(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6200119
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】熱伝導性樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 83/10 20060101AFI20170911BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20170911BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20170911BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20170911BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20170911BHJP
H01L 23/373 20060101ALN20170911BHJP
H01L 23/36 20060101ALN20170911BHJP
H05K 7/20 20060101ALN20170911BHJP
【FI】
C08L83/10
C08L33/08
C08L27/12
C08K3/00
C09K5/14 E
!H01L23/36 M
!H01L23/36 D
!H05K7/20 A
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-506948(P2017-506948)
(86)(22)【出願日】2017年1月31日
(86)【国際出願番号】JP2017003366
【審査請求日】2017年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-16956(P2016-16956)
(32)【優先日】2016年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100148426
【弁理士】
【氏名又は名称】森貞 好昭
(72)【発明者】
【氏名】向 史博
(72)【発明者】
【氏名】山浦 考太郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】迫 康浩
【審査官】
小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−344919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/10
C08K 3/00
C08L 27/12
C08L 33/08
C09K 5/14
H01L 23/36
H01L 23/373
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、第一熱伝導性フィラー及び前記第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと、を含む熱伝導性樹脂成形品であって、
前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に配向しており、
前記樹脂がシリコーン樹脂、アクリルゴム又はフッ素ゴムであり、
前記第二熱伝導性フィラーが5W/mK超の熱伝導率を有し、
前記樹脂のウェルドラインが前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に形成されていること、
を特徴とする熱伝導性樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱伝導性樹脂成形品に関し、より具体的には、安価に大量生産が可能な、厚さ方向への優れた熱伝導性を有する熱伝導性樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の高密度化・薄型化が急速に進み、ICやパワー部品、高輝度LEDから発生する熱の影響が重大な問題となっている。これに対し、例えばチップ等の発熱体とヒートシンク等の放熱体の間に熱を効率よく伝達する部材として、熱伝導性樹脂成形品の利用が進んでいる。
【0003】
ここで、樹脂に高い熱伝導性を付与する手段として、効率よく熱伝導パスを形成するために、熱伝導性フィラーを樹脂中に配向分散させることが知られている。また、電子部品と放熱板との間に装着して両者の熱伝導を良好にし、放熱効果を増加することを目的とし、厚さ方向の熱伝導性を向上させた熱伝導性樹脂シートが提案されている。
【0004】
例えば特許文献1(特開平05−102355号公報)においては、マトリックス成分中に、表面がカップリング剤で被覆処理された熱伝導性フィラーを含有してなる熱伝導シートであって、熱伝導フィラーが厚み方向に配向して分布している異方性熱伝導シートが開示されている。
【0005】
また、例えば特許文献2(特開2003−174127号公報)においては、導電性熱伝導性繊維の表面に電気絶縁性材料をコーティングした熱伝導性繊維が、有機高分子からなるシートの厚み方向に静電植毛によって配向されてなることを特徴とする異方性伝熱シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−102355号公報
【特許文献2】特開2003−174127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載されている熱伝導性樹脂シートにおいては、その製造工程に電圧の印加や静電植毛等の電気的な相互作用を利用しており、大量生産して安価に供給することが必要な用途には適していない。
【0008】
また、用いることができる熱伝導性フィラーの種類やその体積充填率等が制限されるため、得られる熱伝導率が十分なではなく、各種電子機器等で求められる放熱特性を完全には満たしていないという問題があった。
【0009】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、安価に大量生産が可能な、高充填による内部熱抵抗の低減と、カット精度向上による界面熱抵抗の低減と、により低い熱抵抗値を発揮する熱伝導性樹脂成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決すべく、熱伝導性樹脂成形品の構造及び用いる熱伝導フィラー等について鋭意研究を重ねた結果、熱伝導フィラーとして大小異なる平均粒径を有するものを使用し、大平均粒径の熱伝導性フィラーのアスペクト比を特定の範囲としてかつ略厚み方向に配向させれば有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は、
樹脂と、第一熱伝導性フィラー及び前記第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと、を含
む熱伝導性樹脂成形品であって、
前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に配向しており、
前記樹脂がシリコーン樹脂、アクリルゴム又はフッ素ゴムであり、
前記第二熱伝導性フィラーが5W/mK超の熱伝導率を有すること、
を特徴とする熱伝導性樹脂成形品を提供する。
【0012】
また、前記熱伝導性樹脂成形品における前記熱伝導性フィラーの体積充填率が10〜80体積%であることが好ましく、40〜60体積%であることが更に好ましい。
【0013】
また、上記本発明の熱伝導性樹脂成形品においては、前記樹脂のウェルドラインが前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に形成されてい
る。
【0014】
なお、ウェルドラインが熱伝導性成形品の略厚さ方向に形成されているとは、当該熱伝導性成形品が、垂直方向に折り畳んで溶着された多数の樹脂成形品で形成されていることを意味している。ウェルドラインは完全な直線とは限らず、円弧状に湾曲していてもよく、一部が不連続となっていてもよい。
【0015】
本発明における「熱伝導性樹脂成形品」とは、押出成形した後のブロック状物、又は、当該ブロック状物を適宜切断して得られる切断物(スライスしたシート状物を含む)のいずれも含む概念である。また、熱伝導性フィラーの「粒径」とは、粒度分布測定における平均粒径という概念であり、レーザー回折散乱法という方法により測定されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安価に大量生産が可能な、高充填による内部熱抵抗の低減と、カット精度向上による界面熱抵抗の低減と、により低い熱抵抗値を発揮する熱伝導性樹脂成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の熱伝導性樹脂成形品の一実施形態である熱伝導性樹脂シートの製造方法を説明するための概念図(Tダイの側面図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の熱伝導性樹脂成形品の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0019】
本実施形態の熱伝導性樹脂シートは、樹脂と、第一熱伝導性フィラー及び前記第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと、を含み、前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂シートの略厚み方向に配向しており、前記樹脂がシリコーン樹脂、アクリルゴム又はフッ素ゴムである。
【0020】
つまり、本実施形態の熱伝導性樹脂シートは、第一熱伝導性フィラーと、第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーと、と熱伝導性フィラーとして含む。即ち、第一熱伝導性フィラーの粒径D
1と、第二熱伝導性フィラーの粒径D
2とが、D
1>D
2の関係を有している。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、第一熱伝導性フィラー及び第二熱伝導性フィラー以外の熱伝導性フィラーを用いてもよい。
【0021】
ここで、
図1は、本実施形態の熱伝導性樹脂シートの製造方法を説明するための概念図であり、押出機の先端部分及びTダイの断面概略図が示されている。押出機のTダイは、連続する上下方向の隙間Xの第一ギャップ、上下方向の隙間Yの第二ギャップ、及び、第一ギャップと第二ギャップとの間にある流路の上下側面少なくとも一方に傾斜面を有している。
【0022】
熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物は、スクリュー2によって撹拌・混練され、流路8に沿って第一ギャップ4(隙間X)に導入される。樹脂組成物の流れは第一ギャップ4によって押出機内の流れ方向に対して上下方向(厚さ方向)にしぼり込まれ、薄い帯状となる。第一ギャップ4を通過する際、樹脂組成物にせん断力が作用し、樹脂中に混合されている熱伝導性フィラーが樹脂組成物の流れ方向に配向することとなる。この場合、熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂シート前駆体の面方向に配向する。
【0023】
第一ギャップ4の隙間は、適宜調整すればよいが、例えば0.5mm以上5.0mm以下である。第一ギャップ4の隙間が0.5mmよりも小さいと、押出し圧力が不必要に上昇するだけでなく、樹脂組成物が詰まってしまう。一方、第一ギャップ4の隙間が5.0mmよりも大きいと、熱伝導性樹脂シート前駆体の面方向に対する熱伝導性フィラーの配向度が減少する結果となる。
【0024】
樹脂組成物の流れ方向に熱伝導性フィラーが配向された厚さの薄い樹脂成形品前駆体が、第一ギャップ4を完全に通過すると、流路8の断面積が拡大し、上下方向の長さが長くなるため、樹脂成形品前駆体の流れは上下方向に変化する。続いて、当該樹脂シート前駆体は、第一ギャップ4の下流側(傾斜面を有する流路内)において、第一ギャップ4における流れの方向に対して略垂直な方向に折り畳まれ、帯状の樹脂成形品前駆体が混ざり合って融着し、集束一体化した状態で第二ギャップ6の先端部から連続的に押出されることにより、本発明の熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)が製造される。この場合、熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)の略厚さ方向に配向する。
【0025】
その後、架橋処理を施した当該熱伝導性成形品(ブロック状物)を、熱伝導性フィラーの配向方向に対して垂直方向にスライス加工して、均等な厚さに揃えることにより、本発明の熱伝導性樹脂成形品(シート)が製造される。
【0026】
ここで、第二ギャップ6の隙間Yは第一ギャップ4の隙間Xの2倍以上40倍以下であることが好ましい。また、第一ギャップ4と第二ギャップ6との間にある流路の上下側面は、圧力損失が少ないように傾斜面とすることが好ましく、熱伝導性フィラーを効率良く樹脂シートの厚さ方向に配向させるために、傾斜角度を調整することが望ましい。当該傾斜角度としては、例えば、10°〜50°とすることができ、更には20°〜30°であるのが好ましい。また、流路の上下共に傾斜を有している必要はなく、どちらか一方のみが傾斜を有していてもよい。
【0027】
次に、本実施形態の熱伝導性樹脂成形品を構成する樹脂は、マトリックス乃至はバインダーとして機能するものであり、例えば、シリコーン樹脂(シリコーンゴム及びシリコーンゲル)、ウレタンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。これらのうち、特にシリコーン樹脂は成形体としたときの柔軟性、形状追随性、電子部品に接触させる際の発熱面への密着性、更には耐熱性が優れているので最適である。
【0028】
シリコーン樹脂には、シリコーンゲルとシリコーンゴムがあり、架橋点の少ない/多い又は架橋種の違い(付加反応:白金系触媒,縮合反応:過酸化物)で大別される。また、シリコーンゴムとしては、ミラブル型シリコーンや付加反応型シリコーンが挙げられる。
【0029】
シリコーンゲルは、架橋点が少なくシリコーンゴムに対し熱伝導性フィラーをより多く充填することが可能であるため、より好ましい。なお、架橋点が少ないため耐熱性・電気絶縁性に優れるという観点からは、シリコーンゴムが優位である。
【0030】
次に、第一熱伝導性フィラー及び前記第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーについて説明する。本発明における熱伝導性フィラーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の材料を用いることができ、例えば、窒化ホウ素(BN)、黒鉛、炭素繊維、雲母、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
【0031】
熱伝導性フィラーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば鱗片状、板状、膜状、塊状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平形状等が挙げられる。粒径の大きい第一熱伝導性フィラーの間隙に粒径の小さい第二熱伝導性フィラーが分散して熱伝導パスを形成し易く、また、第一熱伝導性フィラーが樹脂中で配向し易いという観点から、第一熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上であることが好ましい。
【0032】
また、樹脂と、粒径の小さい第二熱伝導性フィラーとを混合してコンパウンドとすることでマトリックスの熱伝導率を向上させるという観点から、粒径の小さい第二熱伝導性フィラーの熱伝導率は5W/mK超であるのが好ましい。なお、第二熱伝導性フィラーの熱伝導率 上限は200W/mKであればよい。当該熱伝導率は、レーザーフラッシュ法という方法で測定されるものである。第二熱伝導性フィラーに用いる材料としては、例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム、炭化珪素、アルミナ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0033】
前駆体としての組成物の体積を100体積%とした場合に、熱伝導性フィラーの割合は10〜80体積%とすることができ、必要とされる熱伝導率等に応じて、適宜決定することができる。熱伝導性フィラーの割合が10体積%未満の場合は、熱伝導効果が小さくなる。また、熱伝導性フィラーの割合が80体積%を超えると、熱伝導性樹脂シート前駆体が第一ギャップを通過する際に、第一ギャップにおける流れの方向に対して略垂直方向に折り畳まれるものの、樹脂間が融着しづらくなるという不具合が生じる。
【0034】
また、前駆体としての組成物の体積を100体積%とした場合に、熱伝導性フィラーにおける第一熱伝導性フィラーと第二熱伝導性フィラーとの混合割合は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜決定することができる。なかもで、第一熱伝導性フィラー40〜60体積%及び第二熱伝導性フィラー2〜20体積%であればよく、第一熱伝導性フィラー45〜55体積%及び第二熱伝導性フィラー5〜15体積%であるのが好ましい。
【0035】
また、本発明の熱伝導性樹脂成形品は、上述の樹脂及び熱伝導性フィラーに加え、補強剤、充填剤、軟化剤、架橋剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、老化防止剤、粘着付与剤、帯電防止剤、練り込み接着剤等の一般的な配合・添加剤は任意に選択することができる。
【0036】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更も本発明に含まれる。以下において、実施例及び比較例を用いて本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0037】
≪実施例1≫
表1に記載の配合にて、シリコーン樹脂成分に架橋剤及び熱伝導性フィラーを2本ロールで練り込み、リボンシート(前駆体としての組成物)を得た。シリコーン樹脂成分としては、東レダウコーニング(株)製の「シリコーンゴムDY32 1005U」、難燃剤成分及び可塑剤成分を用い、熱伝導性フィラーとしては、Momenntive社製の「PT110」(板状窒化ホウ素、平均粒径45μm)及びデンカ(株)製の「DAW‐03」(アルミナ、平均粒径3μm)を用いた。また、架橋剤としては、東レダウコーング(株)製の「RC−4」及び「MR‐53」を用い、難燃剤成分としては、酸化鉄等の金属化合物を含有したものが好ましく、Momenntive社製の「ME−41F」及び「XC87‐905」を用いた。可塑剤成分としては、シリコーンゴムと同骨格を有し、100csから10000csの粘度を要するシリコーンオイルが好ましく、信越化学工業(株)製の「KF−96−3000CS」を用いた。
【0038】
次に、上記のようにして得たリボンシートを
図1に示すゴム用短軸押出機にて、1mmの第一ギャップ及び10mmの第二ギャップを有する垂直配向金型(口金)を用いて、板状窒化ホウ素が厚さ方向に配向した厚さ10mmの熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)を作製し、当該ブロック状物を170℃で30分間の架橋処理を施した。架橋処理後の当該ブロック状物を厚さ方向と垂直にスライス加工し、厚さ500μmの熱伝導性樹脂成形品(シート)1を作製した。
【0039】
[評価試験]
(1)熱抵抗
得られた熱伝導性樹脂シートの厚さ方向の熱抵抗をTIM TESTER1300を用いて2水準の測定圧力で計測し、計測された値を表1に示した。なお、当該測定は定常法にて米国規格ASTM D5470に準拠した。
(2)カット精度
上記のスライス加工時のカット精度は、熱抵抗値に影響を与える。カット精度が悪い場合は、接触界面の熱抵抗が増加し、それに伴い熱抵抗測定時の圧力依存性が強まる。例えば、低い圧力の場合は接触界面の熱抵抗が高いが、高い圧力の場合は、シートが圧縮されることにより接触界面の熱抵抗が小さくなる。
上述のカット精度を測定時圧力500kPa時の熱抵抗値と100kPa時の熱抵抗値との比(100kPa測定時の熱抵抗値/500kPa測定時の熱抵抗値)にて評価し、1.9未満の場合を〇、1.9以上2.3未満の場合を△、2.3以上の場合を×と評価した。結果を表1に示した。
【0040】
≪実施例2≫
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「XGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径35μm)及び「DAW‐03」(アルミナ、平均粒径3μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シート2を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0041】
≪実施例3≫
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「SGPS」(塊状窒化ホウ素、平均粒径12μm)及び「DAW‐03」(アルミナ、平均粒径3μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シート2を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0042】
≪実施例4≫
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「XGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径35μm)及び「SGPS」(塊状窒化ホウ素、平均粒径12μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シート2を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0043】
≪実施例5≫
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「XGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径35μm)、「SGPS」(塊状窒化ホウ素、平均粒径12μm)及び「DAW‐03」(アルミナ、平均粒径3μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シート2を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0044】
≪比較例1≫
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「XGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径35μm)のみを用いた以外は、実施例1と同様にして比較熱伝導性樹脂シート1を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0045】
≪比較例2≫
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「XGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径35μm)のみを用いた以外は、実施例1と同様にして比較熱伝導性樹脂シート2を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0046】
≪比較例3≫
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「HGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径5μm)及びデンカ(株)製の「DAW‐03」(アルミナ、平均粒径3μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして比較熱伝導性樹脂シート3を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0047】
≪比較例4≫
表1に記載の配合にて、シリコーン樹脂成分に架橋剤及び熱伝導性フィラーを2本ロールで練り込み、厚さ2mmのシートを得た。シリコーン樹脂成分として、東レダウコーニング(株)製のシリコーンゴム「DY32 1005U」、難燃剤成分及び可塑剤成分を用い、熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「XGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径35μm)及び「DAW‐03」(アルミナ、平均粒径3μm)を用いた。架橋剤としては、東レダウコーング(株)製の「RC−4」及び「MR‐53」を用い、難燃剤成分としては、酸化鉄等の金属化合物を含有したものが好ましく、Momenntive社製の「ME−41F」及び「XC87‐905」を用いた。可塑剤成分としては、シリコーンゴムと同骨格を有し、100csから10000csの粘度を要するシリコーンオイルが好ましく、信越化学工業(株)製の「KF−96−3000CS」を用いた。
【0048】
次に、2mmシート5枚を重ね合せて厚さ10mmのシートとし、170℃で30分間の架橋処理を施した。架橋処理後の当該シートを厚さ方向と垂直にスライス加工し、厚さ500μmの比較熱伝導性樹脂シート4を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。結果を表1に示した。
【0049】
≪比較例5≫
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「XGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径35μm)及び富士シリシア化学(株)製の「サイリシア740」(微粉末シリカ、平均粒径5μm)を用いた以外は実施例1と同様にして比較熱伝導性樹脂シート5を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示す結果から、本発明によれば、高充填による内部熱抵抗の低減と、カット精度向上による界面熱抵抗の低減と、によって、低い熱抵抗値を発揮する熱伝導性樹脂シートが得られていることがわかる。
【符号の説明】
【0052】
2・・・スクリュー、
4・・・第一ギャップ、
6・・・第二ギャップ、
8・・・流路。
【要約】
安価に大量生産が可能な、高充填による内部熱抵抗の低減と、カット精度向上による界面熱抵抗の低減と、によって、低い熱抵抗値を発揮する熱伝導性樹脂成形品を提供する。樹脂と、第一熱伝導性フィラー及び前記第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと、を含み、前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に配向しており、前記樹脂がシリコーン樹脂、アクリルゴム又はフッ素ゴムであり、前記第二熱伝導性フィラーが5W/mK超の熱伝導率を有すること、を特徴とする熱伝導性樹脂成形品。