(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200170
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】ガスタービンを流れる高温ガスを循環させるシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/28 20060101AFI20170911BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20170911BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20170911BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
F02C7/28 C
F01D25/00 M
F02C7/18 C
F23R3/42 D
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-50202(P2013-50202)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-194734(P2013-194734A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2016年3月3日
(31)【優先権主張番号】13/424,414
(32)【優先日】2012年3月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクター・ジョン・モーガン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ジェームズ・ブラント
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ウィリアム・ジョンソン
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−105076(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0123389(US,A1)
【文献】
特開2010−275953(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/138193(WO,A1)
【文献】
特開2004−3835(JP,A)
【文献】
特開2006−200530(JP,A)
【文献】
特表2012−505991(JP,A)
【文献】
特表2003−526039(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0200752(US,A1)
【文献】
特開2007−120504(JP,A)
【文献】
米国特許第5407319(US,A)
【文献】
特開平6−317102(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0179798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/18 − 7/28
F01D 9/02
F01D 11/00 − 11/10
F01D 25/00
F23R 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンを流れる高温ガス流を循環させるシステムであって、
a.下流面を有するトランジションピースと、
b.前記トランジションピースの下流面に隣接する前縁表面を有する固定ノズルと、
c.前記トランジションピースの下流面と前記固定ノズルの前縁表面との間に形成される間隙と、
d.外面から半径方向に離間するアーチ形内面を有し、前記固定ノズルの前縁表面から前記トランジションピースの下流面に延び、前記間隙を少なくとも部分的に低減する突出部と、
e.前記間隙を横切って延び、前記トランジションピース及び前記固定ノズルの前縁表面と接触するシールと、
f.少なくとも部分的に前記突出部のアーチ形内面、前記固定ノズルの前縁表面、及び前記トランジションピースの下流面の間に形成される循環ゾーンと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記トランジションピースの下流面の少なくとも一部は、耐熱材料で被覆される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記突出部の少なくとも一部は、耐熱材料で被覆される、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記固定ノズルの前縁表面の少なくとも一部は、耐熱材料で被覆される、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
パージ媒体を供給するパージ媒体供給装置を更に備え、媒体供給装置は、前記間隙と流体連通状態にある、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記シールは、該シールを貫通して延びる1以上の通路を備え、前記1以上の通路は、前記パージ媒体供給装置と前記間隙との間の流体連通をもたらす、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記パージ媒体供給装置は、前記シールと前記固定ノズルの前縁表面との間で前記間隙に前記パージ媒体を供給する、請求項5または6に記載のシステム。
【請求項8】
前記固定ノズルの前縁表面を貫通して延びる1以上のパージ通路を更に備え、前記1以上の通路は、前記パージ媒体供給装置と前記間隙との間の流体連通をもたらす、請求項5から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記トランジションピースの下流面を貫通して延びる1以上のパージ通路を更に備え、前記1以上のパージ通路は、前記パージ媒体供給装置と前記間隙との間の流体連通をもたらす、請求項5から8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
ガスタービンであって、
a.下流面を有し、少なくとも部分的に前記ガスタービン内に高温ガス経路を規定するトランジションピースを含む、燃焼器と、
b.前記トランジションピースの下流面に隣接する前縁表面を有し、少なくとも部分的にガスタービンを通る高温ガス経路を規定する、固定ノズルと、
c.前記トランジションピースの下流面と前記固定ノズルの前縁表面との間に形成され、前記高温ガス経路と流体連通する間隙と、
d.外面から半径方向に離間するアーチ形内面を有し、前記固定ノズルの前縁表面から前記トランジションピースの下流面に延び、前記間隙を少なくとも部分的に低減する突出部と、
e.前記間隙を横切って延び、前記トランジションピース及び前記固定ノズルの前縁表面と接触するシールと、
f.少なくとも部分的に前記突出部のアーチ形内面、前記固定ノズルの前縁表面、及び前記トランジションピースの下流面の間に形成され、前記高温ガス経路と流体連通する循環ゾーンと、
を備える、ガスタービン。
【請求項11】
前記トランジションピースの下流面の少なくとも一部は、耐熱材料で被覆される、請求項10に記載のガスタービン。
【請求項12】
前記突出部の少なくとも一部は、耐熱材料で被覆される、請求項10または11に記載のガスタービン。
【請求項13】
前記固定ノズルの前縁表面の少なくとも一部は、耐熱材料で被覆される、請求項10から12のいずれかに記載のガスタービン。
【請求項14】
パージ媒体を供給するパージ媒体供給装置を更に備え、媒体供給装置は、前記間隙と流体連通状態にある、請求項10から13のいずれかに記載のガスタービン。
【請求項15】
前記シールは、該シールを貫通して延びる1以上の通路を備え、前記パージ媒体供給装置は、前記パージ媒体を前記1以上のパージ通路から前記間隙に供給する、請求子う14に記載のガスタービン。
【請求項16】
前記パージ媒体供給装置は、前記シールと前記固定ノズルの前縁表面との間で前記間隙に前記パージ媒体を供給する、請求項14または15に記載のガスタービン。
【請求項17】
前記固定ノズルの前縁表面を貫通して延びる1以上のパージ通路を更に備え、前記パージ媒体供給装置は、前記パージ媒体を前記1以上の通路から前記間隙へ供給する、請求項14から16のいずれかに記載のガスタービン。
【請求項18】
前記トランジションピースの下流面を貫通して延びる1以上のパージ通路を更に備え、前記パージ媒体供給装置は、前記パージ媒体を前記1以上の通路から前記間隙へ供給する、請求項14から17のいずれかに記載のガスタービン。
【請求項19】
下流面を有するトランジションピースと前縁表面を有する固定ノズルとの間に形成される間隙に流入する高温ガスを循環させる方法であって、前記固定ノズルの前縁表面は、外面から半径方向に離間するアーチ形内面を有する突出部を含み、前記突出部は、前記固定ノズルの前縁表面から前記トランジションピースの下流端部に向かって延び、前記トランジションピース及び前記固定ノズルは、少なくとも部分的に高温ガス経路を定めるようになっており、
a.前記トランジションピースを通って高温ガスを流す段階と、
b.前記高温ガスの一部を前記間隙に流す段階と、
c.前記高温ガスの一部を前記固定ノズルの突出部のアーチ形内面に沿って前記トランジションピースの下流面に向ける段階と、
d.前記高温ガスの一部を前記トランジションピースの下流面の少なくとも一部を横切って流す段階と、
e.前記高温ガスの一部を前記トランジションピースの下流面から離れる方向に向ける段階と、
f.前記高温ガスの一部を前記高温ガス経路に流す段階と、
を含む、方法。
【請求項20】
パージ媒体を前記間隙に流す段階を更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的にはガスタービンを流れる高温ガスを循環させるシステム及び方法に関する。詳細には、本システム及び方法は、ガスタービン内のトランジションピースと固定ノズルとの間の間隙に吸い込まれる高温ガスの循環に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用ガスタービンは、一般にガスタービンの中心軸線の周りで環状アレイに配置された複数の燃焼器を含む。燃焼高温ガスは、各燃焼器からトランジションピースを通って第1段の固定ノズルを横切って流れる。トランジションピース及び固定ノズルは異なる材料で形成され、運転時に異なる温度にさらされるので、各々は、ガスタービンサイクルが種々の運転モードを経る際に異なる熱的膨張レベルを受ける場合がある。その結果、トランジションピース及び第1段の固定ノズルは、相互に半径方向、円周方向、及び軸方向に移動する場合がある。また、同様の相対移動は、燃焼プロセスの動的脈動の結果として生じる場合がある。
【0003】
一般に、熱的膨張の変動は、トランジションピースと第1段の固定ノズルとの間に間隙を与えることで対処される。更に、1以上のシールを設けて間隙をシールして、結果的に高温ガス経路に漏洩する冷気を低減することができる。しかしながら、間隙を横切って流れる高温ガスの高い圧力及び温度によって、高温ガスの少なくとも一部は、間隙に吸い込まれてシールに衝突して流れ、結果的にシールが経時的に劣化する場合がある。
【0004】
シールを冷却するための及び高温ガスを間隙からパージするための1つの方法は、間隙をパージするのに及び/又はシールを冷却するのに十分な圧力で加圧空気等のパージ媒体を間隙に流す段階を含む。本方法は一般に有効であるが、大きな間隙の場合、間隙を有効にパージするために大容量のパージ媒体が必要になる。その結果、大容量の未燃パージ媒体及び/又は未混合パージ媒体により、限定するものではないが、窒素酸化物(NOx)及び/又は一酸化炭素(CO)等の望ましくない燃焼排出物のレベルが増える可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Power Systems for the 21st Century-“H" Gas Turbine Combined-Cycles, R.K. Matta, G.D. Mercer, R.S. Tuthill, GE Power Systems, Schenectady, NY
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、間隙に吸い込まれる高温ガスを循環させるための改善されたシステム及び方法が有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様及び利点は、以下の説明に記載しており、又はその説明から自明なものとすることができ、或いは本発明を実施することにより知ることができる。
【0008】
本発明はガスタービンを流れる高温ガス流を循環させるシステムである。本システムは、下流面を有するトランジションピースと、トランジションピースの下流面に隣接する前縁表面を有する固定ノズルと、トランジションピースの下流面と固定ノズルの前縁表面との間に形成される間隙と、外面から半径方向に離間するアーチ形内面を有する突出部を備える。突出部は固定ノズルの前縁表面からトランジションピースの下流面に延び、間隙を少なくとも部分的に低減する。シールは、間隙を横切って延び、トランジションピース及び固定ノズルの前縁表面と接触することができる。循環ゾーンは、少なくとも部分的に突出部のアーチ形内面、固定ノズルの前縁表面、及びトランジションピースの下流面の間に形成することができる。
【0009】
本発明の他の実施形態は、下流面を有するトランジションピースを含む燃焼器を備えるガスタービンである。トランジションピースは、少なくとも部分的にガスタービン内に高温ガス経路を規定する。前縁表面を有する固定ノズルは、トランジションピースの下流面にほぼ隣接する。固定ノズルは、少なくとも部分的に高温ガス経路を定める。間隙は、少なくとも部分的にトランジションピースの下流面と固定ノズルの前縁表面との間に形成され、高温ガス経路と流体連通することができる。突出部は、外面から半径方向に離間するアーチ形内面を有し、前記固定ノズルの前縁表面から前記トランジションピースの下流面に延びる。突出部は、間隙を少なくとも部分的に低減することができる。シールは間隙を横切って延び、トランジションピース及び固定ノズルの前縁表面と接触することができる。循環ゾーンは、少なくとも部分的に突出部のアーチ形内面、固定ノズルの前縁表面、及びトランジションピースの下流面の間に形成することができる。循環ゾーンは、高温ガス経路と流体連通することができる。
【0010】
下流端部を有するトランジションピースは、少なくとも部分的にガスタービン内に高温ガス経路を定める。固定ノズルは、トランジションピースの下流端部に隣接する前端を有する。固定ノズルの前端は、少なくとも部分的にガスタービンを通る高温ガス経路を定める。間隙は、トランジションピースの下流端部と固定ノズルの前端との間に形成され、間隙は、高温ガス経路と流体連通する。外面から半径方向に離間するアーチ形内面を有する突出部は、固定ノズルの前端からトランジションピースの下流端部に向かって延びる。突出部は、少なくとも部分的に間隙を低減することができる。フレーム後端と突出部の外面に接触するシールは、間隙を横切って延び、第1のボリュームは少なくとも部分的に突出部の外面、及びトランジションピースの下流端部の間に形成される。第2のボリュームは、少なくとも部分的に突出部のアーチ形内面、固定ノズルの前端、及びトランジションピースの下流端部の間に形成することができ、第2のボリュームは高温ガス経路と流体連通する。
【0011】
本発明は下流面を有するトランジションピースと前縁表面を有する固定ノズルとの間に形成される間隙に流入する高温ガスを循環させる方法を含み、固定ノズルの前縁表面は、外面から半径方向に離間するアーチ形内面を有する突出部を含む。突出部は、固定ノズルの前縁表面からトランジションピースの下流端部に向かって延び、トランジションピース及び固定ノズルは、少なくとも部分的に高温ガス経路を定める。本方法は、トランジションピースを通って高温ガスを流す段階と、高温ガスの一部を間隙に流す段階と、高温ガスの一部を固定ノズルの突出部のアーチ形内面に沿ってトランジションピースの下流面に向ける段階と、高温ガスの一部をトランジションピースの下流面の少なくとも一部を横切って流す段階と、高温ガスの一部をトランジションピースの下流面から離れる方向に向ける段階と、高温ガスの一部を高温ガス経路に流す段階とを含む。
【0012】
当業者であれば、本明細書を精査するとこのような実施形態の特徴及び態様、並びにその他がより理解されるであろう。
【0013】
添付図の参照を含む本明細書の残りの部分において、当業者にとって最良の形態を含む本発明の完全且つ有効な開示をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の1以上の実施形態によるガスタービンの一部の断面図。
【
図3】
図2に示すガスタービンの一部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、その1以上の実施例が添付図面に例示されている本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の同様の又は類似した要素を示すために、図面及び説明において同様の又は類似した表示を使用している。本明細書で使用される用語「上流側」及び「下流側」は、流体経路における構成要素の相対的位置を示している。例えば、流体が構成要素Aから構成要素Bに流れる場合、構成要素Aは、構成要素Bの上流側にある。逆に、構成要素Bが構成要素Aから流体を受け取る場合、構成要素Bは構成要素Aの下流側にある。更に、本明細書で使用される用語「第1」、「第2」、及び「第3」は、ある構成要素を別の構成要素と区別するために同義的に用いることができ、個々の構成要素の位置又は重要性を意味することを意図したものではない。
【0016】
各実施例は、本発明の限定ではなく、例証として提供される。実際に、本発明の範囲又は技術的思想から逸脱することなく、種々の修正形態及び変形形態を本発明において実施できることは、当業者であれば理解されるであろう。例えば、1つの実施形態の一部として例示され又は説明される特徴は、別の実施形態と共に使用して更に別の実施形態を得ることができる。従って、本発明は、そのような修正及び変形を特許請求の範囲及びその均等物の技術的範囲内に属するものとして保護することを意図している。
【0017】
本発明の種々の実施形態は、ガスタービンを流れる高温ガスを循環させるシステム及び方法を含む。本システムは、全体的には後端を有するトランジションピースと、トランジションピースの後端にほぼ隣接する前端を有する固定ノズルとを含む。トランジションピース及び固定ノズルは、ガスタービン内に取り付けることができ、トランジションピースの後端と固定ノズル前端との間に間隙が形成される。間隙は、少なくとも部分的に固定ノズルの前端からトランジションピースの後端に向かって延びる外面から半径方向に離間するアーチ形内面を有する突出部によって減少させることができる。トランジションピースに接触するシール及び突出部の外面は、間隙を横切って延びることができる。シールは、少なくとも部分的に突出部の外面とトランジションピースの後端との間にボリュームを規定することができる。ボリュームから略半径方向内側の循環ゾーンは、少なくとも部分的に突出部のアーチ形内面、固定ノズルの前端、及びトランジションピースの後端の間に定めることができる。特定の実施形態において、トランジションピース及び固定ノズルは、少なくとも部分的にガスタービンの一部を通って延びる高温ガス経路を規定する。更に、間隙及び/又は循環ゾーンは、高温ガス経路と流体連通することができる。このようにして、高温ガスがトランジションピースを通って間隙を横切って流れる際に、高温ガスの少なくとも一部は間隙に吸い込まれることができる。高温ガスが間隙に入ると高温ガスは循環ゾーンに流入して、突出部のアーチ形表面によってトランジションピースの後端の一部に向かってシールから離れる方向に案内できる。高温ガスがトランジションピースの後端に向かって流れると、流れ方向は反転して、高温ガスは、高温ガス経路に向かって戻される。本発明の例示的な実施形態は、以下に例示的にガスタービンを流れる高温ガスを循環させるためのシステムとの関連において説明するが、当業者であれば、本発明の実施形態は、何らかのターボ機械に適用でき、請求項に記載しない限りガスタービンに限定されるものではないことを容易に理解できるはずである。
【0018】
図1は、ガスタービン10の概略図であり、
図2は、本発明の1以上の実施形態によるガスタービンの一部の断面図であり、
図3は、
図2に示すガスタービンの一部の拡大断面図である。
図1に示すように、ガスタービン10は、圧縮機12、圧縮機12と流体連通する燃焼器14、及び燃焼器14の下流でこれに流体連通するタービン16を含むことができる。単一の燃焼器14が示されているが、ガスタービン10は、圧縮機12及びタービン16と流体連通する複数の燃焼器14を含むことができる。運転時、空気等の作動流体18は圧縮機12を流れて、圧縮された作動流体が燃焼器14に供給される。圧縮された作動流体は燃料と混合して燃焼器14内で着火され、結果的に、急膨張する高温ガス20が生成される。高温ガス20は、一般に燃焼器14及びタービン16を通って延びる高温ガス経路22に沿って流れる。高温ガスがタービン16を通って流れると、高温ガスからのエネルギは、タービン軸に取り付けられた複数のタービンバケットに伝達される、タービン軸が回転して機械仕事を生成する。生成される機械仕事は、圧縮機12又は電力を発生する発電機(図示せず)等の他の外部負荷を駆動することができる。
【0019】
図2及び3に示すように、ガスタービンは、高温ガス経路22を流れる高温ガス20の流れを循環させるシステム30を含むことができる。システム30は、少なくとも部分的に燃焼器14を通って延びるトランジションピース32を含むことができる。
図1に示す燃焼器14で生成された高温ガス20は、一般に
図2及び3に示すようにトランジションピース32の上流端部34を流れ、トランジションピース32の下流端部36から流出する。トランジションピース32は、一般に外面40から半径方向に離間した内面38を含む。
図3に示すように、下流端部36は、内面38と外面40との間を略半径方向に延びると共に下流端部36の周りを円周方向に延びる下流面42を含む。下流面42は、少なくとも部分的に平坦とすること及び/又は少なくとも部分的にアーチ形状とすることができる。特定の実施形態において、
図2及び3に示すように、下流端部36は、支持フレーム44を含むことができる。
図3に示すように、支持フレーム44は、少なくとも部分的に下流端部36を円周方向に取り囲むことができる。支持フレーム44は、下流端部36に溶接すること又はトランジションピース32の一体部品として鋳造することができる。
【0020】
特定の実施形態において、下流面42は、少なくとも部分的に支持フレーム44の少なくとも一部によって定めることができる。トランジションピース32及び/又は支持フレーム44は、トランジションピース32を流れる高温ガスに起因する高温に耐えるようにデザインされた任意の材料で作ることができる。特定の実施形態において、下流端部36は、これを貫通する1以上のパージ通路46を含むことができる。例えば、1以上のパージ通路46は、支持フレーム44の一部を貫通して延びることができる。
図2及び3に示すように、トランジションピース32は、限定されるものではないが、1以上のシール50をトランジションピース32の下流端部36に結合するスロット、クリップ、又はボルト等の1以上の結合機構を含むことができる。特定の実施形態において、限定されるものではないが、支持フレーム44及び/又は下流面42等の下流端部36の少なくとも一部は、限定されるものではないが、熱障壁コーティング等の耐熱材料で被覆することができる。トランジションピース32は、燃焼器ケーシング(図示せず)又はガスタービン10の任意の静的構造体に取り付けることができる。
【0021】
図2及び3に示すように、固定ノズル52は、トランジションピース32の下流端部36の略下流に配置することができる。
図2に示すように、固定ノズル52は、外側プラットフォーム56から半径方向に離間した内側プラットフォーム54を含むことができる。1以上の翼形部58は、内側プラットフォーム54と外側プラットフォーム56との間を延びることができる。
図2及び3に示すように、固定ノズル52は、内側プラットフォーム54及び/又は外側プラットフォーム56の前端62に配置される1以上の前縁表面60を含むこともできる。前縁表面60は、略平坦及び/又はアーチ形とすることができ、少なくとも部分的に内側プラットフォーム54及び/又は外側プラットフォーム56の前端62を横切って半径方向及び円周方向に延びることができる。
図3に示すように、固定ノズル52は、1以上の通路を含むこともでき、固定ノズル52を通るパージ媒体及び/又は冷却媒体が流れる。特定の実施形態において、前縁表面60は、該前縁表面60を貫通して延びる1以上のパージ通路66を含むことができる。高温ガス経路22は、少なくとも部分的に固定ノズル52及びトランジションピース32によって形成することができる。このようにして、高温ガス20は、タービン16に流入する際に、トランジションピース32を流れて固定ノズル52を横切ることができる。
【0022】
間隙68は、少なくとも部分的にトランジションピース32の下流面42と固定ノズル52の前縁表面60との間に形成することができる。間隙は、高温ガス経路22を貫通して延びる中心線70に対して略軸方向とすることができる。間隙68は、表面42、60がガスタービン10の作動時に接触しないように、トランジションピース32の下流面42と固定ノズル52の前縁表面60との間に十分な離隔距離を有している。特定の実施形態において、間隙68は、高温ガス経路22と間隙68との間の流体連通が可能なように十分に広くすることができる。ガスタービン10が種々の運転状態を繰り返すと間隙68は増大及び低減する場合がある。
【0023】
特定の実施形態において、
図2及び3に示すように、突出部72は、全体的には固定ノズル52の前縁表面60からトランジションピース32の下流面42に向かって延びる。このようにして、突出部72は少なくとも部分的に、トランジションピース32の下流面42と固定ノズル52の前縁表面60との間の間隙68を減少させる、
図3に示すように、突出部72は、全体的にはアーチ形内面74を含む。アーチ形内面74は、固定ノズル52の前縁表面60から突出部72の遠位端76まで延びることができる。遠位端76は任意の形状とすることができる。例えば、限定されるものではないが、遠位端76は、略平坦、アーチ形、スロット付き、溝付きとすることができる。アーチ形内面74は、全体的に高温ガス経路22の中心線70に対して半径方向外側に湾曲することができる。アーチ形内面74の半径は、アーチ形内面74に沿ってトランジションピース32の下流面42へ流れるのを促進することができる任意の半径とすることができる。
【0024】
1以上のパージ通路78は、突出部72の少なくとも一部を貫通して延びることができる。以下に「循環ゾーン80」と呼ぶ第2のボリュームは、少なくとも部分的に固定ノズル52の前縁表面60、突出部72のアーチ形内面74、及びトランジションピース32の下流面42の間に形成することができる。循環ゾーン80は、高温ガス経路22と流体連通することができる。このようにして、限定されるものではないが、循環ゾーンに流入することができる高温ガス等の何らかの流体は、シール50から離れる方向に向かい、高温ガス経路22に戻ることができる。また、突出部72は、アーチ形内面74から略半径方向に離間した外面82を含む。外面82は、全体的には突出部72の遠位端76から固定ノズル52の前縁表面60まで延びる。外面82は、少なくとも部分的にアーチ形及び/又は少なくとも部分的に平坦とすることができる。
【0025】
特定の実施形態において、少なくとも一部の固定ノズル52の前縁表面60の及び/又は突出部72は、限定されるものではないが、熱障壁コーティング等の耐熱材料83を含むことができる。固定ノズル52は、タービンケーシング(図示せず)又はガスタービン10の任意の略静的構造体に取り付けることができる。特定のガスタービン設計において、トランジションピース32及び固定ノズル52は、同じ静的構造体に取り付けること、又は他の構成において異なる静的構造体に取り付けることができる。各静的構造体は、異なる熱的膨張率とすることができる。結果的に、間隙68は、ガスタービンが種々の運転状態を繰り返す際に増大又は減少することができる。
【0026】
シール50は、全体的にはトランジションピース32と固定ノズル52との間で間隙68を横切って延びる。シール50は、高温ガス経路22を流れる高温ガス20による熱応力に耐えるように設計された任意の形式のシールを含むことができる。シール50は、トランジションピース32の下流端部36に結合して、間隙68を横切って前縁表面60に延びることができる。別の方法として、シール50は、前縁表面60に結合して、間隙68を横切ってトランジションピース32の下流端部36に延びることができる。シール50は、バネ付勢されてシール50とトランジションピース32及び/又は固定ノズル52の間の接触を強化及び/又は維持する。特定の実施形態において、シールは、トランジションピース32の下流端部36から間隙68を横切って延び、突出部72の外面82から略半径方向外側の所定位置で前縁表面60と接触状態にある。この構成において、シール50は、突出部72の外面82と接触しなくても良い。このようにして、循環ゾーンを流れる高温ガス20がシール50に到達する可能性は低いのでシール50上の熱応力が低減される。更に、シール50、突出部72の外面82、及びトランジションピース32の下流面42は、少なくとも部分的に循環ゾーン80と流体連通するパージボリューム84を形成することができる。特定の実施形態において、シール50は、シール50を貫通して延びる1以上の通路86を含むことができる。1以上の通路86により、流体はシールを通ってパージボリューム84に流入する。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、
図3に示すように、高温ガス20は、トランジションピース32を通り、間隙68を横切って固定ノズル52を通過して流れることができる。高温ガス20が間隙68を横切って流れる際に、高温ガス20の一部は、間隙68に吸い込まれる。高温ガス20が間隙68に流入すると、固定ベーン52の前縁表面60によって循環ゾーン80に向けられる。高温ガス20が循環ゾーン80に流入すると、突出部72のアーチ形内面74は、高温ガス16をシール50から離れる方向でトランジションピース32の下流面42に向かわせるので、シール50の熱応力が減少する。トランジションピース32の下流面42は、高温ガス20を高温ガス経路22に戻す方向に向け直すことができ、高圧ガス経路22では、循環された高温ガス20が、高温ガス経路22を流れる高温ガス20の残部と混合するので、シール50上の熱応力が減少する及び/又は少なくとも部分的にガスタービン10の効率が高くなる。追加的に又は別の方法として、耐熱コーティング83は、固定ノズル52の前縁表面60、突出部72、及び/又はトランジションピース32の下流面42を保護することができる。
【0028】
別の実施形態において、システム30は、パージ媒体供給装置88を含むことができる。例えば、限定されるものではないが、パージ媒体供給装置88は、圧縮機12及び/又は蒸気ライン等の外部パージ媒体供給装置(図示せず)を含むことができる。パージ媒体供給装置88は、限定されるものではないが、加圧空気又は蒸気等のパージ媒体90を間隙68に供給することができる。特定の実施形態において、パージ媒体90は、シール50と突出部72の外面82との間のパージボリューム84に流入することができる。このようにして、パージ媒体90は、1以上のシール50、突出部72、固定ノズル52の前縁表面60、又はトランジションピース32の下流面42の冷却を可能にする。更に、パージ媒体90は、突出部72の遠位端76とトランジションピース32の下流面42との間を流れて循環ゾーン80へ流入することができる。結果的に、パージ媒体90は、高温ガス20が循環ゾーン80からパージボリューム84へ漏洩することを低減及び/又は阻止することができる。結果的に、パージ媒体90は、循環ゾーン80を通って高温ガス経路22に戻るように高温ガス20を駆動するための駆動力を循環ゾーン80に与えることができる。追加的に又は別の方法として、パージ媒体90は、1以上のトランジションピース32の下流端部のパージ通路46を通ってパージボリューム84及び/又は循環ゾーン80に流入することができるので、少なくとも部分的にトランジションピース32を冷却すること及び/又は高温ガス20が循環ゾーン80を通って流れるように駆動力を与えることができる。追加的に又は別の方法として、パージ媒体90は、1以上の固定ノズル52の前縁パージ通路66及び/又は1以上の突出部のパージ通路78を流れることができるので、少なくとも部分的に前縁表面60及び/又は突出部72を冷却すること、及び/又は高温ガス20が循環ゾーン80を循環して高温ガス経路22に流入するように、循環ゾーン80に駆動力を付与することはできる。
【0029】
システム30は、固定ノズル52の外側プラットフォーム56とトランジションピース32の下流面42との間に例示され概略的に説明されているが、当業者には、システム30を同じ目的で固定ノズル52の内側プラットフォーム54の前縁表面60とトランジションピース32の下流面42との間に配置して、同じ結果を得ることができることは自明である。更に、システム30は、単一のトランジションピース32及び単一の固定ノズル52で例示され説明されているが、システム30は、同じ目的でガスタービン10内に複数のトランジションピース及び複数の固定ノズルを配置して、同じ結果を得ることができる。
【0030】
図1及び3に関して例示及び説明されるシステム30は、固定ノズル32の前縁表面60とトランジションピース32の下流面42との間の間隙68に流入する高温ガス20の流れを循環させる方法を提供することができる。本方法は、概して高温ガス20をトランジションピース32に流して、高温ガス20の一部を間隙68に流す段階を含む。本方法は、高温ガス 20の一部を固定ノズル32の突出部72のアーチ形内面74に沿ってトランジションピース32の下流面42に向ける段階と、高温ガス20の一部をトランジションピース32の下流面42の少なくとも一部を横切って流す段階と、高温ガス20の一部をトランジションピース32の下流面42から離れる方向に向ける段階と、高温ガス20の一部を高温ガス経路22に流す段階とを更に含む。別の実施形態において、本方法は、パージ媒体90を間隙68に流す段階を含む。
【0031】
図2及び3に関して例示及び説明される種々の実施形態は、ガスタービン10を流れる高温ガス20を循環させる、従来のシステムよりも優れた1以上の商業的及び/又は技術的利点をもたらす。例えば、限定されるものではないが、固定ノズル32の前縁表面60、突出部72のアーチ形内面74、及びトランジションピース32の下流面42によって規定される循環ゾーン80は、トランジションピース32の下流面42と固定ノズル32の前縁表面60との間の間隙68に流入することができる高温ガス20に関する流路をもたらすので、シール50上の熱応力が低減する、及び/又は損傷を与える可能性のある高温ガス20を間隙68からパージするのに必要なパージ媒体90のボリュームが低減する。追加的に又は別の方法として、高温ガス経路22に流入するパージ媒体90が減少すると、オペレータは、ガスタービン効率を損なうことなくエミッションを所望限界に維持できる。
【0032】
本明細書は、開示される主題の実施例を用いて、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること及びあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本発明の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0033】
10 ガスタービン
12 圧縮機
14 燃焼器
16 タービン
18 作動流体
20 高温ガス
22 高温ガス経路
30 システム
32 トランジションピース
34 上流端部
36 下流端部
38 内面
40 外面
42 下流面
44 支持フレーム
46 下流端部パージ通路
48 結合機構
50 シール
52 固定ノズル
54 内側プラットフォーム
56 外側プラットフォーム
58 翼形部
60 前縁表面
62 前端
66 前縁パージ通路
68 間隙
70 中心線
72 突出部
74 アーチ形内面
76 遠位端
78 突出部パージ通路
80 循環ゾーン
82 突出部外面
83 耐熱材料
84 パージボリューム
86 シールパージ通路
88 パージ媒体供給装置
90 パージ媒体