【実施例】
【0038】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
《合成物における生成相の特定及び含有率の測定、及びチタンニオブ酸化物の結晶子径の評価》
後述する、実施例及び比較例で得られた合成物(チタンニオブ酸化物)について、X線回折分析によりチタンニオブ化合物の構成相(TiNb
2O
7、Ti
2Nb
10O
29、TiO
2及び非晶質)を判別し、各構成相の含有率をX線回折−リートベルト法を適用して求めた。なお、非晶質の含有率は、結晶相の含有率の総和(質量%)を100質量%から差し引いて求めた。
次いで、各々TiNb
2O
7又はTi
2Nb
10O
29の結晶子径を、X線回折プロファイル(全角)にシェラーの式を適用(JIS K 0131「X線回折分析通則」に準拠)することにより求めた。結晶子径の評価において、チタンニオブ酸化物の構成相が複数の場合には、得られたチタンニオブ酸化物のX線回折プロファイルから主相以外の夾雑相のX線回折プロファイルを差し引いて得られたTiNb
2O
7単相又はTi
2Nb
10O
29単相のX線回折プロファイルを使用した。なお、含有率及び結晶子径の計算に用いた夾雑相のX線回折プロファイルは、ICDDデータベースの結晶構造パラメーターを使用して計算で求めた。得られた結果を表1及び表2に示す。
試料調整:粉末試料成形機(東京科学製TK−750)にて、70kgの圧力でプレス
X線:Cu−kα(管電圧−電流=35kV−350mA)
走査方法:ステップスキャン(ステップサイズ0.023°、0.13秒/ステップ)
測定範囲(2θ): 10°〜80°
測定装置:D8 Advance(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)
解析ソフトウェア:DIFFRAC
plusTOPAS(ver.3)(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)
【0040】
《チタンニオブ酸化物のBET比表面積の測定》
比表面積測定装置((株)島津製作所製FlowSorbIII 2305)を用いて、実施例及び比較例で得られたチタンニオブ酸化物の窒素吸着法によるBET比表面積を測定した。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0041】
《TiNb
2O
7を主相とする二次電池用負極活物質の製造》
[実施例1]
ビーカーに、水10mLを入れ、そこにTiOSO
4(テイカ(株)製 純度32.9%)7.50gを溶解させ(TiOSO
4/水質量比が0.75に相当)、水溶液A1を得た。得られた水溶液A1に、Nb
2O
5(関東化学(株)製、純度99.95%)8.219g(Nb/Tiモル比が2.0に相当)を添加後、ホットスターラー(AS ONE社製、RSH−4DN)を用い、ビーカー内の攪拌子を500rpmで回転させ、100℃で1時間攪拌して懸濁液A1を得た。
次いで、懸濁液A1を吸引ろ過して、複合体Aを得た。得られた1質量部の複合体A1に対して、10質量部の水で洗浄した後、恒温乾燥器を用いて150℃で30分間、複合体A1を乾燥した。
【0042】
乾燥後の複合体A1を、大気雰囲気下、1150℃で4時間焼成して、上記式(1)で表されるチタンニオブ酸化物(TiNb
2O
7)を得た。
そして、得られたチタンニオブ酸化物 3gに、グルコース 0.240g(負極活物質中における炭素原子換算量で3質量%に相当)、水2g、及びエタノール 8ml添加してボールミル(遊星型、フリッチュジャパン(株)製P−5)で15分間混合した後、窒素雰囲気下、750℃で1時間焼成して、二次電池用負極活物質A1(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29=98質量%/2質量%、炭素の量=2.9質量%)を得た。
【0043】
[実施例2]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で12時間攪拌とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質B1(TiNb
2O
7=100質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0044】
[実施例3]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で2時間攪拌とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質C1(TiNb
2O
7=100質量%、炭素の量=3.1質量%)を得た。
【0045】
[実施例4]
水溶液A1に添加するNb
2O
5を6.572g(Nb/Tiモル比が1.6に相当)とし、ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で2時間攪拌とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質D1(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29/TiO
2=92質量%/4質量%/4質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0046】
[実施例5]
水溶液A1に使用する水を750mLとした(TiOSO
4/水質量比が0.01に相当)以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質E1(TiNb
2O
7=100質量%、炭素の量=3.1質量%)を得た。
【0047】
[実施例6]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で12時間攪拌とし、乾燥後の複合体F1を、大気雰囲気下、800℃で4時間焼成した以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質F1(TiNb
2O
7=100質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0048】
[比較例1]
TiO
2(粉末、関東化学(株)製 試薬鹿一級、純度98.5%)24.324g、Nb(OH)
5(粉末、H.C. Starck製、純度92.4%)115.552g、及び水100gをビーカーに投入後、マグネチックスターラーにて30分間混合して混合液G1を得た。得られた混合液G1をボールミル(回転数120rpm、内径7.6cm、媒体φ1mmZrO
2ボール、媒体充填率70%)にて、25℃で18時間湿式混合を行い、混合物G1を得た。
得られた混合物G1をスプレードライ法(スプレードライヤー:藤崎電機(株)製MDL−050M)により噴霧乾燥し、得られた粉末を大気雰囲気下、1200℃で12時間焼成して、チタンニオブ酸化物(TiNb
2O
7)G1を得た。
そして、得られた3gのチタンニオブ酸化物G1に、グルコース 0.237g(負極活物質中における炭素原子換算量で3質量%に相当)、水2g、及びエタノール 8ml添加してボールミル(遊星型、フリッチュジャパン(株)製P−5)で60分間混合した後、窒素雰囲気下、700℃で1時間焼成して、二次電池用負極活物質G1(TiNb
2O
7=100質量%、炭素の量=3.1質量%)を得た。
【0049】
[比較例2]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、20℃で12時間攪拌とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質H1(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=59質量%/4質量%/8質量%/29質量%、炭素の量=2.9質量%)を得た。
【0050】
[比較例3]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で0.1時間攪拌とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質I1(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=3質量%/3質量%/4質量%/90質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0051】
[比較例4]
水溶液A1に添加するNb
2O
5を4.124g(Nb/Tiモル比が1.0に相当)とし、ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で2時間攪拌とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質J1(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=67質量%/3質量%/3質量%/27質量%、炭素の量=3.1質量%)を得た。
【0052】
[比較例5]
水溶液A1に使用する水を7500mLとした(TiOSO
4/水質量比が0.001に相当)以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質K1(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=56質量%/6質量%/5質量%/33質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0053】
[比較例6]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で12時間攪拌とし、乾燥後の複合体L1を、大気雰囲気下、750℃で4時間焼成した以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質L1(TiNb
2O
7/Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=59質量%/10質量%/12質量%/19質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0054】
《Ti
2Nb10O29を主相とする二次電池用負極活物質の製造》
[実施例7]
ビーカーに、水10mLを入れ、そこにTiOSO
4 7.50gを溶解させ(TiOSO
4/水質量比が0.75に相当)、水溶液A2を得た。得られた水溶液A2に、Nb
2O
520.542g(Nb/Tiモル比が5.0に相当)を添加後、ホットスターラー(RSH−4DN)を用い、ビーカー内の攪拌子を500rpmで回転させ、100℃で1時間攪拌して懸濁液A2を得た。
次いで、懸濁液A2を吸引ろ過して、複合体A2を得た。得られた1質量部の複合体A2に対して、10質量部の水で洗浄した後、恒温乾燥器を用いて150℃で30分間、複合体A2を乾燥した。
【0055】
乾燥後の複合体A2を、大気雰囲気下、1150℃で4時間焼成して、上記式(2)で表されるチタンニオブ酸化物A2(Ti
2Nb
10O
29)を得た。
そして、得られたチタンニオブ酸化物A2 3gに、グルコース 0.240g(負極活物質中における炭素原子換算量で3質量%に相当)、水2g、及びエタノール 8ml添加してボールミル(遊星型、フリッチュジャパン(株)製P−5)で15分間混合した後、窒素雰囲気下、700℃で1時間焼成して、二次電池用負極活物質A2(Ti
2Nb
10O
29/TiNb
2O
7=99質量%/1質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0056】
[実施例8]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で12時間攪拌とした以外、実施例7と同様にして二次電池用負極活物質B2(Ti
2Nb
10O
29=100質量%、炭素の量=2.9質量%)を得た。
【0057】
[実施例9]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で2時間攪拌とした以外、実施例7と同様にして二次電池用負極活物質C2(Ti
2Nb
10O
29=100質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0058】
[実施例10]
水溶液A2に添加するNb
2O
5を22.192g(Nb/Tiモル比が5.4に相当)とし、ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で2時間攪拌とした以外、実施例7と同様にして二次電池用負極活物質D2(Ti
2Nb
10O
29/TiO
2=96質量%/4質量%、炭素の量=3.1質量%)を得た。
【0059】
[実施例11]
水溶液A2に使用する水を750mLとした(TiOSO
4/水質量比が0.01に相当)以外、実施例7と同様にして二次電池用負極活物質E2(Ti
2Nb
10O
29=100質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0060】
[実施例12]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で12時間攪拌とし、乾燥後の複合体F2を、大気雰囲気下、800℃で4時間焼成した以外、実施例7と同様にして二次電池用負極活物質F2(Ti
2Nb
10O
29=100質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0061】
[比較例7]
TiO
2(粉末、関東化学(株)製 試薬鹿一級、純度98.5%)24.324g、Nb(OH)
5(粉末、H.C. Starck製、純度92.4%)115.552g、及び水100gをビーカーに投入後、マグネチックスターラーにて30分間混合して混合液G2を得た。得られた混合液G2をボールミル(回転数120rpm、内径7.6cm、媒体φ1mmZrO
2ボール、媒体充填率70%)にて、25℃で18時間湿式混合を行い、混合物G2を得た。
得られた混合物G2をスプレードライ法(スプレードライヤー:藤崎電機(株)製MDL−050M)により噴霧乾燥し、得られた粉末を大気雰囲気下、1200℃で12時間焼成して、チタンニオブ酸化物(Ti
2Nb
10O
29)G2を得た。
そして、得られた3gのチタンニオブ酸化物G2に、グルコース 0.237g(負極活物質中における炭素原子換算量で3質量%に相当)、水2g、及びエタノール 8ml添加してボールミル(遊星型、フリッチュジャパン(株)製P−5)で60分間混合した後、窒素雰囲気下、700℃で1時間焼成して、二次電池用負極活物質G2(Ti
2Nb
10O
29=100質量%、炭素の量=3.0質量%)を得た。
【0062】
[比較例8]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、20℃で12時間攪拌とした以外、実施例7と同様にして二次電池用負極活物質H2(Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=66質量%/8質量%/26質量%、炭素の量=2.9質量%)を得た。
【0063】
[比較例9]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で0.1時間攪拌とした以外、実施例7と同様にして二次電池用負極活物質I2(Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=4質量%/3質量%/93質量%、炭素の量=2.9質量%)を得た。
【0064】
[比較例10]
水溶液A2に添加するNb
2O
5を24.666g(Nb/Tiモル比が6.0に相当)とし、ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で2時間攪拌とした以外、実施例7と同様にして二次電池用負極活物質J2(Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=71質量%/19質量%/10質量%、炭素の量=2.9質量%)を得た。
【0065】
[比較例11]
水溶液A2に使用する水を7500mLとした(TiOSO
4/水質量比が0.001に相当)以外、実施例7と同様にして二次電池用負極活物質K2(Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=64質量%/9質量%/27質量%、炭素の量=2.9質量%)を得た。
【0066】
[実施例12]
ホットスターラー(RSH−4DN)での攪拌条件を、40℃で12時間攪拌とし、乾燥後の複合体L2を、大気雰囲気下、750℃で4時間焼成した以外、実施例7と同様にして二次電池用負極活物質L2(Ti
2Nb
10O
29/TiO
2/非晶質=73質量%/11質量%/16質量%、炭素の量=3.1質量%)を得た。
【0067】
《充放電特性の評価》
実施例及び比較例で得られた二次電池用負極活物質、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を質量比85:10:5の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、負極スラリーを調製した。
得られた負極スラリーを厚さ20μmの銅箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80 ℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、負極とした。
次いで、φ15mmに打ち抜いたLi箔を対極とし、電解液としてエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒にLiPF
6を1 mol/Lの濃度で溶解したものを用い、セパレータに高分子多孔フィルム(ポリプロピレン製)を用いて、露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
作成した各リチウム二次電池について、気温30℃環境下、充電条件を電流1CA(387mA/g)、電圧3Vの定電流充電とし、放電条件を1CA(387mA/g)、終止電圧1Vの定電流定電圧放電として、0.2CAおよび3CAにおける放電容量を測定(測定装置:北斗電工(株)製 HJ−1001SD8)した。
結果を表1及び表2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】