(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
焼海苔は、抄製、乾燥した板海苔を焙焼することにより製造されるが、水分3%以上の状態で焙焼されると、しわや縮みといった現象が発生して著しく商品価値が低下する。そのため、通常は焙焼前に乾燥温度を段階的に変化させた火入れ乾燥を施し水分を3%以下に低下させたのち、200℃〜350℃で焼加減を確認しながら焙焼する。焙焼方式は、赤外線又は遠赤外線を熱源に用いる方式が一般的であるが、この方式では熱エネルギーの海苔表面への直線的照射が主となり、海苔表面の凸凹により熱源からの距離が微妙に異なることから、部分的な焙焼過多による縮みや波打ち又はコゲの発生を招く。また、消費者の好みに合わせ、焼き加減を調整することもある。
【0009】
また、焼海苔には、色調や旨み成分の損失がないこと、所謂「色戻り」と呼ばれる現象が発生しないこと、「歯切れ」がよいこと、焼海苔に含まれる一般生菌数が少ないことなどが求められる。海苔にはクロロフィルやアミノ酸が含まれるが、これらが過剰な焙焼により消失されると、色調や旨み成分の損失に繋がる。「色戻り」とは板海苔の加熱が不十分なことに起因する残存色素の変性により、焼海苔特有の鮮緑色が赤褐色から茶褐色に変化する現象である。「歯切れ」の良否は海苔の柔らかさに関係し、海苔原料の質のほか、加熱による海苔表面の組織的変性が、歯切れに影響を与える。また、焙焼前の板海苔の一般生菌数は、1gあたり10
7個程度になることもあるが、焼海苔に含まれる一般生菌数は、特に海外で取り扱われる焼海苔の場合、1gあたり10
3個以下まで減少していることが求められている。
【0010】
これら焼海苔に求められる品質を確保するために、板海苔の焙焼工程での均一かつ十分な加熱は重要な要素である。
【0011】
焼海苔の品質には、上述のような様々な要求がある。特に一般生菌数の制御は、賞味期限を長く設定するためにも重要であるが、遠赤外線など現状の焙焼方法では、菌数減少は約1/100程度に留まっており、1gあたり10
5オーダー以上の一般生菌数の多い焼海苔が生産されてしまう問題があった。また海苔はノリ裁断片が幾重にも積層されて板状に成形されているため、遠赤外線などの直線的な加熱では、熱エネルギーが十分かつ均一に内部まで伝達されず、色戻りや歯切れなど焼海苔の品質にも悪影響が現れる。このため、海苔の十分かつ均一な加熱が必要となるが、特許文献2記載の方法は、バーナーに水を噴霧して水蒸気を発生させ過熱水蒸気を強制循環させる方式であり、加熱が不均一で安定して焼けないため、色戻りや歯切れ、殺菌効果や成分の残存性にムラが生じるという問題があった。加熱による縮みや波打ち、コゲの発生を抑えつつ、「色戻り」現象を画一的に解消し、さらに一定以上の「歯切れ」が得られ、十分な殺菌が可能な焼海苔の製造方法が求められていた。
【0012】
本発明は、焼海苔の十分な殺菌を行うことが可能な焼海苔の製造方法及び当該方法に用いられる焼海苔の加熱処理機を提供することを目的とする。さらに、本発明は、加熱によるクロロフィルやアミノ酸の損失を低減しつつ、「色戻り」現象を起こさず、一定以上の「歯切れ」を有する焼海苔を得ることができる、焼海苔の製造方法及び当該方法に用いられる焼海苔の加熱処理機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
過熱水蒸気の顕熱は0.48kcal/kg/℃で、空気の0.28kcal/kg/℃に比べておよそ2倍あり、加熱効率が非常に高く、熱エネルギーの伝達が均一で速い。しかし、水蒸気は水であるので、海苔にしわや縮み等を発生させ品質を低下させる原因にもなる。そこで、本発明者らは、上記課題を鑑み、過熱水蒸気による焙焼の機構、焙焼温度・過熱水蒸気量・処理時間を変化させて海苔を焙焼し、鋭意検討した結果、前述の問題が解決された焼海苔を製造する条件を見出した。また、当該焼海苔を製造する条件に基づき、焼海苔焙焼用の加熱処理機を見出すに至った。
【0014】
すなわち、本発明の態様の一つは、海苔載置部から離れないように固定されたシート状の海苔を、過熱水蒸気により1秒以上処理する加熱処理工程を含む、焼海苔の製造方法に関する。
【0015】
本態様により、板海苔の品質によらず、一定の焙焼条件下で板海苔の全面にわたって十分に加熱処理が施され、殺菌された焼海苔が提供可能となる。また、クロロフィル色素、呈味性遊離アミノ酸の損失を低減しつつ、十分にフィコビリン色素を消失させ「色戻り」現象を起こさない焼海苔を提供することが可能となる。同様に一定以上の「歯切れ」を有する焼海苔を提供することが可能となる。
【0016】
本発明の方法の他の態様の一つは、シート状に加工された海苔を、予備加熱手段により50℃以上の温度で加熱する予備加熱工程、及び前記予備加熱処理に付した海苔を、海苔載置部から離れないように固定し、過熱水蒸気により1秒以上処理する加熱処理工程を含む、焼海苔の製造方法に関する。
【0017】
本態様により、海苔の全面にわたって十分に加熱処理が施されるとともに、過熱水蒸気と海苔が接触した際に、海苔表面での水蒸気の凝縮を防止することができ、しわや縮みが発生しにくい焼海苔が提供可能となる。
【0018】
本発明の方法の他の態様の一つは、加熱処理工程における過熱水蒸気の温度が、150〜500℃の範囲であることを特徴とする。
【0019】
本態様により、板海苔に十分な加熱処理が施され、一般生菌数を少なく抑えた焼海苔が提供可能となる。
【0020】
本発明の方法の他の態様の一つは、過熱水蒸気での加熱処理時間が1秒〜90秒の間であることを特徴とする。
【0021】
本態様により、板海苔に十分な加熱処理を施しつつも、板海苔に含まれるクロロフィルや旨み成分を損失することなく、品質を高く保った焼海苔が提供可能となる。
【0022】
本発明の方法の他の態様の一つは、加熱処理工程で噴射される過熱水蒸気の量が、10kg/時以上であることを特徴とする。
【0023】
本態様により、過熱水蒸気での過熱処理を板海苔に対してムラなく十分に行うことができ、一般生菌数を少なく抑えた焼海苔が提供可能となる。
【0024】
本発明の方法の他の態様の一つは、海苔を過熱水蒸気により処理する工程の後での、海苔に含まれる生菌数が1gあたり10
5個以下であることを特徴とする。
【0025】
本態様により、焼海苔を使った食品の賞味期限を長く設定することができる焼海苔を提供することが可能となる。
【0026】
また、本発明の更なる態様は、シート状の海苔を加熱処理するための加熱処理機であって、海苔を載置するための上面と、上面とは反対側の下面とを有する海苔載置部と、海苔載置部の上面に対向するように下面が配置される浮き上がり防止部であって、海苔載置部の上面と、浮き上がり防止部の下面との最大間隔が50mmである、浮き上がり防止部と、海苔載置部に載置された海苔に対して過熱水蒸気を噴射するための過熱水蒸気噴出口と、過熱水蒸気を発生し、過熱水蒸気噴出口に過熱水蒸気を供給するための過熱水蒸気発生装置とを含む、加熱処理機である。
【0027】
本態様により、板海苔の品質によらず、一定の焙焼条件下で板海苔の十分な殺菌が可能となる。また、クロロフィル色素、呈味性遊離アミノ酸の損失を低減しつつ、十分にフィコビリン色素を消失させ「色戻り」現象を起こさない焼海苔を提供することが可能となる。同様に一定以上の「歯切れ」を有する焼海苔を提供することが可能となる。
【0028】
本発明の加熱処理機の他の態様の一つは、過熱水蒸気噴出口が、浮き上がり防止部の上面に対して過熱水蒸気を噴射可能に配置され、過熱水蒸気が浮き上がり防止部の上面から下面へ通過可能であることを特徴とする。
【0029】
本態様により、海苔の全面に過熱水蒸気を行き渡らせることができ、より均一かつ十分な加熱処理が可能となる。
【0030】
本発明の加熱処理機の他の態様の一つは、過熱水蒸気噴出口が、海苔載置部の下面に対して過熱水蒸気を噴射可能に配置され、過熱水蒸気が海苔載置部の下面から上面へ通過可能であることを特徴とする。
【0031】
本態様により、海苔の全面に過熱水蒸気を行き渡らせることができ、より均一かつ十分な加熱処理が可能となる。
【0032】
本発明の加熱処理機の他の態様の一つは、海苔載置部が、メッシュベルト又は複数本が並行に配置された線状ベルトを有するベルトコンベアであることを特徴とする。
【0033】
本態様により、海苔の全面に過熱水蒸気を行き渡らせることができ、より均一かつ十分な加熱処理が可能となるとともに、加熱処理を流れ作業で自動化することができ、効率よく板海苔の加熱処理を行うことが可能となる。
【0034】
本発明の加熱処理機の他の態様の一つは、海苔の予備加熱手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0035】
本態様により、過熱水蒸気と海苔が接触した際に、海苔表面での水蒸気の凝縮を防止することができ、しわや縮みが発生しにくい焼海苔が製造可能となる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、焼海苔の十分な殺菌を行うことが可能な焼海苔の製造方法、及び当該方法に用いられる焼海苔の加熱処理機を提供することができる。さらに、本発明によれば、加熱によるクロロフィルやアミノ酸の損失を低減しつつ、「色戻り」現象を起こさず、一定以上の「歯切れ」を有する焼海苔を得ることができる焼海苔の製造方法及び当該方法に用いられる加熱処理機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<<焼海苔の製造方法>>
本発明は、海苔載置部から離れないように固定されたシート状の海苔を過熱水蒸気により1秒以上処理する加熱処理工程を含む、焼海苔の製造方法に関する。以下、本発明の方法について詳細に説明する。
【0039】
[過熱水蒸気]
過熱水蒸気とは、ある圧力における飽和温度以上の温度の水蒸気を指すが、本明細書では、特に断りが無い限り、大気圧下で100℃より高温に熱せられた水蒸気を指す。100℃より高い温度に加熱された水蒸気である。過熱水蒸気は空気に比べておよそ2倍の顕熱を有するため加熱効率が非常に高く、熱エネルギーの伝達が均一で速いことから、加熱の媒体として用いられる。本発明の方法では、過熱水蒸気を固定した板海苔に噴射することにより板海苔の焙焼、殺菌を行う。過熱水蒸気の発生方法は、特に制限されることなく公知の方法を用いることができる。例えば、バーナーに水を噴射して気化させ、さらにヒーターで加熱して水蒸気の温度を高める、というような方法を採ることができる。過熱水蒸気は噴出口より板海苔へ噴射されるが、過熱水蒸気は、板海苔の片面に噴射されるようにしてもよいし、板海苔の両面に噴射されるようにしてもよく、加熱、殺菌の効率がより向上することから、板海苔の両面に噴射されるようにすることが好ましい。板海苔両面の加熱を達成するための手段としては、例えば、板海苔を載置する部位をメッシュ状にすることができる。
【0040】
[処理温度]
海苔に含まれている4種類の色素(クロロフィル、カロテン、フィコシアニン、フィコエリスリン)のうち、所謂フィコビリン色素と言われるフィコシアニン及びフィコエリスリンは、海苔を加熱した際に熱変性して消失する。これによりクロロフィルとカロテンが残り、海苔の焼き色が鮮緑色となって現れる。熱エネルギーが十分に内部まで伝達されず、フィコビリン色素が残存すると、焼海苔が他の食材と接触するなどした際、残存したフィコビリン色素が水分やpHにより変性し、焼海苔特有の鮮緑色が赤褐色から茶褐色に変化する所謂「色戻り」という現象が発生して商品価値が著しく損なわれることがある。一方、色戻りが発生しないよう焼き加減を強くし、フィコビリン色素の消失を促すと、クロロフィルやアミノ酸の消失も促されてしまい、色の変質や旨み成分の減少や、場合によっては「焦げ臭」が発生して商品価値を損なうことがある。これらの事情を踏まえて、過熱水蒸気での加熱処理温度は、150℃から500℃が好ましく、150℃から400℃がより好ましく、150℃から300℃がさらに好ましく、200℃から280℃が特に好ましい。加熱処理温度をこの範囲とすることで、クロロフィルやアミノ酸の量を大きく減少させることなく、フィコビリン色素を消失させ、高品質の焼海苔を提供することができる。また、熱により焼海苔中に含まれる一般生菌数を非常に少なくすることができる。
【0041】
[処理時間]
板海苔の加熱処理時間は、加熱処理温度にも依存するが、1秒〜90秒、好ましくは1秒〜20秒、さらに好ましくは3秒〜20秒である。加熱処理時間がこの範囲であると、板海苔の十分な加熱が達成され、一般生菌数の非常に少ない焼海苔が得られる。加熱処理時間は、タイマーなど公知の手段によって制御することができる。一定時間経過後に過熱水蒸気噴出口のノズルを閉じる機構を採用してもよい。また、例えば海苔載置部がベルトコンベア式である場合には、ベルトコンベアの速度、加熱炉の大きさ、加熱炉内の移送距離などによって、加熱処理時間を制御することもできる。例えば加熱炉内の加熱部有効長を2000mmとし、ベルトコンベアの速度を22m/分とすると、加熱処理時間を約6秒に制御することができる。
【0042】
[過熱水蒸気量]
過熱水蒸気噴出口から噴射される過熱水蒸気の量は、好ましくは10kg/時から90kg/時であり、より好ましくは20kg/時から70kg/時である。海苔への噴き付け部での水蒸気圧を測定することが技術的に困難であること等から、実際に海苔に噴射される過熱水蒸気量を規定することは困難である。しかしながら、本発明者らは鋭意検討の結果、過熱水蒸気噴出口へ供給される過熱水蒸気の量が上記範囲であれば、板海苔の十分かつ均一な加熱が達成されることを見出した。過熱水蒸気量をこの範囲に設定することで、焙焼装置内の過熱水蒸気密度を保ち、板海苔の十分かつ均一な加熱を行うことができる。過熱水蒸気の温度、加熱処理の時間、過熱水蒸気の量は、焙焼装置の大きさ、一度に処理される板海苔の量など加熱処理機の設計に応じて、適宜変更、設定することができる。
【0043】
[板海苔の固定]
本発明の方法では、過熱水蒸気による板海苔の加熱にあたって、板海苔が過熱水蒸気により浮き上がるなどして、加熱位置からずれてしまうことを防止するために、板海苔は固定されている。ここで、板海苔が「固定されている」状態とは、加熱されている間、板海苔と板海苔を載置した位置との相対的な位置関係が実質的に変化しないこと、特に板海苔が浮き上がるなどして載置部から離れてしまわないことを意味する。加熱処理工程において板海苔が浮き上がるなどすると、加熱の均一性が損なわれ十分な殺菌ができなくなる。板海苔の固定方法は、板海苔の全面に過熱水蒸気が噴射されることが阻害されない限り、どのような方法であってもよい。例えば、加熱処理機に、板海苔を板海苔の載置部とで挟み込むことにより浮き上がりを防止する機構を設けることができる。そのような機構としては、海苔載置部の上面に近接して配置されたメッシュ状の壁材が挙げられる。
【0044】
[予備加熱]
本発明の方法は、前記過熱水蒸気での加熱処理工程に先立って、予備加熱手段により、シート状に加工された海苔を50℃以上の温度で加熱する予備加熱工程を含んでもよい。予備加熱工程は、加熱処理される板海苔の品温を高くし、海苔表面での過熱水蒸気の凝縮を防止するために行われる。予備加熱工程により、過熱水蒸気の凝縮によるしわ等の発生を予防することができる。予備加熱工程は、50℃以上で行われることが好ましく、70℃以上で行われることがより好ましく、100℃以上で行われることがさらに好ましい。過剰な焙焼により海苔の風味が損なわれないように、加熱工程の温度は200℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。予備加熱工程での加熱処理は、板海苔が十分に加温されるまで行われる。加熱温度にも依存するが、予備加熱処理時間は1秒以上、好ましくは5秒以上、より好ましくは15秒以上である。予備加熱工程に付された板海苔は、品温が下がらないうちに、焙焼装置にて過熱水蒸気処理に付される。
【0045】
<<板海苔の加熱処理機>>
本発明の方法を実施するための具体的な実施形態である板海苔の加熱処理機の一例について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0046】
本発明の加熱処理機は、焙焼装置及び過熱水蒸気供給装置を含み、焙焼温度、過熱水蒸気量、処理時間を制御することができる、シート状の海苔を加熱処理するための加熱処理機である。
図1に、本発明の加熱処理機の一例の断面模式図を図示する。
【0047】
<焙焼装置>
焙焼装置は、過熱水蒸気を海苔に作用させて焙焼する装置であり、海苔載置部10、海苔の浮き上がり防止部12、及び加熱炉を含む。本発明の加熱処理機において用いられる過熱水蒸気とは、先に述べたように、大気圧下で100℃より高温に熱せられた水蒸気を指す。
【0048】
[海苔載置部]
海苔載置部10は、海苔を載置するための上面と、上面とは反対側の下面とを有する。加熱処理に付されるシート状の海苔は、海苔載置部10の上面側に載せられる。通常板海苔は19cm×21cmのサイズで取り扱われるので、海苔載置部10はこれより大きい面を有していることが好ましい。海苔載置部10の上面は、板海苔が載置可能であれば、方形だけでなく、円形、リング状など様々な形状をとることができる。
【0049】
より効率的に板海苔の全面に過熱水蒸気を行き渡らせるため、海苔載置部10は、その下面から上面へと気体、特に水蒸気が通過可能であることが好ましい。そのため、海苔載置部10は、穴が開いていることが好ましく、網目状であることがより好ましい。穴又は網目の間隔又は大きさは、過熱水蒸気が十分に通過することができ、板海苔が海苔載置部10から落下しない大きさであれば、特に制限されない。また、海苔載置部10の下面側は後述する過熱水蒸気噴出口24を備えるために、空隙となっていることが好ましい。穴又は網目の大きさは、例えば、0.0015〜100cm
2、好ましくは0.15〜25cm
2とすることができる。
【0050】
海苔載置部10の構造としては、板海苔の表面全体に万遍なく過熱水蒸気を噴き付け、効率よく加熱処理工程を行うことができるため、ベルトコンベアなどの移送装置であることがより好ましい。メッシュベルト又は複数本が並行に配置された線状ベルトを有するベルトコンベアであることが特に好ましい。ここで、「線状ベルト」とは、ベルト幅が狭いベルトを意味し、マルベルトなどを線状ベルトとして用いることができる。線状ベルトの断面形状は、マルベルトのように丸型であってもよく、方形、V字型など任意の形状をとることができる。複数の線状ベルトどうしの間隔は、板海苔を安定して載置することができる限り、制限されない。さらに、海苔載置部10は、ラダーチェーンのような構造をとっていてもよい。
【0051】
[浮き上がり防止部]
浮き上がり防止部12は、板海苔が過熱水蒸気により浮き上がるなどして、加熱位置からずれてしまうことを防止するための機構である。浮き上がり防止部12は、海苔載置部の上面に対向するように下面が配置される。海苔載置部10の上面と、浮き上がり防止部12の下面との最大間隔は、50mmである。最大間隔は30mmであることが好ましく、10mmであることがより好ましい。最大間隔が前記範囲内にあり、海苔の浮き上がりが防止できるのであれば、浮き上がり防止部12の下面は凹凸を有していてもよい。また、板海苔に過熱水蒸気が噴き付け可能である限り、浮き上がり防止部12は、海苔載置部10との間で板海苔をプレスするように配置されていてもよい。また、海苔載置部10の上面と、浮き上がり防止部12の下面とは、板海苔の加熱処理時に上記間隔を満足していればよい。板海苔を海苔載置部10に載せやすくするために、浮き上がり防止部12の下面は、例えば上下に動かせる設計とすることもできる。
【0052】
浮き上がり防止部12の大きさは、板海苔を覆い、板海苔の浮き上がりが防止できる程度であれば、特に制限されない。加熱処理に付される板海苔より大きいことが好ましく、海苔載置部10が覆われる程度の大きさであることがより好ましい。
【0053】
より効率的に板海苔の全面に過熱水蒸気を行き渡らせるため、浮き上がり防止部12は、その上面から下面へと気体、特に水蒸気が通過可能であることが好ましい。そのため、浮き上がり防止部12は、穴が開いていることが好ましく、網目状であることがより好ましい。穴又は網目の間隔又は大きさは、過熱水蒸気が十分に通過することができ、板海苔の浮き上がりが防止できる程度であれば、特に制限されない。また、浮き上がり防止部12の上面側は後述する過熱水蒸気噴出口24を備えるために、空隙となっていることが好ましい。穴又は網目の大きさなどの設計における好ましい態様は、海苔載置部10と同様のものを採用することができる。
【0054】
浮き上がり防止部12の構造としては、板海苔を固定しながら移送し、より効率的な加熱処理を達成するため、ベルトコンベアを採用することもできる。ベルトコンベアとしては、海苔載置部10と同様の機構のものを採用することができる。
【0055】
[加熱炉]
焙焼装置は、過熱水蒸気で板海苔を処理するための空間として、加熱炉を有している。加熱炉には、海苔載置部10及び浮き上がり防止機構12の少なくとも一部が内包され、この限りにおいて加熱炉の大きさは特に制限されない。加熱炉は、加熱処理の熱効率を高めるため、また過熱水蒸気の温度が下がり凝縮してしまうことを防ぐため、外部へ熱エネルギーが漏れないよう仕切りなどの断熱機構が設けられていることが好ましい。板海苔の導入口と焼海苔の取出口は外部からの空気が入り込むことで温度を下げる原因となり得るので、板海苔の導入口と焼海苔の取出口をドアで熱的に遮断可能としてもよいし、ベルトコンベアの入口と出口を狭く設計して熱の行き来ができる領域を狭めてもよい。また、加熱炉内部の温度をモニタリング可能なように、温度センサーを1つ以上備えていることが好ましい。
【0056】
過熱水蒸気による焙焼は低酸素雰囲気下で実施することができるため、通常の加熱でみられる成分の酸化による損失が低減でき、クロロフィル、β−カロテン等の色素や、旨み成分であるアミノ酸の残存率が、通常の焙焼に比べて高くなることが知られている。加熱炉に供給される気体には過熱水蒸気の圧送用の圧縮空気が含まれうるが、過熱水蒸気が体積の多くを占めるため低酸素雰囲気下での実施が可能である。これに加え、さらに低酸素状態を達成するため、加熱炉には低酸素雰囲気下での実施が可能なように、窒素などの不活性気体で装置内部を置換する機構が備えられていてもよい。
【0057】
また加熱炉は、過熱水蒸気の排気口と連結されており、板海苔の加熱処理に用いられた過熱水蒸気は排気口を通して焙焼装置外に排出される。排出された水蒸気は、回収して蒸留水とし、後述する過熱水蒸気発生装置20に導入することで再利用が可能である。このような水蒸気の再利用機構を設けることで、水を効率的に利用し、コストダウンを図ることもできる。
【0058】
<過熱水蒸気供給装置>
過熱水蒸気供給装置は、過熱水蒸気を焙焼装置に供給する装置である。過熱水蒸気供給装置に備えられた過熱水蒸気発生装置20で発生した過熱水蒸気は、過熱水蒸気搬送部を介して、過熱水蒸気噴出口24に供給される。
【0059】
[過熱水蒸気発生装置]
過熱水蒸気発生装置20は、過熱水蒸気を発生させるための装置である。過熱水蒸気発生装置20は、飽和水蒸気発生装置及び加熱装置を備えている。飽和水蒸気発生装置は、水を加熱して飽和水蒸気とする装置である。飽和水蒸気発生装置には、一般的な液化プロパンガスを用いたボイラーなどを使用可能であり、特に限定は無い。飽和水蒸気の発生に用いられる水としては、精製水など高純度化した水を用いる必要はないが、水蒸気化した後の残渣となる不純物や水より沸点の低い成分が含まれないことが好ましい。飽和水蒸気の発生に用いられる水としては、水道水、純水等を用いることができるが、コストの点から、水道水を用いることが好ましい。一度加熱処理に用いられた水蒸気を回収し、蒸留水として再利用すると、水を効率的に利用し、コストダウンが図れるため好ましい。水の供給量は、板海苔に噴射される過熱水蒸気量を十分に確保するために、15kg/時以上が好ましく、100kg/時以上であることがより好ましい。また、過熱水蒸気搬送部での過熱水蒸気の移送をスムーズに行うため、過熱水蒸気発生部20には空気を供給する機構が備えられていてもよい。空気の供給量は、水蒸気を効率よく移送するため、好ましくは10〜1500L/分、より好ましくは100〜1200L/分である。
【0060】
加熱装置は、飽和水蒸気発生装置により供給された飽和水蒸気を設定温度まで高めて過熱水蒸気とする熱源として使用される。加熱装置の熱源としては電磁誘導型、直接加熱型など、気体を加熱する熱源であれば特に限定されない。加熱装置は、水蒸気を100℃以上に加熱することができる熱源であれば特に限定されないが、発熱体温度で最大1500℃までの加熱能力を備えていることが好ましい。600℃まで加熱可能であると、より好ましい。加熱装置により水蒸気を加熱することにより、水蒸気の温度を好ましくは150℃から800℃、より好ましくは150〜500℃、さらに好ましくは200℃から400℃とすることができる。また、飽和水蒸気発生装置による過熱水蒸気の発生量は、焙焼装置へ十分な量の過熱水蒸気を供給するため、好ましくは10kg/時から200kg/時、より好ましくは10kg/時から120kg/時とすることができる。
【0061】
[過熱水蒸気搬送部]
過熱水蒸気発生装置20から生じた過熱水蒸気は、過熱水蒸気搬送パイプ22のような過熱水蒸気搬送部を通して、焙焼装置に連結された過熱水蒸気噴出口24に誘導される。過熱水蒸気搬送部に用いられる材料は、過熱水蒸気の圧力に耐えることができる素材であればその種類に特に制限はないが、過熱水蒸気の温度を低下させないよう、断熱性の高い素材を用いることが好ましい。過熱水蒸気搬送部の外装部を真空の空間で覆い、過熱水蒸気の保温を図ることもできる。また、過熱水蒸気搬送部内に、過熱水蒸気発生装置20に備えられている加熱装置を設けてもよい。
【0062】
[過熱水蒸気噴出口]
過熱水蒸気噴出口24は、過熱水蒸気搬送部から誘導された過熱水蒸気を焙焼装置内に噴出するための機構である。例えば過熱水蒸気搬送パイプ22に穴をあけて、その穴を過熱水蒸気噴出口24とすることもできる。また、過熱水蒸気搬送部にノズルを取り付けてもよい。コンバージェントノズルを用いると、過熱水蒸気の圧力が高まり、板海苔の内部まで過熱水蒸気による加熱が達成されやすくなる。ダイバージェントノズルを用いると、過熱水蒸気が拡散しやすくなり、板海苔全面に過熱水蒸気が到達しやすくなる。
【0063】
過熱水蒸気噴出口24は、板海苔に過熱水蒸気を噴射可能であれば、焙焼装置内のどの位置に配置されていてもよく、海苔載置部10に載せられた板海苔に対して上面方向、下面方向、側面方向いずれに配置されていてもよい。過熱水蒸気の噴射効率が向上するため、板海苔の上面又は下面から噴射可能に配置されることが好ましい。例えば、海苔載置部10が網目状である場合、過熱水蒸気噴出口24は、海苔載置部10の下面に対して過熱水蒸気を噴射可能に配置され、過熱水蒸気が海苔載置部10の下面から上面へ通過可能となるように配置することができる。また、浮き上がり防止部12が網目状である場合、過熱水蒸気噴出口24は、浮き上がり防止部12の上面に対して過熱水蒸気を噴射可能に配置され、過熱水蒸気が浮き上がり防止部12の上面から下面へ通過可能となるように配置することができる。
【0064】
過熱水蒸気噴出口24は、焙焼装置内に少なくとも1つ設置されている必要があるが、効率的な加熱処理を行うために、複数個設置されていることが好ましい。また、板海苔を万遍なく加熱処理することができる間隔で、過熱水蒸気噴出口24が設置されていることが好ましい。過熱水蒸気噴出口24の設置数、間隔は、過熱水蒸気噴出口24の構造や過熱水蒸気圧により決まる過熱水蒸気の噴射範囲、板海苔の大きさなどに基づいて、適宜設計することができる。
【0065】
過熱水蒸気噴出口24は、断面が0.007〜60cm
2、好ましくは断面が0.03〜30cm
2のノズル状であることができる。また、過熱水蒸気噴出口24が2つ以上あるときは、例えば縦横が各々0.5〜100cm間隔、好ましくは5〜20cm間隔となるように、加熱炉内に配置することができる。また、過熱水蒸気噴出口24から噴出する過熱水蒸気の温度は、好ましくは150℃から800℃、より好ましくは150〜500℃、さらに好ましくは200℃から400℃である。
【0066】
板海苔を過熱水蒸気で処理する場合、板海苔の品温が室温であると、過熱水蒸気が板海苔表面に接触した瞬間に、過熱水蒸気との温度差により水蒸気の凝縮が起こり、縮みやしわが発生しやすくなる。このため、本発明の加熱処理機には、処理前の海苔の温度を上げて水蒸気の凝集を防ぐ目的で、海苔の予備加熱手段を備えていてもよい。予備加熱手段には、赤外線又は遠赤外線ヒーター、電熱線など公知の熱源を用いることができる。予備加熱手段と焙焼装置とは、温めた板海苔の品温を下げないように、連結されているか、又は一体化していることが好ましい。ベルトコンベアが予備加熱手段と焙焼装置を順次通過するように設計してもよいし、焙焼装置内に予備加熱手段の熱源を備え、過熱水蒸気の噴射と予備加熱のどちらを行うか制御可能な機構を設けることもできる。
【0067】
加熱処理機には、上記機構が備えられており、本発明の目的を達成することができる限り、具体的形状は制限されない。板海苔の導入口、焼海苔の取出口などは、海苔載置部10、焙焼装置などの種類、形状に応じて適宜設計される。加熱炉内に海苔載置部10及び浮き上がり防止部12の組を縦又は横方向に複数備えて、複数のラインで並行して加熱処理が行われるようにすることもできる。
【0068】
前記加熱処理機を用いて板海苔を加熱処理する方法のうち、海苔載置部10への板海苔の載置、焙焼装置への導入、焼海苔の取出しなどの具体的操作は、加熱処理機の構造に応じて適宜行われる。例えば、海苔載置部10がベルトコンベア式である場合の操作は以下の如くである。すなわち、加熱炉の外部に張り出したベルトコンベアの始点に板海苔を載せ、ベルトコンベアにより板海苔を加熱炉内部へ移送し加熱処理を行い、ベルトコンベアの終点に移送された焼海苔を回収する。
【0069】
[焼海苔]
本発明の方法では、好ましくは、板海苔を過熱水蒸気により処理する工程の後での、海苔に含まれる一般生菌数が1gあたり10
5個以下まで減少している。一般生菌数はより好ましくは1gあたり10
4個以下であり、10
3個以下であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0070】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
比較例として、次に示す処理方法により、焼海苔を製造した。比較例1では、遠赤外線による処理を行った。比較例2〜4では、素干しの海苔用焙焼機を用いて処理を行った。前記焙焼機は、海苔の浮き上がり防止部を備えておらず、また、過熱水蒸気の発生はバーナーに水を直接吹き付ける機構であるため、過熱水蒸気の供給量は4kg/時である。比較例5及び6では、過熱水蒸気を用いない処理により、焼海苔を製造した。また、本発明の方法による海苔を固定する機構を備えた加熱処理機を用いての過熱水蒸気による焙焼により焼海苔を製造し(実施例1〜9)、それぞれの方法により得られた焼海苔の一般生菌残存率を比較した。各実施例及び比較例での加熱処理の条件は、以下のとおりである。ここで、実施例5〜9では、実施例1〜4で用いた加熱処理機に、断熱機構及び外部からの空気の巻き込みを防止する機構を備えた加熱処理機を用いて焼海苔の製造を行った。
[比較例1]遠赤外線焙焼:温度300℃、処理時間7.6秒
[比較例2]素干し用焙焼機使用:温度120℃、過熱水蒸気量4kg/時、処理時間200秒
[比較例3]素干し用焙焼機使用:温度150℃、過熱水蒸気量4kg/時、処理時間100秒
[比較例4]素干し用焙焼機使用:温度200℃、過熱水蒸気量4kg/時、処理時間30秒
[比較例5]温度260℃、過熱水蒸気量 0kg/時、処理時間15秒
[比較例6]温度270℃、過熱水蒸気量 0kg/時、処理時間15秒
[実施例1]過熱水蒸気焙焼:温度280℃、過熱水蒸気量70kg/時、処理時間6秒
[実施例2]過熱水蒸気焙焼:温度250℃、過熱水蒸気量70kg/時、処理時間8秒
[実施例3]過熱水蒸気焙焼:温度200℃、過熱水蒸気量70kg/時、処理時間30秒
[実施例4]過熱水蒸気焙焼:温度180℃、過熱水蒸気量70kg/時、処理時間45秒
[実施例5]過熱水蒸気焙焼:温度180℃、過熱水蒸気量70kg/時、処理時間9秒
[実施例6]過熱水蒸気焙焼:温度180℃、過熱水蒸気量70kg/時、処理時間6秒
[実施例7]過熱水蒸気焙焼:温度200℃、過熱水蒸気量10kg/時、処理時間30秒
[実施例8]過熱水蒸気焙焼:温度180℃、過熱水蒸気量10kg/時、処理時間60秒
[実施例9]過熱水蒸気焙焼:温度150℃、過熱水蒸気量10kg/時、処理時間60秒
【0072】
以上の条件で焙焼した焼海苔と、焙焼前の板海苔について、一般生菌数を測定した。生菌数の測定は標準寒天混釈平板培養法により行った。検液は、各条件で得られた焼海苔10gをストマック袋にいれ、90mLのリン酸緩衝生理食塩水を注ぎ込んで、ストマッカー(Seward社製 STOMACHER 400 DIRCULATOR)にて回転数230rpm、30秒間ストマッキングし、得られた菌懸濁液を菌検液とした。標準寒天培地を指定の濃度で蒸留水に分散させ、120℃、20分にて加熱溶解及び滅菌し、50℃程度で冷却保温した培地を、滅菌済みシャーレに菌検液1mLとともに注ぎ込み、よく撹拌し、そのまま放置して冷却固化させ、36℃にて48時間保温後、発生したコロニーをカウントした。結果を表1に示す。焙焼前の板海苔の一般生菌数は、1.2×10
7個であった。
【0073】
【表1】
【0074】
表1から、本発明の方法による海苔の固定機構を備えた加熱処理機により焙焼を行った焼海苔は、加熱処理前には1.2×10
7個存在していた一般生菌数が10
3以下まで大きく減少しており、非常に高品質の焼海苔が得られることがわかった。また、実施例5〜9では、比較的低温、より少ない過熱水蒸気の量、又はより短い加熱時間でも、本発明の方法により十分な殺菌が達成できることが示された。例えば、実施例7と比較例4とを比較すると、ほぼ同じ加熱条件にも関わらず、実施例7では一般生菌数を300以下まで低減することができたことがわかる。実施例7より更に低温で処理した実施例9と比較例3とを比較しても、同様に一般生菌数を大きく低減することができている。一方、過熱水蒸気を用いても、比較例2〜4の方法では、海苔の焙焼そのものが完了しておらず、さらに高々10分の1程度までしか一般生菌数は減少せず、焼海苔の品質には問題が残ることがわかった。
【0075】
[焼海苔の品質評価1]
過熱水蒸気、遠赤外線及び加熱空気により各々焙焼した焼海苔と、焙焼前の板海苔について、フィコビリン色素含量、クロロフィル含量、遊離アミノ酸含量、一般生菌数を測定した。そして焙焼前後の分析結果から、フィコビリン色素残存率、クロロフィル残存率、呈味性アミノ酸残存率、一般生菌数減少度を算出した。一般生菌数減少度は、焙焼前の板海苔に含まれる一般生菌数/焙焼後の焼海苔に含まれる一般生菌数の比で表しており、大きいほど生菌数が減少したことを意味する。
【0076】
【表2】
【0077】
表2より、本発明の加熱処理機及び方法で焙焼した焼海苔は、他の方法で処理した焼海苔と比較してフィコビリン色素の残存が少ないため色戻りの心配が少なく、かつクロロフィル残存率及び呈味性アミノ酸残存率がともに高く、色調、味覚ともに高品質の焼海苔が得られることがわかった。
【0078】
[焼海苔の品質評価2]
5人のパネラーによる官能試験を実施し、歯切れの良さ、焼海苔の緑色の色調、味を評価した。また、色戻りの試験は、各条件で得られた焼海苔を1/4に裁断し、1切れに2倍量の0.04%酢酸を塗布し、白板に張り付け3時間放置後、色戻りの度合いを目視で確認することにより行った。
結果を表3に示す。ここで、色戻りについては「+」が少ないほど色戻りが弱く高品質であることを意味する。歯切れ、色調、味覚については、「+」が多いほど良好であり、「±」は普通の品質であり、「−」は焼海苔の品質として不適であることを意味する。
【0079】
【表3】
【0080】
以上から、焙焼方式別に特徴を比較すると、本発明の焙焼条件が他の焙焼方式より優れていることが示された。
固定されたシート状の海苔を過熱水蒸気により1秒以上処理する加熱処理工程を含む、焼海苔の製造方法である。また、海苔を載置するための上面と、上面とは反対側の下面とを有する海苔載置部と、海苔載置部の上面に対向するように下面が配置される浮き上がり防止部であって、海苔載置部の上面と、浮き上がり防止部の下面との最大間隔が50mmである、浮き上がり防止部と、海苔載置部に載置された海苔に対して過熱水蒸気を噴射するための過熱水蒸気噴出口と、過熱水蒸気を発生し、過熱水蒸気噴出口に過熱水蒸気を供給するための過熱水蒸気発生装置とを含む、シート状の海苔を加熱処理するための加熱処理機に関する。