(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺のプロファイルを螺旋状に巻回しつつ、先行するプロファイルの嵌合部に後続するプロファイルの嵌合部を内周側から押しつけることにより相互に嵌合させて管状に形成する製管装置であって、
略環状のフレーム体と、
前記フレーム体に設けられ、巻回されたプロファイルの先行部分と後続部分との嵌合領域の内周側に配置される嵌合ローラと、
プロファイルを前記嵌合領域の内周側から前記嵌合ローラへ向けて供給する駆動ユニットとを有し、
前記駆動ユニットは、前記フレーム体に取り付けられており、プロファイルを挟んで回転駆動する外面ローラと内面ローラとの対からなる少なくとも一組のピンチローラを備えて前記フレーム体の内周側で前記フレーム体に対して回動自在に設けられ、
前記駆動ユニットの回動により、前記嵌合ローラに対する前記ピンチローラの配設位置が変更されることを特徴とする製管装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
更生に用いられるプロファイルは、所定の強度および曲げ剛性を有している。そのため、螺旋状に巻き絞るようにプロファイルを供給すると、プロファイルには反力(内部応力)が発生する。すなわち、プロファイルは嵌合時に螺旋経路の外側へ拡がろうとする力を生じているので、プロファイルの嵌合部同士を内周側から押しつける作用と相まって安定的に嵌合状態を形成するものとなる。
【0008】
ところが、更生する既設管の管径が大きいと、製管装置によって形成する更生管の管径も大きくなり、製管装置の外径も大きくしなければならない。更生管の管径を大きくすると、プロファイルに生じる反力は比較的小さく抑えられる。それゆえ、このような場合には、プロファイルの嵌合部同士が自ら嵌合しようとする作用が弱まってしまうという課題があった。
【0009】
一方、螺旋状に供給するプロファイルに過大な反力が生じると、製管装置を進行方向に押圧するように作用し、場合によっては製管装置が前方に押し出され、プロファイルの嵌合にずれを生じるやすくなるということが考えられた。そのため、既設管の管径に応じて、プロファイルの嵌合部が安定的かつ確実に嵌合し得るように個別に対策を講じる必要性があった。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、既設管内面と更生管との間にクリアランスが無い状態で製管するにあたり、プロファイルに生じる反力を利用し得て、既設管または更生管の管径にかかわらず精度の高い更生管を安定して形成することのできる製管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、長尺のプロファイルを螺旋状に巻回しつつ、先行するプロファイルの嵌合部に後続するプロファイルの嵌合部を内周側から押しつけることにより相互に嵌合させて管状に形成する製管装置を前提とする。この製管装置に対し、略環状のフレーム体と、前記フレーム体に設けられ、巻回されたプロファイルの先行部分と後続部分との嵌合領域の内周側に配置される嵌合ローラと、プロファイルを前記嵌合領域の内周側から前記嵌合ローラへ向けて供給する駆動ユニットとを備えさせる。そして、前記駆動ユニットを、
前記フレーム体に取り付け、プロファイルを挟んで回転駆動する外面ローラと内面ローラとの対からなる少なくとも一組のピンチローラを有する構成として前記フレーム体の内周側
で前記フレーム体に対して回動自在に設け、
前記駆動ユニットの回動により、前記嵌合ローラに対する前記ピンチローラの配設位置を変更可能としたことを特徴としている。
【0012】
このような特定事項により、プロファイルを前記嵌合領域の内周側から嵌合ローラに向けて供給する駆動ユニットにおいて、形成する更生管の管径に応じて嵌合ローラに対する前記ピンチローラの配設位置を設定し、嵌合ローラに対するプロファイルの進入経路を規定することができる。これにより、嵌合ローラに対するプロファイルの進入経路を、製管径が大きい場合には、より鋭角に近い状態となるように供給してプロファイルに反力を生じさせ、プロファイルの嵌合作用を高めて、精度の高い更生管を安定的に形成することが可能となる。反対に、製管径が比較的小さい場合には、プロファイルの進入経路の曲がり具合を緩めて製管装置への作用を抑え、ずれや嵌合不良等を生じることなく製管していくことが可能となる。
【0018】
また、
前記駆動ユニットは前記フレーム体に取り付けられて、前記フレーム体に対して回動自在に設けられたことから、製管装置の構造を大きく変更することなく、駆動ユニットを回動させてプロファイルの進入経路を自在に変更することがで
き、ピンチローラの配置変更も作業性よく短時間で容易に行うことができる。
【0019】
より詳細には、前記フレーム体と駆動ユニットとの間には固定部材を配設し、前記固定部材をフレーム体に回動自在に設け、前記固定部材と駆動ユニットとの連結位置を変更可能な構成とすることが好ましい。
【0020】
これにより、前記固定部材と駆動ユニットとの連結位置を変更する簡単な作業だけで、プロファイルの進入経路を規定したり変更したりすることが可能となり、極めて作業効率がよく、短時間で作業を済ませることができる。
【0021】
また、前記製管装置において、前記固定部材に、前記駆動ユニットの固定のための複数の連結孔を備えさせることが好ましい。
【0022】
これにより、前記駆動ユニットと固定部材との結合および分離作業を容易に行うことができ、嵌合ローラに対するピンチローラの配設位置を簡単に変更することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、環状のフレーム体と、巻回されたプロファイルの先行部分と後続部分との嵌合領域の内周側に配置される嵌合ローラと、プロファイルを前記嵌合領域の内周側から前記嵌合ローラに向けて供給する駆動ユニットとを備えて、嵌合ローラに対するピンチローラの配設位置が変更可能に構成されることから、嵌合ローラに対するプロファイルの進入経路を規定することができ、更生する既設管の管径に関わらず精度の高い更生管を効率よく安定的に形成することが可能となり、その結果、既設管の更生作業に要する期間の短縮化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る製管装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
図1は、一実施形態に係る製管装置1の正面図である。
図2は、製管装置1におけるリンク体21を示し、
図2(a)は正面図、
図2(b)はリンクローラ3を一部破断して示した平面図である。
【0031】
なお、以下の説明においては、製管装置1によって更生管120を形成する際の既設管200内における製管装置1の進行方向を前方、その反対方向を後方と位置づけて説明する。
【0032】
製管装置1は、長尺帯状のプロファイル100を既設管200内に連続的に引き込み、螺旋状に巻回して管状に形成する装置である。プロファイル100は、その先行する部分と後続する部分とが、製管装置1の外周部に隣接して配置され、プロファイル100に設けられている嵌合部が相互に嵌合される。これにより、プロファイル100は管状となり、既設管200内に残置される。また、後述する
図10に示されるように、製管装置1は、既設管200の内壁に沿って周方向に回転ながら、既設管200の軸方向へ進行するので、更生管120が付加的に形成される。
【0033】
例示の形態に係る製管装置1は、円形断面の更生管120の施工に用いる自走式の製管装置であって、フレーム体2と、フレーム体2に軸支された複数のリンクローラ3と、フレーム体2の内周側からプロファイル100を供給する駆動ユニット4と、プロファイル100の嵌合部を内周側から押圧する嵌合ローラ5とを備えている。
【0034】
図1に示すように、フレーム体2は、複数のリンク体21を相互に連結したリンク機構が、プロファイル100を供給する駆動ユニット4、およびプロファイル100を管状に嵌合する嵌合ローラ5等の各部材と相互に連結され、略環状に形成されている。
【0035】
リンク体21は、
図2(a)および
図2(b)に示すように、一組のリンクフレーム22、23が連結軸24を介して回転自在に連結して形成されている。
図2(b)に示すように、一方のリンクフレーム22(第1リンクフレーム22)は、対向する一対の第1リンクプレート221と、これらの第1リンクプレート221を対向させた状態に結合する第1連結プレート222とを備えて構成される。他方のリンクフレーム23(第2リンクフレーム23)は、対向する一対の第2リンクプレート231と、これらの第2リンクプレート231を対向させた状態に結合する第2連結プレート232とを備えて構成される。
【0036】
リンク体21は、第1リンクフレーム22における一対の第1リンクプレート221の各端部に、第2リンクフレーム23における一対の第2リンクプレート231の各端部を、それぞれ重ね合わせ、連結軸24を介して回転自在に連結して形成されている。リンク体21は、一つのリンク体21における第1連結プレート222に、他のリンク体21における第1連結プレート222を突き合わせて接合されている。また、一つのリンク体21における第2連結プレート232に、更に他のリンク体21の第2連結プレート232を突き合わせて接合されている。これにより複数のリンク体21が相互に連結されている。
【0037】
図2(a)に示すように、第1リンクフレーム22におけるリンクプレート221の表面には、連結軸24を中心として回動規制片211が設けられている。第2リンクフレーム23のリンクプレート231の端部には、この回動規制片211に対応する切欠部212が設けられている。切欠部212は、連結軸24の回動中心を中心とする設定半径上の一定範囲にわたって形成されている。これにより、一組のリンクフレーム22、23の相互の回動動作を、回動規制片211と切欠部212とが当接するまでの角度範囲に規制し、リンク体21が内方又は外方へ極端に屈曲することを防止している。
【0038】
隣接するリンク体21は、各リンクフレーム22、23の連結プレート(第1連結プレート222同士、または第2連結プレート232同士)を組み合わせて、ボルトナット等(図示せず)を介して着脱自在に連結されている。フレーム体2を直線状に形成できるように、特定の隣接するリンク体21間において着脱自在となされるならば、残りのリンク体21については溶接などによって着脱不能に形成されてもよい。
【0039】
リンク体21の連結軸24には、リンクローラ3が設けられている。リンクローラ3は、合成樹脂製又は金属製の円筒体であり、軸受25を介して連結軸24の軸回りに回転自在に支持されている。フレーム体2の外周にはプロファイル100が螺旋状に巻回される。リンクローラ3は、更生管120を形成する際に、プロファイル100および更生管120の内面に接触して回転する。
【0040】
ここで、プロファイル100は、
図14(a)に示すように、帯板状の基板101に複数本の断面T字状のリブ102が立設された形状とされている。基板101の一方の側縁部には、嵌合部として嵌合凸部103が立設されている。基板101の他方の側縁部には、基板101の厚み分の段部104が形成され、嵌合部として嵌合凹部105が設けられている。
図14(b)に示すように、段部104には、基板101の嵌合凸部103側の側縁部が納まる。また、嵌合凸部103は、隣り合ったプロファイル100の嵌合凹部105に嵌入される。かかるプロファイル100は、硬質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂材により長尺状に成形される。
【0041】
また、プロファイル100には、金属製の補強材106が装着されている。例示する補強材106は、帯板状の鋼板を断面略W字状に折曲して形成されている。補強材106はプロファイル100の隣り合うリブ102間に嵌め込まれ、左右の傾斜部分の先端がそれぞれリブ102のT字部に係止されている。これにより、補強材106は、プロファイル100の長手方向に連続的に配設されている。
【0042】
プロファイル100は、製管過程で螺旋状に巻回され、
図14(a)に示すように、先行する部分と後続する部分とが互いに隣接する。そして、プロファイル100の先行部分の嵌合凹部105に対し、後続部分の嵌合凸部103が内面側(既に巻回されているプロファイル100の内周側)から嵌め込まれ、相互に接合される。
【0043】
フレーム体2には、プロファイル100を引き込み、送り出すための駆動ユニット4が設けられている。
図3は、駆動ユニット4を一部破断して、外面ローラ41と内面ローラ42とを示した側面図である。
【0044】
駆動ユニット4は、フレーム体2の外周側に配置される外面ローラ41と、その内周側に配置される内面ローラ42とが対となったピンチローラ43を主体に構成されている。また、駆動ユニット4は、外面ローラ41と内面ローラ42とを回転駆動させるモータ46を備えている。外面ローラ41と内面ローラ42とは、減速機(例えば、歯車機構44の各歯車)を介して、互いに反対方向に回転駆動されている。
【0045】
図1に示すように、例示の形態に係る駆動ユニット4には、2組のピンチローラ43が、プロファイル100の供給ラインに沿って、フレーム体2の内周側に配設されている。
【0046】
内面ローラ42および外面ローラ41は、剛性を有するケーシング45の内部に備えられており、それぞれの回転軸が回転自在に支持されている。モータ46の駆動力は、歯車機構44を介して各ローラの回転軸に伝動され、内面ローラ42および外面ローラ41を適宜減速して回転させる。ピンチローラ43は、内面ローラ42および外面ローラ41の間にプロファイル100を挟み込んで送り出すように回転方向が設定されている。
【0047】
内面ローラ42は、合成樹脂製又は金属製の円筒体からなり、その軸方向の長さがプロファイル100の幅寸法に相当する長さよりも長くなるように形成されている。内面ローラ42は、プロファイル100の内面(リブ102の立設されていない面)に接触しながら回転する。
【0048】
外面ローラ41は、大径ローラ411、補強材用大径ローラ412、および小径ローラ413を備えている。大径ローラ411は、プロファイル100の隣接するリブ102間に挿入可能な幅で形成されている。また、補強材用大径ローラ412は、複数備えられ、それぞれ、プロファイル100に装着された補強材106の略V字状の溝に挿入可能な鍔状に形成されている。小径ローラ413は、複数備えられ、プロファイル100のリブ102の先端部に接触して回転するよう、大径ローラ411および補強材用大径ローラ412よりも小径にて形成されている。これにより、外面ローラ41は、プロファイル100の外面(リブ102の立設された面)に接触しながら滑ることなく回転する。
【0049】
互いに逆方向に回転するピンチローラ43(内面ローラ42および外面ローラ41)は、プロファイル100を両面から挟み込み、フレーム体2の内周側から引き込む。2組のピンチローラ43によって、プロファイル100の後続する部分は、既に巻回されたプロファイル100の先行部分に並列するように、連続的にフレーム体2の外周側へ送り出される(
図1参照)。
【0050】
モータ46は、例えば、
図10に示される油圧ユニット93から油圧ホースを介して供給される圧油によって駆動し、油圧ユニット93は、発電機92から供給される電力によって駆動するように構成される。この場合、油圧ユニット93から延びる油圧ホースは、回転継手47を介してモータ46に接続され、製管装置1の回転に影響なく圧油を供給する。
【0051】
図4に示すように、駆動ユニット4は、プロファイル100に対してピンチローラ43を圧接位置と離間位置との間で開閉するための開閉機構を有する。これにより、駆動ユニット4に設けられたピンチローラ43は、プロファイル100に圧接および離間可能となされている。
【0052】
製管装置1は、このような開閉機構を備えることにより、駆動ユニット4を開放し、プロファイル100を挟み込んで回転する外面ローラ41と内面ローラ42とを、プロファイル100から離間させることができる。ピンチローラ43間から離間されたプロファイル100は、そのまま正面側へ引き出して、駆動ユニット4から容易に取り外すことができる。
【0053】
また、
図1に示すように、駆動ユニット4によるプロファイル100の送り出し方向の先方には、嵌合ローラ5が配設されている。
図5は、製管装置1における嵌合ローラ5を示す平面図である。嵌合ローラ5は、本体部51と、本体部51よりも大径である円板状の鍔部52を有する。嵌合ローラ5は、軸53回りに回転自在に軸支され、本体部51の外周面がプロファイル100の内面に接触する。鍔部52は、プロファイル100の一方の側縁部に当接して、プロファイル100を案内する。
【0054】
嵌合ローラ5は、既設管200内において、螺旋状に巻回されたプロファイル100を先行するプロファイル100の側縁部に押さえつけ、嵌合凸部103と嵌合凹部105とを嵌合させて、管状に製管する。嵌合ローラ5は、更生管120を構成するプロファイル100の長手方向に対して直交する向きとなるように配設される。嵌合ローラ5をプロファイル100に対して直交させる方法としては、例えば、フレーム体2において、隣接する一対のリンク体21同士の連結部、または隣接するリンク体21と連結用リンク体26との連結部のうち、少なくとも1つの連結部において、一方のリンク体21、26を、他方のリンク体21、26に対して、管軸方向に移動させ、移動させた状態でそれぞれを固定することが好ましい。
【0055】
駆動ユニット4と嵌合ローラ5との間には、プロファイル100が外周側へ膨らまないように押さえる外面ガイド6が設けられている。外面ガイド6は、プロファイル100の内面を案内する小径のガイドローラ61と、プロファイル100の外面より外周側に配設されたガイド板62とを備える。ガイドローラ61はフレーム体に回転自在に支持されて、プロファイル100の内面に接触して回転する。ガイドローラ61とガイド板62とはプロファイル100を挟んで対向配置され、駆動ユニット4から嵌合ローラ5へと送られるプロファイル100の経路を円滑に規制する。
【0056】
なお、製管装置1には、隣接するリンク体21の回動を拘束し、相互連結角度を一定に固定する固定部材7が設けられることが好ましい。
図1に示すように、特定のリンク体21、26に固定部材7が取り付けられている。この固定部材7は、プロファイル100の嵌合領域の上流側および下流側の両方に複数箇所にわたって配設されている。固定部材7は、嵌め合わされる切欠部212に対応する大きさで形成され、回動規制片211に対応する凹部を備えている。
【0057】
図6は、製管装置1における駆動ユニット4の部分を示す拡大背面図であり、
図7は駆動ユニット4の部分を背面側から見た斜視図である。
【0058】
本実施形態において、フレーム体2に回転自在に設けられた段付きローラ49の周囲には、第1の軸方向フレーム27が配設されている。第1の軸方向フレーム27は、段付きローラ49を支持する連結用リンク体26に対して一体に接合されている。第1の軸方向フレーム27は、前後のリンク体26間に架設されるとともに、段付きローラ49と平行な方向に配設されている。第1の軸方向フレーム27は、剛性を有する金属製板材からなり、段付きローラ49の外周を取り囲むように複数配設されている。
【0059】
また、嵌合ローラ5の連結軸53を支持するリンク体26には、第2の軸方向フレーム28が一体に接合されている。第2の軸方向フレーム28は、剛性を有する金属板材からなり、前後のリンク体26間に架設され、嵌合ローラ5の連結軸53と平行に配設されている。これらの第1、第2の軸方向フレーム27、28には、重量の軽減化を図るため、多数の丸孔が穿設されていることが好ましい。
【0060】
また、フレーム体2の背面側には、支持フレーム29が、第1の軸方向フレーム27および第2の軸方向フレーム28の間に架け渡すように配設されている。これらの第1、第2の軸方向フレーム27、28と、支持フレーム29とは、フレーム体2の内周側から見て、一方向(
図7における図中の右上方向)に開放した略コ字状のフレームを構成している。プロファイル100は、第1の軸方向フレーム27の内周側から供給されて、駆動ユニット4を通過し、第2の軸方向フレーム28の外周側へ導かれる。
【0061】
駆動ユニット4は、嵌合ローラ5に対するピンチローラ43の配設位置を変更可能とするための機構を備えている。すなわち、この形態では、
図7に示すように、段付きローラ49の周囲に設けられた第1の軸方向フレーム27には、フレーム体2の内周側の面に支持片271が立設されている。この支持片271には所定の長さを有する固定部材81の一端部が回動自在に連結されている。固定部材81は複数の連結孔811を有しており、他端が駆動ユニット4の背面に連結されている。
【0062】
また、駆動ユニット4は、嵌合ローラ5に対するピンチローラ43の配設位置を変更可能となるように、フレーム体2に対して回動自在に設けられている。駆動ユニット4は、フレーム体2に対して外面ローラ41の回転軸を回動中心とするように取り付けられている。また、固定部材811に設けられた連結孔811のうち、いずれか一つの連結孔811を介して、ボルト等の止着具により固定部材811と駆動ユニット4とが結合されている。この固定部材811と駆動ユニット4との連結位置によって、フレーム体2に対する駆動ユニット4の固定角度が決定され、嵌合ローラ5に対するピンチローラ43の配設位置が決定される。
【0063】
図6および
図7では、固定部材81は、支持片271に最も近い位置の連結孔811を介して駆動ユニット4と結合されている。この状態の駆動ユニット4を、
図7における実線により示している。この状態から、駆動ユニット4を結合する連結孔811を変更し、支持片271から離れた位置にある他の連結孔811を介して駆動ユニット4と固定部材81とを結合する。
【0064】
これにより、
図8において二点鎖線で示されるように、駆動ユニット4は外周側の外面ローラ41(嵌合ローラ5寄りの外面ローラ41)の回転軸を中心に回動されて、フレーム体2に対する駆動ユニット4の固定角度が変更される。また、駆動ユニット4の内部の2組のピンチローラ43の配設位置が変更される。すなわち、嵌合ローラ5に対するピンチローラ43の配設位置が変更される。
【0065】
プロファイル100は、駆動ユニット4の2組のピンチローラ43の外面ローラ41と内面ローラ42との間を通って嵌合ローラ5に導かれるので、このように駆動ユニット4の固定角度が変更されると、プロファイル100の嵌合ローラ5への供給経路(進入経路)が変更され、図示するように、嵌合ローラ5に対して緩やかに曲げられた状態から、さらに大きく曲げられた状態で供給するように変更することが可能となる。
【0066】
既設管200の管径および形成する更生管120の管径が比較的大きい場合には、プロファイル100をより大きく曲げた状態で嵌合ローラ5へ供給することが好ましい。これによって、プロファイル100の反力を利用して精度よくプロファイル100同士を嵌合させることができるからである。反対に、既設管200の管径および更生管120の管径が比較的小さい場合には、プロファイル100の螺旋経路そのものに曲率を有する形態となることから、嵌合領域の前段部でプロファイル100を大きく曲げて供給せずともよい。
【0067】
図9(a)〜
図9(c)は、形成する更生管120の管径によって異なるピンチローラ43の配設位置の例を模式的に示す説明図である。ピンチローラ43の配設位置は、例えば、嵌合ローラ5の連結軸53と、フレーム体2の軸芯(および更生管120の軸心)との平行な2直線を含む仮想平面αに対して、嵌合ローラ5の連結軸53を中心とする中心角75°までの空間領域内とされることが好ましい。
図9(a)に示すように更生管120が比較的小径である場合よりも、
図9(b)に示す更生管120さらには
図9(c)に示す更生管120のように、管径が大きくなるほど、嵌合ローラ5を中心とする中心角が小さくなるようにピンチローラ43を配設することが好ましい。
【0068】
これにより、プロファイル100に内部応力を生じさせ、外周側へ拡がろうとする反力が発生するので、このプロファイル100の反力と嵌合ローラ5に押圧される作用とが相まって、嵌合凸部103と嵌合凹部105とが確実に嵌合される。したがって、既設管200の内面と更生管120との間にクリアランスが無い状態で製管するに際して、プロファイル100を供給する角度および経路が好適な状態で一定に保持され、プロファイル100に生じる反力を利用し得て、既設管200および更生管120の管径にかかわらず精度の高い更生管を安定して形成することができる。
【0069】
なお、駆動ユニット4には二組のピンチローラ43が設けられた形態を例示したが、本発明はこれに限定されず、少なくとも一組のピンチローラ43が設けられていればよい。そのため、
図9では、かかる製管装置1の駆動ユニット4の構成を一組のピンチローラ43により示している。
【0070】
(既設管の更生方法)
次に、上述の製管装置1を用いて既設管200を更生する施工手順について説明する。
図10は、既設管200の更生方法を示す説明図である。
【0071】
既設管200の更生に用いるプロファイル100は、ドラム91に巻き取られて施工現場に搬送される。既設管200の更生に際しては、所定スパンごとに設けられたマンホール201、202を利用し、プロファイル100等を既設管200内に導入して製管していく。更生管120の施工は、既設管200の上流側から下流側に向けて行う。
【0072】
図10に示すように、上流側マンホール201の地上には、プロファイル100を巻き重ねた回転台付きドラム91を設置する。下流側マンホール202の地上には、発電機92を設置する。既設管200内には、製管装置1および油圧ユニット93を搬入する。
【0073】
製管装置1は、フレーム体2が分解可能かつ組み立て可能であることから、上流側マンホール201内へ容易に搬入し、組み立てることができる。形成する更生管120の管径に合わせて、製管装置1の周長をリンク体21の個数を増減することにより調整しておく。また、製管装置1のフレーム体2を、既設管200の内径および使用するプロファイル100の幅に対応するように調整する。駆動ユニット4や固定部材81はフレーム体2に後付け可能であるので、リンク体21等とは別体でマンホール201内へ搬入した後、一体に組み付けてもよい。さらに、既設管200および更生管120の管径に応じて、固定部材81と駆動ユニット4との連結位置を変更し、プロファイル100の供給経路を規定する。
【0074】
製管装置1の組み立て作業が完了すると、地上のドラム91からプロファイル100をマンホール201内へ引き込む。そして、プロファイル100を、製管装置1のフレーム体2の内周側から、駆動ユニット4のピンチローラ43(外面ローラ41および内面ローラ42)に挟み、挿通させる。
【0075】
次いで、プロファイル100をフレーム体2の外周側へ送り出す。また、製管装置1を軸心回りに回転させ、送り出したプロファイル100をフレーム体2の外周面に2〜3周分、巻回する。これにより、製管開始用の更生管120を形成する。
【0076】
次いで、製管装置1の駆動ユニット4を駆動し、ピンチローラ43を回転させる。ピンチローラ43は、プロファイル100を挟み込んで引き込む。プロファイル100は、ピンチローラ43の外面ローラ41および内面ローラ42に挟まれて、フレーム体2の内周側から引き込まれ、送り出される。プロファイル100には、その送り出し方向とは逆向きの力(バックテンション)が作用する。また、ピンチローラ43にてプロファイル100を送り込んだ際の反力によって、製管装置1は既に巻かれた更生管120の内周面に沿って、送り込み方向とは逆方向に周回移動(公転)する。
【0077】
ピンチローラ43により駆動ユニット4に引き込まれたプロファイル100は、外面ガイド6を経て、プロファイル100の嵌合領域に配設された嵌合ローラ5に到達する。ここで、既に巻回され張力が付与されているプロファイル100の先行部分に対し、プロファイル100の後続部分が嵌合ローラ5の外周面に接触し、内周側から押しつけられる。プロファイル100の後続部分の嵌合凸部103は、プロファイル100の先行部分の嵌合凹部105に隣接して配置され、嵌合ローラ5に押圧される。これにより、プロファイル100の先行部分と後続部分とが嵌合されて管状となる(
図14参照)。
【0078】
駆動ユニット4は、フレーム体2に巻かれたプロファイル100の内周を周回移動しつつ、プロファイル100の嵌合凹部105に、後続するプロファイル100の嵌合凸部103を送り込む。また、嵌合ローラ5の押圧作用によってこれらを順次嵌合して、更生管120を付加的に形成する。駆動ユニット4は、プロファイル100を常に巻き絞るように螺旋状に供給する。
【0079】
製管装置1は、フレーム体2の外周側にローラ部材を有していないため、既設管200の内周面に隙間なく更生管120を付加形成することができる。また、製管装置1は略環状の構造を有しているので、製管装置1が既設管200の内部を塞いでしまうことがなく、既設管200が通水状態であっても更生管120を形成することができる。
【0080】
更生管120の前端部が下流側マンホール202に到達すると、製管装置1の駆動を停止する。そして、製管装置1を解体し、フレーム体2を分解した状態で下流側マンホール202から搬出する。更生管120と既設管200との間隙には、硬化性モルタル等の裏込め材を注入し、硬化させることで、既設管200の更生が完了する。
【0081】
(他の実施形態)
本発明に係る製管装置1は、上記実施形態以外にも他の様々な形で実施することができる。そのため、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0082】
図11(a)および
図11(b)は、本発明の他の実施形態に係る製管装置1の一部分を拡大して示す正面図である。この製管装置1では、嵌合ローラ5に対するピンチローラ43の配設位置を変更可能とする構成として、駆動ユニット4が、フレーム体2とは別体で形成されてフレーム体2に取り付け具84を介して着脱可能に設けられている。駆動ユニット4の内部機構は上記実施形態と同様であるが、取り付け具84を用いた駆動ユニット4の取り付け位置によって、ピンチローラ43の配設位置が変更可能とされている。
【0083】
図11(a)および
図11(b)に示す例では、駆動ユニット4はフレーム体2における第1、第2の軸方向フレーム27、28や支持フレーム29等にあらかじめ固定されたものではなく、フレーム体2から分離されて形成されている。かかる駆動ユニット4に対し、取り付け具84は複数種類の形状で構成されている。
【0084】
例えば、
図11(a)に示す形態では、金属製プレート材からなる取り付け具84は、駆動ユニット4のケーシング45の縁部と、第1の軸方向フレーム27の支持片271と、第2の軸方向フレーム28の端面とにまたがる多角形状に形成されている。第1の軸方向フレーム27には、フレーム体2の内周側の面に複数の支持片271が立設されている。かかる多角形状の取り付け具84は、駆動ユニット4におけるケーシング45の外周側の全体を覆うとともに、内周側の略半部を覆う大きさで形成されている。
【0085】
また、
図11(b)に示す形態では、金属製プレート材からなる取り付け具84は、駆動ユニット4におけるケーシング45の外周側の全体を覆うとともに、支持フレーム29に添う大きさの略「く」の字形状に形成されている。
【0086】
駆動ユニット4には取り付け具84との複数の連結孔451が設けられている。第1、第2の軸方向フレーム27、28、および支持フレーム29にも、それぞれ図示しない連結孔が設けられている。取り付け具84には、これらの連結孔に対応する複数の連結孔841が対応する箇所に形成されている。取り付け具84は、フレーム体2と駆動ユニット4との間に架設されて、連結孔451、841を介してボルト止めする等により相互に緊結され、駆動ユニット4をフレーム体2に固定する。
【0087】
図11(a)に示すピンチローラ43の配設位置は、比較的大きい管径の更生管120を形成するのに好適であり、プロファイル100に反力を生じさせて良好に嵌合させることができる。また、
図11(b)に示すピンチローラ43の配設位置は、比較的小さい管径の更生管120を形成するのに好適であり、プロファイル100に過大な反力を生じさせることなく精度よく製管することができる。
【0088】
製管装置1の駆動ユニット4を、取り付け具84を介してフレーム体2に所望の固定角度で取り付けることによって、嵌合ローラ5に対するピンチローラ43の配設位置の変更を容易に行うことができ、どのような管径の既設管200にも対応させることが可能となる。取り付け具84の形状は、これら例示する形状に限らず、多様な形態で形成することができ、これにより駆動ユニット4の多様な取付形態に対応することができる。また、駆動ユニット4がフレーム体2に着脱自在であり、取り付け具84を介した取り付け作業も簡単に行うことができるので、組み立ておよび解体に要する作業手間がかからず、短時間で作業を終えることができる。
【0089】
図12および
図13は、本発明のさらに他の実施形態に係る製管装置を示す正面図である。製管装置1においては、
図12に示すように、フレーム体2の内周側には、駆動ユニット4の前段部にプロファイル100の供給経路を規定するガイド部材が設けられてもよい。この場合、ガイド部材82は、螺旋状に供給されるプロファイル100の螺旋経路に沿う弧状の外形状を有し、断面矩形状または略コ字状のプレート材で構成されている。また、
図13に示すように、ガイド部材83は回転自在な複数のローラを矩形状に組み付けて、その内側にプロファイル100の挿通路を形成したものであってもよい。プロファイル100は、ガイド部材82、83に沿って供給されることにより、駆動ユニット4に対して円滑に導かれる。
【0090】
プロファイル100を製管装置1の進行方向の前方から駆動ユニット4へ導くように、フレーム体2の内周部にガイド部材82、83を配設することにより、プロファイル100による製管装置1への作用を緩和させるよう調整することができる。すなわち、プロファイル100に生じる反力を、製管装置1を前方へ押す方向に作用させないように、ガイド部材82、83によってプロファイル100の供給経路を規定する。これにより、プロファイル100を嵌合する際に位置ずれを防止し、確実に嵌合凸部103と嵌合凹部105とを嵌合することが可能になる。
【0091】
また、本発明において、更生管120を構成するプロファイル100は、
図14(a)および
図14(b)に示したプロファイル100に限定されず、補強材106が装着されないプロファイルであっても、また他の形状の補強材が装着された構成であってもよい。また、
図15(a)および
図15(b)に示すように、隣接する主部材111を、長尺帯状の嵌合部材115により接合し、更生管120を形成する構成のプロファイル110であってもよい。主部材111は、基板112に複数の断面T字状のリブ113を有し、基板112の両端部に嵌合溝114が形成されている。嵌合部材115は、隣接した主部材111双方の嵌合溝114に嵌め込まれる2条の凸部116を有する。このようなプロファイル110にあっても、上記と同様の金属製の補強材が装着されてもよい。