(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(グラフトの一部の領域にステントが配置されている場合の例)
2.変形例
変形例1(グラフトがステントの内周側・外周側の双方を覆っている場合の例)
変形例2(グラフトの全領域にステントが配置されている場合の例)
3.その他の変形例
【0017】
<1.実施の形態>
[概略構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係るステントグラフト(ステントグラフト1)の概略構成例を、模式的に斜視図で表したものである。ステントグラフト1は、例えばOSG法を利用した動脈解離等の治療の際に用いられる器具であり、後述するように、治療対象の部位(例えば動脈等の血管内)に留置されるようになっている。
【0018】
このステントグラフト1は、
図1に示したように、その軸方向(Z軸方向)に沿って延在する筒状(円筒状)構造を有しており、ステント11およびグラフト12により構成されている。なお、ステントグラフト1の軸方向に沿った長さは、例えば2〜30cm程度である。また、ステントグラフト1の拡張時の外径は、例えば6〜46mm程度である。
【0019】
(ステント11)
ステント11は、
図1に示したように、1または複数の線材11w(素線)を用いて構成されており、この例では筒状(円筒状)構造を有している。具体的には、
図1に示した例では、この筒状構造が網目状構造により構成されていると共に、このような筒状の網目状構造が、線材11wを所定のパターンで編み組むことにより形成されている。なお、この編み組みのパターンとしては、例えば、平織り、綾織り、メリヤス編み等が挙げられる。また、線材11wをジグザグ状に折り曲げて円筒状に加工したものを1つ以上配置することで、筒状の網目状構造を形成するようにしてもよい。
【0020】
また、ステント11は、この例では、グラフト12の軸方向に沿った一部の領域に配置されている。換言すると、ステントグラフト1はその軸方向に沿って、ステント11が配置された領域であるステント配置領域a1と、ステント11が配置されていない領域であるステント非配置領域a2とを有している。なお、この例では
図1に示したように、ステントグラフト1における一方の端部である端部Eb側にステント非配置領域a2が設けられていると共に、ステントグラフト1における他方の端部である端部Ea側では、この端部Eaまでステント配置領域a1が延在している。なお、このステント11の軸方向に沿った長さ(ステント配置領域a1の長さ)は、例えば2〜25cm程度である。
【0021】
ここで、上記した線材11wの材料としては、金属線材が好ましく、特に熱処理による形状記憶効果や超弾性が付与される、形状記憶合金が好ましく採用される。ただし、用途によっては、線材11wの材料として、ステンレス、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)等を用いてもよい。上記した形状記憶合金としては、例えば、ニッケル(Ni)−Ti合金、銅(Cu)−亜鉛(Zn)−X(X=アルミニウム(Al),鉄(Fe)等)合金、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,バナジウム(V),コバルト(Co)等)合金などが好ましく使用される。なお、このような線材11wとして、例えば合成樹脂などを用いるようにしてもよい。また、金属線材の表面にAu,Ptなどをメッキ等の手段で被覆したもの、あるいは、Au,Ptなどの放射線不透過性の素材からなる芯材を合金で覆った複合的な線材を、線材11wとして用いるようにしてもよい。
【0022】
(グラフト12)
グラフト12は、
図1に示したように筒状(円筒状)の形状を有しており、ステント11の少なくとも一部分を覆う(被覆する)ように配置されている。具体的には、この例では、グラフト12がステント11(線材11w)の外周側を覆うように配置されている。
【0023】
また、このグラフト12は、例えば縫着や接着、溶着等の手段によって、ステント11に連結されている。この場合、グラフト12は、ステント11の伸縮に影響を及ぼさないように、ステント11を被覆および連結するようになっている。なお、このようなグラフト12とステント11との連結部は、例えば、ステント11の両端部や中間部などに適宜設けられている。
【0024】
このようなグラフト12としては、例えば、熱可塑性樹脂を押出し成形やブロー成形などの成形方法で筒状に形成したもの、筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維や極細な金属線からなる編織物、筒状に形成した熱可塑性樹脂や極細な金属からなる不織布、筒状に形成した可撓性樹脂のシートや多孔質シート、溶剤に溶解された樹脂をエレクトロスピニング法によって肉薄の筒状に形成した構造体、などを用いることができる。
【0025】
ここで、上記した編織物としては、平織、綾織などの公知の編物や織物を用いることができる。また、クリンプ加工などのヒダの付いたものを使用することもできる。なお、これらのうち、特に円筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維の編織物、更には筒状に形成した熱可塑性樹脂の繊維の平織りの織物が、強度や有孔度、生産性が優れるため、好ましいと言える。
【0026】
また、上記した熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどのポリエステル、ポリフッ化エチレンやポリフッ化プロピレンなどのフッ素樹脂等、耐久性および組織反応の少ない樹脂などを用いることができる。なお、これらのうち、特に、化学的に安定で耐久性が大きく、かつ組織反応の少ない、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフッ化エチレンやポリフッ化プロピレンなどのフッ素樹脂を好ましく用いることができる。
【0027】
[詳細構成]
続いて、
図2を参照して、
図1に示したステントグラフト1の詳細構成例について説明する。
図2は、ステントグラフト1の詳細構成例を模式断面図で表したものである。
【0028】
このステントグラフト1では、まず、
図2中に示したように、グラフト12の厚みd12が、ステント11における線材11wの径r11よりも大きくなっている(d12>r11)。つまり、このグラフト12は、従来の一般的なグラフト(例えば、後述する比較例に係るグラフト102)と比べ、肉厚な構造(厚肉構造)を有している。なお、上記したグラフト12の厚みd12は、0.15〜0.60mm程度(例えば0.4mm)であり、線材11wの径r11は、0.10〜0.50mm程度(例えば0.3mm)である。
【0029】
また、
図2中に示したように、ステント11では、線材11wにおけるその径r11の半分(1/2)以上の部分が、グラフト12の内周面Si側に埋め込まれている。つまり、線材11wのうちのグラフト12の内周面Si側に埋め込まれた部分の長さ(深さ)を、埋込長dinとすると、
図2中に示したように、din≧{(1/2)×r11}を満たすようになっている。なお、一例として、上記したように、線材11wの径r11=0.3mmの場合、線材11wのうちの2/3程度の部分(埋込長din=0.2mm程度)がグラフト12の内周面Si側に埋め込まれるようにしたものが挙げられる。
【0030】
更に、
図2中に示したように、このグラフト12では、その外周面So側の保液性H(So)が、その内周面Si側の保液性H(Si)よりも大きくなっている(H(So)>H(Si))。換言すると、グラフト12の外周面So側の透液性が、グラフト12の内周面Si側の透液性よりも大きくなっている。このようなグラフト12の保液性および透液性はそれぞれ、グラフト12が多孔質性を有する(前述した多孔質シート等からなる)場合、その外周面So側および内周面Si側における空隙率の大小によって、規定されることになる。つまり、空隙率が大きくなるに従って、保液性および透液性もそれぞれ大きくなり、逆に空隙率が小さくなるのに従って、保液性および透液性もそれぞれ小さくなることになる。
【0031】
[作用・効果]
このステントグラフト1は、患者における動脈解離等の治療の際に、その治療対象の部位(例えば動脈等の血管内)に留置されることで、管腔を拡張および保持することが可能となる。また、特にこのステントグラフト1は、例えば、胸部大動脈における動脈解離等の治療方法の1つである、OSG法を利用した治療の際に用いられる。
【0032】
ここで
図3および
図4を参照して、このOSG法を利用した動脈解離(動脈瘤)等の治療方法の概要について説明する。
図3は、この治療時における、ステントグラフト1の使用方法の一例を模式図で表したものであり、
図4は、この治療時における、ステントグラフト1の留置態様の一例を模式図で表したものである。なお、ここでは、治療対象の血管である動脈9(胸部大動脈)が、下行大動脈である場合を例に挙げて説明する。また、これらの
図3および
図4において、治療対象の動脈9における動脈瘤を、動脈瘤Aとして示している。
【0033】
まず、
図3に示したように、このOSG法では、患者の開胸後に、所定のデリバリ用の器具(図示せず)を使用して、動脈9の一部を切開してなる開口hから、縮径された状態のステントグラフト1を挿入させる(矢印P1参照)。このとき
図3に示したように、ステントグラフト1の端部Eaを先端側、端部Eb(ステント非配置領域a2側)を基端側として挿入させる。続いて、このデリバリ用の器具を使用して、ステントグラフト1端部Eaを、動脈9における治療対象の部位(動脈瘤Aの形成箇所付近)を超えた部位まで到達させる。
【0034】
そして、このステントグラフト1の自己拡張力を利用することで、ステントグラフト1が拡径する結果、
図4に示したように、ステントグラフト1が動脈9の内壁に固定される。これにより、動脈瘤Aの形成箇所付近における動脈9の管腔が、拡張および保持されることになる。その後、このステントグラフト1の基端側(端部Eb側)と動脈9(患者の血管)とを縫合することで吻合し、更に必要に応じてこのステントグラフト1とは別の人工血管を、この吻合部分と吻合するようにしてもよい。
【0035】
このようにして、
図4に示したように、動脈瘤Aの内周がステントグラフト1によって覆われることで、血流はステントグラフト1内を通るようになり、動脈瘤Aに血圧等が作用しなくなる。したがって、動脈瘤Aにおける瘤径の拡大および血管の破裂を予防することができるとともに、動脈瘤Aにおける血流も維持される。
【0036】
また、特にこのOSG法を利用した治療方法では、患者の足の付け根(鼠蹊部)からカテーテルを挿入してステントグラフトを治療対象部位まで運ぶ治療方法(従来の治療方法)と比較して、以下の利点が得られる。すなわち、この従来の治療方法では処置が極めて困難な、重要な分枝が存在する部位(例えば弓部大動脈)の処置ができる、という利点が得られる。また、病変部位を切除して人工血管によって置換すると共にその両端を吻合する方法と比較すると、下行大動脈縫合(末梢側吻合)が、ステントグラフト1による固定によって代用されることになる。つまり、このOSG法では、ステントグラフト1の先端側(端部Ea側)と下行大動脈との間の吻合が省略されることから、吻合作業が簡略化される。したがって、手術時間(体外循環時間)を短縮化することができると共に、更に下行大動脈の縫合に必要な左開胸または大きな胸部切開が回避されるため、患者への手術侵襲が軽減される(治療の際の患者への負担が軽減される)。更に、このOSG法では、人工血管の移植範囲を広範囲に設定でき、付近の合併症の外科処置も可能となるという利点もある。加えて、OSG法に適用するステントグラフトは、上記した従来の治療方法のように鼠蹊部から導入するわけではないため、細い血管を通過させる必要がなく、縮径させた状態でもある程度なら外径が大きくても(太くても)よいことになる。
【0037】
(比較例)
図5は、比較例に係るステントグラフト(ステントグラフト100)の構成例を、模式的に断面図で表したものである。この比較例のステントグラフト100は、
図1および
図2に示した本実施の形態のステントグラフト1において、ステント11およびグラフト12のサイズ同士の大小関係を変更した(ステント101およびグラフト102を代わりに設けた)ものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0038】
具体的には、このステントグラフト100では、
図5中に示したように、グラフト102の厚みd102が、ステント101における線材101wの径r101よりも小さくなっている(d102<r101)。つまり、このグラフト102は、できるだけ薄型化した構造となっている。これは、このステントグラフト100が、上記した従来の治療方法に適用されるものであることに起因している。
【0039】
つまり、患者の鼠蹊部からステントグラフト100を挿入する際には、例えば20〜26Fr程度の径を有する微細なカテーテル(図示せず)に対し、このステントグラフト100をマウントする必要がある。したがって、縮径後のステントグラフト100の外径を小さくする必要があることから、このステントグラフト100におけるグラフト102の厚みd102は、できるだけ小さく(薄く)なるように設定されているのである。なお、上記したグラフト102の厚みd102は、0.05〜0.15mm程度(例えば0.10mm)であり、線材101wの径r101は、0.20mm〜0.50mm程度(例えば0.45mm)である。
【0040】
これらのことから、この比較例のステントグラフト100を例えばOSG法に適用した場合、以下の問題点が生じ得る。すなわち、このOSG法を利用して動脈解離(動脈瘤)等の治療を行う場合、上記したようにグラフト102の厚みd102が小さい(d102<r101)と、グラフト102の強度が不足するため、例えば、ステントグラフト100の端部の縫合時等に、グラフト102が裂けて吻合が上手くいかないおそれがある。また、例えば、グラフト102からの漏血が多くなり、動脈解離等を十分に治療できないおそれもある。特に、グラフト102の厚みd102が小さい場合には、グラフト102と患者の血管や人工血管とを吻合するときに形成される針穴からの漏血が多くなるため、動脈瘤や動脈解離の偽腔への血流の遮断が不十分となり、十分な治療効果が得られないおそれがある。したがって、この比較例のステントグラフト100では、例えばOSG法を利用した動脈解離等の治療の際に、利便性が損なわれてしまうことになる。
【0041】
(本実施の形態)
これに対して本実施の形態のステントグラフト1では、
図2に示したように、グラフト12の厚みd12が、ステント11における線材11wの径r11よりも大きくなっている(d12>r11)。つまり、このグラフト12は、
図5に示した比較例に係るグラフト102と比べ、肉厚な構造を有している。これによりステントグラフト1では、例えば、前述したOSG法を利用した動脈解離等の治療の際において、端部Ebの縫合時等にグラフト12が裂けるおそれが少なくなったり、グラフト12や上記した針穴からの漏血が抑えられたりする。
【0042】
また、このステントグラフト1では、
図2に示したように、グラフト12がステント11の少なくとも外周側を覆うように配置されていると共に、ステント11の線材11wにおけるその径r11の半分以上の部分が、グラフト12の内周面So側に埋め込まれている。つまり、
図2中に示したように、埋込長din≧{(1/2)×r11}を満たすように設定されている。
【0043】
これにより、例えばステントグラフト1の拡張時に、ステント11の周囲が、グラフト12に包まれ易くなる。その結果、ステント11の内周側がグラフト12の内周面Siから突出しにくくなり、ステントグラフト1内の血流が妨げられにくくなる(例えば
図2中に示した血流Fを参照)。なお、これに対して前述した比較例のステントグラフト100では、
図5に示したように、埋込長din<{(1/2)×r101}となっていることから、以下のようになる。すなわち、ステント101の内周側がグラフト102の内周面Siから突出し易くなり、ステントグラフト100内の血流が妨げ易くなってしまう(例えば
図5中に示した血流F101および×(バツ)印を参照)。
【0044】
また、ステント11から加わる力が肉厚なグラフト12において分散され易くなり(グラフト12における力の緩衝効果が大きくなり)、ステント11の外周側によって血管の内部を傷つけることが防止される。特に動脈解離の場合には、病変部の血管壁がきわめて脆弱であるために非常に破れやすくなっていることから、このステントグラフト1のように血管の内部を傷つけることを防止できることは、重要であると言える。
【0045】
更に、このステントグラフト1では、
図2中に示したように、グラフト12における外周面So側の保液性H(So)が、グラフト12における内周面Si側の保液性H(Si)よりも大きくなっている(H(So)>H(Si))。換言すると、グラフト12の外周面So側の透液性が、グラフト12の内周面Si側の透液性よりも大きくなっている。
【0046】
ここで、編み方が密である編織物や、液体の透過率が低いフィルムからなるグラフトのように保液性の低いグラフトでは、一般に、血液が表面上をスムーズに流れることから、血栓が生じにくくなるという利点がある。ただし、患者の血管や人工血管との間の吻合がしにくく、また、周囲の組織と馴染みにくい(密着性が低い)という欠点もある。
【0047】
一方、逆に、編み方が疎である編織物や、スポンジ状の膜からなるグラフトのように保液性の高いグラフトでは、患者の血管や人工血管との間の吻合がし易く、また、周囲の組織と馴染み易い(密着性が高い)という利点がある。ただし、グラフトからの漏血量が多く、また、動脈瘤や動脈解離の偽腔への血流の遮断が不十分であることから、十分な治療効果が得られないおそれがある。
【0048】
これに対して本実施の形態のステントグラフト1では、上記したように、グラフト12の外周面So側は保液性が高くなっていると共に、グラフト12の内周面Si側は保液性が低くなっていることから、上記した2種類の構造における利点をそれぞれ享受することができる。つまり、このステントグラフト1では、グラフト12と患者の血管や人工血管との間の吻合がし易くなるとともに、グラフト12と血管の内周面との間の密着性が向上し(周囲の組織と馴染み易くなり)、また、グラフト12の内周面Si側に血栓が生じにくくなる。
【0049】
ここで本実施の形態では、上記したように、グラフト12が従来よりも肉厚な構造である(グラフト12の厚みd12がステント11の線材11wの径r11よりも大きい)からこそ、上記のような保液性および透液性を示すようにすることができる。すなわち、グラフト12が肉厚な構造であるからこそ、上記のようにしてグラフト12の外周面So側と内周面Si側との構造を異ならせて(例えば、グラフト12の多孔質構造における空隙率を異ならせて)、2層構造の実現が可能になると言える。なお、これに対して、前述した比較例に係るステントグラフト100では、グラフト102をできるだけ薄型化したいことから、逆に、そのような保液性および透液性を示さない(グラフト102における保液性および透液性が低く抑えられる)ように設定されている。
【0050】
また、本実施の形態のステントグラフト1では、
図1に示したように、ステント11が、グラフト12の軸方向に沿った一部の領域(ステント配置領域a1)に配置されている。これにより、グラフト12におけるステント非配置領域a2を利用して、このステントグラフト1の端部(この例では端部Eb)と患者の血管や人工血管との間の吻合が、し易くなる。
【0051】
以上のように本実施の形態では、グラフト12の厚みd12が、ステント11における線材11wの径r11よりも大きくなっているようにしたので、例えば以下のようになる。すなわち、例えばOSG法を利用した動脈解離等の治療の際に、グラフト12が裂けるおそれを低減したり、グラフト12や前述した針穴からの漏血を低減して動脈解離等を十分に治療したりすることができるようになる。よって、治療の際の利便性を向上させることが可能となる。
【0052】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0053】
[変形例1]
図6は、変形例1に係るステントグラフト(ステントグラフト1A)の構成例を、模式的に断面図で表したものである。このステントグラフト1Aは、
図1および
図2に示したステントグラフト1において、グラフト12によるステント11の被覆態様を変更したものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0054】
具体的には、実施の形態のステントグラフト1では、
図2に示したように、グラフト12がステント11(線材11w)の外周側を覆うように配置されていた。これに対し、本変形例のステントグラフト1Aでは、
図6に示したように、グラフト12がステント11(線材11w)の外周側および内周側の双方を覆うように配置されている。したがって本変形例では、
図6中に示したように、線材11wにおける埋込長dinが、この線材11wの径r11と等しくなっている(din=r11)。
【0055】
このような構成の本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0056】
[変形例2]
図7は、変形例2に係るステントグラフト(ステントグラフト1B)の概略構成例を、模式的に斜視図で表したものである。このステントグラフト1Bは、
図1および
図2に示したステントグラフト1において、ステント11の配置領域を変更したものに対応しており、他の構成は基本的には同様となっている。
【0057】
具体的には、実施の形態のステントグラフト1では、
図1に示したように、ステント11がグラフト12の軸方向に沿った一部の領域に配置されていた。換言すると、ステントグラフト1はその軸方向に沿って、ステント配置領域a1とステント非配置領域a2とを有していた。これに対し、本変形例のステントグラフト1Bでは、
図7に示したように、ステント11がグラフト12の軸方向に沿った全領域に配置されている。換言すると、ステントグラフト1Bはその軸方向に沿って、ステント配置領域a1のみを有しており、ステント非配置領域a2を有していない。つまり、ステントグラフト1Bにおける一方の端部Ebから他方の端部Ebまでに亘って、ステント配置領域a1が延在するようになっている。
【0058】
このような構成の本変形例においても、基本的には上記実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0059】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0060】
例えば、上記実施の形態等において説明した各部材の形状や配置位置、サイズ、個数、材料等は限定されるものではなく、他の形状や配置位置、サイズ、個数、材料等としてもよい。具体的には、例えば、グラフト12がステント11の内周側のみを覆っているようにしてもよい。また、ステント11における線材11wの配置形状(編み組みパターン)は、上記実施の形態で挙げたものには限られず、他の配置形状としてもよい。更に、場合によっては、ステント11における線材11wの埋込長dinが、この線材11wの径r11の半分未満、つまり、din<{(1/2)×r11}であってもよい。加えて、ステント11に複数の線材11wが用いられている場合は、例えば各線材11wの径r11が互いに異なっていてもよく、その場合には、それら複数の線材11wのうちの少なくとも1つの線材11wの径r11が、前述した各関係式を満たしていればよい。また、上記実施の形態等では、ステントグラフト内に1つのステント11のみが配置されている場合を例に挙げて説明したが、これには限られず、ステントグラフト内に2つ以上のステント11が個別に(例えば、軸方向に沿って互いに分離した状態で)配置されているようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態等では、グラフト12の外周面So側の保液性(および透液性)が、グラフト12の内周面Si側の保液性(および透液性)よりも大きくなっている場合を例に挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、場合によっては、逆に、グラフト12の外周面So側の保液性(および透液性)が、グラフト12の内周面Si側の保液性(および透液性)以下となっているようにしてもよい。
【0062】
更に、上記実施の形態等では、主に、下行大動脈についての治療に適用されるステントグラフトを例に挙げて説明したが、これには限られない。すなわち、本発明のステントグラフトは、下行大動脈以外の他の動脈(例えば、上行大動脈や弓部大動脈、胸腹部大動脈、腹部大動脈、腸骨動脈、大腿動脈など)等の血管についての治療にも適用することが可能である。