(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のプラスミドを切断し、該切断プラスミドの末端を、導入されるポリヌクレオチドの適合性末端に連結して、閉環状プラスミドを得ることを含む、組換えプラスミドベクターの製造方法。
該免疫グロブリン鎖が、アブシキシマブ(Abciximab)、アダリムマブ(Adalimumab)、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、バシリキシマブ(Basiliximab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、セツキシマブ(Cetuximab)、セルトリズマブ・ペゴール(Certolizumab pegol)、ダロツズマブ(Dalotuzumab)、ダクリズマブ(Daclizumab)、デノスマブ(Denosumab)、エクリズマブ(Eculizumab)、エファリズマブ(Efalizumab)、ゲムツズマブ(Gemtuzumab)、イブリツモマブ・チウキセタン(Ibritumomab tiuxetan)、インフリキシマブ(Infliximab)、ムロモナブ(Muromonab)−CD3、ナタリズマブ(Natalizumab)、オマリズマブ(Omalizumab)、パリビズマブ(Palivizumab)、パニツムマブ(Panitumumab)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、リツキシマブ(Rituximab)、ロバツムマブ(Robatumumab)、トシツモマブ(Tositumomab)、ALD518およびトラスツズマブ(Trastuzumab)からなる群から選択されるメンバーの重鎖または軽鎖であり、あるいは該免疫グロブリン鎖が、VEGF、VEGFR、EGF、EGFR、PD−1、TNFアルファ、TGFベータ、TRAIL−R1、TSLP、Nav1.7、Nav1.8、ERK、MEK、TRAIL−R2、IL−10、IL−6、IL−6R、IGF1R、IL−23p19、IL23R、PCSK9、CD20、RANKL、RANK、CD33、CD11a、ErbB2、IgE、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、HIV抗原、HCV抗原および呼吸器性シンシチウムウイルス(RSV)抗原からなる群から選択される抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントの重鎖または軽鎖である、請求項3記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、いずれかの細胞、例えば哺乳類細胞、細菌細胞、酵母細胞または昆虫細胞における組換えタンパク質発現に有用な発現ベクターを提供する。該ベクターは、広範な組換えタンパク質を一過性または安定に発現させるために使用されうる。該ベクターのマルチクローニングサイトは、種々の発現カセットを収容するための多数の一般的または稀有な制限部位を提供する。
【0013】
pAVECプラスミドは、
図1に記載されているプラスミド地図により特徴づけられる、および/または配列番号1のヌクレオチド配列を含む若しくはそれからなるプラスミドである。該用語はまた、pAVECプラスミドを切断し、該切断プラスミドの末端を導入ポリヌクレオチドの適合性末端に連結して、該導入ポリヌクレオチドを含む閉環状プラスミドを得ることを含む製造方法により製造される組換えプラスミドを含む。
【0014】
分子生物学
本発明においては、当技術分野の技量の範囲内の通常の分子生物学、微生物学および組換えDNA技術が用いられうる。そのような技術は文献中に十分に説明されている。例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,
Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(本明細書中では「Sambrookら,1989」);
DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes IおよびIl(D.N.Glover編,1985);
Oligonucleotide Synthesis(MJ.Gaitら,1984);
Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & SJ.Higgins編(1985));
Transcription And Translation(B.D.Hames & SJ.Higgins編,(1984));
Animal Cell Culture(R.I.Freshney編,(1986));
Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,(1986));B.Perbal,
A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubelら,(編),
Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.(1994)を参照されたい。
【0015】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」または「核酸分子」はDNAおよびRNAを含む。例えば、本発明の1つの実施形態においては、ポリヌクレオチドは環状プラスミドpAVECである。
【0016】
「ポリヌクレオチド配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」は核酸(例えば、DNAまたはRNA)における一連のヌクレオチドであり、2以上のヌクレオチドの鎖のいずれかを意味する。
【0017】
発現産物、例えばRNAまたはペプチド(例えば、免疫グロブリン鎖)を「コード」する配列または「コード配列」は、発現されると該産物の産生をもたらすヌクレオチド配列である。
【0018】
本明細書中で用いる「オリゴヌクレオチド」なる語は、遺伝子、mRNA、cDNAまたは関心のある他の核酸をコードするゲノムDNA分子、cDNA分子またはmRNA分子にハイブリダイズ可能でありうる、一般には300ヌクレオチド以下(例えば、30、40、50、60、70、80、90、150、175、200、250または300ヌクレオチド)の核酸を意味する。オリゴヌクレオチドは、通常、一本鎖であるが、二本鎖であることも可能である。オリゴヌクレオチドは、例えば、
32P−ヌクレオチド、
3H−ヌクレオチド、
14C−ヌクレオチド、
35S−ヌクレオチドの取り込みにより、または例えばビオチンのような標識が共有結合したヌクレオチドの取り込みにより、標識されうる。1つの実施形態においては、標識されたオリゴヌクレオチドは、核酸の存在を検出するためのプローブとして使用されうる。もう1つの実施形態においては、オリゴヌクレオチド(そのうちの一方または両方が標識されうる)は、遺伝子の完全長または断片をクローニングするための又は核酸の存在を検出するためのPCRプライマーとして使用されうる。一般に、オリゴヌクレオチドは、例えば核酸合成装置により、合成的に製造される。
【0019】
「タンパク質配列」、「ペプチド配列」もしくは「ポリペプチド配列」または「アミノ酸配列」はタンパク質、ペプチドまたはポリペプチドにおける一連の2以上のアミノ酸を意味する。
【0020】
「タンパク質」、「ペプチド」または「ポリペプチド」は2以上のアミノ酸の連続鎖を含む。
【0021】
「単離されたポリヌクレオチド」または「単離されたポリペプチド」なる語は、細胞において若しくは組換えDNA発現系において通常見出される他の成分またはいずれかの他の混入物から部分的または完全に分離された、それぞれ、ポリヌクレオチド(例えば、RNAもしくはDNA分子または混合重合体)またはポリペプチドを含む。これらの成分には、細胞膜、細胞壁、リボソーム、ポリメラーゼ、血清成分および外来性ゲノム配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
単離されたポリヌクレオチド(例えば、pAVEC)またはポリペプチドは、好ましくは、実質的に均一な分子組成物であるが、ある程度の不均一性を伴いうる。
【0023】
「宿主細胞」なる語は、該細胞による物質の産生、例えば、該細胞による遺伝子、ポリヌクレオチド、例えば環状プラスミド(例えば、pAVEC)またはRNAまたはタンパク質の発現または複製のために任意の様態で選択され、修飾され、トランスフェクトされ、形質転換され、成長され又は使用され若しくは操作される任意の生物の任意の細胞を含む。例えば、宿主細胞は、pAVECプラスミドを維持しうる、そして本発明の1つの実施形態においては、該プラスミドにおけるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチド、例えば免疫グロブリン鎖の発現を促進しうる、哺乳類細胞または細菌細胞(例えば、大腸菌(E.coli))、あるいはいずれかの単離された細胞でありうる。哺乳類宿主細胞の例には、限定的なものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO−K1細胞、CHO−DXB−11細胞、CHO−DG44細胞、ウシ乳房上皮細胞、マウスSertoli細胞、イヌ腎細胞、バッファローラット肝細胞、ヒト肺細胞、マウス乳癌細胞、ラット繊維芽細胞、ウシ腎(MDBK)細胞、NSO細胞、SP2細胞、TRI細胞、MRC 5細胞、FS4細胞、HEK−293T細胞、NIH−3T3細胞、HeLa細胞、乳児ハムスター腎(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎(COS)細胞、ヒト肝細胞癌(例えば、Hep G2)細胞、A549細胞などが含まれる。1つの実施形態においては、哺乳類宿主細胞はヒト宿主細胞である。哺乳類宿主細胞は、当技術分野で公知の方法により培養されうる(例えば、J.Immunol.Methods 56:221(1983),Animal Cell Culture:A Practical Approach 2nd Ed.,Rickwood,D.およびHames,B.D.編,Oxford University Press,New York(1992)を参照されたい)。適当な大腸菌(E.coli)の例には、DH1、DH5、DH5アルファ、XL1−Blue、SURE、SCS110、OneShot Top 10およびHB101が含まれる。本発明のもう1つの実施形態においては、本発明のpAVECプラスミドは宿主細胞内で異所的に維持され、および/または宿主細胞の染色体DNA内に組込まれる。そのような宿主細胞およびその使用方法(例えば、本明細書に記載されているもの)は本発明の一部を構成する。
【0024】
本発明のベクター、例えばpVECは、当技術分野で公知の多数の技術のいずれかにより、例えばデキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム共沈、リポフェクション、核内への該ベクターの直接マイクロインジェクション、または与えられた宿主細胞型に適したいずれかの他の手段により、宿主細胞内に導入されうる。
【0025】
「カセット」または「発現カセット」は、例えば一定の制限部位において、ベクター内に挿入されうる、発現産物(例えば、ペプチドまたはRNA)をコードするDNAコード配列またはDNAセグメントを意味する。発現カセットは、DNAコード配列に機能的に連結されたプロモーターおよび/またはターミネーターおよび/またはポリAシグナルを含みうる。
【0026】
一般に、「プロモーター」または「プロモーター配列」は、細胞内で(例えば、直接的に又は他のプロモーター結合タンパク質もしくは物質を介して)RNAポリメラーゼに結合しコード配列の転写を開始させうるDNA調節領域である。プロモーター配列は、一般に、その3’末端において、転写開始部位に結合しており、いずれかのレベルで転写を開始させるのに必要な最少数の塩基または要素を含むよう上流(5’方向)に伸長している。該プロモーター配列内には、転写開始部位(簡便には、例えば、ヌクレアーゼS1でのマッピングにより定められる)、およびRNAポリメラーゼの結合をもたらすタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が存在しうる。プロモーターは、エンハンサーおよびリプレッサー配列を含む他の発現制御配列に、または発現されるべき核酸に機能的に結合または機能的に連結されていることが可能である。発現制御配列がプロモーターに機能的に結合または機能的に連結されていると言えるのは、それが該プロモーターからの発現を調節する場合である。
【0027】
遺伝子発現を制御するために使用されうるプロモーターには以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:SRαプロモーター(Takebeら,Molec.and Cell.Bio.8:466−472(1988))、ヒトCMV最初期プロモーター(Boshartら,Cell 41:521−530(1985);Foeckingら,Gene 45:101−105(1986))、マウスCMV最初期プロモーター、SV40初期プロモーター領域(Benoistら,Nature 290:304−310(1981))、オルギア・シュードツガタ(Orgyia pseudotsugata)最初期プロモーター、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441−1445(1981))、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら,Nature 296:39−42(1982));原核生物発現ベクター、例えばβ−ラクタマーゼプロモーター(Villa−Komaroffら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727−3731(1978))またはtacプロモーター(DeBoerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21−25(1983));ならびに酵母または他の真菌由来のプロモーター、例えばGAL1、GAL4またはGAL10プロモーター、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーターまたはアルカリホスファターゼプロモーター。
【0028】
ウイルス長末端反復プロモーター、例えばマウス乳癌ウイルス長末端反復(MMTV−LTR)(Faselら,EMBO J.1(1):3−7(1982))、モロニーマウス肉腫ウイルス長末端反復(Reddyら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(9):5234−5238(1980))、モロニーマウス白血病ウイルス長末端反復(Van Beverenら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(6):3307−3311(1980))、HIV LTR(Genbankアクセッション番号AB100245)、ウシフォーミーウイルスLTR(Genbankアクセッション番号NC
001831)、RSV 5’−LTR(Genbankアクセッション番号K00087)、HIV−2 LTR(Genbankアクセッション番号NC
001722)、トリレトロウイルスLTR(Juら,Cell 22:379−386(1980))およびヒトヘルペスウイルスLTR(Genbankアクセッション番号NC
001806)が本発明のベクターに含まれうる。
【0029】
他の許容されるプロモーターには、ヒトCMV5プロモーター、マウスCMVプロモーター、EF1αプロモーター、SV40プロモーター、肝特異的発現のためのハイブリッドCMVプロモーター(例えば、CMV最初期プロモーターをヒトα1−アンチトリプシン(HAT)もしくはアルブミン(HAL)プロモーターの転写プロモーター要素に結合させることにより製造される)、または肝癌特異的発現のためのプロモーター(例えば、この場合、ヒトアルブミン(HAL;約1000bp)またはヒトα1アンチトリプシン(HAT、約2000bp)の転写プロモーター要素がヒトα1−ミクログロブリンおよびビクニン前駆体遺伝子(AMBP)の145bp長のエンハンサー要素と組合される;HAL−AMBPおよびHAT−AMBP)が含まれる。
【0030】
また、細菌プロモーター、例えばT7 RNAポリメラーゼプロモーターまたはtacプロモーターが、発現の制御のために使用されうる。
【0031】
1つの実施形態においては、プロモーターはヒトCMV(hCMV)プロモーターである。hCMVプロモーターは種々の哺乳類細胞型において高レベルの発現をもたらす。
【0032】
コード配列が細胞内の転写または翻訳制御配列「の制御下にある」、「に機能的に結合されている」または「に機能的に連結されている」と言えるのは、該配列が該配列の発現を導き又は調節する場合である。例えば、遺伝子に機能的に連結されているプロモーターは、RNA、好ましくはmRNAへの該コード配列のRNAポリメラーゼ媒介性転写を導き、ついで該RNAは(それがイントロンを含有する場合には)スプライシングされることが可能であり、所望により、該コード配列によりコードされるタンパク質へと翻訳されうる。遺伝子に機能的に連結されたターミネーター/ポリAシグナルはRNAへの遺伝子の転写を終結させ、RNA上へのポリAシグナルの付加を導く。
【0033】
「発現する」および「発現」なる語は、遺伝子、RNAまたはDNA配列内の情報が現れることを可能にする又はもたらすことを意味し、例えば、対応遺伝子の転写および翻訳に関与する細胞機能を活性化することによりタンパク質を産生させることを意味する。「発現する」および「発現」は、DNAからRNAへの、およびRNAからタンパク質への転写を含む。DNA配列は細胞内で又は細胞により発現されて、「発現産物」、例えばRNA(例えばmRNA)またはタンパク質を生成しうる。また、該発現産物自体が該細胞により「発現される」と言われることが可能である。
【0034】
「形質転換」なる語は細胞内への核酸の導入を意味する。導入された遺伝子または配列は「クローン」と称されうる。該導入DNAまたはRNAの受容宿主細胞は「形質転換」されており、「形質転換体」または「クローン」である。宿主細胞に導入されるDNAまたはRNAは、宿主細胞と同じ属もしくは種の細胞または異なる属もしくは種の細胞を含む任意の起源に由来することが可能である。当技術分野で非常によく知られている形質転換方法の例には、リポソーム運搬、エレクトロポレーション、CaPO
4形質転換、DEAE−デキストラン形質転換、マイクロインジェクションおよびウイルス感染が含まれる。
【0035】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを含む。「ベクター」なる語は、宿主を形質転換し、所望により導入配列の発現および/または複製を促進するための、宿主細胞内へのDNAまたはRNA配列の導入をもたらしうるビヒクル(例えば、プラスミド)を意味する。
【0036】
本発明のポリヌクレオチドは発現系において発現されうる。「発現系」なる語は、ベクターにより運ばれ宿主細胞に導入されたタンパク質または核酸を適当な条件下で発現しうる宿主細胞および和合性ベクターを意味する。一般的な発現系には、大腸菌(E.coli)宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳類宿主細胞およびベクター、例えばプラスミド、コスミド、BAC、YAC、およびウイルス、例えばアデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)が含まれる。
【0037】
ベクター
本発明は、以下のマルチクローニングサイト:EcoRI、XhoI、PaeR7I、Bsp120I、ApaI、BstZ17I、Bst1107I、PstI、BamHIを含むプラスミドを提供し、これは、例えば、
図1に示されているとおり、これらの制限部位間の相対的配置を含み、例えば、該マルチクローニングサイトの重複制限部位は以下のとおりに特徴づけられる。
【0038】
【化2】
本発明の1つの実施形態においては、該マルチクローニングサイトは以下のヌクレオチド配列を含む。
【0039】
【化3】
本発明の1つの実施形態においては、本発明のpAVECプラスミドは、
図1に記載されているプラスミド地図により特徴づけられる。
【0040】
本発明の1つの実施形態においては、該プラスミドは、以下のヌクレオチド配列を含むpAVECである。
【0041】
【化4】
遺伝子
幾つかの遺伝子のいずれか(例えば、免疫グロブリン)が本発明のプラスミド内に挿入されうる。以下の標的免疫グロブリンアミノ酸配列のいずれかをコードする本発明のプラスミドは本発明の一部を構成する。本発明は、ポリヌクレオチドまたは遺伝子(例えば、免疫グロブリンをコードするもの)をpAVEC内に挿入するための、該過程において或るpAVECポリヌクレオチド配列の喪失(例えば、ベクター内への導入遺伝子の連結に適合性である制限酵素切断部位を生成するマルチクローニングサイトの一部の切り出しによるもの)を招くいずれかの方法の産物を含む。そのような方法の産物は、本明細書においては、特定の遺伝子またはポリヌクレオチドを含むpAVECベクターと称されうる。
【0042】
本発明の範囲は、pAVECプラスミド内にポリヌクレオチドを導入するための方法を含み、該方法は、該プラスミドを、例えばプラスミドマルチクローニングサイトにおいて、例えば1以上の制限エンドヌクレアーゼで切断し、該切断プラスミドの末端を、例えばDNAリガーゼで、該導入ポリヌクレオチドの適合性末端に連結して、閉じた組換えプラスミドを得ることを含む。そのような方法の産物であるいずれの組換えプラスミドも本発明の一部である。ポリヌクレオチドの適合性末端は、DNAリガーゼにより連結されうる末端である。本発明の1つの実施形態においては、該末端は平滑または粘着末端(例えば、EcoR1またはBamH1のような制限エンドヌクレアーゼによる切断により生じるもの)である。
【0043】
本発明の1つの実施形態においては、免疫グロブリンは、以下のポリペプチドのいずれか(例えば、可変領域のみ、または可変ドメインおよび定常ドメイン)の成熟または未プロセシング形態である。
【0044】
【化5】
国際出願公開番号WO2003/100008(その全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。
【0045】
本発明の実施形態は、該プラスミドが2以上の免疫グロブリンを含む実施形態、例えば、該プラスミドが、本明細書に記載されている免疫グロブリンのいずれかの組合せ(例えば、重鎖Ig#1.0および軽鎖Ig#1.0;またはLCCおよびHCA;またはLCFおよびHCA;またはLCCおよびHCB)を含む実施形態を含む。
【0046】
本発明の実施形態においては、pAVECプラスミドは、アミノ酸配列:
【0047】
【化6】
を含む軽鎖免疫グロブリン;および/または、アミノ酸配列:
【0048】
【化7】
を含む重鎖免疫グロブリン;またはその可変ドメイン、または軽鎖および/もしくは重鎖のCDR(例えば、前記配列において下線で示されているもの)の1以上(例えば、3個)を含む軽鎖および/もしくは重鎖免疫グロブリンを含有する。
【0049】
本発明の1つの実施形態においては、pAVECベクターは、例えばアブシキシマブ(Abciximab)、アダリムマブ(Adalimumab)、アレムツズマブ(Alemtuzumab)、バシリキシマブ(Basiliximab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、セツキシマブ(Cetuximab)、セルトリズマブ・ペゴール(Certolizumab pegol)、ダロツズマブ(Dalotuzumab)、ダクリズマブ(Daclizumab)、デノスマブ(Denosumab)、エクリズマブ(Eculizumab)、エファリズマブ(Efalizumab)、ゲムツズマブ(Gemtuzumab)、イブリツモマブ・チウキセタン(Ibritumomab tiuxetan)、インフリキシマブ(Infliximab)、ムロモナブ(Muromonab)−CD3、ナタリズマブ(Natalizumab)、オマリズマブ(Omalizumab)、パリビズマブ(Palivizumab)、パニツムマブ(Panitumumab)、ラニビズマブ(Ranibizumab)、リツキシマブ(Rituximab)、ロバツムマブ(Robatumumab)、トシツモマブ(Tositumomab)、ALD518またはトラスツズマブ(Trastuzumab)のような抗体の軽および/または重免疫グロブリン鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。そのような抗体の配列は当技術分野で公知である。本発明の実施形態においては、pAVECベクターは、抗原(例えば、いずれかの哺乳動物、例えばヒトまたはイヌまたはサルまたはラットまたはウサギまたはマウスに由来するもの)、例えば、VEGF、VEGFR、EGF、EGFR、PD−1、TNFアルファ、TGFベータ、TRAIL−R1、TSLP、Nav1.7、Nav1.8、ERK、MEK、TRAIL−R2、IL−10、IL−6、IL−6R、IGF1R、IL−23p19、IL23R、PCSK9、CD20、RANKL、RANK、CD33、CD11a、ErbB2、IgE、Gタンパク質共役受容体(GPCR)、HIV抗原、HCV抗原および呼吸器性シンシチウムウイルス(RSV)抗原のような抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性フラグメントの重鎖および/または軽鎖免疫グロブリン;あるいはその抗原結合性フラグメント、またはそのような抗体もしくは抗原結合性フラグメントのいずれかの可変ドメイン、またはそのような抗体もしくは抗原結合性フラグメントのいずれかの軽鎖および/もしくは重鎖のCDRの1以上(例えば3個)を含む軽鎖および/もしくは重鎖免疫グロブリンを含む。本発明の1つの実施形態においては、該抗原が由来する種は軽鎖および/もしくは重鎖定常ドメインならびに/または免疫グロブリンフレームワークのものと同じ又は異なる。
【0050】
本発明の実施形態においては、pAVECベクターは、以下のものからなる群から選択されるメンバーを含む軽鎖および/または重鎖免疫グロブリンを含む:
【0051】
【化8】
タンパク質の発現および精製
本発明のもう1つの態様は、pAVECを使用する組換えタンパク質の製造方法および/または特定のポリヌクレオチドの増幅方法に関する。例えば、本発明の実施形態においては、タンパク質の発現方法は、(例えば、pAVECのhCMVプロモーターのようなプロモーターに機能的に連結された)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有するpAVECプラスミドを含む宿主細胞(例えば、CHO細胞)を、該プラスミドを含む宿主細胞の増殖および該組換えタンパク質の発現を可能にする適当な条件下で培養することを含む。例えば、該方法は以下の工程を含む。
【0052】
a)関心のあるポリペプチド(例えば、免疫グロブリン鎖)をコードするポリヌクレオチドをpAVECプラスミド(例えば、配列番号1)(例えば、pAVECのhCMVプロモーターのようなプロモーターに機能的に連結されているもの)内に導入する工程。
【0053】
前記のとおり、pAVECプラスミド内への該ポリヌクレオチドの導入は、例えば、該プラスミド内への導入ポリヌクレオチドの末端の連結に適合性である制限酵素切断部位を生成するためのマルチクローニングサイトの一部の切り出しによる、或るpAVECポリヌクレオチド配列の喪失を招きうる。
【0054】
b)関心のあるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むpAVECプラスミドで宿主細胞をトランスフェクトする工程。
【0055】
該プラスミドは、異所的に自律複製要素として(例えば、該プラスミドが高コピー数、例えば、約2、3、4、5、10、20または50のコピー数を有する場合)または宿主細胞染色体内に組込まれて、宿主細胞において増幅されうる。
【0056】
c)該プラスミドを含む宿主細胞の増殖および組換えタンパク質の発現を可能にする適当な条件下、細胞を培養する工程。
【0057】
d)所望により実施されうる、産生されたポリペプチドを回収する工程。
【0058】
与えられたタンパク質を、例えば、細胞、細胞培養、または細胞が培養された培地から回収(単離および/または精製)するための方法は、当技術分野でよく知られている。非限定的な例としては、塩またはアルコール沈殿(例えば、硫酸アンモニウム沈殿またはエタノール沈殿)、アフィニティクロマトグラフィー(例えば、精製タグと共に用いられる);免疫アフィニティまたはイオン交換カラム上での分画;高圧液体クロマトグラフィー(HPLC);逆相HPLC;シリカ上またはカチオン交換樹脂、例えばDEAE上のクロマトグラフィー;クロマトフォーカシング;等電点フォーカシング;向流分配;SDS−PAGE;ゲル濾過(例えば、Sephadex G−75を使用するもの);およびIgGのような混入物を除去するためのプロテインAセファロースカラムにより、生物学的物質からタンパク質が単離および/または精製されうる。そのような精製方法は当技術分野でよく知られており、例えば、“Guide to Protein Purification”,
Methods in Enzymology,Vol.182,M.Deutscher編,,1990,Academic Press,New York,NYに開示されている。
【0059】
液体水性培養内の哺乳類細胞の増殖(成長)は当技術分野でよく知られている。当技術分野で公知の哺乳類細胞培養増殖培地の例には、EX−CELL ACF、CHO培地(Sigma−Aldrich(St.Louis,MO);後記で更に詳細に説明される)、DMEM、DMEM/F−12、F−10栄養混合物、RPMI培地1640、F−12栄養混合物、培地199、イーグルMEM、RPMI、293培地およびイスコベ(Iscove)培地が含まれる。
【0060】
細胞増殖は幾つかの系のいずれかにおいて行われうる。例えば、細胞増殖は、単純なフラスコ、例えばガラス振とうフラスコにおいて行われうる。他の系には、タンクバイオリアクター、バッグバイオリアクターおよび使い捨てバイオリアクターが含まれる。タンクバイオリアクターには、典型的には、細胞を液体培地内で増殖させる金属容器(例えば、ステンレス鋼ジャケット付き容器)を含む。タンクバイオリアクターは広範な培養体積(例えば、100L、150L、10000L、15000L)で使用されうる。タンクバイオリアクターは、しばしば、温度制御、培地攪拌、スパージガス濃度の制御、pHの制御、O
2濃度の制御、培地からのサンプルの除去、リアクター重量表示および制御、ハードウェアの清掃、ハードウェアの滅菌、全供給を送るための配管またはチューブ配置、培地の添加、pHの制御、溶液の制御および気体の制御、増殖溶液内への無菌流体の送出、ならびに管理上の制御およびデータ収集のための手段を含む、細胞増殖条件を制御するための追加的な特徴を有する。タンクバイオリアクターの分類は、熱および材料(例えば、酸素および基質)を分配するためにリアクターを混合するために機械的攪拌装置(例えば、羽根車)が使用される攪拌タンクリアクターを含む。バブルカラムリアクターは、内容物を混合するために空気のみを使用する背の高いリアクターである。エアリフトリアクターはバブルカラムリアクターに似ているが、それがドラフトチューブを含有する点で異なる。ドラフトチューブは、典型的には、循環および酸素移動を改善し該リアクター内のせん断力を均等化する内部チューブである。流動床リアクターにおいては、細胞は、流体と共に移動する小粒子上に「固定化」される。該小粒子は、細胞が付着するための並びに該細胞への酸素および栄養物の高率の移動を可能にする大きな表面積をもたらす。充填床リアクターにおいては、細胞は大粒子上に固定化される。これらの粒子は液体と共には移動しない。充填床リアクターは、構築および運転が簡単であるが、閉塞および酸素移動不良を被りうる。使い捨てバイオリアクターは、使い捨て可能な1回使用のためのバイオリアクターである。しばしば、使い捨てバイオリアクターは、非使い捨てバイオリアクターに類似した特徴(例えば、攪拌系、スパージ、プローブ、出入口など)を有する。
【0061】
ポリペプチドが細胞または組織から単離される場合には特に、1以上のタンパク質分解酵素インヒビター、例えばフェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、ペファブロック(Pefabloc)SC、ペプスタチン、ロイペプチン、キモスタチンおよびEDTAをアッセイ系に加えることが好ましい。
【0062】
幾つかの実施形態においては、関心のあるタンパク質は、「タグ」または「マーカー」と称されうる第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチド部分を伴う。タグは、例えば、発現後のポリペプチドの精製または検出を促進するために使用されうる。例えば、発現されるべきポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの5’または3’末端におけるタグをコードするポリヌクレオチドのインフレーム挿入により、融合ポリペプチドが構築されうる。ついで本発明の発現系において融合ポリヌクレオチドが発現されうる。そのようなタグには、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヘキサヒスチジン(His6)タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)タグ、赤血球凝集素(HA)タグ、セルロース結合タンパク質(CBP)タグおよびmycタグが含まれる。本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドを標識するために、検出可能なタグ、例えば
32P、
35S、
3H、
99mTc、
123I、
111In、
68Ga、
18F、
125I、
131I、
113mIn、
76Br、
67Ga、
99mTc、
123I、
111Inおよび
68Gaが使用されうる。そのような融合体を構築し使用するための方法は非常に一般的であり、当技術分野でよく知られている。
【0063】
関心のあるポリペプチドに適した精製方法は、組換え細胞培養内の発現の際の該ポリペプチドの特性の変化に対処するための修飾を要しうる、と当業者は理解している。
【0064】
本発明はまた、宿主細胞をpAVECプラスミドで形質転換することを含む、ポリヌクレオチドをpAVECプラスミド内に導入するための方法に関する。例えば、該方法は以下の工程を含む。
【0065】
a)該ポリヌクレオチドの挿入が望まれる部位において、(例えば、制限酵素、例えば、挿入されるポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションに適合性である、および該ポリヌクレオチドの後続の連結の末端に適合性である末端を生成する制限酵素を使用して)pAVECプラスミドを切断する工程。挿入されるポリヌクレオチドの末端は、切断プラスミドの末端に適合性の末端を生成する制限酵素での切断を含む方法によっても生成されうる。
【0066】
前記のとおり、pAVECプラスミド内への該ポリヌクレオチドの導入は、例えば、該プラスミド内への導入ポリヌクレオチドの末端の連結に適合性である制限酵素切断部位を生成するためのマルチクローニングサイトの一部の切り出しによる、或るpAVECポリヌクレオチド配列の喪失を招きうる。
【0067】
b)該切断pAVECの末端を、(例えば、DNAリガーゼを使用して)該ポリヌクレオチドの末端に連結して、最終的な環状組換えプラスミドを得る工程。
【0068】
b)ついで該組換えプラスミドは、該プラスミドおよび添加ポリヌクレオチドが増幅される宿主細胞内に形質転換されうる。該プラスミドは、異所的に自律複製要素として(例えば、該プラスミドが高コピー数、例えば、約2、3、4、5、10、20または50のコピー数を有する場合)または宿主細胞染色体内に組込まれて、宿主細胞において増幅されうる。
【0069】
キット
本発明のpAVECプラスミドベクターはキットにおいて提供されうる。本発明のキットは、該プラスミドベクターに加えて、該プラスミドベクターの利用において使用されうるいずれかの試薬を含みうる。1つの実施形態においては、該キットは、細菌および/または哺乳類宿主細胞内への該ベクターの形質転換に必要な試薬を含む。例えば、該キットは、リン酸カルシウム形質転換法のための試薬、すなわち、塩化カルシウム、バッファー(例えば、2×HEPES緩衝食塩水)および無菌蒸留水を含みうる。もう1つの実施形態においては、該キットは、DEAE−エキストラン形質転換のための試薬、すなわち、PBS中のクロロキン、PBS中のDEAE−デキストランおよびリン酸緩衝食塩水を含む。更にもう1つの実施形態においては、該キットには、リポソーム形質転換のための試薬、すなわち、DOTAP/コレステロール押出し(extruded)リポソームから押出されたリポソームが含まれる。例えば、該キットはカチオン性脂質系トランスフェクション試薬Lipofectamine(リポフェクタミン)(商標)(Invitrogen Life Technologies;Carlsbad,CA)を含みうる。
【0070】
該キットは、本発明のベクターの細菌形質転換に必要な試薬を含みうる。例えば、該キットは形質転換コンピテント細菌(例えば、DH1、DH5、DH5α、XL1−Blue、SURE、SCS110、OneShot Top10またはHB101)を含みうる。
【0071】
該キットは、増殖培地、または増殖培地の調製に必要な試薬を含みうる。例えば、1つの実施形態においては、該キットは哺乳類細胞の増殖のためのウシ胎児血清またはDMEM(ダルベッコ/フォークト変法イーグル(ハリー・イーグル)最少必須培地)を含みうる。もう1つの実施形態においては、該キットは、細菌を増殖させるための適当な抗生物質(例えば、アンピシリンまたはカナマイシン)を含有する粉末ルリアブロス培地またはルリアブロスプレートを含有しうる。
【0072】
該キットにおいて供給される成分は適当なバイアルまたは容器(例えば、プラスチックまたはガラスバイアル)内で提供されうる。該キットは貯蔵のための適当なラベル表示、および使用のための適当な説明を含みうる。
【実施例】
【0073】
以下の実施例は、本発明を更に詳しく説明するために記載されており、それを限定するものと解釈されるべきではない。本発明の範囲は、以下の実施例に記載されている方法の全てを含む。
【0074】
実施例1:pAVECプラスミドの構築
マルチクローニングサイト(MCS)の配列:
【0075】
【化9】
をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により合成した。ついでPCR産物を制限酵素EcoRIおよびBamHIで消化した。ベクターpAIL17L(
図2)も制限酵素EcoRIおよびBamHIで消化した。最後に、該消化PCR産物を該消化ベクターに連結し、ベクターpAVECに関して形質転換体をスクリーニングした。ついでpAVECにおけるマルチクローニングサイトを、該部位の完全性に関する配列決定により分析した。
【0076】
pAIL17Lの配列:
【0077】
【化10】
本発明は、本明細書に記載されている具体的な実施形態により範囲において限定されるものではない。実際、本明細書に記載されているものに加えて本発明の種々の修飾が前記説明および添付図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような修飾は特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。
【0078】
本出願の全体にわたり特許、特許出願、刊行物、製品説明およびプロトコールが引用されているが、それらの開示の全体をあらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れることとする。