【実施例1】
【0010】
図1は本実施例に係る空気調和機のサイクル構成図である。冷房運転時は、圧縮機3より吐出された高温且つ高圧の冷媒は、四方弁5を介して室外熱交換器2に流入する。室外熱交換器2に流入した冷媒は、室外送風ファン7によって送られる室外の空気と熱交換することで、凝縮されて液冷媒となる。液冷媒は、膨張弁4を通過することで低温低圧の二相冷媒になり、室内熱交換器1に流入する。室内熱交換器1に流入した低温低圧の二相冷媒は、室内送風ファン6によって送られる室内の空気と熱交換する。このとき、室内熱交換器1に送られた室内の空気は、室内熱交換器1に流入した低温低圧の二相冷媒によって冷却され、吹出口から室内に吐出される。吹出口から室内に吐出される空気は、吸込口における空気の温度よりも低いため、室内の温度を下げることができる。室内熱交換器1で熱交換された冷媒は四方弁5を介して再び圧縮機3に戻る。圧縮機3と室外熱交換器2と室外送風ファン7と膨張弁4は室外機に配置され、室内熱交換器1と室内送風ファン6は室内機に配置されている。
【0011】
図2は、本実施例に係る室内熱交換器の断面図である。室内熱交換器1は所定の間隔で並べた複数の板状のフィン20と、フィン20に直交する方向に、フィン20の孔21に挿入された複数のくさび形扁平管30と円管40とから構成されている。くさび形扁平管30と円管40をフィン20の孔21に挿入した後、円管40を拡管することにより、くさび形扁平管30と円管40の外周部がフィン20のフィンカラー部22の内周と密着して接触(接合)する。くさび形扁平管30及び円管40とフィン20との密着度を高めることで、伝熱管外周とフィンの孔内周との接触熱抵抗を低減させている。
【0012】
くさび形扁平管30と円管40(以下「伝熱管」という。)は上下方向に等間隔に配置され、フィン20は空気の流れ方向Fに対して2列に配置され、1列目と2列目の伝熱管は同じ高さに配置されている。さらに、また、空気の流れ方向Fに対して、下流ほど、くさび形偏平管30の厚みが薄くなるように配置されている。下流ほど、くさび形偏平管30の厚みが薄くなるように配置されているので、伝熱管の後流でのよどみが抑えられ、熱交換性能が向上するとともに通風抵抗損失が抑えられる。また、1列目の伝熱管のよどみが抑えられているため、1列目と2列目の伝熱管を同じ高さ位置に配置することにより、2列目の熱交換性能を維持しながら、1列目の伝熱管の後流に配置することにより、通風抵抗損失を抑えることができる。
【0013】
以下、室内熱交換器2の各構成要素であるフィン20、くさび形扁平管30、円管40及びその組み立て方法について、詳細に説明する。なお、室外熱交換器2も室内熱交換器1と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0014】
図3は、本実施例に係る熱交換器のフィンの孔を示す図である。フィン20はアルミニウムなどの金属板を材料としている。孔21(フィンカラー部22の内周)の形状は、フィン20の長手方向(図において上下方向)に直角方向にくさび形に細長い。孔21は上面21a、下面21b、左側面21c及び右側面21dから構成されている。上面21a及び下面21bは直線形状であり、左側面21c及び右側面21dは半円形状であり、左側面21cの半円部が右側面21dの半円部より大きい。
【0015】
孔21の大きさは、拡管前の伝熱管(くさび形扁平管30と円管40)の外周より若干大きく、円管40の拡管により、伝熱管外周と接合する大きさである。
【0016】
図4は、本実施例に係る熱交換器のくさび形扁平管を示す図である。くさび形扁平管30はアルミニウムなどの金属材料からなり、押し出し成形される。くさび形扁平管30の形状は、上面30a及び下面30bが直線形状であり、右側ほど厚みが薄い。左側面30cは半円の凹形状であり、右側面30dは半円の凸形状である。
【0017】
左側面30cの半円の凹形状は右側面30dの半円の凸形状より径が大きく、くさび形扁平管30の厚みは、空気の流れ方向Fに対して下流ほど薄くなるように配置されている。すなわち、本実施例の空気調和機は、孔21を有する複数の板状のフィン20と複数の冷媒流路を有する伝熱管(くさび形扁平管30及び円管40)とを有する熱交換器(室内熱交換器1又は室外熱交換器2)と、熱交換器に空気を流すファン(室内送風ファン6又は室外送風ファン7)とを備え、伝熱管は、一方の端部(左側面30c)の厚みが他方の端部(右側面30d)の厚みよりも厚く、且つ、一方の端部(左側面30c)が他方の端部(右側面30d)よりも空気の流れに対して上流側に位置する。
【0018】
このような本実施例によれば、空気の流れに対して下流ほど厚みが薄くなるので、伝熱管の後流でのよどみが抑えられ、熱交換性能が向上するとともに通風抵抗損失を抑えることができる。
【0019】
なお、一方の端部とは伝熱管の長手方向(図において左右方向)の上流側端部をいい、他方の端部とは伝熱管の長手方向(図において左右方向)の下流側端部をいう。
【0020】
空気側上流の冷媒流路ほど空気と冷媒との温度が大きいため、熱交換量が大きくなる。本実施例の空気調和機は、一方の端部(左側面30c)における伝熱管と孔21との間の密着度(局所の接触部面積/局所の孔内周長さ)は、他方の端部(右側面30d)における伝熱管と孔21との間の密着度(局所の接触部面積/局所の孔内周長さ)より大きく、且つ、一方の端部(左側面30c)が他方の端部(右側面30d)よりも空気の流れに対して上流側に位置する。このような本実施例によれば、空気側上流における伝熱管とフィン20との密着度を高め、熱交換性能の向上を図ることができる。
【0021】
また、後述の
図7に示すように、左側面30cの半円の凹形状は組み立ての際に隣り合う円管40の外径より若干大きくし、組み立て作業性を向上させている。
【0022】
上面30a及び下面30bと左側面30cとの接続部分である角部31に切欠きを設けている。すなわち、長手方向(図において左右方向)におけるくさび形扁平管30の長さと孔21の長さの差は、短手方向(図において上下方向)におけるくさび形扁平管30の長さと孔21の長さとの差よりも大きくしている。本実施例によれば、くさび形扁平管30をフィン20の孔21へ挿入する際、挿入を容易にすることができる。
【0023】
くさび形扁平管30には、その内部に冷媒が流れる冷媒孔32を複数(5個)有している。本実施例では、冷媒孔32がくさび形扁平管30の長手方向に等間隔に設けられている。複数設けることにより、冷媒側伝熱面積を増加することができる。
【0024】
図5は、本実施例に係る熱交換器の円管を示す図である。円管40はアルミニウムなどの金属材料からなり、押し出し成形される。円管40には、中心に冷媒が流れる冷媒孔41が設けられている。
【0025】
冷媒流路の断面積が大きい円管40を空気の流れ方向Fに対して上流に配置されている。言い換えると、円管40の冷媒孔41の流路断面積は、くさび形扁平管30の冷媒孔32の1個の流路断面積より大きい。すなわち、本実施例の空気調和機は、伝熱管の一方の端部(左側面30c)に位置する冷媒流路の断面積は、他の冷媒流路の断面積より大きい。
【0026】
通常の扁平管では、複数の冷媒流路のうち、空気側上流の冷媒流路ほど空気と冷媒との温度が大きいため、熱交換量が大きくなる。本実施例によれば、冷媒流量の多い円管を空気側上流に配置したため、熱交換性能の向上を図ることができる。
【0027】
次に、室内熱交換器1の組み立て方法について説明する。
図6は、本実施例に係る熱交換器のフィン20の孔21にくさび形扁平管30を挿入した図である。
図7は、本実施例に係る熱交換器のフィン20の孔21にくさび形扁平管30を挿入した後に円管40を挿入した図である。
図8は、本実施例に係る円管40の拡管方法の説明図である。
【0028】
まず、
図6に示すように、複数枚のフィン20の孔21の中央部分にくさび形扁平管30を挿入する。このとき、くさび形扁平管30の角部31に切欠きを設けることにより、挿入しやすくなっている。
【0029】
次に、
図7に示すように、挿入されたくさび形扁平管30を孔21の右側にずらして、円管40をフィン20の孔21の左側面半円部21cとくさび形扁平管30の左側面半円凹部30cからなる略円形隙間に挿入する。
【0030】
そして、
図8に示すように、拡管ビュレット50を円管40に挿入し、拡管する。すると、
図7に示す円管40は径が拡大し、円管40に隣り合ったくさび形扁平管30は左側面30bから力を受け、フィン20の孔21内を右側に移動する。なお、拡管ビュレット50の代わりに、液圧で円管40を拡管する方法を用いてもよい。
【0031】
くさび形扁平管30及びフィン20の孔21は右側ほど厚みが薄くなる形状である。円管40が拡管されると、円管40に押されて、くさび形扁平管30が右側に移動し、孔21の厚みが薄い部分にくさび形扁平管30が押し込まれることになる。すると、円管40及びくさび形扁平管30とフィン20との密着度が高まり、熱交換性能を向上させるともに、通風抵抗損失を低減することができる。
【0032】
言い換えると、円管40が拡管すると、フィンカラー部22は円管40及びくさび形扁平管30の外周から力を受け、塑性変形し、伝熱管(円管40及びくさび形扁平管30)の外周と密着して接触(接合)される。
【0033】
このように、本実施例の熱交換器の拡管方法は、孔21を有する複数の板状のフィン20と、複数の冷媒流路を有し、一方の端部(左側面30c)の厚みが他方の端部(右側面30d)の厚みよりも厚い伝熱管とを備えた熱交換器を拡管する方法であって、一方の端部(左側面30c)に位置する冷媒流路を拡管する。本実施例の拡管方法は、伝熱管全体を変形させるのではなく、伝熱管の一部、すなわち、伝熱管の一方の端部である円管40のみを拡管し変形させているので、過大な力を必要とせず、設備のコスト低減を図ることができる。
【0034】
伝熱管(円管40及びくさび形扁平管30)とフィン20の接合にロウ付けでなく、拡管で接合できるため、大掛かりなロウ付けの設備が不要で、また、フィン20がロウ付けによる高温にさらされることがないので、高温による材料劣化を防止できる。
【0035】
本実施例の熱交換器の拡管方法は、伝熱管は円管40と扁平管30とから構成され、円管40は一方の端部(左側面30c)に位置する冷媒流路を有し、扁平管30は一方の端部(左側面30c)に位置する冷媒流路以外の冷媒流路を有する熱交換器を拡管する方法であって、円管40の冷媒流路を拡管する。本実施例によれば、拡管する冷媒流路とその以外の冷媒流路を分けて、拡管に必要な力を低減し、且つ、拡管する冷媒流路以外の伝熱管の変形を抑制することができる。
【実施例2】
【0036】
第1実施例と異なる部分について説明し、第1実施例と重複する部分については説明を省略する。
図9は、実施例2に係る熱交換器の伝熱管を示す図である。
【0037】
実施例1では円管40とくさび形扁平管30を別体で構成したが、本実施例では伝熱管を複数の孔を有する1つの扁平管30で構成し、扁平管30の端部の冷媒孔41を拡管する。本実施例によれば、拡管に必要な力は実施例1に比べて増大するが、作業性を向上させることができる。
【0038】
なお、本発明は、実施形態の個々に限定されることはなく、また、上述した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0039】
くさび形扁平管30を下流側の端部ほど厚みが薄くなる形状について説明したが、上流側の端部ほど厚みが薄くなる形状にしてもよい。
【0040】
また、本実施例では、くさび形扁平管30の上面30a及び下面30b、並びに、孔21の上面21a及び下面21bが直線形状である場合について説明したが、曲線であってもよい。曲線にすることにより。孔21の厚みが薄い部分にくさび形扁平管30が押し込む際の押し込みやすさを調整することができる。