(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
端子同士を電気的に接続するためのコネクタ構造として、例えばボルト孔を有する二つのバスバ端子をそれぞれのボルト孔が連通するように重ね合わせ、これらのバスバ端子をかかるボルト孔に挿通したボルトで締結固定する構造(以下、第一の従来構造という)が知られている。第一の従来構造では、穿孔されたボルト孔を互いに連通させるように二つのバスバ端子を重ね合わせ、連通させたボルト孔にボルトを挿入して締結する必要がある。したがって、複数組のバスバ端子を接続させる場合には、接続対象のバスバ端子同士のボルト孔をすべて連通させた上で、連通させた各ボルト孔にそれぞれ挿入したボルトを複数回締結しなければならないため作業が煩雑となり、コネクタの組付性や生産性の悪化を招きやすい。
【0003】
そこで、このようなボルト締めをすることなく端子同士を接続させるコネクタ構造として、雄雌端子を嵌合させる構造(以下、第二の従来構造という)も広く用いられている。第二の従来構造では、雌端子に雄端子を挿入し、雌端子に内包された接触ばねを雄端子の接点に押圧させることで両端子を電気的に接続させている。このため、端子同士を接続するためのボルト締めは必要としないが、接続時には雄端子の接点を雌端子の接触ばねに当接させつつ、該接触ばねの付勢力(ばね反力)に抗して雄端子を雌端子へ挿入しなければならず、所定の挿入力を要する。したがって、複数の雄雌端子を同時に接続させる場合には各接触ばねの付勢力が重畳されるため、その分だけ挿入力も増大することとなり、第一の従来構造と同様にコネクタの組付性や生産性の悪化を招きやすい。
【0004】
かかる挿入力の低減を図るべく、例えば二つのバスバ端子を予め重ね合わせた仮接触状態にしておき、これらのバスバ端子を可動式のブロック材に設けた接点ばねで挟み付けて複数組のバスバ端子同士を同時に接続させるコネクタ構造が特許文献1に開示されている。このようなコネクタ構造によれば、重ねたバスバ端子へ向けてブロック材をボルトで押し込むことで、接点ばねの付勢力に抗して該接点ばねがブロック材とともにかかるバスバ端子へ進行してこれらを挟み付け、仮接触状態から接点ばねで押圧された接触状態となってこれら端子同士が電気的に接続されるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたコネクタ構造では、接続側及び被接続側のそれぞれのコネクタのバスバ端子を重ね合わせて仮接触状態とするように接続側のコネクタを被接続側のコネクタへ予め挿入しなければならず、仮接触状態とするバスバ端子の数が多くなればその分だけ挿入作業が煩雑化されることには変わりない。また、複数の接点ばねを設けた可動式のブロック材を、各接点ばねの付勢力を考慮して接続側のコネクタに位置付けなければならない。したがって、部品点数の増加を招くのみならず、各接点ばねの付勢力の調整も考慮してコネクタを構成しなければならない。
【0007】
本発明はこれを踏まえてなされたものであり、その解決しようとする課題は、複数の端子同士を接続する場合であっても比較的簡易な構造で端子挿入負荷の軽減と作業性の向上を同時に図ることが可能なコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るコネクタは、接続相手側機器の機器端子と接触する弾性変形可能な接点部を持つ複数のコネクタ端子と、前記複数のコネクタ端子が組み付けられたハウジングと、外部操作により前記ハウジングに対して回転可能な回転部材と、前記回転部材の回転運動を直線運動に変換して前記ハウジングを前記回転部材の回転軸方向に移動させ、前記コネクタ端子の接点部を前記機器端子に押圧接触させる運動方向変換機構を備え、前記ハウジングは、前記回転部材の回転軸と同心をなす円柱部を有し、前記運動方向変換機構として、前記円柱部の外周面及び前記回転部材の一方には少なくとも一つの突起、他方には前記突起と噛合する少なくとも一本の螺旋溝が形成されていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、運動方向変換機構でコネクタ端子をハウジングとともに機器端子へ向けて移動させることで、接点部を機器端子に押圧接触させてコネクタ端子を機器端子と電気的に接続させることができる。したがって、例えば複数の端子同士を接続させる場合であっても、各接続単位ごとに接続用の部材をコネクタ端子及び機器端子以外に別途要することもない。このため、端子同士の接続構造を複雑にせずに済み、複数の端子同士をまとめて接続させることができる。また、例えば機器端子をコネクタ端子に仮挿入(接点部に仮接触)させる必要はなく、複数の端子同士を接続させる場合であっても、かかる仮挿入作業や仮接触作業の手間が端子数だけ増大して煩雑となることもない。
【0010】
この場合、コネクタは前記ハウジングを包囲して前記接続相手側機器に固定される外装部材を備えた構成とし、前記ハウジング及び前記外装部材の一方には前記回転軸方向に沿って直線状に伸延するスリット、他方には前記スリットと係合して前記回転軸方向以外への前記ハウジングの移動を規制するボスを形成した構成とすることができる。回転部材をハウジングに対して回転させた場合には、突起が螺旋溝と噛合しているためハウジングにもかかる回転方向への力(回転力)が作用されるが、かかる回転力をボスとスリットとの係合により負荷してハウジングのかかる回転方向への移動を規制することができる。その一方、かかる回転力をボスをスリットに沿って移動させることで吸収する(逃がす)ことができる。すなわち、回転軸方向以外へのハウジングの移動を規制しつつ、ボスがスリットに沿ってガイドされるため、ハウジングを回転軸方向(端的には機器端子)へ向けてスムーズに移動させることができる。
【0011】
またかかるコネクタにおいては、前記回転部材を前記回転軸周りに回転可能に支持する操作部材を前記外装部材の外部に設けた構成とすればよい。これにより、外装部材を接続相手側機器に固定して該接続相手側機器に対してコネクタを位置決めしてから、操作部材で回転部材を回転させてハウジングを移動させることができる。したがって、例えば雌端子の接点部を予め雄端子と押圧接触させなくとも(仮に接触したとしても過剰な押圧負荷を生じさせることなく)、外装部材固定後に操作部材を回転させるだけでコネクタ端子を機器端子と容易に接続させることができる。
【0012】
また、例えば前記外装部材をコネクタ内から生ずるノイズの外部への漏洩を防ぐシールドシェルとすれば、電磁波等のノイズを接続相手側機器を介してアースさせることが可能となる。したがって、かかるノイズの漏洩による伝播を防いだ状態でコネクタ端子を機器端子と電気的に接続させることができるから、周辺機器へのノイズによる影響も抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の端子同士を接続する場合であっても比較的簡易な構造で端子挿入負荷の軽減と作業性の向上を同時に図ることが可能なコネクタを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のコネクタについて、添付図面を参照して説明する。
図1及び
図2には、本発明の一実施形態に係るコネクタの全体構成を示しており、
図1はコネクタを構成部材に分解して示す斜視図、
図2は
図1に示す構成部材を組み付けた状態を示す全体斜視図である。以下の説明においては、
図1に示す矢印X方向を左右方向、矢印Y方向を前後方向、矢印Z方向を上下方向という。なお、前後方向については
図1における矢印Y1方向を前側(前方)、矢印Y2方向を後側(後方)として特定し、上下方向については
図1における矢印Z1方向を上側(上方)、矢印Z2方向を下側(下方)として特定する。ただし、これらの左右方向、前後方向、上下方向は、実際にコネクタが接続相手側機器と接続された状態における各方向と必ずしも一致していなくともよい。
【0016】
図1に示すように、コネクタ1は、接続相手側機器10の機器端子9(
図4〜
図6参照)と接触する弾性変形可能な接点部21を持つ複数のコネクタ端子2と、複数のコネクタ端子2が組み付けられたハウジング3と、ハウジング3を包囲して接続相手側機器10に固定される外装部材4と、外部操作によりハウジング3に対して回転可能な回転部材5と、回転部材5の回転運動を直線運動に変換してハウジング3を回転部材5の回転軸方向に移動させ、コネクタ端子2の接点部21を機器端子9に押圧接触させる運動方向変換機構Sを備えている。またコネクタ1は、外装部材4の外部に設けられ、回転部材5をその回転軸周りに回転可能に支持する操作部材6を備えている。操作部材6の形態は回転部材5の回転操作性を高めるものであれば特に限定されず、本実施形態では一例としてレバーを想定するが、例えばつまみ形状などでもよく、これらを着脱可能な構成としても構わない。あるいは、回転部材の端部に形成した角柱状の突起、プラスやマイナスの溝などに噛合して該回転部材を回転させる工具や治具(レンチやスパナ、ドライバーなど)を操作部材としてもよい。
【0017】
図1には、六本の電線11の端末部にそれぞれ取り付けられた六つのコネクタ端子2を備えたコネクタ1の構成を示しているが、コネクタ端子2の数は特に限定されない。例えば、五つ以下のコネクタ端子を備えたコネクタ構成としてもよいし、七つ以上のコネクタ端子を備えたコネクタ構成であっても構わない。コネクタ端子を一つのみ備えたコネクタ構成も技術的には成立するが、本実施形態では複数のコネクタ端子を備えたコネクタ構成を想定している。また、
図1ではコネクタ端子2を電線11の端末部に取り付けた構成としているが、コネクタ端子は回路基板の接点などに直付けされたような構成とすることも可能である。要は、機器端子9を有する接続相手側機器10と電気的に接続可能な端子構成であればよい。換言すれば、機器端子9はコネクタ端子2の数と対応していればその数は問わず、コネクタ1が搭載される電子機器とコネクタ端子2を介して電気的に接続可能な構成とすればよい。したがってコネクタ端子2と機器端子9のいわゆる雄雌関係は限定されず、本実施形態ではコネクタ端子2を雌端子、機器端子9を雄端子としているが、これとは反対の関係とすることも想定可能である。
【0018】
コネクタ端子2は導電性を有する金属材で形成されており、接点部21が弾性変形してかかる弾性力(付勢力)によって機器端子9と押圧接触することで該機器端子9と電気的に接続される構成となっている。また、コネクタ端子2は接点部21を支持するとともに電線11の端末部に接続される基端部22を有している。本実施形態では基端部22が接点部21を前方へ向けて支持するのに対し、電線11を下方へ伸延させるように端末部に接合されている。すなわち本実施形態において、コネクタ1は機器端子9を有する接続相手側機器10をコネクタ端子2が取り付けられた電線11と略直角に接続する屈曲(いわゆるL字)型として構成されている。これにより、コネクタ1の前後方向の体格を小さくすることができ、コネクタ1の後方にスペースを確保することが可能な構成となっている。ただし、電線11と接続相手側機器10を該電線11の伸延方向に沿って接続するストレート型としてコネクタを構成することも可能である。
【0019】
ハウジング3は略楕円筒状をなす端子収容部31と略角筒状をなす電線収容部32が略直角に連続した構造をなしている。すなわち、ハウジング3は端子収容部31が前方、電線収容部32が下方にそれぞれ開口しており、内部に略L字状の空間が形成されるようになっている。端子収容部31はその内部にコネクタ端子2を収容保持し、電線収容部32は電線11の端末部近傍を収容保持する。この場合、コネクタ端子2が接続された電線11は電線収容部32の下方開口から挿入され、該コネクタ端子2の接点部21を端子収容部31の前方開口から外部へ臨ませるようになっている。電線収容部32に収容保持された電線11は該沿線収容部32の下方開口から外部へ伸延している。
【0020】
ハウジング3には端子保持部材(以下、インナホルダという)7が端子収容部31の筒内に取付可能となっており、ハウジング3に挿入された六つのコネクタ端子2は接点部21を隣り合わせて左右方向に所定間隔をあけてインナホルダ7に保持されるようになっている。この場合、端子収容部31には被係合孔31aが穿孔されており、インナホルダ7には被係合孔31aに係合する係合突起7aが形成されている。これにより、前側の開口からインナホルダ7を端子収容部31に挿入しつつ、係合突起7aを被係合孔31aに係合させることでインナホルダ7をハウジング3に位置決め固定することができるようになっている。すなわち、コネクタ端子2はハウジング3に位置決め固定されたインナホルダ7を介し、ハウジング3に組み付けられるようになっている。また、ハウジング3には電線保持部材(以下、電線ホルダという)8が電線収容部32の内部に取付可能となっており、六つのコネクタ端子2に接続された六本の電線11は左右方向に所定間隔をあけて電線ホルダ8に保持されている。これにより、電線11をばらつかせることなく整列してコネクタ1に配線することができるようになっている。なお、電線ホルダ8の上方には密封部材(一例として、六つの貫通孔を有するゴム等からなるシール)100が電線11に装着されており、電線11とコネクタ端子2の接続部分への下方側からの浸水(電線11を伝った浸水)を防止している。
【0021】
なおハウジング3には、端子収容部31の後方外周部に環状の密封部材(一例として、弾性リップを持つゴム等からなるシール)110が装着され、機器端子9を有する接続相手側機器10とコネクタ1を嵌合させた際のハウジング3内の密封(防水や防塵など)を図っている。この場合、密封部材110は回転防止片111を有しており、回転防止片111を端子収容部31のシール装着溝31bに形成された嵌入部31cに嵌め入れて干渉させることで、ハウジング3(端子収容部31)に対する回り止めが図られている。
【0022】
このようにコネクタ端子2及び電線11を収容保持したハウジング3は、外装部材4によって包囲されている。外装部材4は接続相手側機器10に固定され、該外装部材4に対してハウジング3を機器端子9へ向けて移動可動に支持する。本実施形態では、外装部材4が回転部材5及び操作部材6を介してハウジング3を支持している。また本実施形態では一例として、コネクタ1内から生ずるノイズの外部への漏洩を防ぐ機能を併せ持つ導電性を有する筺体部材として外装部材(以下、シールドシェルという)4を構成しているが、かかる構成には特に限定されない。このような構成とすれば、例えばコネクタ1内から生ずる電磁波等のノイズをシールドシェル4が組み付けられた接続相手側機器10を介してアースさせることが可能となる。したがって、かかるノイズの漏洩による伝播を防いだ状態でコネクタ端子2を機器端子9と電気的に接続させることができるから、周辺機器へのノイズによる影響も抑制できる。
【0023】
シールドシェル4は端子収容部31の上部、電線収容部32の上部及び後方部、左側部と右側部をそれぞれ覆う第一のシールドシェル(以下、上方シールドシェルという)41と、電線11の端末部近傍の周囲を覆う第二のシールドシェル(同、下方シールドシェルという)42が組み付けられて一体化される分割構造をなしている。上方シールドシェル41は、端子収容部31の上方外周部のカーブに沿って延在する上壁部411と、上壁部411の後方周縁から垂下する後壁部412と、上壁部411の左右方向の側部から端子収容部31及び電線収容部32に沿って垂下する側壁部413と、上壁部411の前方周縁から左右方向へ延在するフランジ部414を有している。かかる上方シールドシェル41は、上壁部411が端子収容部31及び電線収容部32の上部(端子収容部31はその一部)、後壁部412が電線収容部32の後方部、側壁部413が端子収容部31及び電線収容部32の左側部と右側部をそれぞれ空隙をあけて覆うように位置付けられている。これに対し、下方シールドシェル42は筒内に電線11を挿通する筒部421と、筒部421の上端前方から起立する前壁部422を有している。前壁部422の上端は端子収容部31の下方外周部のカーブに沿った凹曲状に形成されている。かかる下方シールドシェル42は、前壁部422が上方シールドシェル41の側壁部413の前端と当接するとともに、該前壁部422の上端が端子収容部31の下方外周部と当接するように位置付けられる。
【0024】
そして、これらの上方シールドシェル41と下方シールドシェル42は後壁部412に穿孔された貫通孔412aに挿通されたボルト43を筒部421に形成されたネジ孔421aに螺合させることで一体化され、これによりシールドシェル4が形成される。かかるシールドシェル4は、上方シールドシェル41のフランジ部414に穿孔された貫通孔414aに挿通されたボルト44を接続相手側機器10に形成されたネジ孔10aに螺合させることで該接続相手側機器10に組み付けられる。これにより、コネクタ1が接続相手側機器10に位置決め固定される。この場合接続相手側機器10には、機器端子9と連通して該機器端子9をコネクタ端子2に臨ませるようにハウジング3の端子収容部31を収容可能な孔部101が形成されており、コネクタ1は端子収容部31を孔部101に進入させた状態でシールドシェル4が接続相手側機器10に組み付けられることにより、該接続相手側機器10に位置決め固定されている(
図4〜
図6参照)。
【0025】
本実施形態において、ハウジング3は回転部材5の回転軸(前後方向に沿った軸)と同心をなす円柱部33を有している。この場合、円柱部33は電線収容部32の上部で左右方向の略中央に設けられ、端子収容部31よりも後方へ向けて突出している。そして運動方向変換機構Sとして、円柱部33の外周面及び回転部材5の一方には少なくとも一つの突起、他方には前記突起と噛合する少なくとも一本の螺旋溝が形成されている。かかる突起は、回転部材5が第一の回転位置から第二の回転位置まで回転された時にハウジング3の円柱部33を回転部材5の回転軸方向(前後方向)の第一の位置から第二の位置まで移動させる。すなわち、本実施形態に係るコネクタ1においては、回転部材5が回転軸周りに回転する運動をハウジング3の円柱部33が回転軸方向に沿って直線的に往復する運動へ運動方向変換機構S(突起及び螺旋溝)により変換させている。
【0026】
かかる運動方向変換機構Sにより、コネクタ端子2は、第一の位置ではハウジング3とともに機器端子9から離間して接点部21の機器端子9への押圧接触を開放し、第二の位置ではハウジング3とともに機器端子9に近接して接点部21を機器端子9に押圧接触させる。換言すれば、第一の位置及びそれに対応する第一の回転位置は、ハウジング3がコネクタ端子2の接点部21を機器端子9から離間させて押圧接触を開放する位置に設定されている。また、第二の位置及びそれに対応する第二の回転位置は、ハウジング3がコネクタ端子2の接点部21を機器端子9に近接させて押圧接触させ、これらを電気的に接続させる位置に設定されている。これにより、操作部材(レバー)6を操作して回転部材5を回転軸周りに第一の回転位置から第二の回転位置まで回転(以下、正転という)させた際、突起が螺旋溝に沿って相対移動して円柱部33を第一の位置から第二の位置までシールドシェル4に対して前方へ進行させる。シールドシェル4は接続相手側機器10に固定されているため、ハウジング3は接続相手側機器10の孔部101内でコネクタ端子2とともに機器端子9と近接し、該コネクタ端子2は接点部21を機器端子9に押圧接触させて該機器端子9と電気的に接続される。一方、回転部材5を回転軸周りに第二の回転位置から第一の回転位置までレバー操作により回転(以下、逆転という)させた際、突起が螺旋溝に沿って相対移動して円柱部33を第二の位置から第一の位置までシールドシェル4に対して後方へ退行させる。この結果、ハウジング3は孔部101内でコネクタ端子2とともに機器端子9から離間し、該コネクタ端子2は接点部21による機器端子9への押圧接触を開放して該機器端子9との電気的な接続も開放する。
【0027】
本実施形態に係る運動方向変換機構Sでは一例として、回転部材5に一つの突起51、円柱部33の外周面に突起51と噛合する一本の螺旋溝(いわゆるネジ溝)331が形成されている。ただし、これとは逆に回転部材5に螺旋溝を形成し、円柱部33の外周面に突起を形成した構成とすることも想定可能である。またこれらの突起及び螺旋溝を互いに噛合可能に二つ以上形成した構成としても構わない。
【0028】
図3に示すように回転部材5は、回転中心軸となる回転軸部52と、回転軸部52周りに回転するアーム部53を有して構成されている。回転軸部52は断面円形の棒状に形成されており、その前方が円柱部33の中心に形成された穴部(図示しない)にその内部で回転可能に挿通され、後方が上方シールドシェル41の後壁部412に穿孔された貫通孔412bから外部へ露出してレバー6が取り付けられている。この場合、回転軸部52は貫通孔412bの内周部と非接触もしくは緩嵌状態とされており、レバー6を正転方向に回動することで正転(逆転方向に回動すれば逆転)させることができるようになっている。アーム部53は、回転軸部52の後方寄りから拡径方向(放射方向)に立設されるとともに前方へ屈曲して回転軸部52の前方端の手前まで伸延しており、その伸延端近傍から縮径方向へ(回転軸部52に向けて)突起51が略円柱状に形成されている。なお、アーム部53の回転軸部52からの起立高さ及び突起51の突出高さは、回転軸部52が円柱部33に挿通された状態で、該円柱部33の外周面に形成された螺旋溝331と噛合して該螺旋溝331に沿って相対移動可能となるように設定されている。
【0029】
螺旋溝331は、その深さ及び幅が突起51の突出高さ及び突出幅(径寸法)よりも若干大寸に設定されて円柱部33の外周面に一連をなして形成されている。また螺旋溝331は、溝(突起51を相対移動させる溝(以下、軌道溝331aという。))の後方端に連通して円柱部33の円周方向と平行をなして突起51の前後方向への相対移動を規制する規制溝331bを有している。この場合、規制溝331bは軌道溝331aと同一形態で該軌道溝331aの後方端に連通している。これにより、規制溝331bは軌道溝331aに沿って相対移動した突起51のそれ以上の移動を規制する。具体的には、ハウジング3(コネクタ端子2)の機器端子9に対する進行及び退行を、溝壁に突起51を突き当てることで止めるストッパとしての機能を規制溝60bが果たす。換言すれば、突起51が規制溝331bと噛合した状態における回転部材5の回転位置(回転状態)及び円柱部33(ハウジング3)の回転軸方向(前後方向)の位置が第二の回転位置及び第二の位置に相当しており、規制溝331bは第二の位置(第二の回転位置)で突起51の前後方向への移動を規制するストッパとなっている。なお規制溝331bに加え、第一の位置(第一の回転位置)で突起51の回転軸方向(前後方向)への移動を規制するストッパとなるように、軌道溝331aの前方端に連通して規制溝を形成してもよい。換言すればこの場合、かかる規制溝と突起51が噛合した状態における回転部材5の回転位置(回転状態)及び円柱部33(ハウジング3)の回転軸方向(前後方向)の位置が第一の回転位置及び第一の位置に相当する。
【0030】
また本実施形態においては、ハウジング3及びシールドシェル4の一方には回転軸方向(前後方向)に沿って直線状に伸延するスリット、他方には前記スリットと係合して回転軸方向以外へのハウジング3の移動を規制するボスが形成されている。一例として、
図1及び
図2には、シールドシェル4にスリット45、ハウジング3にボス34が形成された構成を示している。ただし、これとは逆にハウジング3にスリットを形成し、シールドシェル4にボスを形成した構成とすることも想定可能である。またこれらのスリット及びボスを互いに係合可能に二つ以上形成した構成としても構わない。
【0031】
ボス34は、電線収容部32の左側部と右側部のいずれも下端からそれぞれ外側へ突出するように形成されている。この場合、ボス34は電線収容部32の左右側部の下端の全長(前後方向の寸法)に亘って連続している。なお、ボス34はこのように全幅に亘って連続した構成には限定されず、例えば全幅に亘って断続的に分散した構成(一連ではなく一部欠落した構成)などとすることも可能である。
【0032】
スリット45は、上方シールドシェル41の一対の側壁部413の上下方向の中間部位よりも下寄りにそれぞれ形成されている。この場合、スリット45は一対の側壁部413の略全長(前後方向の寸法)に亘って連続している。スリット45の前方端は自由端となっており、該自由端からボス34をスリット45へ入れ込むことができるようになっている。一方、スリット45の後方端は固定端となっており、スリット45へ入り込んだボス34が突き当たるようになっている。スリット45の形態や配置はボス34を係合させることが可能であれば、特に限定されない。要するに、ボス34とスリット45は相互に係合可能となるように対応させた形態及び配置でそれぞれ形成すればよい。また、スリット45の幅(上下方向の寸法)はボス34の突出幅(上下方向の寸法)よりも若干大寸に設定する。
【0033】
回転部材5を正転(もしくは逆転)させた場合に突起51が螺旋溝331に沿って相対移動する際、ハウジング3には正転方向(もしくは逆転方向)への力(回転力)が作用される。その際、ハウジング3のボス34はシールドシェル4のスリット45と係合しており、シールドシェル4が接続相手側機器10に固定されているため、ハウジング3の正転方向(もしくは逆転方向)への移動を規制することができる。その一方、かかる回転力をボス34をスリット45に沿って移動させることで吸収する(逃がす)ことができる。すなわち、ボス34とスリット45を形成することで回転軸方向(前後方向)以外へのハウジング3の移動を規制することができる。また、ボス34がスリット45に沿ってガイドされるため、ハウジング3を回転軸方向(前後方向)へスムーズに移動させることができる。すなわち、スリット45はハウジング3を回転軸方向へ移動させるガイド部として機能する。この場合、ハウジング3が第一の位置に位置付けられた状態(ハウジング3がコネクタ端子2の接点部21を機器端子9から離間させて押圧接触を開放する位置)ではボス34はスリット45の後方寄りで係合する(
図4参照)。その際、ボス34はスリット45の後方端(固定端)に突き当たっており、ハウジング3(コネクタ端子2)が第一の位置よりも後方へ移動する(機器端子9から退行する)ことを規制している。また、ハウジング3が第二の位置(ハウジング3がコネクタ端子2の接点部21を機器端子9に近接させて押圧接触させる位置)に位置付けられた状態ではボス34はスリット45の前方寄りで係合する(
図6参照)。その際には上述したように突起51が規制溝331bの溝壁に突き当たることで、ハウジング3(コネクタ端子2)が第二の位置よりも前方へ移動する(機器端子9へ進行する)ことを規制している。
【0034】
ここで、本実施形態に係るコネクタ1においてコネクタ端子2と機器端子9を電気的に接続させる際のハウジング3(円柱部33)及び回転部材5、レバー6の動作について
図4〜
図6を参照して説明する。
図4にはハウジング3(円柱部33)が第一の位置、回転部材5及びレバー6が第一の回転位置に位置付けられた状態(以下、コネクタ未嵌合状態という)のコネクタ1の態様を示しており、同図(a)は上方から示す図、同図(b)は後方から示す図、同図(c)は側方から示す図である。
図5にはハウジング3(円柱部33)が第一の位置から第二の位置に移動する途中、回転部材5及びレバー6が第一の回転位置から第二の回転位置に移動する途中の状態(以下、コネクタ嵌合中状態という)のコネクタ1の態様を示しており、同図(a)は上方から示す図、同図(b)は後方から示す図、同図(c)は側方から示す図である。
図6にはハウジング3(円柱部33)が第二の位置、回転部材5及びレバー6が第二の回転位置に位置付けられた状態(以下、コネクタ嵌合状態という)のコネクタ1の態様を示しており、同図(a)は上方から示す図、同図(b)は後方から示す図、同図(c)は側方から示す図である。なお、シールドシェル4内でのハウジング3(円柱部33)及び回転部材5の動作態様が確認できるように、
図4〜
図6には便宜上シールドシェル4及び接続相手側機器10を一部透過して図示している。
【0035】
機器端子9を有する接続相手側機器10とコネクタ1を嵌合させる際には、
図4に示すようにハウジング3(円柱部33)、回転部材5及びレバー6がコネクタ未嵌合状態となっているコネクタ1を接続相手側機器10に位置決め固定する。具体的には、端子収容部31を孔部101に収容した状態で上方シールドシェル41のフランジ部414の貫通孔414aに挿通したボルト44をネジ孔10aに螺合させることで、シールドシェル4を接続相手側機器10に組み付ける。この状態ではコネクタ1と接続相手側機器10とは嵌合しておらず、ハウジング3はコネクタ端子2とともに機器端子9から離間し、該コネクタ端子2の接点部21は機器端子9と押圧接触していない。また、ハウジング3のボス34はスリット45の後方端(固定端)に突き当たっており、ハウジング3(コネクタ端子2)が第一の位置よりも後方へ移動する(機器端子9から退行する)ことを規制している。
【0036】
かかるコネクタ未嵌合状態からレバー6に正転方向(
図5(b)に示す矢印方向)への回転力を作用させてレバー6をシールドシェル4に対して正転させると、回転部材5がハウジング3に対して正転する。具体的には、回転軸部52周りにアーム部53が正転する。これにより、
図5に示すようにハウジング3(円柱部33)、回転部材5及びレバー6がコネクタ嵌合中状態に移行される。コネクタ嵌合中状態においては、突起51は軌道溝331aに沿って相対移動してハウジング3(円柱部33)をシールドシェル4に対して前方へ進行させる。シールドシェル4はコネクタ未嵌合状態において接続相手側機器10に位置決め固定されており、常に静止状態に保たれるため、ハウジング3はコネクタ端子2とともに機器端子9へ向けて前進する。その際、突起51から軌道溝331a(端的には回転部材5からハウジング3)に作用される回転力はボス34とスリット45の係合により吸収されるため、ハウジング3はシールドシェル4に対して回転することはなく、ボス34がスリット45に沿ってガイドされることによって機器端子9へ向けてスムーズに前進する。
【0037】
そして、さらにレバー6をシールドシェル4に対して正転(
図6(b)に示す矢印方向へ回転)させ、
図6に示すコネクタ嵌合状態まで回動させる。コネクタ嵌合状態となると、軌道溝331aに沿って相対移動した突起51は軌道溝331aから規制溝331bに入って噛合してハウジング3(円柱部33)を第二の位置に位置付ける。コネクタ嵌合中状態からコネクタ嵌合状態へ移行される際、ハウジング3(コネクタ端子2)はシールドシェル4に対してさらに前方へ進行し、コネクタ端子2は接点部21を機器端子9に押圧して弾性変形させつつ、接触させる。これにより、コネクタ端子2と機器端子9を電気的に接続させることができ、接続相手側機器10とコネクタ1が嵌合した状態となる。また、規制溝331bに入った突起51は該規制溝331bの溝壁に突き当たり、ハウジング3(コネクタ端子2)の機器端子9に対する進行及び退行を規制する。これにより、コネクタ端子2と機器端子9の電気的な接続状態(接点部21による機器端子9の押圧接触状態)を確実に維持できるようになっている。
【0038】
なお、コネクタ嵌合状態からレバー6に逆転方向(
図6(a)においては左回り方向)への回転力を作用させてレバー6をシールドシェル4に対して逆転させ、ハウジング3(円柱部33)、回転部材5及びレバー6をコネクタ未嵌合状態に移行させれば、ハウジング3(円柱部33)をシールドシェル4に対して後方へ退行させることができる。これにより、ハウジング3をコネクタ端子2とともに機器端子9から離間させて、接点部21の機器端子9への押圧接触を開放することができる。この状態では、コネクタ端子2と機器端子9の電気的な接続が開放され、接続相手側機器10とコネクタ1の嵌合も外れる(
図4に示す状態)。
【0039】
このように本実施形態によれば、コネクタ端子2と機器端子9の電気的な接続に当たっては、シールドシェル4を接続相手側機器10に固定して該接続相手側機器10に対してコネクタ1を位置決めしてから、外部操作によりレバー6で回転部材5を回転させればよい。コネクタ1を接続相手側機器10に対して位置決め固定した状態(コネクタ未嵌合状態)ではコネクタ端子2の接点部21は機器端子9を押圧接触せず(仮に接触したとしても過剰な押圧負荷を生じさせるほどのものではない)、この状態からレバー6の回動によりハウジング3とともにコネクタ端子2を機器端子9へ向けて進行させることで、初めて接点部21を機器端子9と押圧接触させることができる。すなわち、運動方向変換機構S(突起51と螺旋溝331)でコネクタ端子2をハウジング3とともに機器端子9へ向けて進行させればよいから、複数の端子同士を接続させる場合であっても、各接続単位ごとに接続用の部材(接点ばね等)をコネクタ端子2及び機器端子9以外に別途要することもない。このため、端子同士の接続構造を複雑にせずに済み、複数の端子同士を一回のレバー操作でまとめて接続させることができる。また、例えば機器端子9をコネクタ端子2に仮挿入(接点部21に仮接触)させる必要はなく(ただし仮挿入(仮接触)させることも可能であり排除しない)、複数の端子同士を接続させる場合であっても、かかる仮挿入作業や仮接触作業の手間が端子数だけ増大して煩雑となることもない。したがって、本実施形態に係るコネクタ1を用いることで、複数の端子同士を接続する場合であっても比較的簡易な構造で端子挿入負荷の軽減と作業性の向上を同時に図ることができる。
【0040】
以上、本発明を
図1〜
図6に示すような一実施形態に基づいて説明したが、上述した実施形態は本発明の例示に過ぎないものであり、本発明は上述した実施形態の構成のみに限定されるものではない。したがって、本発明の要旨の範囲で変形又は変更された形態で本発明を実施可能であることは、当業者にあっては明白なことであり、そのような変形又は変更された形態が本願の特許請求の範囲に属することは当然のことである。