(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200432
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】モンテルカストまたはその薬学的に許容可能な塩を含む経口投与用フィルム
(51)【国際特許分類】
A61K 31/47 20060101AFI20170911BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20170911BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20170911BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20170911BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20170911BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20170911BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20170911BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20170911BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20170911BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
A61K31/47
A61K47/36
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/14
A61K9/70
A61P11/06
A61P43/00 111
A61P37/08
A61P11/02
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-549990(P2014-549990)
(86)(22)【出願日】2012年12月26日
(65)【公表番号】特表2015-503549(P2015-503549A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】KR2012011466
(87)【国際公開番号】WO2013100564
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年11月20日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0142811
(32)【優先日】2011年12月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン−ジェ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ナ−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ユン−ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オ,チュン−ギョ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ポン−ヨン
【審査官】
鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】
韓国登録特許第10−1077468(KR,B1)
【文献】
国際公開第2011/108643(WO,A1)
【文献】
特開2010−132653(JP,A)
【文献】
特開2008−303153(JP,A)
【文献】
J. Pharm. Biomed. Anal.,2007年,Vol.45,pp.465-471
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/47
A61K 9/70
A61K 47/10
A61K 47/14
A61K 47/36
A61K 47/38
A61P 11/02
A61P 11/06
A61P 37/08
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モンテルカストまたはその薬学的に許容可能な塩;フィルム形成剤である高分子;及び可塑剤を含む口腔内崩壊フィルムであって、
前記高分子が、澱粉、変性澱粉、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、
かつ前記可塑剤が、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びトリアセチンからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、
前記フィルムの乾燥減量が、1ないし8重量%であることを特徴とするモンテルカスト口腔内崩壊フィルム。
【請求項2】
(S1)モンテルカストまたはその薬学的に許容可能な塩、フィルム形成剤である高分子及び可塑剤が、溶解または分散されており、
前記高分子が、澱粉、変性澱粉、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択されたいずれか一つ以上であり、
前記可塑剤が、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びトリアセチンからなる群より選択されたいずれか一つ以上である、液状組成物を製造する段階;
(S2)フィルム成形のため、前記液状組成物を塗布する段階;並びに
(S3)前記塗布して形成したフィルムを、乾燥減量が1ないし8重量%になるまで乾燥する段階;を含むことを特徴とするモンテルカスト口腔内崩壊フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記製造方法が、LEDランプ、ナトリウム灯またはUV遮断蛍光灯の下で行われることを特徴とする請求項2に記載のモンテルカスト口腔内崩壊フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記可塑剤が、グリセリンであることを特徴とする請求項2に記載のモンテルカスト口腔内崩壊フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口投与用フィルム剤形に関し、モンテルカスト(montelukast)またはその薬学的に許容可能な塩、望ましくはモンテルカストナトリウムを含有するものに関する。本発明による経口投与用フィルム剤形は、服用時に口腔内で崩壊するため、水なしでも容易に服用することができる。
【背景技術】
【0002】
モンテルカストは、ロイコトリエン受容体拮抗体(leukotriene receptor antagonist(LTRA))であって、喘息、アレルギー性鼻炎などに使用されている。
【0003】
現在の経口剤形は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤などで発売されている。これら剤形は、すべて水と共に服用せねば投与し難く不便である。
【0004】
口腔内に投与して溶かして服用するフィルム剤形は、容易に崩壊して口腔内の唾液のみで服用できるため、錠剤などを飲み込み辛い子供や年寄り、長期間寝たきりの患者などに服用上の便宜を提供することができる。また、薄いフィルムの特性上、財布や手帳などに入れて携帯し易い便利な所持上の便宜を提供する。
【0005】
なお、モンテルカストは、水分、熱及び光によって比較的に変性し易いと知られている。従って、モンテルカストをフィルム剤形に作るためには、製造後の保管中は勿論、製造中でも安定性を確保せねばならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、モンテルカストまたはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含み、服用し易く、安定性が確保された経口投与用フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、本発明は、モンテルカストまたはその薬学的に許容可能な塩、望ましくはモンテルカストナトリウムを含む経口投与用フィルムを提供する。本発明の経口投与用フィルムは、口腔内で溶かすか又は微細に分散して服用する。通常、舌の上に置いて溶かすが、口蓋、舌下、口腔前庭(buccal)などに付着して投与することもできる。
【0008】
本発明によるモンテルカストの薬学的に許容可能な塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、マグネシウム、ジシクロヘキシルアミン(dicyclohexylamine)、アマンタジン(amantadine)、シクロプロピルアミン(cyclopropylamine)、または他の有機アミノからなる塩類を含むが、これらに限定されることはない。
【0009】
本発明の経口投与用フィルムは、口腔内崩壊フィルム(Oral Dispersible Film、ODF)、ストリップ(strip)、口腔内溶解フィルム(orally dissolving film)などとも称され、口腔(oral cavity)内で溶かすか又は微細に分散して服用する。このようなフィルムは、通常、舌の上に置いて溶かすが、口蓋、舌下、口腔前庭などに付着して投与することもできる。本発明によるフィルム剤形は、水なしに服用可能であるという長所がある。
【0010】
本発明による経口投与用フィルムは、モンテルカスト1ないし15mgを含み、1枚当たりの重量が20ないし200mgであり、全体重量の5ないし20重量%が可塑剤であり、500μm以下の厚さを有するフィルムである。このようなフィルムは、着香剤、着色剤及び甘味剤のうちいずれか一つ以上を含むことが望ましく、これらの含量はフィルムの総重量対比でそれぞれ10重量%以内である。その他、必要に応じて増粘剤、安定剤、pH調節剤、崩壊剤、抗菌剤、唾液刺激剤、酸味剤、乳化剤などを更に加えることができる。このような添加剤を除いた重量の大部分は、フィルムの形成にかかわる物質が占める。
【0011】
本明細書において、フィルム形成剤としては、澱粉、水溶性澱粉、変性澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、ゼラチン、アルギン酸、グアーガム、キサンタンガム、ポリエチレングリコール、アカシアガム、アラビアガム、ポリアクリル酸、アミロース、ペクチン、デキストリン、キチン、キトサン、ゼラチン、グルテン、カゼイン、カラギーナン、ローカストビーンガムなどから選択された一つ以上を使用することができる。
【0012】
前記可塑剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリアセチンなどから選択された一つ以上を使用することができる。
【0013】
前記着香剤としては、人工香料、天然香料またはこれらの混合物を使用でき、レモン、ペパーミント、チェリー、りんご、ぶどう、ブルーベリー、オレンジ、桃、パイナップル、グレープフルーツ、高麗人参などを含む多様な香料物質を使用することができる。
【0014】
前記着色剤としては、人工色素、天然色素またはこれらの混合物を使用することができる。
【0015】
前記酸味剤としては、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、酒石酸、フマル酸またはこれらの混合物を使用することができる。
【0016】
本発明による経口投与用フィルムは、上述した成分を水、アルコール類(例えば、炭素数1ないし4の低級アルコール)、アセトンなどの単独溶媒または混合溶媒に溶かすか、もしくは、分散させて溶液または混合液を製造した後、その溶液または混合液を最大1,000μm以下に塗布し、それを乾燥させることで製造する。本発明による経口投与用フィルムの製造に使用できる溶媒としては、上述した溶媒の外に、アセトン、ヘプタン、ブタノール、プロパノール、ペンタノール、エチルアセテートなどが挙げられるが、本発明がこのような溶媒の種類によって限定されることはなく、例えば、必要に応じてICH(International Conference on Harmonisation)ガイドラインのうち残留溶媒に関する説明からクラス3に属する溶媒が使用され得る。
【0017】
本発明では、上記の成分から混合された製造原液を1,000μm以下に薄く塗布し、それに熱を加えて乾燥させることで、フィルムの形態で作る製造工程を含む。また、製造されたフィルムは、所望の大きさと重量を有するように切り、光と水分が遮断される包装材、望ましくはアルミニウムパウチフィルムで包装することで、最終製品を作る。
【0018】
また、本発明による安定性が向上されたモンテルカスト含有経口投与用フィルムの製造方法は、(S1)モンテルカストまたはその薬学的に許容可能な塩、フィルム形成剤及び可塑剤が、溶解または分散された液状組成物を製造する段階、(S2)前記液状組成物を塗布する段階、並びに(S3)塗布して形成した前記フィルムをLODが1ないし8重量%(望ましくは2ないし7重量%、更に望ましくは3ないし6重量%)になるまで乾燥する段階を含む。
【0019】
本発明でLODは、AND社の水分計MX‐50モデルを使用して測定することができる。LODとは、スタンダードモードのLO ACCURACYにセットして約1gのフィルムを105℃で乾燥するとき、乾燥前のフィルム重量対比減少する重量%を意味する。
【0020】
本発明は、モンテルカスト含有フィルム剤形の水分率を調節することで、モンテルカストの安定性だけでなく、フィルムの様々な物性(1%以下ではフィルムが非常に割れ易く、8%を超える場合にはべたつき過ぎて(tacky)フィルムを扱い難い)を好適に調節できるという利点を提供する。
【0021】
より望ましくは、本発明によるモンテルカスト含有フィルムの製造方法、すなわち製造原液である液状組成物を製造及び乾燥する過程、並びに乾燥されたフィルムを所望の大きさ(重量)に切って包装する工程を、LEDランプ、ナトリウム灯または退色防止用蛍光灯(UV遮断蛍光灯)の下で、更に望ましくはLEDランプ又はナトリウム灯の下で行うことを特徴とする。
【0022】
UV遮断蛍光灯は、一般蛍光灯から放射されるUVを遮断したものである。従って、一般蛍光灯を使用し、光が照射される方向にUV遮断フィルムを貼り付けることと原理上同一方法であると言えるため、一般蛍光灯を使用し、光が照射される方向にUV遮断フィルムを貼り付けた状態で上記の製造工程を行うことも、本発明の範囲に含まれる。
特に、このような照明を使用する場合、同じルクス(lux)条件下でもモンテルカストの安定性を維持することができる。
【0023】
更に望ましくは、本発明によるモンテルカストフィルムの製造方法において、フィルムの露出部分は照明度をなるべく約300ルクスまたはその以下に維持し、フィルムが光に曝される時間を2時間以内に調節することが更に望ましい。
【0024】
また、本発明は、主成分としてモンテルカストナトリウムを使用し、フィルム形成剤としてα化澱粉(pregelatinized starch)及び/またはヒドロキシプロピルセルロースを使用し、可塑剤としてグリセリンを使用する経口投与用フィルムの場合、他の成分を使用するモンテルカスト口腔用フィルムに比べて安定性に優れ、フィルムの物性が優れるという驚くべき知見に基づく。更に望ましくは、本発明による口腔用フィルムは、甘味剤としてスクラロースを含有し、クエン酸を更に含み得る。
【0025】
本発明による口腔内崩壊フィルム(ODF)を製造するための水を含む原液状態である液状組成物内においても、薬物であるモンテルカストの安定性が2週間以上変化なく維持でき、本発明によって作られたモンテルカスト含有口腔用フィルムは、アルミニウムパウチで包装された状態で40℃、75%RHの条件で6ヶ月間保管しても安定的である。
【0026】
本発明において、「安定的である」とは、MOK‐3‐スルホキシドが1.7重量%以下に発生し、その他の不純物質の総含量が2.5重量%以下であることを意味する。
【0027】
このような処方を有するモンテルカストナトリウムフィルム製剤の場合、生産工程中に薬品の安定性が確保され、量産が容易であり、官能上適切であり、薬品として長期間の安定性を確保することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、モンテルカストまたはその薬学的に許容可能な塩、望ましくはモンテルカストナトリウムを含む口腔内崩壊フィルム(ODF)製剤及びそのような製剤を、モンテルカストの安定性を阻害せず製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の理解を助けるために実施例などを挙げて詳しく説明する。しかし、本明細書による実施例は多くの他の形態に変形され得、本発明の範囲が 後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を持つ者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例】
【0030】
<実施例1>
下記の処方により、モンテルカストナトリウムを含むフィルム製剤を製造した。すべての物質を溶媒(水)に溶かした後、均一に混合した。それを80℃のオーブンで乾燥したが、LOD(乾燥減量、120℃、10分)が1ないし3重量%になるようにフィルムを製造した。製造されたフィルムは、フィルム重量が約40.5mgになるように、適切な大きさに切った。そのうち、モンテルカストナトリウムは約5.2mgであった。製造されたフィルムの厚さは、50ないし150μm程度であった。
【0031】
【表1】
【0032】
<実施例2>
実施例1と同様に作ったが、LODが4ないし6重量%になるようにフィルムを製造した。
【0033】
<実験例1>
実施例1と実施例2で製造したフィルムを同一条件で保管した後、モンテルカストの不純物質の発生程度を比較した。具体的に、実施例1と実施例2で作られたサンプルをアルミニウムパウチで包装し、40℃で相対湿度75%を維持するチャンバーに入れて保管した。6ヶ月保管後、保管したサンプルの不純物質の発生程度を比較した結果を下記の表2に示した。実施例1のサンプルの水分率は約2重量%程度であり、実施例2のサンプルの水分率は約5重量%であった。
【0034】
不純物質の分析は、UPLCを利用し、分析条件は下記のとおりであった。
【0035】
コラム:2.1mm×100mm、Waters ACQUITY UPLC(登録商標)HSS C18 1.8μm
注入量:2μl
検出機:紫外部吸光光度計(波長258nm)
コラム温度:40℃
サンプル温度:5℃
移動相A:0.1% ギ酸‐水、移動相B:100% アセトニトリル
開始から13分:移動上A:移動上B=35:65
13分から13.1分:移動上A:移動上B=0:100
13.1分から15分:移動上A:移動上B=35:65
Diluent:100% メタノール
【0036】
【表2】
【0037】
ここで、MOK‐3‐スルホキシドは、モンテルカストの不純物質である2‐(1‐{(1R)‐1‐{3‐[(E)‐2‐(7‐クロロ‐2‐キノリル)‐1‐エテニル]フェニル}‐3‐[2‐(1‐ヒドロキシル‐1‐メチルエチル)フェニル]プロピルスルフィニルメチル)シクロプロピル}酢酸である。
【0038】
<実施例3>
実施例1と同様に作ったが、LODが1重量%以下になるようにフィルムを製造した。
【0039】
<実施例4>
実施例1と同様に作ったが、LODが8重量%を超えるようにフィルムを製造した。
【0040】
<実験例2>
実施例1、2、3及び4で製造したフィルムを非常に弱い力で引っ張りながら、直径約10mmの棒に巻き取った。それを曲げると、実施例1、2及び4の場合、問題なく曲がったが、実施例3のフィルムは90度に曲げる前に割れた。
【0041】
<実験例3>
作られたフィルムを2枚重ねた。実施例1、2及び3で作られたフィルムはフィルム同士をすぐに引き離すことができたが、実施例4のフィルム同士は互いにくっ付いて容易に引き離せなかった。
【0042】
<実施例5及び実施例6>
実施例1と同一方法で、溶媒に原料を溶かした原液を製造した。このときの組成は、下記の表3(実施例5)及び表4(実施例6)のとおりである。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
<実験例4>
実施例5及び実施例6の原液を光を遮断した容器に入れて、40℃に維持されるチャンバーに1週間保管後、原液の不純物質を分析した。全体不純物質の量は、大きな変化なく維持された。従って、工程中に原液状態で保管しても、製品の安定性を維持できることが確認できた。測定結果を表5に示した。
【0046】
【表5】
【0047】
<実験例5>
実施例1で製造したフィルムサンプルを透明なガラス瓶に入れ、ふたをしてサンプルが空気中の水分を吸収しないようにした後、一般の家庭/産業照明用蛍光灯、LEDランプ、ナトリウム灯、退色防止用蛍光灯の下で瓶を逆さにして2時間保管後、不純物質を分析した。各灯の明るさを調節するか又は灯との距離などを調節することで、各灯毎に約1,000ルクスと約200ルクスの条件になるようにしてそれぞれの場合について実験を行った。その結果、生成される全ての不純物質の程度を表6及び表7に示した。
【0048】
【表6】
【0049】
【表7】
【0050】
表6及び表7に示されたように、一般蛍光灯の下では200ルクスまで下げても1時間露出時に約0.63%の不純物質が発生した。しかし、LEDランプ又は退色防止用蛍光灯の下では、1,000ルクス程度の光源下でも1時間に最大0.51%の不純物質が発生した。
【0051】
光によって不純物質が発生する医薬品の場合、なるべく不純物質の発生を抑制するように露出時間を減らせねばならないが、成形、包装などのさまざまな工程を経ることにより、ある程度の露出は不可避である。また、作業者が作業時に製品の異常有無などを視認するためには、照度が高いことが有利である。LEDランプ、ナトリウム灯または退色防止用蛍光灯の場合には、1,000ルクスにおいても15分までは不純物質が増加せず、30分までもあまり増加しない。しかし、一般蛍光灯は、15分曝すだけで不純物質が増加し始め、30分曝すと不純物質が50重量%以上増加する。
【0052】
<実施例7>
下記の処方により、モンテルカストナトリウムを含むフィルム製剤を製造した。すべての物質を溶媒(水)に溶かした後、均一に混合した。それを80℃のオーブンで乾燥し、LOD(乾燥減量、120℃、10分)が4ないし5重量%になるようにフィルムを製造した。製造されたフィルムは、約103.88mgになるように適切な大きさに切った。そのうちモンテルカストナトリウムは、約10.4mgであった。製造されたフィルムの厚さは、50ないし150μm程度であった。
【0053】
【表8】
【0054】
<実験例6>
実施例1で製造したフィルムとシングレア
TM10mg錠剤(比較例1、Merck Sharp & Dohme Limited製、英国)を同一条件で保管した後、モンテルカストの不純物質の発生量を比較した。具体的に、実施例1で作られた口腔用フィルムサンプルとシングレア錠剤をアルミニウムパウチで包装し、50℃で相対湿度75%を維持するチャンバーに入れて保管した。6ヶ月保管後、保管したサンプルの水分率を比較した結果を表9に示した。
【0055】
【表9】
【0056】
表9の実験結果及び上述した多様な実験結果に示されたように、高分子として澱粉、変性澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、またはこれらの混合物を使用したモンテルカスト口腔用フィルム製剤の場合、他の高分子に比べて吸湿性、不純物質の生成などの面で安定性が著しく良好であった。