特許第6200126号(P6200126)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6200126
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】防虫性試験装置および防虫性試験方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   A01K67/033 502
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-527672(P2017-527672)
(86)(22)【出願日】2016年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2016088873
【審査請求日】2017年5月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593012745
【氏名又は名称】一般財団法人カケンテストセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100161621
【弁理士】
【氏名又は名称】越山 祥子
(72)【発明者】
【氏名】倉本 幹也
(72)【発明者】
【氏名】川田 均
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−172006(JP,A)
【文献】 特開2006−322719(JP,A)
【文献】 特開2004−290144(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/25131(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/00
G01N 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
虫を収容しうる内部空間が形成され、前記内部空間と外とを通じる開口が形成されて、前記開口以外は前記虫が通過するのを不能に閉じられた収容体と、
前記収容体の外側から前記開口を覆いうる板状のカバーと、
前記開口を挟んで前記開口の両側で前記収容体の外面に互いに平行に設けられ、前記収容体の前記開口が形成された面と前記カバーとの隙間を前記虫が通過できない大きさに維持して、前記カバーを前記収容体の外側で摺動可能に保持する一対のレールと、
試料を保持して前記レールに摺動可能に保持され、前記試料を保持した状態で前記レールに摺動可能に保持されたときに、前記試料を前記開口から前記内部空間に露出しうる試料ホルダと、
を備え、
前記試料を保持した前記試料ホルダと前記カバーを、一辺を互いに接した状態で、前記一対のレールの間で摺動させて、前記開口を前記カバーが覆う位置と前記開口を前記試料が覆う位置との間で移動できる防虫性試験装置。
【請求項2】
前記収容体は2以上の前記開口が形成され、かつ、前記開口それぞれに対応して前記一対のレールが形成され、
前記防虫試験装置は、前記開口それぞれに対応して前記カバーおよび前記試料ホルダを備える、請求項1に記載の防虫性試験装置。
【請求項3】
前記収容体は、前記開口が形成された面が前記内部空間の側の面を水平面から傾斜した角度に固定支持される、請求項1または2に記載の防虫性試験装置。
【請求項4】
固定台に対して回動可能で、かつ、定めた角度に固定して、前記収容体を前記固定台に支持する支持機構を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載の防虫性試験装置。
【請求項5】
前記収容体は、前記収容体の外側から前記開口が形成された面の前記内部空間の側に、前記虫を誘引する物質または前記虫が忌避する物質を注入しうる注入口が形成されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の防虫性試験装置。
【請求項6】
前記収容体は、
前記開口が形成された面を構成する板状部材と、
前記板状部材に支持される柱状部材と、
周囲が前記板状部材に固定され、前記柱状部材を前記板状部材に交わる方向に立てたときに、前記柱状部材で張られて前記虫を収容しうる空間を形成する、可撓性を有する網と、
を備え、
前記網を前記板状部材に沿わせてたたむことができる、請求項1から5のいずれか1項に記載の防虫性試験装置。
【請求項7】
前記試料ホルダは、前記試料を互いの間に挟んで保持しうる2つの枠を含み、前記2つの枠はそれぞれ、前記試料を保持した状態で前記開口を覆う位置でレールに保持されたときに、前記開口が形成された面に直交する方向に、前記開口に少なくとも一部が重複する孔が形成されている、請求項1から6のいずれか1項に記載の防虫性試験装置。
【請求項8】
前記内部空間に収容された前記虫に給餌する給餌装置の一面を前記開口の面に合わせて、前記給餌装置を前記収容体の外側で保持する機構を備える、請求項7に記載の防虫性試験装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の防虫性試験装置の前記収容体に虫を入れて、前記カバーを前記レールで保持して前記開口を前記カバーで閉じる工程と、
試料を前記試料ホルダに保持する工程と、
前記試料を保持した前記試料ホルダの一辺を前記カバーの辺に接した状態で、前記一対のレールの間で摺動させて、前記試料が前記開口を覆う位置に前記試料ホルダを移動する試料取付工程と、
前記試料を前記開口から前記内部空間に露出させて定めた時間が経過した後に、前記試料を保持した前記試料ホルダの一辺に前記カバーの辺を接した状態で、前記カバーを前記一対のレールの間で摺動させて、前記試料が前記開口を覆う位置に前記カバーを移動する試料取り外し工程と、
前記試料の効果を計測する計測工程と、
を備える防虫性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防虫性試験装置および防虫性試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間またはペットの生活で、不快な虫または有害な虫を避けるために、殺虫剤、忌避剤および虫除け剤が提案され、実用化されている。それら殺虫剤、忌避剤または虫除け剤の効果を検証するためには、客観的に防虫性能を試験する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1の段落[0021]には、羽化後1〜2週間で未吸血の蚊を入れた布ケ−ジに、実験者の片方の腕に袋状にした試験布帛をはめて差し入れ、定めた時間の止まり数と吸血行動の動作を示した蚊の個体数を数えて、試験品と対照区それぞれの止まり数または吸血行動した固体数から、忌避指数を求めることが記載されている。特許文献2の段落[0023]には、羽化後1〜2週間の未吸血の蚊を入れた布ケ−ジに、試験品と対照品でそれぞれ処理したラットを各々金網袋に入れて固定し、3分後の止まり数と吸血行動の動作を示した蚊の個体数を数えて、試験品と対照区それぞれの数から、忌避指数を求めることが記載されている。
【0004】
特許文献3の段落[0034]に記載されている試験方法では、上部の開口部をメッシュで被覆した樹脂製容器を用意し、その容器底面の両端付近にガラス製シャーレ大サイズをそれぞれ配置する。一方のシャーレに薬剤処理済の検体シートを、他方には無処理のブランクシートを敷く。それぞれのシャーレ中央に、蚊の誘引餌となる5%砂糖水2gを含浸させた脱脂綿シートを入れたシャーレ小サイズを載置き、これを試験装置とする。この試験装置内に6時間程絶食させたヒトスジシマカ100個体(雌雄無選別)を供試し、2時間内に、検体エリアおよびブランクエリアそれぞれのシャーレ大サイズで、蚊の静止が確認できた延べ個体数を記録する。
【0005】
特許文献4の段落[0029]に記載されている試験方法では、内径10cm長さ100cmのアクリル樹脂製円筒を横置させ、その両端から15cmの部分にガーゼを張りフィルターとし、さらに円筒の両端から中央部にプラスチック板による可動式仕切りを設ける。直径10cmのろ紙に試験対象の各種香料成分を0.5g含浸させ、供試ろ紙とする。片端側の筒壁の一部に供試昆虫を入れる為の穴部をあけ、そこからアカイエカ雌成虫25匹を円筒内部へ放し、穴部を閉じる。片端とガーゼフィルターとの間に供試ろ紙を設置してから、円筒中央部の仕切りを取り除き、仕切り位置から他端の方向への供試昆虫の移動数を経時的に観察する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−023439号公報
【特許文献2】特開2006−169209号公報
【特許文献3】特開2010−126486号公報
【特許文献4】特開2013−136524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1または2の試験装置では、蚊を入れた布ケージに試料を入れるときに、蚊が布ケージから逃げ出てしまう可能性がある。特許文献3の試験方法では、先に試料を樹脂製容器の中に設置して後から蚊を入れるので、多数の蚊を入れるのに時間がかかり、試験を開始した時刻を正確に決定することができない。また、検体と比較品との競合試験しかできない。
【0008】
特許文献4の試験装置では、試料の供試ろ紙と蚊はガーゼで隔てられているので、試料に蚊が接触したときの効果を計測する試験を行うことができない。また、誘引餌を用いないので、試験できる効果は限定的であり、また、試料物質の拡散速度が考慮されていない。
【0009】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであり、防虫性試験で試験中に虫が逃げ出ることがなく、より多様な効果をより正確に計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点に係る防虫性試験装置は、
虫を収容しうる内部空間が形成され、前記内部空間と外とを通じる開口が形成されて、前記開口以外は前記虫が通過するのを不能に閉じられた収容体と、
前記収容体の外側から前記開口を覆いうる板状のカバーと、
前記開口を挟んで前記開口の両側で前記収容体の外面に互いに平行に設けられ、前記収容体の前記開口が形成された面と前記カバーとの隙間を前記虫が通過できない大きさに維持して、前記カバーを前記収容体の外側で摺動可能に保持する一対のレールと、
試料を保持して前記レールに摺動可能に保持され、前記試料を保持した状態で前記レールに摺動可能に保持されたときに、前記試料を前記開口から前記内部空間に露出しうる試料ホルダと、
を備え、
前記試料を保持した前記試料ホルダと前記カバーを、一辺を互いに接した状態で、前記一対のレールの間で摺動させて、前記開口を前記カバーが覆う位置と前記開口を前記試料が覆う位置との間で移動できる。
【0011】
本発明の観点に係る防虫性試験方法は、
第1の観点の防虫性試験装置の前記収容体に虫を入れて、前記カバーを前記レールで保持して前記開口を前記カバーで閉じる工程と、
試料を前記試料ホルダに保持する工程と、
前記試料を保持した前記試料ホルダの一辺を前記カバーの辺に接した状態で、前記一対のレールの間で摺動させて、前記試料が前記開口を覆う位置に前記試料ホルダを移動する試料取付工程と、
前記試料を前記開口から前記内部空間に露出させて定めた時間が経過した後に、前記試料を保持した前記試料ホルダの一辺に前記カバーの辺を接した状態で、前記カバーを前記一対のレールの間で摺動させて、前記試料が前記開口を覆う位置に前記カバーを移動する試料取り外し工程と、
前記試料の効果を計測する計測工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試料ホルダとカバーを、一辺を互いに接した状態で、一対のレールの間で摺動させて、開口をカバーが覆う位置と開口を試料が覆う位置との間で移動できるので、防虫性試験で試験中に虫が逃げ出ることがなく、より多様な効果をより正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1に係る防虫性試験装置の斜視図
図2】実施の形態1に係る防虫性試験装置の開口部の正面図
図3】実施の形態1に係る防虫性試験装置の開口部の横断面図
図4】実施の形態1に係る防虫性試験装置の開口部の縦断面図
図5】実施の形態1に係る防虫性試験装置の試料ホルダの斜視図
図6】実施の形態1に係る防虫性試験装置においてカバーと試料ホルダを接触させた状態を示す正面図
図7】実施の形態1に係る防虫性試験装置において試料ホルダを開口に移動させた状態を示す正面図
図8】実施の形態1に係る防虫性試験の過程の一例を示すフローチャート
図9】変形例1に係るレールとカバーの横断面図
図10】変形例1に係る試料ホルダの横断面図
図11】変形例2に係るレールとカバーの横断面図
図12】本発明の実施の形態2に係る防虫性試験装置の収容体部分の斜視図
図13】実施の形態2に係る給餌装置の断面図
図14】実施の形態2に係る防虫性試験装置の支持機構の斜視図
図15】実施の形態2に係る防虫性試験装置の試料と給餌装置をセットした状態を示す断面図
図16】本発明の実施の形態2に係る防虫性試験装置の収容体の展開と折りたたみを示す図
図17】実施の形態2に係る防虫性試験の過程の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図中、同一または相当する部分には、同じ符号を付す。なお、この開示で「虫」とは、人・獣・鳥・魚介類以外の小動物の総称であり、「虫」は、節足動物および環形動物を含む。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る防虫性試験装置の斜視図である。防虫性試験装置は、開口11が形成され、開口11以外は虫が通過するのを不能に閉じられて内部に虫を収容しうる収容体1から構成されている。防虫性試験装置は、収容体1の外側から開口11を覆いうる板状のカバー3を備える。収容体1には、開口11を挟んで開口11の両側で収容体1の外面に、互いに平行な一対のレール2が開口11ごとに設けられている。レール2は、収容体1の開口11が形成された面とカバー3との隙間を虫が通過できない大きさに維持して、カバー3を収容体1の外側で摺動可能に保持する。
【0016】
収容体1の開口11が形成された面は、板状部材10で形成されている。収容体1は、例えば、部分的にまたは全体が透明な樹脂で形成され、内部を観察できる。収容体1は、開口11が形成された面を除いて、部分的にまたは全体に、収容する虫が通過できない網で形成されてもよい。
【0017】
図1の例では、収容体1の1つの面に3つの開口11が形成されている。開口11の数は1以上であればいくつでもよい。また、複数の面に開口11が形成されていてもよい。収容体1は、直方体に限らず、閉じた立体であればどのような形でもよい。収容体1は、例えば、両方の底面が閉じられた円筒でもよい。その場合、円筒面または底面に開口11を形成することができる。
【0018】
なお、収容体1は、開口11以外に開閉できる窓または孔が形成されていても構わない。その窓または孔が閉じられて、収容体1に虫を投入してから、試験を終了するまで、窓または孔を虫が通過できなければよい。そのような窓または孔が形成されていても、収容体1は、開口11以外は虫が通過するのを不能に閉じられて内部に虫を収容することができる。
【0019】
収容体1は、開口11が形成された面を垂直にして置かれるとは限らない。例えば、開口11が形成された面を上または下にして、水平に置いてもよい。あるいは、開口11が形成された面を水平面から傾けてもよい。
【0020】
図2は、実施の形態1に係る防虫性試験装置の開口部の正面図である。図2では、3つの開口11のうち、左の1つは、開口11を閉じるカバー3が開けられた状態を、右の2つは、開口11がカバー3で閉じられた状態を示す。レール2は、一端で互いに向き合う方向に折れ曲がっていて、その端でカバー3はそれ以上移動できないようになっている。カバー3とレール2または収容体1には、カバー3が開口11を塞ぐ位置でカバー3を保持するように、図示しない係止部が形成されている。例えば、カバー3とレール2の一方に、突起が形成されたバネを備え、他方に突起が嵌まるノッチが形成されている。
【0021】
図3は、実施の形態1に係る防虫性試験装置の開口部の横断面図である。図3は、図2のX−X線断面を示す。レール2はそれぞれ、収容体1の外面に突き出て、先が互いに対向する方向の内側に折れ曲がった形状で、収容体1の外面とそれに対向するレール2の対向面でカバー3を挟んで保持する。カバー3は、図3の紙面に直交する方向に摺動可能である。一対のレール2の対向する距離は、開口11の幅より大きい。
【0022】
図4は、実施の形態1に係る防虫性試験装置の開口部の縦断面図である。図4は、図2のY−Y線断面を示す。レール2は、対向する収容体1の外面に平行に形成されている。レール2は、一端で対向する方向の内側に折れ曲がっていて、移動止め21を形成している。開口11から移動止め21より遠くにはカバー3を移動できない。レール2の移動止め21と反対の端は開放されていて、カバー3と同じ断面形状の部材をレール2と収容体1の間に挿入することができる。
【0023】
図5は、実施の形態1に係る防虫性試験装置の試料ホルダの斜視図である。図5は、試料ホルダ4を開いた状態を示す。試料ホルダ4は、1つの辺で互いに回動可能に結合された薄い板A41および板B42から構成されている。板A41および板B42の結合には、例えば、蝶番構造を用いることができる。あるいは、可撓性を有し、繰り返し曲げ伸ばしが可能な樹脂で結合してもよい。板A41および板B42はそれぞれ孔43、44が形成されており、板A41および板B42を重ね合わせるように閉じたときに、孔43、44どうしが重なって1つの貫通した孔を構成する。
【0024】
板A41には、四隅に凹穴45が形成され、板B42には、四隅に突起46が形成されている。板A41と板B42を重ね合わせるように閉じたときに、突起46が凹穴45に嵌合する。板A41および板B42の間にシート状の試料を挟んで閉じると、突起46が凹穴45に嵌合して試料を動かないように固定できる。試料は、例えば、防虫処理が施された布帛、または、防虫処理が施されていない布帛である。試料は布帛に限らず、皮膚、樹皮または葉などを模擬するフィルム、紙または樹脂板などでもよい。板A41および板B42の間にシート状の試料を挟んで閉じると、試料ホルダ4の断面は、カバー3の断面と同じ形状になり、試料を保持した試料ホルダ4をレール2と収容体1の間に挿入して摺動させることができる。
【0025】
なお、板A41と板B42は、互いに回動可能に結合される構成に限らず、別体であってもよい。また、試料を孔43、44からずれないように固定できれば、凹穴45および突起46の構造には限らない。
【0026】
図6は、実施の形態1に係る防虫性試験装置においてカバーと試料ホルダを接触させた状態を示す正面図である。試料9は、板A41および板B42に挟まれ、試料ホルダ4に保持されている。試料9は、試料ホルダ4の孔43、44を塞いでいる。図6は、カバー3が開口11を閉じる位置にあるときに、試料9を保持した試料ホルダ4をレール2と収容体1の間に挿入して、カバー3の辺に試料ホルダ4の辺を接触させた状態を示す。カバー3と試料ホルダ4を、一辺を互いに接したまま一対のレール2の間で摺動させて、カバー3が開口11を覆う位置から、試料ホルダ4に保持された試料9が開口11を覆う位置に移動できる。カバー3と試料ホルダ4は、一辺を互いに接したまま摺動されるから、カバー3と試料ホルダ4の接した辺が開口11を通過するときに、カバー3と試料ホルダ4の間を虫が通過することはできない。
【0027】
図7は、実施の形態1に係る防虫性試験装置において試料ホルダを開口に移動させた状態を示す正面図である。レール2の幅方向で、収容体1の開口11と試料ホルダ4の孔43、44の位置が合っているので、試料ホルダ4の孔43、44が開口11に合う位置に試料ホルダ4を移動させて、試料9を開口11から収容体1の内部空間に露出させることができる。そのとき孔43、44は、開口11が形成された面に直交する方向に、開口11に少なくとも一部が重複する。試料ホルダ4の孔43、44が開口11に合う位置に試料ホルダ4を移動すると、ちょうど、カバー3が移動止め21に当たるようになっている。
【0028】
なお、試料ホルダ4を、孔43、44が開口11に合う位置に保持できるように係止する機構が形成されていれば、レール2の移動止め21はなくてもよい。試料ホルダ4を、開口11の位置に保持した状態では、カバー3を収容体1から離脱してもかまわない。移動止め21でカバー3を保持することができれば、試料ホルダ4を取り外すときに、カバー3がすでに試料ホルダ4に接してレール2に保持されているので便利である。
【0029】
図6および図7は、それぞれ1つの開口11を示すが、他の開口11についても同様に、カバー3と試料ホルダ4を、一辺を互いに接したまま一対のレール2の間で摺動させて、試料ホルダ4を開口11の位置に移動させ、試料9を開口11から収容体1の内部空間に露出させることができる。
【0030】
図7に示す状態から逆に、カバー3と試料ホルダ4を、一辺を互いに接したまま反対に摺動させて、開口11をカバー3で覆う位置に移動させることができる。実施の形態1に係る防虫性試験装置によれば、虫が通過できない状態を保ったまま、開口11をカバー3で覆う位置と、開口11から試料9を露出する位置とを、瞬時に切り換えることができる。
【0031】
試料ホルダ4に保持された試料9を開口11の位置に合わせると、試料9は開口11から収容体1の内部空間に直に露出されるから、試料9が虫を誘引する効果、または、虫が試料9を忌避する効果だけではなく、虫が試料9に接触した場合の効果を確かめることができる。さらに、試料9の担体が布帛のように気体または液体を透過する場合に、試料担体の背面に虫を誘引する物質、例えば誘引餌を置けば、虫を試料9の背面に置いた物質で誘引して、試料9の方に引き寄せることができる。その結果、虫が試料9を忌避する効果、または、虫が試料9に接触した場合の効果を、いわば、より強調または増幅して調べることができる。
【0032】
図8は、実施の形態1に係る防虫性試験の過程の一例を示すフローチャートである。試験に用いる虫として、ある条件で飼育されている一群の虫、例えば、蚊、ノミまたはダニなどがあるものとする。まず、防虫性試験装置および試料9を準備する。防虫性試験装置のカバー3をスライドさせて、収容体1の開口11を開く(ステップS11)。飼育されている一群の虫から、雌雄それぞれ規定の数の個体を抽出して、開口11から収容体1に入れ(ステップS12)、ただちにカバー3をスライドさせて開口11を閉じる(ステップS13)。収容体1に開口11以外の開閉できる窓または孔がある場合は、その窓または孔から虫を収容体1に入れてもよい。その場合、開口11をカバー3で閉じておく。
【0033】
試料9を試料ホルダ4に取り付ける(ステップS14)。試験によっては、試料9の背面に誘引物質、例えば、誘引餌を取り付ける。誘引物質を取り付けるには、例えば、誘引餌の液体を含んだ脱脂綿または濾紙を、試料9の背面側の試料ホルダ4に粘着テープで貼り付けることができる。そして、試料9を保持する試料ホルダ4とカバー3を、互いに一辺を接した状態でスライドさせ、試料ホルダ4に保持された試料9を開口11の位置に設置する(ステップS15)。試料9を開口11に設置した時から、定めた時間、その状態を維持する(ステップS16)。
【0034】
試料9が開口11から収容体1の内部空間に露出されている間に、試料9に止まった個体の数、誘引餌を吸引する行動を示した個体の数、または、試料9に接触して影響を受けた個体の数を、それぞれ、観察して計測することができる。あるいは、収容体1の内部を撮影して、例えば、定めた条件に合う個体を数えたり、虫が試料9に止まっている延べ時間を計測することができる。
【0035】
定めた時間が経過したら、試料ホルダ4とカバー3を、互いに一辺を接した状態でスライドさせ、カバー3を開口11の位置に移動して、試料ホルダ4を収容体1からはずす(ステップS17)。そして、定めた基準に該当する個体を数える(ステップS18)。上述のとおり、試料9が開口11から収容体1の内部空間に露出されている間に、基準に該当する個体を数えたり、開口11をカバー3で覆ってから、下に落ちている個体の数を数えたりする。基準に該当する個体数、または、基準に該当する延べ時間などを、その試料9の効果を表す指標とすることができる。試験対象の試料9と比較する試料9とで同じ試験を行えば、比較対照に対する試験対象の試料9の効果を知ることができる。
【0036】
以上説明したように、実施の形態1に係る防虫性試験装置によれば、防虫性試験で試験中に虫が逃げ出ることがなく、試験の開始から終了までの時間を正確に決めることができる。また、試料9について、試料9が虫を誘引する効果、または、虫が試料9を忌避する効果だけでなく、虫が試料9に直に接触した場合の効果を計測できる。さらに、試料9の背面に誘引物質を配置して、虫が試料9を忌避する効果、または、虫が試料9に接触した場合の効果を、いわば、より強調または増幅して調べることができる。その結果、より多様な効果をより正確に計測することができる。
【0037】
図9は、変形例1に係るレールとカバーの横断面図である。図9は、図2のX−X線断面に相当する。変形例1では、レール2はそれぞれ対向する方向の外側に向かって折れ曲がっている。カバー3は、摺動部32でレール2を抱えるように包み、摺動部32の端は、内側に折れ曲がって、収容体1の外面とレール2の対向面に挟まれている。カバー3がレール2に嵌まっている状態で、カバー3の中央部31は、収容体1の外面に近接している。変形例1でも、レール2は、収容体1の開口11が形成された面とカバー3との隙間を虫が通過できない大きさに維持して、カバー3を収容体1の外側で摺動可能に保持する。
【0038】
図10は、変形例1に係る試料ホルダの横断面図である。試料ホルダ4は、部材A47と部材B48から構成される。部材A47は、変形例1のカバー3と断面の外形が同じであり、摺動部49が両側に形成されている。部材B48は、部材A47の中央の窪みに嵌合する。部材A47および部材B48は、それぞれ中央に孔43、44が形成され、部材B48を部材A47に嵌合させると、孔43、44どうしが重なる。部材A47および部材B48の孔43、44は、収容体1の開口11に重なるように形成されている。部材A47と部材B48の間に試料9を挟んで保持することができる。試料ホルダ4は、試料9を保持した状態でレール2に摺動可能に保持されて、試料9を開口11から収容体1の内部空間に露出する。
【0039】
変形例1では、試料ホルダ4の厚さがレール2に制限されないので、使用できる試料9の厚さの範囲が大きい。また、レール2の上も誘引物質を保持する空間として利用できる。
【0040】
図11は、変形例2に係るレールとカバーの横断面図である。図11は、図2のX−X線断面に相当する。変形例2では、カバー3は、収容体1の外面より内部空間の側に保持される。収容体1には、内側に凹んだ部分の底部12が形成され、レール2は、収容体1の外面が延長した突出部で構成される。カバー3はレール2と底部12の間に挟まれて保持される。収容体1の開口11は底部12に形成されている。変形例2のカバー3および試料ホルダ4には、実施の形態1のカバー3および試料ホルダ4と同じものを用いることができる。
【0041】
変形例2のレール2は、例えば、収容体1の開口11が形成されている面の端まで形成されて、収容体1の辺からカバー3および試料ホルダ4を挿入することができる。あるいは、開口11が形成されている途中までしかレール2が形成されず、レール2のない部分からカバー3および試料ホルダ4を挿入することができる。変形例2では、試料ホルダ4が収容体1の内部空間の側に突き出されて保持されるので、試料9を板状部材10から、内部空間の側に浮き上がらせることができる。
【0042】
実施の形態2.
図12は、本発明の実施の形態2に係る防虫性試験装置の収容体部分の斜視図である。実施の形態2では、収容体1は、開口11が形成された面以外の部分が、虫が通過できない網13で形成されている。また、内部空間に収容された虫に給餌する給餌装置の一面を、収容体1の外側で開口11の面に合わせて保持する機構を備える。さらに、収容体1には、収容体1の外側から開口11が形成された面の内部空間の側に、虫を誘引する物質または虫が忌避する物質を注入しうる注入口15が形成されている。開口11、レール2、カバー3および試料ホルダ4は、実施の形態1と同様である。実施の形態2では、収容体1は、開口11が形成された面が水平面から傾斜した角度に固定支持される。
【0043】
収容体1の開口11が形成された面は、例えば、樹脂または金属の板状部材10で形成されている。板状部材10は透明であってもよい。板状部材10以外の収容体1の外面は、可撓性を有し、収容体1に収容される虫が通過できない大きさの網目の網13で構成されている。板状部材10に対して網13を張って内部空間を形成するために、板状部材10の四隅に柱16が立てられている。柱16を補強するために、板状部材10の一つの辺の両端の柱16の上部は梁で互いに連結されている。柱16は、板状部材10に対して回動可能に支持されている。柱16を板状部材10に対して立てれば、網13を張って虫を収容する内部空間を形成することができる。柱16を板状部材10に沿わせれば、網13を畳むことができる。
【0044】
収容体1の開口11が形成された板状部材10には、開口11を取り囲むように配置されたスタッド14が形成されている。スタッド14には、虫に給餌する給餌装置を取り付けることができる。また、板状部材10には、貫通する注入口15が形成されている。注入口15を通して、虫を誘引する物質、または、虫が忌避する物質を収容体1の内部に注入することができる。
【0045】
図13は、実施の形態2に係る給餌装置の断面図である。給餌装置5はほぼ円柱形であり、円柱形の本体51の一方の底面に凹部52が形成されている。本体51の外径は、試料ホルダ4の孔43、44に嵌まる大きさである。凹部52には、虫の餌になる液体が入れられ、その上を膜53で被って液体を保持する。膜53は円柱形の外側面に形成された溝に嵌められるOリング54で固定される。円柱形の外側面には、給餌装置5をスタッド14に取り付けるための支持板55が設けられている。支持板55には、スタッド14が嵌められる穴56が形成されている。給餌装置5の凹部52が形成された底面を収容体1の開口11の面に合わせて、給餌装置5は収容体1の外側で保持される。
【0046】
給餌装置5は、図示しない温度センサとヒータを備え、温度センサとヒータは、餌の液体を定めた温度に保つ、図示しない制御装置に接続される。餌である液体は、虫と試験の内容に応じて選択される。餌は、例えば、動物の血液、あるいは、砂糖の水溶液または虫が好む樹液である。特に、蚊、ノミまたはダニなどの吸血性の虫に対して、動物の血液を餌として用いる場合は、餌の温度を動物の体温程度に保つように制御する。液体を保持する膜53として、例えば、プラスチックパラフィンフィルム、あるいは、コラーゲンまたはセルロースから作るソーセージの人工ケーシングを用いることができる。膜53として、豚または羊から採取した腸、いわゆるソーセージのケーシングを用いてもよい。給餌の条件を一定に保つためには、天然の素材より、膜圧を均一にできる人工の膜の方が都合がよい。
【0047】
図14は、実施の形態2に係る防虫性試験装置の支持機構の斜視図である。支持機構6は、基盤60、支持枠61および支柱64から構成される。支持枠61は、基盤60の表面に平行に配置されるシャフト62と、シャフト62の両端からシャフト62に直交する2方向に延びるアーム63を備える。支持枠61は、基盤60に平行なシャフト62の周りに回動可能に支持される。支持枠61のアーム63の一端は、長さを調節できる支柱64で、基盤60に支持される。支柱64は、長さが調節可能で、一端は基盤60に回動可能に支持され、他端はアーム63に回動可能に結合している。
【0048】
支持機構6には、例えば、収容体1の開口11が形成された面の一辺を支持枠61のアーム63に接して、支持枠61の上に収容体1が載置される。支持機構6は図示しない固定台に載置される。支持機構6は、固定台に対して回動可能で、かつ、定めた角度に固定して、収容体1を固定台に支持する。収容体1は、図14に示されるように、開口11が形成された面が内部空間の側を上向きにして水平面から傾斜した角度に固定支持される。
【0049】
収容体1の開口11が形成された面に対向する面が、収容体1を支持できる強度を有するなら、開口11が形成された面を上向きにして、収容体1を支持機構6に載置してもよい。例えば、実施の形態1の収容体1の場合は、いずれの辺を支持機構6のシャフト62に沿わせて、載置してもよい。あるいは、収容体1を支持機構6に固定して、収容体1をシャフト62より下に保持できるように基盤60を構成してもよい。
【0050】
支持機構6で、開口11が形成された面の内部空間の側を上向きにして水平面から傾斜した角度にするのは、収容体1に入れた虫が試料9に止まりやすいようにするためである。試験する対象の虫の種類によっては、試料9が収容体1の天井面にある場合や、試料9の面が下向きまたは垂直な場合に比べて、上向きの方が虫は止まりやすいので、試料9の効果をより正確に計測できると考えられる。
【0051】
試験する対象の虫の種類によっては、試料9の面を天井もしくは下向きに傾斜する角度、または垂直にして、収容体1を固定する。支持機構6によれば、虫の生態に応じて、試料9の面が最適な向きになるように、角度を調節して固定することができる。虫の生態に合わせて、試料9の面の角度を調節することにより、虫の試料9への止まり数、または、餌を摂取する個体が多くなる条件で試験を行い、試験試料と比較試料の差をより明確に計測することができる。
【0052】
図15は、実施の形態2に係る防虫性試験装置の試料と給餌装置をセットした状態を示す断面図である。収容体1は、板状部材10の開口11が形成された面が、内部空間の側を上向きにして水平面から傾斜した角度に固定支持されるので、図15では、開口11が形成された面が傾斜して表されている。
【0053】
試料9は試料ホルダ4に挟まれて保持されている。試料ホルダ4は、試料9が開口11から内部空間に露出する位置で、レール2に保持されている。カバー3は、レール2の移動止め21に当たっており、試料ホルダ4は、カバー3と接しているので、試料ホルダ4は、下には動かない。給餌装置5がスタッド14に取り付けられ、給餌装置5の餌を保持する側の底面が試料9に押しつけられて、試料9が開口11の内部空間側の面に一致するように押し込まれている。給餌装置5は、支持板55がスタッド14に嵌められ、支持板55は、例えば、スタッド14に形成されたネジに螺合する2つのナット57で挟まれて固定されている。
【0054】
板状部材10に形成された注入口15を通って、ニードル7が内部空間に突き出ている。ニードル7は、先端に噴射口が形成された中空の管で、配管70の先に取り付けられている。配管70は、図示しないシリンジまたは圧力ボンベの調節弁に接続している。シリンジまたは圧力ボンベは、虫を誘引する物質または虫が忌避する物質を供給する。
【0055】
例えば、収容体1に吸血性の蚊を収容し、給餌装置5に、動物の血液を入れて、誘引餌とする。さらに、開口11が形成された面の内部空間の側に、蚊を誘引する物質として、例えば、二酸化炭素をニードル7で注入する。二酸化炭素は、空気より比重が大きいので、拡散しながら板状部材10に沿って下方に移動し、試料9を被って、蚊を誘引する。二酸化炭素はさらに下方に流れて、網目から外に排出される。
【0056】
収容体1に収容された蚊は、試料9を通して、給餌装置5の血液を吸うことができる。試料9に蚊の吸血行動を抑制または阻む効果がある場合の吸血行動する個体数は、試料9に蚊の吸血行動を抑制および阻む効果がない場合の吸血行動する個体数より少なくなることが予想される。規定の数の蚊を収容体1に収容して、定めた時間に吸血行動した個体数で、試料9の防虫効果を計測できる。
【0057】
吸血した蚊は、吸った血液を体内に溜めているので、蚊を潰して血液が含まれているかどうかを確かめれば、蚊が吸血したか否かを判定できる。そこで、開口11をカバー3で閉じて試料9を除去した後に、蚊を収容体1に収容したまま一旦冷凍し、蚊を1つづつ潰して吸血した個体を数える。予め雌雄それぞれ規定の数の蚊を収容して試験し、雌の蚊のうち吸血した個体数または吸血しなかった個体数を、試験した試料9の防虫性能を表す指標とすることができる。試験に用いた布帛などと同種の担体で、防虫処理を施していない担体を比較試料として同じ試験を行った場合の、吸血した個体数または吸血しなかった個体数と比較して、試験試料と比較試料との差または比を試験試料の防虫性能とすることができる。
【0058】
餌を摂取したか否か以外に、試料9に、虫の行動を抑制、もしくは不能にする効果がある場合、例えば、試料9に接近または接触した虫がノックダウンして、行動不能に陥る場合に、ノックダウンした個体数をもって、防虫効果を測定することができる。
【0059】
図16は、本発明の実施の形態2に係る防虫性試験装置の収容体の展開と折りたたみを示す図である。図16は、図12の収容体1をレール2の方向に見た側面図である。図16では、レール2、カバー3、スタッド14および網13が省略されている。柱16は板状部材10の端に軸19の周りに回動可能に支持されている。柱16は、管状のポールA17と、ポールA17に摺動可能に収容されるポールB18から構成されている。ポールA17は、ポールA17に対してポールB18を伸ばした状態と、縮めた状態を保つことができる。ポールB18の先端は、図12に示されるように隣合う柱16と互いに梁で連結されていてもよい。柱16は、図12に示されるように、網13で囲まれた空間の内部に配置されている。
【0060】
柱16を板状部材10に対して交わる方向に立ててポールB18を伸ばすと、網13を張った状態になる。網13を張った状態から、ポールB18をポールA17に収納して柱16を縮め、柱16を板状部材10に沿わせるように倒せば、網13を板状部材10に寄せて畳むことができる。虫を収容体1の内部空間に収容したままでも、網13を畳むことができる。網13は袋になっているから、網13を畳んでも虫が逃げ出ることはない。
【0061】
網13を畳めるので、虫を冷凍する場合に、冷凍機内で占めるスペースを節約できる。網13を畳むと、内部空間の容積が小さくなるので、速く冷凍できる。また、収容体1を保管するスペースを節約することができる。
【0062】
網13と柱16の構造は、図12および図16に示す構造に限らない。例えば、板状部材10に直交する辺の長さが板状部材10の辺の長さの半分より小さければ、柱16を固定長にしてもよい。また、畳んだときに柱16が重なることを許容するなら、柱16は固定長でも構わない。柱16は、板状部材10の辺に平行な面で回動しなくてもよい。例えば、柱16を補強する梁をなくして、柱16を板状部材10の対角線の方向に倒せるようにしてもよい。
【0063】
収容体1は、網13で囲まれた空間の内部に柱16を配置する構造に限らない。柱16を網13の外に配置して、蚊帳を室内に吊るように、網13の角を柱16に掛ける構成にすることができる。その場合、網13を柱16に掛けたり外したりできれば、柱16は板状部材10に回動可能に支持される必要はなく、柱16を板状部材10に着脱できる構造でもよい。さらに、一部の柱16を支持機構6のアーム63で代用することもできる。
【0064】
図17は、実施の形態2に係る防虫性試験の過程の一例を示すフローチャートである。まず、収容体1の柱16を立てて、収容体1の網13を展開する(ステップS20)。ステップS21〜ステップS25は、図8のステップS11〜ステップS15と同じである。
【0065】
試料9を保持する試料ホルダ4とカバー3を、互いに一辺を接した状態でスライドさせ、試料ホルダ4に保持された試料9を開口11の位置に設置したら(ステップS25)、収容体1を支持機構6に設置する(ステップS26)。ステップS25とステップS26を入れ替えて、収容体1を支持機構6に設置してから、試料ホルダ4を開口11の位置に設置してもよい。
【0066】
次に、給餌装置5を取り付ける(ステップS27)。ここでは、給餌装置5を取り付けた時を、試験の開始時刻とする。虫を誘引する物質を、注入口15から注入し(ステップS28)、定めた時間、その状態を維持する(ステップS29)。虫を誘引する物質を注入するのは、連続して注入してもよいし、間欠して注入してもよい。また、虫を誘引する物質を注入する速さは一定の割合に限らず、変化させてもよい。
【0067】
定めた時間が経過したら、給餌装置5を取り外す(ステップS30)。この場合、給餌装置5を取り外す時が、試験の終了時刻である。次いで、収容体1を支持機構6から取り外し(ステップS31)、試料ホルダ4とカバー3を、互いに一辺を接した状態でスライドさせ、カバー3を開口11の位置に移動して、試料ホルダ4を収容体1からはずす(ステップS32)。試料ホルダ4をはずしてから、収容体1を支持機構6から取り外してもよい。
【0068】
収容体1を支持機構6から取り外したら、収容体1の網13を畳む(ステップS33)。網13を畳んだ収容体1を冷凍庫に入れて、収容体1に収容された虫を冷凍する(ステップS34)。虫を一旦冷凍したら、定めた基準に該当する個体を数える(ステップS35)。例えば、蚊を潰して、吸血した個体を数える。
【0069】
実施の形態1と同様、試料9が開口11から収容体1の内部空間に露出されている間に、基準に該当する個体を数えたり、開口11をカバー3で覆ってから、下に落ちている個体の数を数えたりする。試験を実施している間、給餌装置5を取り付けてから(ステップS27)、給餌装置5を取り外すまで(ステップS31)の間、あるいは、試料ホルダ4を収容体1に設置してから(ステップS25)、試料ホルダ4を収容体1からはずすまで(ステップS32)の間に、定めた基準に該当する虫を計測してもよい。例えば、試料9から定めた範囲に接近した虫の個体数、試料9に止まった虫の個体数、虫が試料9に止まった延べ時間、あるいは、ノックダウンした虫の個体数、などを計測することができる。基準に該当する個体数、または、基準に該当する延べ時間を、その試料9の効果を表す指標とすることができる。
【0070】
防虫処理を施した試料9と、防虫処理を施していない試料9について、同じ条件で飼育した同数の虫で同じ試験を行い、それぞれの吸血行動した個体数から、防虫処理を施した試料9の防虫性能を評価することができる。吸血行動した個体数を収容体1に入れた個体数で正規化するなら、収容体1に入れる個体数を同じにしなくてもよい。
【0071】
防虫処理を施した試料9の場合の収容体1に入れた個体数をNt、防虫処理を施した試料9の場合の吸血行動した個体数をnt、防虫処理を施さない試料9の場合の収容体1に入れた個体数をNc、防虫処理を施さない試料9の場合の吸血行動した個体数をncとして、例えば、防虫処理の効果を以下の式で評価することができる。
(1)吸血行動した個体数の割合の差
nc/Nc−nt/Nt
(2)吸血行動した個体数の割合の比
(nc/Nc)/(nt/Nt) 但し、nt≠0。
(3)吸血行動しなかった個体数の割合の比
(1−(nt/Nt))/(1−(nc/Nc)) 但し、nc≠Nc。
Nt=Ncの場合は、正規化する必要はなく、例えば以下の式でも評価できる。
(4)吸血行動した個体数の差
nc−nt
上述の式は、値が大きいほど防虫効果が高いことを表す。逆に値が小さいほど防虫効果が高いことを表すようにするには、差の符号を逆にするか、比を逆数にする。
【0072】
また、吸血行動した個体数の代わりに、ノックダウンした個体数、もしくは、死亡した個体数、あるいは、試料9に止まった個体数、もしくは、試料9に止まった延べ時間を用いて、防虫効果を評価することができる。
【0073】
上述の実施の形態は、組み合わせて用いることができる。例えば、図14の支持機構6を実施の形態1の収容体1を支持する構造として用いることができる。例えば、収容する虫がダニのように小さく、網13を通過できる場合は、収容体1の外面を樹脂または金属の板で構成する必要がある。その場合に、ダニが試料9に接近しやすいように、開口11が形成された面の内部空間の側を上向きにしたほうがよい。実施の形態2の支持機構6によれば、開口11が形成された面の角度を変えられるので、試料9を取り付ける面を、収容する虫の特性に合わせて最適な角度に設定できる。
【0074】
実施の形態2の防虫性試験装置は、他にも変形が可能である。例えば、支持機構6は、図14の例に限らない。開口が形成された面の角度を変える必要がなければ、支持枠61を回動可能に支持する必要はなく、基盤60に固定することができる。その場合、シャフト62とアーム63の構造である必要はなく、決まった形状の台を用いることができる。
【0075】
さらに、支持機構6を収容体1に取り付けてしまっても構わない。収容体1を回動可能に支持する場合でも、支持機構6を収容体1に固定しておくことができる。その場合に、収容体1の板状部材10に近付けるように支持機構6を折りたためるように構成することができる。
【0076】
また、例えば、給餌装置5を取り付けるのは、収容体1に限らない。例えば、給餌装置5を支持機構6に取り付けるように構成してもよい。支持機構6のアーム63の間に桟を渡して、桟に給餌装置5を取り付けるようにすることができる。また、試料ホルダ4に給餌装置5を取り付けてもよい。または、試料ホルダ4と給餌装置5を一体に構成してもよい。その場合、給餌装置5を支持するのはレール2である。そのとき、レール2と試料ホルダ4を、図9および図10に示すような構造にしてもよい。試料ホルダ4に給餌装置5を取り付ける場合、または、試料ホルダ4と給餌装置5を一体に構成する場合は、試料9と給餌装置5を収容体1に同時に設置できる。
【0077】
給餌装置5を取り付ける構造は、スタッド14とナット57に限らない。例えば、カムが形成され回動可能に支持されるレバーを備える構成でもよい。その場合、レバーを回してカムでスタッド14を挟んで固定することができる。その他、給餌装置5を挟むように形成された枠を設け、枠と給餌装置5の一方にレール2を形成し、他方にレール2が嵌まる溝を形成する構造でもよい。レ−ルに溝をスライド嵌合させて給餌装置5を取り付けることができる。
【0078】
実施の形態2の防虫性試験装置は、上述の試験方法の他にもさまざまな試験に用いることができる。実施の形態2の防虫性試験装置では、実施の形態1の防虫性試験装置と同じ試験ができることは言うまでもない。他に、例えば、注入口15から注入する物質の効果だけを試験することができる。試料ホルダ4に保持させる試料9と、給餌装置5を同じものにして、注入口15から注入する物質を変えて、試験することができる。その場合、試料9に止まった個体数または餌の摂取行動をした個体数、あるいは、試料9に止まった延べ時間を計測して、注入する物質の虫を誘引する効果、または、注入する物質を虫が忌避する効果を評価することができる。注入する物質は、気体に限らず、噴霧する液体または散布する粉体でもよい。
【0079】
他に、皮膚に塗布する忌避剤の効果を試験することもできる。例えば、試料の担体を用いずに、給餌装置5の表面に直に試料を塗布して、収容体1の開口11に設置する。そのためには、給餌装置5を試料ホルダ4に取り付ける構造、または、試料ホルダ4と給餌装置5が一体の構造を用いる。この試験の場合、試料ホルダ4に保持される試料は、給餌装置5に塗布した薬剤である。例えば、給餌装置5の表面に、虫が忌避する成分を含む薬剤を塗布した場合と、その成分を含まない薬剤を塗布した場合とで、試験することができる。その場合、給餌装置5に止まった個体数または餌の摂取行動をした個体数、あるいは、給餌装置5に止まった延べ時間を計測して、その成分を虫が忌避する効果を評価できる。
【0080】
さらに、実施の形態の防虫性試験装置に計測装置を組み合わせることができる。例えば、収容体1の内部に、レーザ光の発光素子と受光素子を、試料9から一定の距離に対向して配列し、レーザ光を横切る個体数を数えることによって、試料9に接近または接触した個体数を計測することができる。また、試料9に止まった虫の個体数、または、虫が試料9に止まった延べ時間を計測するために、撮影装置と録画装置を用いることができる。さらに、撮影した画像から、画像認識装置を用いて、定めた基準に該当する虫を数えることができる。
【0081】
収容体1の内部を撮影する場合、実施の形態2の網13を通して外から撮影するのでは、正確に判定することが困難なので、収容体1の内部に撮影装置を設置してもよい。例えば、柱16に撮影装置を取り付けて、試料9を含む範囲を撮影することができる。
【0082】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態および変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内およびそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0083】
1 収容体
2 レール
3 カバー
4 試料ホルダ
5 給餌装置
6 支持機構
7 ニードル
9 試料
10 板状部材
11 開口
12 底部
13 網
14 スタッド
15 注入口
16 柱
17 ポールA
18 ポールB
19 軸
21 移動止め
31 中央部
32 摺動部
41 板A
42 板B
43 孔
44 孔
45 凹穴
46 突起
47 部材A
48 部材B
49 摺動部
51 本体
52 凹部
53 膜
54 Oリング
55 支持板
56 穴
57 ナット
60 基盤
61 支持枠
62 シャフト
63 アーム
64 支柱
70 配管
【要約】
収容体(1)は、虫を収容しうる内部空間が形成され、内部空間と外とを通じる開口(11)が形成されて、開口(11)以外は虫が通過するのを不能に閉じられている。一対のレール(2)は、開口(11)を挟んで開口(11)の両側で収容体(1)の外面に互いに平行に設けられ、収容体(1)の開口(11)が形成された面とカバー(3)との隙間を虫が通過できない大きさに維持して、カバー(3)を収容体(1)の外側で摺動可能に保持する。試料ホルダは、試料を保持してレール(2)に摺動可能に保持され、試料を保持した状態でレール(2)に摺動可能に保持されたときに、試料を開口(11)から内部空間に露出する。試料を保持した試料ホルダとカバー(3)を、一辺を互いに接した状態で、一対のレール(2)の間で摺動させて、開口(11)をカバー(3)が覆う位置と開口(11)を試料が覆う位置との間で移動できる。
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