特許第6200438号(P6200438)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200438
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/06 20060101AFI20170911BHJP
   F16J 15/08 20060101ALI20170911BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20170911BHJP
   F02F 11/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   F16J15/06 B
   F16J15/08 M
   F16J15/10 A
   F02F11/00 B
   F02F11/00 N
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-1260(P2015-1260)
(22)【出願日】2015年1月7日
(65)【公開番号】特開2016-125614(P2016-125614A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2015年8月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 祐一
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−074478(JP,A)
【文献】 特開2004−360801(JP,A)
【文献】 特開昭61−171786(JP,A)
【文献】 特開平11−148555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00 − 15/56
F02F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのシリンダヘッドまたは1つのクランクケースからなる取付対象の取り付け面と、該取り付け面に並列して固定される複数の、個別に形成されたシリンダブロックからなる被取付対象それぞれの被取り付け面との間に挟まれる一枚物のガスケットであって、
複数の前記被取付対象の被取り付け面それぞれに対応して複数設けられ、該被取り付け面と前記取り付け面との間に位置するシール部と、
複数の前記シール部の間に位置し、複数の該シール部を繋ぐ間在部と、
前記間在部に形成され、少なくとも前記シール部よりも強度が低く、外力の作用により、該間在部を介して繋がる複数の該シール部を分離させる脆弱部と、
を備えることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
1つのシリンダブロックからなる取付対象の取り付け面と、該取り付け面に並列して固定される複数の、個別に形成されたシリンダヘッドからなる被取付対象それぞれの被取り付け面との間に挟まれる一枚物のガスケットであって、
複数の前記被取付対象の被取り付け面それぞれに対応して複数設けられ、該被取り付け面と前記取り付け面との間に位置するシール部と、
複数の前記シール部の間に位置し、複数の該シール部を繋ぐ間在部と、
前記間在部に形成され、少なくとも前記シール部よりも強度が低く、外力の作用により、該間在部を介して繋がる複数の該シール部を分離させる脆弱部と、
を備えることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
前記脆弱部は、前記間在部を貫通する複数の孔で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記脆弱部は、溝で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスケット。
【請求項5】
前記ガスケットの本体は、耐熱繊維および合成ゴムを含む材質で形成されたシート状の部材であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダブロックに設けられるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載のように、エンジンにおいて、シリンダブロックとシリンダヘッドの間やシリンダブロックとクランクケースの間にはガスケットが挟まれており、ガスケットによって連結部分の密封性を高め、シリンダブロック内部からのガス漏れを防いでいる。
【0003】
ところで、複数のシリンダを備えるエンジンでは、シリンダブロックがシリンダごとに個別に形成されている。このとき、複数のシリンダブロックに対し、シリンダヘッドやクランクケースは1個のみ設けられる。すなわち、1つのシリンダヘッドおよび1つのクランクケースに対し、複数のシリンダブロックが連結されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−148555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、上記のように、1つのシリンダヘッドや1つのクランクケースに対し、複数のシリンダブロックが連結されたエンジンにおいて、組み付け作業の効率化を図るために、すべてのシリンダブロックに当接する一枚物のガスケットを採用することがある。この場合、いずれか1つのシリンダブロックに補修の必要が生じたとしても、ガスケットを取り外すためには、すべてのシリンダブロックを取り外さなければならないため、作業性が悪い。
【0006】
また、一枚物のガスケットを換装する場合、ガスケットは、補修が必要なシリンダブロック以外のシリンダブロックに当接する部分も廃棄され、新たに用意されることとなるため、補修費用が高くなってしまう。
【0007】
一方、シリンダブロックごとに個別のガスケットを設けると、複数枚のガスケットの取り付け作業が必要となり、一枚物のガスケットの取り付け作業に比べ、作業工数が多くなってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、作業性の向上と補修費用の低減を両立することができるガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の、1つのシリンダヘッドまたは1つのクランクケースからなる取付対象の取り付け面と、取り付け面に並列して固定される複数の、個別に形成されたシリンダブロックからなる被取付対象それぞれの被取り付け面との間に挟まれる一枚物のガスケットは、複数の被取付対象の被取り付け面それぞれに対応して複数設けられ、被取り付け面と取り付け面との間に位置するシール部と、複数のシール部の間に位置し、複数のシール部を繋ぐ間在部と、間在部に形成され、少なくともシール部よりも強度が低く、外力の作用により、間在部を介して繋がる複数のシール部を分離させる脆弱部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の、1つのシリンダブロックからなる取付対象の取り付け面と、取り付け面に並列して固定される複数の、個別に形成されたシリンダヘッドからなる被取付対象それぞれの被取り付け面との間に挟まれる一枚物の他のガスケットは、複数の被取付対象の被取り付け面それぞれに対応して複数設けられ、被取り付け面と取り付け面との間に位置するシール部と、複数のシール部の間に位置し、複数のシール部を繋ぐ間在部と、間在部に形成され、少なくともシール部よりも強度が低く、外力の作用により、間在部を介して繋がる複数のシール部を分離させる脆弱部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
脆弱部は、間在部を貫通する複数の孔で形成されてもよい。
【0012】
脆弱部は、溝で形成されていてもよい。
【0013】
ガスケットの本体は、耐熱繊維および合成ゴムを含む材質で形成されたシート状の部材であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業性の向上と補修費用の低減を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】エンジンを説明するための概略断面図である。
図2】ガスケットを説明するための説明図である。
図3】変形例のガスケットを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、エンジン1を説明するための概略断面図である。図1に示すように、エンジン1は、2つのシリンダブロック2を備える2サイクルの2気筒エンジンであって、各シリンダブロック2の内部には、ピストン3が摺動するシリンダ4が形成されている。
【0018】
2つのシリンダブロック2のうち、図1中、上側の上端面2a(被取り付け面)側には、シリンダヘッド5が配される。シリンダヘッド5のうち、シリンダブロック2が取り付けられる側の端面であるシール面5a(取り付け面)は、2つのシリンダブロック2の上端面2aに亘って、図1中、左右方向(シリンダ4の径方向)に延在している。2つのシリンダブロック2は、シール面5aに並列して固定され、シリンダヘッド5によって、2つのシリンダ4の上端面2a側が覆われる。また、シリンダヘッド5、シリンダブロック2、ピストン3によって囲繞された空間が燃焼室6となる。
【0019】
ピストン3は、コンロッド7を介してクランクシャフト8に連結される。クランクシャフト8は、クランクケース9内に配された複数の軸受10によって軸支される。クランクケース9は、2つのシリンダブロック2のうち、図1中、下側の下端面2b(被取り付け面)側に配される。
【0020】
クランクケース9のうち、シリンダブロック2が取り付けられる側の端面であるシール面9a(取り付け面)は、図1中、左右方向(シリンダ4の径方向)に2つのシリンダブロック2の下端面2bに亘って延在している。2つのシリンダブロック2は、シール面9aに並列して固定され、クランクケース9によって、2つのシリンダ4の下端面2b側が覆われる。
【0021】
エンジン1では、燃焼室6内で燃料が燃焼し、その膨張圧を受けてピストン3がシリンダ4内を往復移動すると、ピストン3の動力がコンロッド7を介してクランクシャフト8に伝達されてクランクシャフト8を回転させる。このとき、シリンダ4には吸気や排気が充満することから密封性が求められる。
【0022】
シリンダ4内の密封性を高めるため、シリンダブロック2の下端面2bとクランクケース9のシール面9aとの間、および、シリンダブロック2の上端面2aとシリンダヘッド5のシール面5aとの間には、図1中、破線で示すガスケット11が挟まれる。両ガスケット11の構成は実質的に等しいことから、以下では、2つのシリンダブロック2とクランクケース9の間に配されたガスケット11について詳述する。
【0023】
図2は、ガスケット11を説明するための説明図であり、図2(a)には、図1におけるガスケット11およびクランクケース9のII矢視図を示し、図2(b)には、図2(a)におけるガスケット11を抽出して示す。図2(a)において、ガスケット11を太線で示し、クランクケース9を細線二点鎖線で示す。また、図2(a)では、理解を容易とするため、ガスケット11に隠れている部位も含めて図示する。
【0024】
ガスケット11の本体11aは、耐熱繊維と補強材、および、油潤滑性を有する合成ゴムからなるシート状の部材である。ここでは、本体11aが耐熱繊維と補強材、および、油潤滑性を有する合成ゴムからなるシート状の部材である場合について説明したが、本体11aの材質に特に限定はない。
【0025】
図2(a)に示すように、クランクケース9は、吸気流路を開閉する不図示のリードバルブが組み付けられる組付穴9bと、シリンダ4に対向してコンロッド7が挿通される開口部9cを有する。2つのシリンダブロック2それぞれに対応して、2つずつ、組付穴9bと開口部9cが設けられている。
【0026】
ガスケット11には、対向孔11b、11cが2つずつ形成されている。対向孔11bは、クランクケース9側およびシリンダブロック2側それぞれの吸気流路の間に位置しており、対向孔11cは、クランクケース9の開口部9cおよびシリンダブロック2のシリンダ4の間に位置している。また、ガスケット11の表面には、図2中、クロスハッチングで示すように、対向孔11b、11cの双方を囲繞する配置でシール剤が塗布されており、ガスケット11による密封性を高めている。
【0027】
また、ガスケット11には、クランクケース9とシリンダブロック2とを連結するボルトが挿通される挿通孔11dが複数形成されている。
【0028】
そして、図2(b)に示すように、ガスケット11はシール部11eを備える。シール部11eは、ガスケット11の本体11aのうち、2つのシリンダブロック2の下端面2b(被取り付け面)それぞれに対応して2つ設けられ、シリンダブロック2の下端面2bと、クランクケース9のシール面9aとの間に位置する部位である。
【0029】
間在部11fは、ガスケット11の本体11aのうち、2つのシール部11eの間に位置し、複数のシール部11eを繋ぐ部位である。例えば、2つのシリンダブロック2が密接して配置されている場合、間在部11fは、ガスケット11の本体11aのうち、2つのシール部11eの境界線部分となる。
【0030】
脆弱部11gは、間在部11fに形成され、少なくともシール部11eよりも強度が低い部位である。ここでは、脆弱部11gは、間在部11fを、図2中、手前側から奥側に向かって、本体11aの厚み方向に貫通する複数の孔12で形成されている。
【0031】
間在部11fは、脆弱部11g(孔12)が形成されていて、シール部11eよりも強度が低いことから、本体11a部を引っ張られるなど、間在部11fに外力が作用すると、間在部11fを介して繋がる2つのシール部11eが分離する。
【0032】
このようなガスケット11を用いることで、下記のような効果がある。すなわち、エンジン1の組立時、ガスケット11は、2つのシリンダブロック2に当接する1枚物であることから、シリンダブロック2ごとに別々のガスケットを取り付けるよりも作業性が向上する。
【0033】
また、エンジン1の補修時、1つのシリンダブロック2に補修の必要が生じた場合、クランクケース9および補修対象のシリンダブロック2を取り外した後、ガスケット11を引っ張ることで間在部11fが脆弱部11gから破断し、2つのシール部11eが分離する。こうして、補修対象のシリンダブロック2側のシール部11eのみを取り外し、1つのシール部11eのみで構成される新品のガスケットを、補修対象のシリンダブロック2側に取り付ける。
【0034】
従来、一枚物のガスケットを換装する場合、ガスケットは、補修が必要なシリンダブロック以外のシリンダブロックに当接する部分も廃棄され、新たに用意されることとなるため、補修費用が高くなってしまっていた。本実施形態のガスケット11では、上記のように、ガスケット11のうち、必要な部分のみを換装でき、補修費用を低減できる。
【0035】
図3は、変形例のガスケット21を説明するための説明図である。上述した実施形態では、脆弱部11gは、複数の孔12で構成される場合について説明したが、変形例においては、脆弱部21gは、溝22で形成されている。脆弱部21gを溝22とすることで、脆弱部21gが容易に形成でき、脆弱部21gの形成に要するコストを低減できる。
【0036】
ただし、上述した実施形態のように、脆弱部11gを孔12で構成することで、脆弱部11gの強度を一層低くすることができ、シール部11eの切り離しが容易となって作業性が向上する。
【0037】
また、脆弱部は、孔12や溝22に限らず、シール部11eよりも強度が弱くなれば、例えば、シール部11eよりも強度の低い素材で構成するなど、他のどのような構成であってもよい。
【0038】
また、上述した実施形態および変形例では、シリンダブロック2とクランクケース9との間に挟まれたガスケット11について詳述したが、ガスケット11は、シリンダブロック2とシリンダヘッド5との間に挟まれるものであってもよい。
【0039】
また、上述した実施形態および変形例では、ガスケット11の本体11aを、少なくとも耐熱繊維および合成ゴムを含む材質で形成されたシート状の部材とする場合について説明したが、例えば、金属素材のシート状の部材であってもよい。ただし、ガスケット11の本体11aを、少なくとも耐熱繊維および合成ゴムを含む材質で形成されたシート状の部材とすることで、ガスケット11としての機能を維持しつつ、複数のシール部11eの切り離しを容易にして作業性を向上できる。
【0040】
また、上述した実施形態および変形例では、シリンダヘッド5およびクランクケース9がシール面5a、9aを有する取付対象であって、複数のシリンダブロック2が被取り付け面を有する被取付対象であって、複数のシリンダ4ごとにシリンダブロック2が複数設けられ、シリンダヘッド5が複数のシリンダ4に対応して一体形成される場合について説明した。
【0041】
しかし、シリンダブロックが取り付け面を有する取付対象であって、シリンダヘッドが被取り付け面を有する被取付対象であって、複数のシリンダ4に対応してシリンダブロックが一体形成され、複数のシリンダ4ごとにシリンダヘッドが複数設けられていてもよい。この場合、シリンダブロックのうちシリンダヘッド側の面である上端面が、取り付け面となり、シリンダヘッドのうちシリンダブロック側の面であるシール面が、被取り付け面となる。
【0042】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、複数のシリンダブロックに設けられるガスケットに利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 エンジン
2 シリンダブロック(被取付対象、取付対象)
2a 上端面(被取り付け面、取り付け面)
2b 下端面(被取り付け面)
5 シリンダヘッド(取付対象、被取付対象)
5a シール面(取り付け面、被取り付け面)
9 クランクケース(取付対象、被取付対象)
9a シール面(取り付け面)
11、21 ガスケット
11a 本体
11e シール部
11f 間在部
11g、21g 脆弱部
12 孔
22 溝
図1
図2
図3