(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200166
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】継手用キャップ及び継手用キャップ付継手
(51)【国際特許分類】
B65D 59/06 20060101AFI20170911BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
B65D59/06
F16L57/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-36439(P2013-36439)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-162528(P2014-162528A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年1月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社ケーブイケー
(74)【代理人】
【識別番号】100104466
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 信義
(72)【発明者】
【氏名】金子 智宏
【審査官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−081587(JP,A)
【文献】
特開2012−117555(JP,A)
【文献】
特開2005−163974(JP,A)
【文献】
特開2010−065716(JP,A)
【文献】
特開2010−190280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 59/06
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボデーの外周面と前記ボデーに取り付けられる円筒部材の内周面との間に管差込口を有する継手に取り付けられ、管を挿嵌可能な管差込口を閉鎖する継手用キャップであって、円筒状のキャップ本体と、前記管差込口の全周に渡って挿入可能な円筒挿入部とが備えられ、
前記円筒挿入部は、他の部位よりも厚さが薄く形成された連接部によって前記キャップ本体と連接されることにより、前記管差込口に挿入した状態で、前記管に外挿された前記キャップ本体から分離可能に設けられたことを特徴とする継手用キャップ。
【請求項2】
前記円筒挿入部は、前記管の前記継手への挿入の際の前記管の開口端面による押圧力により、前記キャップ本体から分離可能に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の継手用キャップ。
【請求項3】
前記キャップ本体は前記管が挿入される円筒案内部を備え、前記円筒案内部には、前記管が前記円筒挿入部に当接した状態における前記管の端部の適正位置を示す表示部が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の継手用キャップ。
【請求項4】
前記表示部が、前記管の前記端部の適正位置を示す部位に設けられた表示用孔または表示用切欠きであることを特徴とする請求項3に記載の継手用キャップ。
【請求項5】
前記円筒挿入部は、内周面の挿入側の角部が面取りされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の継手用キャップ。
【請求項6】
前記円筒挿入部は、挿入側の内周面に前記継手の前記ボデーに係止可能な係止突起が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の継手用キャップ。
【請求項7】
前記キャップ本体には、前記継手の外周面に係止可能な係止突起が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の継手用キャップ。
【請求項8】
ボデーの外周面と前記ボデーに取り付けられる円筒部材の内周面との間に管差込口を有する継手の前記管差込口に、請求項1から請求項7のいずれかに記載の継手用キャップが取り付けられていることを特徴とする継手用キャップ付継手。
【請求項9】
ボデーの外周面と前記ボデーに取り付けられる円筒部材の内周面との間に管差込口を有する継手の前記管差込口に、請求項3から請求項7のいずれかに記載の継手用キャップが取り付けられ、前記キャップ本体の前記円筒案内部の内径は、前記継手の前記管差込口の外径とほぼ同一であることを特徴とする継手用キャップ付継手。
【請求項10】
前記継手の前記円筒部材の側部には前記管差込口と連通する挿入確認窓が開口され、前記円筒挿入部は、前記挿入確認窓から目視できる位置まで挿入可能に形成されたことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の継手用キャップ付継手。
【請求項11】
前記円筒挿入部は、前記継手のボデーの色とは異なる色に着色されたことを特徴とする請求項10に記載の継手用キャップ付継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は継手用キャップ、及びこの継手用キャップ付継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、住宅の給排水設備に利用されるヘッダー工法においては、施工現場において、建屋内に引き込んだ通水管をヘッダーに接続する。このような場合には、施工現場において、管材とは別途に用意された継手を用いて通水管とヘッダーとを接続している。このため、接続作業までに継手内にゴミ等の異物が入り込まないようにして継手内のシール部材等を保護するために、予め継手に取り付けられて継手の管差込口を閉鎖する継手用キャップが用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−106895号公報(
図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような継手用キャップでは、例えば上記の例では、通水管と継手とを接続する際には、継手から取り外してその後は不要となるため、接続作業後には単なるゴミになってしまう。このため、作業者が使用後のキャップを回収する煩雑さが生じ、また、回収をし忘れて施工現場に放置されるおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は前述した従来技術の問題点を解決しようとするものであり、接続作業後にも継手から取り外すことなく、回収作業が不要となる継手用キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の採った手段を以下に説明する。本発明の第一の手段の継手用キャップは、ボデーの外周面と前記ボデーに取り付けられる円筒部材の内周面との間に管差込口を有する継手に取り付けられ、管を挿嵌可能な管差込口を閉鎖する継手用キャップであって、円筒状のキャップ本体と、前記管差込口の全周に渡って挿入可能な円筒挿入部とが備えられ、前記円筒挿入部は、
他の部位よりも厚さが薄く形成された連接部によって前記キャップ本体と連接されることにより、前記管差込口に挿入した状態で、前記管に外挿された前記キャップ本体から分離可能に設けられたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の継手用キャップでは、継手の管差込口を閉鎖し、管差込口内にゴミなどの異物が侵入しないようにすることができる。管差込口内にシール部材を取り付けた継手では、侵入した異物によりシール部材が損傷したり、シール性を確保できないという問題を回避することができる。そして、円筒挿入部は、キャップ本体から分離可能に設けられている。よって、例えば円筒挿入部は、継手への管の挿入の際に、管の開口端面に押されてキャップ本体から分離される。したがって、継手に取り付けられた継手用キャップにおいては、管差込口に挿入されて管差込口を閉鎖している状態の円筒挿入部を、キャップ本体から分離して、管差込口の奥側に押し込むことができる。したがって、分離された円筒挿入部は管差込口奥側にそのまま収容保持され、回収する必要はない。円筒状のキャップ本体もそのまま管に外挿された状態となり、回収する必要はない。
また、他の部位よりも厚さが薄く形成された連接部において円筒挿入部とキャップ本体とを連接しておくことによって、円筒挿入部に一定以上の力が加わった際には、この連接部が切断されるようにしておくことができる。よって、キャップ本体から円筒挿入部が容易に分離されるように構成することができる。
【0010】
また、本発明の
第二の手段の継手用キャップは、前述した継手用キャップであって、前記円筒挿入部は、前記管の前記継手への挿入の際の前記管の開口端面による押圧力により、前記キャップ本体から分離可能に設けられたことを特徴とするものである。
【0011】
円筒挿入部のキャップ本体からの分離が、継手への管の挿入の際の管の開口端面による押圧力により可能となるように構成することにより、継手への管の挿入作業のみによって円筒挿入部をキャップ本体から分離させることができる。
【0012】
また、本発明の
第三の手段の継手用キャップは、前述した継手用キャップであって、前記キャップ本体は前記管が挿入される円筒案内部を備え、前記円筒案内部には、前記管が前記円筒挿入部に当接した状態における前記管の端部の適正位置を示す表示部が設けられたことを特徴とするものである
【0013】
継手に挿入される管の開口端面が、管の軸心に対して傾いて切断形成されることがある。特に、施工現場の状況によって管の長さを決める必要があるために施工現場において管を切断する場合、このように管の開口端面が傾いてしまうことが少なくない。本発明では、継手に挿入された管の開口端面の傾きが所定以上であるか否かを確認できるようにするために、管の開口端面のいずれかの部位が円筒挿入部に当接するまで管が挿入された状態において、管の開口端面の他の部位のいずれかが円筒挿入部から所定以上離れていないか確認可能な表示部を設ける。切断された管の端部のいずれもが、この表示部よりも円筒挿入部寄りに位置する場合には、管の開口端面の傾きは適正範囲内であると確認することが可能である。表示部の例としては、適正位置を示す表示用孔や表示用切欠きでも良い。また、挿嵌される管を透視できる透明材料でキャップが形成されている場合には、表示線・表示点などの表示マークなどでも良い。
【0014】
また、本発明の
第四の手段の継手用キャップは、前述した継手用キャップであって、前記表示部が、前記管の前記端部の適正位置を示す部位に設けられた表示用孔または表示用切欠きであることを特徴とするものである。
【0015】
表示用孔や表示用切欠きとすることにより、キャップが不透明材料であっても表示部を設けることができ、また、管の端部を確実に目視することができる。
【0016】
また、本発明の
第五の手段の継手用キャップは、前述した継手用キャップであって、前記円筒挿入部は、内周面の挿入側の角部が面取りされていることを特徴とするものである。
【0017】
管差込口の奥側には、挿入される管の内周面とボデーの外周面とのシールを図るシール部材が取り付けられている。管の挿入時に、円筒挿入部または管の開口端面がこのシール部材に引っかかって、シール部材の表面を傷つけたりシール部材自体をめくりあがらせたりしないようにするために、円筒挿入部の内周面の挿入側の角部について、本発明のように面取りを施すことが望ましい。
【0018】
また、本発明の
第六の手段の継手用キャップは、前述した継手用キャップであって、前記円筒挿入部は、挿入側の内周面に前記継手の前記ボデーに係止可能な係止突起が設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
このような係止突起を設けることにより、継手に対して継手用キャップを確実に固定することができ、継手用キャップを継手に取り付けたまま搬送するような場合に、継手からの継手用キャップの脱落を防止することができる。
【0020】
また、本発明の
第七の手段の継手用キャップは、前述した継手用キャップであって、前記キャップ本体には、前記継手の外周面に係止可能な係止突起が設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
継手に対して挿入される円筒挿入部に係止突起を設けることが困難な場合、継手の外周面に係止可能な係止突起をキャップ本体に設けることにより、前述の例と同様に、継手用キャップを継手に取り付けたまま搬送するような場合に、継手からの継手用キャップの脱落を防止することができる。
【0022】
また、本発明の
第八の手段の継手用キャップ付継手は、ボデーの外周面と前記ボデーに取り付けられる円筒部材の内周面との間に管差込口を有する継手の前記管差込口に、前記いずれかの継手用キャップが取り付けられていることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の
第九の手段の継手用キャップ付継手は、ボデーの外周面と前記ボデーに取り付けられる円筒部材の内周面との間に管差込口を有する継手の前記管差込口に、前記いずれかの継手用キャップが取り付けられ、前記キャップ本体の前記円筒案内部の内径は、前記継手の前記管差込口
の外径とほぼ同一であることを特徴とするものである。
【0024】
管差込口の内径は挿入される管の外径とほぼ同一であるが、この管差込口の内径とほぼ同一の内径の円筒案内部をキャップ本体に設けることにより、管の挿入時に、管の外周面が円筒案内部によって規制され、円筒案内部の軸心に対する管の軸心の傾きを抑制することができる。
【0025】
また、本発明の
第十の手段の継手用キャップ付継手は、前述した継手用キャップ付継手であって、前記継手の前記円筒部材の側部には前記管差込口と連通する挿入確認窓が開口され、前記円筒挿入部は、前記挿入確認窓から目視できる位置まで挿入可能に形成されたことを特徴とするものである。
【0026】
前述したように挿入時の管の開口端面による押圧力によりキャップ本体から分離された円筒挿入部は、そのまま管差込口の奥側まで挿入され得るが、継手の挿入確認窓の位置まで円筒挿入部を挿入可能とすることにより、円筒挿入部が挿入確認窓まで挿入されたかどうかを確認することができる。よって、円筒挿入部を押し込んだ管の先端がどの位置まで挿入されているかについても確認することができる。
【0027】
また、本発明の
第十一の手段の継手用キャップ付継手は、前述した継手用キャップ付継手であって、前記円筒挿入部は、前記継手のボデーの色とは異なる色に着色されたことを特徴とするものである。
【0028】
円筒挿入部を、挿入確認窓の奥に位置するボデーと異なる色に着色することにより、挿入確認窓まで円筒挿入部が到達したかどうかをより明確に判断することができる。このような確認窓による確実な確認を可能とする構成は、特に、建屋内などの暗所となりやすい施工場所での作業時には効果的である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の継手用キャップ及びキャップ付継手は前述のように構成されているので、管差込口を閉鎖することができるとともに、管の挿入作業の際にも、継手用キャップをゴミとして回収する必要が無い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明の継手用キャップの平面図である。
【
図3】
図3は、継手用キャップ付継手の一部断面図である。
【
図4】
図4は、
図3の継手用キャップ付継手に架橋管を挿嵌する際の状態を示す一部断面図である。
【
図5】
図5は、
図4の状態から、さらに架橋管を押し込んだ状態を示す継手用キャップ付継手の一部断面図である。
【
図6】
図6は、継手用キャップ付継手の要部拡大断面図である。
【
図7】
図7は、第二の実施の形態の継手用キャップの平面図である。
【
図8】
図8は、第三の実施の形態の継手用キャップの断面図である。
【0031】
次に、本発明の実施の形態について図を参考にして詳細に説明する。
図3に示されるように、本発明の継手用キャップ1は、継手3の管差込口33側に取り付けられて継手3とともに継手用キャップ付継手2を構成するものである。
【0032】
図1及び
図2に示されるように、合成樹脂製の継手用キャップ1は、全体が円筒状に形成されており、先端側に円筒状のキャップ本体10が、基端側に、このキャップ本体10よりも小径の円筒挿入部12が備えられている。
【0033】
図2に示されるように、キャップ本体10は、円筒案内部11とフランジ14から構成されている。円筒案内部11の先端側開口の内周面は、先端に向かうにつれて開口が拡径するテーパー面13とされており、このテーパー面13により架橋管等の管4の円筒案内部11への挿入が円滑におこなえるように構成されている。また、円筒案内部11の内径は、挿入される管4の外径とほぼ同一に設けられている。よって、管4の円筒案内部11への挿入時に、管4の外周面が円筒案内部11によって規制され、円筒案内部11の軸心に対する管4の軸心の傾きを抑制することができる。また、キャップ本体10の基端外周面には、継手用キャップ1が継手3に取り付けられた際に、継手3に対して安定させるフランジ14が周設されている。
【0034】
円筒案内部11の先端側の外周面には、挿入された管4の端部の位置を確認するための表示用切欠き15が形成されている。本例では、表示用切欠き15は、円筒案内部11の軸心を挟んで対向する位置に2か所形成されており、2か所の表示用切欠き15のいずれかの位置において、管4の端部の位置を確認できるように構成されている。本例では、「表示部」として、このような表示用切欠き15の構成を採用したが、表示用孔としても良い。また、キャップ本体10が透明・半透明の材料により構成され、円筒案内部11内に挿嵌される管4を目視できる場合には、切欠き・孔などは設けずに、管4の端部の適正位置を示す点・線等の表示マークを付けることでも良い。点・線等の表示マークを円筒案内部11の全周に付けた態様では、円筒案内部11の外周周りのいずれにおいても、管4の端部の位置を確認できる。
【0035】
キャップ本体10の基端には、キャップ本体10の内周面よりもわずかに小さい外径とされた円筒挿入部12が連接されている。円筒挿入部12は高さの低い円筒状に形成されており、径方向の厚みは、継手3の後述する管差込口33に挿入可能な長さに設けられている。円筒挿入部12の内周面の挿入側の角部16は面取りがされており、後述するように、円筒挿入部12が管差込口33奥側に挿入される際に、シール部材35に引っ掛かり難いように構成されている。また、角部16よりも奥側の円筒挿入部12の内周面には、継手3側に円筒挿入部12を係止する係止突起17が設けられている。
図3に示されるように、継手用キャップ1はこの係止突起17により継手3に係止固定される。
【0036】
次いで、キャップ本体10と円筒挿入部12とを連接する連接部18について説明する。
図2に示されるように、連接部18は継手用キャップ1の他の部位に比較して厚みが薄く形成されており、一定以上の力を加えると、キャップ本体10と円筒挿入部12とが切断されて容易に分離されるように構成されている。このようにして、
図5に示されるように、管4の挿入時に、管4に押された円筒挿入部12は、キャップ本体10から分離して管差込口33の奥側に移動されるように構成されている。本例では、連接部18は、フランジ14側において、円筒挿入部12とキャップ本体10との境界部分に、斜めに切込みを形成することによって設けられている。
【0037】
また、
図1に示されるように、この連接部18は、キャップ本体10の円筒案内部11の内周面と、円筒挿入部12の外周面との間に、かつ、円筒挿入部12の外周面に沿って形成されている。そして、連接部18は円筒挿入部12の外周面に沿って12か所設けられており、これらのそれぞれの連接部18間には、細い円弧状の連通孔19が12か所設けられている。このように、連接部18の厚みを薄く設けるとともに、さらに連通孔19を設けることにより円筒挿入部12との連接箇所を少なくして、円筒挿入部12をキャップ本体10からより分離しやすく設けている。また、円筒挿入部12に連通孔19を設けることにより、管4の挿嵌接続時において、継手3と管4とによって接続された空間の空気抜きを図ることができるので、これらの接続作業を円滑に行うことができる。
【0038】
次いで、前述した継手用キャップ1が取り付けられる継手3について説明する。
図3に示されるように、継手3は、長い円筒状に形成されている。継手3には、真鍮製のボデー30と、ボデー30の外周面に螺合される円筒部材32とが備えられている。そして、ボデー30の外周面と円筒部材32の内周面とに囲まれる空間に、管差込口33が開口して形成されている。管差込口33の奥端には、ボデー30の外周面の一部が突設して構成される、管差込口33の底部40が形成されている。円筒部材32の外周面には、管差込口33に挿入される円筒挿入部12または管4の先端を目視確認するための挿入確認窓34が開口されている。継手3にはこのような挿入確認窓34を設けることにより、管差込口33へ管4が十分に差し込まれたか、特に、後述するボデー30に装着されたシール部材35まで管4が差し込まれているかを確認することができる。本例では、3つの挿入確認窓34が円筒部材32の周方向に等間隔で設けられており、接続作業時において、継手3の周回りのいずれの方向からも円筒挿入部12または管4の確認が容易となるように構成されている。
【0039】
なお、この挿入確認窓34から円筒挿入部12を明確に確認できるようにするために、円筒挿入部12の色を、挿入確認窓34奥のボデー30の表面の色とは明確に異なる色に着色しても良い。このように継手用キャップ1は円筒挿入部12に着色することにより、特に暗所での作業時に確認を容易にすることができる。また、暗所での継手3に対する管4の挿入確認をさらに容易にするために、円筒挿入部12に蛍光塗料を塗布しても良い。
【0040】
管差込口33内に位置する部位のボデー30の外周面にはシール部材35が取り付けられている。本例では、ボデー30の軸心方向に沿って2つのシール部材35が取り付けられている。また、ボデー30の継手用キャップ1側の先端付近の外周面には、前述した円筒挿入部12に形成された係止突起17が係止される段部36が周設されている。
【0041】
また、円筒部材32の開口端部には、奥側から順に、歯付き座金37、スリップ板38、カシメ金具39が取り付けられており、歯付き座金37を円筒部材32に対して回動容易に取り付けている。
図5に示されるように、歯付き座金37は、管差込口33に挿入された管4の表面に喰い込んで、管4の継手3からの抜け止めを図ることができる。
【0042】
次いで、このように構成された継手用キャップ付継手2への管4の挿入作業について説明する。
図3に示すように、継手用キャップ付継手2においては、継手3に継手用キャップ1が取り付けられている。継手用キャップ付継手2は、工場からの出荷時にあらかじめ継手用キャップ1が取り付けられている。継手用キャップ1は、円筒挿入部12の係止突起17がボデー30の段部36に係止されて継手3側に係止固定されるとともに、円筒挿入部12が管差込口33に挿入されており、施工現場で管4を継手3に挿入するまでは、管差込口33は継手用キャップ1によって閉鎖されている。よって、この間に、継手3の管差込口33内にゴミなどの異物が侵入するおそれを低減させることができ、管差込口33内のシール部材35を保護することができる。
【0043】
次いで、このような継手用キャップ付継手2の継手用キャップ1とは反対側をヘッダー(図示省略)等に接続する。そして、
図4に示すように、施工現場で所望の長さに切断した管4を継手用キャップ1側に挿入して継手3に接続する。最初に、円筒挿入部12に当接するまで管4を円筒案内部11内に挿入する。前述したように、キャップ本体10の円筒案内部11の内径は、挿入される管4の外径とほぼ同一に設けられているので、挿入された管4の軸心は円筒案内部11の軸心に対して所定以上傾かないように構成されており、管4が所定以上に傾いて挿入されることにより、管4とボデー30とのシールが不十分とならないように構成されている。
【0044】
また、切断した管4の開口端面が管4の軸心に対して傾いて斜めに形成されている場合にも、管4とボデー30とのシールが不十分になるおそれがある。そこで、
図6に示されるように、管4の開口端面が斜めになっている場合において、円筒案内部11の表示用切欠き15からみて管4の開口端面が目視できる場合(表示用切欠き15の奥端と開口端面との間に隙間が確認できる場合)には、開口端面の傾きが許容範囲外であるとして、もう一度管4の切断作業をやり直す。このように円筒案内部11の表示用切欠き15によって、切断した管4の開口端面の傾きが所定範囲内であるか否かを容易に判定することができる。なお、本例では表示用切欠き15を円筒案内部11の軸心を挟んで対向する位置に形成することにより、管4を半周強回転させるだけで、開口端面のすべての部位において上記のような隙間が生じないかを確認することができる。
【0045】
そして、
図4の状態からさらに管4を継手3の奥側に押し込むと、管4の開口端面による押圧力によって継手用キャップ1の連接部18が切断されて、キャップ本体10から円筒挿入部12が分離され、
図5に示されるように、さらに管4を押し込むと円筒挿入部12は管差込口33の底部40に当接するまで押し込まれる。この際に、円筒挿入部12の角部16は面取りをされているので、シール部材35を乗り越える際に、角部16がシール部材35に引っ掛かり難い。また、このような円筒挿入部12に連なって管4も挿入されるので、管4の開口端面もシール部材35に引っ掛かり難い。また、継手用キャップ1に連通孔19が設けられているので、管4及び継手3内の空気を連通孔19から押し出しながら挿入作業を行えるので、管4を継手3に円滑に押し込むことができる。
【0046】
ここで、管4がアルミ架橋管等、切断された開口端面に真鍮製のボデーと異なる金属材が露呈する管材の場合、このような金属材と真鍮製のボデーとが接触することによる「電食」のおそれがある。しかしながら本例の場合、管4の開口端面は円筒挿入部12の後ろ側に位置することになるので、管差込口33の底部40と管4の開口端面が接触するおそれはない。よって、管4がアルミ架橋管等の場合であっても、電食のおそれを回避することができる。
【0047】
以上のように管4が管差込口33奥側まで挿入されると、挿入確認窓34から円筒挿入部12を目視することができ、これにより、管4が適切な位置まで挿入されたこと(管4の開口端面がシール部材35の位置より奥側まで来たこと)を確認することができる。そしてこの挿入位置において、歯付き座金37により管4の抜け止めが図られる。このようにして、キャップ本体10は管4に挿嵌された状態で、円筒挿入部12は管差込口33奥側に押し込まれたままで、挿入作業を終えることができ、継手用キャップ1のいずれの部位についても回収する必要性が生じない。
【0048】
本発明の実施の形態は前述のように構成されているが、本発明はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の主旨の範囲内で種々の変更が可能である。なお、以下の例において第1の実施の形態と共通する構成については、第1の実施の形態と同一の符号を図面に付して説明を省略する。
図7に示す第2の実施の形態は、第1の実施の形態より長さの短い連通孔19aとした継手用キャップ1aである。この継手用キャップ1aの連通孔19aは、円筒挿入部12の外周面に沿った長さが、円筒挿入部12の径方向における長さとほぼ同じに設けられている。このように第1の実施の形態の連通孔19のように円弧状に長く形成したものとは異なる連通孔に変更することもできる。また、連通孔19を一切設けない例も用いることができる。
【0049】
次いで、第3の実施の形態について説明する。
図8に示されるように、第3の実施の形態は、円筒挿入部12には第1の実施の形態のような係止突起17を設けず、キャップ本体10のフランジ14から、円筒案内部11と反対側に円筒係止部20を延設し、この円筒係止部20の内周面に、カシメ金具39と係止可能な係止突起21を設けた継手用キャップ1bである。この継手用キャップ1bでは、円筒挿入部12においてボデー30に係止することが困難な場合にも継手3に固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は種々の継手に用いられるキャップとして広く利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,1a,1b;継手用キャップ、2;継手用キャップ付継手、3;継手、4;管、10;キャップ本体、11;円筒案内部、12;円筒挿入部、13;テーパー面、14;フランジ、15;表示用切欠き、16;角部、17;係止突起、18;連接部、19,19a;連通孔、20;円筒係止部、21;係止突起、30;ボデー、32;円筒部材、33;管差込口、34;挿入確認窓、35;シール部材、36;段部、37;歯付き座金、38;スリップ板、39;カシメ金具、40;底部。