特許第6200215号(P6200215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200215
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】クーリングタワーシステム
(51)【国際特許分類】
   F28F 19/00 20060101AFI20170911BHJP
   C02F 1/48 20060101ALI20170911BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   F28F19/00 501Z
   C02F1/48 A
   C02F5/00 610A
   C02F5/00 620B
   C02F5/00 620C
   F28F19/00 511Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-124120(P2013-124120)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-240739(P2014-240739A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】501049948
【氏名又は名称】株式会社アルファ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 盾夫
(72)【発明者】
【氏名】古澤 耕一
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−091189(JP,A)
【文献】 特開平11−028470(JP,A)
【文献】 特開平09−057273(JP,A)
【文献】 特開2007−069192(JP,A)
【文献】 特開2000−254654(JP,A)
【文献】 特開2006−087752(JP,A)
【文献】 特開2007−196217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 19/00
C02F 1/48
C02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水と前記冷却水より高温の冷媒とを熱交換する熱交換器と、
前記熱交換器で熱交換された冷却水を冷却するクーリングタワーと、
前記クーリングタワーに補給される冷却水が貯留された給水タンクと、
前記給水タンク内の冷却水の中に配置された磁化器と、
前記給水タンク内に配置され、前記給水タンク内の冷却水を前記磁化器に供給するポンプとを備えており、
前記磁化器は、
磁石と、前記磁石により磁界が発生した領域に形成された冷却水の通路とを有し
複数の前記磁石が前記通路を挟んで互いに対向して配置されていることを特徴とするクーリングタワーシステム。
【請求項2】
異なる磁極が前記通路を挟んで互いに対向して配置され、
前記磁石の異なる磁極同士が前記通路の延在方向に平行な方向に隣り合って配置されていることを特徴とする請求項1に記載のクーリングタワーシステム。
【請求項3】
異なる磁極が前記通路を挟んで互いに対向して配置され、
異なる前記磁石の同じ磁極同士が前記通路の延在方向に平行な方向に隣り合い、
隣り合う前記磁極の間に磁性を有さない第1部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のクーリングタワーシステム。
【請求項4】
前記磁化器は、
前記磁石を囲んで配置された金属管をさらに有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のクーリングタワーシステム。
【請求項5】
前記磁化器は、
前記磁石を囲んで配置された金属管と、
前記磁石の前記金属管に対向する面を被覆した第2部材とをさらに有しており、
前記第2部材は、磁性を有さない材料からなるとともに、前記第1部材に固定されていることを特徴とする請求項に記載のクーリングタワーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器と、クーリングタワーと、クーリングタワーに供給される水が貯留された給水タンクとを備えたクーリングタワーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル空調や地域冷暖房設備等の熱交換器では、高温の熱媒体を冷却するため冷却水が用いられる。近年、使用後の冷却水をクーリングタワーで冷却し、熱交換器に再び供給することにより再利用している。
【0003】
クーリングタワーでは、冷却水と外気(空気)とを直接接触させ、一部の冷却水が蒸発して生じた潜熱(気化熱)により残りの冷却水を冷却している。そして、蒸発した冷却水量に相当する水をクーリングタワーに補給しつつ、熱交換器とクーリングタワーとの間で冷却水を循環させている。
【0004】
冷却水には上水道水や地下水等が用いられ、これらの水にはカルシウム、マグネシウム、シリカ等のスケール成分が含まれている。スケール成分は蒸発せず、冷却水の循環路に付着して配管等を閉塞させる。また、冷却水に含まれる酸化鉄(Fe(OH))が活性酸素と反応すると、赤錆が発生し、配管等を閉塞させる。その結果、熱交換器へ送られる冷却水量が減少することで熱交換率が低下する。
【0005】
そこで、従来からスケールや赤錆の発生を抑止する方法が提案されている。例えば、(1)冷却水に薬剤を添加する方法(特許文献1)、(2)冷却水を電気分解する方法(特許文献2)、(3)クーリングタワーと熱交換器との間の循環路(配管)に磁石を取り付ける方法等がある。
【0006】
特許文献1では、薬剤とスケールとを化学反応させ、スケールを溶解、除去している。
【0007】
また、特許文献2では、電気分解によりスケール成分がイオン化し、電極カバー(電極を覆うカバー)に付着する。これを回収することでスケール成分を除去している。
【0008】
さらに、上記(3)の方法では、磁力により配管内面に固着したスケールを軟化させ、配管の閉塞を抑止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−262494号公報
【特許文献2】特開2006−61844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記(1)の方法では、薬剤を定期的に添加する必要があるため、ランニングコストが高くなる。また、添加後は、冷却水中の濃度管理が必要となり、煩雑な作業を要する。
【0011】
さらに、上記(2)の方法では、電極カバーからスケールを取り除く作業が必要となる。また、電極は消耗品であるため、使用後は新たな電極に交換する必要があり、ランニングコストが高くなる。
【0012】
一方、上記(3)の方法では、(1)及び(2)のようなコストの心配は少ないが、軟化したスケールが循環路を流れ、再び配管等に付着することで、配管が閉塞する。また、配管の管径、配管を通過する冷却水の速度及び流量等の条件により、スケールの軟化量が異なるため、十分な効果が得られないことがある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、ランニングコストを抑えつつ、簡易に且つ確実にスケール及び赤錆の発生を抑止できるクーリングタワーシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のクーリングタワーシステムは、
冷却水と前記冷却水より高温の冷媒とを熱交換する熱交換器と、前記熱交換器で熱交換された冷却水を冷却するクーリングタワーと、前記クーリングタワーに補給される冷却水が貯留された給水タンクと、前記給水タンク内の冷却水の中に配置された磁化器と、前記給水タンク内に配置され、前記給水タンク内の冷却水を前記磁化器に供給するポンプとを備えており、
前記磁化器は、磁石と、前記磁石により磁界が発生した領域に形成された冷却水の通路とを有し
複数の前記磁石が前記通路を挟んで互いに対向して配置されている。
ここで、異なる磁極が前記通路を挟んで互いに対向して配置され、前記磁石の異なる磁極同士が前記通路の延在方向に平行な方向に隣り合って配置されていることが好ましい
また、別の観点として、異なる磁極が前記通路を挟んで互いに対向して配置され、異なる前記磁石の同じ磁極同士が前記通路の延在方向に平行な方向に隣り合い、隣り合う前記磁極の間に磁性を有さない第1部材が配置されていることが好ましい
【0015】
本発明によると、貯留タンク内の冷却水が磁界が発生した領域を通過することでイオン化し(H,OH)、冷却水に含まれるスケール成分(カルシウム、マグネシウム、シリカ等)が沈降分離する。これにより、貯留槽内ではスケール成分の濃縮が抑制され、冷却水中のスケール成分をこれらの溶解度以下に保つことができる。このような冷却水がクーリングタワーに供給され、クーリングタワーと熱交換器との間を循環するため、循環路でのスケールの付着を抑止できる。
また、発生したイオンは、各種部材に付着したスケール(カルシウム、マグネシウム、シリカ等)に衝突し、スケールを剥離するため、スケールの付着量を減少させることができる。
さらに、赤錆(Fe)は水中の酸化鉄(Fe(OH))が活性酸素(O)と反応することによって生じるが、
2Fe(OH)+1/2O→Fe(赤錆)+2HO ・・・(a)
磁化器内で発生したイオン(H)が活性酸素(O)と反応するため、
1/2O+2H→H
上記(a)式の反応、つまり、酸化鉄(Fe(OH))と活性酸素(O)との反応を抑えることができる。その結果、赤錆の発生を抑止できる。また、既に発生した赤錆がイオンによって還元され、黒錆(Fe)となる。
Fe(赤錆)⇒4Fe(黒錆)
黒錆は配管等を腐食から保護する強固な膜であるため、各種部材の腐食を抑止できる。
さらに、本発明では、給水タンク内に磁化器を設置し、冷却水を磁化器内に流すだけでよいため、ランニングコストを抑えつつ、簡易に且つ確実にスケール及び赤錆の発生を抑止できる。
【0016】
また、磁石で冷却水の通路を挟むことにより、通路での磁界強度を高めることができるため、冷却水を確実にイオン化させることができる。これにより、スケール及び赤錆の発生を効果的に抑止できる。
【0017】
また、異なる磁極で冷却水の通路を挟むことにより、通路での磁界強度を高めることができるため、冷却水を確実にイオン化させることができる。これにより、スケール及び赤錆の発生を効果的に抑止できる。
【0018】
さらに、異なる前記磁石の同じ磁極同士が前記通路の延在方向に平行な方向に隣り合い、隣り合う前記磁極の間に磁性を有さない第1部材が配置されている場合、隣り合う磁極同士が反発することで隣り合う磁石が反発する方向へ移動しようとするが、第1部材により磁石の移動を抑止できる。
【0019】
また、前記磁化器は、前記磁石を囲んで配置された金属管をさらに有していることが好ましい。金属管により磁界が外部に漏れないようにすることができるため、磁化器内(金属管内)の磁界強度が弱まることを抑止できる。
【0020】
また、前記磁化器は、前記磁石を囲んで配置された金属管と、前記磁石の前記金属管に対向する面を被覆した第2部材とをさらに有しており、前記第2部材は、磁性を有さない材料からなるとともに、前記第1部材に固定されていることが好ましい。第2部材により、磁石が金属管に引き寄せられることを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、磁化器内で冷却水をイオン化させることにより、冷却水中のスケールを沈降分離させ、スケール成分の濃縮を抑制できる。このような冷却水がクーリングタワーと熱交換器との間の循環路を流れても、スケール成分が循環路に付着しにくい。また、上記イオンが、各種部材に付着したスケールに衝突してスケールを剥離させるとともに、赤錆の発生要因となる活性酸素と反応するため、スケールの付着及び赤錆の発生を抑止できる。さらに、これらの効果は、給水タンク内に磁化器を配置するだけで得られるため、ランニングコストを抑えつつ、簡易に且つ確実にスケール及び赤錆の発生を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るクーリングタワーシステムの全体構成を示す模式図である。
図2】(a)は図1に示す磁化装置の断面図であり、(b)は磁化装置の他の断面図である。
図3】(a)は磁化器の断面図であり、(b)は磁化器の他の断面図((a)のIIIb-IIIb線に沿った断面図)であり、(c)はコア及び磁石の斜視図である。
図4】磁化器内の模式図である。
図5】(a)は変形例1の磁化器のコア及び磁石の斜視図であり、(b)は(a)のVb-Vb線に沿った断面図である。
図6】(a)及び(b)は他の変形例の磁化器内の模式図である。
図7】他の変形例の磁化器内の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
ここでは、本発明の一実施形態であるクーリングタワーシステムについて、図1〜4を参照しつつ説明する。
【0025】
クーリングタワーシステム100は、図1に示すように、ビル空調や地域冷暖房設備等に設けられた熱交換器1と、熱交換器1で使用した冷却水を冷却するクーリングタワー(冷却塔)2と、クーリングタワー2に水を補給する給水タンク3とを備えている。給水タンク3には、上水道水や地下水等が貯留されている。
【0026】
熱交換器1とクーリングタワー2とは第1配管4及び第2配管5によって接続され、熱交換器1、クーリングタワー2、第1配管4及び第2配管5により冷却水の循環路が形成されている。また、クーリングタワー2と給水タンク3とは第3配管6によって接続されている。
【0027】
熱交換器1では、冷却水と、冷却水より高温の熱冷媒とが熱交換される。使用後の冷却水は、第1配管4を通過してクーリングタワー2に送られ、冷却される。冷却された水は、その後、第2配管5を通過して再び熱交換器1に送られる。このように、冷却水は、熱交換器1→第1配管4→クーリングタワー2→第2配管5→熱交換器1→第1配管4→・・・と循環している。
【0028】
クーリングタワー2では、第1配管4から送られた冷却水が上方から散水される。散水された冷却水は、大半がクーリングタワー2の底部に貯まるが、一部は吸気口2a,2b・・・から吸い込まれた大気によって温められ、蒸発する。このときに生じた潜熱(気化熱)により残りの冷却水(散水された冷却水や底部に貯まった冷却水)が冷却される。
【0029】
また、クーリングタワー2には、蒸発及び飛散した冷却水量に相当する冷却水が、給水タンク3から第3配管6を介して補給される。補給された水は、クーリングタワー2の底部に貯まる。
【0030】
次に、給水タンク3内の構成について、図1図3を参照しつつ説明する。
【0031】
給水タンク3の底部には、磁化装置7が配置されている。磁化装置7は、台8に載置された筐体9内に配置されている。筐体9は冷却水中に配置され、内部に冷却水が入らないように密閉されている。また、磁化装置7は、給水タンク3上に配置された電源装置10に接続されている。
【0032】
磁化装置7は、図2(a),(b)に示すように、給水タンク3内の冷却水を汲み上げるポンプ11と、ポンプ11より高位置に配置された円筒状の2つの磁化器21,31とを有している。ポンプ11と磁化器21,31とは、T字状の配管12と、配管12の2つの出口に接続されたL字状の配管13,14とによって接続されている。また、磁化器21,31は、それぞれ、その上方に延在した配管15,16によって筐体9外と連通している。ポンプ11は図1に示す電源装置10に接続され、電源装置10を操作することによりポンプ11のON,OFF操作や汲み上げ量が制御可能である。
【0033】
ポンプ11によって汲み上げた冷却水は、配管12を通過して配管13と配管14とに分かれ、その先にある磁化器21,31に流れる。磁化器21,31を通過した冷却水はそれぞれ配管15,16を通過して筐体9外に排出される。
【0034】
続いて、磁化器21,31について、図3,4を参照しつつ詳細に説明する。なお、磁化器21と磁化器31とは同様な構成であるため、以下では磁化器21について説明し、磁化器31の説明を省略する。
【0035】
磁化器21は、図3(a)及び図3(b)に示すように、金属製の金属管41と、その内部に配置された円筒状のコア42と、コア42を上方及び下方から保持するC形の止め輪43,44と、止め輪43の上方に配置されたスペーサ45と、止め輪44の下方に配置されたスペーサ46とを有している。止め輪43,44により、コア42が金属管41から抜けるのを防止できる。コアは、磁性を有さない材料、例えば、樹脂から形成されている。
【0036】
コア42には、図3(a)〜(c)に示すように、軸方向に貫通した孔42aが形成されている。孔42aは、冷却水の通路となっている。また、コア42には、径の中心に向かって凹んだ3個の穴51,52,53と3個の穴54,55,56とが、互いにコア42の軸対称となる位置に形成されている(図3(b)参照)。穴51,52,53は上下方向に並んで形成されている。また、穴54,55,56も上下方向に並んで形成されている。
【0037】
したがって、穴51と穴54とが対向し、穴52と穴55とが対向し、穴53と穴56とが対向している。ここで、上下方向とは、孔42a(冷却水の通路)の延在方向である。
【0038】
穴51,52,53には、それぞれ直方体状の磁石61,62,63が配置されている。また、穴54,55,56には、それぞれ直方体状の磁石64,65,66が配置されている。上下方向に隣り合う磁石の間(例えば、磁石61と磁石62との間、磁石62と磁石63との間)にはコア42が存在する。例えば、磁石61と磁石62との間にはコア介在部42A(第1部材)が配置され、磁石62と磁石63との間にはコア介在部42B(第1部材)が配置されている。コア介在部は径方向に延在している。
【0039】
磁石61,62,63と、磁石64,65,66とは、冷却水の通路である孔42aを挟んで径方向に対向している(図3(a)参照)。具体的には、磁石61と磁石64とが対向し、磁石62と磁石65とが対向し、磁石63と磁石66とが対向している。
【0040】
また、磁石61,62,63,64,65,66の金属管41に対向する面はコア42に被覆されている。例えば、磁石61の金属管41に向かった面は被覆部42L(第2部材)に被覆されている。被覆部42Lの上端はコア42の上端部に固定され、下端はコア介在部42Aに固定されている。また、磁石62の金属管41に向かった面は被覆部42M(第2部材)に被覆されている。被覆部42Mの上端はコア介在部42Aに固定され、下端はコア介在部42Bに固定されている。なお、図3(c)では、被覆部を省略して図示している。
【0041】
上記の構成から、磁石61,62,63,64,65,66はコア42の軸方向(上下方向)及び径方向に殆ど動かない。したがって、上下方向に隣り合う磁石同士が反発しても(例えば、磁石61と磁石62とが反発しても)、また、金属管41に磁石を引き寄せる力が働いても、コア42のコア介在部42A,42B及び被覆部42L,42Mによって磁石61,62,63,64,65,66は殆ど動かない。
【0042】
磁石61,62,63は、図4に示すように、S極がN極より孔42aに近い位置に配置されている。そして、磁石61,62,63のN極が上下方向に並んで配置され、S極が上下方向に並んで配置されている。
【0043】
一方、磁石64,65,66は、N極がS極より孔42aに近い位置に配置されている。そして、磁石64,65,66のN極が上下方向に並んで配置され、S極が上下方向に並んで配置されている。
【0044】
上記構成から、磁石61のS極と磁石64のN極とが孔42a(冷却水の通路)を挟んで対向し、磁石62のS極と磁石65のN極とが孔42aを挟んで対向し、磁石63のS極と磁石66のN極とが孔42aを挟んで対向している。磁石64のN極から磁石61のS極に向かって磁界が発生し、磁石65のN極から磁石62のS極に向かって磁界が発生し、磁石66のN極から磁石63のS極に向かって磁界が発生している。孔42a(冷却水の通路)は、上記の磁界が発生した領域に形成されている。
【0045】
そして、本発明者らは、磁界が発生した領域に冷却水が流れると、以下の事象が起こることを見出した。
(A)冷却水がイオン化し(H,OH)、冷却水に含まれるスケール成分(カルシウム、マグネシウム、シリカ等)が沈降分離する。
(B)上記イオン(H,OH)は、配管等の各部材に付着したスケールに衝突し、スケールを剥離する。
(C)冷却水中の酸化鉄(Fe(OH))が、冷却水中の活性酸素(O)と反応することにより、赤錆(Fe)が発生するが、
2Fe(OH)+1/2O→Fe(赤錆)+2HO ・・・(a)
上記イオン(H)が活性酸素(O)と反応することにより、
1/2O+2H→H
(a)式の反応を抑えることができるため、赤錆(Fe)の発生を抑止できる。
(D)既に発生した赤錆(Fe)が上記イオンによって還元され、黒錆(Fe)となる。
Fe(赤錆)⇒Fe(黒錆)
黒錆は配管等を腐食から保護する強固な膜であり、各種部材を腐食から守る。
【0046】
上記から、図1に示す給水タンク3内では、磁化装置7を作動させることにより、冷却水中のスケール成分(カルシウム、マグネシウム、シリカ等)が沈降分離する。これにより、給水タンク3内ではスケール成分の濃縮が抑制され、冷却水中のスケール成分をこれらの溶解度以下に保つことができる。このような冷却水がクーリングタワー2に供給され、クーリングタワー2、第2配管5、熱交換器1及び第1配管4の循環路を循環しても、循環路にスケールが殆ど付着しない。したがって、本発明のクーリングタワーシステムではスケールの付着を抑止できる。
【0047】
また、イオン化した冷却水(H,OH)がクーリングタワー2に供給され、クーリングタワー2、第2配管5、熱交換器1及び第1配管4の循環路を循環すると、イオン(H,OH)が配管等に付着したスケールに衝突し、スケールを剥離させる。これにより、循環路へのスケールの付着を減少させることができる。さらに、イオン(H)により赤錆の発生を抑止できるとともに、イオン(OH)が既に発生した赤錆を黒錆に変えるため、各種部材の腐食を抑止できる。
【0048】
また、本実施形態では、給水タンク3内に磁化器21,31を設置し、磁化器21,31内に冷却水を流すだけでよいため、ランニングコストを抑えつつ、簡易に且つ確実にスケール及び赤錆の発生を抑止できる。
【0049】
さらに、磁化器21,31において、冷却水の通路(孔42a)を磁石61,62,63と磁石64,65,66とで挟むことにより、孔42aでの磁界強度を高めることができる。これにより、冷却水を確実にイオン化させることができるため、スケール及び赤錆の発生を効果的に抑止できる。
【0050】
また、磁化器21,31では、冷却水の通路(孔42a)をN極とS極とで挟むことにより、孔42aでの磁界強度を高めることができる。これにより、冷却水を確実にイオン化させることができるので、スケール及び赤錆の発生を効果的に抑止できる。
【0051】
さらに、磁石61,62,63,64,65,66を金属管41で囲むことにより、磁界が外部に漏れないようにすることができるため、磁化器21,31内の磁界強度が弱まることを抑止できる。
【0052】
また、上下方向に並んだ磁石61,62,63では、N極が上下方向に並び、S極が上下方向に並んでいるため、上下方向に隣り合う磁石が反発し合うが、磁石間にコア42が配置されているため(例えば、磁石61と磁石62との間にはコア介在部42Aが配置され、磁石62と磁石63との間にはコア介在部42Bが配置されているため)、磁石61,62,63の移動を抑止できる。
【0053】
同様に、上下方向に並んだ磁石64,65,66においても、N極が上下方向に並び、S極が上下方向に並んでいるため、上下方向に隣り合う磁石が反発し合うが、磁石間にコア42が配置されているため、磁石64,65,66の移動を抑止できる。
【0054】
さらに、磁化器21において、金属管41から磁石61,62,63,64,65,66を引き寄せる力が働いても、コア42の被覆部(図3(a)の被覆部42L,42M等)によって、磁石61,62,63,64,65,66の移動を抑えることができる。
【0055】
ここで、磁化装置の条件の一例を説明する。
・磁化器21,31を通過する水の速度:1m/秒以上30m/秒以下
・磁化器21,31内の水の通過時間 :1m秒以上
・磁化器21,31内の磁界強度 :100mT以上400mT
なお、水の速度、水の通過時間及び磁界強度は、上記範囲に限られず、変更可能である。
【0056】
〔変形例1〕
次に、本発明の変形例1について、図5を参照しつつ説明する。変形例1において上記実施形態と異なる点は、磁化器の構成(コア及び磁石)である。なお、図5では、磁化器の金属管41、止め輪43,44及びスペーサ45,46を省略している。
【0057】
磁化器221は、図示しない金属製の管の内部に配置された筒状のコア242を有している。コア242には、軸方向に貫通した孔(冷却水の通路)242aが形成され、側部に凹部243が形成されている。
【0058】
また、コア242には、径中心に向かって凹んだ4個の穴251,252,253,254と4個の穴255,256,257,258とが、互いにコア42の軸対称となる位置に形成されている。4個の穴251,252,253,254は上下方向に並んで形成されている。また、4個の穴255,256,257,258も上下方向に並んで形成されている(図5(b)参照)。
【0059】
したがって、穴251と穴255とが対向し、穴252と穴256とが対向し、穴253と穴257とが対向し、穴254と穴258とが対向している。
【0060】
穴251,252,253,254には直方体状の磁石261,262,263,264が配置され、穴255,256,257,258には直方体状の磁石265,266,267,268が配置されている。上下方向に隣り合う磁石の間にはコアが存在する。例えば、磁石261と磁石262との間にはコア介在部242A(第1部)が存在し、磁石262と磁石263との間にはコア介在部242B(第1部)が存在する。
【0061】
磁石261,262,263,264と、磁石265,266,267,268とは、孔242a(冷却水の通路)を挟んで径方向に対向している(図5(b)参照)。具体的には、磁石261と磁石265とが対向し、磁石262と磁石266とが対向し、磁石263と磁石267とが対向し、磁石264と磁石268とが対向している。
【0062】
また、磁石261,262,263,264,265,266,267,268の金属管41に対向する面はコア242によって被覆されている。例えば、磁石262の金属管41に向かった面は被覆部242L(第2部材)に被覆されている。被覆部242Lの上端はコア介在部242Aに固定され、下端はコア介在部242Bに固定されている。このように、磁石を被覆する被覆部はコア介在部に固定されている。なお、図5(a)では、被覆部を省略して図示している。
【0063】
このように、上下方向に並ぶ磁石間にはコア242(「コア介在部242A」,「コア介在部242B」等)が配置されているとともに、磁石の金属管241に対向する面はコア242(「被覆部242L」等)によって被覆されている。これにより、磁石261,262,263,264,265,266,267,268は、コア42の軸方向(上下方向)及び径方向に殆ど動かない。
【0064】
また、図5(b)に示すように、磁石261,262,263,264は、S極がN極よりも孔242aに近い位置に配置されている。そして、磁石261,262,263,264は、N極が上下方向に並んで配置され、S極が上下方向に並んで配置されている。
【0065】
一方、磁石265,266,267,268では、N極がS極より孔242aに近い位置に配置されている。したがって、磁石265,266,267,268でも、N極が上下方向に並んで配置され、S極が上下方向に並んで配置されている。
【0066】
上記構成から、磁石261のS極と磁石265のN極とが孔242a(冷却水の通路)を挟んで対向し、磁石262のS極と磁石266のN極とが孔42aを挟んで対向し、磁石263のS極と磁石267のN極とが孔42aを挟んで対向し、磁石264のS極と磁石268のN極とが孔42aを挟んで対向している。これにより、互いに対向するN極からS極に向かって磁界が発生している。この領域に冷却水を流すと、冷却水がイオン化する(H,OH)。
【0067】
以上より、本変形例においても、磁化器で冷却水をイオン化することにより、ランニングコストを抑えつつ、簡易に且つ確実にスケール及び赤錆の発生を抑止できる。
【実施例】
【0068】
本発明のクーリングタワーシステムを用いて給水タンク内の冷却水を処理し、処理前と処理後の配管の状態及び給水タンク内の冷却水を比較した。
【0069】
(実験条件)
スケールの付着を抑えるため、給水タンクに定期的に薬剤(水処理材)を添加し、平成24年7月5日に薬剤添加による効果(管内壁面及び給水タンク内の冷却水)を確認した。
その後、薬剤添加を終了し、給水タンクに2台の磁化装置を配置した(図1参照)。そして、平成24年7月27日から平成24年11月9日まで磁化装置を運転した。ここで、磁化装置の磁化器(コア及び磁石)には「ツインフォース15A」(株式会社アルファ技研製)を用い、ポンプには「水中ポンプ32PL−6.15S」(テラル株式会社製)を用いた。そして、平成24年11月9日に磁化装置による効果(配管内壁面及び給水タンク内の冷却水)を確認した。ここで調査対象の配管には、給水タンクとクーリングタワーとを接続する配管(図1の「第3配管6」に相当)を用いた。
【0070】
(実験結果)
<配管の状態>
平成24年7月5日時点では、配管内壁面(略全面)に赤錆が発生していた。このように、薬剤添加では赤錆の発生を十分に抑えることができなかった。
しかし、磁化装置設置後の平成24年11月9日には、赤錆が黒錆に変化していた。これは、磁化器を通過した冷却水がイオン化し、イオン(OH)が赤錆と反応したためと考えられる。
<給水タンク内の冷却水>
平成24年7月5日は、給水タンク内の冷却水が黒く濁っていた。薬剤添加ではスケール成分を除去できず、冷却水中のスケール成分が飽和状態であったと考えられる。
一方、磁化装置設置後の平成24年11月9日は、給水タンク内の冷却水が透明であった。これは、冷却水に含まれるスケール成分が沈殿分離したためと考えられる。
【0071】
また、冷却水を分析したところ、表1の結果が得られた。
【表1】
【0072】
ここで、「溶存酸素」は溶存酸素計を用いて測定した。
また、「pH」をJIS K0102−12.1を用いて分析した。
さらに、「カルシウム濃度」、「ケイ素濃度」、「マグネシウム濃度」及び「鉄濃度」については、冷却水を5Cろ紙で濾過し、濾過後の冷却水をICP発光分光分析装置を用いて分析した。
【0073】
通常、薬剤添加を継続しても、その効果が十分でないため、冷却水中のスケール成分(カルシウム、ケイ素、マグネシウム)及び赤錆の原因となる鉄の濃度が増加する。しかし、磁化装置設置後は、表1に示すように、冷却水中のカルシウム、ケイ素及び鉄を減少させることができた。また、マグネシウム濃度も変化しておらず、増加することを抑止できた。
【0074】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0075】
例えば、本実施形態では、3つの磁石61,62,63(磁石64,65,66)が冷却水の通路(孔42a)の延在方向に平行な方向に並んでいる。また、変形例1では、4つの磁石261,262,263,264(磁石265,266,267,268)が冷却水の通路(孔242a)の延在方向に平行な方向に並んでいるが、磁石の数(冷却水の通路の延在方向に平行に並ぶ磁石の数)は、2つでもよく、5つ以上でもよい。また、1つの磁石だけが配置されてもよい。
【0076】
さらに、磁石の配置は、本実施形態及び変形例1に示すものに限られず、変更可能である。
【0077】
例えば、本実施形態及び変形例1では、2つの磁石(例えば、磁石61と磁石64)を冷却水の通路(孔42a)を挟んで互いに対向して配置しているが、2つの磁石が対向していなくてもよい。例えば、2つの磁石をコアの周方向に隣り合うように配置し、一方の磁石のN極を冷却水の通路に対向させ、他方の磁石のS極を冷却水の通路に対向させると、上記N極からS極に向かって磁界が発生する。この領域に冷却水を流すことで、冷却水をイオン化できる。
【0078】
また、本実施形態及び変形例1では、磁石の一方の極(N極又はS極)を他方の極(S極又はN極)より冷却水の通路に近い位置に配置しているが、図6(a)に示すように、一つの磁石のN極及びS極を冷却水の通路から同じ距離の位置に配置してもよい。図6(a)では、2つの磁石361,362を冷却水の通路を挟んで互いに対向して配置している。図中において左側の磁石361では、S極がN極の上方に配置されている。一方、図中において右側の磁石362では、N極がS極の上方に配置されている。そして、左側の磁石361のS極と、右側の磁石362のN極とが冷却水の通路を挟んで対向し、磁石362のN極から磁石361のS極に向かって磁界が発生している。また、左側の磁石361のN極と、右側の磁石362のS極とが冷却水の通路を挟んで対向し、磁石361のN極から磁石362のS極に向かって磁界が発生している。さらに、磁石361のN極からS極に向かっても磁界が発生し、磁石362のN極からS極に向かっても磁界が発生している。このような領域に冷却水を流すことにより、冷却水をイオン化できる。
【0079】
また、本実施形態及び変形例1では、異なる磁極(N極とS極)が冷却水の通路(孔42a,242a)を挟んで互いに対向して配置されているが、同じ磁極同士が対向してもよい。
【0080】
さらに、本実施形態及び変形例1では、同じ磁極が上下方向に並んで配置されているが、異なる磁極が上下方向に並んで配置されてもよい。例えば、図6(b)では、冷却水の通路の左側に磁石461,462,463が配置され、通路の右側に磁石464,465,466が配置されている。通路の左側の磁石461,462,463では、N極とS極とが上下方向に交互に配置されている。また、通路の右側の磁石464,465,466でも、N極とS極とが上下方向に交互に配置されている。
【0081】
そして、磁石461のS極と磁石464のN極とが冷却水の通路を挟んで対向し、N極からS極に向かって磁界が発生している。また、磁石462のN極と磁石465のS極とが冷却水の通路を挟んで対向し、N極からS極に向かって磁界が発生している。さらに、磁石463のS極と磁石466のN極とが冷却水の通路を挟んで対向し、N極からS極に向かって磁界が発生している。このような領域に冷却水を流すことで、冷却水をイオン化できる。
【0082】
また、本実施形態及び変形例1では、2つの磁石を冷却水の通路を挟んで対向するように配置したが、図7に示すように、1つの磁石561だけを用いてもよい。図7では、半円形状の磁石661が冷却水の通路の外側に周方向に沿って配置されている。そして、磁石561のN極とS極とが冷却水の通路を挟んで対向し、対向するN極からS極に向かって磁界が発生している。この領域に冷却水を流すことにより、冷却水をイオン化できる。
【0083】
さらに、本実施形態及び変形例1では、上下方向に並んだ2つの磁石の間(例えば、図3(c)の「磁石61」と「磁石62」との間)にコア(コア介在部42A)が存在するが、2つの磁石の間にコアが存在しなくてもよい。
【0084】
また、本実施形態及び変形例1では、磁化装置が金属管を有するが、金属管を有していなくてもよい。
【0085】
さらに、本実施形態及び変形例1では、磁化器において、磁石の金属管に対向する面(例えば、図3(a)の「磁石62」の「金属管41」に対向する面)にコア(被覆部42L)が被覆されているが、磁石の金属管に対向する面がコア等によって被覆されていなくてもよい。
【0086】
また、本実施形態及び変形例1では、図2に示すように、磁化装置7が2つの磁化器21,31を備え、ポンプ11から汲み上げた水が2つの磁化器21,31に送られるが、磁化器の数は1つでもよく、3つ以上でもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 熱交換器
2 クーリングタワー
3 給水タンク
4 第1配管
5 第2配管
6 第3配管
7 磁化装置
11 ポンプ
21,31,221 磁化器
41 金属管
42,242 コア(第1絶縁材)
42a,242a 孔(冷却水の通路)
42A,42B,142A,142B コア介在部(第1部材)
42L,42M,142L 被覆部(第2部材)
61,62,63,64,65,66,261,262,263,264,265,266,267,268 磁石
100 クーリングタワーシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7