(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200293
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】車両用アンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/22 20060101AFI20170911BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
H01Q1/22 A
H01Q1/12 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-238737(P2013-238737)
(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-100011(P2015-100011A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中根 俊介
【審査官】
橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−290671(JP,A)
【文献】
特開2010−034925(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0200779(US,A1)
【文献】
特開2013−201796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子と、
車両付属部品に固定されるベース部と、
前記ベース部に配置され、前記アンテナ素子が接続される基板と、
前記基板を覆って前記ベース部に固定されるモールド部と、を備え、
前記アンテナ素子と、前記基板に接続されたアンテナ給電線とが、前記モールド部から引き出されており、
前記ベース部は、
板状部材と、
前記車両付属部品に設けられた穴に挿入されるクランプ部と、を有し、
前記クランプ部は、前記穴に挿入された状態で前記車両付属部品に引っ掛かる構造を有し、
前記板状部材には、前記モールド部が入り込む領域が形成され、
前記板状部材の1つの面には、前記基板が配置され、
前記板状部材の他の面には、前記クランプ部が配置されていることを特徴とする車両用アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンテナに関し、特に、車両付属部品に固定されるアンテナの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用アンテナとして、スポイラにアンテナ素子が設けられたアンテナが広く用いられている。スポイラは、車両のボデーに取り付けられる部材であり、車両の周りの空気の流れを調整すると共に車両の美観を奏する。スポイラには、車両のリアウィンドウの上部に設けられる庇状のものや、車両の後部に設けられる翼状のものがある。一般に、スポイラは中空のプラスチック樹脂で形成され、アンテナ素子はスポイラの内部に設けられる。
【0003】
その他、車載用アンテナには、中空のプラスチック樹脂で形成されたバンパの内部にアンテナ素子が設けられたものや、車室のオーバーヘッドコンソールにアンテナ素子が設けられたものがある。以下の特許文献1および2には、車両搭載用のスポイラアンテナが記載されている。特許文献3には、オーバーヘッドコンソールにアンテナ素子が設けられた車両アンテナ送受信構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−177484号公報
【特許文献2】特開2008−283609号公報
【特許文献3】特開2008−118546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載用アンテナには、アンテナ素子が基板に固定され、その基板がプラスチック樹脂製の板状のベース材に固定されているものがある。このような車両用アンテナでは、ベース材が、スポイラ、バンパ等の車両付属部品に固定され、ベース材を介してアンテナ素子が車両付属部品に固定される。しかし、このような構造では、ベース材を車両付属部品に固定するためのネジ類等が必要となり、部品点数が多くなるという問題があった。また、ベース材を車両付属部品に固定するための作業量が多くなるという問題があった。
【0006】
本発明は、車載用アンテナを車両付属部品に固定する構造を単純化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アンテナ素子と、車両付属部品に固定されるベース部と、前記ベース部に配置され、前記アンテナ素子が接続される基板と
、前記基板を覆って前記ベース部に固定されるモールド部と、を備え、
前記アンテナ素子と、前記基板に接続されたアンテナ給電線とが、前記モールド部から引き出されており、前記ベース部は、
板状部材と、前記車両付属部品に設けられた穴に挿入されるクランプ部
と、を有し、前記クランプ部は、前記穴に挿入された状態で前記車両付属部品に引っ掛かる構造を有し
、前記板状部材には、前記モールド部が入り込む領域が形成され、前記板状部材の1つの面には、前記基板が配置され、前記板状部材の他の面には、前記クランプ部が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車載用アンテナを車両付属部品に固定する構造を単純化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る車両用アンテナの斜視図である。
【
図2】本発明に係る車両用アンテナの分解斜視図である。
【
図5】モールド部によってアンプ基板が覆われる前の車両用アンテナの斜視図である。
【
図6】車両用アンテナを車両付属部品に固定する工程を示す図である。
【
図7】車両用アンテナが搭載される車両を示す図である。
【
図8】スポイラの筐体の上蓋が取り除かれた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1には、本発明の実施形態に係る車両用アンテナの斜視図が示されている。車両用アンテナは、スポイラ、バンパ等の車両付属部品に取り付けられるアンテナである。この図では、車両付属部品に向けられる側(z軸負方向)が上側に向けられた状態が示されている。車両用アンテナは、本体部10、および2つのアンテナ素子基板12を備える。アンテナ素子基板12は、プラスチックフィルム等の絶縁体によって形成されている。
図1に示されているアンテナ素子基板12は透明であるが、アンテナ素子基板12は、半透明あるいは不透明であってもよい。アンテナ素子基板12にはアンテナ素子16が設けられている。アンテナ素子16は、本体部10の内部に設けられたアンプに接続されている。本体部10は、ベース部18およびモールド部20を備える。後述のようにベース部18には、アンプが実装されたアンプ基板が配置されており、モールド部20によってアンプ基板が覆われている。ベース部18には、z軸負方向に突出するクランプ部22が形成されている。クランプ部22が車両付属部品に設けられた固定穴に挿入されることで、車両用アンテナは車両付属部品に固定される。
【0013】
図2には、車両付属部品に向けられる側が下側に向けられた車両用アンテナの分解斜視図が示されている。ベース部18は、幅(x軸方向の長さ)が、高さ(z軸方向の長さ)よりも大きい筒形状を含んでいる。すなわち、ベース部18は、長方形の板状部材19を含み、板状部材19は、一方の短辺から他方の短辺に矩形の穴を貫通させて、空洞が形成された形状を有する。板状部材19を形成する上板の各短辺には、U字形状の切り欠き26が形成されている。板状部材19の長手方向の各側面には溝28が形成されている。
【0014】
図3には、ベース部18の正面図が示されている。空洞30内には、上板32と下板34との間に結合した柱36が設けられている。下板34の下面には、クランプ部22が形成されている。クランプ部22は、板状部材19の下面から突出しz軸負方向に伸びる。クランプ部22は、板状部材19の下面から離れるに従って径が大きくなる環状の支持部38を有する。支持部38は、棒状のクランプ部本体40の周囲を環状に囲んでいる。支持部38は、クランプ部本体40の周囲の一部で突出する形状であってもよい。
【0015】
図4には、ベース部18の側面図が示されている。クランプ部本体40におけるy軸正方向を臨む側面およびy軸負方向を臨む側面には、突起構造39が形成されている。突起構造39は、クランプ部本体40の先端側から上方に向かうにつれて厚みが増加するテーパ形状を有する。最大の厚みのある部分より上側は、上方に向かうにつれて厚みが減少し、支持部38の下面に向けて窄まる。突起構造39およびクランプ部本体40によって、支持部38より下方は楔形状をなす。クランプ部22の全体、または、少なくとも突起構造39の部分は、弾力性のあるゴム、プラスチック等によって形成してもよい。クランプ部22は、車両付属部品が備える板状の部材に開けられた固定穴に挿入される。突起構造39が固定穴を通り抜けた後、支持部38の下面と突起構造39との間に固定穴が嵌まり込み、ベース部18が車両付属部品に固定される。ベース部18が車両付属部品に固定されると、支持部38の下面は車両付属部品に接触し、車両付属部品に固定された本体部10のぐらつきが抑えられる。
【0016】
図2に戻って、車両用アンテナの構造について説明する。ベース部18上面の対向する長辺には、基板固定爪42が設けられている。アンプ基板44は、長方形に形成されており、基板固定爪42が引っ掛かる固定凹み46が対向する長辺に設けられている。アンプ基板44がベース部18の上面に接合される際には、各基板固定爪42がベース部18から外側に向けて広がり、アンプ基板44がベース部18の上面に接すると共に、各基板固定爪42はアンプ基板44の各固定凹み46に嵌まり込む。これによって、アンプ基板44はベース部18の上面に接した状態で2つの基板固定爪42に引っ掛けられ、ベース部18上面に固定される。
【0017】
各アンテナ素子基板12には、受信される電波の波長の約4分の1の長さの線状導体がアンテナ素子16として固定されている。
図2に示されている例では、アンテナ素子16の終端近傍の区間は、所定角度だけ折り曲げられており、その他の区間よりも幅が広くなっている。これによって、終端近傍の静電容量が増加し、電気長を一定にしたまま物理的な長さが短縮される。アンテナ素子16は、例えば、銅箔で形成される。アンテナ素子16は、その他の導電性の材料で形成してもよい。例えば、導電性のインクによってアンテナ素子基板12に印刷することでアンテナ素子16を形成してもよい。また、アンテナ素子基板12を、2枚のプラスチックフィルムを重ね合わせた構造とし、2枚のプラスチックフィルムの間にアンテナ素子16を挟んでもよい。2つのアンテナ素子基板12によって、半波長ダイポールアンテナが構成される。なお、1つのアンテナ素子基板12のみを用いて、4分の1波長モノポールアンテナを構成してもよい。
【0018】
図5には、モールド部によってアンプ基板44が覆われる前の車両用アンテナの斜視図が示されている。アンテナ素子基板12からは、アンテナ素子16の給電端48が引き出されており、給電端48がアンプ基板44に接続されている。アンプ基板44にはアンプ(図示せず)が実装されており、各アンテナ素子16は、アンプ基板44に設けられた配線パターンによってアンプに接続されている。また、アンプ基板44には同軸ケーブル50が接続されている。すなわち、同軸ケーブル50の内導体52は、アンプ基板44に設けられた配線パターン、およびアンプ基板44に設けられたインピーダンス整合回路を介してアンプに接続されている。同軸ケーブル50の外導体54は、アンプ基板44の接地導体に接続されている。なお、同軸ケーブル50側のインピーダンスと、アンプ側のインピーダンスとが整合している場合には、インピーダンス整合回路は設けなくてもよい。
【0019】
図2および
図3を参照して、モールド部20を形成する工程について説明する。アンプ基板44がベース部18に固定され、各アンテナ素子基板12および同軸ケーブル50がアンプ基板44に取り付けられた状態で、モールド部20を形成するモールド材料は、板状部材19の側面および空洞30の開口からアンプ基板44の上側に亘る領域を覆う。
【0020】
この工程は、モールド加工によって行われる。すなわち、加熱によって軟化したモールド材料で、板状部材19の側面および空洞30の開口からアンプ基板44の上側に亘る領域を覆い、その状態でモールド材料を冷却し硬化させる。軟化したモールド材料は、
図3に示される空洞30および溝28に流れ込んだ後に硬化する。そのため、モールド材料が硬化した後は、モールド材料は確実にベース部18に固定され、モールド部20が形成される。モールド材料として、このような熱可塑性の材料を用いる代わりに、紫外線の照射によって硬化する材料を用いてもよい。この場合、軟化した状態のモールド材料で、板状部材19の側面および空洞30の開口からアンプ基板44の上側に亘る領域を覆った後、モールド材料に紫外線を照射すればよい。
【0021】
このようなモールド加工によって、モールド部20はアンプ基板44を覆ってベース部18に固定される。アンテナ素子16、およびアンプ基板44に接続されたアンテナ給電線としての同軸ケーブル50は、モールド部20から引き出される。板状部材19は、モールド材料が入り込む領域として空洞30および溝28を備えるため、モールド部20は、確実にベース部18に固定される。
【0022】
図6には、車両用アンテナを車両付属部品60に固定する工程が示されている。ベース部に形成されたクランプ部22は、車両付属部品60に設けられた固定穴58に挿入される。クランプ部22が有する突起構造は、クランプ部22が固定穴58に挿入された状態で車両付属部品60に引っ掛かる。これによって、本体部10が車両付属部品60に固定される。各アンテナ素子基板12の外側の端にはクッション56が取り付けられ、各アンテナ素子基板12の外側の端は、クッション56を介して車両付属部品60に固定される。クッション56は、発泡スチロール、スポンジ、プラスチック樹脂等によって形成されている。
図6に示される例では、クッション56には、xy平面に平行な方向に溝が切られており、その溝にアンテナ素子基板12が差し込まれる。クッション56は、接着剤、両面テープ等により、車両付属部品60に固定され、アンテナ素子基板12の外側の端がクッション56を介して車両付属部品60に固定される。これによって、アンテナ素子基板12の振動が抑制されると共に、アンテナ素子基板12から本体部10に加わる力が低減される。
【0023】
このような車両用アンテナによれば、簡単な工程で車両用アンテナを車両付属部品60に取り付けることができる。また、車両用アンテナが、クッション56およびクランプ部22によって車両付属部品60に固定されるため、特定の箇所に大きな力が働くことが回避される。さらに、クランプ部22が有する支持部の下面が、車両付属部品60に接触し、車両付属部品60に固定された本体部10のぐらつきが抑えられる。
【0024】
なお、上記では、クランプ部が板状の部材に開けられた固定穴に挿入される例について説明した。クランプ部は、車両付属部品に開けられた筒状の固定穴に挿入されてもよい。この場合、例えば、筒状の固定穴の側面に突起が設けられ、クランプ部の突起構造が、固定穴の側面に設けられた突起に引っ掛かる。また、筒状の固定穴の側面にクランプ部の突起構造が入り込む凹みが形成されてもよい。
【0025】
図7には、車両用アンテナが搭載される車両62が示されている。車両付属部品としてのスポイラ64は、プラスチック樹脂等で形成されている。
図7に示されているスポイラ64は、リアウィンドウ66の上部に設けられ、庇状の形状を有する。
【0026】
図8には、スポイラ64の筐体の上蓋が取り除かれた状態が示されている。
図8の上方向および下方向は、それぞれ、車両の後方向および前方向に対応し、
図8の左方向および右方向は、それぞれ、車両前方向を見て右方向および左方向に対応する。スポイラ64は、所定の位置に設けられたボルト穴に通されたボルトによって、ボデーに固定されている。
【0027】
車両用アンテナ100は、スポイラ64に開けられた固定穴に固定され、各アンテナ素子基板12の外側が、クッション56を介してスポイラ64に固定されている。同軸ケーブル50は、スポイラ64に開けられたケーブル挿通穴68を介して車両内の無線機に接続されている。各アンテナ素子16で受信された信号は、本体部10に設けられたアンプによって増幅された後、同軸ケーブル50を介して無線機に伝送される。
【0028】
車両用アンテナ100は、例えば、デジタルテレビ放送の信号や、DAB(Digital Audio Broadcast)の信号を受信するアンテナとして用いられる。また、スポイラ64内には、車両用アンテナ100の他、中波ラジオ放送やFMラジオ放送の各信号を受信するアンテナを設けてもよい。
【0029】
本発明に係る車両アンテナは、その他の車両付属部品、例えば、バンパ、車室内のオーバーヘッドコンソール等に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0030】
10 本体部、12 アンテナ素子基板、16 アンテナ素子、18 ベース部、19 板状部材、20 モールド部、22 クランプ部、26 切り欠き、28 溝、30 空洞、32 上板、34 下板、36 柱、38 支持部、39 突起構造、40 クランプ部本体、42 基板固定爪、44 アンプ基板、46 固定凹み、48 給電端、50 同軸ケーブル、52 内導体、54 外導体、56 クッション、58 固定穴、60 車両付属部品、62 車両、64 スポイラ、66 リアウィンドウ、68 ケーブル挿通穴。