特許第6200260号(P6200260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200260
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】バルブの開放点検支援装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20170911BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   G05B23/02 T
   F16K51/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-204570(P2013-204570)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-69515(P2015-69515A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 大介
(72)【発明者】
【氏名】小山 晋一
(72)【発明者】
【氏名】倉益 脩
(72)【発明者】
【氏名】福田 稔
(72)【発明者】
【氏名】木幡 真望
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−215917(JP,A)
【文献】 特開2002−130531(JP,A)
【文献】 特開2013−191002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブの開放点検を行うか否かの判定指標の履歴を登録する履歴登録部と、
前記履歴登録部に登録されている判定指標の履歴に基づいて、予め定められている複数種類の予測方式毎に、その予測方式に従って前記バルブの開放点検が必要になる時期を予測する開放点検予測部と、
前記開放点検予測部によって予測された予測結果を前記予測方式の種類毎に提示する予測結果提示部と
前記提示された予測結果を参考にして実施した前記バルブの開放点検の実施結果としてオペレータから入力される開放点検実施の妥当性を登録する実施結果登録部と、
前記実施結果登録部に登録されている開放点検実施の妥当性に基づいて前記複数種類の予測方式を評価し妥当性の高い種類の予測方式を代表指標化する予測種類評価部と
を備えることを特徴とするバルブの開放点検支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたバルブの開放点検支援装置において、
前記開放点検予測部は、
平均的予測,悲観的予測,楽観的予測の少なくとも2種類の予測方式に従って、その予測方式の種類毎に前記バルブの開放点検が必要になる時期を予測する
ことを特徴とするバルブの開放点検支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたバルブの開放点検支援装置において、
前記実施結果登録部は、
前記平均的予測の予測方式の予測結果を選択して開放点検を実施した結果として開放点検には早すぎたと評価できる場合には、「平均的予測が妥当ではない」ことと「楽観的予測が妥当である」ことを登録するようにさせ、前記平均的予測の予測方式の予測結果を選択して開放点検を実施した結果として開放点検には遅すぎたと評価できる場合には、「平均的予測が妥当ではない」ことと「悲観的予測が妥当である」ことを登録するようにさせる入力部
を備えることを特徴とするバルブの開放点検支援装置。
【請求項4】
請求項2に記載されたバルブの開放点検支援装置において、
前記実施結果登録部は、
前記楽観的予測の予測方式の予測結果を選択して開放点検を実施した結果として開放点検には早すぎたと評価できる場合には、「楽観的予測が妥当である」ことを登録するようにさせ、前記楽観的予測の予測方式の予測結果を選択して開放点検を実施した結果として開放点検には遅すぎたと評価できる場合には、「楽観的予測が妥当ではない」ことと「平均的予測が妥当である」ことを登録するようにさせる入力部
を備えることを特徴とするバルブの開放点検支援装置。
【請求項5】
請求項2に記載されたバルブの開放点検支援装置において、
前記実施結果登録部は、
前記悲観的予測の予測方式の予測結果を選択して開放点検を実施した結果として開放点検には遅すぎたと評価できる場合には、「悲観的予測が妥当である」ことを登録するようにさせ、前記悲観的予測の予測方式の予測結果を選択して開放点検を実施した結果として開放点検には早すぎたと評価できる場合には、「悲観的予測が妥当ではない」ことと「平均的予測が妥当である」ことを登録するようにさせる入力部
を備えることを特徴とするバルブの開放点検支援装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載された開放点検支援装置において、
前記判定指標は、
前記バルブの複数の異常種別毎の評価項目に基づく総合的指標である
ことを特徴とするバルブの開放点検支援装置。
【請求項7】
バルブの開放点検を行うか否かの判定指標の履歴を登録する履歴登録ステップと、
前記履歴登録ステップによって登録された判定指標の履歴に基づいて、予め定められている複数種類の予測方式毎に、その予測方式に従って前記バルブの開放点検が必要になる時期を予測する開放点検予測ステップと、
前記予測された予測結果を前記予測方式の種類毎に提示する予測結果提示ステップと、
前記提示された予測結果を参考にして実施した前記バルブの開放点検の実施結果としてオペレータから入力される開放点検実施の妥当性を登録する実施結果登録ステップと、
前記実施結果登録ステップによって登録されている開放点検実施の妥当性に基づいて前記複数種類の予測方式を評価し妥当性の高い種類の予測方式を代表指標化する予測種類評価ステップと
を備えることを特徴とするバルブの開放点検支援方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブの開放点検を支援するバルブの開放点検支援装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、石油,化学系のプラントでは多数のバルブが使用されており、定期的なメンテナンスの際には、多数のバルブが整備対象の候補になる。そして、その多数のバルブの中からの実際に整備対象となるバルブの選別は、使用期間などの参考情報に基づき、整備発注者と整備受注者が適宜協議して行なっていた。また、そのための参考情報を収集してレポートとして出力する機器情報管理システムも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、プラントで多数使用されるバルブには、整備作業として開放点検(分解整備)が絶対に必要なバルブや、逆にほとんど整備作業が不要なバルブなどが混在するため、整備対象のバルブを選別することは、整備コスト面(工数,交換部材費など)と保全効果面(安全性,動作性能など)とのトレードオフの課題を扱うことになる。
【0004】
最近では、情報処理システムの進歩に伴い、開放点検の日程管理や実施実績管理は、合理化・高度化が進んでいる。一方、開放点検の判定は、熟練作業者の勘に頼る場合もあった。これに対し、例えば特許文献2には、バルブの異常診断項目毎に過去の複数回の診断データに基づいて1つの変化傾向を求め、その求めた変化傾向にしたがって劣化が進行して行くものと想定し、メンテナンスが必要な基準値に到達する時期を予想してメンテナンスプランを作成する技術が示されている。
【0005】
この特許文献2に示された技術を適用すれば、バルブの開放点検を行うか否かの判定指標を定め、この判定指標のトレンドが予め定められた判定基準(閾値、あるいは閾値をオペレータが決定するための参考基準など)に到達する時期を予測して開放点検を行うか否かを決定するようにすることが考えられる。これにより、判定が主観的にならず、熟練作業者でなくても適切な判定を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−215917号公報
【特許文献2】特開2002−130531号公報(特許第3411980号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バルブは石油・化学プラントで使用されながら定期的な点検が行なわれるが、開放点検の必要性は使用条件や稼働実績などにより異なる。点検頻度は頻繁ではないため、比較的長期間のスパンでの判定指標のトレンドを見る必要性があるが、その長期間のスパンでの稼働状態も一定ではないし、プラントの性質によっても異なる。
【0008】
このため、判定指標に対する予測方式を1種類に固定すると、その予測方式では早い時期に開放点検が必要であると予測されてしまったり、遅い時期に開放点検が必要であると予測されてしまったりし、適切な開放点検の時期を予測することができない。すなわち、開放点検の判定指標を用いたとしても、判定指標に対する予測方式が高精度側に改善されなければ、点検コストの改善は進まない。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、判定指標に対する予測方式を実績に基づいて高精度側に絞り込んで行くようにして、点検コストの改善を進めることが可能なバルブの開放点検支援装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために本発明は、バルブの開放点検を行うか否かの判定指標の履歴を登録する履歴登録部と、履歴登録部に登録されている判定指標の履歴に基づいて、予め定められている複数種類の予測方式に従って、その予測方式の種類毎にバルブの開放点検が必要になる時期を予測する開放点検予測部と、開放点検予測部によって予測された予測結果を予測方式の種類毎に提示する予測結果提示部と、提示された予測結果を参考にして実施したバルブの開放点検の実施結果としてオペレータから入力される開放点検実施の妥当性を登録する実施結果登録部と、実施結果登録部に登録されている開放点検実施の妥当性に基づいて複数種類の予測方式を評価し妥当性の高い種類の予測方式を代表指標化する予測種類評価部とを備えることを特徴とする。
【0011】
この発明では、バルブの開放点検を行うか否かの判定指標の履歴を登録し、この登録されている判定指標の履歴に基づいて、予め定められている複数種類の予測方式毎に、その予測方式に従ってバルブの開放点検が必要になる時期を予測し、その予測結果を予測方式の種類毎に提示する。オペレータは、この予測方式の種類毎に提示される予測結果を参考にして、バルブの開放点検を実施する。
【0012】
本発明では、提示された予測結果を参考にして実施したバルブの開放点検の実施結果としてオペレータから入力される開放点検実施の妥当性を登録する実施結果登録部と、実施結果登録部に登録されている開放点検実施の妥当性に基づいて複数種類の予測方式を評価し妥当性の高い種類の予測方式を代表指標化する予測種類評価部とを設けており、予測方式の種類毎に予測結果を提示する際、妥当性の高い種類の予測方式を代表指標として提示するようにし、オペレータに妥当性の高い種類の予測方式に従う予測結果の選択を促すことが可能となる。
【0013】
バルブは石油・化学プラントで使用されながら定期的な点検が行なわれるが、開放点検の必要性は使用条件や稼働実績などにより異なる。点検頻度は頻繁ではないため、比較的長期間のスパンでの判定指標のトレンドを見る必要性があるが、その長期間のスパンでの稼働状態も一定ではないし、プラントの性質によっても異なる。したがって、妥当な手順として、判定指標に対する複数種類の予測方式を予め用意しておいて、バルブの開放点検の実績に基づいて高精度側に予測方式に絞り込んで行くことにより、点検コストの改善を進めることが可能となる。本発明は、この点を着眼点としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バルブの開放点検を行うか否かの判定指標の履歴を登録し、この登録されている判定指標の履歴に基づいて、予め定められている複数種類の予測方式毎に、その予測方式に従ってバルブの開放点検が必要になる時期を予測し、その予測結果を予測方式の種類毎に提示するようにし、また、提示された予測結果を参考にして実施したバルブの開放点検の実施結果としてオペレータから入力される開放点検実施の妥当性を登録するようにし、登録されている開放点検実施の妥当性に基づいて複数種類の予測方式を評価し妥当性の高い種類の予測方式を代表指標化するようにしたので、判定指標に対する予測方式を実績に基づいて高精度側に絞り込んで行くようにして、点検コストの改善を進めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係るバルブの開放点検支援装置の一実施の形態の要部を示すブロック図である。
図2】このバルブの開放点検支援装置によって開放点検が支援されるバルブの一例を示す図である。
図3】このバルブの開放点検支援装置で用いられる総合評価指標の元となる5項目の個別評価指標を示す図である。
図4】総合評価指標の履歴を例示する図である。
図5】予測方式の種類毎の予測結果の提示例を示す図である。
図6】実施結果登録部に入力される開放点検の実施結果(開放点検実施の妥当性)を登録する際の具体例を説明する図である。
図7】平均的予測が代表指標とされた場合の予測結果提示部での提示例を示す図である。
図8】バルブの開放点検支援装置のCPUが実行する処理動作の概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るバルブの開放点検支援装置の一実施の形態の要部を示すブロック図である。このバルブの開放点検支援装置(以下、単に開放点検装置という)100は、図2に示すようなバルブ200に対して適用されるコンピュータ上のソフトウェアツールであり、このバルブ200の開放点検を支援する。
【0017】
図1において、1は履歴登録部、2は開放点検予測部、3は予測結果提示部、4は予測結果登録部、5は実施結果登録部、6は予測種類評価部である。
【0018】
この開放点検支援装置100における各部の処理動作は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現される。具体的には、コンピュータにプログラムがインストールされ、このインストールされたプログラムに従うCPU(Central Processing Unit)の処理動作として実現される。
【0019】
履歴登録部1は、バルブ200の開放点検を行うか否かの判定指標として、数値化された総合的な指標の履歴を登録する。本実施の形態において、数値化された総合的な指標としては、例えば図3に示す5項目(スティックスリップ、シートリーク、Cv値、操作器異常、グランド漏れ)の個別評価指標の加重平均を用いる。この総合的な指標は不図示の総合指標算出部から履歴登録部1に送られてくる。以下、この総合的な指標を総合評価指標Pとする。
【0020】
図4に総合評価指標Pの履歴を例示する。この例では、1ヶ月毎に4ヶ月目まで総合評価指標Pが求められており、この総合評価指標Pの履歴が履歴登録部1に登録されている。なお、図4では、2ヶ月経過の時点はメンテナンス実施月であり、この時点では開放点検を実施していない。現時点の4ヶ月経過の時点はメンテナンス実施月であり、開放点検の要否を判定する必要がある。次回のメンテナンス予定月は6ヶ月経過の時点である。
【0021】
開放点検予測部2には、バルブ200の開放点検が必要になる時期を予測する予測方式として、複数種類の予測方式が定められている。この実施の形態では、平均的予測,悲観的予測,楽観的予測の3種類の予測方式が定められている。この3種類の予測方式において、悲観的予測は最も早い時期に開放点検が必要であると予測するものであり、楽観的予測は最も遅い時期に開放点検が必要であると予測するものであり、平均的予測は両者のほゞ中間的な時期に開放点検が必要であると予測するものである。
【0022】
開放点検予測部2は、履歴登録部1に登録されている総合評価指標Pの履歴に基づいて、平均的予測,悲観的予測,楽観的予測の3種類の予測方式毎に、その予測方式に従ってバルブ200の開放点検が必要になる時期を予測する。
【0023】
開放点検予測部2において、悲観的予測では、総合評価指標Pの最新側期間(例えば、最新3ヶ月間)の履歴を参照し、最も早い劣化傾向を抽出して開放点検が必要になる時期を予測する。図4の例では、1ヶ月〜4ヶ月の期間の履歴を参照し、最も早い劣化傾向として2ヶ月〜3ヶ月の期間の劣化傾向を抽出して、開放点検が必要になる時期を予測する。ただし、これに限られるものではない。後述の平均的予測のA倍(A>1.0)の劣化速度というように規定してもよい。
【0024】
開放点検予測部2において、楽観的予測では、総合評価指標Pの最新側期間(例えば、最新3ヶ月間)の履歴を参照し、最も遅い劣化傾向を抽出して開放点検が必要になる時期を予測する。図4の例では、1ヶ月〜4ヶ月の期間の履歴を参照し、最も遅い劣化傾向として1ヶ月〜2ヶ月の期間の劣化傾向を抽出して、開放点検が必要になる時期を予測する。ただし、これに限られるものではない。後述の平均的予測のB倍(B<1.0)の劣化速度というように規定してもよい。
【0025】
開放点検予測部2において、平均的予測では、総合評価指標Pの最新側期間(例えば、最新3ヶ月間)の履歴を参照し、劣化傾向の平均レベルを算出して開放点検が必要になる時期を予測する。図4の例では、1ヶ月〜4ヶ月の期間の履歴を参照し、1ヶ月〜4ヶ月の期間の劣化傾向の平均レベルを算出して、開放点検が必要になる時期を予測する。ただし、これに限られるものではない。前述の最も早い劣化傾向と最も遅い劣化傾向の中間値というように規定してもよい。
【0026】
予測結果提示部3は、開放点検予測部2によって予測された予測結果を予測方式の種類毎に画面に提示する。図5に予測方式の種類毎の予測結果の提示例を示す。図5において、T1は悲観的予測によって予測された総合評価指標Pの推移(悲観的予測線)、T2は楽観的予測によって予測された総合評価指標Pの推移(楽観的予測線)、T3は平均的予測によって予測された総合評価指標Pの推移(平均的予測線)、Thは判定基準であり、悲観的予測線T1と判定基準Thとが交差する点t1が悲観的予測に従う予測結果(悲観的予測結果)、楽観的予測線T2と判定基準Thとが交差する点t2が楽観的予測に従う予測結果(楽観的予測結果)、平均的予測線T3と判定基準Thとが交差する点t3が平均的予測に従う予測結果(平均的予測結果)である。開放点検予測部2によって予測された予測方式の種類毎の予測結果は予測結果登録部4に登録される。
【0027】
オペレータは、予測結果提示部3が提示する予測方式の種類毎の予測結果から所望の予測結果を選択して、バルブの開放点検を実施する。例えば、図5に示した例では、現時点の4ヶ月経過の時点はメンテナンス実施月であり、次回のメンテナンス予定月は6ヶ月経過の時点である。この例において、悲観的予測結果と平均的予測結果は次回のメンテナンス予定月に達する前の時点として提示されており、楽観的予測結果は次回のメンテナンス予定月に達した後の時点として提示されている。
【0028】
バルブによっては、その用途や設置場所などにより、極めて重要なものもあり、それほど重要でないものもある。重要な場合には、悲観的予測結果に従って現時点で早めに開放点検をすべきであろうし、それほど重要でない場合には楽観的予測に従って次回のメンテナンス予定月まで開放点検の時期を延ばすという選択も考えられる。オペレータは、これらの予測結果を参考にして、現時点で開放点検を実施するか否かを決定する。
【0029】
オペレータは、バルブ200の開放点検を実施した場合、開放点検の実施結果として開放点検実施の妥当性を実施結果登録部5に登録する。実施結果登録部5への開放点検実施の妥当性の登録は例えば次のようにして行う。
【0030】
オペレータに開放点検の実施結果を入力させる際、平均的予測を選択した結果として開放点検には早すぎたと評価できる場合には、「平均的予測が妥当ではない」ことと「楽観的予測が妥当である」ことを登録するようにさせる。また、平均的予測を選択した結果として開放点検には遅すぎたと評価できる場合には、「平均的予測が妥当ではない」ことと「悲観的予測が妥当である」ことを登録するようにさせる。
【0031】
同様に、楽観的予測を選択した結果として開放点検には早すぎたと評価できる場合には、「楽観的予測が妥当である」ことを登録するようにさせる。また、楽観的予測を選択した結果として開放点検には遅すぎたと評価できる場合には、「楽観的予測が妥当ではない」ことと「平均的予測が妥当である」ことを登録するようにさせる。
【0032】
同様に、悲観的予測を選択した結果として開放点検には遅すぎたと評価できる場合には、「悲観的予測が妥当である」ことを登録するようにさせる。また、悲観的予測を選択した結果として開放点検には早すぎたと評価できる場合には、「悲観的予測が妥当ではない」ことと「平均的予測が妥当である」ことを登録するようにさせる。
【0033】
このような登録方式を採用することにより、1回の開放点検で2つの予測方式の種類に対して実施結果を得られる可能性が生じるので、効率を向上できる。
【0034】
図6を用いて実施結果登録部5に開放点検の実施結果(開放点検実施の妥当性)を登録する際の具体例を説明する。実施結果登録部5は、オペレータからの開放点検の実施結果の入力部51を備えている。入力部51は、図6(a)に示すように、開放点検予測結果登録画面G1を表示する。開放点検予測結果登録画面G1には予測結果提示部3が提示した予測結果の予測方式の種類が選択的に表示される。この予測方式の種類の表示に際しては予測結果登録部4の登録内容を参照する。
【0035】
オペレータは、この開放点検予測結果登録画面G1において、開放点検の実施に際して採用した予測方式の種類を選択する。すると、図6(b)に示すような実施結果登録画面G2が表示される。実施結果登録画面G2には開放点検実施の評価項目(「早すぎ」、「妥当」、「遅すぎ」)が選択的に表示される。
【0036】
オペレータは、この実施結果登録画面G2において、開放点検実施の評価項目を選択する。ここで、例えば、評価項目として「早すぎ」を選択すると、図6(c)に示すように、実施結果登録画面G3が表示される。実施結果登録画面G3には、実施結果登録画面G2に入力された内容に基づいて、実施結果登録部5への登録内容が自動的に作成され表示される。この例では、実施結果登録画面G2に「平均的予測」が「早すぎ」という内容が入力されているので、実施結果登録画面G3には、平均的予測を不適(マイナス1点)とし、楽観的予測を妥当(プラス1点)とする登録内容が自動的に作成され表示されている。
【0037】
オペレータは、実施結果登録画面G3において、その登録内容でよければ「登録」を選択する。すると、実施結果登録画面G3における登録内容(開放点検の実施結果)が開放点検実施の妥当性として実施結果登録部5に登録される。オペレータは、この実施結果登録部5への開放点検実施の妥当性の登録をバルブ200の開放点検を実施する毎に行う。
【0038】
予測種類評価部6は、実施結果登録部5に登録されている開放点検実施の妥当性に基づいて、複数種類の予測方式(平均的予測,悲観的予測,楽観的予測)を評価し、妥当性の高い種類の予測方式を代表指標として予測結果提示部3に通知する。例えば、妥当とされる確率(確度)が最も高い種類の予測方式を代表指標として確定し、予測結果提示部3において代表指標がどれであるかを、合わせて提示するように操作する。
【0039】
図7に平均的予測が代表指標とされた場合の予測結果提示部3での提示例を示す。この例では、代表指標とされた平均的予測が分かるように、その平均的予測線T3を実線で示すようにしている。なお、この代表指標の提示と合わせて、前回の開放点検の実施に際して用いた種類の予測方式についても、推奨指標として他と区別して提示するようにしてもよい。
【0040】
このようにして、本実施の形態によれば、予測方式の種類毎に予測結果を提示する際、妥当性の高い種類の予測方式が代表指標として提示されるようになり、すなわち予測方式が実績に基づいて高精度側に絞り込まれて行くようになり、オペレータに妥当性の高い種類の予測方式に従う予測結果の選択を促し、点検コストの改善を進めることが可能となる。
【0041】
図8に開放点検支援装置100のCPUが実行する処理動作の概略的なフローチャートを示す。開放点検支援装置100のCPUは、バルブ200の開放点検を行うか否かの判定指標として総合評価指標Pの履歴を登録する(ステップS101)。そして、この登録されている総合評価指標Pの履歴に基づいて、予め定められている複数種類の予測方式毎に、その予測方式に従ってバルブ200の開放点検が必要になる時期を予測し(ステップS102)、その予測された予測結果を予測方式の種類毎に画面に提示する(ステップS103)。また、その予測方式の種類毎の予測結果を登録する(ステップS104)。
【0042】
また、開放点検支援装置100のCPUは、提示された予測結果を参考にしてバルブ200の開放点検を実施したオペレータから開放点検の実施結果として開放点検実施の妥当性が入力されると、その開放点検実施の妥当性を登録する(ステップS105)。そして、登録されている開放点検実施の妥当性に基づいて複数種類の予測方式を評価し、妥当性の高い種類の予測方式を代表指標化する(ステップS106)。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、予測方式の種類を平均的予測,悲観的予測,楽観的予測の3種類としたが、予測方式の種類は3通りには限られない。少なくとも2通りあれば、オペレータには選択肢が与えられることになる。4通り以上あれば、確度の高い予測方法を絞り込める確率は向上する。
【0044】
また、上述した実施の形態では、説明を簡単とするために、1つのバルブ200を開放点検の対象としているが、複数のバルブを1グループとして開放点検の対象としてもよい。
【0045】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…履歴登録部、2…開放点検予測部、3…予測結果提示部、4…予測結果登録部、5…実施結果登録部、6…予測種類評価部、51…入力部、100…バルブの開放点検支援装置、200…バルブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8