特許第6200436号(P6200436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200436
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】水性懸濁状農薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/04 20060101AFI20170911BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20170911BHJP
   A01N 47/06 20060101ALI20170911BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20170911BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   A01N25/04 102
   A01N25/30
   A01N47/06 D
   A01P7/04
   A01P3/00
【請求項の数】4
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-559719(P2014-559719)
(86)(22)【出願日】2014年1月29日
(86)【国際出願番号】JP2014051986
(87)【国際公開番号】WO2014119620
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-15951(P2013-15951)
(32)【優先日】2013年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006091
【氏名又は名称】Meiji Seikaファルマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 篤志
(72)【発明者】
【氏名】薮▲崎▼ 光之
(72)【発明者】
【氏名】上野 滋
(72)【発明者】
【氏名】村松 良則
(72)【発明者】
【氏名】小川 一輝
(72)【発明者】
【氏名】白倉 秀敏
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−240931(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105349(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/013896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/04
A01N 25/30
A01N 47/06
A01P 3/00
A01P 7/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として、下記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩を含んでなり、かつ
アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、
アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩、ならびにポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩からなる群から選択される1種または2種以上と
を含んでなる、水性懸濁状農薬組成物:
【化1】
[式中、
は、COR’またはCOOR(ここで、R’およびRはC1−4のアルキル基を表す)を表し、
は、C1−4アルキル基を表し、
は、C1−4アルキル基を表し、
およびXは、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4のアルキル基を表し、ただし、XおよびXが同時に水素原子を表すことはなく、
は水素原子を表し、
、W、およびWは、それぞれC−Y、C−Y、およびC−Yを表し、 Y、Y、Y、YおよびYは、互いに独立して、水素原子、C1−8アルキルオキシ基(このC1−8アルキルオキシ基は、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子、および/または、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子により置換されたC1−4アルキルオキシ基により置換されたものである)、またはハロゲン原子を表し、
ただし、Y、Y、Y、Y、およびYの少なくとも1つは、C1−8アルキルオキシ基(このC1−8アルキルオキシ基は、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子、および/または同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子により置換されたC1−4アルキルオキシ基により置換されたものである)を表し、
あるいは、Y、Y、Y、Y、およびYは、隣り合う2つの基が一緒になって、一以上のハロゲン原子により置換された−O−(CH)n−O−(ここで、nは1または2を表す)を表してもよく、
Zは酸素原子を表す]。
【請求項2】
が、COOR(ここで、RはC1−4のアルキル基を表す)を表し、 Rが、C1−4アルキル基を表し、
が、C1−4アルキル基を表し、
およびXが、水素原子またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4のアルキル基を表し、ただし、XおよびXが同時に水素原子を表すことはなく、 Xが、水素原子を表し、
、W、およびWが、それぞれC−Y、C−Y、およびC−Yを表し、 Y、Y、およびYが、互いに独立して、水素原子、C1−8アルキルオキシ基(ここで、C1−8アルキルオキシ基は、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子により置換されたものである)、またはハロゲン原子を表し、
およびYが、水素原子またはハロゲン原子を表し、
Zが、酸素原子を表す、
請求項1に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項3】
式(I)で表される化合物が、2-エチル‐3,7‐ジメチル-4-メトキシカルボニルオキシ−6−(4−トリフルオロパラメトキシフェノキシ)−キノリンである、請求項1に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【請求項4】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性懸濁状農薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本願特許出願は、2013年1月30日に出願された日本出願特願2013−15951号に基づく優先権の主張を伴うものであり、この日本出願の全開示内容は、引用することにより本願発明の開示の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は農薬組成物に関し、より詳細には水性懸濁状農薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
水性懸濁状農薬組成物は、一般にフロアブル製剤と呼ばれ、液体中に農薬活性成分を懸濁させた製剤である。この製剤は、微粉砕した農薬活性成分を使用するため、界面活性剤や増粘剤などの補助剤を加えることにより、農薬活性成分の分離や沈降、再分散性などの防止を図ることができる。農薬活性成分の微粉砕化は、液体中での分散安定性の向上や、生物効果(防除効果)を高める上で重要な方法である。
【0004】
しかしながら、農薬活性成分が微粒子になることで、保存中にオストワルド熟成による結晶成長、すなわち、粒子径の増大が起こりやすくなり、分離や沈降、ケーキングなどの製剤の品質に悪影響を与えるだけではなく、生物効果の低下も招く。従って、これらの問題を解決することは、実用上、大きな課題となっている。
【0005】
これまでに、これらの課題を解決するために、農薬活性成分の結晶成長を抑制して、製剤を物理的に安定にする様々な方法が検討されている。
【0006】
例えば、特開平9-208404号公報(特許文献1)には、農薬活性成分に多芳香環式ノニオン性アニオン界面活性剤などを配合した懸濁組成物が保存安定性に良好なことが記載されている。また、特表2002-532395号公報(特許文献2)には、結晶成長の防止のために、トリアゾール殺菌剤に、トリスチリルフェノール−エトキシレート又はその硫酸塩などの界面活性剤と、ビニルピロリドン・ホモポリマーなどのポリマーとの組合せ物を使用することが開示されている。さらに、特開2010−163401号公報(特許文献3)には、農薬活性化合物の粒子成長を抑えるために、結晶セルロース、尿素、界面活性剤などを含有する組成物が開示されている。しかしながら、これらの界面活性剤は、逆に結晶成長を促進させる場合があるため、実際の使用に適さない場合もあった。
【0007】
また、特開平9-175904号公報(特許文献4)には、貯蔵中に粒子が成長・粗大粒子化することを防げるよう、農薬有効成分に樹脂類を被覆させることが記載されている。しかしながら、粒子を被覆することで粒子径が大きくなり、保存安定性を保つことが難しい場合があった。
【0008】
さらに、特開2011-16741号公報(特許文献5)には、農薬活性成分に樹脂、スルホン酸塩の縮合物、および界面活性剤を含有する水性懸濁状農薬組成物が開示されている。しかしながら、従来から水性懸濁状農薬組成物に含まれる農薬の種類によって、十分に粒子成長を抑制することができない場合があった。
【0009】
また、特開2011−79741号公報(特許文献6)には、作物葉面に接触して、その後の水田全体に拡散して農薬活性化合物の効力を発現する農薬組成物が記載されている。しかしながら、保存時の条件によっては、農薬活性成分の粒子が成長し、粗大な粒子に変化することが知られており、そのことで噴霧するときにスプレーのノズルでの目詰まりを引き起こし、製品として使用できないことが起こる場合があった。また、噴霧が行えても、農薬活性成分の粒子が粗大化しているため、生物効果(防除効果)が著しく低下する恐れがあった。
【0010】
そのため、種々の保存条件下でも、農薬活性成分の粒子の成長が長期的に抑制された製剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9-208404号公報
【特許文献2】特表2002-532395号公報
【特許文献3】特開2010−163401号公報
【特許文献4】特開平9-175904号公報
【特許文献5】特開2011-16741号公報
【特許文献6】特開2011−79741号公報
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、水性懸濁状農薬組成物中に、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、特定の成分、すなわちアルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩、ならびにポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩とを配合させることにより、農薬有効成分の結晶成長が顕著に抑制されることを見出した。本発明はこの知見に基づくものである。
【0013】
従って、本発明の一つの目的は、キノリン骨格を有する農薬有効成分の結晶成長を抑制し、防除効果ならびに保存安定性に優れた水性懸濁状農薬組成物を提供することにある。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する:
(1)有効成分として、下記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩を含んでなり、かつ
アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、
アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩、ならびにポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩からなる群から選択される1種または2種以上と
を含んでなる、水性懸濁状農薬組成物:
【化1】
[式中、
は、COR’またはCOOR(ここで、R’およびRはC1−4のアルキル基を表す)を表し、
は、C1−4アルキル基を表し、
は、C1−4アルキル基を表し、
およびXは、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4のアルキル基を表し、ただし、XおよびXが同時に水素原子を表すことはなく、
は水素原子を表し、
、W、およびWは、それぞれC−Y、C−Y、およびC−Yを表し、 Y、Y、Y、Y、およびYは、互いに独立して、水素原子、C1−8アルキルオキシ基(このC1−8アルキルオキシ基は、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子、および/または、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子により置換されたC1−4アルキルオキシ基により置換されたものである)、またはハロゲン原子を表し、
ただし、Y、Y、Y、Y、およびYの少なくとも1つは、C1−8アルキルオキシ基(このC1−8アルキルオキシ基は、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子、および/または、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子により置換されたC1−4アルキルオキシ基により置換されたものである)を表し、
あるいは、Y、Y、Y、Y、およびYは、隣り合う2つの基が一緒になって、一以上のハロゲン原子により置換された−O−(CH)n−O−(ここで、nは1または2を表す)を表してもよく、
Zは酸素原子を表す]。
(2)Rが、COOR(ここで、RはC1−4のアルキル基を表す)を表し、 Rが、C1−4アルキル基を表し、
が、C1−4アルキル基を表し、
およびXが、水素原子またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4のアルキル基を表し、ただし、XおよびXが同時に水素原子を表すことはなく、 Xが、水素原子を表し、
、W、およびWが、それぞれC−Y、C−YおよびC−Yを表し、 Y、YおよびYが、互いに独立して、水素原子、C1−8アルキルオキシ基(ここで、C1−8アルキルオキシ基は、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子により置換されたものである)、またはハロゲン原子を表し、
およびYが、水素原子またはハロゲン原子を表し、
Zが、酸素原子を表す、
(1)に記載の水性懸濁状農薬組成物。
(3)式(I)で表される化合物が、2-エチル‐3,7‐ジメチル-4-メトキシカルボニルオキシ−6−(4−トリフルオロパラメトキシフェノキシ)−キノリンである、(1)に記載の水性懸濁状農薬組成物。
(4)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩である、(1)〜(3)のいずれかに記載の水性懸濁状農薬組成物。
【0015】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、水性懸濁状農薬組成物中の農薬有効成分の結晶成長を抑えられるため、防除効果が優れ、経時変化の少ない長期保存が可能な組成物である。
【発明の具体的説明】
【0016】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、有効成分として、上記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩(農薬有効成分)を含んでなり、かつアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩、ならびにポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩からなる群から選択される1種または2種以上とを含むものである。以下、本発明の水性懸濁状農薬組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0017】
式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩
本発明の水性懸濁状農薬組成物に、有効成分として用いられる上記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩(農薬有効成分)は、特に限定されるものではなく、単独または2種以上を混合して使用することができ、混合する場合の含有量比も自由に選択できる。上記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩(農薬有効成分)と、本発明の水性懸濁状農薬組成物に含まれるその他の成分との配合割合は、例えば、農薬有効成分と、その他の成分との合計100重量部に対して、農薬有効成分を0.01〜60重量部、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜30重量部とし、その他の成分を40〜99.99重量部、好ましくは50〜99.9重量部、より好ましくは70〜99.5重量部とすることができる。
【0018】
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、上記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩に加えて、他の農薬有効成分を用いてもよい。本発明の水性懸濁状農薬組成物に用いることができる他の農薬有効成分としては、常温で固体であり、かつ水難溶性または水不溶性であれば、特に限定されるものではないが、フロアブル製剤として使用する場合であれば、水に対する溶解度が100ppm以下のものが好ましい。本発明の水性懸濁状農薬組成物に用いることができる農薬有効成分としては、例えば「農薬ハンドブック 2011」(社団法人 日本植物防疫協会 編)、「The Pesticide Manual 15th edition」(British Crop Protection Council 発行)などに記載されているものが使用できる。
【0019】
また、本発明の水性懸濁状農薬組成物には、農薬有効成分としては、下記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩が含まれる:
【化2】
[式中、
は、COR’またはCOOR(ここで、R’およびRはC1−4のアルキル基を表す)を表し、
は、C1−4アルキル基を表し、
は、C1−4アルキル基を表し、
およびXは、互いに独立して、水素原子またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4のアルキル基を表し、ただし、XおよびXが同時に水素原子を表すことはなく、
は水素原子を表し、
、W、およびWはそれぞれC−Y、C−YおよびC−Yを表し、Y、Y、Y、Y、およびYは、互いに独立して、水素原子、C1−8アルキルオキシ基(このC1−8アルキルオキシ基は、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子、および/または、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子により置換されたC1−4アルキルオキシ基により置換されたものである)、またはハロゲン原子を表し、
ただし、Y、Y、Y、Y、およびYの少なくとも1つは、C1−8アルキルオキシ基(このC1−8アルキルオキシ基は、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子、および/または、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子により置換されたC1−4アルキルオキシ基により置換されたものである)を表し、
あるいは、Y、Y、Y、Y、およびYは、隣り合う2つの基が一緒になって、一以上のハロゲン原子により置換された−O−(CH)n−O−(ここで、nは1または2を表す)を表してもよく、
Zは酸素原子を表す]。
【0020】
上記式(I)で表される化合物は、上記式(I)で表される化合物中、
が、COOR(ここで、RはC1−4のアルキル基を表す)を表し、 Rが、C1−4アルキル基を表し、
が、C1−4アルキル基を表し、
およびXが、水素原子またはハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4のアルキル基を表し、ただし、XおよびXが同時に水素原子を表すことはなく、 Xが、水素原子を表し、
、W、およびWが、それぞれC−Y、C−Y、およびC−Yを表し、 Y、Y、およびYが、互いに独立して、水素原子、C1−8アルキルオキシ基(ここで、C1−8アルキルオキシ基は、同一もしくは異なる一以上のハロゲン原子により置換されたものである)、またはハロゲン原子を表し、
およびYが、水素原子またはハロゲン原子を表し、
Zが、酸素原子を表す、
化合物であることが好ましい。
【0021】
これらの化合物の中でも、特に2-エチル‐3,7‐ジメチル-4-メトキシカルボニルオキシ−6−(4−トリフルオロパラメトキシフェノキシ)−キノリン(一般名:フロメトキン)が本発明の水性懸濁状農薬組成物に含まれることが好ましい。
【0022】
また、本発明の水性懸濁状農薬組成物に含まれる上記式(I)で表される化合物の農園芸上許容される酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、または酢酸塩が挙げられる。
【0023】
これらの化合物およびその農園芸上許容される酸付加塩は、国際公開第2006/013896号パンフレットに記載の方法によって製造することができる。
【0024】
本発明の上記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩は、害虫および植物病原真菌に対して優れた防除効果を示すものである。従って、本発明の水性懸濁状農薬組成物は、農園芸用殺虫剤および農園芸用殺菌剤として用いることができる。
【0025】
上記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩が防除効果を示す虫種としては、特に限定されるものではないが、好ましくは鱗翅目害虫(例えば、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、アワヨトウ、ヨトウガ、タマナヤガ、トリコプルシア属、ヘリオティス属(Heliothis spp)、ヘリコベルパ属(Helicoverpa spp)等のヤガ類;ニカメイガ、コブノメイガ、ヨーロピアンコーンボーラー、ハイマダラノメイガ、シバツトガ、ワタノメイガ、ノシメマダラノメイガ等のメイガ類;モンシロチョウ等のシロチョウ類;アドキソフィエス属、ナシヒメシンクイ、コドリンガ等のハマキガ類;モモシンクイガ等のシンクイガ類;リオネティア属等のハモグリガ類;リマントリア属、ユープロクティス属等のドクガ類;コナガ等のスガ類;ワタアカミムシ等のキバガ類;アメリカシロヒトリ等のヒトリガ類;イガ、コイガ等のヒロズコガ類など)、半翅目害虫(例えば、モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ等のアブラムシ類;ヒメトビウンカ、トビイロウンカ、セジロウンカ等のウンカ類;ツマグロヨコバイ等のヨコバイ類;アカヒゲホソミドリカスミカメ、チャバネアオカメムシ、ミナミアオカメムシ、ホソヘリカメムシ等のカメムシ類;オンシツコナジラミ、シルバーリーフコナジラミ等のコナジラミ類;クワコナカイガラムシ等のカイガラムシ類;グンバイムシ類;キジラミ類など)、鞘翅目害虫(例えば、メイズウィービル、イネミズゾウムシ、アズキゾウムシ等のゾウムシ類;チャイロコメノゴミムシダマシ等のゴミムシダマシ類;ドウガネブイブイ、ヒメコガネ等のコガネムシ類;キスジノミハムシ、ウリハムシ、コロラドポテトハムシ、ウェスタンコーンルートワーム、サザンコーンルートワーム等のハムシ類;イネドロオイムシ、アオバアリガタハネカクシ、シンクイムシ類、ニジュウヤホシテントウ等のエピラクナ類;カミキリムシ類など)、ダニ目害虫(例えば、ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニ、オリゴニカス属等のハダニ類;トマトサビダニ、ミカンサビダニ、チャノサビダニ等のフシダニ類;チャノホコリダニ等のホコリダニ類;コナダニ類など)、膜翅目害虫(例えば、カブラハバチ等のハバチ類など)、直翅目害虫(例えば、バッタ類など)、双翅目害虫(例えば、イエバエ類;イエカ類;ハマダラカ類;ユスリカ類;クロバエ類;ニクバエ類;ヒメイエバエ類;ハナバエ類;マメハモグリバエ、トマトハモグリバエ、ナスハモグリバエ等のハモグリバエ類;ミバエ類;ノミバエ類;ショウジョウバエ類;チョウバエ類;ブユ類;アブ類;サシバエ類など)、アザミウマ目害虫(例えば、ミナミキイロアザミウマ、ミカンキイロアザミウマ、ネギアザミウマ、ハナアザミウマ、チャノキイロアザミウマ、ヒラズハナアザミウマ、カキクダアザミウマなど)、植物寄生性線虫(例えば、ネコブセンチュウ類;ネグサレセンチュウ類;シストセンチュウ類;イネシンガレセンチュウ等のアフェレンコイデス類;マツノザイセンチュウなど)が挙げられ、より好ましくは鱗翅目害虫、半翅目害虫、鞘翅目害虫、ダニ目害虫、双翅目害虫、またはアザミウマ目害虫が挙げられる。
【0026】
また、上記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩が防除効果を示す植物病原真菌としては、特に限定されるものではないが、コムギ赤さび病菌(Puccinia recondita)、オオムギうどんこ病菌(Erysiphe graminis)、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)、キュウリべと病菌(Pseudoperonospora cubensis)、キュウリうどんこ病菌(Sphaerotheca fuliginea)、トマト輪紋病菌(Alternaria solani)、野菜類灰色かび病菌(Botrytis cinerea)、野菜類菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)、リンゴ黒星病菌(Venturia inaequalis)、モモ灰星病菌(Monilinia fructicola)、イチゴ炭疸病菌(Colletotrichum gloeosporioides)、ダイズ紫斑病菌(Cercospora kikuchii)、リゾクトニア苗立枯病菌(Rhizoctonia solani)などが代表として挙げられ、好ましくはキュウリうどんこ病菌、コムギ赤さび病菌、オオムギうどんこ病菌、トマト輪紋病菌、リンゴ黒星病菌、モモ灰星病菌、またはイチゴ炭疸病菌が挙げられ、さらに好ましくはキュウリうどんこ病菌、コムギ赤さび病菌、またはオオムギうどんこ病菌が挙げられる。
【0027】
アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物が含まれる。アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物は、分散剤として用いることができる。本発明の水性懸濁状農薬組成物に含まれるアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物は、好ましくは、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物である。ここで、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物のアルキルの炭素数は、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個である。また、本発明の水性懸濁状農薬組成物に含まれるアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物は、アルキルナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物やメチルナフタレンスルホン酸ナトリウムであってもよい。さらに、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物は、市販されているものを用いてもよく、例えば、モルウェット(登録商標)D-425パウダー、モルウェット(登録商標)D-400パウダー、モルウェット(登録商標)D-809パウダー(以上、ライオン・アクゾ株式会社製)、ポリティ(登録商標)N-100K(ライオン株式会社製)、Supragil(登録商標)MNS/90、Supragil(登録商標)RM/210−EI(以上、ローディア日華株式会社製)が挙げられる。
【0028】
本発明の水性懸濁状農薬組成物中のアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物の含有量は、農薬有効成分の物理性(水への濡れ性や粒子径等)や各製剤中での配合比を考慮して決まるため、特に限定されないが、水性懸濁状農薬組成物に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0029】
その他の成分
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、上記の農薬有効成分およびアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物に加えて、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩、ならびにポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩からなる群から選択される1種または2種以上が含まれてなるものである。ここで、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩、ならびにポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩は、界面活性剤として用いることができる。水性懸濁状農薬組成物において、これらの成分は湿潤剤として用いることができ、水性懸濁状農薬組成物の水への濡れ性を高め、本発明の水性懸濁状農薬組成物を効率的に製造することができる。
【0030】
本発明によれば、上記の農薬有効成分およびアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物に、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩、ならびにポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩からなる群から選択される1種または2種以上を加えることにより、農薬有効成分の結晶成長を抑制し、防除効果ならびに保存安定性に優れた水性懸濁状農薬組成物を提供することができる。
【0031】
本発明の水性懸濁状農薬組成物において、ポリオキシアルキレンとは、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンからなる群から選択される1種もしくは2種以上の混合物であることが好ましい。また、塩とは、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、エタノールアミン、ジエタノールアミン、またはトリエタノールアミン塩であることが好ましい。
【0032】
アルキル硫酸塩やポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩は、本発明の水性懸濁状農薬組成物において、湿潤剤として用いてもよい。
【0033】
また、アルキルリン酸やポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩は、本発明の水性懸濁状農薬組成物にこれらの成分を加えることにより、農薬有効成分の結晶成長を抑制し、防除効果ならびに保存安定性に優れた水性懸濁状農薬組成物を提供することができる。
【0034】
さらに、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩は、本発明の水性懸濁状農薬組成物にこれらの成分を加えることにより、農薬有効成分の結晶成長を抑制し、防除効果ならびに保存安定性に優れた水性懸濁状農薬組成物を提供することができる。
【0035】
アルキル硫酸塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、高級アルコール硫酸ナトリウムが挙げられ、また市販されているものを用いてもよい。アルキル硫酸塩のアルキルの炭素数は、特に限定されないが、好ましくは、8〜18個である。市販品としては、例えば、エマール(商標登録)10G、エマール(商標登録)10PT、エマール(商標登録)2F−30、エマール(商標登録)2FG、エマール(商標登録)40パウダー(以上、花王株式会社製)、ソルポール(商標登録)5029−O(東邦化学工業株式会社製)、ニューカルゲン(商標登録)LX−C(竹本油脂株式会社製)、モノゲン(商標登録)Y−100、モノゲン(商標登録)Y−500T(以上、第一工業製薬株式会社製)などが挙げられる。
【0036】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。エチレンオキサイドの平均付加モル数は、例えば、1〜30のものを使用することができ、好ましくは、平均付加モル数が1〜20である。また、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩のアルキルの炭素数は、特に限定されないが、好ましくは8〜20個、より好ましくは10〜18個である。具体的な化合物としては、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩やポリオキシエチレン(12)アルキルエーテル硫酸塩を使用することが好ましい。なお、ポリオキシエチレンの後の括弧内の数値は平均付加モル数を表す。また、具体的な製品としては、例えば、エマール(商標登録)170J、エマール(商標登録)270J、エマール(商標登録)327、エマール(商標登録)D−3−D、エマール(商標登録)D−4−D(花王株式会社製) 、ソルポール(商標登録)5264、ソルポール(商標登録)7867、ソルポール(商標登録)7868(以上、東邦化学工業株式会社製)、ハイテノール(商標登録)LA−10、ハイテノール(商標登録)LA−12、ハイテノール(商標登録)LA−16、ハイテノール(商標登録)PS−06、ハイテノール(商標登録)PS−15、ハイテノール(商標登録)330T(以上、第一工業製薬株式会社製)、サンノール(商標登録) LMT−1430、サンノール(商標登録) NL−1430、サンノール(商標登録)TD−3130(以上、ライオン株式会社製)、WITCOLATE(商標登録)1050、WITCOLATE(商標登録)7093(以上、アクゾノーベル株式会社製)、タイポール(商標登録)NLES−227、タイポール(商標登録)NLEA−227、タイポール(商標登録)22HS、タイポール(商標登録)DBET−336、タイポール(商標登録)DBES−327N(以上、泰光油脂化学工業株式会社製)、シノリン(商標登録)SPE−1150、シノリン(商標登録)SPE−1250、シノリン(商標登録)SPE−1350(以上、新日本理化株式会社製)、Texapon(商標登録)N−70、Texapon(商標登録)N−70 EG、Texapon(商標登録)ALES 3−70A(以上、Cognis株式会社社製)、ニューカルゲン(商標登録)P−1203S(以上、竹本油脂株式会社製)、サンデット(商標登録)ENR−20、サンデット(商標登録)ET、サンデット(商標登録)EN、サンデット(商標登録)END(以上、三洋化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0037】
アルキルリン酸塩としては、例えば、アルキルリン酸エステルナトリウム、オクチルリン酸カリウム、ラウリルリン酸カリウム、ステアリルリン酸カリウムが挙げられ、また市販されているものを用いてもよい。市販品としては、例えば、フォスファノール(商標登録)RS-610NA(東邦化学工業株式会社製)、GF−185(東邦化学工業株式会社製)、プライサーフ(商標登録)DBS(第一工業製薬株式会社製)、パイオニン(商標登録)A−70、パイオニン(商標登録)A−71−K、パイオニン(商標登録)A−74(以上、竹本油脂株式会社製)が挙げられる。
【0038】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸としては、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12〜15)エーテルリン酸、ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステルなどが挙げられる。具体的な製品としては、フォスファノール(商標登録)RS−410、フォスファノール(商標登録)RS−610、フォスファノール(商標登録)RS−710(以上、東邦化学工業株式会社製)、プライサーフ(商標登録)A212C、プライサーフ(商標登録)A208B(以上、第一工業製薬株式会社)などが挙げられる。
【0039】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル・モノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルカリウム塩などが挙げられ、また市販されているものを用いてもよい。市販品としては、例えば、プライサーフ(商標登録)M208F(第一工業製薬株式会社製)、エレクトロストリッパー(商標登録)F(花王株式会社製)、ニューカルゲン(商標登録)TG−100、パイオニン(商標登録)A−70−K、パイオニン(商標登録)A−72−DS、パイオニン(商標登録)A−73−DK、パイオニン(商標登録)A−72−RK(以上、竹本油脂株式会社製)が挙げられる。
【0040】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸などが挙げられ、また市販されているものを用いてもよい。市販品としては、例えば、カオーアキポ(商標登録)RLM−45、 カオーアキポ(商標登録)RLM−100(以上、花王株式会社製)、ビューライト(商標登録)LCA−H、ビューライト(商標登録)LCA−25NH(以上、三洋化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0041】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウムが挙げられ、また市販されているものを用いてもよい。市販品としては、例えば、ネオハイテノール(商標登録)ECL−45(第一工業製薬株式会社製)、カオーアキポ(商標登録)RLM−45NV、カオーアキポ(商標登録)RLM−100NV(以上、花王株式会社製)、ビューライト(商標登録)LCA、ビューライト(商標登録)LCA−25N、ビューライト(商標登録)ECA(以上、三洋化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0042】
本発明の水性懸濁状農薬組成物中のこれらの成分の含有量は、農薬有効成分の物理性(水への濡れ性や粒子径等)や各製剤中での配合比を考慮して決まるため、特に限定されないが、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0043】
上記の成分として、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物と併せて配合する場合には、そのうちの1種類を用いてもよいし、更には、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0044】
本発明では、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、上記の成分を併せて配合することで、十分な結晶の成長抑制の効果を示すことができる。その中でも、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩、またはアルキル硫酸塩とを併せて配合することで、より結晶の成長を抑制する効果が大きくなる。その中でも、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩との組合せが好ましく、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩との組合せがより好ましい。
【0045】
本発明の水性懸濁状農薬組成物には、上記の成分以外に補助剤として、本発明の効果を奏する限りの含有量であれば、以下のような成分を添加してもよい。
【0046】
本発明に使用できる補助剤としては、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、凍結防止剤、防黴剤等の補助剤を使用することができる。
【0047】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に使用できる界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0048】
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン樹脂酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤などが挙げられる。
【0049】
また、陰イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート、アルカンスルホネート、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルジフェニルエーテルジスルホネート、リグニンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルスルホネート、脂肪酸塩、N−メチル−脂肪酸サルコシネート、樹脂酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテルホスフェート、ポリカルボン酸型界面活性剤、などが挙げられる。なお、ポリオキシアルキレンは、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンからなる群から選択される1種もしくは2種以上の混合物であることが好ましい。
【0050】
本発明で使用できる界面活性剤としては、これらの例示に限られるものではなく、また、1種または2種以上を併用して用いてもよい。
【0051】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に含まれてもよい増粘剤としては、有機系増粘剤および無機系増粘剤のいずれであってもよく、これらの増粘剤を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
有機系増粘剤は、例えば、キサンタンガム(ザンサンガム)、ウエランガム、ラムザンガム、ダイユータンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、プルラン、ペクチン、アラビノガラクタン、カゼイン、タラガム、アラビアガム、タマリントガム、カラヤガム、デンプン、デンプン誘導体(例えば、デキストリン)アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、セルロース類(例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アクリル系ポリマー、水溶性セルロースエーテルが挙げられ、これらの中で好ましくは、キサンタンガムが挙げられ、また市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、Rhodopol(商標登録)G、Rhodopol(商標登録)23(以上、ローディア日華株式会社製)、ケルザン(商標登録)、ケルザン(商標登録)S、ケルザン(商標登録)ASX(以上、三晶株式会社製)が挙げられる。
【0053】
また、無機系増粘剤は、スメクタイト系粘土鉱物、コロイド状シリカなどが挙げられる。より好ましくは精製されたベントナイトが挙げられ、また市販品を用いてもよい。市販品として、例えば、クニピア(商標登録)F(クニミネ工業株式会社製)、ベンゲル(商標登録)、ベンゲル(商標登録)FW、ベンゲル(商標登録)HVP(以上、株式会社ホージュン製)が挙げられる。
【0054】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に含まれてもよい消泡剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーンエマルション、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系やアセチレン系が挙げられ、また市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、シリコーン系では、アンチフォーム(商標登録)E−20(花王株式会社製)、プロナール(商標登録)EX−300(東邦化学工業株式会社製)、KM−72、KM−73、KM−98(以上、信越化学工業株式会社製)、アセチレン系では、サーフィノール(商標登録)104PG-50、サーフィノール(商標登録)420、サーフィノール(商標登録)DF37(以上、日信化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0055】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に含まれてもよい凍結防止剤としては、例えば、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのアルキレングリコール系やグリセリン、尿素が挙げられる。
【0056】
本発明の水性懸濁状農薬組成物に含まれてもよい防黴剤としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどの有機窒素硫黄系化合物;アスコルビン酸、ヘキサメチレンテトラミン、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、亜硫酸水、パラホルムアルデヒド、安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラヒドロキシ安息香酸メチル、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、ナトリウム=1,1’−ビフェニル−2−オラート、ホルマリン溶液、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、有機臭素系化合物が挙げられ、また市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、メッキンス(商標登録)P(上野製薬株式会社製)、プロクセル(商標登録)GXL(S)(アビシア株式会社製)、バイオキラー(商標登録)LS(ケイ・アイ化成株式会社製)、有機窒素硫黄系化合物と有機臭素系化合物の混合物としてバイオホープ(商標登録)およびバイオホープ(商標登録)L(ケイ・アイ化成株式会社製)などが挙げられる。
【0057】
また、上記以外の補助剤として、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、アジュバント、溶解共力剤、比重調整剤などを添加することができる。また、ここで例示していない補助剤であっても、本発明の効果を奏する限り、各種の補助剤を使用することができる。
【0058】
上記の農薬有効成分、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、およびアルキル硫酸塩等に、溶媒として水を加えて本発明の水性懸濁状農薬組成物とすることができる。
【0059】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、一般的なフロアブル製剤の製造方法に準じて製造することができる。すなわち、農薬有効成分を単独もしくは界面活性剤等の補助剤と共に粉砕し、その後、残りの界面活性剤、増粘剤、凍結防止剤、防黴剤、消泡剤等を加え混合する方法や、農薬有効成分を界面活性剤、増粘剤、凍結防止剤、防黴剤、消泡剤などの補助剤と共に粉砕する方法などが挙げられる。
【0060】
本発明の水性懸濁状農薬組成物の製造方法の好ましい態様によれば、上記式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩に、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物と、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩、ならびにポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩からなる群から選択される1種または2種以上とを加える工程を含む、水性懸濁状農薬組成物の製造方法が提供される。
【0061】
本発明の水性懸濁状農薬組成物の製造方法では、例えば、アルキル硫酸塩やポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とを水に添加して混合した後、農薬有効成分を加え、必要に応じてその他の補助剤も加え、ガラスビーズ等を用いて湿式粉砕機により所望の粒子径まで微粉砕した後、増粘剤等の補助剤を添加して混合する方法や、農薬有効成分を界面活性剤等の補助剤とともに乾式粉砕したものを、アルキル硫酸塩やポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とその他の補助剤を溶いた水に添加してガラスビーズ等を用いて湿式粉砕機により所望の粒子径まで微粉砕した後、増粘剤等の補助剤を添加して混合する方法などが挙げられる。
【0062】
通常は、農薬有効成分の粒子径は0.5〜3μm前後まで細かく粉砕することが望ましい。農薬有効成分の物性に応じて、適宜粒子径を変えることもできる。
【0063】
本発明の水性懸濁状農薬組成物を製造する際に使用できる粉砕機としては、バッチ式ビーズミル、ダイノミル、アクアマイザー、アトライター、パールミル、アジテーターミル、コボールミル、スパイクミル、アペックスミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、グレンミル、スターミル、SCミル、等の湿式粉砕機が挙げられるが、例えばダイノミルMULTI−LAB(株式会社シンマルエンタープライズ製)、レディーミルBSG-1/16(アイメックス株式会社製)、ウルトラアペックスミルUAM−05(寿工業株式会社製)などが使用できる。使用できるビーズとしてはガラスビーズ、特殊ガラスビーズ(低アルカリ、無アルカリ)ジルコニアビーズ、ジルコンビーズ(ジルコニア・シリカ系セラミックス)、アルミナビーズ、チタニアビーズ、サイアロンビーズ、窒化ケイ素ビーズ、オッタワサンド等が挙げられる。ビーズ粒子径としては0.01〜1.5mmの範囲のものを使用することが好ましく、0.1〜1.0mmの範囲のものを使用することがより好ましい。小さい粒子径のビーズを使用することで、小さい体積中位径のフロアブルを製造することができる。
【0064】
本発明の水性懸濁状農薬組成物は、組成物中の農薬有効成分の粒子径によって、有害生物に対する防除効果に大きな影響を与える。そのため、農薬有効成分の結晶成長が進行していないことを確認することは重要なことである。
【0065】
農薬有効成分の粒子径は、体積中位径として表すことができる。ここで、体積中位径とは、体積基準での平均粒子径を表し、その集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブの50%となる点の粒子径をいう。この体積中位径は、例えばSALD−2200(株式会社島津製作所製)などのレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの限定されるものではない。なお、下記のポリオキシエチレンの後の括弧内の数値はエチレンオキサイドの平均付加モル数を表す。
【0067】
(実施例1)
ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩(商品名:ソルポール(商標登録)7867、販売元:東邦化学工業株式会社)3.0重量%、モルウェット(商標登録)D-425パウダー(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、ライオン・アクゾ株式会社製)3.0重量%、プロピレングリコール(商品名:工業用プロピレングリコール、販売元:株式会社ADEKA)10.0重量%、クニピア(商標登録)F(精製されたベントナイト、販売元:クニミネ工業株式会社)0.35重量%、アンチフォーム(商標登録)E-20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.3重量%および水52.4重量%をビーカーに加え、マグネチックスターラーで混合した。そこに、農薬有効成分として、2−エチル−3,7−ジメチル−4−メトキシカルボニルオキシ−6−(4−トリフルオロパラメトキシフェノキシ)−キノリン(以下、フロメトキン(一般名)ともいう。純度95.8%)10.75重量%を加えて、攪拌機(トルネードPM-201、アズワン株式会社製)で攪拌混合し、そこに、0.5〜0.7mmのガラスビーズ(ガラスビーズBZ-06、アズワン株式会社製)を加えて、平均粒径1.2ミクロン前後となるまで湿式粉砕を行った。
【0068】
この粉砕液に、0.2重量%のアンチフォーム(商標登録)E-20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)と、予め調製したキサンタンガム1%水溶液(Rhodopol(商標登録)23(キサンタンガム、販売元:ローディア日華株式会社)1重量%およびプロクセル(商標登録)GXL(S)(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、販売元:アビシア株式会社)1.5重量%を、水97.5重量%に溶解したもの)20重量%加え、マグネチックスターラーで混合して、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0069】
(実施例2)
実施例1において、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(12)アルキルエーテル硫酸塩(商品名:ソルポール(商標登録)7868、販売元:東邦化学工業株式会社)に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0070】
(実施例3)
実施例1において、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(16)アルキルエーテル硫酸塩(商品名:ハイテノール(商標登録)LA-16、販売元:第一工業製薬株式会社)に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0071】
(実施例4)
実施例1において、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(2)アルキルエーテル硫酸塩(商品名:エマール(商標登録)270J、販売元:花王株式会社)に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0072】
(実施例5)
実施例1において、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩を、アルキル硫酸塩(商品名:エマール(商標登録)10PT、販売元:花王株式会社)に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0073】
(実施例6)
実施例1において、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(12)アルキルエーテル硫酸塩(商品名:ソルポール(商標登録)7868、販売元:東邦化学工業株式会社)に変更し、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(モルウェット(商標登録)D-425パウダー、販売元:ライオン・アクゾ株式会社)の量を3重量%から5重量%に増量し、水の量を50.4重量%に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0074】
(実施例7)
実施例1において、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(4.5)アルキルエーテル酢酸塩(商品名:ネオハイテノール(商標登録)ECL-45、販売元:第一工業製薬株式会社)に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0075】
(実施例8)
実施例1において、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(6)アルキルエーテルリン酸塩(商品名:フォスファノール(商標登録)RS-610NA、販売元:東邦化学工業株式会社)に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0076】
(実施例9)
実施例1において、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩を、アルキルリン酸塩(商品名:GF-185、販売元:東邦化学工業株式会社)に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0077】
(実施例10)
ポリオキシエチレン(12)アルキルエーテル硫酸塩(商品名:ソルポール(商標登録)7868、販売元:東邦化学工業株式会社)2.4重量%、モルウェット(商標登録)D-425パウダー(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、販売元:ライオン・アクゾ株式会社)3.0重量%、プロピレングリコール(商品名:工業用プロピレングリコール、販売元:株式会社ADEKA)10重量%、クニピア(商標登録)F(精製されたベントナイト、販売元:クニミネ工業株式会社)0.35重量%、アンチフォーム(商標登録)E-20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.3重量%および水52.0重量%をビーカーに加え、マグネチックスターラーで混合した。そこに、予め、フロメトキン(純度95.8%)10.75重量%とソルポール(商標登録)5050(ジアルキルスルホサクネート、販売元:東邦化学工業株式会社)1重量%をジューサーミキサーで混合粗粉砕したもの18.75重量%を加え、攪拌機(トルネードPM−201、アズワン株式会社製)で攪拌混合し、そこに、0.5〜0.7mmのガラスビーズ(ガラスビーズBZ-06、アズワン株式会社製)を加えて、平均粒径1.2ミクロン前後となるように湿式粉砕を行った。
【0078】
この粉砕液に、0.2重量%のアンチフォーム(商標登録)E-20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)と、予め調製したキサンタンガム1%水溶液(Rhodopol(商標登録)23(キサンタンガム、販売元:ローディア日華株式会社)1重量%およびプロクセル(商標登録)GXL(S)(1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、販売元:アビシア株式会社)1.5重量%を、水97.5重量%に溶解したもの)20重量%加え、マグネチックスターラーで混合して、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0079】
(実施例11)
実施例2において、ポリオキシエチレン(12) アルキルエーテル硫酸塩3.0重量%を2.4重量%とし、新たにアルキル硫酸塩(商品名:エマール(商標登録)10PT、販売元:花王株式会社)1重量%を加え、水を52.0重量%に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0080】
(実施例12)
実施例1において、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(12)アルキルエーテル硫酸塩(商品名:ソルポール(商標登録)7868、販売元:東邦化学工業株式会社)に変更し、モルウェット(商標登録)D-425パウダー(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、販売元:ライオン・アクゾ株式会社)の量を3重量%から1.5重量%に減量し、水53.9重量%と変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0081】
(実施例13)
実施例2において、ポリオキシエチレン(12)アルキルエーテル硫酸塩の量を3.0重量%から1.5重量%へ減量し、水を53.9重量%に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0082】
(実施例14)
実施例2において、ポリオキシエチレン(12)アルキルエーテル硫酸塩の量を3.0重量%から4.0重量%へ増量し、水を51.4重量%に変更し、それ以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0083】
(比較例1)
ポリオキシエチレン(14)スチリルフェニルエーテル硫酸塩(商品名:ソルポール(商標登録)T-15SPG、販売元:東邦化学工業株式会社)3.0重量%、モルウェット D-425パウダー(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、販売元:ライオン・アクゾ株式会社)3.0重量%、プロピレングリコール(商品名:工業用プロピレングリコール、販売元:株式会社ADEKA)10.0重量%、クニピア(商標登録)F(精製されたベントナイト、販売元:クニミネ工業株式会社)0.35重量%、アンチフォーム(商標登録)E-20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.3重量%および水52.4重量%をビーカーに加え、マグネチックスターラーで混合した。そこに、(2−エチル−3,7−ジメチル−4−メトキシカルボニルオキシ−6−(4−トリフルオロパラメトキシフェノキシ)−キノリン(以下、フロメトキン(一般名)ともいう。純度95.8%)10.75重量%を加えて、攪拌機(トルネードPM-201、アズワン株式回社製)で攪拌混合し、そこに、0.5〜0.7mmのガラスビーズ(ガラスビーズBZ-06株式会社、アズワン製)を加えて、平均粒径1.2ミクロン前後となるように粒径を確認しながら湿式粉砕を行った。
【0084】
この粉砕液に、アンチフォーム(商標登録)E-20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.2重量%と予め調製したキサンタンガム(商品名:Rhodopol(商標登録)23、販売元:ローディア日華株式会社)1%水溶液20重量%加え、マグネチックスターラーで混合し、フロメトキン10.3重量%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0085】
(比較例2)
比較例1で使用したポリオキシエチレン(14)スチリルフェニルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(14)スチリルフェニルエーテル(商品名:ソルポール(商標登録)T-15、販売元:東邦化学工業株式会社)に変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0086】
(比較例3)
比較例1で使用したポリオキシエチレン(14)スチリルフェニルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(19)スチリルフェニルエーテル(商品名:ソルポール(商標登録)T-20、販売元:東邦化学工業株式会社)に変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0087】
(比較例4)
比較例1で使用したポリオキシエチレン(14)スチリルフェニルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(18)ポリオキシプロピレン(12)アルキルエーテル(商品名:ペポール(商標登録)A-0858、販売元:東邦化学工業株式会社)に変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0088】
(比較例5)
比較例1で使用したポリオキシエチレン(14)スチリルフェニルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(26)ポリオキシプロピレン(30)ブロックポリマー(商品名:ペポール(商標登録)B-184、販売元:東邦化学工業株式会社)に変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0089】
(比較例6)
比較例1で使用したポリオキシエチレン(14)スチリルフェニルエーテル硫酸塩を、ポリオキシエチレン(8)アルキルエーテル(商品名:ペグノール(商標登録)TH-8、販売元:東邦化学工業株式会社)に変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0090】
(比較例7)
実施例1で使用したモルウェット(商標登録)D−425パウダーを除き、水を55.4重量%とした以外は実施例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0091】
(比較例8)
実施例1で使用したアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物を、リグニンスルホン酸塩(商品名:ニューカルゲン(商標登録)WG-4、販売元:竹本油脂株式会社)に変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0092】
(比較例9)
実施例2で使用したアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物3重量%を、ポリカルボン酸金属塩(商品名:ニューカルゲン(商標登録)WG-5、販売元:竹本油脂株式会社)1重量%とし、水を54.4重量%に変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0093】
(比較例10)
実施例2で使用したアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物を、アクリル酸/マレイン酸共重合体(商品名:FOA-10703、販売元:日本乳化剤株式会社)と変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0094】
(比較例11)
実施例2で使用したアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物を、ロジンエステル(商品名:ソルポール(商標登録)7518、販売元:東邦化学工業株式会社)と変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0095】
(比較例12)
実施例1で使用したアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物を、ポリビニルアルコール(部分ケン化型、4%水溶液20度における粘度4.8〜5.8mPa・s、商品名:ゴーセノール(商標登録)GL-05S、販売元:日本合成化学工業株式会社)と変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0096】
(比較例13)
比較例1で使用したポリオキシエチレン(14)スチリルフェニルエーテル硫酸塩3.0重量%を、アルキルナフタレンスルホン酸塩(商品名:ニューカルゲン(商標登録)BX-C、販売元:竹本油脂株式会社)2.0重量%、水を53.4重量%に変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0097】
(比較例14)
比較例1で使用したポリオキシエチレン(14)スチリルフェニルエーテル硫酸塩3.0重量%を、ジアルキルスルホサクシネート(商品名:ネオコール(商標登録)SW-CP、販売元:第一工業製薬株式会社)2.0重量%、水を53.4重量%に変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0098】
(比較例15)
実施例1で使用したアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(商品名:モルウェット(商標登録)D-425パウダー、販売元:ライオン・アクゾ株式会社)を、βナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩(商品名:デモール(商標登録)N、販売元:花王株式会社)に変更した以外は比較例1と同様の原料および製法により、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0099】
(比較例16)
ポリオキシエチレン(16)トリスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩(商品名:Soprophor(商標登録)4D384、販売元:ローディア日華株式会社)1.5重量%、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー(商品名:Pluronic(商標登録)P105、販売元:BASFジャパン株式会社)3.0重量%、プロピレングリコール(商品名:工業用プロピレングリコール、販売元:株式会社ADEKA)3.0重量%、アンチフォーム(商標登録)E−20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.1重量%、水61.55重量%をビーカーに加え、マグネチックスターラーで混合した。そこに、(2−エチル−3,7−ジメチル−4−メトキシカルボニルオキシ−6−(4−トリフルオロパラメトキシフェノキシ)−キノリン(一般名:フロメトキン、純度95.8%)10.75重量%を加えて攪拌機(トルネードPM−201、アズワン株式会社製)で攪拌混合し、そこに、0.5〜0.7mmのガラスビーズ(ガラスビーズBZ-06、アズワン株式会社製)を加えて、平均粒径1.2ミクロン前後となるように湿式粉砕を行った。
【0100】
この粉砕液に、アンチフォーム(商標登録)E−20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.1重量%と予め調製したキサンタンガム1%水溶液(商品名:Rhodopol(商標登録)23、販売元:ローディア日華株式会社)20重量%加え、マグネチックスターラーで混合し、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0101】
(比較例17)
ポリオキシエチレン(19)トリスチリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩(商品名:ソルポールT−20SPG、販売元:東邦化学工業株式会社)3.75重量%(有効分3%)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(商品名:ニューカルゲン(商標登録)EP−70G)0.71重量%(有効分0.5%)、販売元:竹本油脂株式会社)、結晶セルロース(商品名:KCフロック(商標登録)W−100G、販売元:日本製紙ケミカル株式会社)0.3重量%、尿素5.0重量%(販売元:日産化学工業株式会社)、アンチフォーム(商標登録)E−20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社) 0.1重量%、水59.29重量%をビーカーに加えマグネチックスターラーで混合した。そこに、(2−エチル−3,7−ジメチル−4−メトキシカルボニルオキシ−6−(4−トリフルオロパラメトキシフェノキシ)−キノリン(一般名:フロメトキン、純度95.8%)10.75重量%を加えて攪拌機(トルネードPM−201、アズワン株式会社製)で攪拌混合し、そこに、0.5〜0.7mmのガラスビーズ(ガラスビーズBZ-06、アズワン株式会社製)を加えて、平均粒径1.2ミクロン前後となるように湿式粉砕を行った。
【0102】
この粉砕液に、アンチフォーム(商標登録)E−20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.1重量%と予め調製したキサンタンガム1%水溶液20重量%加え、マグネチックスターラーで混合し、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0103】
(比較例18)
ナフタレンスルホン酸縮合物(商品名:ルノックス(商標登録)1000C、販売元:東邦化学工業株式会社)1.5重量%、リグニンスルホン酸ナトリウム(商品名:バニレックス(商標登録)N、販売元:日本製紙ケミカル株式会社製)0.5重量%、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(商品名:エパン(商標登録)U−103、販売元:第一工業製薬株式会社)2.0重量%、プロピレングリコール(商品名:工業用プロピレングリコール、販売元:株式会社ADEKA)12.0重量%、アンチフォーム(商標登録)E-20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.1重量%、ロジングリセリンエステル(商品名:ソルポール(商標登録)7518、販売元:東邦化学工業株式会社)3.0重量%、水50.05重量%をビーカーに加え、マグネチックスターラーで混合した。そこに、2−エチル−3,7−ジメチル−4−メトキシカルボニルオキシ−6−(4−トリフルオロパラメトキシフェノキシ)−キノリン(一般名:フロメトキン、純度95.8%)10.75重量%を加えて、攪拌機(アズワン株式会社製、トルネードPM-201)で攪拌混合し、そこに、0.5〜0.7mmのガラスビーズ(ガラスビーズBZ-06、アズワン株式会社製)を加えて、平均粒径1.2ミクロン前後となるように湿式粉砕を行った。
【0104】
この粉砕液に、アンチフォーム(商標登録)E−20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.1重量%と予め調製したキサンタンガム1%水溶液 20重量%加え、マグネチックスターラーで混合し、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0105】
(比較例19)
ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルムアルデヒド高重縮合物(商品名:ニューカルゲン(商標登録)FS-4、販売元:竹本油脂株式会社)5.0重量%、リグニンスルホン酸ナトリウム(商品名:ニューカルゲン(商標登録)WG-4、販売元:竹本油脂株式会社)5.0重量%、プロピレングリコール(商品名:工業用プロピレングリコール、販売元:株式会社ADEKA)5.0重量%、アンチフォーム(商標登録)E-20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.1重量%および水54.05重量%をビーカーに加え、マグネチックスターラーで混合した。そこに、(2−エチル−3,7−ジメチル−4−メトキシカルボニルオキシ−6−(4−トリフルオロパラメトキシフェノキシ)−キノリン(一般名:フロメトキン、純度95.8%)10.75重量%を加え、攪拌機(トルネードPM-201、アズワン株式会社製)で攪拌混合し、そこに、0.5〜0.7mmのガラスビーズ(ガラスビーズBZ-06、アズワン株式会社製)を加えて、平均粒径1.2ミクロン前後となるように湿式粉砕を行った。
【0106】
この粉砕液に、アンチフォーム(商標登録)E-20(シリコーン系消泡剤、販売元:花王株式会社)0.1重量%と予め調製したキサンタンガム1%水溶液(商品名:Rhodopol(商標登録)23、販売元:ローディア日華株式会社)20重量%加え、マグネチックスターラーで混合し、フロメトキン10.3%を含むフロアブル製剤を製造した。
【0107】
(試験例1:高温域での結晶成長抑制評価試験)
実施例1〜6、11、13、14および比較例1〜6、8〜19で製造したフロアブル製剤を、それぞれ蓋付の10mLガラスボトルへ封入し、40℃または54℃の恒温槽にて7日間保存した。保存後、レーザー回析式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いて、製剤中に含まれる農薬有効成分(フロメトキン)の粒子の体積中位径を測定し、各フロアブル製剤の結晶成長率を算出した。その結晶成長率は、7日保存後の粒子の体積中位径を、試験前の粒子の体積中位径で割って、百分率で表した。その結果を下記表1に示した。
【0108】
比較例では、40℃および54℃ともに結晶成長が見られ、高温域である54℃においては、更に高い結晶成長率であることが確認された。なお、比較例15は、粘度の高い流動性に乏しいペースト状の製剤となり、結晶を測定することができなかった。
【0109】
一方、本発明の水性懸濁状農薬組成物では、40℃において、ほとんど結晶成長が見られず、54℃においても結晶成長率は僅かであり、高温域での結晶成長抑制効果が高いことが確認された。
【0110】
【表1】
【0111】
(試験例2:経時的結晶成長抑制評価試験)
実施例1〜14および比較例3〜19で製造したフロアブル製剤を、それぞれ蓋付の10mLガラスボトルへ封入し、54℃の恒温槽にて7日および14日保存し、保存後の農薬有効成分の粒子をレーザー回析式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD−2200)を用いて、製剤中に含まれる農薬有効成分(フロメトキン)の粒子の体積中位径を測定し、各フロアブル製剤の結晶成長率を算出した。その結晶成長率は、7日および14日保存後の粒子の体積中位径を、試験前の粒子の体積中位径で割って、百分率で表した。その結果を下記表2に示した。
【0112】
比較例では、7日後から14日後にかけて結晶成長が進行するのに対して、本発明の水性懸濁状農薬組成物では7日後、更に14日後でも結晶の成長が全く見られず、優れた結晶成長抑制効果を示していることが確認された。54℃という苛酷な条件下にも関わらず、7日後から14日後にかけて結晶成長が見られなかったことから、本発明の水性懸濁状農薬組成物では長期間に亘り、結晶成長を抑制できることがわかる。
【0113】
また、フロアブル製剤に、一般的に用いられるアニオン性、ノニオン性の種々の界面活性剤(比較例3〜19)を添加した場合、結晶成長が進行しており、高い結晶成長率を示し、結晶成長の抑制効果は見られなかった。
【0114】
本発明に用いるアルキル硫酸塩やポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩等は湿潤剤としての機能を有し、また、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物は分散剤として機能を有するため、この2成分を共存させることで、結晶成長を抑制する物理化学的に安定なフロアブル製剤を製造することができることが確認された。
【0115】
以上から、式(I)で表される化合物またはその農園芸上許容される酸付加塩に、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸およびその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸およびその塩、またはポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸およびその塩からなる群から選択される1種または2種以上と、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物とを併用して加えることにより、十分な結晶成長を抑制し、防除効果および経時安定性に優れた水性懸濁状農薬組成物を得ることができる。
【0116】
【表2】