成可能な位相シフタ618と、618とのうちのそれぞれ一方をさらに含むように例証的に示されている。これらの位相シフタを使用して、例えば、MZMアーム612と、612との間の可能性のある望ましくない位相アンバランスについて補償することができる。そのようなアンバランスが、IQ変調器600の中に存在していない場合、そのときには位相シフタ618と、618とのうちのおのおのは、ゼロ(例えば、接地)バイアス電位を受け取るように構成されている可能性がある。
【0074】
本発明は、実例となる実施形態を参照して説明されているが、この説明は、限定的な意味で解釈されることを意図してはいない。
【0075】
説明された実施形態の様々な修正形態、ならびに本発明が関連する当業者には明らかである本発明の他の実施形態は、添付の特許請求の範囲において表されるような本発明の原理および範囲の内部にあるように見なされる。
【0076】
明示的にそれ以外の方法で述べられていない限り、おのおのの数値と範囲とは、言葉「約(about)」または「近似的に(approximately)」が、値または範囲についての値に先行しているかのように、近似的であるように解釈されるべきである。
【0077】
特許請求の範囲における図番号および/または図参照ラベルの使用は、検討中に特許請求の範囲の解釈を容易にするために特許請求される主題についての1つまたは複数の可能性のある実施形態を識別することを意図している。そのような使用は、使用された図番号および/または図参照ラベルによって示される実施形態だけにこれらの特許請求の範囲についての範囲を必ずしも限定するように解釈されるべきであるとは限らない。
【0078】
本発明の性質を説明するために説明され、また例証されているそれらの部分の詳細と、材料と、配列とにおける様々な変更は、以下の特許請求の範囲において表されるような本発明の範囲を逸脱することなく、当業者によって行われ得ることが、さらに理解されるであろう。
【0079】
「1つの実施形態」または「一実施形態」に対する本明細書における言及は、実施形態に関連して説明される特定の機能、構造、または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態の中に含まれ得ることを意味している。本明細書における様々な場所における「一実施形態において」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態について言及しているものとは限らず、また別個のまたは代替的な実施形態が、必ずしも他の実施形態と相互に排他的であるとも限らない。同じことが、用語「実装形態」に対しても当てはまる。
【0080】
また、この説明の目的のために、用語「結合する」、「結合している」、「結合される」、「接続する」、「接続している」、または「接続される」は、エネルギーが、2つ以上の要素の間で伝達されることが、許可され、また1つまたは複数の追加の要素の介在が、必要とはされないが、企図される、当技術分野において知られ、または後で開発される任意の方法のことを指す。逆に、用語「直接に結合される」、「直接に接続される」などは、そのような追加の要素の不在を意味している。
【0081】
説明および図面は、単に、本発明の原理を例証しているにすぎない。それゆえに、当業者なら、本明細書において明示的に説明されても、または示されてもいないが、本発明の原理を具現化し、またその趣旨および範囲の内部に含まれる様々な構成を工夫することができるようになることが、理解されるであろう。さらに、本明細書において列挙されるすべての例は、主として、当技術分野を推進するために本発明者によって寄与される本発明の原理と、概念とを理解する際に、読者を支援する教育上の目的のためにすぎないことを明示的に意図しており、またそのように具体的に列挙された例および状態だけに限定することのないように解釈されるべきである。さらに、本発明の実施形態を列挙する本明細書におけるすべての陳述、ならびにその特定の例は、その同等形態を包含することを意図している。
【0082】
図面において示される様々な要素の機能は、「プロセッサ」としてラベル付けされる任意の機能ブロックを含めて、専用のハードウェア、ならびに適切なソフトウェアに関連してソフトウェアを実行することができるハードウェアの使用を通して提供されることもある。プロセッサによって提供されるときに、それらの機能は、単一の専用プロセッサにより、単一の共用プロセッサにより、またはそれらのうちのいくつかが共用され得る複数の個別のプロセッサにより提供されることもある。さらに、用語「プロセッサ」または「制御装置」の明示的な使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアだけのことを排他的に指すように解釈されるべきではなく、また限定することなしに、デジタル信号プロセッサ(DSP:digital signal processor)ハードウェアと、ネットワーク・プロセッサと、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuit)と、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA:field programmable gate array)と、ソフトウェアを記憶するためのリード・オンリー・メモリ(ROM:read only memory)と、ランダム・アクセス・メモリ(RAM:random access memory)と、不揮発性ストレージとを暗黙のうちに含むことができる。他のハードウェアが、従来のもの、および/またはカスタムもまた、含まれることもある。同様に、図面の中に示されるどのようなスイッチも、概念的なものにすぎない。それらの機能は、プログラム・ロジックのオペレーションを通して、専用のロジックを通して、プログラム制御と専用のロジックとの相互作用を通して、または手動的にさえも、実行されることもあり、特定の技法は、文脈からより具体的に理解されるように、実装者によって選択可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6