特許第6200263号(P6200263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6200263クラッチ装置及びそれを備える鞍乗型車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200263
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】クラッチ装置及びそれを備える鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   F16D 28/00 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   F16D28/00 Z
【請求項の数】11
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-206826(P2013-206826)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-72024(P2015-72024A)
(43)【公開日】2015年4月16日
【審査請求日】2016年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 賢吾
【審査官】 星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−264512(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/004008(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0072648(US,A1)
【文献】 特開2009−299849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦部材と前記摩擦部材を押すためのプレッシャ部材とを含み、前記プレッシャ部材と前記摩擦部材との接触が開始する接触開始位置と、前記プレッシャ部材が前記摩擦部材に押しつけられクラッチが係合状態となる係合位置とに前記プレッシャ部材が移動可能なクラッチと、
前記プレッシャ部材を移動させるための駆動ユニットと、を備えるクラッチ装置であって、
前記駆動ユニットは、
アクチュエータと、
前記アクチュエータの動力で回転する第1回転軸と、
前記第1回転軸を中心として前記第1回転軸とともに回転する第1部材と、
前記プレッシャ部材の移動にともなって回転する第2回転軸と、
前記第2回転軸を中心として前記第2回転軸とともに回転する第2部材と、
前記第2回転軸が前記第1回転軸に連動するように、前記第1部材と前記第2部材とを連結している連結部材と、を備え、
前記クラッチは、前記接触開始位置と前記係合位置のうち一方の位置から他方の位置に向けて前記プレッシャ部材が移動する過程で前記プレッシャ部材から前記駆動ユニットに作用する力であるクラッチ反力が大きくなるように構成され、
前記第1部材は前記プレッシャ部材が前記一方の位置に配置されるときに第1の位置に配置され、前記プレッシャ部材が前記他方の位置に配置されるときに第2の位置に配置され、
前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1回転軸のトルクに対する前記第2回転軸のトルクの比であるレバー比が、前記第1部材が前記第1の位置にあるときよりも前記第1部材が前記第2の位置にあるときに大きくなるように設定され、
前記第1回転軸の軸線を通り前記第1回転軸と前記第2回転軸とに直交する直線と前記第1部材との間の角度を第1部材角度とした場合、前記第1部材が前記第2の位置にあるときの第1部材角度は、前記第1部材が前記第1の位置にあるときの第1部材角度よりも小さい
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクラッチ装置において、
前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1部材が前記第1の位置から前記第2の位置に向けて回転する過程で前記第1部材角度が小さくなるように設定されている、
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項3】
摩擦部材と前記摩擦部材を押すためのプレッシャ部材とを含み、前記プレッシャ部材と前記摩擦部材との接触が開始する接触開始位置と、前記プレッシャ部材が前記摩擦部材に押しつけられクラッチが係合状態となる係合位置とに前記プレッシャ部材が移動可能なクラッチと、
前記プレッシャ部材を移動させるための駆動ユニットと、を備えるクラッチ装置であって、
前記駆動ユニットは、
アクチュエータと、
前記アクチュエータの動力で回転する第1回転軸と、
前記第1回転軸を中心として前記第1回転軸とともに回転する第1部材と、
前記プレッシャ部材の移動にともなって回転する第2回転軸と、
前記第2回転軸を中心として前記第2回転軸とともに回転する第2部材と、
前記第2回転軸が前記第1回転軸に連動するように、前記第1部材と前記第2部材とを連結している連結部材と、を備え、
前記クラッチは、前記接触開始位置と前記係合位置のうち一方の位置から他方の位置に向けて前記プレッシャ部材が移動する過程で前記プレッシャ部材から前記駆動ユニットに作用する力であるクラッチ反力が大きくなるように構成され、
前記第1部材は前記プレッシャ部材が前記一方の位置に配置されるときに第1の位置に配置され、前記プレッシャ部材が前記他方の位置に配置されるときに第2の位置に配置され、
前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1回転軸のトルクに対する前記第2回転軸のトルクの比であるレバー比が、前記第1部材が前記第1の位置にあるときよりも前記第1部材が前記第2の位置にあるときに大きくなるように設定され、
前記第1回転軸と前記第2回転軸はそれらの軸線が互いに平行となるように配置され、
前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1部材と前記連結部材の連結部分と第1回転軸とを結ぶ線に対する前記連結部材の角度と直角との差が前記第1の位置よりも前記第2の位置で大きくなるように設定されている、
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項4】
摩擦部材と前記摩擦部材を押すためのプレッシャ部材とを含み、前記プレッシャ部材と前記摩擦部材との接触が開始する接触開始位置と、前記プレッシャ部材が前記摩擦部材に押しつけられクラッチが係合状態となる係合位置とに前記プレッシャ部材が移動可能なクラッチと、
前記プレッシャ部材を移動させるための駆動ユニットと、を備えるクラッチ装置であって、
前記駆動ユニットは、
アクチュエータと、
前記アクチュエータの動力で回転する第1回転軸と、
前記第1回転軸を中心として前記第1回転軸とともに回転する第1部材と、
前記プレッシャ部材の移動にともなって回転する第2回転軸と、
前記第2回転軸を中心として前記第2回転軸とともに回転する第2部材と、
前記第2回転軸が前記第1回転軸に連動するように、前記第1部材と前記第2部材とを連結している連結部材と、を備え、
前記クラッチは、前記接触開始位置と前記係合位置のうち一方の位置から他方の位置に向けて前記プレッシャ部材が移動する過程で前記プレッシャ部材から前記駆動ユニットに作用する力であるクラッチ反力が大きくなるように構成され、
前記第1部材は前記プレッシャ部材が前記一方の位置に配置されるときに第1の位置に配置され、前記プレッシャ部材が前記他方の位置に配置されるときに第2の位置に配置され、
前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1回転軸のトルクに対する前記第2回転軸のトルクの比であるレバー比が、前記第1部材が前記第1の位置にあるときよりも前記第1部材が前記第2の位置にあるときに大きくなるように設定され、
前記第1回転軸と前記第2回転軸は、一方の回転軸に垂直な平面が他方の回転軸の軸線と平行となるように配置されている、
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項5】
摩擦部材と前記摩擦部材を押すためのプレッシャ部材とを含み、前記プレッシャ部材と前記摩擦部材との接触が開始する接触開始位置と、前記プレッシャ部材が前記摩擦部材に押しつけられクラッチが係合状態となる係合位置とに前記プレッシャ部材が移動可能なクラッチと、
前記プレッシャ部材を移動させるための駆動ユニットと、を備えるクラッチ装置であって、
前記駆動ユニットは、
アクチュエータと、
前記アクチュエータの動力で回転する第1回転軸と、
前記第1回転軸を中心として前記第1回転軸とともに回転する第1部材と、
前記プレッシャ部材の移動にともなって回転する第2回転軸と、
前記第2回転軸を中心として前記第2回転軸とともに回転する第2部材と、
前記第2回転軸が前記第1回転軸に連動するように、前記第1部材と前記第2部材とを連結している連結部材と、を備え、
前記クラッチは、前記接触開始位置と前記係合位置のうち一方の位置から他方の位置に向けて前記プレッシャ部材が移動する過程で前記プレッシャ部材から前記駆動ユニットに作用する力であるクラッチ反力が大きくなるように構成され、
前記第1部材は前記プレッシャ部材が前記一方の位置に配置されるときに第1の位置に配置され、前記プレッシャ部材が前記他方の位置に配置されるときに第2の位置に配置され、
前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1回転軸のトルクに対する前記第2回転軸のトルクの比であるレバー比が、前記第1部材が前記第1の位置にあるときよりも前記第1部材が前記第2の位置にあるときに大きくなるように設定され、
前記連結部材と前記第2部材との連結部分から前記第2回転軸の軸線までの距離は、前記連結部材と前記第1部材との連結部分から前記第1回転軸の軸線までの距離よりも大きい、
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のクラッチ装置において、
前記クラッチは、前記アクチュエータの動力が前記プレッシャ部材に作用していない状態で前記プレッシャ部材が前記摩擦部材から離れるように構成され、
前記クラッチ反力は、前記プレッシャ部材が前記接触開始位置から前記係合位置に移動する過程で大きくなる、
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載のクラッチ装置において、
前記クラッチは、前記アクチュエータの動力が前記プレッシャ部材に作用していない状態で前記プレッシャ部材が前記係合位置に配置されるように構成され、
前記クラッチ反力は、前記プレッシャ部材が前記係合位置から前記接触開始位置に移動する過程で大きくなる、
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項8】
摩擦部材と前記摩擦部材を押すためのプレッシャ部材とを含み、前記プレッシャ部材と前記摩擦部材との接触が開始する接触開始位置と、前記プレッシャ部材が前記摩擦部材に押しつけられクラッチが係合状態となる係合位置とに前記プレッシャ部材が移動可能なクラッチと、
前記プレッシャ部材を移動させるための駆動ユニットと、を備えるクラッチ装置であって、
前記駆動ユニットは、
アクチュエータと、
前記アクチュエータの動力で回転する第1回転軸と、
前記第1回転軸を中心として前記第1回転軸とともに回転する第1部材と、
前記プレッシャ部材の移動にともなって回転する第2回転軸と、
前記第2回転軸を中心として前記第2回転軸とともに回転する第2部材と、
前記第2回転軸が前記第1回転軸に連動するように、前記第1部材と前記第2部材とを連結している連結部材と、を備え、
前記クラッチは、前記アクチュエータの動力が前記プレッシャ部材に作用していない状態で前記プレッシャ部材が前記摩擦部材から離れるように構成され、
前記クラッチは、前記接触開始位置から前記係合位置に向けて前記プレッシャ部材が移動する過程で前記プレッシャ部材から前記駆動ユニットに作用する力であるクラッチ反力が大きくなるように構成され、
前記第1部材は前記プレッシャ部材が前記接触開始位置に配置されるときに第1の位置に配置され、前記プレッシャ部材が前記係合位置に配置されるときに第2の位置に配置され、
前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1回転軸のトルクに対する前記第2回転軸のトルクの比であるレバー比が、前記第1部材が前記第1の位置にあるときよりも前記第1部材が前記第2の位置にあるときに大きくなるように設定され、
前記アクチュエータの回転軸又は前記アクチュエータの回転軸とともに回転する回転部材が設けられ、
前記回転部材と、前記第1回転軸と、前記第2回転軸のうち少なくとも1つには、その回転を抑える摩擦部材が設けられている、
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のクラッチ装置において、
前記摩擦部材は、前記アクチュエータの回転軸又は前記アクチュエータの回転軸とともに回転する回転部材に設けられている、
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のクラッチ装置において、
前記第1の位置と前記第2の位置は、前記レバー比が前記第1の位置から前記第2の位置に向けて大きくなるように設定されている、
ことを特徴とするクラッチ装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のクラッチ装置を備える鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータによって摩擦クラッチを操作するクラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車などの車両で使用される摩擦クラッチには、軸方向で移動可能なプレッシャ部材を備え、プレッシャ部材で摩擦部材を押すものがある。プレッシャ部材が摩擦部材を押すことによりクラッチは係合状態となり、プレッシャ部材が摩擦部材から離れることによりクラッチは非係合状態となる。従来、プレッシャ部材をアクチュエータで動かすクラッチ装置がある(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/004008号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレッシャ部材を動かすのに要するアクチュエータ(例えば、電動モータ)のトルクを小さくできれば、アクチュエータの小型化を図ることができる。本発明の目的の1つは、クラッチのプレッシャ部材を動かすのに要するアクチュエータのトルクを小さくできるクラッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るクラッチ装置は、摩擦部材と前記摩擦部材を押すためのプレッシャ部材とを含み、前記プレッシャ部材と前記摩擦部材との接触が開始する接触開始位置と、前記プレッシャ部材が前記摩擦部材に押しつけられクラッチが係合状態となる係合位置とに前記プレッシャ部材が移動可能なクラッチと、前記プレッシャ部材を移動させるための駆動ユニットと、を備える。前記駆動ユニットは、アクチュエータと、前記アクチュエータの動力で回転する第1回転軸と、前記第1回転軸を中心として前記第1回転軸とともに回転する第1部材と、前記プレッシャ部材の移動にともなって回転する第2回転軸と、前記第2回転軸を中心として前記第2回転軸とともに回転する第2部材と、前記第2回転軸が前記第1回転軸に連動するように、前記第1部材と前記第2部材とを連結している連結部材と、を備える。前記クラッチは、前記接触開始位置と前記係合位置のうち一方の位置から他方の位置に向けて前記プレッシャ部材が移動する過程で前記プレッシャ部材から前記駆動ユニットに作用する力であるクラッチ反力が大きくなるように構成される。前記第1部材は前記プレッシャ部材が前記一方の位置に配置されるときに第1の位置に配置され、前記プレッシャ部材が前記他方の位置に配置されるときに第2の位置に配置される。前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1回転軸のトルクに対する前記第2回転軸のトルクの比であるレバー比が、前記第1部材が前記第1の位置にあるときよりも前記第1部材が前記第2の位置にあるときに大きくなるように設定されている。本発明に係る鞍乗型車両は前記クラッチ装置を備える。本発明によれば、プレッシャ部材を動かすのに要するアクチュエータのトルクを小さくできる。前記鞍乗型車両は、具体的には、自動二輪車(スクーターを含む)や、スノーモービル、四輪の不整地走行車などである。
【0006】
本発明の一形態では、前記第1の位置と前記第2の位置は、前記レバー比が前記第1の位置から前記第2の位置に向けて大きくなるように設定されていもよい。この形態によれば、クラッチ反力が大きくなるに従って、レバー比を大きくできる。
【0007】
本発明の一形態では、前記第1回転軸の軸線を通り前記第1回転軸と前記第2回転軸とに直交する直線と前記第1部材との間の角度を第1部材角度とした場合、前記第1部材が前記第2の位置にあるときの第1部材角度は、前記第1部材が前記第1の位置にあるときの第1部材角度よりも小さくてもよい。この形態によれば、プレッシャ部材を動かすのに要するアクチュエータのトルクを小さくできる。
【0008】
本発明の一形態では、前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1部材が前記第1の位置から前記第2の位置に向けて回転する過程で前記第1部材角度が小さくなるように設定されてもよい。この形態によれば、クラッチ反力が大きくなるに従って、レバー比を大きくできる。
【0009】
本発明の一形態では、前記第1回転軸と前記第2回転軸はそれらの軸線が互いに平行となるように配置されてもよい。そして、前記第1の位置と前記第2の位置は、前記第1部材に対する前記連結部材の角度と直角との差が前記第1の位置よりも前記第2の位置で大きくなるように設定されてもよい。この形態によれば、2つの回転軸の軸線を含む平面に対する連結部材の傾斜角度が大きくても、プレッシャ部材を動かすのに要するアクチュエータのトルクを小さくできる。
【0010】
本発明の一形態では、前記第1回転軸と前記第2回転軸は、一方の回転軸に垂直な平面が他方の回転軸の軸線と平行となるように配置されてもよい。これによれば、レバー比の変化の態様の自由度を増すことができる。
【0011】
本発明の一形態では、前記連結部材と前記第2部材との連結部分から前記第2回転軸の軸線までの距離は、前記連結部材と前記第1部材との連結部分から前記第1回転軸の軸線までの距離よりも大きくてもよい。この形態によれば、大きなレバー比が得られやすくなる。
【0012】
本発明の一形態では、前記クラッチは、前記アクチュエータの動力が前記プレッシャ部材に作用していない状態で前記プレッシャ部材が前記摩擦部材から離れるように構成され、前記クラッチ反力は、前記プレッシャ部材が前記接触開始位置から前記係合位置に移動する過程で大きくなってもよい。この形態によれば、前記アクチュエータの動力がプレッシャ部材に作用していない通常状態で係合するタイプのクラッチが設けられている場合に、プレッシャ部材を動かすのに要するアクチュエータのトルクを小さくできる。
【0013】
本発明の一形態では、前記クラッチは、前記アクチュエータの動力が前記プレッシャ部材に作用していない状態で前記プレッシャ部材が前記係合位置に配置されるように構成され、前記クラッチ反力は、前記プレッシャ部材が前記係合位置から前記接触開始位置に移動する過程で大きくなってもよい。これによれば、アクチュエータの消費電力を軽減できる。
【0014】
本発明の一形態では、前記アクチュエータの回転軸又は前記アクチュエータの回転を前記第1回転軸に伝える部材である回転部材が設けられ、前記回転部材と、前記第1回転軸と、前記第2回転軸のうち少なくとも1つの回転を抑える摩擦部材が設けられてもよい。これによれば、プレッシャ部材を係合位置に維持し易くなり、アクチュエータの消費電力の低減を図ることができる。
【0015】
本発明の一形態では、前記摩擦部材は、前記アクチュエータの回転軸又は前記アクチュエータの回転を前記第1回転軸に伝える部材である回転部材に設けられてもよい。第1回転軸よりも上流側に配置される部材は、例えば第2回転軸が有しているトルクよりも小さい。そのため、比較的小さな摩擦力で回転を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るクラッチ装置を備える自動二輪車の側面図である。
図2】クラッチの断面図である。
図3】クラッチスプリングがクラッチに設けられているクラッチ装置における、プレッシャ部材の位置とクラッチ反力との関係を示す図である。
図4】クラッチスプリングがクラッチに設けられていないクラッチ装置における、プレッシャ部材の位置とクラッチ反力との関係を示す図である。
図5】アクチュエータユニットとリンク機構を示す概略図である。この図において、第1回転軸と第2回転軸は互いに平行に配置されている。
図6】第1回転軸から第2回転軸への力の伝達、及びレバー比を説明するための図である。
図7】第1アームの角度の変化と、レバー比の変化との関係を示す図である。
図8】アクチュエータユニットとリンク機構を示す概略図である。この図において、第1回転軸と第2回転軸はねじれの位置関係を有している。
図9図8の例において第1回転軸から第2回転軸への力の伝達、及びレバー比を説明するための図である。
図10】第1アームの角度に対するレバー比の変化の例を示す図である。
図11】摩擦部材を内蔵するアクチュエータユニットの例を示す図である。
図12図11に示すXII−XII線での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係るクラッチ装置及びそれを備える鞍乗型車両について説明する。ここでは鞍乗型車両の例として自動二輪車について説明する。図1は自動二輪車Mcの側面図である。
【0018】
自動二輪車Mcは前輪2と後輪3とを有している。前輪2はフロントサスペンション4の下端で支持されている。フロントサスペンション4の上部にはステアリングハンドル5が配置されている。フロントサスペンション4はステアリングシャフト(不図示)を中心にして回転可能となっている。後輪3はリアアーム8の後端で支持されている。リアアーム8の前端は車体フレームに設けられているピボット軸(不図示)によって支持され、後輪3はピボット軸を中心にして上下動可能となっている。前輪2と後輪3との間にエンジンユニット6が配置されている。
【0019】
エンジンユニット6は、ピストン6aと、ピストン6aに連結されているクランクシャフト6bとを有している。エンジンユニット6は、その後部に、変速機(不図示)と、クランクシャフト6bのトルクを変速機に伝えるためのクラッチ30とを有している。クラッチ装置1は、クラッチ30と、クラッチ30を操作する後述する駆動ユニット10とによって構成される。
【0020】
クラッチ30はメイン軸39上に配置されている。クラッチ30は、クランクシャフト6bと一体的に回転しメイン軸39に対しては自由に回転可能な駆動部材と、メイン軸39と一体的に回転する被駆動部材とを有している。また、クラッチ30は、駆動部材と被駆動部材とが摩擦部材を通して係合するように摩擦部材を押すためのプレッシャ部材を有している。
【0021】
図2はクラッチ30を示す断面図である。ここで説明する例のクラッチ30は、クラッチハウジング31(駆動部材)と、クラッチハウジング31の内側に配置されるクラッチボス32(被駆動部材)とを有している。クラッチハウジング31には減速ギア31aが設けられている。減速ギア31aはクランクシャフト6bが有するギアと一体的に回転する。ここで説明する例のクラッチ30は多板クラッチである。すなわち、クラッチ30は、クラッチハウジング31と一体的に回転する複数のフリクションプレート34(摩擦部材)と、クラッチボス32と一体的に回転する複数のクラッチプレート35(摩擦部材)とを有している。クラッチ30はフリクションプレートを1枚だけ有する単板クラッチでもよい。クラッチ30はプレッシャ部材33を有している。プレッシャ部材33は軸方向において移動可能であり、フリクションプレート34とクラッチプレート35とをクラッチボス32に向けて押す。
【0022】
クラッチ30が伝達可能なトルク容量(係合度合い)は、プレッシャ部材33の位置に応じて変化する。プレッシャ部材33は、プレート34,35に押しつけられる係合位置と、プレート34,35に接触しない完全開放位置との間で移動可能となっている。プレッシャ部材33が係合位置にあるとき、クラッチ30は係合状態となる(すなわち、クラッチ30のトルク容量は最大となる)。プレッシャ部材33が完全開放位置にあるとき、クラッチ30は非係合状態となる(すなわち、クラッチ30のトルク容量は0となる)。プレッシャ部材33は、完全開放位置と係合位置との間を移動する過程で、接触開始位置を通る。接触開始位置では、プレッシャ部材33からプレート34,35に押圧力は作用していないものの、フリクションプレート34又はクラッチプレート35とプレッシャ部材33との接触が開始する。
【0023】
自動二輪車Mcは、そのクラッチ装置1として、クラッチ30と、プレッシャ部材33を動かすための駆動ユニット10とを有している。駆動ユニット10は、後において説明するように、アクチュエータ20を含むアクチュエータユニットAcと、アクチュエータユニットAcとプレッシャ部材33とを連結するリンク機構(1Ar、R、2Ar、2S)とを有している。リンク機構はアクチュエータユニットAcの動力をプレッシャ部材33に伝達する。
【0024】
図2に示す例のクラッチ30は、プレッシャ部材33をクラッチボス32に向けて押しているクラッチスプリング36を有している。したがって、アクチュエータユニットAcが作動していない状態では、プレッシャ部材33はクラッチスプリング36の力を受けて係合位置に配置される。プレッシャ部材33が完全開放位置或いは接触開始位置に向けて移動するとき、アクチュエータユニットAcはクラッチスプリング36の力に抗してプレッシャ部材33を動かす。
【0025】
図3は、プレッシャ部材33の位置と、プレッシャ部材33から駆動ユニット10に作用する力(以下において、クラッチ反力と称する)との関係を示すグラフである。クラッチ反力は、換言すると、プレッシャ部材33の位置を維持するのに要する力である。
【0026】
上述したように、プレッシャ部材33はクラッチスプリング36によって係合位置に向けて付勢されている。プレッシャ部材33が係合位置にあるとき、クラッチスプリング36からプレッシャ部材33に加えられる力と、プレッシャ部材33がプレート34,35から受ける抗力とが釣り合っている。そのため、図3の実線Aで示すように、プレッシャ部材33が係合位置にあるときに、クラッチ反力は最小(0)となる。クラッチスプリング36は高いプリロードが加えられた状態でクラッチ30に取り付けられ、また、クラッチスプリング36の自然長からの圧縮量に比べるとプレッシャ部材33の可動範囲は小さいため、係合位置と完全開放位置との間でクラッチスプリング36の押圧力は実質的に一定である。そのため、プレッシャ部材33が係合位置から離れるにつれて、プレッシャ部材33がプレート34,35から受ける抗力が徐々に小さくなる一方で、クラッチスプリング36の押圧力は維持されるので、クラッチ反力は徐々に大きくなる。そして、プレッシャ部材33が接触開始位置に達すると、クラッチ反力は最大となる。プレッシャ部材33が係合位置と接触開始位置との間にあるとき、クラッチ30は最大のトルク容量よりも小さいトルク容量を有する半係合状態にある。プレッシャ部材33が接触開始位置と完全開放位置との間にあるとき(すなわちクラッチ30が非係合状態にあるとき)、クラッチ反力は最大を維持する。
【0027】
クラッチ30はクラッチスプリング36を有していなくてもよい。この場合、アクチュエータユニットAcが作動していない状態では、プレッシャ部材33はプレート34,35から離れ、完全開放位置に配置される。プレッシャ部材33が接触開始位置から係合位置に向けて移動するとき、アクチュエータユニットAcはプレート34,35の抗力に反してプレッシャ部材33を動かす。
【0028】
図4は、クラッチスプリング36がクラッチ30に設けられていない場合における、プレッシャ部材33の位置とクラッチ反力との関係を示すグラフである。この構造では、プレッシャ部材33が接触開始位置と完全開放位置との間にあるとき、プレート34,35からプレッシャ部材33に抗力が作用しないので、クラッチ反力は最小(0)である。プレッシャ部材33が接触開始位置から係合位置に向けて移動する過程で、プレート34,35からプレッシャ部材33に作用する抗力はプレッシャ部材33の位置に応じて変化するので、クラッチ反力は徐々に大きくなる。そして、プレッシャ部材33が係合位置にあるとき、クラッチ反力は最大となる。
【0029】
このように、クラッチ反力はプレッシャ部材33の位置に応じて変化する。以下の説明では、クラッチ反力が最小となるときのプレッシャ部材33の位置を小反力位置と称する(小反力位置は請求項の「一方の位置」に対応している)。クラッチ反力が最大となるときのプレッシャ部材33の位置を大反力位置と称する(大反力位置は請求項の「他方の位置」に対応している)。クラッチスプリング36がクラッチ30に設けられている場合には、接触開始位置が大反力位置であり、係合位置が小反力位置である。クラッチスプリング36がクラッチ30に設けられていない場合には、係合位置が大反力位置であり、接触開始位置が小反力位置である。クラッチ反力は小反力位置から大反力位置に向けてプレッシャ部材33に位置に応じて徐々に増大する。すなわち、小反力位置と大反力位置が規定する範囲とは、クラッチ反力が単調変化する範囲である。つまり、クラッチスプリング36が設けられているクラッチ30において、接触開始位置(大反力位置)とは、プレッシャ部材33が係合位置から完全開放位置に移動する過程でクラッチ反力の単調増加が終了する位置である。また、クラッチスプリング36が設けられていないクラッチ30において、接触開始位置(小反力位置)とは、プレッシャ部材33が係合位置から完全開放位置に移動する過程で、クラッチ反力の単調減少が終了する位置である。ここで「単調増加」及び「単調減少」とは、プレッシャ部材33とクラッチ反力との関係を示す線の傾きが小反力位置と大反力位置との間で一定であるということを意味してはいない。「単調増加」とは、プレッシャ部材33の位置の変化に応じてクラッチ反力が増加し又は一定であり、減少しないことを意味する。「単調減少」とは、プレッシャ部材33の位置の変化に応じてクラッチ反力が減少し又は一定であり、増加しないことを意味する。例えば、図3の破線Bで示す様に、プレッシャ部材33とクラッチ反力との関係を示す線の傾きは、大反力位置と小反力位置との間の位置で大きく変化してもよい。また、図3の一点鎖線Cで示す様に、プレッシャ部材33とクラッチ反力との関係を示す線の傾きは、大反力位置と小反力位置との間の位置で一時的に0となってもよい。
【0030】
図5はクラッチ30を操作する駆動ユニット10、すなわちアクチュエータユニットAcとリンク機構(1Ar,R,2Ar,2S)を示す概略図である。
【0031】
駆動ユニット10はアクチュエータ20(電動モータ)の動力で回転する第1回転軸1Sを有している。図5に示す例では、第1回転軸1Sは、アクチュエータユニットAcの出力軸として設けられている。アクチュエータユニットAcは、アクチュエータ20の回転を減速して、すなわちアクチュエータ20のトルクを増大して第1回転軸1Sに伝えるギアを含んでいる。第1回転軸1Sは必ずしもアクチュエータユニットAcの出力軸でなくてもよい。すなわち、アクチュエータユニットAcの出力軸と第1回転軸1Sとの間に、出力軸の回転を第1回転軸1Sに伝える機構が設けられてもよい。
【0032】
リンク機構は第1アーム1Arを有している。第1アーム1Arは第1回転軸1Sを中心として第1回転軸1Sとともに回転する。第1アーム1Arは第1回転軸1Sからその半径方向に延びている。図5に示す第1アーム1Arは棒状であるが、その形状は適宜変更されてよい。第1アーム1Arは第1回転軸1Sに取り付けられてもよいし、第1回転軸1Sと一体的に形成されていてもよい。
【0033】
リンク機構は第2回転軸2Sを有している。第2回転軸2Sはプレッシャ部材33の移動にともなって回転する。ここで説明する例では、図2に示すように、第2回転軸2Sの下部には2Saが形成されている。プレッシャ部材33の中心部には、プレッシャ部材33とともに軸方向に移動可能な可動部材37が取り付けられている。可動部材37はベアリング33aを介してプレッシャ部材33によって支持されており、プレッシャ部材33に対して相対回転可能となっている。第2回転軸2Sのギア2Saは、可動部材37に形成されたラック37aに噛み合っている。そのため、第2回転軸2Sが回転することにより、可動部材37とプレッシャ部材33とが軸方向に動く。反対に、可動部材37とプレッシャ部材33とが軸方向に動くと、第2回転軸2Sが回転する。第2回転軸2Sには、ギア2Saに替えて、第2回転軸2Sの回転を可動部材37の軸方向への動きに変換するカムが形成されてもよい。
【0034】
図5に示す例では、第1回転軸1Sと第2回転軸2Sはそれらの軸線が平行となるように配置されている。ここで、軸線とは回転軸の回転中心を通る直線である。第1回転軸1Sと第2回転軸2Sの位置関係は図5に示す例に限られない。例えば、後において説明するように、第1回転軸1Sと第2回転軸2Sはねじれの位置関係を有してもよい。すなわち、第1回転軸1Sと第2回転軸2Sは、一方の回転軸に垂直な平面が他方の回転軸の軸線と平行となるように配置されてもよい。また、第1回転軸1Sと第2回転軸2Sは、一方の回転軸に垂直な平面が他方の回転軸の軸線に傾斜していてもよい。
【0035】
図5に示すように、リンク機構は第2アーム2Arを有している。第2アーム2Arは第2回転軸2Sを中心として第2回転軸2Sとともに回転する。第2アーム2Arは第2回転軸2Sからその半径方向に延びている。また、第2アーム2Arは、2つの回転軸1S,2Sの軸線を含む平面に対して第1アーム1Arと同じ側(図5において上側)に位置している。図5に示す第2アーム2Arは棒状であるが、その形状は適宜変更されてよい。第2アーム2Arは第2回転軸2Sに取り付けられてもよいし、第2回転軸2Sと一体的に形成されていてもよい。
【0036】
リンク機構はさらに、第1アーム1Arと第2アーム2Arとを連結する連結部材Rを有している。連結部材Rは、第1アーム1Arの回転中心(すなわち第1回転軸1Sの中心)から離れた位置で第1アーム1Arに連結されている。それらの連結部分は互いに回転可能となっている。図5に示す例では、第1アーム1Arの端部と連結部材Rの端部とが互いに連結され、2つの端部は互いに回転可能となっている。また、連結部材Rは、第2回転軸1Sの回転中心(すなわち第2回転軸2Sの中心)から離れた位置で第2アーム2Arに連結され、それらの連結部分も互いに回転可能となっている。図5に示す例では、第2アーム2Arの端部と連結部材Rの端部とが互いに連結され、2つの端部は互いに回転可能となっている。そのため、第1回転軸1Sと第2回転軸2Sとが互いに連動する。すなわち、第1回転軸1S及び第1アーム1Arの回転に応じて、第2回転軸2S及び第2アーム2Arも回転する。反対に、第2回転軸2S及び第2アーム2Arの回転に応じて第1回転軸1S及び第1アーム1Arも回転する。
【0037】
ここで説明する例の連結部材Rは、プレッシャ部材33を小反力位置から大反力位置に移動させる過程で第1アーム1Arの位置(角度)と第2アーム2Arの位置(角度)とが1対1の対応関係を有するように、それらを連結している。連結部材Rは、例えばロッドである。連結部材Rはワイヤーでもよい。連結部材Rとしてワイヤーが使用される場合、第1アーム1Arが連結部材Rを引っ張ることにより、プレッシャ部材33が小反力位置から大反力位置に移動するように、アーム1Ar,2Arの可動範囲が規定される。第1アーム1Arの位置と第2アーム2Arの位置とが1対1の対応関係を有することにより、駆動ユニット10によるクラッチ30の制御が容易となる。連結部材Rとしてワイヤーが用いられる場合、第1回転軸1Sには第1アーム1Arに替えて、第1回転軸1Sとともに回転するプーリが取り付けられてもよい。また、この場合、第2回転軸2Sには第2アーム2Arに替えて、第2回転軸2Sとともに回転するプーリが取り付けられてもよい。この場合、プーリは円形のタイプだけでなく、例えば、半径(回転中心からワイヤーが引っ掛かっている部分までの距離)が角度に応じて変化しているタイプでもよい。
【0038】
リンク機構(1Ar,R,2Ar,2S)によると、第1回転軸1Sの位置とプレッシャ部材33の位置とがリンクする。例えば第1回転軸1Sが時計回り方向(図5のD1方向)に回転すると、第2回転軸2Sも時計回り方向(図5のD2方向)に回転し、その結果、プレッシャ部材33は軸方向に移動する。
【0039】
第1アーム1Arは、第1回転軸1Sを中心として第1のアーム位置p1と第2のアーム位置p2との間で回転する。図5においては、第1のアーム位置p1は実線で示される第1アーム1Arの位置であり、第2のアーム位置p2は二点鎖線で示される第1アーム1Arの位置である。プレッシャ部材33が上述の小反力位置に配置されるときに、第1アーム1Arは第1のアーム位置p1に配置される。プレッシャ部材33が上述の大反力位置に配置されるときに、第1アーム1Arは第2のアーム位置p2に配置される。第1アーム1Arが第2のアーム位置p2にあるときに、第1アーム1Arが第1のアーム位置p1にあるときよりもレバー比rtが大きくなるように、アーム位置p1,p2が設定されている。本明細書において、レバー比rtとは、第1回転軸1SのトルクT1に対する第2回転軸2SのトルクT2の比である(rt=T2/T1)。アーム位置p1,p2をこのように設定することにより、プレッシャ部材33を大反力位置に維持するためにアクチュエータ20に必要とされるトルクを低減することができる。その結果、アクチュエータ20の小型化を図ることができる。
【0040】
図6は、第1回転軸1Sから第2回転軸2Sへの力の伝達、及びレバー比rtを説明するための図である。同図において各符号は次の平面又は角度を示している。
Ph:2つの回転軸1S,2Sの軸線を含む平面(すなわち、回転軸1S,2Sの双方に直交する直線と、第1回転軸1Sの軸線とを含む平面)
P1:第1回転軸1Sの軸線を含み且つ平面Phに垂直な平面
θ1:平面P1に対する第1アーム1Arの角度
θx:平面Phに対する連結部材Rの傾斜角度
P2:第2回転軸2Sの軸線を含み且つ平面Paに垂直な平面
θ2:平面P2に対する第2アーム2Arの角度
【0041】
第1回転軸1SがトルクT1を有している場合、連結部材Rには、その延伸方向に次の式で表される力Frが作用する。
Fr=F1/cos(θ1+θx)
F1=T1/L1
上の式において、F1は、第1アーム1Arと連結部材Rとの連結部分に作用する、第1アーム1Arに直交する方向の力である。また、L1は第1回転軸1Sの回転中心から第1アーム1Arと連結部材Rとの連結部分までの距離である。
このとき、第2回転軸2Sには次の式で表されるトルクT2が作用する。
T2=F2×L2
F2=Fr×cos(θ2+θx)
上の式において、F2は、第2アーム2Arと連結部材Rとの連結部分に作用する、第2アーム2Arに直交する方向の力である。また、L2は第2回転軸2Sの回転中心から第2アーム2Arと連結部材Rとの連結部分までの距離である。
そのため、レバー比rt(=T2/T1)は次の式1で表される。
rt=L2/L1×cos(θ2+θx)/cos(θ1+θx)・・・式1
【0042】
つまり、角度(θ1+θx)が大きくなるに従って、大きなレバー比を得ることができる。そこで、第2のアーム位置p2では第1のアーム位置p1よりも角度(θ1+θx)が大きくなるように、2つのアーム位置p1,p2が規定されている。すなわち、プレッシャ部材33が大反力位置に配置されるときに、プレッシャ部材33が小反力位置に配置されるときよりも、角度(θ1+θx)が大きくなるように、2つのアーム位置p1,p2が規定されている。こうすることにより、プレッシャ部材33が大反力位置に配置されるときに、プレッシャ部材33が小反力位置に配置されるときよりも、大きなレバー比rtを得ることができる。角度(θ1+θx)は、第1アーム1Arと連結部材Rとの間の角度(図6においてθk)と90度との差である。
【0043】
なお、アーム1Ar,2Arに比べて連結部材Rが十分に長い場合や2つのアーム1Ar,2Arの長さの差が小さい場合などでは、連結部材Rの角度θxは小さくなる。つまり、このような場合には、レバー比rtに対する連結部材Rの角度θxの影響は小さく、レバー比rtは次の式で表される。
rt=L2/L1×cos(θ2)/cos(θ1)
【0044】
したがって、ここで説明する例では、第2のアーム位置p2では第1のアーム位置p1よりも平面P1と第1アーム1Arとがなす角度θ1が大きくなるように、2つのアーム位置p2,p1が規定されている。言い換えると、第1回転軸1Sの軸線を通り第1回転軸1Sと第2回転軸2Sとに直交する直線と第1アーム1Arとの間の角度をアーム角度θα(図6参照)とした場合、第1アーム1Arが第2のアーム位置p2にあるときのアーム角度θαは、第1アーム1Arが第1のアーム位置p1にあるときのアーム角θαよりも小さい。こうすることによって、プレッシャ部材33が大反力位置にあるときに、大きなレバー比rtを得ることができる。
【0045】
また、ここで説明する例では、第1アーム1Arが第1のアーム位置p1から第2のアーム位置p2に移動する過程で角度(θ1+θx)が徐々に大きくなるように、2つのアーム位置p1,p2が規定されている。すなわち、第1アーム1Arが第1のアーム位置p1から第2のアーム位置p2に移動する過程で、角度(θ1+θx)は単調増加する。ここで説明する例では、2つのアーム位置p1,p2が平面P1に対して同じ側に規定され、第1アーム1Arが第1のアーム位置p1から第2のアーム位置p2に移動する過程で上述のアーム角度θαは徐々に小さくなる。こうすることにより、クラッチ反力が大きくなるに従って、レバー比rtを大きくできる。
【0046】
なお、図5に示す例では、2つのアーム位置p1,p2は平面P1に対して、第2回転軸2S側に規定されている。しかしながら、2つのアーム位置p1,p2は平面P1に対して、第2回転軸2Sとは反対側に規定されてもよい。
【0047】
レバー比rtは、上述の式1で示されるように、第2アームS2と連結部材Rとがなす角度と90度との差(=θ2+θx)が小さくなるに従って大きくなる。したがって、平面P2と第2アームS2とがなす角度θ2が小さい方が好ましい。例えば、第1アーム1Arが第1のアーム位置p1から第2のアーム位置p2に移動するとき、第2アーム2Arは平面P2を通過してもよい。第2アーム2Arの可動範囲をこのように規定することにより、角度θ2が大きな値をとることを抑えることができる。
【0048】
また、距離L2は距離L1よりも大きいほうが好ましい。L2は、上述したように、第2回転軸2Sの回転中心から第2アーム2Arと連結部材Rまでの距離である。L1は、第1回転軸1Sの回転中心から第1アーム1Arと連結部材Rまでの距離である。上述の式1で示されるように、2つの距離をこのように設定することにより、大きなレバー比rtを得ることができる。
【0049】
また、距離L2を距離L1よりも大きくすることにより、第1アーム1Arの角度θ1の変化に対するレバー比rtの変化率を増すことができる。図7は、連結部材Rの傾斜角度θxが小さいと仮定して、第1アーム1Arの角度θ1の変化とレバー比rtの変化との関係を示す図である。同図において横軸は第1アーム1Arの角度θ1であり縦軸はレバー比である。また、線A1はL1:L2=1:1の場合の角度θ1に対するレバー比rtの変化の例を示す曲線である。線A2はL1:L2=1:1.5の場合の角度θ1に対するレバー比rtの変化の例を示す曲線である。線A3はL1:L2=1:2の場合の角度θ1に対するレバー比rtの変化の例を示す曲線である。同図に示されるように、距離L2が大きい場合には、第1アームの角度が大きい領域で曲線の傾きが大きくなっている。すなわち、距離L1に対する距離L2の比を大きくすることにより、第1アーム1Arの角度θ1の変化に対するレバー比rtの変化率(上昇率)を増すことができる。
【0050】
式1で示されるように、レバー比rtは第1アーム1Sと連結部材Rとが形成する角度(θ1+θx)と第2アーム2Sと連結部材Rとが形成する角度(θ2+θx)とに依存する。角度(θ2+θx)は角度(θ1+θx)に応じて変化する。すなわち、角度(θ2+θx)は角度(θ1+θx)から一義的に決まる。したがって、距離L1、L2、連結部材Rの長さLr及び2つの回転軸1S,2Sの相対的な位置が定まっている場合、角度(θ2+θx)は角度(θ1+θx)に基づいて算出できる。ここで、2つの回転軸1S,2Sの相対的な位置を表す第1の要素は、連結部材Rと平行で第2回転軸2Sの軸線を含む平面をPrとした場合、平面Prに垂直で且つ第1回転軸1Sの軸線を含む平面Pa(図6参照)と、平面Prに垂直で且つ第2回転軸2Sの軸線を含む平面Pb(図6参照)との距離Pである。第2の要素は、平面Prと第1回転軸1Sの軸線との距離Lx(図6参照)である。レバー比rtの変化率と、第1アーム1Arの角度θ1との関係(例えば、図7に示す関係)は、距離L1、L2、連結部材Rの長さLr及び2つの回転軸1S,2Sの相対的な位置を変えることにより、調整できる。
【0051】
図5及び図6に示す例では、第1回転軸1Sと第2回転軸2Sは互いに平行に配置されている。しかしながら、第1回転軸1Sと第2回転軸2Sは、ねじれの位置関係を有してもよい。図8は、2つの回転軸がこのような位置関係を有する駆動ユニット10を示す概略図である。図8(a)は第1回転軸11Sの軸方向に駆動ユニット10を見た場合の様子を示している。図8(b)は第2回転軸2Sの軸方向(図8(a)においてbの示す方向)に駆動ユニット10を見た場合の様子を示している。
【0052】
図8に示す駆動ユニット10は、図5に示す例と同様に、第2回転軸2Sと第2アーム2Arを有している。第1回転軸11Sは、上述の第1回転軸1Sと同様に、アクチュエータユニットAcの出力軸として設けられている。第1回転軸11Sは必ずしもアクチュエータユニットAcの出力軸でなくてもよい。第1回転軸11Sと第2回転軸2Sは、一方の回転軸に垂直な平面が他方の回転軸の軸線と平行となるように配置されている。図8においては、第2回転軸2Sに垂直で且つ第1回転軸11Sの軸線を含む平面Phが示されている。第1回転軸11Sには、第1回転軸11Sを中心として第1回転軸11Sとともに回転する第1アーム11Arが設けられている。第1アーム11Arと第2アーム2Arは連結部材Rを介して連結されている。ここで説明する例の連結部材Rは、直交する2つの中心線周りで第1アーム11Arに対して回転できるように、第1アーム11Arに連結されている。これにより、第1アーム11Arが回転する過程で、図8(a)に示すθxと図8(b)に示すθyの双方が変化できる。ここでθxは平面Phと連結部材Rとがなす角度である。θyは第1回転軸11Sに垂直な平面と連結部材Rとがなす角度である。同様に、連結部材Rは、直交する2つの中心線周りで第2アーム2Arに対して回転できるように、第2アーム2Arに連結されている。
【0053】
図8に示す例においても、第1回転軸11Sの位置とプレッシャ部材33の位置とは互いにリンクする。例えば図8(a)において第1回転軸11Sが時計回り方向(図8においてD1方向)に回転すると、第2回転軸2Sは図8(b)において反時計回り方向(図8においてD2方向)に回転し、その結果、プレッシャ部材33は軸方向に移動する。
【0054】
図8に示す例においても、第1アーム11Arは、第1回転軸11Sを中心として第1のアーム位置p1と第2のアーム位置p2との間で回転する。図8において、第1のアーム位置p1は実線で示される第1アーム11Arの位置であり、第2のアーム位置p2は二点鎖線で示される第1アーム11Arの位置である。プレッシャ部材33が上述の小反力位置に配置されるときに、第1アーム11Arは第1のアーム位置p1に配置される。プレッシャ部材33が上述の大反力位置に配置されるときに、第11アーム1Arは第2のアーム位置p2に配置される。また、図8に示す例においても、第1アーム11Arが第2のアーム位置p2にあるときに、第1アーム11Arが第1のアーム位置p1にあるときよりもレバー比rtが大きくなるように、アーム位置p1,p2が設定されている。アーム位置p1,p2をこのように設定することにより、プレッシャ部材33を大反力位置に維持するためにアクチュエータ20に要求されるトルクを低減することができる。その結果、アクチュエータユニットAcの小型化を図ることができる。
【0055】
図9は、第1回転軸11Sから第2回転軸2Sへの力の伝達、及びレバー比rtを説明するための図である。同図において各符号は次の平面又は角度を示している。
Ph:第2回転軸2Sに直交し、第1回転軸11Sの軸線を含む平面(すなわち、回転軸11S,2Sの双方に直交する直線と、第1回転軸1Sの軸線とを含む平面)
P1:第1回転軸11Sの軸線を含み且つ平面Phに垂直な平面
θ1:平面P1に対する第1アーム1Arの角度
P2:第2回転軸2Sの軸線を含み且つ平面Phに垂直な平面
θ2:平面P2に対する第2アーム2Arの角度
θx:平面Phに対する連結部材Rの角度
θy:第1回転軸11Sに垂直な平面に対する連結部材Rの角度
【0056】
第1回転軸11SがトルクT1を有している場合、連結部材Rには、その延伸方向に力Frが作用する。図9に示す例では、第1回転軸11Sに垂直な平面が第2回転軸2Sの軸線と平行となっている。そのため、第1回転軸11Sから第2回転軸2Sへ伝達されるトルクには、2つの回転軸11S,2Sの双方に垂直な、力Frの成分Fhが主として影響する。力成分Fhは次の式で表される。
Fh=F1/cos(θ1)
F1=T1/L1
上の式において、F1は、第1アーム1Arと連結部材Rとの連結部分に作用する、第1アーム1Arに直交する方向の力である。L1は第1回転軸11Sの回転中心から第1アーム1Arと連結部材Rとの連結部分までの距離である。
このとき、第2回転軸2Sには次の式で表されるトルクT2が作用する。
T2=F2×L2
F2=Fh×cos(θ2)
上の式において、F2は、第2アーム2Arと連結部材Rとの連結部分に作用する、第2アーム2Arに直交する方向の力である。L2は第2回転軸2Sの回転中心から第2アーム2Arと連結部材Rとの連結部分までの距離である。
そのため、レバー比rt(=T2/T1)は次の式1で表される。
rt=L2/L1×cos(θ2)/cos(θ1)・・・式2
【0057】
つまり、角度θ1が大きくなるに従って、大きなレバー比を得ることができる。そこで、第2のアーム位置p2では第1のアーム位置p1よりも角度θ1が大きくなるように、2つのアーム位置p1,p2が規定されている。言い換えると、第1回転軸11Sの軸線を通り第1回転軸1Sと第2回転軸2Sとに直交する直線と第1アーム11Arとの間の角度をアーム角度θα(図9参照)とした場合、第1アーム1Arが第2のアーム位置p2にあるときのアーム角度θαは、第1アーム1Arが第1のアーム位置p1にあるときのアーム角θαよりも小さい。これにより、プレッシャ部材33が大反力位置に配置されるときは、プレッシャ部材33が小反力位置に配置されるときよりも、角度θ1が大きくなる。その結果、プレッシャ部材33が大反力位置に配置されるときに、プレッシャ部材33が小反力位置に配置されるときよりも、大きなレバー比rtを得ることができる。
【0058】
また、ここで説明する例では、第1アーム11Arが第1のアーム位置p1から第2のアーム位置p2に移動する過程で角度θ1が徐々に大きくなるように、2つのアーム位置p1,p2が規定されている。ここで説明する例では、2つのアーム位置p1,p2が平面P1に対して同じ側に規定されている。そのため、第1アーム1Arが第1のアーム位置p1から第2のアーム位置p2に移動する過程で上述のアーム角度θαは徐々に小さくなる。こうすることにより、クラッチ反力が大きくなるに従って、レバー比rtを大きくできる。
【0059】
なお、図8に示す例では、2つのアーム位置p1,p2は平面P1に対して、第2回転軸2S側に規定されている。しかしながら、2つのアーム位置p1,p2は平面P1に対して、第2回転軸2Sとは反対側に規定されてもよい。
【0060】
また、レバー比rtは、上述の式2で示されるように、第2アーム2Arと平面P2とがなす角度θ2が小さくなるに従って大きくなる。したがって、角度θ2は小さいほうが好ましい。例えば、第1アーム1Arが第1のアーム位置p1から第2のアーム位置p2に移動するとき、第2アーム2Arは平面P2を通過してもよい。第2アーム2Arの可動範囲をこのように規定することにより、角度θ2が大きな値をとることを抑えることができる。距離L2は距離L1よりも大きいほうが、レバー比rtを大きくできるので、好ましい。
【0061】
式2で示されるように、レバー比rtは第1アーム1Sの角度θ1と第2アーム2Sの角度θ2とに依存する。第2アーム2Sの角度θ2は第1アーム1Sの角度θ1に応じて変化する。すなわち、角度θ2は角度θ1から一義的に決まる。したがって、距離L1、L2、連結部材Rの長さLr及び2つの回転軸1S,2Sの相対的な位置が定まっている場合、角度θ2は角度θ1に基づいて算出され得る。ここで、2つの回転軸11S,2Sの相対的な位置を表す第1の要素は、2つの回転軸11S,2Sの軸線の距離P(図9参照)である(距離P=平面Paと平面Pbとの距離)。第2の要素は、第1回転軸11Sの軸線を含み、第2回転軸2Sに垂直な平面Phから第2アーム2Arまでの距離Lx(図9参照)である。第3の要素は、第2回転軸2Sの軸線を含み、第1回転軸11Sに垂直な平面から第1アーム1Arまでの距離Ly(図9参照)である。レバー比rtの変化率と、第1アーム1Arの角度θ1との関係は、距離L1、L2、連結部材Rの長さLr及び2つの回転軸1S,2Sの相対的な位置を変えることにより、適宜調整できる。
【0062】
図8及び図9に示す例では、レバー比rtを規定する角度θ2と角度θ1との関係は、3つの距離Lx、Ly、Pに依存する。上述したように、2つの回転軸1S,2Arが平行に配置される場合、レバー比rtを規定する角度θ2と角度θ1との関係は2つの距離Lx、Pに依存する。つまり、2つ回転軸がねじれの位置関係を有する場合には、2つの回転軸が互いに平行である場合に比べて、2つの回転軸の相対位置の自由度が高い。そのため、第1アーム1Ar,11Arの角度θ1に対するレバー比rtの変化態様についての自由も、2つの回転軸がねじれの位置関係を有するレイアウトのほうが高い。
【0063】
図10は、第1アーム1Ar,11Arの角度θ1の変化に対するレバー比rtの変化の例を示す図である。同図において横軸は角度θ1であり、縦軸はレバー比rtである。同図の破線B1,B2は、2つの回転軸1S,2Arが互いに平行に配置されている場合の関係を示している。同図の線C1,C2は2つの回転軸11S,2Sがねじれの位置関係を有する場合の関係を示している。図10では、第1アーム1Ar,11Arの長さと、第2アーム2Arの長さと、連結部材Rの長さは一定としている。破線B1,B2は、連結部材Rの傾斜角度θxが小さいと仮定している。
【0064】
図10の線B1,B2で示されるように、回転軸1S,2Arが平行に配置されている場合、角度θ1が上昇するに従ってレバー比rtも上昇し、角度θ1の変化に対するレバー比rtの変化率(線B1,B2の接戦の角度)も徐々に大きくなっている。一方、回転軸11S,2Sがねじれの位置関係を有している場合には、線C1においては、角度θ1が上昇するに従ってレバー比rtも上昇し、レバー比rtの変化率も徐々に大きくなっている。これに対して、線C2においては、角度θ1が上昇するに従ってレバー比rtも上昇しているものの、角度θ1の変化に対するレバー比rtの変化率は徐々に小さくなっている。なお、図10では、角度θ1が上昇するに従ってレバー比rtが上昇する例を示したが、第1回転軸1S,11Sと第2回転軸2Sとの相対位置によっては、角度θ1が上昇するに従ってレバー比rtを1以下に下げることもできる。
【0065】
クラッチ30にクラッチスプリング36が設けられていない場合、アクチュエータユニットAcは、プレッシャ部材33を係合位置に維持するためにプレッシャ部材33を押し続ける必要がある。上述したように、アクチュエータユニットAcは、アクチュエータ20(電動モータ)と、アクチュエータ20の回転をその出力軸(上述の例では第1回転軸1S,11S)に伝えるギアとを有している。クラッチ30にクラッチスプリング36が設けられていない場合、アクチュエータユニットAcは、それが内蔵する回転部材(具体的には、アクチュエータ20の回転軸及びギア)の回転を抑える摩擦部材を備えてもよい。このようなアクチュエータユニットAcによると、プレッシャ部材33が係合位置に配置されていない場合に、その位置を維持するのに必要なトルクを低減できる。その結果、アクチュエータ20の耐久性を向上したり、アクチュエータ20の消費電力を低減できる。
【0066】
図11及び図12はこのようなアクチュエータユニットAcの例を示す図である。図11はアクチュエータユニットAcを軸方向に臨む図である。図12図11に示すXII−XII線での断面図である。
【0067】
ここで示す例のアクチュエータユニットAcは、アクチュエータ20と、第1ギア21と、第2ギア22と、第3ギア23と、出力軸である上述の第1回転軸1Sを有している。第1ギア21はアクチュエータ20の回転軸20aと係合している大径ギア部21aと、大径ギア部21aよりも径が小さい小径ギア部21bとを有している。第2ギア22は、小径ギア部21bと係合している大径ギア部22aと、大径ギア部22aよりも径が小さい小径ギア部22bとを有している。第3ギア23は小径ギア部22bと係合している。また、第3ギア23は第1回転軸1S(11S)に設けられ、第1回転軸1S(11S)と一体的に回転する。このようなギア21,22,23を備えることにより、アクチュエータ20の回転は減速して第1回転軸1S(11S)に伝えられる。言い換えると、アクチュエータ20のトルクは増大して第1回転軸1S(11S)に伝えられる。アクチュエータユニットAcでは、第2ギア22にアクチュエータユニットAcの動作量を検知するためのセンサ29が取り付けられている。
【0068】
アクチュエータユニットAcは摩擦クリップ24を有している。ここで説明する例では、摩擦クリップ24の回転は規制されている。また、摩擦クリップ24は、回転している第1ギア21との間に摩擦が生じるように第1ギア21に接触している。
【0069】
第1ギア21は、ギア部21a,21bに加えて、接触部21cを有している。ここで説明する例では、接触部21cはギア部21a,21bとともに回転する円盤状である。摩擦クリップ24は接触部21cとの間に摩擦が生じるように接触部21cの外周を挟んでいる。
【0070】
詳細には、摩擦クリップ24は、一端が互いに連結されている2つのアーム部24A,24Bを有している。各アーム部24A,24Bはギア21の接触部21cの外周に接触する接触部24aを有している。2つの接触部24aは全体として環状となっている。摩擦クリップ24のこのような形状によると、摩擦クリップ24と第1ギア21との接触面積が確保し易くなる。アーム部24A,24Bは互いに連結された2つの固定部24bをそれぞれ有している。2つの固定部24bは摩擦クリップ24の回転が規制されるように、例えばアクチュエータユニットAcのケース25に固定される。このような摩擦クリップ24を利用することにより、プレッシャ部材33を係合位置に維持するのに必要とされるアクチュエータ20のトルクを低減できる。
【0071】
第1ギア21はアクチュエータユニットAcが備える複数のギア21,22,23のうちトルク伝達経路の最上流に配置されるギアである。そのため、第1ギア21が有しているトルクは他のギアが有しているトルクよりも小さい。ここで説明する例では、摩擦クリップ24は第1ギア21に接触しているので、比較的小さな摩擦力で第1ギア21の回転を抑えることができる。
【0072】
また、第1ギア21の接触部21cは大径ギア部21aよりも大きな径を有している。そして、摩擦クリップ24は接触部21cの外周に接触している。そのため、第1ギア21と摩擦クリップ24との間の摩擦力が第1ギア21の回転を抑える方向により効果的に作用する。
【0073】
なお、摩擦クリップ24は他のギア22,23との間に摩擦が発生するように、それらに接触してもよい。また、摩擦クリップ24が接触する回転部材は、アクチュエータ20の回転をその出力軸(上述の例では第1回転軸1S,11S)に伝えるギアに限られない。例えば、アクチュエータユニットAcは、アクチュエータ20の回転軸20aとともに回転するものの、回転軸20aから出力軸に至る動力伝達経路上にはない回転部材を有してもよい。そして、この回転部材に摩擦クリップ24が接触してもよい。こうすることにより、回転部材と回転軸20aとの間のギア比の設定の自由度が増すので、摩擦クリップが発生するトルクが調整し易くなる。また、アクチュエータユニットAcが備える摩擦部材は摩擦クリップ24に限られない。例えば、摩擦部材は第1ギア21の接触部21cに軸方向において接触してもよい。
【0074】
また、摩擦部材は必ずしもアクチュエータユニットAcに設けられていなくてもよい。例えば、回転している第1回転軸1Sや第2回転軸2Sとの間に摩擦が発生するようにそれらに接触する摩擦部材が設けられてもよい。
【0075】
以上説明したように、プレッシャ部材33が小反力位置に配置されるときに、第1アーム1Ar,11Arは第1のアーム位置p1に配置される。プレッシャ部材33が大反力位置に配置されるときに、第1アーム1Ar,11Arは第2のアーム位置p2に配置される。第1アーム1Ar,11Arが第2のアーム位置p2にあるときのレバー比rtが、第1アーム1Ar,11Arが第1のアーム位置p1にあるときのレバー比rtよりも大きくなるように、アーム位置p1,p2が設定されている。2つのアーム位置p1,p2をこのように設定することにより、プレッシャ部材33を大反力位置に維持するためにアクチュエータ20に必要とされるトルクを低減することができる。その結果、アクチュエータ20の小型化を図ることができる。
【0076】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限られず、種々の変更がなされてよい。
【0077】
例えば、レバー比rtが第1のアーム位置p1から第2のアーム位置p2に向けて単調上昇するように、2つのアーム位置p1,p2が設定されていた。しかしながら、レバー比rtは、第1アーム1Ar(11Ar)が第1のアーム位置p1から第2のアーム位置p2に向けて移動する仮定で、上昇した後に下がってもよい。そして、第1アーム1Ar,11Arが第2のアーム位置p2に配置されているときのレバー比が、第1アーム1Ar,11Arが第1のアーム位置p1にあるときのレバー比rtよりも大きくなっていてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 クラッチ装置、1Ar,11Ar 第1アーム、1S 第1回転軸、2S 第2回転軸、2Ar 第2アーム、10 駆動ユニット、20 アクチュエータ、24 摩擦クリップ、30 クラッチ、33 プレッシャ部材、36 クラッチスプリング、Ac アクチュエータユニット。
図1
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図12