(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流入側端面から流出側端面まで延びる流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、所定のセルの流入側端部に配設される流入側目封止部と、残余のセルの流出側端部に配設される流出側目封止部と、前記隔壁から、前記流出側目封止部が配設されたセルである流入セル内及び前記流入側目封止部が配設されたセルである流出セル内に延びるように突出し、前記隔壁と一体に形成された多孔質の突出部と、を有する目封止ハニカム構造体と、
前記目封止ハニカム構造体の前記突出部に担持された触媒と、を備え、
前記目封止ハニカム構造体の前記隔壁の気孔率が40〜70%であり、前記突出部の厚さが、前記隔壁の厚さの30〜140%であり、
前記セルの延びる方向に垂直な断面における前記隔壁に担持された触媒の量が、前記目封止ハニカム構造体に担持された触媒の総量の5%以下であり、前記隔壁に担持される触媒の量が、前記突出部に担持される触媒の量より小であり、
前記目封止ハニカム構造体の前記流入セル内に延びる前記突出部に担持された触媒が三元触媒またはNOX吸蔵触媒であり、且つ前記目封止ハニカム構造体の前記流出セル内に延びる前記突出部に担持された触媒が選択的還元触媒であるか、或いは、
前記目封止ハニカム構造体の前記流入セル内に延びる前記突出部に担持された触媒が三元触媒であり、且つ前記目封止ハニカム構造体の前記流出セル内に延びる前記突出部に担持された触媒がNOX吸蔵触媒であり、
前記目封止ハニカム構造体の前記突出部が、前記セルを区画して複数のセルを形成する壁状のものであるハニカム触媒体。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0022】
[1]ハニカム触媒体:
本発明のハニカム触媒体の一実施形態は、
図1〜
図3に示すハニカム触媒体100を挙げることができる。ハニカム触媒体100は、隔壁5、流入側目封止部8a、流出側目封止部8b、及び突出部9を有する目封止ハニカム構造体10と、目封止ハニカム構造体10の突出部9に担持された触媒と、を備えている。隔壁5は、流入側端面2から流出側端面3まで延びる流体の流路となる複数のセル4を区画形成する多孔質のものである。流入側目封止部8aは、所定のセルの流入側端面2の端部(流入側端部)に配設されるものである。流出側目封止部8bは、残余のセルの流出側端面3の端部(流出側端部)に配設されるものである。突出部9は、隔壁5から、流出側目封止部8bが配設されたセルである流入セル4a内及び流入側目封止部8aが配設されたセルである流出セル4b内に延びるように突出し、隔壁5と一体に形成された多孔質のものである。ハニカム触媒体100は、目封止ハニカム構造体10の隔壁5の気孔率が40〜70%である。また、ハニカム触媒体100は、突出部9の厚さが、隔壁5の厚さの30〜140%である。ハニカム触媒体100は、セルの延びる方向に垂直な断面における隔壁5に担持された触媒の量が、目封止ハニカム構造体10に担持された触媒の総量の
5%以下である。そして、隔壁5に担持される触媒の量は、突出部9に担持される触媒の量より小である。そして、目封止ハニカム構造体10の流入セル4a内に延びる突出部9(9a)に担持された触媒は、三元触媒またはNO
X吸蔵触媒であり、且つ目封止ハニカム構造体10の流出セル4b内に延びる突出部9(9b)に担持された触媒は、選択的還元触媒である。なお、本発明のハニカム触媒体は、上述のように、目封止ハニカム構造体の流入セル内に延びる突出部に三元触媒が担持され、且つ目封止ハニカム構造体の流出セル内に延びる突出部にNO
X吸蔵触媒が担持されたものであってもよい。
【0023】
ハニカム触媒体100は、目封止部8(流入側目封止部8a、流出側目封止部8b)が、所定のセルと残余のセルとが交互に、いわゆる市松模様をなすように配置されている。目封止ハニカム構造体10は、外周に配設された外周壁7を更に有している。なお、本発明のハニカム触媒体は、必ずしも外周壁7を有する必要はない。
【0024】
このようなハニカム触媒体100は、目封止ハニカム構造体10の流入セル4a内に延びる突出部9(流入セル側突出部9a)及び流入セル4a側の隔壁5表面に三元触媒またはNO
X吸蔵触媒が担持されている。三元触媒とNO
X吸蔵触媒とはいずれを用いてもよいが、理論空燃比での制御を主とする場合は、理論空燃比下の排ガス浄化に効果を発揮する三元触媒を選択することが好ましい。NO
XだけではなくHCやCOを浄化できるという利点があるためである。一方、リーンバーン制御を主とする場合は、リーンバーン運転下では三元触媒が機能しないという点、及びリーンバーン運転下で多く発生するNO
Xの排出を抑えるという点でNO
X吸蔵触媒を用いることが好ましい。ハニカム触媒体100は、目封止ハニカム構造体10の流出セル4b内に延びる突出部9(流出セル側突出部9b)及び流出セル4b側の隔壁5表面に選択的還元触媒が担持されている。そのため、複数のハニカム触媒体(三元触媒が担持されたハニカム触媒体、選択的還元触媒が担持されたハニカム触媒体)を用いることなく、1つのハニカム触媒体によって排ガスの有害物質の浄化を良好に行うことができる。このようにハニカム触媒体100であれば、上記のように尿素噴射システムが必要とならないことに加えて、従来複数使用していたハニカム触媒体を1つにすることができる。そのため、自動車などのように収納スペースが限られている場合であっても良好に収納することができる。そして、1つのハニカム触媒体であるため、キャニングの手間が掛からない。即ち、複数のハニカム触媒体を用いる場合、これらにハニカム触媒体の全部をキャニングする必要があるが、1つのハニカム触媒体であれば1度のキャニングで良いことになる。
【0025】
また、目封止ハニカム構造体10の隔壁5の気孔率が40〜70%であるため、隔壁5が比較的密であるので機械的強度が高い。また、ハニカム触媒体100は、突出部9の厚さが、隔壁5の厚さの30〜140%であるため、ハニカム触媒体100(目封止ハニカム構造体10)の強度を確保しつつ初期圧力損失を低く抑えることができる。また、ハニカム触媒体100は、セルの延びる方向に垂直な断面における隔壁5に担持された触媒の量が、目封止ハニカム構造体10に担持された触媒の総量の
5%以下である。そして、隔壁5に担持される触媒の量は、突出部9に担持される触媒の量より小である。従って、ハニカム触媒体100は、圧力損失が小さい。なお、「突出部9に担持される触媒の量より小」とは、流入セル側突出部9aに担持される触媒の量と流出セル側突出部9bに担持される触媒の量の合計より小であることを意味する。
【0026】
ハニカム触媒体100は、流入セル側突出部9aに担持させた三元触媒またはNO
X吸蔵触媒によってリッチスパイク時に排ガス中のNO
XとH
2からアンモニアを生成し、選択的還元触媒に溜める。このアンモニアを用いて選択的還元触媒で排気ガス中のNO
Xを浄化することができる。また、ハニカム触媒体100においては、流入セル4aに流入させた排ガスが隔壁5を通過し、この隔壁5を通過する際に排ガス中の粒子状物質が捕集される。
【0027】
ここで、従来、粒子状物質を捕集可能なフィルタ構造体(目封止ハニカム構造体)に触媒を担持させる場合、フィルタ構造体の隔壁内の細孔(気孔)に触媒を塗り、担持させる方策が採用されている。しかし、このような方法では、得られるハニカム触媒体の浄化性能を向上させることを目的として触媒量を増加した場合、隔壁内の細孔が触媒によって閉塞されるか、或いは大幅に狭められてしまうので隔壁の気孔率が急激に低下する。そのため、フィルタ(ハニカム触媒体)の圧力損失が極端に上昇するという問題がある。そのため、触媒量を増加する場合には、フィルタの隔壁の気孔率を上げ、大量の触媒を担持させたとしても圧力損失が上昇しないように触媒を担持させるスペースを確保するという方策が採用されている。しかしながら、隔壁の気孔率を上げると、フィルタの機械的強度は低下してしまう。そのため、実使用を考えた場合には隔壁の気孔率を上げる方策には限界があった。
【0028】
また、例えば、所定の触媒層(例えば選択的還元触媒(SCR)の層)上に、その他の触媒層(例えばアンモニアスリップ防止触媒(ASC)の層)を形成した、積層された触媒層を備える場合、触媒層が非常に薄くなる。そのため、排ガスと触媒が接触できる距離が短く、特に排ガスの流量が大きくなった場合に排ガスの除去が十分にできないという不具合がある。また、同じ隔壁内に機能の異なる触媒を塗布するため、複数の触媒層を完全に分けることは難しい。その結果、本来期待される浄化性能が得られないおそれがある。別言すれば、本発明のハニカム触媒体のように積層させた触媒層を形成せず、三元触媒またはNO
X吸蔵触媒を担持させた部分と選択的還元触媒を担持させた部分とを隔壁により離間させて形成することにより、以下の不具合を防止できる。即ち、三元触媒またはNO
X吸蔵触媒でリッチスパイク時に生成されたアンモニアが三元触媒またはNO
X吸蔵触媒により酸化され、選択的還元触媒によるNO
X浄化に使用されないという不具合を防ぐことができる。また、複数の触媒層が積層している場合には隔壁の通過時のみに排ガスが浄化されるが、本発明のハニカム触媒体では隔壁の通過時のみ浄化されるのではなく、流路(セル内)を流れる際に、突出部に担持された触媒によって浄化される。そのため、排ガスの流量が大きくなった場合でも浄化性能が維持されることになる。
【0029】
更に、フィルタの隔壁を通過する流体(排ガス)の流速は流路方向で分布が現れる。そのため、排ガスが多く流れる部分に担持された触媒は早く劣化してしまう。そして、排ガスの流速分布は、使用条件が同じであれば変わらないため、他の部分(排ガスが多く流れる部分以外の部分)を有効活用することは難しい状況である。
【0030】
そこで、本発明のハニカム触媒体においては、多くの触媒が担持されて主に触媒機能を担う部分と主にフィルタとして微粒子状物質を捕集する部分とを分けている(別の領域に配置している)。このような構成とすることにより、隔壁の気孔表面に触媒を担持させることに起因する極端な圧力損失の上昇やこれを抑制することを目的として気孔率を高くすることに起因するフィルタ(ハニカム触媒体)の機械的強度の低下を回避することができる。
【0031】
図1は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態における一方の端面を模式的に示す平面図である。
図3は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態におけるセルの延びる方向に垂直な断面を模式的に示す断面図である。
【0032】
[1−1]目封止ハニカム構造体:
隔壁5の気孔率は、40〜70%であり、40〜65%であることが好ましく、40〜60%であることが更に好ましい。隔壁5の気孔率が上記範囲であると、キャニング強度を確保しつつ、圧力損失の上昇を抑えことができる。隔壁5の気孔率が40%未満であると、排ガスが隔壁5を透過する際の透過抵抗が上昇するため、圧力損失が上昇する。70%超であると、隔壁5の強度が低下するため、キャニング時に破壊されてしまう。例えば気孔率が75%の場合、目封止ハニカム構造体のアイソスタティック強度が0.3MPaとなり非常に低くなってしまう。
【0033】
隔壁5の気孔率は、画像解析により測定した値である。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、セルの延びる方向に垂直な断面における目封止ハニカム構造体の隔壁のSEM写真を任意に複数視野撮影する。撮影視野は、少なくとも3箇所とする。また、1視野は、1セルの大きさ(セルピッチ)を「p」とした場合に縦×横が「p×p」となるものとする。次に、撮影された各画像について画像解析によって二値化を行い、空洞部分(即ち、気孔部分)と空洞以外の部分とに分ける。次に、各画像における空洞部分が占める割合を算出し、平均値を求める。このようにして、隔壁の気孔率を算出する。
【0034】
隔壁5の平均細孔径は、25μm以下であることが好ましく、7〜25μmであることが更に好ましく、8〜24μmであることが特に好ましく、9〜23μmであることが最も好ましい。上記平均細孔径が上記範囲であると、フィルタとしての機能(粒子状物質の捕集性能)を確保しつつ圧力損失の上昇を抑えことができる。隔壁5の平均細孔径が7μm未満であると、排ガスの隔壁5を透過する際の透過抵抗が増加するため、圧力損失が上昇するおそれがある。25μm超であると、アッシュ(灰)、粒子状物質の捕集性能が低下するおそれがある。隔壁5の平均細孔径は、隔壁の気孔率と同様に画像解析により測定した値である。
【0035】
隔壁5の厚さは、64〜508μmであることが好ましく、89〜381μmであることが更に好ましく、110〜305μmであることが特に好ましい。隔壁の厚さが上記範囲であることにより、ハニカム構造体の強度を維持し、圧力損失の増加を抑制するという利点がある。隔壁5の厚さが64μm未満であると、ハニカム構造体の強度が低くなることがある。508μm超であると、圧力損失が高くなるおそれがある。隔壁5の厚さは、ハニカム触媒体100の中心軸に平行な断面を顕微鏡観察する方法で測定した値である。
【0036】
式:(ハニカム触媒体の中心軸方向の長さL/ハニカム触媒体の端面の直径D)により算出される値(L/D)は、0.5〜2であることが好ましく、0.6〜1.7であることが更に好ましく、0.7〜1.6であることが特に好ましい。上記値(L/D)が上記範囲であると、リングクラックを抑制できる。
【0037】
セル4の形状は、セルの延びる方向に直交する断面において四角形である。セル4の形状は、特に制限はなく、四角形以外に、例えば、三角形、八角形などの多角形、円形、楕円形などとすることができる。
【0038】
外周壁7の厚さは、特に限定されない。外周壁7の厚さは、0.1〜8mmであることが好ましく、0.2〜7mmであることが更に好ましく、0.3〜6mmであることが特に好ましい。外周壁7の厚さが上記範囲であることにより、外周壁7の強度を確保しつつ外周壁7と隔壁5の熱容量差によって発生する熱応力を小さくすることができる。
【0039】
目封止ハニカム構造体10(ハニカム触媒体100)の形状は、特に限定されない。円筒形状、底面が楕円形の筒形状、底面が四角形、五角形、六角形等の多角形の筒形状等が好ましく、円筒形状であることが更に好ましい。また、目封止ハニカム構造体10(ハニカム触媒体100)の大きさは、特に限定されない。セルの延びる方向における長さが50〜381mmであることが好ましい。また、例えば、目封止ハニカム構造体10(ハニカム触媒体100)の外形が円筒形の場合、その底面の直径は、50〜381mmであることが好ましい。
【0040】
隔壁5及び外周壁7は、セラミックを主成分とするものであることが好ましい。隔壁5及び外周壁7の材質としては、例えば、以下の群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。即ち、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、コージェライトが好ましい。コージェライトであると、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れた目封止ハニカム構造体を得ることができるためである。隔壁5と外周壁7の材質は、同じであることが好ましい。なお、隔壁5と外周壁7の材質は異なっていてもよい。「セラミックを主成分とする」というときは、セラミックを全体の90質量%以上含有することをいう。
【0041】
突出部9は、隔壁5から、流出側目封止部8bが配設されたセルである流入セル4a内及び流入側目封止部8aが配設されたセルである流出セル4b内に延びるように突出し、隔壁5と一体に形成された多孔質のものである。突出部の形状は、流入セル内に延びるもの及び流出セル内に延びるものが同じであってもよいし、異なっていてもよい。即ち、例えば、流入セル内に延びる突出部が後述する小セルを区画形成する隔壁であり、流出セル内に延びる突出部が突起状のものとすることができる。
【0042】
突出部9(9a,9b)は、
図1〜
図4に示すハニカム触媒体100のように、セル4を区画して複数のセル(小セル6(
図4参照))を形成する隔壁であ
る。このようなハニカム触媒体100は、突出部9が上記構成を有することにより、ハニカム構造体の強度を増加させることができ、従来の製造工程及び冶具を変更することなく製造することができる。
図4は、本発明のハニカム触媒体の一実施形態における一方の端面の一部の領域Pを拡大して模式的に示す平面図である。
図4に示す破線で囲まれた部分は、隔壁5によって区画形成されたセル4を示している。突出部9は、このセル4内に隔壁5から延びるように突出している。
図4においては、各セル4を、突出部9からなる隔壁によって区画して4つの小セル6が形成されている例を示している。本発明のハニカム触媒体の一実施形態のハニカム触媒体100においては、セル4の延びる方向に垂直な断面における隔壁5に担持された触媒の量が、目封止ハニカム構造体10に担持された触媒の総量の40%以下である。そして、小セル6を区画形成する隔壁(突出部9)の表面及び気孔表面に触媒が担持されている。
【0043】
また、突出部は、
図5に示すハニカム触媒体101のように、隔壁5の表面から突出した突起状のもの(突起状の突出部19(19a,19b))であることが好ましい。このように、突起状の突出部であることにより、初期圧力損失を低減できる。突起状の突出部19aは、目封止ハニカム構造体10の流入セル4a内に延びている突出部であり、突起状の突出部19bは、目封止ハニカム構造体10の流出セル4b内に延びている突出部である。
【0044】
突起状の突出部19は、数や大きさなどについては特に制限はない。突起状の突出部19の数は、1セルにつき1〜8個であることが好ましく、2〜4個であることが更に好ましい。起状の突出部19が上記範囲であると、突出部間の距離を確保できるため、触媒により突出部間を埋めてしまうことなく触媒コートでき、排ガス浄化性能に影響する幾何学的表面積を確保できるという利点がある。また、突起状の突出部19の大きさは、セルの重心から隔壁までの距離(即ち、セルの重心から隔壁に下ろした垂線の長さ)の10〜80%の距離が好ましく、30〜70%の距離が更に好ましい。突起状の突出部19の大きさが上記範囲であると、触媒が隔壁に比べて突出部にコートされ易くなるため、触媒コート後の圧損上昇を低く抑えるという利点がある。ここで、「突起状の突出部の大きさ」は、隔壁からの高さのことである。「セルの重心」とは、セルの開口部の形状における重心で定義される。例えば、
図5に示すハニカム触媒体101は、各隔壁から1つの突起状の突出部19が延び、1つのセル4内に4つの突起状の突出部19が延びている例である。このような構成とすることにより、従来の製造工程で使用する冶具の簡単な変更で製造できる。
【0045】
突出部の厚さは、隔壁の厚さの30〜140%であり、30〜130%であることが好ましく、30〜120%であることが更に好ましい。突出部の厚さを上記範囲とすることにより、目封止ハニカム構造体の強度を確保しつつ初期圧力損失を低く抑えることができる。突出部の厚さが30%未満であると、目封止ハニカム構造体の強度が低下するため、キャニング時に破壊してしまう。140%超であると、初期圧力損失が増加してしまう。ここで、突出部の厚さとしては薄い方が圧力損失の増大を防止できるという観点からは好ましい。隔壁と突出部とは、通常、押出成形により同時に成形されるため、隔壁と突出部の隔壁の厚さの差が大きいと、押出される坏土における隔壁と突出部の流速に差が発生する。その結果、隔壁や突出部がセルの延びる方向に波打つような形に変形してしまう。このような隔壁や突出部の変形は、強度を著しく低下させることになる。そのため、突出部の厚さは、隔壁との関係において上記範囲(特に上記下限値)を満たすことが必要である。なお、突出部の厚さは、突出部が、セルを区画して複数のセルを形成する隔壁である場合には、この隔壁の最も厚い部分の厚さのことを意味する。また、突出部が、突起状のものである場合には、セルの延びる方向に直交する断面における上記突出部の最大幅のことを意味する。
【0046】
なお、目封止ハニカム構造体の流入セル内に延びている突出部(流入セル側突出部)と、目封止ハニカム構造体の流出セル内に延びている突出部(流出セル側突出部)との厚さは、互いに異なっていても良い。また、流入セル側突出部と流出セル側突出部との厚さは、互いに同じであっても良い。
【0047】
突出部の気孔率及び平均細孔径は、それぞれ、上述した隔壁の気孔率及び平均細孔径と同様の範囲を採用することができ、隔壁と同じとすることが好ましい。
【0048】
目封止部(流入側目封止部及び流出側目封止部)の材料としては、隔壁5の材料と同じものを挙げることができ、隔壁5の材料と同じものを用いることが好ましい。
【0049】
目封止ハニカム構造体10のセル密度は、突出部が突起状である場合、以下のように計算する。即ち、セルの延びる方向に垂直な断面において、対抗する突起状の突出部の起点同士を結ぶ線分(複数描ける場合には、最も長いものを採用する)を想定し、この線分の位置に仮想の隔壁があるとみなして、セル密度を計算する。なお、突出部が壁状である場合、小セルを1つのセルとしてセル密度を算出する。
【0050】
目封止ハニカム構造体10のセル密度は、15.5〜93個/cm
2であることが好ましく、31〜77.5個/cm
2であることが更に好ましく、46.5〜62個/cm
2であることが特に好ましい。上記セル密度が上記範囲であると、ハニカム構造体の強度を確保しつつ圧力損失の上昇を抑えるという利点がある。目封止ハニカム構造体10のセル密度が15.5個/cm
2未満であると、ハニカム強度が低下するため、キャニング時に破壊するという不具合が生じるおそれがある。93個/cm
2超であると、圧力損失が上昇するため、燃費が悪化するという不具合が生じるおそれがある。
【0051】
[1−2]触媒:
触媒は、目封止ハニカム構造体10のセル4の延びる方向に垂直な断面における隔壁5に担持された触媒の量が、目封止ハニカム構造体10に担持された触媒の総量の40%以下である。このように、ハニカム触媒体100は、隔壁5よりも突出部9に多くの触媒を担持させる。隔壁5に塗布される触媒の量は、ハニカム構造体10に塗布される触媒の総量の40%以下であり、30%以下であることが好ましく、20%以下であることが更に好ましい。隔壁5に塗布される触媒の量がハニカム構造体10に塗布される触媒の総量の40%超であると、良好な浄化効率を維持しようとする場合に圧力損失が増大する。また、目封止ハニカム構造体10の性能(圧力損失の増大防止効果)としては実質的に隔壁5に触媒コートが無い状態(隔壁5には実質的に触媒が担持されないこと)が最も良くなる。即ち、実質的に隔壁5に触媒コートが無い状態であると、隔壁を通過する排ガスの流路が十分に確保されるため圧力損失の増大を防止することができる。この場合の「実質的に触媒コートが無い状態」とは、隔壁5に塗布(担持)された触媒量が目封止ハニカム構造体10に塗布(担持)された触媒の総量の5%以下(隔壁5に触媒が担持されない場合を含む)であることを言う。
【0052】
隔壁及び突出部に担持させた触媒の量(触媒量)の測定は、気孔率の測定方法と同様に画像解析にて測定を行う。即ち、「触媒の量」とは、画像解析により算出される触媒の面積の大きさのことである。具体的には、まず、ハニカム触媒体の中心軸(セルの延びる方向)に垂直な任意の断面において、画像解析を行い、隔壁及び突出部に相当する基材部分と触媒に相当する部分とを二値化する。次に、突出部に担持された触媒の面積と隔壁に担持された触媒の面積を算出してそれぞれにおける触媒量とする。
【0053】
このように、本発明のハニカム触媒体は、触媒担持量が少なく微粒子状物質を捕集するフィルタとして機能する部分(隔壁)と、触媒が積極的に多く担持されて排ガス中の有害物質を浄化する部分(突出部)とが別の領域にそれぞれ存在している。そのため、フィルタとして機能する隔壁は、従来のハニカム触媒体のように触媒を担持することを想定する必要がないため、気孔率を小さくすることができる。その結果、ハニカム触媒体の機械的強度を向上させることができる。
【0054】
本発明のハニカム触媒体は、上述のように、目封止ハニカム構造体の流入セル内に延びる突出部に三元触媒が担持され、且つ目封止ハニカム構造体の流出セル内に延びる突出部にNO
X吸蔵触媒が担持されたものであってもよい。このように触媒を担持させることにより、三元触媒における反応で発生した熱を、直接、NO
X吸蔵触媒に使用することができる。即ち、NO
X吸蔵触媒が担持された突出部は、三元触媒が担持された突出部に近接している。具体的には、これらの突出部は、1枚の隔壁の表面側及び裏面側に位置する関係にある。そのため、三元触媒における反応で発生した熱が直ちにNO
X吸蔵触媒に伝わり、NO
X吸蔵触媒が早期に温まるので、NO
X吸蔵触媒を、運転開始直後から(即ち、早期に)活性させることができる。その結果、運転開始直後から排ガスを良好に浄化することができる。
【0055】
なお、このように各触媒を担持させたハニカム触媒体は、以下のような場合に特に有効である。即ち、ガソリン直接噴射式(GDI)のエンジンにおいてリーンバーン制御を行う際は、三元触媒などの触媒以外に、NO
Xを浄化処理するためのNO
X吸蔵触媒(NSC)が必要になる。しかし、自動車などにおいては、フィルタなどの搭載スペースを小さくすることが進められている。また、自動車などのエンジンルームにはフィルタなどの搭載スペースに制限がある。なお、自動車などの床下は、エンジンルームに比べて比較的、搭載スペースを確保し易いが、NO
X吸蔵触媒が機能を発揮するために必要な熱が得られ難い(NO
X吸蔵触媒を加熱するための排ガスの温度が低くなっている)という問題がある。本発明によれば、このような問題を良好に解決することができる。
【0056】
[2]本発明のハニカム触媒体の製造方法:
本発明のハニカム触媒体は、以下のように製造することができる。即ち、セラミック原料を含有する成形原料を混練して得られる坏土をハニカム形状に押出成形してハニカム成形体を作製する(ハニカム成形体作製工程)。次に、作製したハニカム成形体のセルの開口部に目封止材を充填して目封止ハニカム成形体を作製する(目封止工程)。次に、作製した目封止ハニカム成形体を焼成して、所定のセルの一方の端部及び残余のセルの他方の端部に多孔質の目封止部が配設された目封止ハニカム構造体を作製する(目封止ハニカム構造体作製工程)。次に、作製した目封止ハニカム構造体に触媒を担持させてハニカム触媒体を作製する(触媒担持工程)。
【0057】
このようなハニカム触媒体の製造方法によれば、本発明のハニカム触媒体を良好に製造することができる。
【0058】
[2−1]ハニカム成形体作製工程:
本工程では、成形原料を混練して得られた坏土をハニカム形状に押出成形してハニカム成形体を得る。得られたハニカム成形体の一方の端面における所定のセルの開口部を目封止した後、焼成する。このようにして目封止ハニカム構造体を作製することができる。
【0059】
成形原料は、セラミック原料に分散媒及び添加剤を加えたものであることが好ましい。添加剤としては、有機バインダ、造孔材、界面活性剤等を挙げることができる。分散媒としては、水等を挙げることができる。
【0060】
セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト化原料、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、及びアルミニウムチタネートからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れたコージェライト化原料が好ましい。
【0061】
有機バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。有機バインダの含有量は、セラミック原料100質量部に対して、0.2〜2質量部であることが好ましい。
【0062】
造孔材は、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではない。造孔材としては、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、5〜15質量部であることが好ましい。
【0063】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよい。また、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、0.1〜2質量部であることが好ましい。
【0064】
分散媒の含有量は、セラミック原料100質量部に対して、10〜30質量部であることが好ましい。
【0065】
使用するセラミック原料(骨材粒子)の粒子径及び配合量、並びに添加する造孔材の粒子径及び配合量を調整することにより、所望の気孔率、平均細孔径の多孔質基材を得ることができる。
【0066】
成形原料を混練して坏土を形成する方法としては、特に制限はない。例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。押出成形は、所望のセル形状、隔壁の厚さ、セル密度とすることができる口金を用いて行うことができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0067】
[2−2]目封止工程:
本工程では、作製したハニカム成形体のセルの開口部に目封止材を充填して目封止ハニカム成形体を作製する。
【0068】
目封止材に含まれるセラミック原料を含有する成形原料としては、ハニカム成形体を成形するための坏土の原料であるセラミック原料を含有する成形原料と同じものを用いることができる。
【0069】
セルの開口部に目封止材を充填する方法としては、従来公知の方法を適宜採用することができる。例えば、まず、ハニカム成形体の一方の端面にマスクを貼り付ける。次に、レーザーなどの公知の手段により、マスクの、所定のセルを塞いでいる部分に孔を開ける。次に、ハニカム成形体の、マスクに孔が形成されている所定のセルの一方の端部に上記目封止材を充填する。次に、ハニカム成形体の他方の端面にマスクを貼り付ける。次に、レーザーなどの公知の手段により、マスクの、残余のセルを塞いでいる部分に孔を開ける。次に、ハニカム成形体の、マスクに孔が形成されている残余のセルの他方の端部に上記目封止材を充填する。なお、コージェライト化原料は、コージェライト結晶の理論組成となるように各成分を配合したものである。上記コージェライト化原料は、具体的には、シリカ源成分、マグネシア源成分、及びアルミナ源成分等が配合されたものである。
【0070】
[2−3]目封止ハニカム構造体作製工程:
焼成温度は、ハニカム成形体の材質よって適宜決定することができる。例えば、ハニカム成形体の材質がコージェライトの場合、焼成温度は、1380〜1450℃が好ましく、1400〜1440℃が更に好ましい。また、焼成時間は、3〜10時間程度とすることが好ましい。
【0071】
ハニカム成形体を焼成する前に乾燥させてもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではない。例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件としては、乾燥温度30〜150℃、乾燥時間1分〜2時間とすることが好ましい。
【0072】
なお、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得た後、ハニカム焼成体の所定のセルの一方の端面側の端部に目封止材を充填してもよい。
【0073】
[2−4]触媒担持工程:
次に、目封止ハニカム構造体を、目封止ハニカム構造体の一方の端部側から順に三元触媒またはNO
X吸蔵触媒を含有する触媒スラリーに浸漬すると同時に、目封止ハニカム構造体の他方の端面側から上記目封止ハニカム構造体内に空気を供給する。このようにして、隔壁に極力触媒がコートされないように流入セル内に突出した突出部(流入セル側突出部)に上記触媒スラリーからなる触媒コート層を形成する。その後、目封止ハニカム構造体の上記他方の端面側からセル内に空気を噴き付けることによって、隔壁の細孔内に侵入した触媒スラリーを吹き飛ばす。
【0074】
次に、目封止ハニカム構造体を、目封止ハニカム構造体の他方の端部側から順に選択的還元触媒を含有する触媒スラリーに浸漬すると同時に、目封止ハニカム構造体の一方の端面側から上記目封止ハニカム構造体内に空気を供給する。このようにして、隔壁に極力触媒がコートされないように流出セル内に突出した突出部(流出セル側突出部)に上記触媒スラリーからなる触媒コート層を形成する。その後、目封止ハニカム構造体の上記他方の端面側からセル内に空気を噴き付けることによって、隔壁の細孔内に侵入した触媒スラリーを吹き飛ばす。
【0075】
その後、この目封止ハニカム構造体に形成された触媒コート層を乾燥、焼成させることにより、ハニカム触媒体を製造する。
【0076】
また、触媒は以下のように担持させてもよい。即ち、まず、触媒スラリーを塗工する前に、目封止ハニカム構造体を、熱を加えることにより揮発する化合物を含有する仮充填用スラリー内に浸漬させる。このようにすることで、目封止ハニカム構造体の隔壁の気孔に上記仮充填用スラリーを充填する。
【0077】
次に、目封止ハニカム構造体の一方の端面及び他方の端面からそれぞれ、流入セル及び流出セル内に各触媒スラリー(三元触媒またはNO
X吸蔵触媒を含有する触媒スラリー、選択的還元触媒を含有する触媒スラリー)をそれぞれ充填する。このようにして、流入セル及び流出セルの表面とこれらの流入セル及び流出セル内に突出した突出部の表面及び突出部の細孔の表面に上記触媒スラリーからなる触媒コート層を形成する。
【0078】
次に、目封止ハニカム構造体を乾燥、焼成することにより、隔壁の気孔に充填された上記仮充填用スラリーを揮発させ隔壁内に気孔を形成し、目封止ハニカム構造体の端面からセル内に空気を噴き付けることによって、隔壁表面に付着した触媒スラリーを吹き飛ばす。このようにして、ハニカム触媒体を作製することもできる。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
コージェライト化原料として、アルミナ、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、及びシリカを使用した。このコージェライト化原料100質量部に、分散媒を20質量部、有機バインダを1質量部、分散剤を0.5質量部、それぞれ添加し、混合、混練して坏土を調製した。分散媒として水を使用した。有機バインダとしてはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用し、分散剤としてはエチレングリコールを使用した。
【0081】
次に、所定の金型を用いて坏土を押出成形して、一方の端面から他方の端面まで貫通する複数のセルを区画形成する隔壁及びこの隔壁からセル内に延びるように突出し、隔壁と一体に形成された突出部を有するハニカム成形体を作製した。突出部は、隔壁に区画形成されたセルを区画して更に4つのセル(小セル)を形成する隔壁とした。ハニカム成形体は、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状が四角形で、全体形状が円柱形であった。次に、作製したハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させて乾燥したハニカム成形体(ハニカム乾燥体)を得た。その後、ハニカム乾燥体の両端部を切断して所定の寸法に整えた。次に、ハニカム乾燥体の一方の端面にマスクを貼り付けた。このとき、セルの開口は全てマスクにより塞がれるようにした。次に、レーザーを照射することにより、マスクの所定の部分(即ち、所定のセルを塞いでいる部分)に孔を開けた。
【0082】
次に、このハニカム乾燥体の、マスクを貼り付けた側の端部(一方の端部)を目封止用スラリーに浸漬して、所定のセルの一方の端部に上記目封止材スラリーを充填した。目封止材スラリーは、上記坏土と同じ原料からなるものを用いた。
【0083】
次に、ハニカム乾燥体の他方の端面にマスクを貼り付けた。このとき、セルの開口は全てマスクにより塞がれるようにした。次に、レーザーを照射することにより、マスクの所定の部分(即ち、残余のセルを塞いでいる部分)に孔を開けた。
【0084】
次に、このハニカム乾燥体の、マスクを貼り付けた側の端部(他方の端部)を目封止用スラリーに浸漬して、残余のセルの他方の端部に上記目封止材スラリーを充填した。
【0085】
次に、上記目封止材スラリーを充填したハニカム乾燥体を熱風乾燥機で乾燥した。その後、1410〜1440℃で5時間焼成した。このようにして目封止ハニカム構造体を作製した。
【0086】
得られた目封止ハニカム構造体は、直径が157.5mmであり、中心軸方向の長さが152.4mmであった。また、体積が2.97リットルであった。目封止ハニカム構造体の直径Dに対する中心軸方向の長さLの比の値(L/D)が0.97であった。目封止ハニカム構造体のセル密度は46.5個/cm
2であった。隔壁の厚さは0.15mmであった。隔壁の気孔率は48%であった。隔壁の平均細孔径は12μmであった。突出部の厚さは0.15mmであった。突出部の気孔率は48%であった。突出部の平均細孔径は12μmであった。結果を表1に示す。
【0087】
次に、得られた目封止ハニカム構造体に各触媒(「三元触媒またはNO
X吸蔵触媒」または選択的還元触媒)を担持させた。具体的には、目封止ハニカム構造体を、一方の端部から順に三元触媒(TWC)を含む触媒スラリーに浸漬すると同時に、目封止ハニカム構造体の他方の端面側から上記目封止ハニカム構造体内に空気を供給した。その後、目封止ハニカム構造体の上記他方の端面側からセル内に空気を噴き付けることによって、隔壁内に侵入した触媒を吹き飛ばした。
【0088】
次に、目封止ハニカム構造体を、他方の端部から順に選択的還元触媒(SCR)を含む触媒スラリーに浸漬すると同時に、目封止ハニカム構造体の一方の端面側から上記目封止ハニカム構造体内に空気を供給した。その後、目封止ハニカム構造体の上記一方の端面側からセル内に空気を噴き付けることによって、隔壁内に侵入した触媒の一部を吹き飛ばした。
【0089】
このようにして、流入セル内に突出した突出部及び流出セル内に突出した突出部の表面及び細孔内の表面に触媒コート層を形成した。その後、目封止ハニカム構造体の触媒コート層を乾燥、焼成させてハニカム触媒体を得た。
【0090】
その後、得られたハニカム触媒体の上流側に、三元触媒(TWC)を担持させた三元触媒体(表1中、「TWC」と記す)を配置して、排ガス浄化装置を作製した。排ガス浄化装置は、その長さが266.7mmであり、排ガス浄化装置全体としての初期圧力損失が6.4kPaであり、スス付き圧力損失が9.6kPaであった。また、排ガス浄化装置全体のTWC合計量(三元触媒を担持させた三元触媒体+ハイブリットフィルタの隔壁内の三元触媒+ハイブリットフィルタの流入セル内に突出した突出部の三元触媒)が448gであった。また、排ガス浄化装置全体のSCR合計量(ハイブリットフィルタの隔壁内の三元触媒+ハイブリットフィルタの流出セル内に突出した突出部の選択的還元触媒)が369gであった。
【0091】
三元触媒体は、直径が105.7mmであり、中心軸方向の長さが114.3mmであった。また、体積が1.00リットルであった。初期圧力損失及びスス付き圧力損失が3.6kPaであった。触媒担持量が201gであった。
【0092】
得られたハニカム触媒体(表1中、「ハイブリッドフィルタ」と記す)は、セルの延びる方向に垂直な断面における隔壁に担持された触媒の量が目封止ハニカム構造体に担持された触媒の総量の5%以下であった(表5中、「隔壁コート割合(%)」と記す)。また、ハニカム触媒体の初期圧力損失が2.9kPaであり、スス付き圧力損失が6.0kPaであった。得られたハニカム触媒体におけるTWCの担持量(触媒担持量)は、236gであり、SCR触媒の担持量(触媒担持量)は、350gであった。
【0093】
【表1】
【0094】
表5中の「構造」の欄における「通常」とは、隔壁の気孔表面にも触媒が担持されており、突出部を有さないハニカム触媒体のことを意味する。「ハイブリッド 壁」とは、ハニカム触媒体が突出部を有し、この突出部が、セルを更に区画して更に複数のセル(小セル)を区画形成している隔壁であるのことを意味する。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
[気孔率]:
隔壁及び突出部の気孔率は以下の方法で算出した。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、セルの延びる方向に垂直な断面における目封止ハニカム構造体の隔壁のSEM写真を任意に3箇所撮影する。1視野は、1セルの大きさ(セルピッチ)を「p」とした場合に縦×横が「p×p」となるものとした。次に、撮影された各画像について画像解析によって二値化を行い、空洞部分(即ち、気孔部分)と空洞以外の部分とに分ける。次に、各画像における空洞部分が占める割合を算出し、平均値を求める。このようにして、隔壁及び突出部の気孔率を算出する。
【0100】
[平均細孔径]:
隔壁の平均細孔径は、隔壁の気孔率と同様に画像解析により測定した値である。
【0101】
作製したハニカム触媒体または排ガス浄化装置について、[初期圧力損失]、[スス付き圧力損失]、[アイソスタティック強度]及び[捕集効率]の各評価を行った。各評価の評価方法を以下に示す。
【0102】
[初期圧力損失]:
排ガス浄化装置(ハニカム触媒体を直列的に配置して収納した缶体を含むもの)について、プロパンガスを燃焼して得られる600℃の燃焼ガスを200kg/時間の流量で上記排ガス浄化装置に供給してハニカム触媒体と排ガス浄化装置の初期圧力損失を測定する。測定した排ガス浄化装置の初期圧力損失について、以下の評価基準によって評価を行った。排ガス浄化装置における初期圧力損失が7kPa以上である場合を「NG」とし、7kPa未満である場合を「OK」とする。
【0103】
[スス付き圧力損失]:
排ガス浄化装置(ハニカム触媒体を直列的に配置して収納した缶体を含むもの)について、軽油を燃焼させてススを発生する人工スス発生装置によって、ハニカム触媒体に1g/lのススを堆積させる。このようにススが堆積した状態で、軽油を燃焼して得られる600℃の燃焼ガスを200kg/時間の流量で上記排ガス浄化装置に供給してハニカム触媒体及び排ガス浄化装置のスス付き圧力損失を測定する。測定した排ガス浄化装置のスス付き圧力損失について、以下の評価基準によって評価を行った。排ガス浄化装置におけるスス付き圧力損失が12kPa以上である場合を「NG」とし、12kPa未満である場合を「OK」とする。
【0104】
[アイソスタティック強度]:
作製したハニカム触媒体(ハイブリッドフィルタ)について、アイソスタティック強度を測定する。アイソスタティック強度は、社団法人自動車技術会発行の自動車規格(JASO規格)M505−87で規定されているアイソスタティック破壊強度試験に基づいて測定する。アイソスタティック破壊強度試験は、ゴムの筒状容器にハニカム触媒体を入れてアルミ製の板で蓋をし、水中で等方加圧圧縮を行う試験である。アイソスタティック破壊強度は、ハニカム触媒体が破壊したときの加圧圧力値(MPa)で示される。なお、アイソスタティック破壊強度試験は、ハニカム触媒体を自動車に搭載する際に、ハニカム触媒体が、外周面把持された状態で缶体内に収納される場合の、圧縮負荷加重を模擬した試験である。なお、比較例1,2については、通常(従来)のフィルタに触媒を担持させた場合のアイソスタティック強度を測定した。
【0105】
測定したアイソスタティック強度について、以下の評価基準によって評価を行った。即ち、ハニカム触媒体(ハイブリッドフィルタ)のアイソスタティック強度が1MPa以下である場合を「NG」とし、1MPa超である場合を「OK」とする。
【0106】
[捕集効率]:
作製したハニカム触媒体について、捕集効率の測定を行った。具体的には、上述した人工スス発生装置にハニカム触媒体(ハイブリッドフィルタ)をセットし、ススを含む排ガスの供給条件を、ガス流量174kg/時間、ガス温度290℃に設定した。次に、ススの堆積速度を2g/時間となるように設定し、AVL社製のスモークメーターでハニカム触媒体の入口側(上流)及び出口側(下流)の排ガスをそれぞれ吸引(採取)し、採取したガスをろ紙に通して微粒子を濾し取った。その後、上記ろ紙の反射光の黒色度から上記スモークメーターの測定器内部の換算式を用いてスス濃度を算出した。捕集効率は、スス堆積量0.5(g/ハニカム触媒体)での値とする。スモークメーターの測定値(ススの濃度)から下記計算式にて捕集効率を算出する。算出した捕集効率を以下の評価基準によって評価した。捕集効率が95%以上である場合を「OK」とし、95%未満である場合を「NG」とした。
式:捕集効率(%)=100×{1−(ハニカム触媒体の下流のガス中のススの濃度)/(ハニカム触媒体の上流のガス中のススの濃度)}
【0107】
(
参考例2、実施例
3〜6)
表1,表2に示す条件を満たすハニカム触媒体及び排ガス浄化装置を作製したこと以外は、実施例1と同様にして排ガス浄化装置を作製した。その後、作製した各ハニカム触媒体及び排ガス浄化装置について、実施例1と同様にして上記各評価を行った。結果を表1,表2,表5に示す。
【0108】
(比較例1〜6)
表3,表4に示す条件を満たすハニカム触媒体及び排ガス浄化装置を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜6の排ガス浄化装置を作製した。その後、作製した各ハニカム触媒体及び排ガス浄化装置について、実施例1と同様にして上記各評価を行った。結果を表3〜表5に示す。
【0109】
なお、比較例1では、上流側から順に、TWCを担持したハニカム触媒体、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)、SCRが担持されたハニカム触媒体が直列に配置された排ガス浄化装置を用いた。TWCを担持したハニカム触媒体の触媒密度は200g/lであった。ガソリンパティキュレートフィルタには、TWCが担持され、この触媒密度は100g/lであった。SCRが担持されたハニカム触媒体の触媒密度は175g/lであった。なお、表3中、TWCを担持したハニカム触媒体を「TWC」と示し、SCRが担持されたハニカム触媒体を「SCR」と示す。
【0110】
(実施例7
,9
、参考例8)
表6に示す条件を満たすハニカム触媒体及び排ガス浄化装置を作製したこと以外は、実施例1と同様にして排ガス浄化装置を作製した。その後、作製した各ハニカム触媒体及び排ガス浄化装置について、実施例1と同様にして上記各評価を行った。結果を表6,表7に示す。なお、表6中、「TWC」は三元触媒を示し、「NSC」はNO
X吸蔵触媒を示す。
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
(比較例7)
表6に示す条件を満たすハニカム触媒体及び排ガス浄化装置を作製したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例7の排ガス浄化装置を作製した。その後、作製した各ハニカム触媒体及び排ガス浄化装置について、実施例1と同様にして上記各評価を行った。結果を表6,表7に示す。
【0114】
実施例1
,3〜
7,9のハニカム触媒体は、排ガス浄化装置全体の長さを小さくすることができ、機械的強度が高く、圧力損失が小さく、浄化性能が良好であることが確認できた。また、実施例1
,3〜5,7
,9のハニカム触媒体は、捕集効率が良好であることが確認できた。なお、実施例6では、隔壁の平均細孔径が25μm超(26μm)であったため、他の実施例に比べて、アッシュ(灰)、粒子状物質の捕集性能(捕集効率)が低下していた。