(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の油中水型エマルション接着剤(以下、単に「接着剤」とも呼ぶ)は、油相と水相とからなり、前記油相が少なくとも有機溶剤及び乳化剤を含み、前記水相が少なくとも水及び高分子化合物を含み、かつ前記水相の粒径が、体積基準の平均径(以下、単に「粒径」とも呼ぶ)で1〜100μmであることを特徴としている。
水相の粒径を1〜100μmとすることで、紙表面の微細な間隙よりも水相粒子の方が大きくなり、水相粒子は紙内部に浸透することなく紙表面に残りやすくなる。また、水相の粒径が1〜100μmであることで、接着に際し2枚の紙を貼り合わせたとき、水相粒子1つ1つが接着される紙と紙の間に挟まれる構成になる。この構成では紙―水相粒子―紙間に油相が介在しないため、接着が発現しやすく、セットタイムが短くなる。逆に、水相の粒径が1μm未満であると、紙―水相粒子―紙間に油相が介在しやすくなり、紙−油相−水相粒子−油相−水相粒子−油相−紙などのような配置になりやすいため、当該油相が水相による紙と紙との接着を阻害し、接着が発現しにくくセットタイムが長くなる。すなわち、水相の粒径は短いセットタイムを確保する上で重要なパラメータである。
なお、水相の粒径(1〜100μm)の意義などについては後述する。
【0013】
本発明の油中水型エマルション接着剤においては、油相と水相とからなり、前記油相が少なくとも有機溶剤及び乳化剤を含み、前記水相が少なくとも水及び高分子化合物を含み、水相の粒径を1〜100μmとすることで、開放放置安定性および保存安定性に優れ、かつ、低エネルギーで迅速に接着可能なセットタイムの短い接着剤とすることができる。
以下に、本発明の油中水型エマルション接着剤について詳述する。
【0014】
[水相]
本発明の油中水型エマルション接着剤において、水相は少なくとも水及び高分子化合物を含む。
水相の水分量は水相全質量に対し40〜90質量%であることが好ましい。水分量の範囲を上記範囲とすることで接着性に優れ、セットタイムを短くすることができる。紙種によっては、水分量が90質量%を超える場合、水分除去に時間がかかりセットタイムが遅くなることがある。また、水分量が40質量%未満の場合、水による紙繊維の膨潤が期待できず紙繊維の表面積(接着面積)が増えないため接着しにくくなりセットタイムが遅くなることがある。水相の水分量は75〜85質量%であることがより好ましい。水相中の水分量は水相全質量に対し75〜85質量%であると、セットタイムに加えて放置後の流動性も確保できるようになり、開放放置安定性が特に良好になる。
【0015】
水相に含まれる高分子化合物は、接着性を発現する成分であって、接着能及び被膜形成能を有する。当該高分子化合物としては、接着性を発現するものであれば特に限定されず、でんぷん、ニカワ、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」とあらわすこともある)、水溶性セルロース、ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」とあらわすこともある)、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどの水溶性高分子、水分散性高分子が挙げられる。この中でもPVP、PVA、でんぷんを好ましく使用することができる。なお、「(メタ)アクリル酸」の表記は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0016】
高分子化合物は、公知の製法に従って合成してもよいし、市販されている様々な高分子化合物を用いることができる。市販されているものの一例として、PVPであれば、和光純薬株式会社製のPVP K30、K90等が挙げられる。PVAであれば、株式会社クラレ製「RS−1704」「RS−2117」「RS−4104」「PVA110」「PVA117」「PVA203」「PVA205」「PVA210」「PVA217」「PVA220」「PVA403」「PVA405」「PVA417」「PVA505」、日本合成化学工業株式会社製「GH−14」「GH−17」「GH−20」「GH−23」「C−500」、「P−610」、「AL−06R」、日本酢ビ・ポバール株式会社製「VM−17」、「VM−13KY」等が挙げられる。高分子化合物は、誘導体化されたものであってもよい。
本発明では、異なる種類の高分子化合物を併用してもよい。例えば、PVPやPVAを組み合わせて使用してもよい。
【0017】
高分子化合物の分子量については、特に限定されないが、PVPであれば分子量5,000〜500,000のもの、PVAであれば分子量5,000〜100,000のものが好適に使用される。ここで、「分子量」は、GPC(標準ポリスチレン換算)で測定した重量平均分子量を意味する。
【0018】
本発明において、高分子化合物は、十分な接着性能を確保する観点から、前記水相全質量に対し15〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがより好ましく、25〜40質量%であることがさらに一層好ましい。
また、高分子化合物は、接着剤全量に対しては、接着剤皮膜の強度を確保する観点から、10質量%以上含まれていることが好ましく、20質量%以上含まれていることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに一層好ましい。接着剤全量に対し、10質量%未満であると、環境によってはセットタイムが遅くなることある。また、高分子化合物の含有量の上限値については、油相と水相が形成可能であればよいが、接着剤全量に対する高分子化合物の割合が高くなるほど高分子化合物を水に混合する際に手間がかかるために、接着剤全量に対し55質量%以下であることが好ましい。
【0019】
本発明においては、上述の通り、水相の粒径は1〜100μmである。1μm以上とすることで水相を紙繊維で濾すことが可能となる。すなわち、水相を紙表面に残しつつ、油相を紙表面から紙内部へ除去することが可能となる。これにより短いセットタイムが実現できる。また、100μm以下とすることで、水相と油相の分離が抑制されるため、保存安定性および開放放置安定性が改善される。また、100μm以下とすることで、塗工ムラが生じにくくなる。したがって、1μm未満の場合セットタイムが遅くなったり、保存安定性が悪くなったりする。また、水相の粒径が100μmを超える場合、保存安定性が悪くなったり、開放放置安定性が悪くなったりする。当該水相の粒径は5〜50μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。特に、5〜50μmであると、インラインに使用した場合、即時接着が可能であり、保存安定性も良好である。
なお、本発明において、体積基準の平均径とは、体積基準の粒度分布における平均径のことであり、例えばレーザー回折/散乱式粒子径分布測定法により測定することができる。
【0020】
本発明の油中水型エマルション接着剤は、水相と油相とを混合しシェアを加えて乳化することで作製することができる。
シェアを加える方法としては撹拌羽根や撹拌子を回転させることで生じる剪断作用を利用する方法、高圧流体を狭いギャップを通して流し,その際受ける強い剪断作用を利用する方法などがある。
本発明において、水相の粒径は、例えば、接着剤の成分や乳化条件を適宜設定することで制御することができる。そして、水相の粒径をそのように制御することで上記範囲内とすることができる。例えば、接着剤の油相粘度を高くすることで粒径を小さくすることができる。また、乳化を撹拌で行う場合、撹拌速度を速くしたり、撹拌時間を長くしたりすることで粒径を小さくすることができる。
【0021】
また、水相の粘度は特に限定されないが、粘度が高い方がタックは強くなる傾向にあるため、セットタイム短縮に効果的であることが予想される。したがって、水相の粘度は23℃シェアレート100s
−1において、10Pa・s以上であることが好ましい。
【0022】
水相には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の成分を含有させることができる。当該他の成分としては、湿潤剤、電解質、防黴剤、酸化防止剤、水蒸発防止剤、pH調整剤、顔料、染料等の着色剤、無機充填剤などが挙げられる。
【0023】
[油相]
本発明の油中水型エマルション接着剤において、油相は少なくとも有機溶剤及び乳化剤を含む。
有機溶剤としては、水相及び油相に相分離させる観点から、水への溶解度が、25℃において0.5質量%以下のものが好ましく、0.1質量%以下のものがより好ましい。有機溶剤の沸点は150〜350℃のものが好ましい。沸点は、溶剤の蒸発しやすさの目安となる値であり、沸点が低いほど蒸発しやすく、高いほど蒸発しにくい傾向がある。接着剤の油相は、水相粒子の外相となり、水相からの水分の蒸発を抑制する機能を奏することが必要である。したがって、油相の溶剤としては、沸点が150℃以上の溶剤を選択することで、油相の蒸発がしにくくなり、水相からの水分の蒸発を抑制することができる。
一方で、油相の溶剤は、紙に塗工した場合には、紙に浸透および蒸発することで素早く飛散するものが好ましい。接着剤が紙に塗工された際に、油相の溶剤の飛散が速ければ、エマルションの崩壊を促進できるため、接着剤のセットタイムを短くする効果が得られる。油相の溶剤として、沸点が350℃以下であるものを選択することで、開放放置した場合の溶剤の蒸発を抑えつつ、紙に塗工した際には飛散しやすい、セットタイムの短い接着剤を得ることができる。
【0024】
上記のような溶剤としては、モーターオイル、スピンドル油、マシン油、流動パラフィン等の鉱物油、オリーブ油、ひまし油、サラダ油等の植物油;芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素の混合溶剤、パラフィン系炭化水素系溶剤、イソパラフィン系炭化水素系溶剤、ナフテン系炭化水素系溶剤等の炭化水素系溶剤等が挙げられる。安全性および衛生性の観点から、これらの溶媒の中でも脂肪族炭化水素系溶剤が好ましい。具体的には、JX日鉱日石エネルギー株式会社製のテクリーンN20、テクリーンN22、エクソンモビール株式会社製のエクソールD80、出光興産株式会社製のスーパーゾルP02、スーパーゾルS02、スーパーゾルCA30などのナフテン系溶剤;JX日鉱日石エネルギー株式会社製の0号ソルベントL、0号ソルベントMなどのn−パラフィン系溶剤;エクソンモビール株式会社製のアイソパーL、アイソパーM、出光興産株式会社製のスーパーゾルFP30などのi−パラフィン系溶剤などが好適に用いられる。これらの溶剤は、単独で用いるほか、適宜、2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
一方、油中水型エマルションを構成するために油相中に乳化剤が添加される。乳化剤は油相と水相を乳化する作用の化合物であればよく、例えば、界面活性剤、高分子分散剤、樹脂等を使用することができる。
【0026】
界面活性剤としては、ヘキサオレイン酸ヘキサグリセリル、ポリリシノール酸ヘキサグリセリル、ソルビタン高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、高級アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、ポリオキシエチレン2〜30モル付加(以下POE(2〜30)と略して記載)オレインエーテル、POE(2〜35)ステアリルエーテル、POE(2〜20)ラウリルエーテル、POE(1〜20)アルキルフェニルエーテル、POE(6〜18)ベヘニルエーテル、POE(5〜25)2−デシルペンタデシルエーテル、POE(3〜30)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(8〜16)2−オクチルデシルエーテル等のエーテル型界面活性剤;POE(4〜60)硬化ヒマシ油、POE(3〜14)脂肪酸モノエステル、POE(6〜30)脂肪酸ジエステル、POE(5〜20)ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型界面活性剤;POE(2〜30)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜60)グリセリルトリイソステアレート、POE(7〜50)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE(12〜60)硬化ヒマシ油トリイソステアレート等のエーテルエステル型界面活性剤等のエチレンオキシド付加型界面活性剤;デカグリセリルテトラオレート、ヘキサグリセリルトリイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート、グリセリルモノオレエートといったグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されることはない。 上記の非イオン系界面活性剤は単独で用いてもよいし、または適宜混合して用いてもよい。
【0027】
高分子分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子化合物量酸エステルの塩、高分子化合物量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子化合物量不飽和酸エステル、高分子化合物共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエステルポリアミン、ステアリルアミンアセテート等が好適に使用される。これらは単独で用いられるほか、複数種を組み合わせて使用してもよい。
市販されている高分子分散剤の具体例としては、日本ルーブリゾール社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、22000、24000、28000」(いずれも商品名)、共栄社化学株式会社製「フローレンDOPA−15B」(商品名)、楠本化成株式会社製「DA−703−50、DA−7300、DA234」(いずれも商品名)、BykChemie社製「Disperbyk−101」(商品名)、川研ファインケミカル株式会社製「ヒノアクト」(商品名)、ISP社製「Antaron V−216、Ganex V−216、Antaron V−220、Ganex V−220」(いずれも商品名)、Induchem社製「Unimer U−151、Unimer U−15」(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0028】
樹脂としては、たとえば、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、アルキド変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、アルキド樹脂、石油樹脂、油脂化合物、変性油脂化合物、ギルソナイト、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、アクリル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、マレイン酸樹脂、重合ロジンエステル、テルペン樹脂、大豆油変性アルキド樹脂等が挙げられる。
【0029】
乳化剤の中でも、ウレタンアクリルポリマー、ポリエステル側鎖を有する含窒素グラフトポリマーを好ましく使用することができる。
ウレタンアクリルポリマーとはウレタン基を有するアクリルポリマーを意味する。
ウレタンアクリルポリマーの分子量は10000〜100000程度であることが好ましく、アクリルポリマー(主鎖である幹ポリマー)と、ウレタン基部(側鎖である枝ポリマー)との質量比率は、60:40〜99:1であることが好ましく、70:30〜99:1であることがより好ましい。
アクリル系ポリマーにおける共重合体部の質量は、共重合に使用したモノマーの合計質量であり、導入されたウレタン基部の質量とは、反応に使用したアミノアルコールと多価イソシアネート化合物の質量であり、多価アルコールを使用した場合はこれも加えた合計質量である。
【0030】
一方、ポリエステル側鎖を有する含窒素グラフトポリマーは、グラフト鎖がポリエステルであり、主鎖が含窒素ポリマーである。櫛形構造のポリマーであることが好ましい。
より詳細には、たとえば、ポリアルキレンイミンのような多数の窒素原子を含有する主鎖を備え、かつ、この窒素原子を介してアミド結合した側鎖を複数備える化合物であって、この側鎖がポリエステル鎖であるようなポリマーが例示できる。こうしたポリマーは、たとえば、特開平5−177123号公報(米国特許第4,645,611号明細書)に開示されている。
主鎖である含窒素ポリマーの重量平均分子量は、60万以下であることが好ましく、複数の側鎖を備えることが好ましく、側鎖の重合度は3〜80程度であることが好ましいが、いずれもこれらに限定されることはない。主鎖は、ポリエチレンイミンのようなポリアルキレンイミンであることが好ましく、ポリアルキレンイミンは、直鎖であっても枝分れ鎖であってもよく、枝分れ鎖であることがより好ましい。側鎖は、(カルボニル−C3〜C6−アルキレンオキシ基)を単位とする重合体であることが好ましく、アミドまたは塩架橋基によって主査に結合していることが好ましい。 好ましく使用できる市販品としては、日本ルーブリゾール(株)製ソルスパース28000、ソルスパース11200、ソルスパース13940等が挙げられる。
ウレタンアクリルポリマー、ポリエステル側鎖を有する含窒素グラフトポリマーを使用することでセットタイムをより一層短くすることができる。
【0031】
また、油相にはゲル化剤を使用することができる。ゲル化剤を使用する場合、ゲル化剤の含有量は、接着剤全質量に対し0.05〜10.0質量%であることが好ましく、0.2〜3.0質量%であることがより好ましい。ゲル化剤の含有量が多い場合、油相粘度が高くなり紙に浸透しにくくなるので、セットタイムが遅くなる傾向にある。シェアレート100S
−1の油相粘度が1Pa・s以下であることが好ましく、0.1Pa・s以下であることがより好ましい。ゲル化剤としては、脂肪酸アミド、有機ベントナイト、シリカゲル、水添ひまし油およびポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0032】
本発明の油中水型エマルション接着剤において、水相と油相との質量比率(水相:油相)は80:20〜95:5であることが好ましく、85:15〜90:10であることがより好ましい。
水相:油相は80:20よりも油相が多くなると保存安定性が悪くなったり、紙に油相が滲むことで油染みが目立ったりする。水相:油相が95:5よりも油相が少なくなると保存安定性が悪くなったり、塗工ムラが目立ったりする。
【0033】
本発明の油中水型エマルション接着剤中の水分量は、短いセットタイムおよび開放放置安定性の確保という観点から、接着剤全質量に対し35〜85質量%であることが好ましく、40〜80質量%であることがより好ましく、50〜75質量%であることがさらに一層好ましい。同様に、高分子化合物の量は、接着強度という観点から、接着剤全質量に対し10〜55質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、10〜35質量%であることがさらに一層好ましい
【0034】
一方、本発明の油中水型エマルション接着剤において、X:23℃、シェアレート100s
−1における水相の粘度、Y:23℃、シェアレート100s
−1における油相の粘度、とした場合、X/Y>10とすることが好ましく、X/Y>200とすることがより好ましく、X/Y>2000とすることがさらに好ましい。X/Y>10とすることで、エマルションとしての粘度を低く抑えることができる。粘度の高い水相を使用しても、粘度の低い油相で水相が分断されるためである。また、X/Yの上限は特に制限はないが、乳化しやすさの観点から200000以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の油中水型エマルション接着剤には、必要に応じて、湿潤剤、電解質、防黴剤、酸化防止剤、水蒸発防止剤、pH調整剤、顔料、染料等の着色剤、無機充填剤などを1種以上、含有させることができる。
【0036】
本発明の油中水型エマルション接着剤を適用する被着体または被着材(基材)は、特に限定されないが、接着剤塗工後に油相が被着体内部に浸透しやすいことが好ましく、したがって紙等の浸透性基材であることが好ましい。紙の種類は特に限定されず、普通紙、上質紙、コート紙、アート紙などに幅広く適用することができる。特に、本発明の効果を最も発揮し得る紙の種類としては、アンカー効果が期待できるという観点から普通紙が好ましい。 ここで「普通紙」とは、パルプを主原料とした紙をいい、JIS P 0001 番号6139で定義されている。具体的には、例えば、上質紙、PPCコピー紙、非塗工印刷紙などを挙げることができる。普通紙は各社から市販されているものを利用することもでき、例えば、NPiフォーム、NPi上質(日本製紙株式会社製)、理想用紙、理想環境用紙、理想用紙IJ、理想用紙IJマット、理想用紙IJEライト、IJ環境用紙マット、IJ用紙マット、オフィス用紙PW(理想科学工業株式会社製)等、種々のものを利用することができる。
接着剤の用途についても、特に限定されない。後述するように印刷後の後処理用として使用することが好ましいが、印刷前に使用してもよいし、印刷物以外に用いてもよい。
【0037】
接着剤の適用方法は、特に限定されず、シリンジ、ディスペンサー、ノズル、アプリケーター、コーター、ハンドポンプなど、様々な塗工装置を使用することができる。
冊子作製や封書作製をするために、後処理装置(フィニッシャー)に塗工機構を組み込み、インラインで必要箇所にパターニングして接着剤を塗工することもできる。
上記のように本発明に係る接着剤は、塗工後に迅速に、半乾き状態でも接着性ないし粘着性を発現するため、せん断接着力において優れている。したがって、フィニッシャーなどの装置と組み合わせて使用した場合でも、接着後の紙の搬送時に接着箇所がずれにくくなる。なお、フィニッシャーとは、パンチ加工、ホチキス留め、紙折り、製本などの印刷後の後処理をまとめて行う機械をいう。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1〜19、比較例1〜5]
各実施例・比較例(比較例4を除く)において、水相及び油相のそれぞれについて表1〜3に記載の成分及び含有率となるように各成分を混合し、水相については70℃に加温して撹拌し、油相についてはそのまま撹拌し、水相成分及び油相成分を調製した。
各成分の詳細を以下に示す。
(水相)
PVA1:(株)クラレ製、PVA405
PVA2:(株)クラレ製、PVA217
PVP:和光純薬工業(株)製、K90
澱粉:ワキシーコーン
水:イオン交換水
(油相)
乳化剤1:日光ケミカルズ(株)製、Hexaglyn PR−15
乳化剤2:ポリエステル側鎖を有する含窒素グラフトポリマー(日本ルーブリゾール(株)製、ソルスパース11200)
乳化剤3:日光ケミカルズ(株)製、Decaglyn 5−O
乳化剤4:ウレタンアクリルポリマー1(下記参照)
乳化剤5:ウレタンアクリルポリマー2(下記参照)
粘度調整剤:日本ゼオン(株)製、Quiontone CX495
ゲル化剤:楠本化成(株)製、ディスパロン308
溶剤1:花王(株)製、
ラウリン酸ヘキシル
溶剤2:JX日鉱日石エネルギー(株)製、AF7
【0040】
乳化剤4、乳化剤5の合成方法を以下に記載する。
(1)まず、300mlの四つ口フラスコに、AF−7(ナフテン系溶剤;JX日鉱日石エネルギー(株)製)75gを仕込み、窒素ガスを通気し攪拌しながら、110℃まで昇温した。次いで、温度を110℃に保ちながら表1に示す組成の各単量体混合物にAF−7 16.7g、パーブチル O(t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート;日本油脂(株)製)2gの混合物を3時間かけて滴下した。その後、110℃に保ちながら1時間および2時間後に、パーブチル Oを各0.2g添加した。さらに110℃で1時間熟成を行い、AF−7 10.6gで希釈して、不揮発分50%の無色透明の幹ポリマーaの溶液を得た。
他の幹ポリマーbの溶液も同様にして、表1に示す組成で合成した。なお、表1の一番左列の括弧内の「C12」などの表記は、各単量体の炭素数が12であることを示す。PSMAにおいては、(C16/C18)は、パルミチル基及びステアリル基の炭素数がそれぞれ16、18であることを示す。
【0041】
【表1】
【0042】
(2)次に、500mLの四つ口フラスコに、上記で得られた幹ポリマーaの溶液(AF−7溶剤中固形分50%)200g、マイケル付加物(ジエタノールアミン/2−エチルヘキシルアクリレート付加物)4.0g、ジエタノールアミン(日本触媒(株)製)2.8gを仕込み、窒素ガスを通気し攪拌しながら、110℃まで昇温した。110℃に1時間保ち、ポリマーのグリシジル基とジエタノールアミンとの反応を完結させた。その後、ジブチル錫ジラウレート(和光純薬工業(株)製)を0.2g添加し、ジイソシアネート(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(タケネート 600、三井化学ポリウレタン(株)製)7.8gとラウリン酸ヘキシル(LAH、花王(株)製)72.0gとの混合物を1時間かけて滴下した。滴下後、温度を120℃に昇温して6時間反応させ、冷却して、固形分40%のウレタンアクリルポリマー溶液Aを得た。ポリマー溶液Bも同様にして、表2に示す組成で製造した。得られた各ウレタンアクリル系ポリマーの重量平均分子量(GPC法、標準ポリスチレン換算)は、22000〜26000であった。
【0043】
尚、前述したマイケル付加物(ジエタノールアミン/2−エチルヘキシルアクリレート付加物)の調製方法は以下の通りである。
35.05(g)のジエタノールアミンを50〜60℃で攪拌しながら、2−エチルヘキシルアクリレート61.4gを滴下し、120℃に加温し、120℃を2時間維持することで調製した。調整したマイケル付加物のうち4.0gを使用した。
【0044】
【表2】
【0045】
次いで、調製した水相成分及び油相成分を混合して得た混合成分を、表3〜5に示す通りA〜Dのうちのいずれかの撹拌条件(詳細を以下に示す)により撹拌して乳化し、油中水型エマルション接着剤を得た。なお、比較例4は、実施例1の接着剤における水相をそのまま使用した。
A:100ml容器に混合成分を25g投入し、2000rpmの回転速度で5分間撹拌した。
B:100ml容器に混合成分を25g投入し、2000rpmの回転速度で3分間撹拌した。
C:100ml容器に混合成分を25g投入し、500rpmの回転速度で3分間撹拌した。
D:100ml容器に混合成分を25g投入し、100rpmの回転速度で1分間撹拌した。
なお、A〜Cは卓上式サンドミル(関西ペイント株式会社製)を使用し、DはスリーワンモーターBL1200(新東科学株式会社製)を使用した。
【0046】
得られた接着剤に対し、以下に示す評価試験を行った。
(1)粘度
TAインツルメント社製レオメーターARG2を用いて、水相、油相、及び接着剤の23℃における粘度を測定し、これを粘度とした。
なお、水相および接着剤の粘度測定ではφ20mm 1°のコーンを使用し、シェアレート100S−1における粘度を求めた。油相の粘度測定ではφ40mm 2°のコーンを使用し、シェアストレス10Paにおける粘度を求めた。
【0047】
(2)水相の粒径
接着剤0.2gをラウリル酸ヘキシルで希釈して2gとした。この希釈液50μLをサンプリングし、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA950に投入し、体積基準の粒度分布における平均径を得た。なお、測定は循環で行い循環経路の溶媒にはオレイン酸メチルを使用した。
【0048】
(3)保存安定性
ガラス瓶(容積:5ml)に接着剤を9割充填密封し、70℃環境に放置した。放置してから、3日後、1週間後及び2週間後に接着剤の分離の有無を目視で観察し、以下の基準で判定した。
◎・・・70℃2週間放置で分離なし
○・・・70℃1週間放置で分離なし
△・・・70℃3日放置で分離なし
×・・・70℃3日放置で分離あり
【0049】
(4)開放放置安定性
金属板表面に接着剤を塗工し、直径1cm、高さ1mmの円柱状の塗膜を形成し、23℃50%環境に24時間放置した。放置後の塗膜の状態を目視で観察し、以下の基準で判定した。
○・・・皮膜形成なし、流動性あり
△・・・皮膜形成なし、流動性なし
×・・・皮膜形成あり、流動性なし
【0050】
(5)セットタイム
紙基材として、日本製紙(株)製、NPI Next IJ90を15mm×100mmに断裁した。その紙片に対し、ワイヤーバー(P0.2H21S)を用いて長手方向半分(15mm×50mm)に接着剤を塗工した。塗工直後に塗工面を内側にして半分に折り、折った紙片の上を7mm幅のローラーを押圧しながら回転させることで加圧した。加圧力は128kgf(1255.2N)とした。加圧後、剥離の操作を行い、紙基材の破れを確認した。加圧から紙基材が破れるまでに要する時間をセットタイムとし、以下の基準で判定した。
◎・・・セットタイム2秒未満
○・・・セットタイム2秒以上10秒未満
△・・・セットタイム10秒以上15秒以下
×・・・セットタイム15秒超
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
表3〜5より、実施例1〜19においてはいずれも、保存安定性、開放放置安定性、及びセットタイムの評価において良好な結果が得られた。すなわち、本発明の油中水型エマルション接着剤は、開放放置安定性に優れるため機械の内部で皮膜を生じにくく、保存安定性に優れ、かつセットタイムが短く低エネルギーで迅速に接着可能であることが分かる。実施例18、19は乳化剤にウレタンアクリレートポリマーを使用した接着剤であり、実施例13と比較し、より優れたセットタイムや保存安定性を示した。
比較例1〜5においてはいずれも、保存安定性、開放放置安定性、及びセットタイムの評価すべてにおいて同時に良好な結果を得ることができなかった。