特許第6200475号(P6200475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6200475二酸化炭素の電気化学的還元のためのシステムおよびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200475
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】二酸化炭素の電気化学的還元のためのシステムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/08 20060101AFI20170911BHJP
   C25B 1/00 20060101ALI20170911BHJP
   C25B 1/10 20060101ALI20170911BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20170911BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20170911BHJP
   B01D 53/77 20060101ALI20170911BHJP
   C25D 11/34 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C25B11/08 AZAB
   C25B1/00 Z
   C25B1/10
   C25B15/08 302
   B01D53/62
   B01D53/77
   C25D11/34 F
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-208816(P2015-208816)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-84535(P2016-84535A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年3月14日
(31)【優先権主張番号】14/523,070
(32)【優先日】2014年10月24日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー・チン・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】リン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジア・ホンフェイ
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0175181(US,A1)
【文献】 米国特許第04461677(US,A)
【文献】 米国特許第02315518(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0291163(US,A1)
【文献】 Qi Lu, et al.,"A selective and efficient electrocatalyst for carbon dioxide reduction",Nature Communications,2014年 1月30日,Vol. 5,pp. 3242-1〜3242-6
【文献】 Theodore R. Beck, et al.,"Conductivity of AnodicSilver Chloride during Formation",J. Electrochem. SoC,1984年 1月,Vol. 131, No. 1,pp. 89-93
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00−15/08
B01D 53/34−53/96
C25D 11/00−11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素の電気化学的還元のための方法であって、
銀元素を含有する前駆体電極を一定電位で陽極酸化処理して陽極酸化処理銀成分を得る陽極酸化ステップと、
電気化学セルを与えるステップを含み、前記電気化学セルは、
カソードチャンバを有し、前記カソードチャンバは、
カソード液と、
前記カソード液と接触するカソードとを含み、前記カソードは前記陽極酸化処理銀成分を含有し、
前記カソードの表面は約118°に中心を有するピークおよび約43°に中心を有するピークを有するX線回折パターンによって特徴付けられ、約43°に中心を有する前記ピークの強度に対する約118°に中心を有する前記ピークの強度の比率は、少なくとも1:1であり、
前記電気化学セルはさらに、
アノードチャンバを有し、前記アノードチャンバは、
アノード液と、
前記アノード液と接触するアノードとを含み、前記方法はさらに、
前記カソードチャンバに二酸化炭素を供給するステップと、
前記アノードと前記カソードとの間に電位を与えるステップとを含み、前記電位は前記カソードチャンバに存在する二酸化炭素を電気化学的に還元するのに十分である、二酸化炭素の電気化学的還元のための方法。
【請求項2】
前記カソードチャンバはさらに気体入力部材を含み、前記気体入力部材は前記カソード液に気体の流れを供給するように構成され、前記気体の流れは二酸化炭素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カソード液、前記アノード液またはそれらの両方は、少なくとも1つの電解質塩の水溶液であり、前記電解質塩は、炭酸塩もしくは重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩もしくはリン酸塩のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
二酸化炭素の電気化学的還元は、前記カソードチャンバにおいて一酸化炭素の生成および水素ガスの生成をもたらす結果となり、前記方法はCO選択性によって特徴付けられ、前記CO選択性は、生成される水素ガスに対する一酸化炭素の百分率モル比として定義可能であり、前記CO選択性は少なくとも50%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記CO選択性は60%より大きい、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記陽極酸化ステップは、前記一定電位と前記一定電位を与える期間との乗算積によって特徴付けられ、前記乗算積は、Ag/AgClに対して少なくとも3.75ボルト・分である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記一定電位と前記期間との前記乗算積は、Ag/AgClに対して少なくとも7.5V・分である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
二酸化炭素の電気化学的還元のための電気化学セルの製造方法であって、
銀元素を含有する前駆体電極を一定電位で陽極酸化処理して陽極酸化処理銀成分を得る陽極酸化ステップと、
カソードチャンバを用意するステップと、
前記カソードチャンバとイオン接触するようにアノードチャンバを配置するステップと、を含み、
前記カソードチャンバは、カソード液と、前記カソード液と接触するカソードとを含み、前記カソードは前記陽極酸化処理銀成分を含有し、
前記カソードの表面は約118°に中心を有するピークおよび約43°に中心を有するピークを有するX線回折パターンによって特徴付けられ、約43°に中心を有する前記ピークの強度に対する約118°に中心を有する前記ピークの強度の比率は、少なくとも1:1であり、
前記アノードチャンバは、アノード液と、前記アノード液と接触するアノードとを含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般に、二酸化炭素の選択的および効率的な電気化学的還元のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
産業処理によって地球の大気中に放出される二酸化炭素の量を低減することは、大きな環境的および経済的意義のある技術的な挑戦である。結果的に産業生産および経済活動を減ずることなく、大気中の二酸化炭素生成において大きな低減を達成できることは、非常に有益であろう。
【0003】
これらの目的を達成するための1つの考えられ得るアプローチは、燃焼反応によって生じた二酸化炭素の電気化学的還元を通したものである。そのようなアプローチは炭素の生成を低減するので、これは、以前においては温室効果ガス排出であったものから利用可能な燃料を生成するというさらなる利益を有することができる。たとえば、水性環境における二酸化炭素の電気化学的還元は、正しい条件下では、合成ガスとして公知である一酸化炭素と水素ガスとの混合物を生成し得る。そのような合成ガスは、次いで、公知の方法によって、さまざまな利用可能な燃料に処理され得る。
【0004】
いくつかの金属が、二酸化炭素の電気化学的還元のための考えられ得る電気触媒として試験されてきた。金は、かなりの電流密度を運び得、二酸化炭素の一酸化炭素への還元を、相対的に低い電位で、高い選択性を持って行ない得る。しかしながら、金は、その低い埋蔵量および高いコストのため、大規模な適用例に対しては好ましくない。銅は、一酸化炭素生成に関して低い選択性を呈し、金によって達成される電流密度に匹敵する電流密度を達成するのに、より大きな電位を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銀系の電気触媒は二酸化炭素の一酸化炭素への還元を選択的に促進し得、金と比較してかなり安価である。しかしながら、これまで用いられてきた一般的な多結晶の銀電極は、二酸化炭素還元に対して大きな過電位を必要とし、低い過電位で低い一酸化炭素選択性を示し、銀を、二酸化炭素還元のための電気触媒としては、現時点では実用的ではない選択肢にする。二酸化炭素の一酸化炭素への電気化学的還元のための触媒として銀の効率性および選択性を改善するシステムおよび方法は有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
二酸化炭素の一酸化炭素への電気化学的還元のためのシステムおよび方法が提供される。
【0007】
1つの実現例においては、二酸化炭素の電気化学的還元のためのシステムが開示される。このシステムは、カソード液と、カソード液と接触する陽極酸化処理された銀を含有するカソードとを有するカソードチャンバを含む。このシステムは、さらに、アノード液と、アノード液と接触するアノードとを有するアノードチャンバを含む。このシステムは、加えて、アノードとカソードとの間に電位を与えるよう動作可能である電源を含み、この電位は、カソードチャンバに存在する二酸化炭素を電気化学的に還元するのに十分なものである。
【0008】
別の実現例では、二酸化炭素の電気化学的還元のための方法が開示される。この方法は、電気化学セルを提供するステップを含み、電気化学セルはカソードチャンバを有する。カソードチャンバは、カソード液と、カソード液と接触するカソードとを含み、カソードは陽極酸化処理をされた銀を含有する。電気化学セルは、さらに、アノード液を含有するアノードチャンバと、アノード液と接触するアノードとを有する。この方法は、さらに、二酸化炭素をカソードチャンバに供給するステップと、アノードとカソードとの間に電位を与えるステップとを含み、この電位は、カソードチャンバに存在する二酸化炭素を電気化学的に還元するのに十分な電位である。
【0009】
図面の簡単な説明
この発明のさまざまな局面および利点が、添付の図面と関連して取られる実施の形態の以下の記載から明らかとなり、より容易に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】二酸化炭素の電気化学的還元のためのシステムの概略図である。
図2】二酸化炭素の電気化学的還元のための方法の概略図である。
図3】カソードが0分、5分、15分、または30分の間陽極酸化処理された、図1に示されるタイプの4つのシステムの周期的なボルタンモグラムのグラフの図である。
図4図3のシステムの各々に対する変動する電位での一酸化炭素選択性のプロットの図である。
図5図3の4つのシステムの各々に対する変動する電位での、ファラデー効率のグラフの図である。
図6図3の4つのシステムの各々に対するタフェル図である。
図7図3の4つのシステムの各々に対するx線回折データのプロットの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
本開示は、二酸化炭素(CO)の電気化学的還元のためのシステムおよび方法を記載する。開示されるシステムおよび方法は、これまでのアプローチと比較して、COの一酸化炭素への電気化学的還元を、高いファラデー効率および相対的に低い過電位で可能にする。
【0012】
開示されるシステムおよび方法は、陽極酸化された銀カソードを用いる。銀前駆体の陽極酸化処理は、電極の表面形態を変化させ、システムの触媒効率を改善する。適切な条件下で陽極酸化処理されると、銀カソードは、温室効果ガス排出制御において有用となり得るシステムおよび方法に貢献する。
【0013】
COをCOに電気化学的に還元するためのシステムが開示される。図1に示されるように、システム100は、アノードチャンバ102とカソードチャンバ104とを有する電解セルを含む。少なくとも2つのチャンバを有する任意の構成が用いられ得るが、図1の例は、アノードチャンバ102とカソードチャンバ104とがセパレータ106によって分離されるのを示す。使用の際には、そのようなセパレータ106は、気体を透過しない膜、すべての液体および気体の交換を防ぐバリア、またはアノードチャンバ102とカソードチャンバ104との間の気体交換を防ぐのに有効な任意の他のバリアであり得る。
【0014】
アノードチャンバ102は、さらに、アノードチャンバ102に含まれるアノード液108と、アノード液108と接触するアノード110とを含む。カソードチャンバ104は、さらに、カソードチャンバ104に含まれるカソード液112と、カソード液112と接触するカソード114とを含む。
【0015】
アノード液108とカソード液112とは、同じ組成であり得るが、必ずしもそうである必要はない。ある実現例では、カソード液112は水系の塩溶液であり、一部の実現例では、アノード液108およびカソード液112の両方が水系の塩溶液である。
【0016】
アノード液108および/またはカソード液112における使用に対して好適な塩の非限定的な例は、炭酸塩もしくは重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩もしくは任意の他の好適な塩のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を含み得る。
【0017】
カソード114は陽極酸化処理された銀を含み、アノード110は、電気化学的酸化を支援するようアノード液108と電気化学的に互換性のある任意の材料からなり得る。
【0018】
システム100は、加えて、電源116を含み、それは、カソード114とアノード110との間に電位を与えるよう構成される。電源116は、1つ以上の外部導電体を介するアノード110およびカソード114への電気的取付けのために構成され得、二酸化炭素の一酸化炭素への電気化学的還元を引起すのに十分なようにカソード114において電位を与えることができるべきである。
【0019】
ある実現例においては、システム100は、さらに、気体入力部材118を含むことになり、それは、気体がカソード液112に接触してその中に溶解するように、カソードチャンバ104に気体を導入するための手段を含む。気体入力部材118は、気体または気体流をカソードチャンバ104に向けるための導管、開口部、または任意の他の手段を含み得る。ある実現例では、システム100は、選択肢的に、気体出力部材120を含み得、それは、生成物ガスがカソードチャンバ104を出るための手段を含む。
【0020】
システム100は、可能性として、以下の反応Iに従ってカソードの半反応に対応し得る:
CO+4e+4H→CO+2HO ...I
システム100は、可能性として、以下の反応IIに従って匹敵するカソードの半反応に対応し得る:
2H+2e+→H ...II
反応Iをカソード114において生じさせるために、電源116は、少なくとも−0.7Vの電位(対Ag/AgCl)を与えるよう動作可能であり得る。ある例では、電源116は、カソード114において、−0.7Vより大きさが大きい負の電位(対Ag/AgCl)を与えることが好ましくてもよい。ある実現例では、電源116は、カソード114において、少なくとも−1.0Vの大きさを有する負の電位(対Ag/AgCl)を与え得る。ある実現例では、電源116は、カソード114において、−0.7〜−1.5Vの範囲内の負の電位(対Ag/AgCl)を与え得る。
【0021】
さらに開示されるのは、二酸化炭素の電気化学的還元のための方法である。図2に示されるように、方法200は、電解セルを提供するステップ202を含む。電解セルは、上に記載されるとおりであり、アノード液108およびアノード110を伴うアノードチャンバ102と;カソード液112および陽極酸化処理された銀を含むカソード114を伴うカソードチャンバ104とを有する。方法200は、二酸化炭素をカソードチャンバ104に供給する別のステップ204を含み得る。この供給ステップは、たとえば、二酸化炭素を含むかまたは二酸化炭素が富化された気体流を気体入力部材118を介してカソードチャンバ104内に流入させることによって行なわれ得る。方法200は、加えて、カソードとアノードとの間に電位を与えるステップを含む。電位を与えるステップは、電位発生電源116をアノード110およびカソード114の各々に電気的に接触させることによって達成され得る。
【0022】
二酸化炭素の電気化学的還元のための方法200は、一般的には、アノードチャンバ102;アノード液108;アノード110;カソードチャンバ104;カソード液112;陽極酸化処理された銀を含むカソード114;および電源116の詳細な局面を含む電気化学セルの局面によって特徴付けられる。方法200において提供される電気化学セルは、さらに、システム100および図1を参照して上記されるように、選択肢的なセパレータ106、選択肢的な気体入力部材118、および選択肢的な気体出力部材120をさらに含み得る。
【0023】
システム100および方法200の両方に関連して、カソード114は、あるプロセスによって準備されることができ、そのプロセスは、前駆体アノードを陽極酸化処理電解質と接触させて配置すること、および正の電位を前駆体アノードに与えることとを含む。前駆体アノードは元素として存在する銀を含有することになる。与えられる正の電位は基準電極に対してであり、陽極酸化電解質は銀の陽極酸化に対して好適な任意の電解質であり得る。好適な陽極酸化電解質の非限定的な例は、炭酸塩もしくは重炭酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩もしくは任意の他の好適な電解質の、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩の水溶液を含み得る。
【0024】
一部の実現例では、陽極酸化電位は指定された時間期間の間与えられ得、正の電位の大きさとその指定された期間との積は少なくとも3.75ボルト・分(V・分)である。一部の実現例では、正の電位の大きさと指定された期間との積は少なくとも11.25V・分である。一部の実現例では、正の電位の大きさと指定された期間との積は34.25V・分未満である。
【0025】
ここで図3図7を参照して、二酸化炭素を一酸化炭素に電気化学的に還元するための4つの装置が準備された。これら4つの装置のうちの3つは、各々、本開示の方法200によって準備され動作されるシステム100の例である。これら3つの例示的な装置は、各々、白金の対向電極に対向して0.1MのNaNOにおいてAg/AgClに対して0.75Vで5分、15分、または30分間陽極酸化処理されたカソード114を用いる。第4の装置は陽極酸化処理されない銀カソード(または0分間陽極酸化処理されたカソードとして記載される)を用い、したがって、開示されるシステム100または方法200の例ではないが、比較例である。
【0026】
図3に示されるように、4つの装置の周期的なボルタンモグラムは、陽極酸化処理されない銀カソードを用いる比較例に対して、方法200によって準備され動作されるシステム100の3つの例については、(一般的に電流密度応答と称される、)最大電流密度における増大、および電流密度が上昇する与えられる電位における減少を示す。図3のデータは、さらに、電流密度応答は、5分の陽極酸化期間から15分の陽極酸化期間に増大するが、次いで、30分の陽極酸化期間で減少することも示す。
【0027】
図4に示されるように、カソードで放出される一酸化炭素のモル量対カソードで放出される一酸化炭素および水素のモル量の和として定義される、一酸化炭素生成選択性は、同様のパターンを示す。カソード114の陽極酸化に関連付けられる増大された一酸化炭素選択性のこの効果は、特に、より低く与えられる電位(または過電位)において特に明らかであり、〜0.5Vの過電位で動作された際に、陽極酸化されていない(0分間陽極酸化された)カソードを有する比較例に対する約5%の一酸化炭素選択性に対して、15分間陽極酸化処理されたカソード114を有するシステム100については60%近くの一酸化炭素選択性がある。
【0028】
同様の傾向が、図5の一酸化炭素生成についてのファラデー効率において示される。たとえば、15分間陽極酸化処理されたカソード114を有するシステム100はすべての過電位において〜75%のファラデー効率を有するが、陽極酸化処理されないカソードを有する比較例はすべての過電位において〜50%の一酸化炭素生成に対するファラデー効率を有する。
【0029】
図6のタフェル図は同様に類似点がある応答を示す。タフェル傾斜は、0分〜5分〜15分の増大するカソード陽極酸化期間とともに減少する。しかしながら、30分間陽極酸化処理されたカソード114を有するシステム100のタフェル傾斜は減少を示し、それは、大部分、5分間陽極酸化処理されたカソード114を有するシステム100のそれと同一である。0分間、5分間、15分間および30分間陽極酸化処理されたカソードを有する装置に対するタフェル傾斜は、それぞれ、584mV/ディケード、381mV/ディケード、305mV/ディケードおよび390mV/ディケードである。
【0030】
図7は、記載されるように0分間、5分間、15分間、および30分間の陽極酸化を受けたカソードの表面に関するx線回折(XRD)データを示す。これら4つのXRDデータの組は、すべて、約38°、43°、63°、78°、115°および118°に中心を有するピークを有するが、それらのピークの相対的な強度は、変動する陽極酸化期間とともに変化し、表面の銀の微結晶配向における変化を、銀の陽極酸化および陽極酸化期間の関数として示唆する。特に、約118°に中心を有するピークの強度は図3図6を参照して上で論じた傾向と同様であり、強度は、0〜15分間については増大するカソード陽極酸化期間とともに増大し、次いで、15分から30分のカソード陽極酸化期間からは減少する。
【0031】
この結果に基づいて、およびどのような特定の理論に拘束されることも意図せずに、銀カソード陽極酸化に関連付けられる、電流密度、一酸化炭素生成選択性、および一酸化炭素生成ファラデー効率における改善が、少なくとも一部、陽極酸化の結果の銀微結晶配向における変化に起因すると考えられる。特に、最大のCO還元効率および選択性は、約43°に中心を有するXRDピークの強度に対する約118°に中心を有するXRDピークの強度の比の最大化に関連付けられることが注記され得る。ある例では、この比は少なくとも1:1であり得る。ある例では、この比は少なくとも2:1であり得る。「強度」という語、および「XRDピークの強度」という表現は、ここで用いられるとおりでは、当該ピーク下の領域を指し、最大ピーク高さを指すのではないことを理解されたい。
【0032】
本開示のさまざまな局面を、さらに、以下の実施例に関して説明する。これらの実施例は、本開示の具体的な実施の形態を説明するよう与えられ、本開示の範囲を任意の特定の局面において、またはそれに対して限定するとして解釈されるべきではないことが理解される。
【0033】
実施例1.陽極酸化処理された銀カソードの調整
陽極酸化処理を、0.1MのNaNOにおいて、白金を対向電極として、およびAg/AgClを基準電極として行なった。0.75Vの電位(対Ag/AgCl)を、3つの別々の銀プレート電極に、それぞれ、5分間、15分間、または30分間与えた。
【0034】
実施例2.COの電気化学的還元のためのシステムの調整および動作
4つの2チャンバ電解セルが調整された。各々はKHCO(0.1M、水系)電解質を含有するカソードチャンバおよびアノードチャンバを有し、各々のアノードチャンバは白金電極を含んだ。これら電気化学的還元システムのうちの3つは実施例1の陽極酸化された銀電極をカソードとして利用し、第4の電気化学的還元システムは、陽極酸化されていない銀プレート電極をカソードとして用いて、比較例とした。
【0035】
電解は、Ag/AgClを基準電極として行なった。KHCO(0.1M、水系)は支持電解質として用いられた。COが少なくとも15分間電解質を通してパージされた後、各電解実験が開始された。各電解実験は、生じた全電荷の2クーロンの移動の後終了された。気相生成物を、ガスクロマトグラフィ(GC)を用いて解析した。
【0036】
前述の記載は現時点において最も実用的な実施の形態であると考えられるものに関する。しかしながら、この開示はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、逆に、特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれるさまざまな修正物および均等な構成を包含するよう意図されるものであり、その範囲は、法律の下許されるすべてのそのような修正物および均等な構造を包含するよう最も広い解釈に従うことになることが理解される。
【符号の説明】
【0037】
100 システム、102 アノードチャンバ、104 カソードチャンバ、108 アノード液、110 アノード、112 カソード液、114 カソード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7