特許第6200331号(P6200331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アヌラーダ,サフの特許一覧

特許6200331花植物をコラージュしたデコパージュに関する改良法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200331
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】花植物をコラージュしたデコパージュに関する改良法
(51)【国際特許分類】
   A01N 3/00 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   A01N3/00
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-557224(P2013-557224)
(86)(22)【出願日】2011年4月25日
(65)【公表番号】特表2014-507466(P2014-507466A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】IN2011000268
(87)【国際公開番号】WO2012120523
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2014年4月23日
【審判番号】不服2016-7116(P2016-7116/J1)
【審判請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】303/KOL/2011
(32)【優先日】2011年3月9日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】513219038
【氏名又は名称】アヌラーダ,サフ
【氏名又は名称原語表記】ANURADHA,Sahu
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アヌラーダ,サフ
【合議体】
【審判長】 黒瀬 雅一
【審判官】 藤本 義仁
【審判官】 吉村 尚
(56)【参考文献】
【文献】 実開平4−601(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 3/00 - 3/02
B01J 20/02 - 20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
花植物のコラージュおよび/またはデコパージュを得る方法であって、
(i)シリカゲル、けい砂およびヨウ素無添加塩を1:1:1の割合で混合した乾燥剤を用いて花植物を乾燥させて工芸材料を作製する工程、
(ii)デコパージュを形成する場合には、ステンシルを用いて工芸材料を切る工程、
(iii)上記工程(i)で作製した工芸材料を物の表面に配置してコラージュを形成する工程、および上記工程(ii)で作製した切った工芸材料を物の表面に配置してデコパージュを形成する工程の少なくとも一方を実施する工程、および
(iv)上記工程(iii)において、さらに接着剤で工芸材料を物の表面に貼り付ける工程を含む方法。
【請求項2】
竹、牧草、雑草、種、茎、蔓、繊維、およびソラウッドのうち1以上を工芸材料とともに物の表面に配置する工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記工程(i)を電気オーブン中で実施し、乾燥した工芸材料を真空下で貯蔵する工程を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
pHを20%低減して植物の老化の進行を抑制できる栄養素として用いられる窒素、リン、およびカリウムを含む有機肥料で花植物を育てる工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
上記工程(i)において、工芸材料を、酸素、光、および湿気を排除した真空下で貯蔵し、工芸材料の変質を抑制する工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
物の表面に配置された工芸材料を樹脂材料中に埋め込む工程を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
硬化剤1重量%を樹脂材料に混合して、熱の発生を低減し、工芸材料における色素の異性化を回避する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
厚紙や紙でステンシルを作製する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
上記工程(ii)において、花植物の花びらを所望の形状に形成する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
上記工程(iii)において、上記工程(i)で作製した工芸材料を物の表面に配置し、上記工程(ii)で作製した切った工芸材料を物の表面に配置して、コラージュおよびデコパージュを形成する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
花植物のコラージュおよび/またはデコパージュを得る方法であって、
(i)シリカゲル、けい砂およびヨウ素無添加塩を1:1:1の割合で混合した乾燥剤を用いて花植物を乾燥して工芸材料を作製し、電気オーブンで乾燥させる工程、
(ii)デコパージュを形成する場合には、ステンシルを用いて工芸材料を切る工程、
(iii)上記工程(i)で作製した工芸材料を物の表面に配置してコラージュを形成する工程、および上記工程(ii)で作製した切った工芸材料を物の表面に配置してデコパージュを形成する工程、および、上記工程(i)で作製した工芸材料と上記工程(ii)で作製した切った工芸材料との両方を物の表面に配置してコラージュおよびデコパージュを形成する工程のいずれかを実施する工程、
(iv)上記工程(iii)において、さらに接着剤を用いて物の表面に工芸材料を貼り付ける工程、および
(v)物の表面に配置した工芸材料を樹脂材料中に埋め込む工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、花植物のコラージュデコパージュにおける改良方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、乾燥押し花で、物を作製/装飾する方法は、すでに知られている。
【0003】
前述の周知の方法には、芸術的な方法または他の望ましい方法で、ドライフラワーを、物の上、多くの場合は紙の上に貼ることからなる。
【0004】
前述の周知の方法は、以下に示すいくつか不都合な点がある。
【0005】
1.得られる乾燥させた植物の、色、質感、形状、滑らかな輪郭線において、品質が非常に劣る。
【0006】
2.また、種、雑草、牧草、竹、蔓、ソラウッド、天然繊維、その他乾燥させた植物性の要素は用いられない。それらは、経費を削減するため、および、コラージュの定義を満たすための、変質しやすい材料の植物を使った、より好ましいデザインを導き出すために不可欠である。
【0007】
3.得られる製品は、ハンドクラフトの技巧の観点からすると、とても粗悪であり、デザイン性に劣る。それゆえ、需要者に対して魅力的ではない。
4)植物を切るためにステンシルを使用することは、今まで例がなく、したがって、植物のデコパージュは新しい発明である。
【0008】
4.植物のデコパージュとコラージュは、いままでにないものである。
【0009】
5.従来の植物を乾燥させ、圧力をかける技術を用いないことにより、乾燥させた植物における色の保持と、質感における不都合を、ほぼ4倍の期間にわたって免れることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明によれば、シリカゲル、けい砂、およびヨウ素無添加塩を混合した乾燥剤を使用することが本願発明の核心であることがわかった。
【0011】
従来技術の乾燥押し花に対して、花のコラージュデコパージュというコンセプトに沿った、乾燥技術とクラフト技巧の両方が、新しい発明である。
【0012】
花の樹脂積層体が、発明である。
【発明の効果】
【0013】
つまり、本願発明の(花の樹脂積層)方法を採用することにより、乾燥させた植物を、硬化させた樹脂に永久に埋め込んで、それゆえ余分な空気がないようにして、色素の酸化を阻止して劣化を抑制する。
【0014】
本願発明においては、乾燥させ圧力をかけた花や植物を、花のデコパージュを作るためにステンシルを使って、または、花のコラージュを作るために、ステンシルを使わずに、竹、牧草、雑草、種、茎、蔓、繊維、ソラウッドのような他の植物を組み合わせることで、紙の上のような表面に手細工する。乾燥させた植物の色、質感、形状は優れた品質で、長期にわたってより安定的である。上記の花のコラージュデコパージュの改良法によって作られた花の工芸品は、品質に劣ることはなく、視覚により訴えるものである。
【0015】
このようにして、本願発明の方法により対象物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明によれば、以下を含む花のコラージュデコパージュの改良法(圧力をかけたドライフラワークラフトの改良法)が提供される。
【0017】
(i)カード状の紙のステンシルを使って、工芸材料(乾燥した植物)を手作業で切ること、および、芸術的な方法を含む望ましい方法で、竹、牧草、雑草、種、茎、蔓、繊維、ソラウッドのような他の植物性の要素を組み合わせて、製品の表面にそれらを貼ること。これは、植物を乾燥、貯蔵している間、そして植物に細工を施している間も、カロテノイドとアントシアニンの酸化と異性化を抑制すること、それにより退色を抑制することを含む、より良い乾燥、圧縮技術を含む。
【0018】
(ii)厚紙や紙のような安価な材料でステンシルを作ること、そして手作業で切り抜き(モチーフ)を作ること。
【0019】
(iii)花びらを望ましい形に形作って、同時に、周知のpHの低いアルカリ性の接着剤で貼り付けること。これは、花をコラージュデコパージュする前に、シリカゲル、けい砂、およびヨウ素無添加塩(1:1:1の割合)を混合した乾燥剤を用いて、電気オーブンまたは電子レンジで植物を乾燥させることを特徴とする。
【0020】
花を乾燥させる方法には、一般に乾燥剤と呼ばれる、湿気を取り除くようなもので植物を覆うことが含まれる。
【0021】
乾燥は、従来の電気オーブンでシリカゲル乾燥剤混合物の中で3日間かかる代わりに、電子レンジの中で24時間未満、真空吸引容器の中の乾燥した冷暗所で貯蔵することで、およそ1、2時間短縮できる。
【0022】
有機肥料は、pHが20%低くなるように、栄養分として窒素、リン、カリウムを含むことで、乾燥させた植物における(バイオ生理学系と)色の安定性と植生のための構造的な要素を、均一に比較的入手しやすくなり、それは、花のコラージュデコパージュにとって最も重要である。
【0023】
前述の有機肥料は、植物の構造とそのバイオ生理学系の酸性度を20%削減するために用いられ、老化の進行を抑制することで、良好な天然色の質感を得られる、有機肥料で育てた植物を乾燥させたものは、質感、色が良好で、工芸材料として乾燥させた植物よりも、長期安定性においておよそ4倍優れる。
【0024】
上記の条件は、カロテノイド、アントシアニン、その他の色素の酸化と異性化を抑制し、植物を乾燥、貯蔵している間、そして植物に細工を施している間の退色を抑制する。
【0025】
貯蔵中の、酸素、光、湿気を除去することにより、乾燥させた植物や工芸品の変質を抑制することが容易になる。つまり、乾燥した冷暗所で真空貯蔵することが、もっとも重要である。
【0026】
クロロフィル、フラボノイド、カロテノイドの3つの異なる色素は、異なる割合で混合されて、花に色と濃淡が生まれる。
【0027】
フラボノイドは、色素性アントシアニンと、無色の補助色素の2つの群に区別される。
【0028】
(i)アントシアニン色素は、そのpHによって、赤、紫または青の範囲の色を発色する。アントシアニンは、一部は赤色や紫色のもととなる。
【0029】
(ii)カロテノイドは、黄、紫、橙色を与える。300種類のカロテノイドがあるが、主なものは、リコピン、b−カロテン、a−トコフェロールである。
【0030】
3つのうちで、クロロフィルは、アントシアニンやカロテノイドと比べて、より安定性の高い分子構造を有する。
【0031】
アントシアニンとカロテノイドでは、カロテノイドが構造安定性においてより一層影響を受けやすい。
【0032】
変色は、異性化と酸化の相互作用によるものである。
【0033】
加工中の乾燥させた植物の退色の主な原因は、(酵素的な、および非酵素的な)異性化と酸化である。
【0034】
これは、さまざまな原因が影響している。
【0035】
湿気の存在によって、全ての植物に自然の形で存在する、全ての種類の色素の破壊が促進される。
【0036】
b−カロテンとa−トコフェロールは、ともに酸化により破壊される。この反応は、紫外線と熱によって促進され、光化学の反応となる。
【0037】
茎葉にあるb−カロテンの分解は、最初は酵素反応で、リポキシゲナーゼ系によるものである。リポキシゲナーゼは、イソ酵素の1つであるが、非常に多種にわたる植物に、さまざまな濃度で存在する。カロテンの酵素による分解は、茎葉(植物)を、調理中に切り刻んで加熱しているとき、または乾燥中に始まる。切り刻んだりすり砕いたりすることで、酵素による分解は促進され、周りの温度や湿度を上げればなおさらである。
【0038】
乾燥中における、b−カロテンとa−トコフェロールの損失は、異性化と酸化によるものと等しくなり得る。
【0039】
カロテノイドの異性化による変質
【化1】
b−カロテンの構造
【0040】
結論として、シスとトランスの2つの異性体があることによって、熱力学的、動力学的定数、および色の特性にも相当な変動があることが説明できる。提示したこれらの特性は、分子をモデル化したものを用いて、色素の三次元構造を考慮することで、説明することができる。
【0041】
上記の化学式は、もっとも多く存在するカロテノイドの1つである、ベータカロテンの構造を示したものである。分子中に単結合と二重結合が交互にある構造は、2つのベンゼン環をつなぐ炭化水素鎖上にある。二重結合の電子が、実際に炭化水素鎖を通って移動することで、この分子が効果的に光を吸収できるのである。二重結合と単結合が交互にあるこの長い構造は、π電子がポリエン鎖の全長にわたって効率的に非局在化した共役構造を構成する。この特徴により、分子の形状、化学的な反応性、および光吸収特性を生じ、つまりカロテノイドの色が生じる(Britton, 1995)。カロテノイドが発色するためには、少なくとも7個の共役二重結合が必要である。カロテノイドのポリエン鎖の二重結合は、それぞれ、トランスとシス幾何異性体の2つの構成の中にあり得る。ほとんどのカロテノイドは、本質的優勢的にあるいは完全に、全てトランス形(安定性)で生じる。
【0042】
ポリエン鎖は、カロテノイドの、酸化や幾何学的な異性化の影響を受けやすいなどの不安定性の原因となる。
【0043】
熱、光、酸は、トランス−カロテノイドからシス型のベータカロテンへの異性化を促進する。π電子がポリエン鎖の全長にわたって非局在化している共役構造により、カロテノイドの分子の形状、化学的および物理的な反応性、抗酸化特性を生じる。この構造は、熱、光、アルカリ性のpH値、酸素、および乾燥工程の影響を受けやすい。
【0044】
付加的なエネルギーが投入されて、その結果、不安定でエネルギーリッチな配置となることで、異性化反応により、全てトランス型である異性体はシス異性体に変わる。熱は、全てトランス型である異性体をシス型にする異性化反応を誘発する。温度の上昇、加工時間の増加に伴って、シス異性体は増加する。全てトランス型である異性体が減少するのと同時にシス異性体が著しく増加するのは、本願発明以外の水分を取り除く方法で植物標本の水分を取り除く場合に見られる。カロテノイドの異性化が進行することで、全てトランス型の異性体が減少するのと同時にシス型の異性体が著しく増加して、構造的な破壊により一連の低分子量化合物となり、乾燥させた植物を脱色させる。乾燥中における、b−カロテンとa−トコフェノールの損失は、異性化反応、および製品の構造的な形状によるものであり、湿気の除去をある程度達成できれば、製品の色の品質低下を最小限にできる。
【0045】
一般的に、水分を取り除いた植物はリコピンの安定性にも劣るので、水分を取り除いた植物は、慎重に加工して、速やかに密閉容器に入れて、不活性の真空状態で貯蔵する。異性化によって、腐敗し乾燥した植物は、脱色または退色する。
【0046】
カロテノイドの酸化と変色
【0047】
カロテノイドが減少する第二の大きな原因は、酵素的、あるいは非酵素的な酸化であり、それは酸素の可用性とカロテノイドの構造に依存する。
【0048】
これが、変質し乾燥した植物を茶色にする、脱色または変質の原因である。
【0049】
乾燥させた植物における色の喪失と褐変(変質)は、カロテノイドの構造が破壊された結果である。カロテノイドが発色するには、少なくとも7個の共役二重結合がその構造に必要であるから、構造が破壊されてしまうと、一連の不安定な低分子量化合物になって、退色する。
【0050】
カロテノイドの化学的な酸化が非酵素的な酸化である場合は、酸化による酸敗をもたらし、メイラード反応による色の損失、さらに、脱色、および質感の変化をもたらす。ここで、カルボニル基とアミノ基との間の反応は、非酵素的な反応であり、フェノール化合物またはメラノイジンとして知られる、色素を褐変させる中間体が形成される。つまり、フェノール化合物から茶色のメラノイジンに異臭を伴いながら変化する結果、乾燥させた植物は空気にさらされることで黒ずむのである。
【0051】
酸化の最初の段階には、エポキシ化反応とアポカロテナールの形成が含まれることが知られている。
【0052】
カロテノイドの酸化によって、エポキシカロテノイド、アポカロテノイド、ヒドロキシカロテノイドが形成され、これらはグリコシラミンとアマドリ生成物であり、さらにこれらは構造の破壊をもたらす不安定な低分子量構造である。グリコシラミンとアマドリ生成物は、メイラード反応において形成される不安定な中間体である。
【0053】
中間体の濃度は、反応条件(pH、温度、時間)によって異なる。低いpH、低い温度、短時間であると、これらの中間体の量が少なくなるので好ましい。
【0054】
pHが4〜7の範囲であると、アマドリ生成物は分解されて、1−、3−デオキシカルボニル化合物になる。鎖状形態の割合と変施光の割合は、温度とpHの上昇に伴って増加する。酸性、または高いpHは、不安定な構造の生成物である中間体の割合に影響を与える。
【0055】
茶色の(腐敗した)構造の割合は、pHを下げることで小さくすることができる。
【0056】
カロテノイドの酵素による酸化は、ポリフェノールオキシダーゼによるものであり、酵素による褐変の原因となる。酵素のリポキシゲナーゼは、酸化による酸敗の原因となる。酵素のリパーゼは、脂肪分解性の酸敗の原因となる。酵素のプロテアーゼは、ゲル化、フレーバー、異臭、茶色の色みへの変化の原因となる。
【0057】
この酸化は、大気中の湿気/酸素の存在、高いpH値または酸性の条件、および温度変化により促進される。
【0058】
適切な保管が実施されなければ、いずれの酸化によっても、乾燥させた植物は褐変し、その酸敗により悪臭が生じる。
【0059】
したがって、低い温度、低いpH、暗所、および真空貯蔵の条件は、乾燥させた植物と、永久的な貯蔵のために仕上げた工芸部品を保存するためには、非常に重要である。
【0060】
2つのタイプの色の変質がある。1つ目は、異性化による退色で、2つ目は、乾燥させた植物の腐敗と悪臭を伴って色と質感を褐変させる、酵素的および非酵素的な酸化である。
【0061】
したがって、乾燥させ圧力をかけた乾燥植物のための、本願発明の科学技術における技術的な改良を、以下に示す。
【0062】
1.塩処理は、吸収作用により(シリカゲルを混ぜた乾燥剤の中で)植物の湿気を除去し、カロテノイドの変質を抑制するが、それは、短時間で、45〜47度という低い温度で速く乾燥させることが容易にできるからである。
【0063】
2.カロテノイドの酸化を回避するために、酸素への暴露量を最小限にすることは重要で、したがって、真空貯蔵、冷温、および湿気のない条件は、未加工の材料を保存するためにはもっとも重要である。
【0064】
3.45〜47度の低温で素早く乾燥させることは、色を維持するのに最も好ましい。
【0065】
4.接着剤、乾燥のための吸い取り紙、および貯蔵条件のpHが低いことは、もっとも重要である。
【0066】
5.光と酸素存在下での光化学的な反応により、カロテノイドの構造が分解されて、すなわち色が失われるので、乾燥、貯蔵している間は光のない条件にすることが、もっとも重要である。カロテノイドやアントシアニンの色素は全て、日光が当たることで、クロロフィルと共に、光合成において活発な役割をするような光吸収特性を有する。
【0067】
6.植物のバイオ生理学的な組織や構造において酸性度が20%少ない、有機栽培された植物。
【0068】
以下は、本願発明の乾燥、加圧工程で得られた、色彩豊かで質感の良い乾燥植物である改良した工芸材料を用いた、花植物のコラージュデコパージュという科学的な工芸の方法論に対応する本願特許請求の範囲の第2の部分である。
【0069】
デコパージュとは、表面に切り抜きを貼り付けて装飾する技法のことである。コラージュとは、表面にさまざまな材料や物を貼り付ける、芸術的な構成のことであり、さまざまな植物由来の非啓発的な線や色が用いられることもある。
【0070】
我々は、花のデコパージュだけ、花のコラージュだけ、あるいは、第3の選択肢として、工芸品の応用としてデザイン工程おいて両者を組み合わせることができる。
【0071】
花のデコパージュ:
花のデコパージュとは、工芸材料(乾燥植物)を(ステンシルを用いて)切って、対象とする表面や製品の上に貼り付ける技法であり、竹、牧草、雑草、種、茎、蔓、繊維などの他の特別な植物材料を組み合わせた場合には、花のコラージュを形成する。
【0072】
初めて、我々は花植物のコラージュデコパージュを考え付いた。
【0073】
乾燥させて押し花にした花びら、葉、ソラウッド、葉脈だけの葉、天然繊維を(切り抜きとして)切ること、それらを芸術的に組み合わせて、さらに、コラージュを作成するのに特に効果的な乾燥状態の竹、牧草、雑草、蔓、種、茎、およびその他の植物と共に貼り付けること、すなわち両者を組み合わせた形態が、花植物のコラージュデコパージュである。
【0074】
花のデコパージュクラフトにおける主な技術は、乾燥させた植物を、芸術的な方法で、ステンシルを用いて切り、貼り付けることにすぎない。
【0075】
デコパージュとは、表面や、手作りの紙、木、ガラス繊維などの物に切り抜いたものを配置して貼り付けることであり、創作的な装飾として用いられる。コラージュとは、表面に貼り付けられた、さまざまな材料や物の芸術的な組み合わせであり、さまざまな植物由来の非啓発的な線や色を用いることもある。
【0076】
我々は、乾燥させた植物、特に花びら、葉、天然繊維、ソラウッド、葉脈だけの葉等について、繰り返し同じような切り抜きを作るために、ステンシルを用いる。
【0077】
・最も安価な材料は、厚紙のような硬化紙であるが、もしそのステンシルを何度か使用する場合は、はじめの数回は何度でも使えるステンシルのように最初の図案を複製できるが、その後はおそらく損傷して、もはや同じデザインを正確に複製することができなくなることを覚えておかなければならない。
【0078】
以下は、ステンシルを作成する方法である。
【0079】
・シート(カード状の厚紙)の上に、デザインを描く、あるいは写し描く。それから、その内側を、新しいクラフト用の鋏か刃で注意深く切る。
【0080】
デコパージュ作りにおいて、形を作るために必要な道具には、鋭利で先の尖った鋏が含まれる。鋭利で、先端の曲がった爪切り用鋏は、複雑な仕事のために選ばれることがある。好ましい明るさで視界が良いことも、全体の形状や細かな部分がゆがんだり欠損したりしないように、正確に形を切り取るのに必要である。
【0081】
できるだけ正確に、モチーフを切り出して、花びらを形作って、滴、ハート、線、卵形、円、その他の望ましい形にする。小枝、葉、蔓、その他の自然のアイテムも、バランスをとるために加えられるものとして重要なこともある。
【0082】
乾燥させた植物(花と葉)を実際に切るときは、少しでも良好な切り口とすることのできる鋏を用いるべきである。鋏、カミソリの刃、ステンシルナイフ、鋭利な切断道具は全て、切るときは、ななめの角度で持つべきである。
【0083】
接着剤を用いることで、アイテムが、気泡やしわがないように平らに配置されること保証されるので、貼り付けは重要である。理想的には、切り抜きは表裏逆に、きれいな紙またはプラスチックのシートに配置されて、表面の裏側全体にわたって、針でそっと貼り付けられる。全ての点、先端、および端は、完璧に配置されるように、覆われるべきである。配置のイメージで遊んでみると、すべての貼り付けが終わった最後には、望ましい出来栄えとなる。
【0084】
表面に植物を貼り付けたり配置したりする道具は、右手でペンのように持てる6インチまでの長さの針である。
【0085】
切り抜いて接着剤を付けた植物を表面に張り付けて、望ましい花の図案を再現することができる。
【0086】
貼り付ける前に、全ての花びらを、1輪の花のように、1度に1枚ずつ、整えるように切る。
【0087】
乾燥させた花の花びらを1枚ずつ切って、望ましい花の図案になるように中心から花びらをつなぎ合わせて貼る。竹、小枝、葉、およびその他の自然のアイテムも、バランスをとるために加えられるものとして重要なこともある。これが植物のコラージュである。
【0088】
細工を施すどの段階においても、乾燥させた植物の脱色を避けるために、花の貼り付けには、中性のpHの樹脂接着剤を使用することがとても重要である。
【0089】
花のコラージュ。
【0090】
この場合にも同じ貼り付けの技法が用いられるが、花びらや花を切る必要はなく、それらは元の形や大きさのまま用いることができる(ステンシルは必要ない)。そして、それらは、技術的に、花のコラージュとなる。わずかに切り整えて調整することは必要だが、違った形を作り直す必要はない。さらに、種、雑草、牧草、竹、蔓、その他の乾燥させた植物の要素を用いる。
【0091】
植物のコラージュとは、表面や物において、材料が組み合わさって質感や視覚的におもしろい配置を作り出すように、たくさんの異なる植物をどこに配置するかを決めることである。
【0092】
花の種類には、形や色に関して多様性があるため、花は独創的であるだけでなく、美しく、優雅でもある。
【0093】
本願発明の方法によれば、花の積層体は、ガラス、ガラス繊維、アクリル、木、陶磁器、およびビニールなどの表面に形成することができる。
【0094】
1)平らな表面(180)で作業をし、表面は、滑らかで、乾いており、きれいで油分のないようにすべきである。
【0095】
2)花や他の植物は、型やデザイン通りになるように貼り付ける。その表面において、貼り付けは非常にしっかりすべきであり、さもなければ樹脂の中で剥がれたり、めくれたりして、永久にそのデザインは台無しになる。
【0096】
3)仕上がりが良くないので、雨季は花の積層体を作成するのは避ける。
【0097】
4)乾燥させた花を、表面に仕上がりよく貼り付けてデザインする。
【0098】
5)ヘアドライアーを用いて、花を貼り付けた後の積層体の表面に風を吹きつけて、表面を乾燥させ、不要な粒子を除去する。花や他の材料がきちんと貼り付けられていない場合には、再度貼り付ける(修理)。
【0099】
6)花、接着剤、および積層体そのものにある、最後のわずかな湿気を取り除くために、花の積層体を1時間、直射日光にあてる。
【0100】
7)積層体の花の上に、積層体よりもおよそ4インチ大きい、延伸させた分厚いセロファンを置いて、手順通りに進めやすくする。積層体が安全に乾燥しきるために、セロファンの四隅を重りで抑える。セロファンを外して、進める。
【0101】
8)硬化剤MEK(過酸化物の硬化剤)2gを、予め混合した樹脂(エポキシ樹脂)200gに混ぜ合わせ、十分に混合する。混合物の上に形成され得る泡は、吹き払う。泡は、除去すべきであり、さもなければ、泡により積層体上に孔が生じる。樹脂は、液体の硬化剤とともに混合した、透き通ったポリエステル材料であり、乾燥すると硬く透き通る。
【0102】
使用する樹脂は、予め反応を促進させたポリエステル樹脂であって、分解するとスチレンモノマーになる。高分子化は、アセチルアセトン過酸化物またはメチルエチルのいずれかの硬化剤を、樹脂に添加すると完了する。必要な硬化剤の量は、樹脂に対して1%である。
【0103】
花の色を維持するために、花の積層体に対して、たったの1%を添加する。もし、1%よりも多く添加された場合は、積層工程の間に樹脂が化学的に反応して、熱が発生し、花の色があせていく。(熱の発生により、色素が異性化して花が変色する。)乾燥には3〜4時間余計にかかるが、好ましい仕上がりとなる。
【0104】
9)花のパネルの中央に樹脂混合物を注ぐ。セロファンで覆う。
【0105】
10)手の力でスクイジーを使って、樹脂を素早く平らに塗り広げ、泡が無いようにする。中央から外側に向かって塗り広げる。コーティングが乾ききる前に、気泡は全て除去する必要がある。樹脂を塗り広げて圧縮するのに、圧力をかけてもよい。硬化するまでに15〜30分かかる。
【0106】
11)樹脂が硬化する工程の間、セロファンが持ち上がらないように、積層体の隅には同じ重さの重しをおく。樹脂が完全に固まるまで、一晩放置する。通常、積層体が乾ききれば、樹脂は乾燥し、セロファンは簡単に剥がし取ることができる。樹脂が積層体からあふれ出ている場合は、仕上がりを良くするために、隅の輪郭線をきれいに切り整える。
【0107】
12)一度樹脂が乾いてしまえば、乾燥させた花は鮮明に見える。
酸素が透過しないので、その花は腐敗することはない。
【0108】
13)換気の良い場所で作業をする。エポキシ樹脂からのガスを過剰に吸引しないようにするために保護マスクを着用する。樹脂と接触した場合に肌を守るためにゴム手袋をつける。部屋から空気を排出するために、すべての窓を開けて、換気扇を回す。呼吸マスクがある場合は、着用する。樹脂には毒性があるので、吸引する量が少ないほど良い。
【0109】
透き通った樹脂を用いた花の積層体による乾燥させた花の保存
【0110】
乾燥させた花の保存における問題は、花が乾ききっていることによる。すなわち、花は、次第に壊れやすくもろくなり、花を処理したり触れたりすることはほとんど不可能になる。つまり、飾られた花が時間とともに埃っぽくなった場合に、その花を傷めることなくその花をきれいにすることはできないのと同じである。花は、人生における最大の喜びの1つである。不幸にも、切られた後の花の命ははかない。乾燥させることで、切り花の状態を何年も維持することは可能である。乾燥させた花は、かなり長持ちするが、生花であったときと同じように、時間の経過とともに傷付きやすくなる。退色し、葉や花びらはぼろぼろになる。乾燥させた花を処理して、あるいは樹脂の中に(積層体として)埋め込むことで、花を長期にわたって保護し、保存することができ、また、花の積層体は、木、べニア板、ガラス繊維、アクリル、陶磁器、竹、布の表面、またはどんな未加工の表面にも作ることができる。
【0111】
樹脂の花積層体:本願発明では、硬化剤MEK(過酸化物の硬化剤)2gを、予め混合した樹脂(エポキシ樹脂)200gに混合するが、通常、従来の方法では、およそ2%またはそれ以上の硬化剤を混合樹脂に添加する。しかし、その化学反応において相当量の熱が発生するので、色があせる。
【0112】
我々は、硬化剤の量を1%まで減らしたことで、比較すると透明な樹脂を硬化するのに余計に数時間かかることになるが、反応における熱の発生を非常に少なくすることが容易となり、色素の異性化を回避できる。2つ目に、花は永久に乾燥した樹脂の下に埋め込まれていて、もはや酸素は透過しないので、酸化反応を永久的に阻止できる。
【0113】
すなわち、樹脂の被覆により、色素の異性化と酸化を抑制し、樹脂で被覆した花のシートの中にある乾燥させた植物の色をより好ましく保持できる。