(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200330
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】呼吸装置に関する改良
(51)【国際特許分類】
A61M 16/08 20060101AFI20170911BHJP
G01F 15/18 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
A61M16/08 330
G01F15/18
【請求項の数】32
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-554015(P2013-554015)
(86)(22)【出願日】2012年2月20日
(65)【公表番号】特表2014-512202(P2014-512202A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】GB2012050373
(87)【国際公開番号】WO2012114088
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2015年2月9日
(31)【優先権主張番号】1102942.8
(32)【優先日】2011年2月21日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507289070
【氏名又は名称】インターサージカル アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】ミラー アンドリュー ネイル
【審査官】
和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2004/108218(WO,A1)
【文献】
米国特許第05474063(US,A)
【文献】
特開平03−106371(JP,A)
【文献】
米国特許第04580556(US,A)
【文献】
特表2008−511341(JP,A)
【文献】
特表2003−527937(JP,A)
【文献】
特開2004−340938(JP,A)
【文献】
米国特許第04045058(US,A)
【文献】
米国特許第06375231(US,B1)
【文献】
米国特許第06210378(US,B1)
【文献】
国際公開第2004/041774(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/08
G01F 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸装置の部品であって、
包囲壁で画定されるガス流路と、
補助装置を収容するように適合された前記包囲壁中のポートと、
開放配置と保持配置とのそれぞれの位置間を可動である保持アームと、
を備え、
前記開放配置においては前記補助装置を前記ポートに係合可能であり、前記保持配置においては、使用時に前記保持アームは前記補助装置が前記ポートから外れることを阻止するように作用し、
前記保持アームは、ユーザが前記保持アームを手動で前記保持配置に動かすまでは、前記開放配置に保持されており、
前記保持アームには前記ポート用の蓋が含まれ、前記保持アームは閉鎖配置に向かって可動して前記蓋が前記ポートと係合し、
前記保持配置において前記補助装置に係合する前記保持アームの一部と、前記ポートと係合する蓋とは、前記保持アームの異なる部分に設けられている、部品。
【請求項2】
前記保持アームは、その開放配置において補助装置が前記ポートと係合することを妨げないように配置された、請求項1に記載の部品。
【請求項3】
前記保持アームは、内側部分と、中間部分と、外側部分とを備え、前記内側部分が前記包囲壁の外側から延び、前記中間部分は前記内側部分に連続しているとともに、前記内側部分と角度を成して曲げられており、前記外側部分は前記中間部分に連続していると共に、前記中間部分の面に対して曲がって半円筒形の溝を形成して、該溝に前記補助装置を受け入れる、請求項1または請求項2に記載の部品。
【請求項4】
前記保持アームは、前記開放配置と保持配置との間を回転可能である、請求項1から3のいずれか1項に記載の部品。
【請求項5】
前記保持アームは、一端が前記部品の外部表面に回転可能に取り付けられ、前記一端を中心に前記保持アームが枢動可能となっている、請求項4に記載の部品。
【請求項6】
前記保持アームは、前記部品の外部表面にヒンジで取り付けられている、請求項5に記載の部品。
【請求項7】
前記保持アームは、前記保持配置において前記補助装置の外部表面と係合する、請求項1から6のいずれか1項に記載の部品。
【請求項8】
前記保持アームは、前記保持配置において前記補助装置を把持又は捕捉する、請求項1から7のいずれか1項に記載の部品。
【請求項9】
前記保持アームの少なくとも一部は弾性材料で形成され、前記補助装置の少なくとも一部を内側に収容するようになっており、前記保持アームの弾性部分内に前記補助装置を受け入れると、前記弾性部分が係合時に曲がって前記補助装置を受け入れ、前記保持アームが前記補助装置に完全に係合すると、前記弾性部分が前記補助装置を把持または捕捉する、請求項8に記載の部品。
【請求項10】
前記保持アームは、前記保持アームの保持部分を前記ポートとは反対側の前記補助装置の表面に配置することによって、前記補助装置が前記ポートから外れることを阻止する、請求項1から9のいずれか1項に記載の部品。
【請求項11】
前記保持アームは全体形状が略弓形となっている、請求項10に記載の部品。
【請求項12】
前記補助装置が前記ポートから外れる方向へ動く場合に、前記保持アームは、前記補助装置を把持したり捕捉したりすることなしに、前記保持配置に留まり、特に前記補助装置と係合した状態に留まるように構成されている、請求項10又は請求項11に記載の部品。
【請求項13】
前記補助装置から前記保持アームにかかる力は、前記保持アームをその開放配置に回転させる角度とはなっていない、請求項12に記載の部品。
【請求項14】
前記保持アームは、前記ポートの係合軸に対して略垂直の軸を中心に回転可能である、請求項1から13のいずれか1項に記載の部品。
【請求項15】
前記保持アームの回転軸は、前記ポートの係合軸からは横方向にずれている、請求項14に記載の部品。
【請求項16】
前記保持アームは、前記保持配置において、前記ポートに対する前記補助装置の方向を少なくとも部分的に決定するように構成されている、請求項1から15のいずれか1項に記載の部品。
【請求項17】
前記保持アームは、前記補助装置の方向を1つの所定の方向、又は限られた数の別々の所定の方向を取らせるか、ないしは前記補助装置の方向を1つの限定範囲内の方向、又はいくつかの別々の限定範囲内の方向を取らせるように構成されている、請求項16に記載の部品。
【請求項18】
前記保持アームは前記補助装置の一部を収容するように適合された溝を含み、前記補助装置は、前記ポートに対する前記溝の方向で画定される、許容される2つの方向の内の1つ、または許容される2つの限定範囲内の1方向を取ることができる、請求項16または請求項17に記載の部品。
【請求項19】
前記補助装置は前記溝内に嵌合によって収容される、請求項18に記載の部品。
【請求項20】
前記蓋は、前記補助装置と係合する前記保持アームの部分と、前記保持アームが回転可能に取り付けられる端部との間に配置される、請求項1に記載の部品。
【請求項21】
本発明による呼吸装置の前記部品は、単一の一体部品として製造される、請求項1から20のいずれか1項に記載の部品。
【請求項22】
前記開放配置において、前記保持アームは停止する、請求項11から21のいずれか1項に記載の部品。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか1項に記載の部品と、
補助装置と、
を備える呼吸装置であって、
前記補助装置は、前記ポートに収容されるようになっていて、前記保持アームがその保持配置において前記補助装置が前記ポートから外れることを阻止するように作用する、呼吸装置。
【請求項24】
前記呼吸装置は、呼吸回路を含み、前記ポートと前記保持アームを備える前記部品は前記呼吸回路の一部品である、請求項23に記載の呼吸装置。
【請求項25】
前記ポートと前記保持アームを備える前記部品は、前記呼吸回路の吸気分肢又は呼気分肢の部分を形成する、請求項24に記載の呼吸装置。
【請求項26】
前記補助装置はセンサ装置である、請求項23から25のいずれか1項に記載の呼吸装置。
【請求項27】
前記センサ装置は、少なくとも一部が前記ポートと係合するようになったセンサ筐体と、前記センサ装置を前記ポートに係合させるときにユーザが把持するのに好適な把持部と、を備える、請求項26に記載の呼吸装置。
【請求項28】
前記把持部は前記保持アームに係合するように構成されている、請求項27に記載の呼吸装置。
【請求項29】
呼吸装置の部品を製造する方法であって、
包囲壁で画定されるガス流路と、
補助装置を収容するように構成された前記包囲壁中のポートと、
開放配置と保持配置との間を可動である保持アームと、
を備え、
前記開放配置においては前記補助装置を前記ポートに係合可能であり、前記保持配置においては、使用時に前記保持アームは前記補助装置が前記ポートから外れることを阻止するように作用し、閉鎖配置においては前記保持アームに設けられた蓋が前記ポートに係合し、
前記保持配置において前記補助装置に係合する前記保持アームの一部と、前記ポートと係合する蓋とは、前記保持アームの異なる部分に設けられている部品を射出成形することを含む方法。
【請求項30】
前記部品は単一の射出成形工程で形成される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記部品は、単一材料により一体構造として形成される、請求項29又は請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記部品は、単一の一体部品として形成されるが、2つ以上の異なる材料から成る、請求項29または請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は呼吸装置に関し、特に、センサプローブなどの補助装置挿入用のポートを有する呼吸装置の部品に関する。
【背景技術】
【0002】
医用呼吸装置は一般に、相互に接続されて吸気ガス及び/又は呼気ガスを搬送するガス流路を形成する、いくつかの協働部品から成る呼吸回路を含んでいる。この呼吸回路のガス流路には、例えば呼吸回路中のガスの温度、流速、及び/又は湿度などをモニタするための補助装置を係合することが望まれることが多い。具体的には、補助装置は典型的にはセンサプローブであり、呼吸回路のガス流路内のガス流にさらされる。
【0003】
補助装置を呼吸回路のガス流路に係合させるために、通常、呼吸回路を構成する1つまたは複数の部品内に好適なポートが設けられ、このポートが補助装置を収容し、その補助装置が呼吸回路内のガスに曝されるようになっている。ポートは一般に流路の壁の開口の形となっていて、そこから円筒スリーブが外へ突き出ている。円筒スリーブは一般的に、締り嵌めによって補助装置を受けるようになっており、そうして補助装置が呼吸回路内のガス流に露出される。ただし、締り嵌めが補助装置を保持するための唯一の手段となっていることから、装置がポートから外れるリスクがあり、この従来構成は必ずしも全面的に満足のいくものではない。
【0004】
これに替わる構成として、国際公開第2004/108218号パンフレットでは、開口に弾性保持アームを設け、それが補助装置の本体上の対応する出っ張りにスナップフィットで係合してポートに補助装置を保持して、補助装置が開口内に固定されるようになった構成が開示されている。ただしこの構成は、補助装置が保持アームと係合するための特定の出っ張り構造を持つ必要があり、また、補助装置の挿入、取り外しがユーザに取って煩わしくなる。
【0005】
更に、補助装置が効果的に機能するためには、特定の方向、または特定の範囲内の方向に補助装置を配置しなければならないタイプのものもある。このタイプの補助装置の具体例としては、流れセンサプローブがある。流れセンサプローブを保持、配向させる従来の構成は、締り嵌めでプローブを受ける円筒形ポートと、それに付随した、挿入時にプローブ部分と係合する構造とを備え、ポートに完全に係合させるためにはプローブを特定の方向に向けることが必要となっている。
【0006】
ただしこれらのタイプの構成は完全に満足のいくものでなかった。特に、欧州特許第1374940号明細書に開示の部品は、プローブ上のV字形の位置決め突起を利用し、これがプローブと係合するポートの壁内の対応するV字形の位置決め窪みの中に収納されるようにして、流れセンサプローブを配向させるように構成されている。プローブはこの構成では特に外れやすい。更に、米国特許出願第2009/0282896号明細書に開示されている部品は、プローブの配向を決定する壁部分をポートに隣接して設けることにより、流れセンサプローブを配向させるように構成されている。具体的には、壁の一部がプローブのハウジングに突き刺さるようになっていて、プローブがポートに対して、従ってガス流の方向に対して特定の方向になっていないとポートと係合しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/108218号
【特許文献2】欧州特許第1374940号
【特許文献3】米国特許出願第2009/0282896号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、従来技術に関する上記、及び/又はその他の問題点を克服、あるいは実質的に軽減する、改良された呼吸装置部品が考案された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、包囲壁で囲まれたガス流路と、補助装置を収容するように適合された、壁にあるポートと、開放配置と保持配置との間を可動である保持アームと、を備え、開放配置においては補助装置をポートに係合可能であり、保持配置においては、使用時に保持アームは補助装置がポートから外れることを阻止するように作用する、呼吸装置の部品が提供される。
【0010】
本発明による呼吸装置の部品は、主に、補助装置がポートから外れることを保持アームが阻止し、それにより従来技術の構成に比べて補助装置がポートに保持される確実性が向上するという理由で有利である。更に、本発明では補助装置とポートそのものの間の係合力を低減しつつ、補助装置を確実に保持することができ、使用時において補助装置を挿入したり意図的に取り外したりすることが容易となる。
【0011】
ポートは好ましくは、包囲壁に開口を備え、そこを経由して補助装置がガス流路の内部に延伸するか、もしくはそこを介して補助装置がガス流路の内部に露出される。この開口は最も便利には、略円形の開口である。
【0012】
ポートは好ましくは、係合軸、すなわち補助装置がポートと係合する方向の軸に対して補助装置を整列させた状態に維持する構造を含んでいる。具体的には、ポートが補助装置を収容するための係合スリーブを含んでいることが好ましい。係合スリーブは最も便利には、略円筒形の形状をしている。係合スリーブは、開口の周囲に包囲壁から直立した略円筒形のカラーで形成されていてもよい。係合スリーブは好ましくは補助装置を嵌合によって収容するようになっている。
【0013】
ポートは、補助装置の係合後の引き抜きを阻止するようになっていてもよい。それに加え、又はその代わりに、ポートは、係合後の補助装置の横方向及び回転方向への移動を阻止するようになっていてもよい。保持アームが補助装置の取り外しに対する抵抗を追加することに加えて、これらの特徴は組合せ又は単独で、補助装置を保持アームとの好適な係合位置に維持し、それによって補助装置を含む呼吸装置の組立を容易にしてもよい。
【0014】
従ってポートは補助装置を締り嵌め、つまり摩擦嵌合によって収容するようになっていてもよい。ポートには、例えば略円錐台形のテーパ状の内表面があって、補助装置のポートへの係合を容易にしてもよい。ポートには表示部が含まれていて、ポート内での補助装置の位置合わせを容易にしてもよい。
【0015】
保持アームは、形状に柔軟性を持っていてもよい。ただし、より好ましくは、保持アームに充分な剛性があって、開放配置と保持配置とで実質的に同じ形状となるようになっている。
【0016】
保持アームは好ましくは、開放位置においては補助装置がポートと係合することを妨げず、最も好ましくは、係合時に補助装置に触れない構造となっている。ユーザが手動で保持アームを保持配置に動かすまでは、保持アームは開放位置に留まるようになっていてもよい。例えば、保持アームは開放位置で停止していてもよい。
【0017】
保持アームは好ましくは開放配置と保持配置との間を回転可能である。開放配置と保持配置との間の回転角は、好ましくは少なくとも30度であり、より好ましくは少なくとも60度であり、最も好ましくは少なくとも90度である。保持アームは好ましくは部品の外部表面に一端が回転可能に取り付けられており、その一端を中心に枢動可能となっている。保持アームは保持配置に向かってガイドされてもよい。具体的には、保持アームは好ましくは部品の外部表面にヒンジで取り付けられていてもよい。保持アームは好ましくは、保持配置においては補助装置の外部表面と係合している。
【0018】
好適な実施形態においては、保持アームは好ましくは、保持配置において補助装置の外部表面と接触している。保持アームは好ましくは、保持配置において補助装置を把持又は捕捉している。例えば、保持アームの少なくとも一部は弾性材料で形成され、補助装置の少なくとも一部を内側に収容するようになっており、保持アームの弾性部分内に補助装置を収納する場合、係合時に弾性部分が曲がって補助装置を受け入れ、保持アームが補助装置と完全に係合すると、弾性部分が補助装置を把持または捕捉するようになっている。保持アームはスナップフィットによって補助装置と係合してもよい。
【0019】
保持アームは、アームの保持部分をポートとは反対側の補助装置表面に配置することによって、補助装置がポートから外れることを阻止するようになっていてもよい。保持配置においては、保持アームの一部はポートに直接対向するように配置されてもよい。これに加えて、又は代わりに、保持配置においては、保持アームの一部がポート入口の面に実質的に平行な面内にあって、この保持部分がポートへの入口に実質的に対向していてもよい。
【0020】
この配置を達成するために、保持アームが曲線部分を持ち、この曲線部分が使用時に補助装置と係合するようになっていてもよい。一実施形態において、保持アームは全体が略弓形となっている。この構成では、保持配置において保持アームが補助装置を把持又は捕捉することの有無に拘らず、補助装置がポートから外れることを阻止する保持アームを実現することができる。具体的にはこの好適な実施形態において、補助装置がポートから外れる方向へ動くと、保持アームは補助装置を把持または捕捉することなしに、保持配置に留まり、特に補助装置と係合した状態に留まるように構成されていてもよい。例えば、補助装置からアームにかかる力は、保持アームをその開放配置に回転させることのない角度であってよい。
【0021】
保持アームは好ましくは、ポートの係合軸に対して略垂直な軸の周りを回転可能である。この回転軸は好ましくはポートの係合軸からは横方向にずれており、かつポートの入口からも長手方向にずれていてもよい。保持アームは、ガス流路の壁から延伸する部品部分にヒンジで取り付けられていてもよい。前記部品部分は最も好ましくは、ポートの係合軸に略直交するガス流路の直径面に略整列する。保持アームは腹板(ウェブ)の形態となっている取付台にヒンジで取り付けられてもよい。
【0022】
保持アームは、ユーザによる保持アームの移動を支援、特に保持配置において補助装置から保持アームを外すことを支援する構造を含んでいてもよい。例えば、保持アームは保持配置において補助装置に対して外側に突き出た端部を、最も好ましくは補助装置に対して、保持アームの回転可能に取り付けられた端部とは反対側に含んでもよい。
【0023】
好ましくは、保持アームは、保持配置において、ポートに対する補助装置の向きを少なくとも部分的に決定するように適合されている。具体的には、保持アームは補助装置の方向を1つの所定の方向、又は限られた数の別々の所定の方向を取らせるように適合されていてもよい。その代り、又はそれに追加して、保持アームは補助装置の方向を1つの限定範囲内の方向、又はいくつかの別々の限定範囲内の方向を取らせるように適合されていてもよい。この特徴は、保持アームが保持配置において、補助装置がポートから外れることを阻止するとともに、少なくとも部分的に補助装置の配向を決定するように作用するので、特に有利である。従って、配向決定のための個別の構造を必要としない。
【0024】
保持アームは好ましくは、ポートに対する補助装置の許容配向を画定する構造を含んでいる。この好適な実施形態において、保持アームは補助装置の一部を収容するように適合された溝を含み、ポートに対する溝の方向によって、補助装置が、許容される2つの方向の内の1つ、または許容される2つの限定範囲内の1方向を取ることができる。補助装置を2つの所定方向に限定するために、補助装置は好ましくは溝の中に嵌合によって収容される。例えば、補助装置は半円筒形部分を有し、その部分が保持アームの対応する半円筒形のみぞに収容される。
【0025】
保持アームは、好ましくはポート用の蓋も含み、保持アームは蓋がポートと係合する閉鎖配置に向かって可動となっている。この特徴は、ポートのための個別の蓋を必要とせず、蓋が装置から外れるリスクが低減され、かつ製造コストの低減にもなるので、特に有利である。
【0026】
蓋は好ましくはポートと係合し、ポートが外気から密閉されるようになっている。蓋はプラグの形状であって、そのプラグの周辺に迫台を持っていてそれが閉鎖配置でポートに当接するようになっていてもよい。これとは別に、蓋が、ポートの周りに嵌合するスリーブとポートへの侵入を塞ぐ端壁から成る形状を持っていてもよい。蓋は一般的に、略円形断面をしている。
【0027】
蓋は好ましくは保持アームの作用面から突き出ている。蓋は、好ましくは補助装置と係合する保持アームの部分と、保持アームが回転可能に取り付けられる保持アームの端部との間に配置される。蓋は、それが突き出ている保持アームの部分に対して傾斜していてもよい。この構成では、保持アームの作用面が、閉鎖配置において少なくともポートの一部を収納するための凹部を含んでいてもよい。
【0028】
包囲壁は好ましくは略チューブ形であり、好ましくは呼吸回路に直列的に含まれるのに好適なガス流路を画定する。具体的には、包囲壁の内径は好ましくは約15〜25mmで、例えば22mmである。包囲壁は好ましくは、ガス流路の両端に標準のチューブ型コネクタを含み、それによって装置を呼吸回路の中に接続することを可能とする。
【0029】
ポートは好ましくはガス流路に対して略直角に整列され、そして好ましくは、直径方向に整列される。したがって、ガス流路内部の中心に対向する。
【0030】
本発明による呼吸装置の部品は、好ましくは呼吸回路の部品である。具体的には、部品は好ましくは呼吸回路の吸気分肢又は呼気分肢に含まれることに適している。
【0031】
本発明の更なる態様によれば、上記の部品と、補助装置と、を備える呼吸装置であって、補助装置がポートに収容されるようになっていて、保持アームがその保持配置において、補助装置がポートから外れることを阻止する様に作用する、呼吸装置が提供される。
【0032】
呼吸装置は好ましくは呼吸回路を含み、呼吸装置の部品は好ましくは呼吸回路の部品である。具体的には、部品は好ましくは呼吸回路の吸気分肢又は呼気分肢の一部を構成する。呼吸装置はまた、一般に呼吸回路の吸気分肢にガスを送達するためのベンチレータも含んでいる。ベンチレータはまた、呼吸回路の呼気分肢からの呼気ガスも受け取ってもよい。
【0033】
部品は、呼吸チューブ、加湿チャンバ、及びその他のコネクタなどの呼吸回路の他の部品を一緒に結合するためのコネクタであってもよい。特定の実施形態において、部品は、加湿チャンバの出口と、加熱線付き呼吸チューブであり得る呼吸チューブとを接続するためのコネクタである。このコネクタは、好ましくは加湿チャンバの出口に接続するための第1のガス流路と、第1のガス流路に対して例えば約90度又は約135度の角度を成す、呼吸チューブに接続するための第2のガス流路とを持つ。ここで、ポートが好ましくは第1のガス流路内で、好ましくは第2のガス流路とのインタフェースに隣接して設けられる。第2のガス流路は又、加熱線付き呼吸チューブと共に使用される電気コネクタを受けるのに適した開口も含んでいてよい。
【0034】
補助装置は、特に本発明による呼吸装置の部品が呼吸回路の一部を構成する場合には、センサプローブなどのようなセンサ装置であってよい。センサ装置は一般的に、センサ筐体を備え、少なくともその一部がポートに係合するようになっている。センサ装置は好ましくは把持部分も含んでおり、これはセンサ装置をポートに係合させるときにユーザが把持するのに適している。把持部は、好ましくは保持アームに係合するようになっており、又、例えば、センサ装置においてポートとは反対側に略半円筒状の面を持っている。
【0035】
本発明で使用するのに好適な、特定のタイプのセンサ装置は、センサ筐体に対して直角に配置された、例えばT字型の構成の把持部を備えている。
【0036】
センサ装置は、呼吸装置の部品の構造と協働して、ポートに対するセンサ装置の配向を少なくとも部分的に決定する構造を含んでもよい。具体的には、協働構造によって、保持アームによって許容される所定の個別の方向、又は個別の限定範囲の方向の中から、センサが取る特定の方向を決定することができる。あるいは又、センサポートに表示部が含まれていて、ユーザが例えばポートそのものなどの部品上の対応する表示に整列させて、ポートに対する、従ってガス流路に対する、センサの正しい方向を示すようにしてもよい。センサが又、停止構造を含んでいて、これによりポートの係合軸に沿ってセンサ装置の位置を決定してもよい。
【0037】
本発明による呼吸装置の部品は、単一の一体部品として製造されてもよい。通常、部品はプラスチック材料でできていて、射出成型法で製造されることが多い。
【0038】
本発明の更なる態様によれば、呼吸装置の部品を製造する方法が提供され、この方法は、包囲壁で画定されるガス流路と、補助装置を収容するように適合された包囲壁中のポートと、補助装置をポートに係合し得る開放配置と、使用時に補助装置がポートから外れることを阻止するように作用する保持配置との間を可動である保持アームと、を備える部品を射出成形することを含む。
【0039】
この部品は好ましくは単一の射出成形工程で形成される。この部品は、単一材料により一体構造として形成されてもよい。これとは別に、この部品は、単一の一体部品として形成されるが、2つ以上の異なる材料から成っていてもよい。具体的には、マルチショット射出成形又はコモールド(co−mold)成形手法が利用されてもよい。
【0040】
次に、本発明の好適な実施形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図4】プローブを組み立てた状態のコネクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に本発明によるコネクタを示す。これを全体として10で表す。コネクタ10は、例えば一体構造的に形成された単一部品として、好適なプラスチック材料で射出成形されている。コネクタ10は上部流路20と下部流路30を含んでいる。
【0043】
図1に示すコネクタ10は、使用時の方向になっている。具体的には、下部流路30の下端は、使用時には加湿チャンバの上向きに突き出た出口ポートに接続され、上部流路20の上端は、加湿された吸気ガスを患者へ搬送するための呼吸チューブに接続される。以下の説明において、コネクタ10の“上部”、“下部”というのは、
図1に示す方向にあるコネクタ10に関する表現である。
【0044】
上部ガス流路20、及び下部ガス流路30は略チューブ状の形状であり、下部流路は上部流路の壁の開口から延伸し、上部ガス流路20と下部ガス流路30は互いに135度の角度を成している。
【0045】
上部ガス流路20の上端部分と下部流路30の下端部分とがチューブ状コネクタ22、32を画定し、これらはそれぞれが呼吸回路の別々の部品、具体的には吸気用の呼吸チューブと加湿チャンバの出口ポートとにそれぞれ接続されるようになっている。上部流路20のチューブ状コネクタ22は雄型のチューブ状コネクタとなっており、これはガス流路20の他の部分に比べて大きな外形寸法となっており、又わずかにテーパの付いた外形となっている。下部流路30のチューブ状コネクタ32は雌型のチューブ状コネクタとなっており、そこに接続する部品の雄型コネクタを収容するために、ガス流路30の他の部分よりも内部、外部共に大きな寸法となっている。
【0046】
上部ガス流路20の下端部24は開放されていて、電気ソケットアセンブリ(図示せず)を収容するために、ガス流路20の他の部分よりも内部、外部共に大きな寸法となっている。具体的には、上部流路のチューブ状コネクタ22は、加熱線付き呼吸チューブに接続されるようになっていて、付随する電気ソケットアセンブリが上部ガス流路20の下端部分24に取り付けられるようになっている。
【0047】
上部流路20と下部流路30のほかに、このコネクタ10は補助装置、特にセンサプローブを収容するようになっているポート40と、ポート40及びプローブと協働する保持アーム50とを含んでいる。
【0048】
ポート40は下部流路30の上端で、上部流路20のすぐ傍に形成されている。ポート40は、下部流路30の壁にある円形開口と、その円形開口から外方向に延びる円筒形カラーとから成る。具体的には、ポート40の円筒形カラーは、上部流路20と下部流路30の両方に対して略垂直な方向を向いている。
【0049】
保持アーム50は、上部流路20と下部流路30の外部表面の間に形成された、材料の腹板(ウェブ)、これを符号52で表す、にヒンジで取り付けられている。ウェブ52は実質的に平坦であり、具体的には厚さに比べてはるかに大きな幅と長さを持っている。更に、ウェブ52は、上部流路20と下部流路30の中心の長手軸と同じ面内にある。
【0050】
保持アーム50が、ウェブ52の露出端から延伸する。そこでは材料の厚さが小さくなっている領域がヒンジを画定し、そこを中心に保持アーム50が枢動可能となっている。保持アーム50には内側部分があり、これは実質的に平坦であって、ヒンジから離れる方向に延伸し、その幅はヒンジから離れるとともに次第に大きくなっている。内側部分の先には中間部分があり、これは内側部分とはある角度を成して配置されている。すなわち中間部分は内側部分が延びる面の外に延伸している。中間部分には、作用面から突き出た円筒プラグ58が含まれている。
【0051】
円筒プラグ58はポート40の円筒形カラーに収容されて、ポート40を周囲から閉鎖して密封する。円筒プラグ58は、プラグ58が突き出ている保持アーム50の中間部分に対してある角度を持った方向を向いている。従って、プラグ58のヒンジ側に半円形の凹部59を備えて、プラグ58がポート40に係合する際にポートの壁を収容するようになっている。
【0052】
保持アーム50の中間部分が延びた先は、保持アーム50の外側部分となり、これは中間部分の面の外へ曲がっていて、両端が開放された、半円筒形に近い溝54を作用面内に画定する。保持アーム50の端部にはリップ(唇縁)56が設けられ、曲線的な外側部分から外に向かって鋭角的に曲がっている。
【0053】
上で述べたように、下部流路30の下端は、使用時には加湿チャンバから上向きに突き出た出口ポートに接続され、上部流路20の上端は、加湿された吸気ガスを患者へ搬送するための呼吸チューブに接続される。更に、上部流路20の上端に接続された呼吸チューブは、加熱線付きの呼吸チューブである。これは、内部ワイヤを含み、上部流路20の下端にある電気ソケットアセンブリによる接続を介して、制御装置からの供給電力によって加熱される。
【0054】
制御装置は通常、加湿チャンバの加熱ベース、並びに呼吸チューブの加熱ワイヤを制御し、患者に送達される吸気ガスの温度と湿度を制御する。制御装置は通常、いずれも呼吸回路内に挿入された温度センサと流れセンサからのデータを利用して、加熱ベースと加熱ワイヤを制御する。例えば、温度センサは通常、呼吸回路の吸気分肢内の患者側端部に挿入され、流れセンサは通常、呼吸回路の吸気分肢内の加湿チャンバ側端部に挿入される。
【0055】
図に示すコネクタ10は従って、加湿チャンバから出て、吸気用呼吸チューブに入るガスの流速を計測する、流れセンサプローブを収容するように構成されている。制御装置はこの流れセンサからのデータを活用して、加熱ベースと加熱ワイヤの適切な制御を可能とする。最も簡単には、流速が小さいかまたは全く流れていないことが検出されると、この制御が加熱ベースと加熱ワイヤの動作を停止して、潜在的に危険な過熱を防止する。
【0056】
図3には、コネクタ10のポート40に係合された流れセンサが示されており、これを全体として60で表す。プローブ60は略円筒形の把持部62を備え、その各端部から電線が出ている。プローブ60はまた、把持部62から垂直に延びるセンサ筐体64も備え、プローブ60の全体がT字形となっている。センサ筐体64はポート40の円筒カラー内に嵌合して収容される様になった円筒部と、下部ガス流路20内部に延伸し、上部ガス流路30の内部に直接隣接する、2つの(
図3では1つのみしか見えないが)テーパの付いた端部66とを持っている。
【0057】
プローブ60がポートと係合して、センサ筐体64の円筒把持部分62がポート40の円筒カラー内部に嵌合で収容されると、保持アーム50を回転させてプローブ60と係合させる。具体的には、保持アーム50を回転させてプローブ60の把持部62を、保持アーム50の作用面にある略半円筒形の溝54の中に納める。保持アーム50を回転させてプローブ50との係合を解かない限り、保持アーム50はプローブ60がポート40から外れることを防止するように構成されている。
【0058】
更には、保持アーム50の溝54とプローブ60の把持部62とが相補的になっていることにより、プローブ60はポート40に対して2つの可能な方向のいずれかしかとることができない。プローブ60のセンサ筐体64にはV字型の歯68の形状をした横方向への突起が備えられており、ポート40にはそれに対応する目印がポート40の外側に設けられている。このようにして、ユーザはV字形の歯68をポート40の外側にある対応する目印に合わせてプローブ60の方向を選択し、プローブ60が確実に、取り得る2つの方向の内の1つを正しく取れるようにする。
【0059】
ポート40内のセンサプローブを利用しない呼吸回路においてコネクタ10が使用される場合には、保持アーム50を回転させてポート40に係合させるようになっている。具体的には、保持アーム50を回転させてプラグ58をポート40の円筒形カラーの内部に挿入し、ポート40を閉じて周囲から密閉されるようにする。そのようしてコネクタを含む呼吸回路が、ポート40にプローブ60がない状態で使用されてもよい。