(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選択手段は、前記隣り合う2つの位置のルートギャップの両方が含まれる前記範囲が存在せず、ルートギャップのいずれか一方が含まれる前記範囲が2つ以上存在する場合、2つ以上の当該範囲のそれぞれに対応する前記溶接条件のうち、最初のパスにおける電流値が最も低い当該溶接条件を選択すること
を特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<システム構成>
まず、本実施の形態に係る溶接ロボットシステム1について説明する。
図1は、本実施の形態に係る溶接ロボットシステム1の概略構成の一例を示す図である。
図1に示すように、溶接ロボットシステム1は、電極により被溶接部材(ワーク)に対して溶接を行う溶接ロボット(マニピュレータ)10と、溶接ロボット10を制御する制御装置(コントローラ)20と、溶接作業に用いられるデータバンクファイルの選択を行うデータバンク選択装置30とを備える。
【0015】
ここで、データバンクファイルとは、溶接に関する各種の作業条件(溶接作業に関連するパラメータ)を登録したテーブルである。本実施の形態において、データバンクファイルには、例えば、溶接作業中の電極とワークとの間の溶接電流やアーク電圧などの溶接条件が定められている。そして、データバンクファイルが、溶接ロボット10の作業位置や姿勢、作業手順等を記述したプログラムファイルに参照されることにより、溶接ロボット10が制御されて、溶接作業が行われる。付言すると、本実施の形態において、溶接ロボット10を動作させるための教示データは、プログラムファイルやデータバンクファイル等の集合として構成される。
【0016】
溶接ロボット10は、複数の関節を有する腕(アーム)を備え、教示データに基づく各種の作業を行う。溶接ロボットシステム1の場合、腕の先端には、ワークの溶接作業を行うための溶接トーチ11が設けられる。溶接トーチ11は、開先(ワークの母材間に設けられた溝)に対して溶接ワイヤを供給するものであるが、溶接前にセンシングを行う機構としても機能する。即ち、溶接トーチ11は、実際の溶接を行う前に、溶接対象のワークにおいて定められた位置でセンシングを行う。このセンシングにより、ワークの勾配角度や開先角度、ルートギャップ等が算出される。
【0017】
制御装置20は、教示データを記憶する記憶装置(メモリ)と、教示データを読み込んで溶接ロボット10の動作を制御する処理装置(CPU(Central Processing Unit))とを備える。ここで、制御装置20は、ワークの定められた位置でセンシングするように溶接ロボット10を制御し、溶接ロボット10からセンシング結果を受信する。そして、制御装置20は、受信したセンシング結果をデータバンク選択装置30に送信する。また、制御装置20は、データバンク選択装置30にて選択されたデータバンクファイルを受信すると、受信したデータバンクファイルをもとに、溶接ロボット10の動作を制御する。
【0018】
データバンク選択装置30は、溶接ロボット10によりセンシングされたセンシング結果を制御装置20から受信すると、予め用意されたデータバンクファイルの中から、受信したセンシング結果に対応するデータバンクファイルを選択する。ここで、データバンク選択装置30には、データバンクファイルを選択する処理を行うためのソフトウェアがインストールされており、このソフトウェアを起動することにより、データバンクの選択処理が行われる。
【0019】
このように、溶接ロボットシステム1では、溶接ロボット10が溶接前にワークに対してセンシングを行い、このセンシング結果をもとに、データバンク選択装置30がデータバンクファイルを選択する。そして、選択されたデータバンクファイルをもとに制御装置20が溶接ロボット10を制御することにより、溶接作業が行われる。
【0020】
<機能構成>
次に、溶接ロボットシステム1の機能構成について説明する。
図2は、溶接ロボットシステム1の機能構成例を示す図である。
図2に示すように、制御装置20は、入力受付部21と、センサ制御部22と、溶接制御部23とを備える。また、データバンク選択装置30は、受信部31と、格納部32と、ファイル選択部33とを備える。
【0021】
まず、制御装置20の機能構成について説明する。
入力受付部21は、ユーザからの操作入力を受け付ける。ここで、入力受付部21は、例えば、教示データであるプログラムファイルを実行する操作入力を受け付ける。このプログラムファイルには、溶接ロボット10がワークにおいてセンシングを行う箇所(以下、センシング点と称する)や、データバンクファイルの選択に用いられるテーブル(以下、データバンク選択テーブルと称する)を指定するテーブル番号などの情報が設定されている。そして、ユーザは、プログラムファイルの内容を書き換えることにより、センシング点の位置や数を変更したり、使用するデータバンク選択テーブルを変更したりすることが可能である。センシング点、データバンク選択テーブルの詳細については後述する。
【0022】
センサ制御部22は、溶接ロボット10に対して、センシング点にてセンシングを実行するように指示を行い、溶接ロボット10によるセンシングの動作を制御する。また、センサ制御部22は、溶接ロボット10にてセンシングされた結果を受信し、受信したセンシング結果をデータバンク選択装置30に送信する。この際、センサ制御部22は、センシング結果と一緒に、プログラムファイルにより設定されたデータバンク選択テーブルのテーブル番号もデータバンク選択装置30に送信する。
【0023】
溶接制御部23は、センシング結果をもとにデータバンク選択装置30にて選択されたデータバンクファイルに従って、溶接ロボット10の動作を制御する。
【0024】
次に、データバンク選択装置30の機能構成について説明する。
取得手段の一例としての受信部31は、制御装置20から、溶接ロボット10によるセンシング結果や、データバンク選択テーブルのテーブル番号等を受信する。
【0025】
記憶手段の一例としての格納部32は、予め定められたデータバンクファイルを格納する。また、格納部32は、予め定められたデータバンク選択テーブルも格納する。
【0026】
選択手段の一例としてのファイル選択部33は、受信部31にて受信したセンシング結果をもとに、格納部32に格納されているデータバンクファイルから、センシング結果に対応するデータバンクファイルを選択する。ここで、まず、ファイル選択部33は、格納部32に格納されているデータバンク選択テーブルのうち、受信部31にて受信したテーブル番号が付与されたデータバンク選択テーブルを選択する。そして、ファイル選択部33は、選択したデータバンク選択テーブルを参照して、センシング結果に対応するデータバンクファイルを選択する。
【0027】
<ハードウェア構成>
次に、データバンク選択装置30のハードウェア構成について説明する。
図3は、データバンク選択装置30のハードウェア構成例を示す図である。
図3に示すように、データバンク選択装置30は、例えば汎用のPC(Personal Computer)等により実現され、演算手段であるCPU101と、記憶手段であるメインメモリ102及び磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)103とを備える。ここで、CPU101は、OS(Operating System)やアプリケーションソフトウェア等の各種プログラムを実行し、データバンク選択装置30の各機能を実現する。また、メインメモリ102は、各種プログラムやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、HDD103は、各種プログラムに対する入力データや各種プログラムからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
【0028】
また、データバンク選択装置30は、外部との通信を行うための通信I/F104と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構105と、キーボードやマウス等の入力デバイス106と、記憶媒体に対してデータの読み書きを行うためのドライバ107とを備える。ただし、
図3はハードウェアの構成例に過ぎず、データバンク選択装置30は図示の構成に限定されない。
【0029】
なお、本発明の実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
また、
図1に示す制御装置20についても、上述したデータバンク選択装置30のハードウェア構成と同様のものを用いても良い。
【0030】
<センシング点>
次に、溶接ロボット10がセンシングを行うセンシング点について説明する。
図4は、センシング点の一例を示す図である。本実施の形態では、
図4に示すように、平板42の上面に立板41が接触し、両部材の継ぎ目の開先に対して溶接が行われるものとする。そして、矢印で示す溶接進行方向(溶接線方向)に溶接トーチ11が動作し、溶接が進行する。ただし、平板42及び立板41は、溶接ロボットシステム1が溶接を行うワークの一例であり、ワークはこのような構成に限られるものではない。
【0031】
ここで、上述したように、センシング点の位置はプログラムファイルにより設定されており、
図4に示す例では、平板42の溶接線に沿ったP0、P1、P2、P3、P4の5点が設定されている。そして、溶接トーチ11は、溶接作業前に、P0から順番に5点に対してセンシングを行う。センシングにより得られたセンシング結果は、溶接ロボット10から制御装置20を介してデータバンク選択装置30に送信される。データバンク選択装置30は、受信したセンシング結果をもとに、データバンクファイルの選択を行う。詳細は後述するが、データバンクファイルの選択は、隣り合う2つのセンシング点の間の区間(以下、センシング区間と称する)ごとに行われる。即ち、
図4に示す例では、区間1〜区間4の各センシング区間において、データバンクファイルの選択が行われる。
【0032】
<センシング内容>
次に、溶接ロボット10が行うセンシングの内容について説明する。
図5は、センシング内容の一例を説明するための図である。溶接トーチ11(
図1参照)を用いたセンシングでは、溶接トーチ11の先端に溶接ワイヤが一定の長さで突き出され、溶接ワイヤとワークとの間に溶接電源(不図示)からセンシング電圧が印加される。そして、溶接トーチ11は、例えば
図5に示すように、A1、A2、A3、A4、A5の順番で立板41および平板42の5箇所をセンシングする。本実施の形態に係るセンシングは、従来の手法と同様に行われるものである。
【0033】
具体的には、溶接トーチ11は、立板41における点A1、点A2の順番でセンシングを行うと、点Bに移動する。次に、溶接トーチ11は、点Bから、立板41の勾配角度αの方向に進行し、平板42における点A3をセンシングする。そして、溶接トーチ11は、点Bから点A3に向く方向とは逆方向に進行し、立板41における点A4をセンシングする。次に、溶接トーチ11は、点Bに戻った後に点Cまで移動し、再度勾配角度αの方向に進行して立板41における点A5をセンシングする。ここで、点Bと点Cとの間の距離は、ユーザが事前に入力する立板41の板厚tにより、決められるものとする。
【0034】
溶接ロボット10は、センシングを行うと、溶接トーチ11先端の溶接ワイヤと、立板41の点A1、点A2、点A4、点A5、および、平板42の点A3の位置との接触による通電状態を示す通電検出信号を、センシング結果として制御装置20に出力する。これにより、制御装置20により、点A1〜A5の位置座標が検出されることになる。
【0035】
ここで、溶接ロボットシステム1では、
図5に示すように、立板41と平板42との対向方向、即ち、開先の幅方向をX軸とし、開先の深さ方向をZ軸とした座標系が設定される。そして、制御装置20のセンサ制御部22は、溶接ロボット10から、点A1〜点A5における通電検出信号を取得し、取得した通電検出信号に基づいて点A1〜点A5のX軸方向およびZ軸方向における位置座標を検出する。センサ制御部22は、検出した各点における位置座標をもとに、ワークの勾配角度、開先角度、ルートギャップを算出する。
【0036】
勾配角度とは、
図5に示すように、X軸に対する立板41の傾きの角度αを示している。センサ制御部22は、溶接ロボット10から取得した立板41における点A1の位置座標と点A2の位置座標との距離比等を求めることで、勾配角度αを算出する。
また、開先角度とは、
図5に示すように、平板42の開先面と平行なZ軸に対する、立板41の開先面の角度βを示している。センサ制御部22は、溶接ロボット10から取得した立板41の開先面における点A4の位置座標と点A5の位置座標との距離比等を求めることで、開先角度βを算出する。
【0037】
さらに、ルートギャップとは、
図5に示すように、立板41の開先面と平板42の開先面とのX軸方向における距離rを示している。ここで、センサ制御部22は、まず平板42の開先面の点A3の位置座標から、平板42の開先面に沿う線分である第1開先線分を算出する。この第1開先線分は、平板42の開先面と一致する線分であり、Z軸と平行な線分である。次に、センサ制御部22は、立板41の開先面の点A4、A5の位置座標から、立板41の開先面に沿う線分である第2開先線分を算出する。この第2開先線分は、立板41の開先面と一致する線分である。そして、立板41の点A1、A2の位置座標を通る線分を、立板41の板厚tだけ平行移動させて、
図5に示す第1開先線分との交点をD1、第2開先線分との交点をD2とすると、センサ制御部22は、点D1および点D2の位置座標を算出する。そして、センサ制御部22は、点D1と点D2との間のX軸方向の距離を、開先のルートギャップrとして算出する。
【0038】
このようにして、各センシング点(例えば、
図4のP0〜P4)において、ワークの勾配角度、開先角度、ルートギャップが算出される。そして、算出されたデータはセンシング結果としてデータバンク選択装置30に送信され、センシング区間ごとにデータバンクファイルの選択が行われる。
【0039】
<データバンクファイルの構成>
次に、データバンクファイルの構成について説明する。
図6は、データバンクファイルの一例を示す図である。上述したように、データバンクファイルには溶接条件が定められており、
図6に示すデータバンクファイルには、溶接電流(電流の単位:A)、アーク電圧(電圧の単位:V)、溶接速度(mm/min)、ウィービング幅(mm)が登録されている。ここで、溶接速度は、溶接トーチ11が動作する際の速度を示す。ウィービング幅は、溶接トーチ11を溶接進行方向に対してほぼ直角に交互に動作させるウィービングの際の幅を示す。
【0040】
そして、データバンクファイルには、少なくとも1つ以上のパスが定められており、パスごとに溶接条件が定められている。パスとは、各種の溶接継手に沿って行う一回の溶接操作である。
図6に示すデータバンクファイルには、パス1〜パス6の計6つのパスが定められており、このデータバンクファイルが選択された場合には溶接継手に対して6回の溶接操作が行われることとなる。例えば、最初のパスである1パス目(パス1)については、溶接電流が280A、アーク電圧が35V、溶接速度が300mm/min、ウィービング幅が3mm、トーチ角度が20度の条件で溶接が行われる。
【0041】
<データバンク選択テーブルの構成>
次に、データバンク選択テーブルについて説明する。データバンク選択テーブルは、ワークにおける開先の形状や板厚などに応じて予め作成される。そして、上述したように、プログラムファイルにおいて、呼び出されるデータバンク選択テーブルのテーブル番号が設定されている。付言すると、ユーザは、プログラムファイルが呼び出すデータバンク選択テーブルのテーブル番号を、ワークの開先形状や板厚等に合わせて書き換えることにより、ワークに応じたデータバンク選択テーブルが選択されることとなる。
【0042】
図7は、データバンク選択テーブルの一例を示す図である。
図7に示すデータバンク選択テーブルには、データバンクファイルとして、DBK101、DBK102等のファイルが登録されている。また、データバンク選択テーブルには、データバンクファイルと開先角度範囲、担当ギャップ範囲とが対応付けて定められている。
ここで、データバンク選択テーブルの作成にあたり、予め実験が行われ、開先角度範囲、担当ギャップ範囲に対応する溶接条件が算出される。付言すると、ワークの開先角度、ルートギャップに対して、溶融金属の溶け込みが十分確保され、かつ高温割れを抑制できる(高温割れが発生しづらい)溶接条件が実験により求められる。このような実験が開先形状や板厚を変えて行われ、様々なデータバンク選択テーブルが作成される。
【0043】
例えば、開先角度範囲がR1(43.0〜44.5度)で、担当ギャップ範囲が0.0〜0.5mmの場合には、溶け込みが十分で高温割れを抑制できる溶接条件として、DBK101、DBK102、DBK103の溶接条件が実験により求められたこととなる。ここで、DBK101は「メイン」、DBK102は「スタート」、DBK103は「エンド」とされているが、溶接作業は、1つの溶接線に対してこの3つのデータバンクファイルを切り替えて行われる。溶接のアークが安定するまでの間「スタート」のDBK102が用いられ、その後「メイン」のDBK101が用いられて、溶接区間の終了付近で「エンド」のDBK103が用いられる。
図4に示す区間1〜区間4で溶接が行われる場合には、例えば、「スタート」のデータバンクファイルは区間1でのみ用いられ、「エンド」のデータバンクファイルは区間4でのみ用いられる。
【0044】
そして、例えば、溶接ロボット10によるセンシングが行われ、センシング結果に対応する開先角度範囲がR2(44.6〜45.5度)、担当ギャップ範囲が0.0〜1.0mmとして求められると、データバンクファイルとしてDBK114、DBK115、DBK116が選択される。
【0045】
<データバンクファイルの選択手順>
次に、データバンクファイルの選択手順について説明する。
図8及び
図9は、データバンクファイルの選択手順の一例を示すフローチャートである。
図8及び
図9に示す手順では、初期状態として、プログラムファイルをもとにセンシング点、データバンク選択テーブルのテーブル番号が指定され、溶接ロボット10のセンシングが行われたものとする。さらに、データバンク選択装置30は、制御装置20から、テーブル番号およびセンシング結果を受信しているものとする。即ち、データバンク選択装置30の受信部31は、各センシング点で計測された勾配角度や、開先角度、ルートギャップを受信している。
【0046】
まず、データバンク選択装置30のファイル選択部33は、制御装置20から受信したセンシング結果として、最初のセンシング点における開先角度を取得する(ステップ101)。そして、ファイル選択部33は、制御装置20から受信したテーブル番号が付与されたデータバンク選択テーブルを参照し、取得した開先角度を含む開先角度範囲が存在するか否かを判定する(ステップ102)。取得した開先角度を含む開先角度範囲が存在しない場合(ステップ102でNo)、データバンクファイルは選択されず、本処理フローは終了する。また、2点目以降のセンシング点における開先角度は、データバンクファイルの選択には使用されない。
【0047】
一方、取得した開先角度を含む開先角度範囲が存在する場合(ステップ102でYes)、ファイル選択部33は、各センシング点で最初のセンシング区間(例えば、
図4に示す例では区間1)を選択する(ステップ103)。そして、ファイル選択部33は、選択したセンシング区間の両端のセンシング点におけるルートギャップを取得する(ステップ104)。次に、ファイル選択部33は、データバンク選択テーブル(ステップ102で参照したデータバンク選択テーブル)を参照し、取得した2つのルートギャップのうち少なくともいずれか一方を含む担当ギャップ範囲が存在するか否かを判定する(ステップ105)。
【0048】
2つのルートギャップのうち少なくともいずれか一方を含む担当ギャップ範囲が存在しない場合(ステップ105でNo)、データバンクファイルは選択されず、本処理フローは終了する。一方、2つのルートギャップのうち少なくともいずれか一方を含む担当ギャップ範囲が存在する場合(ステップ105でYes)、ファイル選択部33は、2つのルートギャップを共に含む担当ギャップ範囲が存在するか否かを判定する(ステップ106)。
【0049】
2つのルートギャップを共に含む担当ギャップ範囲が存在する場合(ステップ106でYes)、ファイル選択部33は、該当する担当ギャップ範囲が2つ以上存在するか否かを判定する(ステップ107)。該当する担当ギャップ範囲が1つの場合(ステップ107でNo)、ファイル選択部33は、その担当ギャップ範囲を選択する(ステップ108)。そして、ファイル選択部33は、選択した担当ギャップ範囲と、ステップ102で肯定の判断(Yes)がされた場合の開先角度範囲とをもとに、データバンクファイルを選択する(ステップ109)。例えば、
図7に示すデータバンク選択テーブルにおいて、担当ギャップ範囲が0.0〜0.5mm、開先角度範囲がR1の場合、DBK101、DBK102、DBK103のデータバンクファイルが選択されることとなる。
【0050】
一方、ステップ107で肯定の判断(Yes)がされた場合、即ち、2つのルートギャップを共に含む担当ギャップ範囲が2つ以上存在する場合、ファイル選択部33は、それらの担当ギャップ範囲に対応するデータバンクファイルのうち、1パス目の溶接電流の値が最も高いデータバンクファイルを選択する(ステップ110)。例えば、
図7に示すデータバンク選択テーブルにおいて、開先角度範囲がR1、2つのルートギャップを共に含む担当ギャップ範囲が「0.0〜0.5mm」、「0.0〜1.0mm」の場合、各担当ギャップ範囲に対応するメインのデータバンクファイルは「DBK101」、「DBK111」である。そのため、DBK101およびDBK111の1パス目の溶接電流の値が比較され、溶接電流の値が高い方のデータバンクファイルが選択される。
【0051】
また、ステップ106で否定の判断(No)がされた場合、即ち、2つのルートギャップを共に含む担当ギャップ範囲が存在しない場合、いずれか一方のルートギャップを含む担当ギャップ範囲が1つ以上存在することとなる。ここで、ファイル選択部33は、いずれか一方のルートギャップを含む担当ギャップ範囲が2つ以上存在するか否かを判定する(ステップ111)。いずれか一方のルートギャップを含む担当ギャップ範囲が1つの場合(ステップ111でNo)、ファイル選択部33は、その担当ギャップ範囲を選択する(ステップ112)。そして、ステップ109と同様に、ファイル選択部33は、選択した担当ギャップ範囲と、ステップ102で肯定の判断(Yes)がされた場合の開先角度範囲とをもとに、データバンクファイルを選択する(ステップ113)。
【0052】
一方、ステップ111で肯定の判断(Yes)がされた場合、即ち、いずれか一方のルートギャップを含む担当ギャップ範囲が2つ以上存在する場合、ファイル選択部33は、それらの担当ギャップ範囲に対応するデータバンクファイルのうち、1パス目の溶接電流の値が最も低いデータバンクファイルを選択する(ステップ114)。例えば、
図7に示すデータバンク選択テーブルにおいて、開先角度範囲がR1、いずれか一方のルートギャップを含む担当ギャップ範囲が「0.0〜0.5mm」、「0.0〜1.0mm」、「0.5〜2.0mm」、「1.0〜2.5mm」の場合、DBK101、DBK111、DBK121、DBK131の1パス目の溶接電流の値が比較される。そして、溶接電流の値が最も低いデータバンクファイルが選択される。
【0053】
ステップ109、110、113、114でデータバンクファイルを選択した後、ファイル選択部33は、まだデータバンクファイルを選択していないセンシング区間が存在するか否かを判定する(ステップ115)。ステップ115で否定の判断(No)がされた場合、制御装置20から受信したセンシング結果に関する全てのセンシング区間についてデータバンクファイルが選択されたことになり、本処理フローは終了する。一方、ステップ115で肯定の判断(Yes)がされた場合、ファイル選択部33は、次のセンシング区間を選択し、ステップ104に移行する。
【0054】
また、
図8及び
図9に示す手順において、ファイル選択部33は、最初のセンシング区間から以降のセンシング区間を順番に選択して、各センシング区間のデータバンクファイルを選択することとしたが、このような構成に限られるものではない。例えば、ファイル選択部33は、センシング区間の順番(センシング点がセンシングされる順番)を考慮せずに、まだデータバンクファイルを選択していないセンシング区間のうち1つを選択して、各センシング区間のデータバンクファイルを選択することとしても良い。
【0055】
このようにして、データバンク選択装置30のファイル選択部33は、複数のセンシング点のうち隣り合う2つのセンシング点の間のセンシング区間について、区間ごとにデータバンクファイルを選択する。ここで、ファイル選択部33は、センシング区間の両端のルートギャップの大きさをもとに担当ギャップ範囲を求めて、求めた担当ギャップ範囲に対応するデータバンクファイルを選択することにより、センシング区間の溶接条件を決定する。
【0056】
また、ファイル選択部33は、センシング区間の両端のルートギャップの両方を含む担当ギャップ範囲が存在すれば、その担当ギャップ範囲を選択する。この場合、担当ギャップ範囲内に両端のルートギャップの両方が入ることになるため、その担当ギャップ範囲のデータバンクファイルを選択することにより、センシング区間全体に、溶け込みが十分で、かつ高温割れを抑制できる溶接条件が使用されることとなる。
【0057】
さらに、ファイル選択部33は、センシング区間の両端のルートギャップの両方を含む担当ギャップ範囲が2つ以上存在すれば、1パス目の電流値が最も高いデータバンクファイルを選択する。両端のルートギャップの両方を含む担当ギャップ範囲のデータバンクファイルは、上述したように、センシング区間全体に溶け込みが十分で高温割れを抑制できる溶接条件といえる。そのため、このようなデータバンクファイルが2つ以上存在する場合には、溶接電流を大きくしてさらに溶け込みを確保することを考慮して、1パス目の電流値が最も高いデータバンクファイルが選択される。
【0058】
そして、ファイル選択部33は、センシング区間の両端のルートギャップのいずれか一方を含む担当ギャップ範囲が2つ以上存在すれば、1パス目の電流値が最も低いデータバンクファイルを選択する。両端のルートギャップのいずれか一方を含む担当ギャップ範囲のデータバンクファイルは、センシング区間全体に溶け込みが十分で高温割れを抑制できる溶接条件とはいえない可能性がある。そのため、この場合には、溶接電流を小さくして高温割れの発生を抑制することを考慮して、1パス目の電流値が最も低いデータバンクファイルが選択される。
【0059】
<データバンクファイルの選択手順の具体例>
次に、データバンクファイルを選択する手順について、具体例を示して説明する。
図10(a)、(b)は、データバンクファイルを選択する手順の具体例を説明するための図である。ここで、
図10(a)、(b)に示す例では、プログラムファイルにて指定されたテーブル番号によりデータバンク選択テーブルが特定されているものとする。また、
図8に示すステップ102で、最初のセンシング点における開先角度を含む開先角度範囲が存在し、肯定の判断(Yes)がされたものとする。
【0060】
まず、
図10(a)に示す例では、データバンクファイルを選択するために用いる情報として、データバンク選択テーブルの情報が示されている。ここで、条件名A〜Eの5つの条件として、5つの担当ギャップ範囲(0〜0.5mm、0〜1.0mm、0.5〜2.0mm、1.0〜2.5mm、2.0〜5.0mm)が示されている。また、各担当ギャップ範囲のデータバンクファイルが定める溶接条件として、溶接電流、アーク電圧、溶接速度、ウィービング幅の値が示されている。条件A〜Eに示す溶接条件はそれぞれ、各担当ギャップ範囲において、溶け込みが十分で、かつ高温割れを抑制できる溶接条件として実験で求められたものである。
【0061】
また、データバンクファイルを選択する際に用いられる溶接条件は、
図9に示すステップ110、ステップ114のように、担当ギャップ範囲に対応するメインのデータバンクファイルの1パス目の溶接電流である。そのため、
図10(a)に示す各溶接条件としては、担当ギャップ範囲に対応するメインのデータバンクファイルにおける1パス目の値が示されている。
【0062】
次に、
図10(b)に示す例では、3つのケースについて、各センシング区間で選択されるデータバンクファイルの情報について示されている。各ケースでは、
図4に示すように5点(P0〜P4)のセンシング点と、4つのセンシング区間(区間1〜区間4)とが設定されている。
【0063】
ここで、「センシング距離」は、点P0から各センシング点までの距離を示す。例えば、ケース1では、点P1のセンシング距離は20mmであり、点P0から点P1までの距離、即ち、区間1の距離が20mmであることを示す。また、点P3のセンシング距離は80mmであり、点P0から点P3までの距離、即ち、区間1、区間2、区間3の合計の距離が80mmであることを示す。また、「ルートギャップ」は、各センシング点におけるルートギャップを示す。例えば、ケース1では、点P0、点P1、点P2、点P3、点P4のルートギャップはそれぞれ、0mm、1mm、2.5mm、4mm、5mmである。
【0064】
そして、例えば、ケース1において、ファイル選択部33は、最初のセンシング区間の両端のセンシング点におけるルートギャップ(0mm、1mm)を取得する(
図8に示すステップ104)。
図10(a)に示す担当ギャップ範囲において、これらのルートギャップを含む担当ギャップ範囲は、条件A〜Dの4つ存在している(ステップ105でYes)。さらに、2つのルートギャップの両方を含む担当ギャップ範囲として、条件B「0〜1mm」の1つが存在する(ステップ106でYes、107でNo)。そのため、ファイル選択部33は、0〜1mmの担当ギャップ範囲を選択する(ステップ108)。
図10(b)に示す「選択する条件」は、選択された担当ギャップ範囲(0〜1mm)に対応するデータバンクファイルの溶接電流が、「290A」であることを示している。このようにして、区間1におけるデータバンクファイルが選択される。
【0065】
同様に、区間2について、両端のルートギャップは、1mm、2.5mmであり、2つのルートギャップの両方を含む担当ギャップ範囲として、条件D「1.0〜2.5mm」の1つのみが存在する。そのため、選択する条件は、250Aとなる。また、区間3について、両端のルートギャップは、2.5mm、4mmであり、2つのルートギャップの両方を含む担当ギャップ範囲として、条件E「2.0〜5.0mm」の1つのみが存在する。そのため、選択する条件は、230Aとなる。区間4についても、区間3と同様に、選択する条件は230Aとなる。
【0066】
また、例えば、ケース2において、区間2の両端のルートギャップは、0.8mm、2.5mmである。ここで、これらのルートギャップを含むものは、条件B〜Eの4つ存在している(ステップ105でYes)。しかし、2つのルートギャップの両方を含む担当ギャップ範囲は存在せず(ステップ106でNo)、いずれか一方を含む担当ギャップ範囲が2つ以上存在することとなる(ステップ111でYes)。そのため、条件B〜Eのうち、1パス目の溶接電流の値が最も小さい「230A」が選択されることとなり、条件Dのデータバンクファイルが選択される(ステップ114)。
【0067】
さらに、例えば、ケース3において、区間1の両端のルートギャップは、0mm、0.4mmである。ここで、2つのルートギャップの両方を含む担当ギャップ範囲は、条件A、Bの2つ存在している(ステップ106でYes,ステップ107でYes)。そのため、条件A、Bにおいて、1パス目の溶接電流の値が高い方の「330A」が選択されることとなり、条件Aのデータバンクファイルが選択される(ステップ110)。
【0068】
<制御装置の処理手順>
次に、制御装置20の処理手順について説明する。
図11は、制御装置20の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0069】
まず、入力受付部21は、教示データであるプログラムファイルを実行する操作入力を受け付ける(ステップ201)。プログラムファイルには、センシング点、およびデータバンク選択テーブルのテーブル番号の情報が設定されている。次に、センサ制御部22は、プログラムファイルをもとに、溶接ロボット10に対してセンシング点にてセンシングを実行するように指示を行う(ステップ202)。そして、センサ制御部22は、溶接ロボット10にてセンシングされた結果を受信する(ステップ203)。
【0070】
次に、センサ制御部22は、受信したセンシング結果をデータバンク選択装置30に送信する(ステップ204)。ここで、センサ制御部22は、溶接ロボット10から受信したセンシングのデータをもとに、各センシング点における勾配角度、開先角度、ルートギャップを算出する。そして、センサ制御部22は、算出した値をセンシング結果としてデータバンク選択装置30に送信する。また、センサ制御部22は、センシング結果と一緒に、プログラムファイルにて設定されたデータバンク選択テーブルのテーブル番号も送信する。
【0071】
次に、センサ制御部22は、センシング完了通知をデータバンク選択装置30に送信する(ステップ205)。完了通知が行われると、溶接制御部23は、データバンクファイルの受信待ちとなり、溶接ロボット10を入力待ちの状態となるように制御する(ステップ206)。次に、溶接制御部23は、データバンク選択装置30からデータバンクファイルおよび入力待ち解除命令を受信すると、溶接ロボット10の待ち合わせを解除する。また、溶接制御部23は、受信したデータバンクファイルの溶接条件にて動作するように溶接ロボット10を制御し、溶接を開始する(ステップ207)。
【0072】
このようにして、制御装置20は、溶接ロボット10に対してセンシングの実行指示を行い、センシングされた結果をデータバンク選択装置30に送信する。そして、制御装置20は、データバンク選択装置30にて選択されたデータバンクファイルに従って溶接ロボット10を制御し、溶接を行う。
【0073】
<データバンク選択装置の処理手順>
次に、データバンク選択装置30の処理手順について説明する。
図12は、データバンク選択装置30の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図12に示す処理は、データバンクファイルを選択する処理を行うためのソフトウェアがデータバンク選択装置30にて起動されている間、繰り返し行われるものとする。
【0074】
受信部31は、制御装置20から完了通知が行われるまで待機している。そして、
図11に示すステップ205により完了通知が行われると、受信部31は完了通知を検出する(ステップ301)。受信部31は、完了通知を検出することによりセンシング結果を受信可能な状態となり、
図11のステップ204で送信されたセンシング結果(勾配角度、開先角度、ルートギャップ)を受信する(ステップ302)。
【0075】
次に、ファイル選択部33は、受信部31にて受信したセンシング結果をもとに、データバンクファイルを選択する(ステップ303)。ここで、ファイル選択部33は、
図8および
図9に示す手順により、センシング結果に対応するデータバンクファイルを格納部32から選択する。そして、ファイル選択部33は、選択したデータバンクファイルを制御装置20に送信する(ステップ304)。また、ファイル選択部33は、制御装置20に対して入力待ち解除命令を行う(ステップ305)。入力待ち解除命令が行われることで、制御装置20の溶接制御部23により、
図11に示すステップ207の処理が行われる。
【0076】
このようにして、データバンク選択装置30は、制御装置20から受信したセンシング結果をもとに、センシング結果に対応するデータバンクファイルを選択する。そして、データバンク選択装置30が選択したデータバンクファイルを制御装置20に送信することにより、溶接ロボット10にて溶接作業が行われる。
【0077】
以上説明したように、本実施の形態に係る溶接ロボットシステム1では、予め実験が行われ、ワークの開先角度、ルートギャップに応じて、溶け込みが十分確保され高温割れの発生を抑制する溶接条件が求められる。そして、溶接前にワークに対するセンシングが行われ、センシング結果として得られた開先角度、センシング区間の両端のルートギャップをもとに、データバンクファイルが選択される。そのため、各センシング区間において、適正な溶け込みを確保し、かつ高温割れの発生を抑制する溶接条件を使用して、溶接が行われることとなる。
【0078】
<データバンクファイルの選択手順の他の例>
次に、データバンクファイルの選択手順の他の例について説明する。
図13は、データバンクファイルの選択手順の他の例を示すフローチャートである。
図13に示す手順では、
図8及び
図9に示す手順と同様に、初期状態として、プログラムファイルをもとにセンシング点、データバンク選択テーブルのテーブル番号が指定され、溶接ロボット10のセンシングが行われたものとする。さらに、データバンク選択装置30は、制御装置20から、テーブル番号およびセンシング結果を受信しているものとする。
【0079】
まず、ステップ401〜404の処理は、
図8に示すステップ101〜104の処理と同様であるため、ここでは説明を省略する。そして、ステップ404の後、ファイル選択部33は、センシング区間の両端のセンシング点におけるルートギャップの中間となる値(以下、中間ルートギャップと称する)を計算する(ステップ405)。例えば、
図10(b)に示すケース1の区間1のように、両端のルートギャップが0mm、1mmである場合、中間ルートギャップは0.5mmと計算される。
【0080】
次に、ファイル選択部33は、制御装置20から受信したテーブル番号が付与されたデータバンク選択テーブル(ステップ402で参照するデータバンク選択テーブル)を参照し、計算した中間ルートギャップを含む担当ギャップ範囲が存在するか否かを判定する(ステップ406)。中間ルートギャップを含む担当ギャップ範囲が存在しない場合(ステップ406でNo)、データバンクファイルは選択されず、本処理フローは終了する。一方、中間ルートギャップを含む担当ギャップ範囲が存在する場合(ステップ406でYes)、ファイル選択部33は、中間ルートギャップを含む担当ギャップ範囲が2つ以上存在するか否かを判定する(ステップ407)。
【0081】
該当する担当ギャップ範囲が1つの場合(ステップ407でNo)、ファイル選択部33は、その担当ギャップ範囲を選択する(ステップ408)。そして、ファイル選択部33は、選択した担当ギャップ範囲と、ステップ402で肯定の判断(Yes)がされた場合の開先角度範囲とをもとに、データバンクファイルを選択する(ステップ409)。この場合、担当ギャップ範囲内に中間ルートギャップが入ることにとなるため、その担当ギャップ範囲のデータバンクファイルを選択すれば、そのセンシング区間において溶け込みが十分で高温割れを抑制できる溶接条件が使用されることとなる。
【0082】
一方、ステップ407で肯定の判断(Yes)がされた場合、即ち、中間ルートギャップを含む担当ギャップ範囲が2つ以上存在する場合、ファイル選択部33は、それらの担当ギャップ範囲に対応するデータバンクファイルのうち、1パス目の溶接電流の値が最も高いデータバンクファイルを選択する(ステップ410)。1パス目の溶接電流の値が最も高いデータバンクファイルが選択されることにより、さらに溶け込みが確保されることとなる。
【0083】
ステップ409、410でデータバンクファイルを選択した後、ファイル選択部33は、まだデータバンクファイルを選択していないセンシング区間が存在するか否かを判定する(ステップ411)。ステップ411で否定の判断(No)がされた場合、制御装置20から受信したセンシング結果に関する全てのセンシング区間についてデータバンクファイルが選択されたことになり、本処理フローは終了する。
一方、ステップ411で肯定の判断(Yes)がされた場合、ファイル選択部33は、次のセンシング区間を選択し、ステップ404に移行する。
【0084】
このようにして、ファイル選択部33は、センシング区間の両端のルートギャップから中間ルートギャップを計算する。そして、ファイル選択部33は、中間ルートギャップをもとに、各センシング区間のデータバンクファイルを選択する。そのため、各センシング区間において、適正な溶け込みを確保し、かつ高温割れの発生を抑制する溶接条件を使用して、溶接が行われることとなる。
【0085】
また、データバンクファイルの選択手順として、
図8及び
図9、
図13に示す2つの手順を示したが、どちらの手順を用いるかは、例えば、データバンク選択テーブルをもとに決められるものとする。データバンク選択テーブルは、上述したように、開先の形状や板厚などに応じて予め設定されるが、この場合、データバンクファイルの選択手順を指定する情報が設定されている。このような構成にすることで、ワークの開先の形状や板厚に応じて、データバンクの選択手順が決定されることとなる。
【0086】
また、本実施の形態において、データバンクファイルを選択する処理を行うためのソフトウェアはデータバンク選択装置30にインストールされ、データバンク選択装置30がデータバンクファイルの選択を行うこととしたが、このような構成に限られるものではない。例えば、このソフトウェアが、制御装置20にインストールされ、制御装置20がデータバンク選択装置30の機能を含み、データバンクファイルの選択を行うこととしても良い。
さらに、本実施の形態において、制御装置20と溶接ロボット10とが別々に設けられていることとしたが、溶接ロボット10が制御装置20の機能を有することとしても良い。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態には限定されない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々に変更したり代替態様を採用したりすることが可能なことは、当業者に明らかである。