(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、生物学的試料の低温保存用の冷却システム内における作業者の保護を向上させることにあり、これによって従来の保護手段の欠点及び限界を克服できる。
【0008】
上記目的は、請求項1の特徴を有する防護服によって達成される。本発明の有利な実施形態及び用途は、従属請求項から得られる。
【0009】
本発明によれば、上記目的は、特に−100℃を下回る温度、特に−150℃を下回る温度、例えば−190℃以下の冷却室内の作業者用の防護服であって、作業者を収容するボディースーツと、ボディースーツを加熱するための加熱装置とを備える防護服を提供するための包括的な技術開示によって達成される。防護服は、特に液体窒素又は液体窒素の蒸気で冷却される冷却室内で使用するよう構成される。本発明によれば、ボディースーツは、断熱シース材料(被膜材料)で作製される。シース材料は、作業者のための気密シースを形成する。加熱装置は、ボディースーツに連結され、生理学的に受け入れ可能な温度(−30℃を上回る温度、特に−10℃を上回り、例えば0℃又はそれ以上)がボディースーツの内側にもたらされるようなシース材料の熱伝導に適合されている。加熱装置又はその一部は、ボディースーツのシース材料を直接的に加熱装置で調節できるようにしてシース材料に連結される。本発明者は、断熱シース材料とこれに連結された加熱装置との組み合わせにより、液体窒素によって冷却された冷却室内の極めて低い温度であっても、防護服の着用者に対して確実な保護を実現する防護服を提供できることを見出した。防護服は、作業者の全身の完璧かつ安全な断熱をもたらす。それと同時に、冷却室に対する作業者による熱損失は最小限に抑えられる。作業者は、防護服内で、通常の衣類、研究服、又は加温性(裏地付きの)繊維の衣類を着用することができる。
【0010】
加熱装置は二重の機能を有している。これらの機能は、第一に、ボディースーツの内側に十分な温度を提供することであり、第二に、シース材料及び/又はボディースーツの関節領域等の別の部分を、冷却室内の作業者の可動性を確実にするために、冷却室内の低温環境下において十分な可撓性が得られるような態様で加温できることである。
【0011】
本発明に係る防護服は、防護服の外側が液体窒素と直接接触した場合でも、過冷却に対する作業者の全身、特に脚、足、腕、及び手への保護を提供する。防護服を着用する作業者は、冷却室内を自由に移動することができ、その保護を自律的に使用することができる。冷却室内での使用は、少なくとも10分以上、特に少なくとも30分以上、例えば60分以上、可能である。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、加熱装置は、電気抵抗加熱器を備える。抵抗加熱器は、ボディースーツのシース材料内に容易に埋設でき、又はその内面上に配置することができるので、好ましい。抵抗加熱器は、内部及び/又は外部の電流源との電気ケーブル接続を介した電源、及びボディースーツ内の温度を変更する際の応答時間の短さという点でさらに有利である。特に好ましくは、電気抵抗加熱器は、ボディースーツ内に分散して配置された加熱層を備える。加熱層は、金属合金、タングステン、加熱エレメントで蒸気被覆されたプラスチックホイル、又は酸化インジウムすず層等の層状の抵抗材料を含む。加熱層は、作業者の着用の快適性を最小限しか損なわないという利点を有する。
【0013】
本発明の変形実施形態によれば、加熱装置は、ボディースーツ内へと延長された熱媒体回路を備えることができる。熱媒体回路は、ボディースーツのシース材料内に埋設され、又はその内面上に配置され、空気又はシリコーン油等の気体状又は液体状の熱媒体用の内部及び/又は外部の熱媒体供給源に連結される。熱媒体回路の使用は、加熱器の効果性及びボディースーツ内の熱の均一な分散という点で有利になり得る。特に好ましくは、熱媒体回路は複数のラインを備え、これらのラインは、ボディースーツ内に分散式に配置され、1つ又は複数のリングライン(部分的な回路)を形成する。
【0014】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、シース材料は、少なくとも2つのシース層(層)の多層構造を有する。多層構造は、シース材料を機械的保護及びシール機能ならびに断熱機能に適合させるという点で有利である。したがって、外側シース層は、シール及び機械的保護のために設計された材料で形成することができ、一方で、別の内側のシース層は絶縁層を形成する。特に好ましいのは、最も外側のシース層が、例えばポリマーで、例えばPTFE、金属蒸着物、シリコーンコーティング、セラミック又はラッカーで形成された気密外側皮膜を備え、その下方には、例えば織物、金属繊維及び金属ネット、セルロール化合物、プラスチックネット、炭素繊維、引き裂き防止ホイル、ゴム又はこれらの組み合わせで作製された安定化層と、例えばポリマー発泡体、ポリスチレン、シリコーン発泡体、グラスウール、真空絶縁パネル、木材、コルク、ミネラルウール、粉体で作製された絶縁層とが、内方向に続く構造である。加熱領域は、別個の最も内側のシース層を形成することができ、この場合、熱媒体回路の加熱層又はライン等の加熱装置の少なくとも一部は、加熱領域内に配置される。絶縁層は、任意選択により熱反射ホイル、例えば金属被覆プラスチックホイルを嵌合してもよい。特にシース材料は、その外側に更に層を備えることもできる。
【0015】
絶縁層は通常、0.1W/(m・K)又は0.05W/(m・K)を下回る熱伝導率を有するプラスチック材料で作製される。
【0016】
ボディースーツ内部の、特に効果的な断熱性という利点は、絶縁層の代わりに、又はこれに加えて、別の気体が充填された又は真空の中間層を設けた本発明の別の変形形態においても得ることができる。該本発明の実施形態に関して、シース材料は少なくとも一の膨張可能な中間層、又は真空の中間層を含む。この層は、好ましくは加熱領域に隣接して内側又は外側に配置される。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、ボディースーツのシース材料は折曲することができる。したがって作業者の動きは、有利に、より容易になる。可撓性は、冷却室内のいかなる温度においても、シース材料の外側層が、−200℃で柔軟であるプラスチック材料によって形成され、及び/又はシース材料の外側層が柔軟である−200℃を上回る温度まで加熱装置によって昇温されるような方法で実現される。
【0018】
本発明の代替の実施形態によれば、ボディースーツのシース材料は剛性であり、この場合ボディースーツの部分同士は関節領域を介して連結される。この場合、好適には最も外側のシース層の材料及び/又はそのそれぞれの加熱に関する要求は少ない。ただ、必要に応じて関節領域を、低温において可撓性を維持するために加熱する必要がある。
【0019】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、特に折曲可能なシース材料を用いるとき、又は関節領域の材料内において、層状化合物内の加熱装置の配置及び使用される材料の熱伝導率は、加熱装置からの熱流が、内方向に最大であり、外方向にこれより小さくなるようにして選択される。換言すれば、熱流の半分以上、好ましくは75%以上は内方向に流れ、一方で残りの熱流は外方向に流れて外側のシース領域層又は関節領域層を昇温させる。加熱装置は、防護服の内部において、生理学的に受け入れ可能な温度に到達し、外側シース領域層又は関節領域層が、例えば−90℃を下回る周囲温度において、これらが柔軟である温度まで昇温されるような電力で作動される。
【0020】
加熱装置の位置は、例えばこれがシース材料の内面上に配置されるような方法で選択できる。この場合、防護服の内部を特に効果的に昇温させることができる。外側シース層の可撓性を維持するために、シース材料はより小さい厚さで選択される。この変形形態では、加熱装置のエネルギー消費量が増大するが、この場合、シース材料の厚さが小さいため、防護服の軽量化ならびに可動性に関する限りでは容易性の増大が達成される。
【0021】
あるいは加熱装置は、シース材料に埋設されてもよい。この場合も、内方向又は外方向に流れる加熱装置からの熱流の部分は、外側シース層及び防護服の内部が効果的に温められるにも拘わらず、環境に対する作業者の断熱が依然として良好であるような態様で選択できる。
【0022】
好ましくは、屈曲することのできるシース材料を有するボディースーツは、正面側にアクセス開口部が設けられる。この開口部では、シース材料の層が重複するようにして配置される。シース材料の多層構造の場合、段付きの重複領域が提供される。剛性のシース材料及び間接領域を有するボディースーツに関しては、アクセス開口部は、好ましくはボディースーツの肩領域又は胴体領域内に設けられる。連結領域においては、組立中、防護服の内部を係止及びシールするために、剛性又は柔軟な連結要素を設けることができる。
【0023】
好適には、本発明に係る防護服のボディースーツに、ヘルメットを装着できる。ヘルメットは、ボディースーツの上側部分上に配置され、作業者を頭領域内で気密式に含むように構成される。ヘルメットは、機械的に安定した構成要素部分を備える。この部分は、作業者の頭部を完全に囲んで、ボディースーツに気密に連結され、作業者の少なくとも視野方向に透明の正面窓を有する。特に好ましくは、ヘルメットは、頭部の形状に適合された形状、特にボール又はボールセクションの形状を有する。少なくとも正面窓、好ましくはヘルメット全体が二重壁の真空窓材料で形成される場合は、ヘルメットの内部の断熱に関して有利になる。特に好ましくは、二重壁の真空材料で作製されたボール又はボールセクションが設けられる。
【0024】
ヘルメットは、好適には、防護服の以下の追加の機能の少なくとも一を担うことができる。変形形態によれば、ヘルメットには圧力除去弁が設けることもでき、呼吸ガス供給が機能不全の場合には、この弁を介して過圧を防護服内から除去できる。別の変形形態によれば、ヘルメットには、作業者の視野を向上させるために窓加熱器が装備できる。窓加熱器は、例えばITO(酸化インジウムすず)等の透明の加熱材料で構成される。別の変形形態によれば、ヘルメットに後方鏡を装備してもよく、これによって作業者の後方の視野が向上され、防護服の可動性に対する要求事項が低減される。さらには、ヘルメットに結合装置を装備してもよく、この装置によって防護服を供給ラインを介して別の防護服又は緊急用供給装置に連結することもできる。
【0025】
本発明の別の利点は、ボディースーツを、脚部、胴体部、及び腕部(間接領域を介して相互連結される)に細かく分割することで得られる。脚部及び腕部は、本体スーツの縦長のセクションであり、これらには、ひざ及び足首関節又はひじ及び手首の領域において更に関節領域を設けることができる。関節領域を設けることは、冷却室内の作業者の可動性を損なうことなく、シース材料の可撓性に対して要求される制約が低減されるという利点を有する。
【0026】
本発明の別の変形形態によれば、ボディースーツには、好ましくは、胴体部、任意選択では脚部の一部を取り囲むベルト装置が装備される。好適には、保持ロープ等の外部支持装置を、ベルト装置に結合できる。緊急の場合、防護服を着用する作業者を、支持装置を用いて確実に冷却室の外に引っ張ることができる。さらには、ベルト装置は、正常作動中、負荷時に防護服を締めるために使用できる。
【0027】
本発明に係る防護服は、好ましくは緊急用供給装置を装備してもよい。この装置は、防護服内の呼吸ガスリザーバ、及び/又は外部供給装置に連結するための結合装置を備える。呼吸ガスリザーバは、例えば圧縮空気ボトルと、加熱カートリッジと、圧縮空気ボトルと防護服の内部の間の弁制御された連結ラインを備える。呼吸ガスリザーバは、例えばボディースーツのヘルメット内に組み込んでもよい。
【0028】
好ましくは、ヘルメット内に配置される防護服の別の構成要素として、防護服の環境を照射するための照明装置、作業者の酸素濃度、温度及び/又は生理学的特性を検出するためのセンサ装置、望ましくない作動状態に対して作業者に警告するためのアラーム装置、及び/又は冷却室の中又は外側の別のヘルパーとの作業者による無線又は有線通信のための通信装置を備える。
【0029】
本発明に係る防護服は、作業者の足を収容するための靴を有する。作業者の機械的及び熱保護に関する特定の要求事項が、通常は液体窒素を用いて床から上方に冷却される冷却室内で使用するための靴になされる。この点において、靴は、少なくとも一の以下の特徴を有する。少なくとも4cm、特に少なくとも6cmの厚さを有する平坦な靴底が設けられる。平坦な靴底は、効果的な断熱のオプションを提供し、靴から、冷却室の床に設けられた液体窒素による冷却装置までの距離を増大させる。任意選択的には、平坦な靴底を、靴と床の間の接触表面の低減を可能とする靴底形状とすることができる。さらには、靴には靴底の中空スペースを備えることもできる。これらは、靴底内の気体が充填された領域又は真空の領域を備える。これによって、靴の断熱性が好適に向上される。さらに靴には、例えばセラミックを用いた、機械的損傷に対抗する保護層を設けることができる。
【0030】
通常、靴の内部は、作業者が熱保護用衣類を着用している場合でも、靴内の足の動きに対して十分なスペースが与えられるような態様で寸法が設定される。その一方で、脚又は足から防護服の脚部及び靴への確実な負荷伝達を保証するために、好ましくは柔軟な適合要素が脚部内又は靴内に設けられる。これらの要素は、作業者の脚又は足の一部を収容するように、また防護服内に支持をもたらすように構成される。
【0031】
本発明に係る防護服は、供給ラインを介して、特に加熱式ホース管を介して、外部の呼吸ガス供給システムに連結することができる。しかし、呼吸ガス供給源が防護服内に設けられる本発明の実施形態が好ましい。呼吸ガス供給源は、呼吸ガスを防護服の内部に供給するようになされる。通常、呼吸ガス供給源は、防護服の後部内に収容される。生理学的に呼吸可能な空気を供給するために、加熱装置の一部は、呼吸ガス供給源によって供給された空気を加熱するように構成される。
【0032】
呼吸ガス供給源は、冷却室内の環境より過度の圧力によって防護服に影響を及ぼすことができるという追加の利点を有する。この過圧は、生理学的呼吸状態が防護服内に与えられ、内圧の作用下のボディースーツの内部又はボディースーツの一部が展開される(膨張される)ような方法で選択できる。これによって、更なる断熱効果が好適に達成される。あるいは、防護服に圧縮空気供給源を装備してもよい。この装置は、過圧を発生させるための呼吸ガス供給源から独立している。
【0033】
好ましくは、本発明に係る防護服には、作業者の手を収容するための少なくとも一の手袋が装備される。手袋は、断熱手袋材料で作製され、電気手袋加熱器及び/又は熱媒体が供給される手袋加熱器が設けられる。手袋は、ボディースーツに堅固に連結してもよく、又はボディースーツと取り外し自在であってもよい。手袋材料は、好ましくはシース材料のような構造とされる。
【0034】
手袋は、冷却された物体を取り扱うための冷却室内でボディースーツから独立的に使用できる。したがって、そのような手袋は本発明の独立した技術対象を表す。
【0035】
少なくとも一の手袋は、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、特に好ましくは5つの、個別に可動する指室を備える。好ましくは、少なくとも一の手袋で、冷却室内の試料容器等の物体を把持可能とする。
【0036】
好ましくは、少なくとも一の手袋の内部は、作業者の少なくとも指、好ましくは手全体が手袋内で自由に動くことができるような態様で寸法を設定される。その一方で、手から把持される物体への負荷伝達を保証するために、手袋には保持要素が装備される。この要素は、手袋内で作業者の手、手首、又は前腕の一部を収容し支持するように構成される。好ましくは、手は、指が手袋に対してさまざまな位置にあるように手袋内で動かすことができる。第1の位置では、指を手袋加熱器の近傍内、好ましくは手袋の後側に配置することができる。第2の位置では、指は、物体を把持するために指部の把持側に位置することができる。
【0037】
特に好ましくは、少なくとも一の手袋の指室には把持領域が設けられる。この把持領域内では、手袋材料を、手袋の他の部分に比べて低減された厚さとしている。把持領域は、接触表面を、手袋無しの手で物体を把持するときのように隣接する指間に形成できるような態様で配置され、寸法が設定される。断熱手袋材料は、作業者が指圧を感知できるように、把持領域内に特に薄い部分を有する形状とする。把持領域は、作業者が物体を把持している感触を有することを可能にする。好適には、手袋の外側の把持領域は、形状を規定された面を有する。これにより、試料チューブ等の小さい物体でもしっかりと把持することが可能となる。
【0038】
さらには、少なくとも一の手袋は、特に好ましくは内圧に晒され、それにより指が指と手袋材料と接触する把持位置、特に把持領域から、指と手袋材料と接触しない加熱位置に移動するための十分なスペースが、手袋の内部に形成されるように構成される。残りのボディースーツ又は冷却システムに関して、手袋は、内圧を確立するために、例えば乾燥又は温風によって膨張させることができる。
【0039】
本発明の別の変形例によれば、少なくとも一の手袋には、試料キャリア用のレセプタクルを装備できる。試料キャリア用のレセプタクルは、例えば手袋の外側に配置され、棚装置から取り出された試料キャリアを別の棚装置又は輸送容器に移送する前の一時的な保管場所の役割を果たす。
【0040】
本発明に係る防護服は、以下のさらなる利点を有する。調節付きの内部の呼吸ガス供給源により、防護服は、空気内又は純粋の窒素雰囲気内でも冷却室内で使用することができる。作業者の四肢の良好な可動性は、例えば−190℃まで又はそれ以下の低温であっても与えられる。作業者の生理学的温度は、防護服内で維持することができる。温度は、作業者によって制御され又は制御ユニットによって自動的に調整することができる。防護服は、作業者自身による迅速な温度分布又は調整を可能としており、これによって冷却システムの正常作動時又は損傷時に有効となる。また、少なくとも一の手袋は手に良好な把持感を与え、生理学的調節を確実にする。
【0041】
本発明のさらなる詳細及び利点は、以下の通りに示す添付の図を参照して以下に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1A及び
図1Bは、本発明に係る防護服100の2つの実施形態を概略的に示している。防護服100はそれぞれ、ヘルメット40(
図5を参照)と、靴50(
図6を参照)と、呼吸ガス供給源(
図14を参照)を備えた後部60と、手袋70(
図7〜
図11を参照)とを備える、シース材料20(
図2〜
図4を参照)で作製されたボディースーツ10を備える。さらには、防護服100は、概略的に示された加熱装置30(
図2〜
図4を参照)を備える。ボディースーツ10は、脚を収容するための2つの脚部11と、胴体を収容するための胴体部12と、作業者1の腕を収容するための2つの腕部13とを備える。アクセス開口部を備えたシース材料20の化合物全体及びボディースーツ10とヘルメット40の間の結合は、気密式に形成される。これらは、作業者1が、防護服100を着用して足を踏み入れたときに、冷却室を氷結させない又は霜の降りないように保つために、水分(水蒸気)に対して特に不浸透性である。
【0044】
図1A及び
図1Bの実施形態は、シース材料20の特徴及び防護服100内の作動圧力の点で異なる。
図1Aによれば、シース材料20は、一方が他方の上に直接配置された複数のシース層を備えた層構造を有する。膨張可能な又は真空の中間層は、この場合は設けられない。シース層の材料及び層配列は、加熱装置30によって供給された熱の主要部分が内方向に流れ、一方でシース材料20が、冷却室内の低温においても可撓性のままであるように外方向に加温されるような方法で選択される。この目的のために必要とされるシース材料20の表面温度は、0℃を上回ってはならない。数多くの使用可能な繊維、プラスチック材料又はシリコーン材料は、−10℃〜−50℃の範囲内で依然として可撓性を有するので、シース材料20の表面温度をこの範囲で調整することができる。
図1Aに係る実施形態の利点は、ボディースーツをより安い技術費用で、より薄く、より簡単でより容易な構造にすることにある。それとは対照的に、欠点は、環境への熱損失が増大し、したがってエネルギー消費量が増大することである。
【0045】
図1Bによれば、防護服100は圧力スーツを形成する。防護服100を用いるとき、シース材料20及び/又はボディースーツ10の内側の内圧の増大は、シース材料20が外方向に折曲できるように、そこで調整される。この場合、シース材料20は、
図1Aに係る実施形態と比較してより大きい壁厚を有する。さらには、シース材料20は、冷却室内の少なくとも低温において剛性である。それにも関わらず防護服100を着用する作業者1の自由な可動性を保証するために、関節領域14が設けられる。
【0046】
ボディースーツ10及びヘルメット40は、作業者1のための気密シースを一緒に形成できる。
図1Aに係る実施形態に関しては、通常圧力の冷却室内の低温窒素雰囲気において、圧力安定の緊密性は生み出されてはならない。したがって、シース材料20を開口ライン16に沿って中断することによって、作業者1用のアクセス開口部を形成することができる。胴体部12の正面領域内では、この中断部に隣接してシース材料20の重複層が配置される。重複層は、アクセス開口部を開閉するために、1/4回転ファスナ、弾性及びシール性のバンドを備えた面ファスナ等のファスナによって互いに相互連結又は分離することができる。
【0047】
図1Bによれば、アクセス開口部は、ボディースーツ10の2部分構造によって設けられる。シース材料20は、脚部11と胴体部12の間で中断される。剛性の結合リング17(点線で描写)が、隣合う部分11、12の境界部にある。結合リング17は、部分11、12を気密式及び圧密式に結合するようになされる。これらは、結合リング17間に設けられたシール層を備えた、例えば1/4回転ファスナを形成する。
【0048】
図1A及び1Bに概略的に示される加熱装置30は、例えば電気加熱層又は熱媒体回路のラインを備え、これは以下においてさらに詳細に説明される。加熱装置の一部は、ボディースーツ10内及び/又は後部60内に分散式に配置される。これらは、特に、冷却室内で用いる際、比較的大量の熱が流れる領域内、例えば脚部及び腕部11、13等に配置される。靴50及び手袋70内には、好ましくは、加熱層等の電気加熱素子が設けられる。
【0049】
ヘルメット40は、ボディースーツ10の上側端部上の結合リング18において固定され気密式に係止される。結合リング18の後側には、ヒンジを設けることができ、このヒンジ上において、作業者1が防護服100を脱ぐことを容易するために、ヘルメット40を非係止状態で後方に折り畳むことができる。
【0050】
後部60は、胴体部12の後側に位置する。後部60は、リュックサックのようなベルトを用いてシース材料20に又はボディースーツ10に堅固に連結できる。後部60内には、呼吸ガス供給源、呼吸ガスを加熱するための加熱装置の一部、電流源、特にバッテリ、制御ユニット、そして必要であれば追加の圧縮空気供給源が位置する。後部60は、前記構成要素を過冷却から保護するために、断熱材料、例えば被覆炭素繊維、樹脂発泡複合物、グラスウール複合材料、発泡ポリスチレンで形成される。
【0051】
靴50及び手袋70は、ボディースーツ10に永続的に連結することができる。あるいは、ボディースーツ10から靴50及び/又は手袋70を分離させてもよい。この場合、靴50及び手袋70には、ボディースーツ10との気密性、必要な場合は耐圧性の連結を達成するために、結合要素が設けられる(
図7参照)。靴50の正面端部(つま先)は、機械的に補強され、液体窒素との接触に対して無反応なものである。これに関して靴50は、精子タンク用の従来の低温技術に使用されるようなプラスチック材料又はセラミックから形成される。
【0052】
さらに
図1Aは、任意選択で設けられるベルト装置15を示している。ベルト装置15は、シース材料20内に埋設することができ、又はシース材料20の表面上に配置することができる。作業者1を防護服100内に固定することができる、又は損傷の状況において作業者を冷却室から持ち上げることができる保持ロープ210を、ベルト装置15上に固定することができる。
【0053】
図1Aに係る防護服100の使用は、最初、ヘルメット40を折り畳み、胴体部12を開口ライン16に沿って開くようなものである。作業者1は、ボディースーツ10内に入る。ここでは、作業者1は、通常の衣類、又は加温性繊維衣類(裏地付き繊維)、例えば裏地付きのヘッドギア(斜線で示される)を着用してよい。これに続き、アクセス開口部が開口ライン16に沿って閉じられ、ヘルメット40は、前方に折られ、結合リング18において閉じられる。それと同時に、呼吸ガス供給源が、作業者1に呼吸ガスを供給するために後部60内で作動される。この状況では、防護服100を着用する作業者は、作業及び冷却室に入る準備ができている。
【0054】
冷却室は、例えば床領域、側壁、及び天井領域を含み、この場合、冷却装置は、液体窒素を用いて冷却室を冷却するために少なくとも床領域内に配置される。この側壁は、通常、閉じられて形成される(ドア開口部を有さない)。冷却室へのアクセスは、天井領域内の開口部から行われる。床領域内には作業プラットホームが配置され、このプラットホーム上で、防護服100を着用する作業者は、例えば保全作業を実施するために、又は試料容器を取り、又は置くために移動することができる。
【0055】
図1Bによれば、これによって、作業者1が最初にボディースーツ10の脚部11、次いで胴体部及び腕部12、13に入り、ヘルメット40を被ることが提供されている。防護服100は、結合リング17において気密式及び圧密式に閉じられる。それと同時に、呼吸ガス供給源が、作業者1に呼吸ガスを供給するために後部60内で作動に入る。
【0056】
電流源を後部60内に設けることは必須ではない。その代用策として、外部エネルギー供給源との連結が供給ライン220を介して設けられてよく、この供給ラインは、
図1Bに概略的に示され、
図13でさらに詳細に示される。
【0057】
図2A及び2Bは、好ましくは
図1Aに係る防護服100の実施形態に設けられる、シース材料20の2つの変形形態を示している。いずれの場合も、シース材料20は、外側から内方向に気密外側皮膜21、安定化層22、熱反射ホイル24を備えた絶縁層23、加熱領域25、内側皮膜27を備えた保存層26、及び繊維層28とを備える。作業者1の体表面(衣類表面)が、参照符号2で示される。
【0058】
外側皮膜21は、気密性の複合材料を含み、この材料は、例えば被覆プラスチックネット、グラスウール、炭素繊維、積層ホイル、及び/又は被覆発泡体等の繊維を含む。外側皮膜21の厚さは、例えば0.5mm〜3mmである。安定化層22も同様に、例えばプラスチック材料からの機械的安定性の格子材料が内部に埋設された複合材料である。安定化層22の厚さは、例えば0.1mm〜2mmである。例えば3mm〜10mmの厚さを有する絶縁層23は、例えば発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、コルク、グラスホーム粒状、エーロゲル、真空絶縁パネル、ミネラルウールから形成され、この場合アルミニウムで被覆されたプラスチックホイルを含む熱反射ホイル24が、絶縁層23の内側に配置される。加熱領域25は、シース材料20内で均一に分散されて層状に配置された加熱層を含む。加熱層は、電気ケーブル(図示せず)を介して供給され、このケーブルは、後部60(
図1を参照)内の電流源に連結され、及び/又は供給ライン220を介して外部電流源に連結される。保存層26は、パラフィン、ワックス、マグネシウム複合材料、グラファイト層、発泡ポリスチレン、1kJ/kg・Kを上回る比熱容量を有する木材構成物等の高い熱容量を有する材料を含む。これは、例えば2mm〜10mmの厚さを有する。保存層26は、熱緩衝としての、また熱を分散させる役割を果たす。内側皮膜27は、機械的安定機能を有する。最後に繊維層28は、作業者1とシース材料20との内側接触ができるだけ快適なように設計するために織物又はフェルトからなる。
【0059】
図2Aによれば、作業者1の体表面2は、シース表面20の内側に直接的に接触している。したがって、体表面2は、シース材料20によって直接的に加温される。これとは異なる
図2Bに係る例では、呼吸ガスが、冷却室内の外気圧力を上回る圧力でボディースーツ10内に供給されることが提供されている。その結果、シース材料20は膨らまされ、それにより、距離3(例えば数cm)が、シース材料20の内側と作業者1の体表面2の間に形成される。作業者1とシース材料20の間に距離3を設けることは、ボディースーツ10の内側における熱緩衝及び熱の均一な分散という利点を有する。
【0060】
図3A〜
図3Cは、シース材料20及び防護服100の変形例を示しており、ここでは加熱装置は、ライン34、35を有する熱媒体回路33によって形成される。ライン34、35は、少なくとも一の閉じられたリングラインを形成する。防護服100の後部60(
図1を参照)内には、熱媒体供給源及び熱媒体ポンプが位置し、複数のリングラインを設けた場合は、熱媒体をリングラインの各々1つに供給するための星形状の分散部が存在する。熱媒体回路33は、気体状又は液体状の熱媒体用の複数のライン34、35を備える。熱媒体が液体、例えば水、アルコール、又は流体油等の液体である場合、熱媒体用の高い熱容量が有利になる。対照的に、防護服100の比較的大きい重量及び熱媒体回路内の漏出の場合の損傷のリスクが、欠点になり得る。
【0061】
ボディースーツ10が複数の部分からなる(
図1Bを参照)場合、ラインは、ボディースーツ10の組立てられた状態においてその部分間に結合される。ボディースーツ10の部分の分離状態においてラインの漏出を回避するために、ラインには、液体が流出することを防止する弁が設けられる。
【0062】
シース材料20は、
図2Aを参照して上記で説明したように、気密外側皮膜21と、安定化層22と、熱反射ホイル24を担持する絶縁層23と、ライン34、35が中に配置された加熱領域25と、内側皮膜27と、繊維層28とを備えた多層構造を有する。ライン34、35は、シース材料20内に分散式に配置される。脚部及び腕部11、13内では、ライン34、35は、作業者1の四肢周りに環状式に通っており、一方で胴体部12内では、ライン34、35は、作業者1の胴体周りに環状式に通っている。複数のリングラインを、例えば脚部、胴体部、及び腕部、11、12、及び13を別々に加温するために設けることができる。少なくとも一のリングラインが、後部60(
図1を参照)内の熱媒体加熱器に連結され又は外部ヒータに連結される。
【0063】
図3Aによれば、ライン34、35は、熱媒体加熱器からの温かい熱媒体を有する供給ライン(ライン34)が、冷却された熱媒体を有する戻りライン(ライン35)と交互になるような方法で敷設される。
図3Bによれば、温かい熱媒体を有する供給ライン(ライン34)は、加熱領域25内の内側層内に配置され、冷却された熱媒体を有する戻りライン(ライン35)は、加熱領域25の外側層内に配置される。熱媒体加熱器は、例えば15℃〜30℃の温度を有する熱媒体を送出する。
【0064】
ケーブル連結及び弁の使用は、防護服100のアクセス開口部が、
図3Cによる、胴体部及び腕部12、13の上方に配置される場合は回避できる。この場合、熱媒体回路33は、ボディースーツ10のシース材料20内の中断を有さない閉ラインシステムとして配置できる。さらに
図3Cは、脚部11、胴体部12、及び腕部13に熱媒体の別々の流路を形成するための星状の分配器36を示している。
【0065】
断熱及び必要とされる加熱力の低減という点で有利であるシース材料20の変形例が、
図4A及び4Bに示されている。シース材料20は、外側シース20.1及び内側シース20.2を備える。これは、外側皮膜21、安定化層22、及び熱反射ホイル24が設けられた第1の絶縁層23.1を有する
図2Aの層配列に類似する構造を有する。さらには、これも同様に熱反射ホイル24.2が設けられた第2の絶縁層23.2、及び繊維層28が、シース材料20の内方向を指す側に設けられる。シース層の材料及び寸法は、
図2を参照して説明したように選択することができる。
【0066】
第1の絶縁層23.1と第2の絶縁層23.2との間には、気体が充填された(
図4A)、又は真空の(
図4B)中間層29が位置する。気体が充填された中間層の内面29.1は、安定化リブ29.1によって機械的に安定化される。シース材料20の電気抵抗加熱のための加熱層を有する加熱領域25は、中間層29の外側を指す内面上に配置される。
図4Bによれば、中間層29は、気体が充填されず、真空構成要素29.3(真空プラスチックモジュール)によって形成される。この場合、加熱層25は、中間層29の内面上に設けられる。
【0067】
図4A及び4Bのいずれの変形形態も、シース材料20の可撓性の低減又は完全な剛性によって特徴付けられる。この場合、防護服100を着用する作業者1の可動性は、関節領域14(
図1Bを参照)によって保証される。
【0068】
図5A及び5Bは、本発明に係る防護服100のヘルメット40を概略正面図(
図5A)及び側部断面図(
図5B)で示している。ヘルメット40は、透明のプラスチック材料、例えばコポリマー(エラストマー)、酢酸セルロース、アクリロニトリル、ポリスチレンから作製された、切断された二重壁のボールを備える。ボールは、結合リング18によって連結された外壁40.1及び内壁40.2によって形成される。外壁40.1とと内壁40.2の間のスペースは、ヘルメット40の内部から外方向への熱伝導を低減するために真空化される。作業者1の見る方向を指すヘルメット40の正面側は、窓加熱器41.1が装備された正面窓41を形成する。さらには、内壁40.2の内面は鏡面仕上げのものであり、それにより、熱放射がヘルメット40の内側で内方向に反射される。
【0069】
後部60内における呼吸ガス供給源からの加温された呼吸ガスが、断熱された供給ライン45を介してヘルメット40内に供給される。呼吸回路が設けられる場合、呼吸は、弁付きのマウスピース(図示せず)を介して行うこともでき、それにより、ヘルメット40の内面の曇りが回避されて有利である。
【0070】
ヘルメット40の上側ポールには、腐食防止装置40.3が配置され、この装置は、機械的腐食から保護し、例えば白色光LED等の照明装置40.4、無線通信用のアンテナ40.5、及び/又は圧力除去弁42等の機能構成要素を収容する役割を果たす。呼吸ガス圧力が非意図的にヘルメット40内で増大した場合、圧力除去弁42によってその除去を達成することができる。さらには、圧力除去弁42には、緊急用開放要素42.1が設けられる。この緊急用開放要素は、損傷の際でも、例えば空気をヘルメット40内に流入させるために外側から制御可能である。外側から開くことができる窓(図示せず)が、別の緊急用開放部としてヘルメット40内に設けられてよい。
【0071】
ヘルメット40には、さらに、緊急用供給装置44が装備される。緊急用供給装置44は、ヘルメット40の後側(頭の後部)に配置される。これは、圧縮空気ボトル44.1、加熱カートリッジ44.2及び弁制御された連結ライン44.3を含む。後部60(
図1を参照)内の呼吸ガス供給源の不具合の場合、緊急用供給装置44は、調節された呼吸ガスを連結ライン44.3を介してヘルメット40内に直接導くために作動させることができる。圧縮空気ボトル44.1の呼吸ガスの保存は、例えば5分間の緊急用供給に十分なものである。緊急用供給が、必要とされる外部の緊急用供給装置を用いてより長い間必要とされる場合、呼吸ガスの供給は、外部の緊急用供給装置から、連結ライン44.3に連結されたノズル44.4を介して実施される。
【0072】
ヘルメット40の別の機能要素は、マイクロホン40.6と、イヤースピーカ40.7と、作業者1の頭部の動きによって作動させることができる緊急用ボタン40.8と、後方鏡40.9とを備える。
【0073】
図6A及び
図6Bは、本発明に係るボディースーツ10(
図1を参照)の靴50を、靴の正面領域の概略長手方向断面図(
図6A)で示しており、かつ概略側部断面図(
図6B)では縮尺して示している。靴50の設計は、靴50が冷却室内の最も低温の表面と直接接触するようになるため、作業者の安全のために特に重要なものである。冷却室の床部には、例えば断熱トラフ内に、格子によって覆われた開放式の窒素貯蔵池が位置する。防護服100を着用する作業者1は、格子上で移動する。床部の温度は、液体窒素の温度、すなわち約−195℃にほぼ等しい。靴50は、液体窒素が床から上方向にはねる場合であっても、又は損傷の状況において、靴50で液体窒素内に踏み入れた場合でも、作業者の足部4のしっかりとした保護を確実にするように構成される。
【0074】
断熱されたトラフ内の冷却室の冷却装置の窒素貯蔵池は、通常、5cm以下である深さを有する。したがって、靴50には平坦な靴底51が装備され、これは、作業者1の足底5が、冷却装置の窒素貯蔵池の深さより大きい、床から上方の距離hにあるように設計される。距離hは、例えば5cmを上回り、特に6cmを上回る。
【0075】
さらには、靴50の下面は、靴50が液体窒素に対して不浸透性になるような方法で形成される。靴52の平坦な靴底51及び上側領域は、したがって、耐低温プラスチック材料、例えばPTFE、セラミック、ガラス複合材、炭素積層体から形成される。靴50の表面には、機械的損傷に対する保護層53が配置され、この保護層は、例えばセラミック、金属メッシュ、又はプラスチックメッシュからなる。
【0076】
平坦な靴底51は、耐歩行性が向上され、それと同時に床との接触表面が低減される靴底形状51.1(
図6Aを参照)を有する。真空空洞51.2が、さらなる断熱のために平坦な靴底内に設けられる。
【0077】
靴50の内側には、例えばアルミニウムで被覆されたプラスチックホイル等の熱反射層54と、例えばポリマー発泡体から作製された絶縁層55とが配置される。足4の下面に延長され、また任意選択的に足4の側部又は上部側に延長された電気加熱層37(破線で示す)は、絶縁層55内に埋設され、又は熱反射層54の表面上に配置される。
【0078】
絶縁層55は、足4を収容するための靴5の気体が充填された内部56を含む。内部56は、人足のスペースに必要とされるものより明らかに大きく形成される。このようにして、作業者は、さらに裏地付きの繊維を着用することができ、靴50は、さまざまな足サイズを有する人々によって使用可能である。それにも関わらず、靴50内の足4の可動性を小さくすることだけで良好な適合性を達成するために、可撓性の適合要素58が、靴50の上側57内に配置される。適合要素58は、移動する場合に必要とされる力を靴50に伝達することを可能にするために、足4の上側部分及び/又は下脚6に十分な保持を与える。足4の下方では、絶縁層55は靴インサート55.1になり、このインサートは、例えば金属被覆プラスチックホイル、PTFEホイル、フェルト層、発泡層、ガラス積層体等の弾性の熱反射材料からなる。靴インサート55.1は、足4を断熱し、靴50の適合性を強化する役割を果たす。
【0079】
手の使用は、冷却室内で、例えば保全作業中、又は試料容器を棚から取る際に防護服を着用する作業者にとって特に重要なものである。作業者は、手袋70(
図1)で低温表面と直接接触する。数センチメートルのサイズを有する試料チューブ等の、小さい寸法を有する試料容器は、手袋で安全に把持し、保持されなければならない。この点において、指の可動性が必要とされ、この場合、それと同時に、指から試料容器への熱伝達が最小限に抑えられるべきである。
【0080】
通常、本発明に係る手袋は、防護服と共に、あるいは−200℃までの温度の通常圧力下で冷却システム(例えば冷却箱又は冷凍庫)と共に使用するようになされている。この点において、手袋は、供給及び制御システムに連結させることができ、このシステムは、手袋加熱器の設計(特に電気抵抗加熱又は熱媒体回路)、手袋材料の設計(特に圧縮空気の作用下で展開するオプションを有する又は有さない)、及び防護服又は冷却システムとの使用に応じて、電流源又は熱媒体供給源、圧縮空気供給源及びセンサ装置を備える。圧縮空気供給源が、空気を加温し空気を乾燥させるための加熱装置の一部分に連結され、それと共に手袋から流出する排気を設定するための流れ制御装置に連結される。センサ装置は、好ましくは、各々の指室内、ならびに手袋の手の甲及び掌の領域内に温度センサを備える。さらには、手袋内の気圧及び空気流れを検出するためにセンサを設けることもできる。センサ装置は、手袋内の望ましくない作動状態の情報伝達を可能にするために、アラーム装置に連結される。加熱装置は、ボディースーツ内の加熱装置を参照して上記で説明したように設計され、以下においてさらに詳細に説明される。前記特徴は、本発明に係る手袋70によって達成され、これは
図7〜
図11の好ましい実施形態において示される。
【0081】
図7Aによれば、複数の指室73を有する手袋70は、作業者の手を収容するための内側スペースを形成する断熱手袋材料71から製造される。手袋材料71は、全体的に多層のものであり、ボディースーツのシース材料のように、任意選択では保存層を有さずに構造化される。例えば、断熱手袋材料71は、外側から内方向に、不通気性の耐低温外側皮膜71.1及び少なくとも一の絶縁層71.2を備える。外側皮膜71.1は、結合材で糊付けされた繊維等の複合材料を含む。絶縁層71.2は、例えば金属被覆されたプラスチック材料、PTFEホイル、炭素複合材料、フェルト繊維、パラフィン又はワックス複合材料及び積層化された繊維からなる。絶縁層71.2の内面上には、手袋70内への熱放射の後方反射のための熱反射ホイルが配置される。
【0082】
ボディースーツのシース材料と比べて、断熱手袋材料71は、簡易化された構造及び低減された絶縁能力を有し得る。しかし、手袋70は、防護服の表面の他の部分と比較して熱の小さい供給源を形成するにすぎないため、これは本発明に係る防護服の実際の使用において重要ではない。
【0083】
断熱手袋材料71の内面上には、電気抵抗加熱用の加熱層(加熱ホイル)77が配置される。加熱層77は、熱を、特に前腕、掌及び指の周囲に導かれるような態様で配置できる。手袋70の上部側(手の甲を示す側)のみにおいて、把持する指(親指、人差し指、中指)の正面部分で加熱を行うこともできる。
【0084】
把持する指の指室73の把持表面上には把持領域74が設けられる。この領域内では、断熱手袋材料71は、手袋70の他の部分と比較して、1cmを下回る、特に0.5cmを下回る厚さに薄型化されている。把持領域74は、好適には低温においても指圧の感知を利用可能とし、作業者が把持している感触を得ることを可能にする。把持領域74の外面は、試料容器を把持するために好適な形状とされた可撓性材料で覆われる。把持領域74の形状によって、試料容器が滑り落ちるリスクが低減される。
【0085】
ボディースーツ10(
図1を参照)に関して言えば、断熱手袋材料71は、内側から加温され、それにより、断念手袋材料71の外側表面(外側皮膜71.1)もまた可撓性で柔軟なままであることが提供される。外側皮膜71.1の温度は、例えば−10℃〜−60℃の範囲内で調整される。
【0086】
図7A及び7Bの手袋70の実施形態は、手袋70をボディースーツ10(
図1を参照)の腕部13に連結するようになされた結合要素76を概略的に示して図示される。あるいは、手袋が、例えば冷却箱内での手動の試料の取り扱いのために冷却システム上に設けられる場合、結合要素76は、作業者が手を外側から手袋内に挿入することができるような方法で冷却システムの外壁に連結される。さらには、この場合、結合要素76を介して電気手袋加熱器に供給するための外部電流源との接続が存在する。
【0087】
手袋70は、ボディースーツ10から分離することができる。したがって手袋は、有利には、冷却室内での用途及び作業者の手のサイズに関する具体的な要求事項に応じて置き換えることができる。試料チューブ等の試料容器用のレセプタクル75が、結合要素76上に設けられる。レセプタクル75は、試料容器の形状に適合される。例えば、管状体が、試料チューブ(いわゆる「ストロー」)を収容するために設けられ、一方で箱又は取り付け装置が、バッグ形状の試料容器用にレセプタクル75として設けられる。レセプタクル75は、指間に保持されてはならず、したがって低温のままにしなければならない試料容器を、一時的に保管することができるという利点を有する。
図7から逸脱するが、手袋70が、ボディースーツ10の腕部13にしっかりと連結されることが可能である。
【0088】
図7Bは、
図1Bによる圧力スーツと組み合わせて使用される手袋70の実施形態を示している。この場合、流入する気体用ライン(76.1)及び流出する気体用ライン(76.2)は、結合要素76内に位置している。手袋70は、温かい気体の流入(例えば25℃〜35℃の温度)によって加温され膨張される。加えて、加熱層を、
図7Aを参照して説明したもの等の手袋70の内側に設けることができる。手袋70内の過圧により、手が中で動くことができる気体の充填されたスペース78が、作業者の手6と手袋70の内面の間に作り出される。さらには、保持要素72が、作業者の手6又は前腕の一部を手袋70内で支持するために設けられる。保持要素72は、例えば手袋70を手首の領域において取り囲む1つ又は複数のリングを備える。保持要素72は、手6がさまようことを可能にし、それと同時に把持する際、指による力の伝達を可能にするために十分な支持を手6に与える。
【0089】
図7Bによる手袋70の特定の利点は、指先の過冷却又は損傷の任意の他の状況の場合、作業者の腕を後退させることができ、握拳を形成できる(
図7Bに点線で示す)という事実にある。この状況では、過冷却された部材の迅速な加熱が可能である。
【0090】
図から逸脱するが、流入する気体用のライン(76.1)は、好ましくは気体が、指及び手の迅速な加熱及び指と手袋の間の流れる気体で充填された適切な距離を達成するために、手袋70の最も外側の端部において、指先と指室73の端部の間を流れて手袋70内に入り、次いで指に沿って手の上方を手首の方向に流れるような態様で形成できる。この場合は、圧力に加えて、気体の流速が、特にその流れの方向に一定に保たれる場合に有利である。
【0091】
本発明に係る手袋70は、例えば
図8A及び
図8Bに概略的に示すように、3指手袋又は5指手袋として構成することもできる。
図8Aによれば、作業者の親指及び人差し指それぞれの指室73、及び作業者の残りの指用の別の指室73が設けられる。加熱装置30の一部は、指室73の各々内に配置される。図示する例では、加熱装置30は、加温された熱媒体を供給するためのライン34と、分配器36において3つのリングラインに分割される、冷却された熱媒体を再利用するためのライン35とを有する熱媒体回路を備える。
図8Bによれば、これによって、5つの指室が、作業者のそれぞれ1つの指を収容するために設けられる。この場合、加熱装置30のライン34、35は、分配器36のところで5つのリングラインに分割され、これらのラインはそれぞれ、手袋70の手の甲側上を通る。
【0092】
図8A及び
図8Bは、さらに、加圧された気体、例えば圧縮気体を手袋70内に供給するためのラインと、加圧された気体の流出用のラインとの圧力ライン連結76.3を概略的に示している。過圧により、作業者の手が中で動くことができる気体の充填されたスペース(
図7Bを参照)が、作業者の手と手袋70の内面の間に作り出される。圧力ラインの連結76.3は、結合要素76(
図7Bを参照)によって行われ、加圧気体供給源に連結される。
【0093】
また
図8Cは、本発明に係る手袋70には、この場合は手袋70の親指上に把持ライン(折り畳み)を形成する関節領域14を装備することができることを概略的に示している。把持ラインは、例えば
図12を参照して以下で説明するような方法で構造化される。手袋70の変形例によれば、親指ラインの形成のための関節領域を省いてもよい。代用策として、手袋の可撓性を保証するために、親指ラインの領域内で手袋材料を変更することができる。例えば、親指ラインの領域内の手袋材料の層状化合物内に、例えば隙間又は絶縁層71.1(
図7Aを参照)の厚さが低減された領域等の中断部を設けることができる。
【0094】
図9及び
図10は、本発明に係る手袋70の指室上の把持領域74のさらなる詳細を示している。
図9によれば、把持領域74は、親指及び人差し指を収容するための指室の、手袋70内に導入された手の指先の領域内の部分に配置される。把持領域74は、手袋70が把持を実行するために閉じるときに互いに対向するように配置されるような方法で配置される。把持領域74は、手袋の他の部分と比較して手袋材料の厚さが低減されることによって特徴付けられる。その結果、感触の感覚が、把持領域74内で作業者に対して保たれる。保持力が手動で制御され、試料容器が非意図的に滑り落ちることを回避できるため、例えば試料容器の安全な保持が保証される。
【0095】
把持領域74は、内圧による手袋の影響と連動して、本発明に係る手袋の特に重要な特長を表している。指室は、小さい物体でも感知して把持できるようにより薄く、形状を規定された素材で指の内側に形成される。把持領域74は、非常に低温である外部の固形物と接触した場合、接触領域内において作業者の指の冷却を招く。層は、接触を−200℃の固形物の温度で数分間問題なく保つこともできるような方法で形成される。保持された物体を解放した後、作業者の冷却された指領域は加温される。この加熱は、取り扱いの解放後、手袋内の内圧により、指先が手袋材料ともはや接触せず、それにより、これらが、手袋内の内側媒体によって暖かく取り囲まれ、急速に加温されるような方法で達成される。手袋の内圧は、把持する際、指表面をシース材料に接触させるために打ち勝たなければならない大きな機械的抵抗が無いようにして選択される。この手袋の指の原理は、特に、精子バンクで使用されるもの等の物体を繰り返し把持し、配設することに有利である。
【0096】
図10は、手袋加熱器が熱媒体回路によって形成される手袋70の変形形態を示している。
図10による人差し指を用いた例で示す把持領域74が、
図11の手袋材料の概略断面図において拡大して示されている。
図11は、この例では気密外側皮膜71.3、安定化層71.4、熱反射ホイル71.6を備えた絶縁層71.5、加熱領域25、内側皮膜71.8を有する保存層71.7及び繊維層71.9を有して形成された手袋材料の把持領域74を示している。効果的な把持領域74をもたらすためには、手袋材料の保存層71.7内に、例えば2cmの横方向の拡張を伴う隙間を残すことで十分である。
【0097】
本発明に係る防護服100上に任意選択で設けられた関節領域14(
図1B及び
図8Cを参照)のさらなる詳細が、
図12A及び12Bに概略的に示される。
図12Aによれば、関節領域14は、可動式の接合部14.1を備える。例えば、ひじ関節に関しては、接合部14.1は、腕部の剛性の管状の構成要素13.1、13.2の間に位置する。接合部14.1は、手袋材料内に組み込まれて、手袋70内に把持ラインを形成する(
図8Cを参照)。関節領域14は、ベローズ連結の構造を有する。互いに対して移動可能であるリブ14.2は、可撓性の複合材料14.3を用いて互いに連結される。複合材料は、外側から内方向に、気密性の機械的に強固な外側皮膜14.4、機械的結合層14.5、加熱領域25、及び絶縁層14.6から構成される。機械的結合層14.5は、例えばリブ14.2を互いに連結させるメッシュ材料を備える。加熱領域25は、関節領域14の電気抵抗加熱のために設けられる。このため、全体の関節領域、それ自体が、−200℃までの外部温度で移動できることが可能になる。関節領域内の熱損失の増大は、その寸法がボディースーツの全体表面と比較して小さいため、またその機能の重要性のため受け入れることができる。足関節又は腰関節又は手袋の把持ライン等のボディースーツ10上に設けられた他の関節領域14は、
図12に示すような同じ構造を有する。
【0098】
本発明に係る防護服が、供給ライン(電気ケーブル、熱媒体ライン)を介して外側装置に連結される場合、供給ラインは、冷却室を通り抜けて導かれ、低温時の破損から保護されなければならない。これは、電気ケーブルを用いた例によって
図13に概略的に示される。冷却室内でのつまづきのリスクを有することなく冷却室の全部分への容易なアクセスを可能にするために、供給ラインは、好ましくは拡張可能に形成される。これは、らせん形態によって達成される(
図13A)。このらせん形状の供給ラインは弾性のものであり、その長さを冷却室内の具体的な使用状態に適合させることができる。供給ラインの可撓性を保ち、絶縁材料及びシースのいかなる破砕も防止するために、供給ライン220は、
図13Bに概略的に示すように電気式に加熱される。
【0099】
供給ライン220の内側には、電気絶縁層222内に埋設された電気ケーブル221が位置する。電気絶縁層222の表面上には、熱反射ホイル(図示せず)を有する加熱層223が配置される。加熱層223の外側には断熱層224が位置しており、この断熱層は、液体窒素に対して耐性を有する可撓性のシース層225によって取り囲まれる。加熱層223は、供給ライン220の温度がその表面まで増大されるようにして電流によって影響が与えられる。
【0100】
供給ライン220の加熱は、好ましくは後部60(
図1を参照)内の電流源を用いて実現される。これにより、冷却室内の可撓性の供給ライン220の永久的な可用性が保証されて有利である。圧力ライン、液体ライン、又は真空ライン等の他のラインは、
図13Bに示すような同じ構造を有する。
【0101】
図14は、作業者が、通常圧力下で、例えば−200℃までの温度において冷却室内で作業することができる、本発明に係る防護服100用の供給及び制御システムの全体図を示している。防護服100上には制御ユニット80が位置しており、このユニットによって、信号を発することができ、防護服100の諸部分に対する設定を行うことができる。供給及び制御システムが、防護服100の周りでグループ化された図で示されており、この場合の線は、防護服100との連結(信号接続及び/又は材料連結)を概略的に表している。
【0102】
好ましくは防護服100の作動のために設けられた供給及び制御システムは、電源61(バッテリ)、加熱装置30及び呼吸ガス供給源62を備える。電源61は、後部60内(
図1を参照)に断熱材を備えて設けられ、15分〜60分の時間の間スーツの加熱器及び作動に十分である静電容量が設けられる。供給ライン220を介して、例えば冷却室内又は隣接する作動室内の外部電源に結合することが提供される。このため、内部電源61を保存又は充填すること、又は特別な用途に向けて追加のエネルギーを与えることが可能になる。加熱装置30は、防護服内に一体化された加熱要素であって、電気的に又は熱媒体によって作動される加熱要素と、加熱器制御ユニットとを備える。
【0103】
呼吸ガス供給源62も同様に、断熱材を備えて後部60(
図1を参照)内に配置される。そのような呼吸ガス供給源62ならびに呼吸ガスライン及び弁は、断熱され、必要であれば加熱されて配置される。好ましくは、呼吸ガス供給源62は、圧縮空気システム又はCO
2の除去及び酸素の供給を備えた循環システムに基づく。呼吸ガスは、加熱装置30の一部によって、必要であれば、防護服100内のセンサ及び制御回路を用いて調節される。
【0104】
防護服100が圧力スーツ(
図1B)として設計される場合、圧縮空気供給源63が、追加的に後部60(
図1を参照)内に位置する。膨張可能な中間層29には、シース材料20(
図4Aを参照)内の断熱のために、圧縮空気供給源63によって空気が供給される。さらには、圧縮空気供給源63は、熱媒体回路に連結することもできる。加えて、圧力の発生又は液体回路における圧送又は真空の発生のための装置65を設けることもできる。
【0105】
ヘルメット40は、外部スペース、ならびに照明装置40.4、カメラ装置40.10及び無線電話による通信のためのマイクロホン40.6のような冷却室内の他のものとの通信のために、アンテナ40.5を有する無線システムに接続される。
【0106】
さらには、スーツは、ほとんどのさまざまな場所(四肢、体領域、頭部)において、外部センサ91(温度、酸素濃度)及び内部センサ92(温度、圧力、酸素濃度、残り時間、アラーム信号、音響アナウンス)を備えたセンサ装置90を有する。特に、靴及び、ここでは靴底には温度センサが装備される。
【0107】
正常状態から許容できない逸脱がセンサ装置90で記録された場合、アラーム装置64は、作動者及び外部に向かってアラーム(アラーム信号又はメッセージ)を発する。アラームは、例えばヘルメット40の正面窓41内に表示してもよく、又はその内部で反射させてもよく、及び/又は音によって作業者に伝達してもよい。これに従って作業者は、例えば冷却室を直ぐに離れる、緊急用供給装置を作動させる、又は外部エネルギー供給源或いは圧力気体の供給を結合する等、必要な行動についての指示を自動的に受け取ることができる。
【0108】
システム構成要素の不具合は、冷却室内に広がる極限の状態下において命を脅かす状況を急速に招く。オペレータは、窒素冷却室の場合、呼吸不能の外気内にいる。したがって、呼吸ガス供給の不具合はどのようなものでも、すぐに劇的な結果を及ぼす。呼吸ガス用の調節システムの不具合だけでも命を脅かすものになる。スーツ加熱システムの不具合もまた同様の結果を及ぼす。それによって材料は、−100℃を下回る温度で可動性が強く制限され、又は機械的破壊がその動きによって引き起こされるような程度まで剛性になる。これらの危険を回避するために、緊急用供給装置44が設けられ、この装置は、
図14に概略的に示され、ヘルメット40上の、例えば頭(
図5Bを参照)の後部の領域内に一体化される。あるいは緊急用供給装置44は、スーツの別の地点(例えばベルト)に取り付けられてよい。システムは、断熱及びそれ独自の調節システムにより、約5分間の呼吸ガスの緊急用供給ならびに無線電話、スーツの最も重要な要素(例えば関節、脚)の照明及び加熱用の電力供給を提供する。さらには、さまざまな場合の指示が所定のプログラムに保存され、これらの指示は、外方向の無線及び言語ならびにヘルメット内のスピーカを介して損傷を負っている人に伝えることができる。
【0109】
通常、少なくとも2人が、冷却室内に同時に存在する。不具合のあるスーツ供給システムの供給を第2のスーツによって可能にする、スーツ内の結合要素が存在する。緊急用供給装置44により、損傷下の人は、アナウンスされ又は表示された残りの時間内で自ら救助しようとすることができ、又は、冷却室内の及び外側からの人が近づくことができ、又は救助システムを作動させることができる。
【0110】
上述した詳細説明、特許請求の範囲及び図面において開示された本発明の各特徴は、単独又は組み合わせて、本発明をさまざまな設計において実施するために重要となり得る。