特許第6200462号(P6200462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200462
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】高速研削操作用の研磨物品
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/00 20060101AFI20170911BHJP
   B24D 3/18 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B24D3/00 320A
   B24D3/00 340
   B24D3/18
【請求項の数】19
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-143650(P2015-143650)
(22)【出願日】2015年7月21日
(62)【分割の表示】特願2014-501313(P2014-501313)の分割
【原出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2015-226979(P2015-226979A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2015年7月21日
(31)【優先権主張番号】61/470,064
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391010770
【氏名又は名称】サンーゴバン アブレイシブズ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】507169495
【氏名又は名称】サン−ゴバン アブラジフ
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(72)【発明者】
【氏名】ニランジャン・サランギ
(72)【発明者】
【氏名】ルノー・フィックス
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・ウッズ
(72)【発明者】
【氏名】ジム・ガフニー
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・カンパニエロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・アール・ベッセ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・イー・フォックス
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−521829(JP,A)
【文献】 特表2003−527974(JP,A)
【文献】 特開2004−142085(JP,A)
【文献】 特表2010−521326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
B24D 3/18
DWPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微結晶性アルミナ(MCA)を含む研磨粒子が単相ガラス質結合材内に含有される結合研磨体を含む研磨物品であって、
前記結合研磨体が、
少なくとも1.0の強度比(MOR/MOE)と、
前記結合研磨体の総容積に対して、少なくとも42容積%で52容積%以下の含有量の気孔率と、
前記結合研磨体の総容積に対して、少なくとも42容積%で52容積%以下の含有量の研磨粒子と、
前記結合研磨体の総容積に対して、少なくとも6容積%で14容積%以下の含有量の結合材と、を含み、
前記単相ガラス質結合材が、
前記結合材の総重量に対して、少なくとも13重量%で17重量%以下の量の酸化ホウ素(B)含有量と、
酸化ホウ素(B)の前記量より少なくとも約1.5倍で酸化ホウ素(B)の前記量より約5倍以下の重量%での酸化ケイ素(SiO)含有量と、を含む研磨物品。
【請求項2】
前記結合研磨体が、少なくとも約0.4インチ/分/インチ(258mm/分/mm)の材料除去率で金属を含む工作物を研削できる、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項3】
前記結合研磨体が、少なくとも40MPaのMORと少なくとも40GPaのMOEを含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項4】
前記結合材が、前記結合材の総重量に対して、約52重量%以下の量の酸化ケイ素(SiO)含有量を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項5】
前記結合研磨体が、少なくとも45MPaのMORと少なくとも40GPaのMOEを含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項6】
前記結合研磨体が、少なくとも約60m/秒の速度で金属を含む工作物を研削できる、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項7】
前記結合材が、前記結合材の総重量に対して、少なくとも約2重量%で約5重量%以下の量の酸化リチウム(LiO)含有量を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項8】
前記結合材が、約1.0重量%以下の酸化リン(P)を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項9】
前記強度比(MOR/MOE)が、少なくとも1.05で3.00以下である、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項10】
前記結合研磨体が、少なくとも48MPaのMORと少なくとも40GPaのMOEを含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項11】
前記結合材が、前記結合材の総重量に対して、少なくとも約5重量%で約10重量%以下の含有量の酸化ナトリウム(NaO)を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項12】
前記結合材が、前記結合材の総重量に対して、少なくとも約2重量%で約5重量%以下の含有量の酸化カリウム(KO)を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項13】
前記結合材が、前記結合材の総重量に対して、少なくとも約10重量%で約20重量%以下の総含有量のアルカリ酸化物(RO)を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項14】
前記結合材が、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)からなる群から選択される3つ以下の異なるアルカリ土類酸化物化合物(RO)を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項15】
前記結合材が、アルカリ土類酸化物化合物(RO)を含み、前記結合材に存在するアルカリ土類酸化物化合物(RO)の総含有量が約3.0重量%以下である、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項16】
前記結合材が、前記結合材の総重量に対して、少なくとも約15重量%で約20重量%以下の含有量の酸化アルミニウム(Al)を含む、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項17】
前記結合材が、少なくとも1つのアルカリ酸化物(RO)と少なくとも1つのアルカリ土類酸化物化合物(RO)を含み、アルカリ酸化物(RO)の組み合わせの総含有量とアルカリ土類酸化物化合物(RO)の総含有量が前記結合材の総重量の少なくとも14重量%である、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項18】
前記強度比(MOR/MOE)が、少なくとも1.1で2.00以下である、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項19】
前記単相ガラス質結合材が、
約52重量%以下の含有量の酸化ケイ素(SiO)と、
少なくとも約16重量%の含有量の酸化アルミニウム(Al)と、
約2.9以下の酸化アルミニウム(Al)に対する酸化ケイ素(SiO)の比(SiO:Al)と、
少なくとも約0.5重量%で約2重量%以下の含有量の酸化カルシウム(CaO)と、
少なくとも約3重量%で約4重量%以下の含有量の酸化リチウム(LiO)と、
少なくとも約6重量%で約8重量%以下の含有量の酸化ナトリウム(NaO)と、
少なくとも約2重量%で約3重量%以下の含有量の酸化カリウム(KO)と、
少なくとも13重量%で17重量%以下の含有量の酸化ホウ素(B)と、
それぞれ痕跡量以下の含有量の酸化リン(P)、酸化鉄(Fe)、酸化チタン(TiO)および酸化マグネシウム(MgO)と、を含む請求項1に記載の研磨物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
下記は、研磨物品、および特に高速研削操作を行うために好適な結合研磨物品を対象とする。
【背景技術】
【0002】
研磨工具は、研磨粒子が材料除去用途向けに結合材内に含有されるように一般に形成される。超研磨粒子(たとえば、ダイヤモンドもしくは立方晶窒化ホウ素(CBN))または微結晶性アルファ−アルミナ(MCA)研磨粒子とも言われる、シードあり(もしくはシードなしでも)の焼結ゾルゲルアルミナ研磨粒子が、そのような研磨工具に用いられ得る。結合材は、樹脂などの、有機材料、またはガラスもしくはガラス化材料などの、無機材料であり得る。特に、ガラス化結合材を使用する、かつMCA粒子または超研磨粒子を含有する結合研磨工具は、研削のために商業的に有用である。
【0003】
ある種の結合研磨工具、特にガラス化結合材を利用するものは、MCAの研磨粒子に有害な影響を及ぼし得る、多くの場合約1100℃以上での、高温形成プロセスを必要とする。実際に、研磨工具を形成するために必要なそのような高温で、結合材は、研磨粒子、特にMCA粒子と反応し、研磨材の完全性を損傷し、粒子の鋭さおよび性能特性を低下させ得ることが知られている。結果として、当該技術業界では、形成プロセス中に研磨粒子の高温劣化を抑制するために結合材を形成するために必要な形成温度を低下させることに移行してきた。
【0004】
たとえば、MCA粒子とガラス化結合剤との間の反応の量を減らすために、米国特許第4,543,107号明細書は、約900℃ほどに低い温度で焼成するために好適な結合剤組成物を開示している。代わりのアプローチでは、米国特許第4,898,597号明細書は、約900℃ほどに低い温度で焼成するために好適な少なくとも40%のフリット材料を含む結合剤組成物を開示している。1000℃よりも下の温度で形成することができる結合材を利用する他のそのような結合研磨物品としては、米国特許第5,203,886号明細書、米国特許第5,401,284号明細書、米国特許第5,536,283号明細書、および米国特許第6,702,867号明細書が挙げられる。さらに、当該技術業界では、そのような結合研磨物品の性能の向上が依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のガラス質結合材は、高速研削操作のために必ずしも好適ではない。典型的には、高速研削操作は、研磨物品が高速研削操作中に加えられる力に耐えることができるように、1100℃を上回る焼結温度で形成されたガラス質結合研磨物品を必要とする。当該技術業界では、結合研磨物品の向上が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、研磨物品は、微結晶性アルミナ(MCA)を含む研磨粒子が結合材内に含有される結合研磨体を含み、ここで、結合研磨体は、少なくとも約0.80の強度比(MOR/MOE)を有する。
【0007】
別の態様においては、研磨物品は、微結晶性アルミナ(MCA)を含む研磨粒子が結合材内に含有される結合研磨体を含み、ここで、結合研磨体は、少なくとも約40GPaのMOEに対して少なくとも40MPaのMORを有する。
【0008】
さらに別の態様においては、研磨物品は、微結晶性アルミナ(MCA)を含む研磨粒子が結合材内に含有される結合研磨体を含み、ここで、結合研磨体は、少なくとも約0.80の強度比(MOR/MOE)を有し、結合研磨体は、少なくとも約0.4インチ/分/インチ(258mm/分/mm)の材料除去率で少なくとも約60m/秒の速度で金属を含む工作物を研削できる。
【0009】
別の態様は、微結晶性アルミナ(MCA)を含む研磨粒子が、約20重量%以下の酸化ホウ素(B)から形成され、約3.0重量%以下の酸化リン(P)を有する結合材内に含有される結合研磨体を含む研磨物品であって、結合研磨体が、少なくとも約0.80の強度比(MOR/MOE)を有する研磨物品を指向する。
【0010】
別の態様によれば、研磨物品は、微結晶性アルミナ(MCA)を含む研磨粒子が結合材内に含有される結合研磨体を含む。結合研磨体は、結合研磨体の総容積に対して約15容積%以下の結合材を含み、そしてここで、結合研磨体は、少なくとも約0.80の強度比(MOR/MOE)を有する。
【0011】
さらに別の態様においては、研磨物品は、微結晶性アルミナ(MCA)を含む研磨粒子が結合材内に含有される結合研磨体を含み、ここで、結合研磨体は、少なくとも約0.80の強度比(MOR/MOE)を有し、そして約1000℃以下の温度で焼結される。
【0012】
本開示は、添付の図面を参照することによって当業者により良く理解され、その多数の特徴および利点が明らかにされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】先行技術結合研磨体および本明細書での実施形態による結合研磨体についてのパーセント気孔率、パーセント研磨材、およびパーセント結合剤の略図を含む。
図2】従来の結合研磨物品および本明細書での実施形態による結合研磨物品についてのMOR対MOEのグラフを含む。
図3】本明細書での実施形態による結合研磨物品と比較した従来の結合研磨物品についての材料除去率対カットの深さのチャートを含む。
図4】従来の結合研磨物品およびある実施形態による結合研磨物品についての材料除去率対カットの深さのチャートを含む。
図5】従来の結合研磨物品および本明細書での実施形態による結合研磨物品についての最大電力対材料除去率のプロットを含む。
図6】従来の結合研磨物品および実施形態による結合研磨物品についての最大電力対材料除去率のプロットを含む。
図7】従来の結合研磨物品およびある実施形態による結合研磨物品についての最大電力対材料除去率のプロットを含む。
図8】従来の結合研磨物品およびある実施形態による結合研磨物品についての角保持係数を実証する半径の変化対カットの深さ(Zw)のプロットを含む。
図9】従来の結合研磨物品およびある実施形態による結合研磨物品についての角保持係数を例示する一連の写真を含む。
図10】ある実施形態による結合研磨物品と比べて従来の結合研磨物品についての角保持係数を例示する一連の写真を含む。
図11】ある実施形態による結合研磨物品と比べて従来の結合研磨物品についての角保持係数を例示する一連の写真を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
異なる図面での同じ参照記号の使用は、類似のまたは同一の項目を示す。
【0015】
下記は、工作物の研削および造形に好適であり得る、結合研磨物品を対象とする。とりわけ、本明細書での実施形態の結合研磨物品は、研磨粒子をガラス質結合材内に組み入れることができる。本明細書での実施形態の結合研磨物品の使用のための好適な用途としては、たとえば、芯なし研削、円筒研削、クランク軸研削、様々な表面研削操作、ベアリングおよびギア研削操作、クリープフィード研削、ならびに様々な工具室用途などの研削操作が挙げられる。
【0016】
ある実施形態によれば、ある実施形態の結合研磨物品の形成方法は、結合材を形成するための好適な化合物および成分の混合物を形成することによって開始することができる。結合剤は、酸化物化合物などの、無機材料の化合物で形成することができる。たとえば、一つの好適な酸化物材料は、酸化ケイ素(SiO)を含むことができる。ある実施形態に従って、結合材は、結合材の総重量に対して約55重量%以下の酸化ケイ素から形成することができる。他の実施形態においては、酸化ケイ素の含有量は、約54重量%以下、約53重量%以下、約52重量%以下、またはさらには約51重量%以下などの、より少ないものであり得る。さらに、ある種の実施形態においては、結合材は、結合材の総重量に対して少なくとも約46重量%、およそ少なくとも約47重量%、少なくとも約48重量%、またはさらには少なくとも約49重量%などの、少なくとも約45重量%の酸化ケイ素から形成されてもよい。酸化ケイ素の量が、上述の最小および最大百分率のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0017】
結合材はまた、ある種の含有量の酸化アルミニウム(Al)を組み入れることができる。たとえば、結合材は、結合材の総重量に対して少なくとも約12重量%の酸化アルミニウムを含むことができる。他の実施形態においては、酸化アルミニウムの量は、少なくとも約14重量%、少なくとも約15重量%、またはさらには少なくとも約16重量%であり得る。ある種の場合には、結合材は、結合剤の総重量に対して約23重量%以下、約21重量%以下、約20重量%以下、約19重量%以下、またはさらには約18重量%以下である量の酸化アルミニウムを含んでもよい。酸化アルミニウムの量が、上述の最小および最大百分率のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0018】
ある種の場合には、結合材は、重量パーセントで測定されるような酸化ケイ素の量対重量パーセントで測定されるような酸化アルミニウムの量の間の特定の比から形成することができる。たとえば、シリカ対アルミナの比は、結合材内の酸化ケイ素の重量パーセントを酸化アルミニウムの重量パーセントで割ることによって示すことができる。ある実施形態に従って、酸化ケイ素対酸化アルミニウムの比は、約3.2以下であり得る。他の場合には、結合材内の酸化ケイ素対酸化アルミニウムの比は、約3.1以下、約3.0以下、またはさらには約2.9以下であり得る。さらに、結合材は、ある種の場合には、酸化ケイ素の重量パーセント対酸化アルミニウムの重量パーセントの比が、少なくとも約2.3などの、およそ少なくとも約2.4、少なくとも約2.5、少なくとも約2.6、またはさらには少なくとも約2.7などの、少なくとも約2.2であるように形成することができる。酸化アルミニウムおよび酸化ケイ素の総量が上述の最小および最大値のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0019】
ある実施形態に従って、結合材は、ある種の含有量の酸化ホウ素(B)から形成することができる。たとえば、結合材は、結合材の総重量に対して約20重量%以下の酸化ホウ素を組み入れることができる。他の場合には、酸化ホウ素の量は、約19重量%以下、約18重量%以下、約17重量%以下、またはさらには約16重量%以下などの、より少ないものであり得る。さらに、結合材は、結合材の総量に対して少なくとも約12重量%、少なくとも約13重量%、またはさらには少なくとも約14重量%などの、少なくとも約11重量%の酸化ホウ素から形成することができる。酸化ホウ素の量が上述の最小および最大百分率のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0020】
一実施形態に従って、結合材は、結合材内の酸化ホウ素の重量パーセントと酸化ケイ素の重量パーセントとの総含有量(すなわち、合計)が結合材の総重量に対して約70重量%以下であり得るように形成することができる。他の場合には、酸化ケイ素と酸化ホウ素との総含有量は、約68重量%以下、約67重量%以下、またはさらには約66重量%以下などの、約69重量%以下であり得る。特定の一実施形態に従って、酸化ケイ素と酸化ホウ素との総重量パーセント含有量は、結合材の総重量に対して少なくとも約58重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約62重量%、少なくとも約63重量%、少なくとも約64重量%、またはさらには少なくとも約65重量%などの、少なくとも約55重量%であり得る。結合材内の酸化ケイ素および酸化ホウ素の総重量パーセントは上述の最小および最大百分率のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0021】
さらに、特定の場合には、酸化ケイ素の量は、重量パーセントで測定されるように、結合材内の酸化ホウ素の量よりも大きいものであり得る。とりわけ、酸化ケイ素の量は、酸化ホウ素の量よりも少なくとも約1.5倍大きい、少なくとも約1.7倍大きい、少なくとも約1.8倍大きい、少なくとも約1.9倍大きい、少なくとも約2.0倍大きい、またはさらには少なくとも約2.5倍も大きいものであり得る。さらに、一実施形態においては、結合材は、約4倍以下大きい、約3.8倍以下大きい、またはさらには約3.5倍以下も大きいなどの、約5倍以下大きい量の酸化ケイ素を含むことができる。酸化ホウ素の量と比べて酸化ケイ素の量の差が上述の最小および最大値のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0022】
ある実施形態に従って、結合材は、少なくとも1つのアルカリ酸化物化合物(RO)(式中、Rは、元素の周期表の族IA元素から選択される金属を表す)から形成することができる。たとえば、結合材は、酸化リチウム(LiO)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カリウム(KO)、および酸化セシウム(CsO)、ならびにそれらの組み合わせなどの化合物の群からのアルカリ酸化物化合物(RO)から形成することができる。
【0023】
ある実施形態に従って、結合材は、結合剤の総重量に対して約20重量%以下の総含有量のアルカリ酸化物化合物から形成することができる。本明細書での実施形態による他の結合研磨物品については、アルカリ酸化物化合物の総含有量は、約19重量%以下、約18重量%以下、約17重量%以下、約16重量%以下、またはさらには約15重量%以下であり得る。さらに、一実施形態においては、結合材内のアルカリ酸化物化合物の総含有量は、少なくとも約12重量%、少なくとも約13重量%、またはさらには少なくとも約14重量%などの、少なくとも約10重量%であり得る。結合材が上述の最小および最大百分率のいずれかの間の範囲内の総含有量のアルカリ酸化物化合物を含み得ることは十分理解されるであろう。
【0024】
特定の一実施形態に従って、結合材は、上述のような約3つ以下の個々のアルカリ酸化物化合物(RO)から形成することができる。実際に、ある種の結合材は、結合材内に約2つ以下のアルカリ酸化物化合物を組み入れてもよい。
【0025】
さらに、結合材は、アルカリ酸化物化合物のいずれの個々の含有量も結合材内のアルカリ酸化物化合物の総含有量(重量パーセントでの)の半分以下であるように形成することができる。さらに、特定の一実施形態に従って、酸化ナトリウムの量は、酸化リチウムまたは酸化カリウムの含有量(重量パーセント)よりも大きいものであり得る。より特定の場合には、重量パーセントで測定されるような酸化ナトリウムの総含有量は、重量パーセントで測定されるような酸化リチウムおよび酸化カリウムの含有量の合計よりも大きいものであり得る。さらに、一実施形態においては、酸化リチウムの量は、酸化カリウムの含有量よりも大きいものであり得る。
【0026】
一実施形態に従って、結合材を形成する重量パーセントで測定されるようなアルカリ酸化物化合物の総量は、結合材内の酸化ホウ素の量(重量パーセントで測定されるような)よりも少ないものであり得る。実際に、ある種の場合には、結合材内の酸化ホウ素の総重量パーセントと比べてアルカリ酸化物化合物の総重量パーセントは、約0.9〜1.3の範囲内、またはさらには約0.9〜約1.1の範囲内などの、約0.9〜1.5の範囲内であり得る。
【0027】
結合材は、ある量のアルカリ土類化合物(RO)(式中、Rは元素の周期表の族IIAからの元素を表す)から形成することができる。たとえば、結合材は、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化バリウム(BaO)、またはさらには酸化ストロンチウム(SrO)などのアルカリ土類酸化物化合物を組み入れることができる。ある実施形態に従って、結合材は、結合材の総重量に対して約3.0重量%以下のアルカリ土類酸化物化合物を含有することができる。さらに他の場合には、結合材は、およそ約2.8重量%以下、約2.2重量%以下、約2.0重量%以下、または約1.8重量%以下などのより少ないアルカリ土類酸化物化合物を含有してもよい。さらに、一実施形態によれば、結合材は、結合材の総重量に対して少なくとも約0.8重量%、少なくとも約1.0重量%、またはさらには少なくとも約1.4重量%などの、少なくとも約0.5重量%の含有量の1つ以上のアルカリ土類酸化物化合物を含有してもよい。結合材内のアルカリ土類酸化物化合物の量が上述の最小および最大百分率のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0028】
ある実施形態に従って、結合材は、約3つ以下の異なるアルカリ土類酸化物化合物から形成することができる。実際に、結合材は、2つ以下の異なるアルカリ土類酸化物化合物を含有してもよい。ある特定の場合には、結合材は、酸化カルシウムおよび酸化マグネシウムからなる2つのアルカリ土類酸化物化合物から形成することができる。
【0029】
一実施形態においては、結合材は、酸化マグネシウムの量よりも大きい量の酸化カルシウムを含むことができる。さらに、結合材内の酸化カルシウムの量は、結合材内に存在する他のアルカリ土類酸化物化合物のいずれの含有量よりも大きくてもよい。
【0030】
結合材は、総含有量が結合材の総重量に対して約20重量%以下であるようにアルカリ酸化物化合物とアルカリ土類酸化物化合物との組み合わせから形成することができる。他の実施形態においては、結合材内のアルカリ酸化物化合物およびアルカリ土類酸化物化合物の総含有量は、約18重量%以下、またはさらには約17重量%以下などの、約19重量%以下であり得る。しかし、ある種の実施形態においては、結合材内に存在するアルカリ酸化物化合物およびアルカリ土類化合物の総含有量は、少なくとも約13重量%、少なくとも約14重量%、少なくとも約15重量%、またはさらには少なくとも約16重量%などの、少なくとも約12重量%であり得る。結合材が上述の最小および最大百分率のいずれかの間の範囲内のアルカリ酸化物化合物およびアルカリ土類酸化物化合物の総含有量を有することができることは十分理解されるであろう。
【0031】
ある実施形態に従って、結合材は、結合材内に存在するアルカリ酸化物化合物の含有量がアルカリ土類酸化物化合物の総含有量よりも大きいように形成することができる。特定の一実施形態においては、結合材は、アルカリ土類酸化物化合物の総重量パーセントと比べてアルカリ酸化物化合物の総含有量(重量パーセントでの)の比(RO:RO)が約5:1〜約15:1の範囲内であるように形成されてもよい。他の実施形態においては、結合材内に存在するアルカリ酸化物化合物の総重量パーセント対アルカリ土類酸化物化合物の総重量パーセントの比は、約7:1〜約12:1の範囲内、またはさらには約8:1〜約10:1の範囲でなどの、約6:1〜約14:1の範囲内であり得る。
【0032】
ある実施形態に従って、結合材は、結合材の総重量に対して約3重量%以下の酸化リンから形成することができる。ある種の他の場合には、結合材は、結合材の総重量に対して約2.0重量%以下、約1.5重量%以下、約1.0重量%以下、約0.8重量%以下、約0.5重量%以下、またはさらには約0.2重量%以下などの、約2.5重量%以下の酸化リンを含有してもよい。実際に、ある種の場合には、結合材は、酸化リンを本質的に含まなくてもよい。好適な含有量の酸化リンは、本明細書に記載されるようなある種の特性および研削性能特性を促進することができる。
【0033】
一実施形態に従って、結合材は、MnO、ZrSiO、CoAl、およびMgOなどの、たとえば、酸化物化合物などの、約1重量%以下のある種の酸化物化合物を含む組成物以下から形成することができる。実際に、特定の実施形態においては、結合材は、上に特定された酸化物化合物を本質的に含まないものであり得る。
【0034】
混合物内に置かれる結合材に加えて、結合研磨物品の形成方法は、ある種のタイプの研磨粒子の組み入れをさらに含むことができる。ある実施形態に従って、研磨粒子は、微結晶性アルミナ(MCA)を含むことができる。実際に、ある種の場合には、研磨粒子は、微結晶性アルミナから本質的になることができる。
【0035】
研磨粒子は、約1050ミクロン以下である平均粒度を有することができる。他の実施形態においては、研磨粒子の平均粒度は、約800ミクロン以下、約600ミクロン以下、約400ミクロン以下、約250ミクロン以下、約225ミクロン以下、約200ミクロン以下、約175ミクロン以下、約150ミクロン以下、またはさらには約100ミクロン以下などの、より小さいものであり得る。さらに、研磨粒子の平均粒度は、少なくとも約5ミクロン、少なくとも約10ミクロン、少なくとも約20ミクロン、少なくとも約30ミクロン、またはさらには少なくとも約50ミクロン、少なくとも約60ミクロン、少なくとも約70ミクロン、またはさらには少なくとも約80ミクロンなどの、少なくとも約1ミクロンであり得る。研磨粒子の平均粒度が上述の最小および最大値のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0036】
微結晶性アルミナを利用する研磨粒子にさらに関連して、微結晶性アルミナが、サブミクロンサイズである平均粒径を有する粒子で形成し得ることは十分理解されるであろう。実際に、微結晶性アルミナの平均粒径は、約0.5ミクロン以下、約0.2ミクロン以下、約0.1ミクロン以下、約0.08ミクロン以下、約0.05ミクロン以下、またはさらには約0.02ミクロン以下などの、約1ミクロン以下であり得る。
【0037】
さらに、研磨粒子および結合材を含む、混合物の形成は、充填剤、細孔形成剤、および最終的に形成される結合研磨物品を形成するために好適な材料などの、他の成分の添加をさらに含むことができる。細孔形成材料の幾つかの好適な例としては、バブルアルミナ、バブルムライト、中空ガラス球、中空セラミック球、または中空ポリマー球などの中空球、ポリマーまたはプラスチック材料、有機化合物、ガラス、セラミック、またはポリマーのストランドおよび/または繊維などの繊維材料を挙げることができるがそれらに限定されない。他の好適な細孔形成材料は、ナフタレン、PDB、貝殻、木材などを含むことができる。さらに別の実施形態においては、充填剤は、たとえば酸化物などの、1つ以上の無機材料を含むことができ、特に結晶性または非晶質相のジリコニア、シリカ、チタニア、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0038】
混合物が好適に形成された後に、混合物は造形することができる。好適な造形法は、プレス操作および/または成形操作ならびにそれらの組み合わせを含むことができる。たとえば、一実施形態においては、混合物は、混合物を金型内で冷圧プレスして素地を形成することによって造形することができる。
【0039】
素地を好適に形成した後に、素地は、ガラス質相結合材を有する研磨物品の形成を促進するために特定の温度で焼結することができる。とりわけ、焼結操作は、約1000℃未満である焼結温度で行うことができる。特定の実施形態においては、焼結温度は、約950℃未満、特に約800℃〜950℃の範囲内などの、約980℃未満であり得る。過度に高い温度が回避され、こうして形成プロセス中の研磨粒子の劣化を制限するように、特に低い焼結温度が上述の結合剤成分で利用されてもよいことは十分理解されるであろう。
【0040】
特定の一実施形態によれば、結合研磨体は、ガラス質相材料を有する結合材を含む。特定の場合には、結合材は単相ガラス質材料であり得る。
【0041】
最終的に形成される結合研磨体は、結合材、研磨粒子、気孔率の特定の含有量を有することができる。とりわけ、結合研磨物品の結合研磨体は、結合研磨体の総容積に対して少なくとも約42容積%の気孔率を有することができる。他の実施形態においては、気孔率の量は、結合研磨体の総容積に対して少なくとも約44容積%、少なくとも約45容積%、少なくとも約46容積%、少なくとも約48容積%、またはさらには少なくとも約50容積%などの、少なくとも約43容積%などのより大きいものであり得る。ある実施形態に従って、結合研磨体は、約65容積%以下、約62容積%以下、約60容積%以下、約56容積%以下、約52容積%以下、またはさらには約50容積%以下などの、約70容積%以下である気孔率を有することができる。結合研磨体が上述の最小および最大百分率のいずれかの間の範囲内の気孔率を持ち得ることは十分理解されるであろう。
【0042】
ある実施形態に従って、結合研磨体は、結合研磨体の総容積に対して少なくとも約35容積%の研磨粒子を有することができる。他の実施形態においては、研磨粒子の総含有量は、少なくとも約37容積%、またはさらには少なくとも約39容積%などの、より大きいものであり得る。特定の一実施形態に従って、結合研磨体は、それが結合研磨体の総容積に対して約48容積%以下、またはさらには約46容積%以下などの、約50容積%以下の研磨粒子を有するように形成することができる。結合研磨体内の研磨粒子の含有量が上述の最小および最大百分率のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0043】
特定の場合には、結合研磨体は、それが気孔率および研磨粒子の含有量と比べてより少ない含有量(容積%)の結合材を含有するように形成される。たとえば、結合研磨体は、結合研磨体の総容積に対して約15容積%以下の結合材を有することができる。他の場合には、結合研磨体は、それが結合研磨体の総容積に対して約14容積%以下、約13容積%以下、またはさらには約12容積%以下を含有するように形成することができる。ある特定の場合には、結合研磨体は、それが結合研磨体の総容積に対して少なくとも約8容積%、およそ少なくとも約9容積%、またはさらには少なくとも約10容積%などの、少なくとも約7容積%の結合材を含有するように形成することができる。
【0044】
図1は、ある実施形態による特定の結合研磨物品内に存在する相の略図を含む。図1は、容積%結合剤、容積%研磨粒子、および容積%気孔率を有する。陰影領域101は、高速研削用途向けに好適な従来の結合研磨物品を表すが、陰影領域103は、高速研削用途向けにも好適である、本明細書でのある実施形態による結合研磨物品の相含有量を表す。高速研削用途は典型的には、60m/秒以上の操作速度で行われる研削と考えられる。
【0045】
とりわけ、従来の高速結合研磨物品の相含有量(すなわち、陰影領域101)は、ある実施形態の結合研磨物品の相含有量とはかなり異なる。とりわけ、従来の高速結合研磨物品は典型的には、およそ40容積%〜51容積%の範囲内の最大気孔率、およそ42容積%〜50容積%の研磨粒子含有量、およびおよそ9〜20容積%の結合剤含有量を有する。従来の結合研磨物品は典型的には、高速研削用途が高速研削中に遭遇する過度の力に対処するのに十分な強度を有する結合研磨体を必要とし、かつ高度に多孔性の結合研磨体がこれまで前記力に耐えることができなかったので、50容積%以下の最大気孔率含有量を有する。
【0046】
一実施形態によれば、結合研磨物品は、従来の高速結合研磨物品よりもかなり大きい気孔率を有することができる。たとえば、ある実施形態の一つの結合研磨物品は、結合研磨体の総容積に対して約51容積%〜約58容積%の範囲内の気孔率含有量を有することができる。さらに、図1に例示されるように、ある実施形態の結合研磨物品は、約40容積%〜約42容積%の範囲内の研磨粒子含有量、および結合研磨物品の総容積に対しておよそ2容積%〜約9容積%の範囲内の特に低い結合剤含有量を有することができる。
【0047】
とりわけ、本明細書での実施形態の結合研磨体は、従来の結合研磨体とは違った特有の特性を有することができる。特に、本明細書での結合研磨物品は、高速研削用途などの、特定の用途向けにそれらを好適なものにする特有の機械的特性を実証しながら、特定の含有量の気孔率、研磨粒子、および結合剤を有することができる。たとえば、一実施形態においては、結合研磨体は、特定の弾性率(MOE)に相当し得る、特定の破壊係数(MOR)を有することができる。たとえば、結合研磨体は、少なくとも約40GPaのMOEに対して少なくとも45MPaのMORを有することができる。一実施形態においては、MORは、40GPaのMOEに対して少なくとも約47MPa、少なくとも約48MPa、少なくとも約49MPa、またはさらには少なくとも約50MPaなどの、少なくとも約46MPaであり得る。さらに、結合研磨体は、40GPaのMOEに対して約65MPa以下、または約60MPa以下などの、約70MPa以下であるMORを有してもよい。MORが上に与えられた最小および最大値のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0048】
別の実施形態においては、45GPaのMOEを有するある種の結合研磨体については、MORは少なくとも約45MPaであり得る。実際に、45GPaのMOEを有するある種の結合研磨体については、MORは、少なくとも約47MPa、少なくとも約48MPa、少なくとも約49MPa、または少なくとも約50MPaさえなどの、少なくとも約46MPaであり得る。さらに、MORは、45GPaのMOEに対して約70MPa以下、約65MPa以下、または約60MPa以下であってもよい。MORは、上に与えられた最小値および最大値のいずれかの間の範囲内にあり得ることは十分理解されるであろう。
【0049】
MORは、試料サイズを除いて、ASTM D790に概して従って、荷重が1インチ×0.5インチ面にわたって適用される、サイズ4インチ×1インチ×0.5インチの試料に関する標準3点曲げ試験を用いて測定することができる。破壊荷重を記録し、標準方程式を用いてMORに逆算することができる。MOEは、研磨砥石車業界における標準的技法により、GrindoSonic機器または類似の装置を用いる複合材料の固有振動数の測定によって計算することができる。
【0050】
一実施形態においては、結合研磨体は、MOEで割られたMORの尺度である、強度比を有することができる。特定の場合には、特定の結合研磨体の強度比(MOR/MOE)は、少なくとも約0.8であり得る。他の場合には、強度比は、少なくとも約1.0、少なくとも約1.05、少なくとも約1.10などの、少なくとも約0.9であり得る。さらに、強度比は、約2.50以下、約2.00以下、約1.70以下、約1.50以下、約1.40以下、または約1.30以下などの、約3.00以下であってもよい。結合研磨体の強度比が上述の最小および最大値のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0051】
ある実施形態に従って、結合研磨体は、特定の研削操作での使用に好適であり得る。たとえば、本明細書での実施形態の結合研磨体は高速の操作を必要とする研削操作に好適であることが発見された。実際に、結合研磨体は、工作物を損傷することなく、かつ好適なまたは向上した研削性能を提供して特に高速で利用することができる。ある実施形態に従って、結合研磨体は、少なくとも約60m/秒の速度で金属を含む工作物を研削できる。他の場合には、結合研磨体の操作の速度は、少なくとも約65m/秒、少なくとも約70m/秒、またはさらには少なくとも約80m/秒などの、より大きいものであり得る。ある種の場合には、結合研磨体は、約125m/秒以下などの、約150m/秒以下である速度で工作物を研削できる場合がある。本出願の結合研磨体が上述の最小および最大値のいずれかの間の範囲内の操作の速度で工作物を研削できることは十分理解されるであろう。
【0052】
結合研磨体の研削能力についての本明細書での言及は、芯なし研削、円筒研削、クランク軸研削、様々な表面研削操作、ベアリングおよびギア研削操作、クリープフィード研削、ならびに様々な工具室研削プロセスなどの研削操作に関することができる。さらに、研削操作のための好適な工作物は、無機または有機材料を含むことができる。特定の場合には、工作物は、金属、金属合金、プラスチック、または天然材料を含むことができる。一実施形態においては、工作物は、鉄金属、非鉄金属、金属合金、金属超合金、およびそれらの組み合わせを含むことができる。別の実施形態においては、工作物は、たとえば、ポリマー材料などの、有機材料を含むことができる。さらに他の場合には、工作物は、たとえば、木材などの、天然材料であってもよい。
【0053】
特定の場合には、結合研磨体は、高速の操作および特に高い除去率で工作物を研削できることが指摘されている。たとえば、一実施形態においては、結合研磨体は、少なくとも約0.4インチ/分/インチ(258mm/分/mm)の材料除去率で研削操作を行うことができる。他の実施形態においては、材料除去率は、少なくとも約0.5インチ/分/インチ(322mm/分/mm)、少なくとも約0.55インチ/分/インチ(354mm/分/mm)、またはさらには少なくとも約0.6インチ/分/インチ(387mm/分/mm)などの、少なくとも約0.45インチ/分/インチ(290mm/分/mm)であり得る。さらに、ある種の結合研磨体についての材料除去率は、約1.2インチ/分/インチ(774mm/分/mm)以下、約1.0インチ/分/インチ(645mm/分/mm)以下、またはさらには約0.9インチ/分/インチ(580mm/分/mm)以下などの、約1.5インチ/分/インチ(967mm/分/mm)以下であってもよい。本出願の結合研磨体が上述の最小および最大値のいずれかの間の範囲内の材料除去率で工作物を研削できることは十分理解されるであろう。
【0054】
ある種の研削操作中に、本出願の結合研磨体は、特定のカットの深さ(DOC)で高速で研削できることが指摘されている。たとえば、結合研磨体によって達成されるカットの深さは、少なくとも約0.003インチ(0.0762ミリメートル)であり得る。他の場合には、結合研磨体は、高速研削操作の間ずっと少なくとも約0.0045インチ(0.114ミリメートル)、少なくとも約0.005インチ(0.127ミリメートル)、またはさらには少なくとも約0.006インチ(0.152ミリメートル)などの、少なくとも約0.004インチ(0.102ミリメートル)のカットの深さを達成できる。本明細書での結合研磨体を利用する高速研削操作についてのカットの深さが約0.01インチ(0.254ミリメートル)以下、または約0.009インチ(0.229ミリメートル)以下であってもよいことは十分理解されるであろう。カットの深さが上述の最小および最大値のいずれかの間の範囲内であり得ることは十分理解されるであろう。
【0055】
他の実施形態においては、結合研磨体は、上記の研削パラメータが用いられながら、約10Hp(7.5kW)を超えない最大電力で工作物を研削できることが指摘されている。他の実施形態においては、高速研削操作中の最大電力は、約8Hp(6.0kW)以下、またはさらには約7.5Hp(5.6kW)以下などの、約9Hp(6.8kW)以下であってもよい。
【0056】
別の実施形態に従って、高速研削操作の間ずっと、本明細書での実施形態の結合研磨物品が、特に従来の高速結合研磨物品と比べて、優れた角保持能力を有することが指摘されている。実際に、結合研磨体は、0.00255インチ/秒,ラジアンに相当する、少なくとも約1.8のカットの深さ(Zw)で約0.07インチ以下の角保持係数を有することができる。とりわけ、本明細書で用いるところでは、1.0のカットの深さは、0.00142インチ/秒,ラジアンに相当し、1.4のカットの深さ(Zw)は、0.00198インチ/秒,ラジアンに相当する。角保持係数が、特定のカットの深さで、NiCrMoV硬化調質高強度鋼合金である、4330Vの工作物に関して5つの研削を行った後のインチ単位での半径の変化の尺度であることは十分理解されるであろう。ある種の他の実施形態においては、結合研磨物品は、少なくとも約1.80のカットの深さについて、約0.05インチ以下、約0.04インチ以下などの、約0.06インチ以下である角保持係数を実証する。
【実施例】
【0057】
実施例1
図2は、本明細書での実施形態による結合研磨物品および従来の結合研磨物品についての破壊係数(MOR)対弾性率(MOE)のプロットを含む。プロット201は、本明細書での実施形態に従って形成された一連の結合研磨物品についてのMORおよびMOEを表す。この一連の試料のそれぞれは、下の表1に(重量%で)提供される結合剤組成を有して製造される。試料は、およそ42容積%〜およそ52容積%の様々な気孔率、約42容積%〜約52容積%の範囲内の様々な研磨粒子含有量(すなわち、微結晶性アルミナ粒子)、および約6容積%〜約14容積%の範囲内の様々な結合材含有量を有する。試料のそれぞれを冷圧プレスして試験片を形成し、およそ900〜1250℃の焼結温度で焼結する。
【0058】
【表1】
【0059】
プロット203は、高速研削用途向けに好適な従来の結合研磨物品の試料のMORおよびMOE値を表す。従来の試料は、Saint−Gobain CorporationによるVS、VH、およびVBE、ガラス質結合研磨製品でK、L、およびMグレードとして商業的に入手可能な結合研磨物品を表す。これらの試料は、およそ42容積%〜およそ52容積%の様々な気孔率、約42容積%〜約52容積%の範囲内の様々な研磨粒子含有量(すなわち、微結晶性アルミナ粒子)、および約6容積%〜約14容積%の範囲内の様々な結合材含有量を有した。
【0060】
MORおよびMOE試験は、上記の試験を用いて完了した。試料のそれぞれを、およそ4インチ×1インチ×0.5インチのサイズに形成し、MORは、試料サイズを除いて、ASTM D790に概して従って、荷重が1インチ×0.5インチ面にわたって適用される標準3点曲げ試験を用いて測定する。破壊荷重を記録し、標準方程式を用いてMORに逆算する。MOEは、GrindoSonic機器を用いる複合材料の固有振動数の測定によって計算する。
【0061】
図2に例示されるように、本明細書での実施形態の結合研磨物品を表す試料(すなわち、プロット201)は、従来の結合研磨物品を表す試料(すなわち、プロット203)と比べて所与のMOE値に対してより高いMOR値を実証する。本明細書での実施形態の結合研磨物品を表す試料は、およそ1.17の強度比(プロット201についての線の勾配:MOR/MOE)を有する。従来の結合研磨物品を表す試料は、およそ0.63の強度比(プロット203についての線の勾配:MOR/MOE)を有する。図2のデータは、本明細書での実施形態の結合研磨体を表す試料が、従来の結合研磨物品と比べて特定のMOE値に対して向上したMOR値を有することを実証する。
【0062】
従って、本明細書での実施形態の結合研磨物品は、従来の高速結合研磨物品と比べて特定のMOE値に対してより高いMOR値によって実証されるように高速研削操作に好適である。さらに、本明細書での実施形態の結合研磨物品を表す試料でMORが特定のMOEに対してより大きいので、そのような特徴は、操作の速度に対する電力消費の向上ならびに増加した速度の操作での角保持能力の向上を容易にする。
【0063】
実施例2
さらなる比較研削研究を、本明細書での実施形態の結合研磨物品対従来の高速研削結合研磨物品の高速研削能力を比較するために行った。図3は、本明細書での実施形態による結合研磨物品と比較して従来の結合研磨物品についての材料除去率対カットの深さのチャートを含む。3つの試験を、0.003インチ、0.0045インチ、および0.006インチを含む様々なカットの深さ(DOC)で行った。試験パラメータは下の表3に含まれる。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
プロット301、302、および303(301〜303)は、本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物品の試料を表す。試料301〜303のそれぞれは、およそ52容積%〜およそ56容積%の様々な気孔率、約40容積%〜約44容積%の範囲内の様々な研磨粒子含有量(すなわち、微結晶性アルミナ粒子)、および約3容積%〜約8容積%の範囲内の様々な結合材含有量を有した。結合剤の組成は、上の表1に提供されたものと同じものである。
【0067】
試料305、306、および307(305〜307)は、高速研削用途向けに好適な従来の結合研磨物品を表す。従来の試料305〜307は、Saint−Gobain CorporationからNQM90J10VH Productとして商業的に入手可能な結合研磨物品である。試料305〜307のそれぞれは、およそ50容積%〜およそ52容積%の様々な気孔率、約42容積%〜約44容積%の範囲内の様々な研磨粒子含有量(すなわち、微結晶性アルミナ粒子)、および約6容積%〜約10容積%の範囲内の様々な結合材含有量を有した。
【0068】
図3に例示されるように、試料301〜303は、高速研削操作(すなわち、60m/秒の操作速度で行われた)について従来の試料305〜307と比べて試験されたカットの深さのそれぞれで著しくより大きい材料除去率を達成できた。各試験において、試料301〜303および305〜307は、工作物が焼けを示すかまたは試料が研削できなくなるまで研削するために使用された。あらゆる試験において、試料301〜303は、従来の試料305〜307と比較して著しくより大きい材料除去率を達成した。実際に、0.0045インチのカットの深さで、試料302の材料除去率は、従来の試料306によって達成される材料除去率のそれよりも3倍超大きかった。さらに、0.006インチのカットの深さ値で、試料303は、試料302の材料除去率に匹敵し、従来の試料307の材料除去率より10倍大きい材料除去率を実証した。そのような結果は、最新技術の従来の結合研磨物品よりも本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物品の研削効率および研削能力の著しい向上を示す。
【0069】
実施例3
さらなる比較研削研究を、本明細書での実施形態の結合研磨物品対従来の高速研削結合研磨物品の高速研削能力を比較するために行う。図4は、従来の結合研磨物品およびある実施形態による結合研磨物品についての材料除去率対カットの深さのチャートを含む。実施例2において示されたものと同じ試験(上の表3を参照されたい)を、工作物が焼けを示す前の閾値材料除去率を測定するために0.003インチの特定のカットの深さ(DOC)で行う。この試験については、操作の速度は80m/秒であることに留意されたい。
【0070】
プロット401は、本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物の試料を表す。試料401は、上の実施例3で示された試料301〜303に類似の構造を有した。試料403は、Saint−Gobain CorporationからNQM90J10VH Productとして商業的に入手可能な、高速研削用途向けに好適な従来の結合研磨物品を表す。
【0071】
図4に例示されるように、試料401は、従来の試料403と比べて著しくより大きい材料除去率を達成した。実際に、0.003インチのカットの深さで、試料401の材料除去率は、従来の試料403によって達成される材料除去率のそれよりも10倍超大きかった。そのような結果は、最新技術の従来の結合研磨物品よりも本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物品の研削効率および研削能力の著しい向上を示す。
【0072】
実施例4
別の比較研削試験を、本明細書での実施形態の結合研磨物品および従来の高速研削結合研磨物品について高速研削操作中の最大電力消費を比較するために行う。図5〜7は、試験結果を例示するプロットを含む。
【0073】
図5は、従来の結合研磨物品および本明細書での実施形態による結合研磨物品についての最大電力対材料除去率のプロットを含む。試験は、上の表3に提供されるものと同じパラメータを用いて、0.003インチのカットの深さ(DOC)および60m/秒の操作の速度で様々な試料に関して行った。この試験について、すべての試料501〜502および504〜506は、工作物が焼けを示すかまたは試料が研削できなくなるまで工作物を研削するために使用された。
【0074】
プロット501および502(501〜502)は、本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物の試料を表す。試料501〜502は、およそ52容積%〜およそ56容積%の様々な気孔率、約40容積%〜約44容積%の範囲内の様々な研磨粒子含有量(すなわち、微結晶性アルミナ粒子)、および約3容積%〜約8容積%の範囲内の様々な結合材含有量を有した。結合剤の組成は、上の表1に提供されたものと同じものである。
【0075】
試料504、505、および506(504〜506)は、高速研削用途向けに好適な従来の結合研磨物品を表す。従来の試料504〜506は、Saint−Gobain CorporationからNQM90J10VH Productとして商業的に入手可能な結合研磨物品である。試料504〜506のそれぞれは、およそ50容積%〜およそ52容積%の様々な気孔率、約42容積%〜約44容積%の範囲内の様々な研磨粒子含有量(すなわち、微結晶性アルミナ粒子)、および約6容積%〜約10容積%の範囲内の様々な結合材含有量を有した。
【0076】
図5に例示されるように、試料501〜502は、高速研削操作(すなわち、60m/秒の操作速度で行われた)について従来の試料504〜506と比べて匹敵するかまたはより小さい最大電力消費を有する一方で0.003インチのカットの深さで著しくより大きい材料除去率を達成する。あらゆる試験において、試料501〜502は、従来の試料504〜506と比較して著しくより大きい材料除去率を達成した。実際に、試料501の最大電力消費は、従来の試料504および505の最大電力消費よりも著しく少なく、かつ従来の試料506の最大電力消費に匹敵した。同様に、試料502の最大電力消費は、従来の試料504および505の材料除去率のほぼ2倍の材料除去率を達成しながら、従来の試料504および505の最大電力消費に匹敵した。そのような結果は、最新技術の従来の結合研磨物品よりも本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物品の研削効率および研削能力の著しい向上を示す。
【0077】
図6は、従来の結合研磨物品および本明細書での実施形態による結合研磨物品についての最大電力対材料除去率のプロットを含む。試験は、上の表3に提供されるものと同じパラメータを用いて、0.0045インチのカットの深さ(DOC)および60m/秒の操作の速度で様々な試料に関して行った。この試験について、すべての試料601〜602および604は、工作物が焼けを示すかまたは試料が研削できなくなるまで工作物を研削するために使用された。
【0078】
プロット601および602(601〜602)は、本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物の試料を表す。試料601および602は、上述の試料501および502と同じ構造を有する。試料604は、高速研削用途向けに好適な従来の結合研磨物品を表す。従来の試料604は、上記の商業的に入手可能な結合研磨製品504と同じ結合研磨物品である。
【0079】
図6に例示されるように、試料601〜602は、従来の試料604と比べて類似のまたはより少ない最大電力消費を有する一方で0.0045インチのカットの深さで著しくより大きい材料除去率を達成する。実際に、試料601の最大電力消費は、従来の試料604の最大電力消費に匹敵したが、試料601の材料除去率は試料604の材料除去率よりもほぼ2倍大きかった。さらに、試料602の最大電力消費は、従来の試料604の最大電力消費よりも少なく、かつ従来の試料604の材料除去率の2倍の材料除去率を実証した。そのような結果は、最新技術の従来の結合研磨物品よりも本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物品の研削効率および研削能力の著しい向上を示す。
【0080】
図7は、従来の結合研磨物品およびある実施形態による結合研磨物品についての最大電力対材料除去率のプロットを含む。試験は、上の表3に提供されるものと同じパラメータを用いて、0.003インチのカットの深さ(DOC)および80m/秒の操作の速度で様々な試料に関して行った。この試験について、すべての試料701および702〜703は、工作物が焼けを示すかまたは試料が研削できなくなるまで工作物を研削するために使用された。
【0081】
プロット701は、本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物の試料を表す。試料701は、上述のような試料501と同じ構造を有する。試料702〜703は、高速研削用途向けに好適な従来の結合研磨物品を表す。従来の試料702〜703は、上記の通り商業的に入手可能な試料504〜506と同じものである結合研磨物品である。
【0082】
図7に例示されるように、試料701は、従来の試料702〜703と比べて好適な最大電力消費を有する一方で0.003インチのカットの深さで著しくより大きい材料除去率を達成した。実際に、試料701の最大電力消費は、従来の試料703の最大電力消費より少なかったが、材料除去率はおよそ5倍大きかった。さらに、試料701の最大電力消費は、従来の試料702の最大電力消費よりもわずかに大きかったが、試料701は、従来の試料702の材料除去率の12倍超の材料除去率を達成した。そのような結果は、最新技術の従来の結合研磨物品よりも本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物品の研削効率および研削能力の著しい向上を示す。
【0083】
実施例5
比較研削試験を、高速研削操作中の本明細書での実施形態の結合研磨物品対従来の高速研削結合研磨物品の角保持能力を比較するために行う。図8〜11は、試験の結果のプロットおよび図を提供する。
【0084】
図8は、2つの従来の結合研磨物品およびある実施形態による結合研磨物品についての、角保持係数を実証する半径の変化対カットの深さ(Zw)のプロットを含む。角保持係数は、所与のカットの深さに対する半径の変化の尺度であり、一般に、高速研削操作の苛酷な研削条件下にその形状を維持する結合研磨物品の能力の指標である。各試料の半径の変化は、図8のプロットによって例示されるように3つの異なるカットの深さ値(すなわち、1.00、1.40、および1.80)で測定された。試験のパラメータを下の表4に提供する。
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
プロット801は、本明細書での実施形態に従って形成された結合研磨物の試料を表す。試料801は、およそ40容積%〜およそ43容積%の様々な気孔率、約46容積%〜約50容積%の範囲内の様々な研磨粒子含有量(すなわち、微結晶性アルミナ粒子)、および約9容積%〜約11容積%の範囲内の様々な結合材含有量を有する。試料801の結合剤の組成は、表1に上述されたものと同じものであった。
【0088】
試料802および803は、高速研削用途向けに好適な従来の結合研磨物品を表す。従来の試料802および803は、それぞれ、VSおよびVH Productとして入手可能な従来の結合研磨物品を表す。VSおよびVH Productは、Saint−Gobain Corporationから商業的に入手可能である。
【0089】
図8に例示されるように、試料801は、特定のカットの深さでの半径の総変化(インチ)によって測定される、著しく向上した角保持係数を有する。特に、プロット801は、カットの深さ値のすべてについて0.05インチ未満の角保持係数(すなわち、半径の総変化)を実証した。さらに、試料801の角保持係数は、他の高速の従来結合研磨物品(すなわち、試料802および803)のいずれの角保持係数よりも測れる程度に良好であった。実際に、1.40のカットの深さで、試料801は、従来の試料803よりも2分の1未満の角保持係数を実証し、こうして試料803の半径の変化の半分未満である半径の変化を有した。さらに、1.80のカットの深さで、試料801は、従来の試料802の角保持係数よりもおよそ2分の1であり、かつ従来の試料803の角保持係数よりも6分の1未満の角保持係数を実証した。そのような結果は、従来の高速結合研磨物品と比べて本明細書での実施形態の結合研磨物品の角保持係数、ロバスト性、および変形抵抗性の著しい向上を示す。
【0090】
図9〜11は、ある実施形態による結合研磨物品対2つの従来の高速結合研磨物品の角保持能力の写真を提供する一連の図を含む。とりわけ、図9〜11は、従来の結合研磨物品と比べて本明細書での実施形態の研磨物品の角保持能力およびロバスト性の向上の証拠をさらに提供する。
【0091】
図9は、ある実施形態による結合研磨物品と比べて従来の結合研磨物品についての角保持係数を例示する一連の写真を含む。試料901は、Saint−Gobain CorporationからVH結合研削砥石として商業的に入手可能な従来の結合研磨物品によって研削された4330V合金スチールの工作物である。試料902は、Saint−Gobain CorporationからVS結合研削砥石として商業的に入手可能な従来の結合研磨物品によって研削された工作物を表す。試料903は、上述の試料501と同じ構造を有するある実施形態による結合研磨物品によって研削された工作物を表す。上の試料のすべてについて、工作物の研削は、表4に提供される条件下に行われる。
【0092】
図9に描写されるように、試料903は、試料901および902と比べて最も一様なエッジを有するように工作物を研削できる。画像は、前の試験によって実証された研削データを支持する。
【0093】
図10は、ある実施形態による結合研磨物品と比べて従来の結合研磨物品についての角保持係数を例示する一連の写真を含む。試料1001は、Saint−Gobain CorporationからVH結合研削砥石として商業的に入手可能な従来の結合研磨物品によって、下の表6に示される条件下に研削された4330V合金スチールの工作物である。試料1002は、Saint−Gobain CorporationからVS結合研削砥石として商業的に入手可能な従来の結合研磨物品によって研削された工作物を表す。試料1003は、試料501と同じ構造を有するある実施形態による結合研磨物品によって研削された工作物を表す。上の全試料について、工作物の研削は、表4に提供される条件下に行われる。
【0094】
図10に描写されるように、試料1003は、試料1001および1002と比べて最も一様なエッジを実証する。実際に、試料1001の角は、試料1003のエッジよりも著しく悪く、表4に示される研削条件下にエッジを適切に形成する従来の結合研磨物品の制限された能力を実証する。同様に、試料1002の角は、試料1003のエッジよりも目に見えて悪く、試料1003を形成するために使用された結合研磨物品と比べて表4に示される研削条件下にエッジを適切に形成する従来の結合研磨物品の制限された能力を実証する。図10の画像は、前の実施例において生じた、優れた研削データを支持する。
【0095】
図11は、ある実施形態による結合研磨物品と比べて従来の結合研磨物品についての角保持係数を例示する一連の写真を含む。試料1101は、Saint−Gobain CorporationからVH結合研削砥石として商業的に入手可能な従来の結合研磨物品によって、表4に示される条件下に研削された4330V合金スチールの工作物である。試料1102は、Saint−Gobain CorporationからVS結合研削砥石として商業的に入手可能な従来の結合研磨物品によって研削された工作物を表す。試料1103は、上述の試料501と同じ構造を有するある実施形態による結合研磨物品によって研削された工作物を表す。上の全試料について、工作物の研削は、表4に提供される条件下に行われる。
【0096】
図11に描写されるように、試料1103は、試料1101および1102と比べて最も一様かつ明瞭なエッジを実証する。実際に、試料1101の角は、試料1103のエッジよりも著しく悪く、表4に示される研削条件下にエッジを適切に形成する従来の結合研磨物品の制限された能力を実証する。同様に、試料1102の角は、試料1103のエッジよりも目に見えて悪く、特に試料1103のエッジと比較されるときに、表4に示される研削条件下にエッジを適切に形成する従来の結合研磨物品の制限された能力を実証する。図11の画像は、前の実施例において生じた、優れた研削データを支持する。
【0097】
前述の実施形態は、最新技術からの脱却を表す、研磨製品、特に結合研磨製品を対象とする。本明細書での実施形態の結合研磨製品は、研削性能の向上を容易にする特徴の組み合わせを利用する。本出願に記載されるように、本明細書での実施形態の結合研磨体は、特定の量および種類の研磨粒子、特定の量および種類の結合材を利用し、特定の量の気孔率を有する。そのような製品が、それらの品位および構造の観点から従来の研磨製品の公知領域の外側であるにもかかわらず、効果的に形成され得るという発見に加えて、そのような製品は向上した研磨性能を実証することがまた発見された。とりわけ、本実施形態の結合研磨材は、従来の高速砥石車よりもかなり高い気孔率を有するにもかかわらず研削操作中により高速で操作できることが発見された。実際に、まったく意外にも、本明細書での実施形態の結合研磨体は、最新技術高速砥石車と比べて向上した材料除去率、向上した角保持能力、および好適な表面仕上げをまた実証しながら、60m/秒を超えるホイール速度で操作する能力を実証した。
【0098】
さらに、本実施形態の結合研磨材は、最新技術の従来のホイールに対してある種の機械的特性に著しい差異を持ち得ることが発見された。本実施形態の結合研磨体は、MORとMOEとの関係に著しい差異を実証し、従来の高速ホイールよりも著しく大きい程度の気孔率を有するにもかかわらず、様々な研削用途において性能の向上を容易にする。まったく意外にも、本明細書での実施形態の結合研磨体に関連した特徴の組み合わせの利用で、類似の構造および品位の従来の高速砥石車と比べて、著しくより堅い(MOR)結合研磨体が所与のMOEに対して達成できることが発見された。
【0099】
前述において、具体的な実施形態およびある種の構成要素の連結への言及は例示的である。結び付けられているかまたは連結されているとしての構成要素への言及が、本明細書に議論されるような方法を実施するために十分理解されるであろうように前記構成要素間の直接連結か、1つ以上の介在する構成要素を通しての間接連結かのどちらかを開示することを意図されることは十分理解されるであろう。従って、上に開示された主題は例示的であり、かつ制限的ではないと考えられるべきであり、添付のクレームは、本発明の真の範囲内に入る、すべてのそのような修正形態、強化形態、および他の実施形態を包含することを意図される。従って、法律が許す最大範囲で、本発明の範囲は、以下のクレームおよびそれらの均等物の最も広い、許容される解釈によって決定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限または限定されないものとする。
【0100】
本開示の要約は、特許法を遵守するために提供され、それがクレームの範囲または意味を解釈するために用いられることも限定するために用いられることもないであろうという理解のもとに提出される。さらに、前述の詳細な説明において、様々な特徴は、本開示を合理化するという目的のために単一実施形態にグループ化されているまたは記載されている場合がある。本開示は、特許請求される実施形態が各クレームに明確に列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映しているとして解釈されるべきではない。むしろ、以下のクレームが反映するように、発明の主題は、開示された実施形態のいずれかのすべての特徴を対象としていなくてもよい。従って、以下のクレームは、各クレームが特許請求される主題を別々に定義するとして独立している状態で、詳細な説明の中へ組み入れられる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、研磨物品に適用可能である。
図1
図2
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図11