特許第6200533号(P6200533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200533
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】二次電池用負極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20170911BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   H01M4/485
   C01G33/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-33704(P2016-33704)
(22)【出願日】2016年2月25日
(65)【公開番号】特開2017-152217(P2017-152217A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年3月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】初森 智紀
(72)【発明者】
【氏名】池上 潤
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
(72)【発明者】
【氏名】井田 雅也
【審査官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−513324(JP,A)
【文献】 特開2015−122298(JP,A)
【文献】 特開2010−287496(JP,A)
【文献】 特開2017−134972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/485
C01G 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ化合物水溶液にチタン化合物を添加して懸濁液を得た後、得られた懸濁液を攪拌して、チタンニオブ酸化物前駆体を含有する懸濁物を得る工程(I)、並びに
得られた懸濁物を乾燥し、固形分としてチタンニオブ酸化物前駆体を得た後、得られたチタンニオブ酸化物前駆体を600〜1250℃で0.3〜7時間焼成して、結晶子径が25〜250nmであり、かつ夾雑相の含有率が5質量%以下であるチタンニオブ酸化物を得る工程(II)
を備える、固相法による二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項2】
工程(II)で得られるチタンニオブ酸化物が、下記式(1)又は(2):
Ti1-xxNb27 ・・・(1)
(式(1)中、MはZr、Hf、V、Ta、Fe、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。xは、0≦x<0.1を満たす数を示す。)
Ti2-yyNb1029 ・・・(2)
(式(2)中、MはZr、Hf、V、Ta、Fe、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。yは、0≦y<0.2を満たす数を示す。)
で表される、請求項1に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項3】
工程(I)におけるニオブ化合物水溶液中の水の含有量が、20〜99質量%である、請求項1又は2に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項4】
工程(I)における懸濁液のpHが、2〜10である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項5】
工程(I)における懸濁液中でのチタンに対するニオブのモル比(Ti/Nb)が、0.1〜0.8である、請求項1〜のいずれか1項に記載の二次電池用負極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンニオブ酸化物を得る工程を含む、固相法による二次電池用負極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン電池の負極としてグラファイトの使用が普及している。かかるグラファイトは、リチウム基準で0.1〜0.3V近傍に作動電位を有しており、リチウムイオン電池の高電圧化及び高エネルギー密度化を実現する上で大きな役割を果たしている。
【0003】
一方、かかるグラファイトの作動電位は金属リチウムの析出電位近傍でもあるために、電池が過充電状態となると、グラファイト表面の不動状皮膜から漏出した金属リチウムが対極に向かって結晶化してデンドライトが生成されてしまう。また、放電過程では、デンドライトの根元部が溶出して先端部がグラファイト表面から離脱し、電池の中に残留してしまう。こうした電解液中に残留して浮遊する金属リチウムは、デッドリチウムとも称され、非常に活性の高い微小金属リチウムとなって、充放電効率を低下させるだけでなく、電池内での内部短絡や発熱等を引き起こすおそれもある。
【0004】
デンドライトの生成やデッドリチウムの発生を回避するには、負極の作動電位がリチウム基準で1V以上となる材料が求められるところ、例えば非特許文献1では、チタンニオブ酸化物(TiNb27、Ti2Nb1029)であれば、リチウム基準で1V以上の電位範囲において、250〜280mAh/gの高容量を示すことが報告されている。こうしたチタンニオブ酸化物は、スピネル構造を有するチタン酸リチウム(Li4Ti512)と同等な電位で作動し、かつチタン酸リチウムよりも高容量を示すことから、将来のリチウムイオン二次電池用負極活物質を担う有望な材料として、その開発が進められている。
【0005】
ところで、チタンニオブ酸化物は、結晶構造中のチタンは全て+4価であって電気伝導を担う3d電子を持たないことから、高電流密度下での充放電特性(レート特性)が低いという課題がある。そのため、充放電特性を高めるにあたっては、チタンニオブ酸化物を微細化するのが効果的であることも知られている。このようなチタンニオブ酸化物の製造方法としては、水熱法によるもの、固相法によるもの、及び錯体重合法によるものに大別されるが、なかでも特殊な設備が不要であることや操作が簡便であることから、固相法による製造方法が広く採用されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、固相法により得られた単斜晶のTiNb27やTi2Nb1029を大気雰囲気下1000〜1400℃で24時間熱処理した後、粉砕を経て、再度同温度で24時間熱処理をする方法が開示されている。また特許文献2には、大気雰囲気下1000℃で12時間熱処理した後、粉砕を経て、1100℃で12時間熱処理を施すTiNb27の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−287496号公報
【特許文献2】特開2015−84321号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jian−Tao Han et al,「New Anode Framework for Rechargeable Lithium Battteries」,CHEMISTRY OF MATERIALS,2011,Vol.23,p2027‐2029
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、いずれの文献に記載の製造方法であっても、焼成工程と粉砕又は混合工程とを繰返した長時間の熱処理を余儀なくされるため、二次電池用負極活物質としての良好な性能を確保しつつ、固相法による製造方法でありながら熱処理時間の短縮化を図ることは、依然として困難な状況であった。
【0010】
したがって、本発明の課題は、固相法による製造方法であっても、有効に熱処理時間の短縮を図ることのできる、二次電池用負極活物質の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで本発明者らは、種々検討したところ、ニオブ源を水溶液としてチタン源を添加した後、これを撹拌して乾燥する工程を介すれば、固相法によるものであっても、焼成工程と粉砕混合工程とを繰返すことなく熱処理時間を短縮することができ、従来の製造方法で得られる負極活物質と比べても、同等或いはそれ以上の性能を発現し得る二次電池用負極活物質が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、ニオブ化合物水溶液にチタン化合物を添加して懸濁液を得た後、得られた懸濁液を攪拌して、チタンニオブ酸化物前駆体を含有する懸濁物を得る工程(I)、並びに
得られた懸濁物を乾燥し、固形分としてチタンニオブ酸化物前駆体を得た後、得られたチタンニオブ酸化物前駆体を焼成してチタンニオブ酸化物を得る工程(II)
を備える、固相法による二次電池用負極活物質の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、チタンニオブ酸化物を得る工程を備える固相法による二次電池用負極活物質の製造方法であっても、熱処理を効果的に短縮することができ、操作の簡略化を実現しつつ、得られる電池において良好な性能を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の固相法による二次電池用負極活物質の製造方法は、ニオブ化合物水溶液にチタン化合物を添加して懸濁液を得た後、得られた懸濁液を攪拌して、チタンニオブ酸化物前駆体を含有する懸濁物を得る工程(I)、並びに
得られた懸濁物を乾燥し、固形分としてチタンニオブ酸化物前駆体を得た後、得られたチタンニオブ酸化物前駆体を焼成してチタンニオブ酸化物を得る工程(II)、
を備える。
【0015】
工程(I)は、ニオブ化合物水溶液にチタン化合物を添加して懸濁液を得た後、得られた懸濁液を攪拌して、チタンニオブ酸化物前駆体を含有する懸濁物を得る工程である。このように、本発明では、ニオブ化合物を水溶液として用いる。かかるニオブ化合物は、後の工程でチタンニオブ酸化物を得るためのチタンニオブ酸化物前駆体を形成し得るニオブ源である。
【0016】
用い得るニオブ化合物としては、例えばニオブ酸のペルオキソ錯体、配位子にシュウ酸を有するシュウ酸ニオブアンモニウム等のニオブ酸錯体、及び塩化ニオブ等のニオブ塩化物から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、反応性や操作性、及び熱処理を効果的に短縮化する観点から、シュウ酸ニオブアンモニウム又は塩化ニオブが好ましい。
【0017】
シュウ酸ニオブアンモニウムは、公知の方法を用いることにより得ることができる。例えば、水に水酸化ニオブとシュウ酸とアンモニア水を順次添加する方法、シュウ酸水溶液に酸化ニオブを添加する方法を用いることができる。ここで、前者の方法を用いる場合、アンモニアが反応中に揮発することを加味する観点から、ニオブ酸1モルに対して、アンモニアが1モル以上となるようにアンモニア水を用いることが好ましく、ニオブ酸1モルに対して、アンモニアが2モル以上となるようにアンモニア水を用いることがより好ましい。
さらに、かかるアンモニア水に代えて、アルカリ性溶液を添加することもできる。この場合、アルカリ性溶液の添加量は、添加後の液のpHが10以上、好ましくは11以上となる量とする。また、アルカリ性溶液として水酸化リチウム水溶液を用いることもできる。
【0018】
かかるニオブ化合物の含有量は、ニオブ化合物の種類によっても変動し得るが、工程(I)において用いるニオブ化合物水溶液中に、好ましくは1〜80質量%であり、より好ましくは10〜70質量%である。
【0019】
工程(I)において用いるニオブ化合物水溶液中の水の含有量は、後に添加するチタン化合物、及びその他必要に応じて用いる各成分の懸濁液中における分散性や反応性を確保する観点から、かかるニオブ化合物水溶液中に、好ましくは20〜99質量%であり、より好ましくは30〜90質量%である。なお、かかる水には、水単体のほか、その他ニオブ化合物水溶液を調製する際に用いる成分、例えばアンモニア水やシュウ酸水溶液に含まれる水分をも含む、ニオブ化合物水溶液に含まれる全水分を意味する。
【0020】
ニオブ化合物水溶液の調製は、ニオブ化合物を含む上記所定の成分を添加した後、ニオブ化合物が完全に溶解するまで攪拌すればよい。なお、ニオブ化合物としてシュウ酸ニオブアンモニウムを用いる場合、ニオブ化合物水溶液を調製するには、攪拌の際に加熱する、すなわち加熱撹拌するのが好ましい。これにより、シュウ酸ニオブアンモニウムの水への溶解が促進され、効率的に調整することができる。かかる加熱攪拌をする際の温度は、好ましくは30〜100℃であり、より好ましくは30〜80℃である。
【0021】
ニオブ化合物水溶液に添加するチタン化合物は、後の工程でチタンニオブ酸化物を得るためのチタンニオブ酸化物前駆体を形成し得るチタン源である。
用い得るチタン化合物としては、例えば酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型等)、チタン錯体(グリコール酸チタン錯体、クエン酸チタン錯体等)、チタンアルコキシド(チタンイソプロポキシド等)、チタン塩(硫酸チタン、硝酸チタン等)、及びチタン塩化物(四塩化チタン等)から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、金属チタンを用いることもできる。なかでも、反応性や操作性、及び熱処理を効果的に短縮化する観点から、酸化チタン(アナターゼ型)が好ましい。また、チタンニオブ酸化物前駆体を有効に形成し、後の工程(II)においてチタンニオブ酸化物を効率的に得る観点から、用いるチタン化合物の粒径は、1μm以下が好ましく、0.6μm以下がより好ましく、0.3μm以下がさらに好ましい。
【0022】
かかるチタン化合物の添加量は、工程(I)において得られる懸濁液中でのニオブに対するチタンのモル比(Ti/Nb)で、好ましくは0.1〜0.8であり、より好ましくは0.15〜0.75であり、さらに好ましくは0.17〜0.65である。より具体的には、本発明で得られるチタンニオブ酸化物が後述する式(1)で表される場合、チタン化合物の添加量は、工程(I)において得られる懸濁液中でのニオブに対するチタンのモル比(Ti/Nb)で、好ましくは0.35〜0.8であり、より好ましくは0.4〜0.75であり、さらに好ましくは0.45〜0.65である。また、本発明で得られるチタンニオブ酸化物が後述する式(2)で表される場合、チタン化合物の添加量は、工程(I)において得られる懸濁液中でのニオブに対するチタンのモル比(Ti/Nb)で、0.1〜0.25であり、より好ましくは0.15〜0.25であり、さらに好ましくは0.17〜0.23である。上記懸濁液中においてこのような量となるよう、チタン化合物をニオブ化合物水溶液に添加すればよい。
【0023】
また、かかるチタン化合物は、不可避的に混入する場合も含め、その一部にチタン及びニオブ以外の異種金属M(MはZr、Hf、V、Ta、Fe、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。)を含んでいてもよい。異種金属(M)の含有量は、より良好な電池物性を確保する観点から、チタン化合物中に、好ましくは33質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0024】
工程(I)における懸濁液のpHは、チタンニオブ酸化物前駆体を有効に形成し、目的物であるチタンニオブ酸化物を良好に得る観点から、好ましくは2〜10であり、より好ましくは3〜9である。なお、適宜pH調整剤を用いてもよい。
【0025】
次いで、工程(I)では、得られた懸濁液を攪拌する。これにより、懸濁液に溶解している、ニオブ成分がチタン化合物の表面に沈着したチタンニオブ酸化物前駆体を効率的に形成させることができる。撹拌の速度及び時間は、特に制限されず、チタン化合物が充分に分散されればよい。攪拌には、例えばマグネチックスターラーや回転翼を備えた装置等、懸濁液の混合を行うことができる通常の撹拌装置が使用できる。
【0026】
なお、懸濁液に、SまたはCl等の二次電池用材料の忌避成分であるアニオン成分を含む場合は、かかるアニオン成分を効果的に除去する観点から、懸濁液にアルカリを添加して中和処理した後、固液分離して、得られた固体を水洗浄することが好ましい。
中和処理に用いるアルカリとしては、リチウムやナトリウムの酸化物、水酸化物、炭酸化物が好ましく、アンモニウムイオンを含む塩やアンモニア水がより好ましい。中和処理によって、懸濁液中においてチタンニオブ酸化物前駆体が形成された後、懸濁液の液相中から余剰のニオブ成分が取り除かれた、チタンニオブ酸化物前駆体を含有する懸濁物を得ることができる。次いで、中和処理された懸濁物を固液分離した後、分離された固体分を水で洗浄することによって、余剰のアニオン成分が除去されたチタンニオブ酸化物前駆体を得ることができる。
【0027】
固液分離に用いる装置としては、減圧濾過機、フィルタープレス機、遠心濾過機等が挙げられる。なかでも、効率的に固形分を得る観点から、減圧濾過機を用いるのが好ましい。分離された固体分を洗浄するのに用いる水の量は、固液分離で得られたケーキ1質量部に対して、8〜60質量部であるのが好ましい。
洗浄後のケーキは、工程(II)で乾燥手段に噴霧乾燥を用いる場合、改めて水と混合して懸濁液とする。その際に用いる水の量は、ケーキ1質量部に対して、1〜10質量部であるのが好ましい。
【0028】
工程(II)は、工程(I)で得られた懸濁物を乾燥し、固形分としてチタンニオブ酸化物前駆体を得た後、得られたチタンニオブ酸化物前駆体を焼成してチタンニオブ酸化物を得る工程である。懸濁物を乾燥させるために用いる方法としては、例えば、自然乾燥、50〜100℃の恒温乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥(スプレードライ)等が挙げられる。なかでも、効率的に固形分を得る観点、さらに、チタンニオブ酸化物前駆体の大きさを有効に制御する観点から、噴霧乾燥を用いるのが好ましい。
【0029】
乾燥により得られる、チタンニオブ酸化物前駆体の粒径は、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布におけるD50値で、好ましくは50〜1000nmであり、より好ましくは100〜800nmである。ここで、粒度分布測定におけD50値とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られる値であり、D50値は累積50%での粒径(メジアン径)を意味する。したがって、適宜噴霧乾燥装置の運転条件を最適化することにより、かかる前駆体の粒径を調整すればよい。
【0030】
次いで、工程(II)では、上記固形分として得られたチタンニオブ酸化物前駆体を焼成する。これにより、結晶性が高く、適度な範囲に制御された結晶子径を有するチタンニオブ酸化物を得ることができる。焼成温度は、得られるチタンニオブ酸化物の結晶性を高めつつ、適度な範囲の結晶子径を有するチタンニオブ酸化物を得る観点から、好ましくは600〜1250℃であり、より好ましくは600〜1200℃であり、さらに好ましくは700〜1200℃である。また焼成時間は、同様の観点から、好ましくは0.3〜7時間であり、より好ましくは0.5〜6時間である。なお、焼成する際の雰囲気は、チタンの価数を+4価とするために酸化雰囲気下で焼成する必要があり、簡便性、経済性の観点から大気雰囲気での焼成が最も好ましい。
【0031】
本発明により得られるチタンニオブ酸化物は、具体的には、例えば、下記式(1)又は(2)で表され、単斜晶構造を有する化合物である。
Ti1-xxNb27 ・・・(1)
(式(1)中、MはZr、Hf、V、Ta、Fe、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。xは、0≦x<0.1を満たす数を示す。)
Ti2-yNb1029 ・・・(2)
(式(2)中、MはZr、Hf、V、Ta、Fe、Bi、Sb、As、P、Cr、Mo、W、B、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。yは、0≦y<0.2を満たす数を示す。)
上記チタンニオブ酸化物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、式(1)で表される場合は、Ti2Nb1029及び/又はTiO2の夾雑相を含んでいてもよく、式(2)で表される場合は、TiNb27及び/又はTiO2の夾雑相を含んでいてもよい。これら夾雑相の含有率は、優れた充放電特性を発揮する観点から、チタンニオブ酸化物中に、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。なお、かかる夾雑相の含有率とは、得られたチタンニオブ酸化物について、X線回折−リートベルト法を適用して求めた定量値を意味する。
【0032】
本発明により得られるチタンニオブ酸化物は、充放電効率及び電池容量が高い電池を得る観点から、そのBET比表面積が、好ましくは1.0m2/g以上であり、より好ましくは1.2〜10m2/gであり、さらに好ましくは1.5〜7m2/gである。
【0033】
本発明により得られるチタンニオブ酸化物は、その結晶子径が、好ましくは25〜250nmであり、より好ましくは25〜220nmであり、その結晶性も高いものである。また、チタンニオブ酸化物の平均粒子径は、50〜900nmであり、より好ましくは50〜800nmである。なお、チタンニオブ酸化物の結晶子径は、Cu−kα線による回折角2θの範囲が10°〜80°のX線回折プロファイルについて、シェラーの式を適用して求めた値を意味する。ここで、得られたチタンニオブ酸化物が、例えば上記式(1)で表され、TiO2等の夾雑相を含有する場合は、結晶構造パラメーター(ICDDデータベース)に基づいて計算されたそれら夾雑相のX線回折プロファイルを、得られたチタンニオブ酸化物混合体のX線回折プロファイルから差し引いて求めたTiNb27のX線回折プロファイルについて、シェラーの式を適用して求めた値を意味する。
【0034】
上記チタンニオブ酸化物は、そのままでも二次電池用負極材活物質として用いることができるが、チタンニオブ酸化物の表面に炭素を担持させて、より十分な電子伝導性を確保して優れた電池特性を発現させる観点から、グルコース、サッカロース、フルクトース、デキストリン、デンプン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カーボンブラック、繊維状炭素等の炭素源を添加して混合し、焼成するのが好ましい。この際、炭素源の添加量は、炭素原子換算量で、二次電池用負極材活物質中に、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜8質量%である。
焼成条件は、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下にて行うのが好ましく、また焼成温度は、好ましくは500〜800℃であり、より好ましくは550〜750℃であり、さらに好ましくは600〜750℃である。また、焼成時間は、好ましくは10分〜5時間、より好ましくは30分〜4時間とするのがよい。
なお、二次電池用負極活物質中に存在する炭素量は、炭素・硫黄分析装置を用いて測定した炭素量として、確認することができる。
【0035】
得られたチタンニオブ酸化物を負極活物質として用いて二次電池を製造する方法は特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。例えば、かかる負極活物質を結着剤や溶剤等の添加剤とともに混合して塗工液を得る。この際、必要に応じて、さらに導電助剤を添加して混合してもよい。かかる結着剤としては、特に限定されず、公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー等が挙げられる。また、かかる導電助剤としては、特に限定されず、黒鉛以外の公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、繊維状炭素等が挙げられる。次いで、かかる塗工液を銅箔等の負極集電体上に塗布し、乾燥させて負極とする。
【0036】
得られる二次電池用負極活物質は、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池等の二次電池の負極として非常に優れた放電容量及びサイクル特定を発揮する点で有用である。かかる負極を適用できる二次電池としては、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
【0037】
ここで、正極については、リチウムイオン又はナトリウムイオン等、所定の金属イオンを充電時には放出し、かつ放電時には吸蔵することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。例えば、原料を水熱反応させることにより得られる各種オリビン型化合物を好適に用いることが好ましい。
【0038】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池等の二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0039】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、例えばリチウムイオン二次電池の場合、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32、LiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。また、例えばナトリウムイオン二次電池の場合、NaPF6、NaBF4、NaClO4及びNaAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、NaSO3CF3、NaC(SO3CF32及びNaN(SO3CF32、NaN(SO2252及びNaN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
《合成物における生成相の特定及び含有率の測定、及びチタンニオブ酸化物の結晶子径の評価》
後述する、実施例及び比較例で得られた合成物(チタンニオブ酸化物)について、X線回折分析によりチタンニオブ化合物の構成相(TiNb27、Ti2Nb1029、TiO2及び非晶質)を判別し、各構成相の含有率をX線回折−リートベルト法を適用して求めた。なお、非晶質の含有率は、結晶相の含有率の総和(質量%)を100質量%から差し引いて求めた。
次いで、各々TiNb27又はTi2Nb1029の結晶子径を、X線回折プロファイル(全角)にシェラーの式を適用(JIS K 0131「X線回折分析通則」に準拠)することにより求めた。結晶子径の評価において、チタンニオブ酸化物の構成相が複数の場合には、得られたチタンニオブ酸化物のX線回折プロファイルから主相以外の夾雑相のX線回折プロファイルを差し引いて得られたTiNb27単相又はTi2Nb1029単相のX線回折プロファイルを使用した。なお、含有率及び結晶子径の計算に用いた夾雑相のX線回折プロファイルは、ICDDデータベースの結晶構造パラメーターを使用して計算で求めた。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0043】
試料調整:粉末試料成形機(東京科学製TK−750)にて、70kgの圧力でプレス
X線:Cu−kα(管電圧−電流=35kV−350mA)
走査方法:ステップスキャン(ステップサイズ0.023°、0.13秒/ステップ)
測定範囲(2θ): 10°〜80°
測定装置:D8 Advance(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)
解析ソフトウェア:DIFFRACplusTOPAS(ver.3)(ブルカー・エイエックスエス株式会社製)
【0044】
《チタンニオブ酸化物のBET比表面積の測定》
比表面積測定装置((株)島津製作所製FlowSorbIII 2305)を用いて、実施例及び比較例で得られたチタンニオブ酸化物の窒素吸着法によるBET比表面積を測定した。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0045】
《シュウ酸ニオブアンモニウムの合成》
50℃に温度を保持している水500mLに、水酸化ニオブ(H.C. Starck社製、純度Nb25換算で92.4%)67.9gを投入し、1分間攪拌後、シュウ酸(関東化学(株)製、純度99.5%)22.5gおよびアンモニア水(関東化学(株)製、NH濃度 29質量%)37mLを投入し、さらに12時間攪拌した。
次いで、20℃まで冷却した後、固液分離して、シュウ酸ニオブアンモニウム錯体ケーキ(Nb25換算量 10.6%)を得た。
【0046】
《TiNb27を主相とする二次電池用負極活物質の製造》
[実施例1]
200mLポリ容器に、水100mLを入れ、そこに上記シュウ酸ニオブアンモニウム33.575g(Ti/Nbモル比が0.5に相当)を入れ、50℃で30分間攪拌して、シュウ酸ニオブアンモニウムを完全に溶解させたニオブ化合物水溶液X1を得た。次に、このニオブ化合物水溶液X1に酸化チタン(アナターゼ型、関東化学(株)製、純度98.5%)1.622gを添加し、30分攪拌して、チタンニオブ酸化物前駆体を含む懸濁物Y1を得た。
次いで、80℃の恒温乾燥機で懸濁物Y1を乾燥し、固形分としてチタンニオブ酸化物前駆体を得た後、得られた前駆体を大気雰囲気下、900℃で6時間焼成して、上記式(1)で表されるチタンニオブ酸化物(TiNb27)を得た。
【0047】
そして、得られたチタンニオブ酸化物3gに、グルコース 0.240g(負極活物質中における炭素原子換算量で3質量%に相当)、水2g、及びエタノール 8ml添加してボールミル(遊星型、フリッチュジャパン(株)製P−5)で15分間混合した後、窒素雰囲気下、700℃で1時間焼成して、二次電池用負極活物質A(TiNb27=100質量%、炭素の量=2.7質量%)を得た。
【0048】
[実施例2]
大気焼成温度を950℃とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質B(TiNb27=100質量%、炭素の量=2.8質量%)を得た。
【0049】
[実施例3]
大気焼成温度を1000℃とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質C(TiNb27=100質量%、炭素の量=2.8質量%)を得た。
【0050】
[実施例4]
大気焼成温度を1100℃とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質D(TiNb27=100質量%、炭素の量=2.9質量%)を得た。
【0051】
[実施例5]
大気焼成温度を1200℃とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質E(TiNb27=100質量%、炭素の量=2.8質量%)を得た。
【0052】
[実施例6]
窒素雰囲気下での焼成温度を800℃とした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質F(TiNb27=100質量%、炭素の量=2.7質量%)を得た。
【0053】
[実施例7]
グルコース添加量を0.160gとした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質G(TiNb27=100質量%、炭素の量=2.1質量%)を得た。
【0054】
[実施例8]
グルコース添加量を0.320gとした以外、実施例1と同様にして二次電池用負極活物質H(TiNb27=100質量%、炭素の量=4.9質量%)を得た。
【0055】
[実施例9]
200mLポリ容器に、水100mLを入れ、そこに塩化ニオブ(三津和化学薬品(株)製、純度99.9%)10.806g(Ti/Nbモル比が0.5に相当)を入れ、30分攪拌して、塩化ニオブを完全に溶解させたニオブ化合物水溶液X2を得た。次に、このニオブ化合物水溶液X2に酸化チタン(アナターゼ型、関東化学(株)製、純度98.5%)1.622gを添加し、30分攪拌した後、pHが8.3になるまでアンモニア水を添加して、チタンニオブ酸化物前駆体を含む懸濁物Y2を得た。得られた懸濁物I2を、ブフナー漏斗で固液分離した後、吸引ろ過を継続したまま100mLの水を漏斗内のケーキにかけて洗浄した。
次いで、得られたケーキを80℃の恒温乾燥機で1時間乾燥し、固形分としてチタンニオブ酸化物前駆体を得た後、得られた前駆体を大気雰囲気下、1000℃で6時間焼成して、チタンニオブ酸化物(TiNb27)を得た。
その後は、実施例1と同じにして、二次電池用負極活物質I(TiNb27=100質量%、炭素の量=2.7質量%)を得た。
【0056】
[比較例1]
酸化チタン 1.622g、酸化ニオブ(関東化学(株)製、純度99.95%)5.316gを、遊星ボールミル(フリッチュジャパン(株)製P−5)で10分間混合を行い、混合物J(Ti/Nbモル比が0.5に相当)を得た。
得られた混合物Jを、大気雰囲気炉にて1100℃で12時間焼成して、チタンニオブ酸化物Jを得た。得られたチタンニオブ酸化物J 3gに、グルコース 0.240g(負極活物質中における炭素原子換算量で3質量%に相当)、水2g、及びエタノール 8ml添加して遊星ボールミルで15分間混合した後、窒素雰囲気下、700℃で1時間焼成して、二次電池用負極活物質J(TiNb27:Ti2Nb1029:TiO2=71:20:9(質量%)、炭素の量=2.7質量%)を得た。
【0057】
[比較例2]
大気雰囲気炉焼成で得られたチタンニオブ酸化物Jを、再び遊星ボールミル処理を同条件で行った後、大気雰囲気炉にて1200℃で12時間焼成して、チタンニオブ酸化物を得た。その後は、比較例1と同様にして、二次電池用負極活物質K(TiNb27=100質量%、炭素の量=2.7質量%)を得た。
【0058】
《Ti2Nb1029を主相とする二次電池用負極活物質の製造》
[実施例10]
500mLポリ容器に、水200mLを入れ、そこに上記シュウ酸ニオブアンモニウム83.938g(Ti/Nbモル比が0.2に相当)を入れ、50℃で30分間攪拌して、シュウ酸ニオブアンモニウムを完全に溶解させたニオブ化合物水溶液X3を得た。次に、このニオブ化合物水溶液X3に酸化チタン(アナターゼ型、関東化学(株)製、純度98.5%)1.622gを添加し、30分攪拌して、チタンニオブ酸化物前駆体を含む懸濁物Y3を得た。
次いで、80℃の恒温乾燥機で懸濁物Y3を乾燥し、固形分としてチタンニオブ酸化物前駆体を得た後、得られた前駆体を大気雰囲気下、800℃で6時間焼成して、上記式(2)で表されるチタンニオブ酸化物(TiNb1029)を得た。
【0059】
そして、得られたチタンニオブ酸化物3gに、グルコース 0.240g(負極活物質中における炭素原子換算量で3質量%に相当)、水2g、及びエタノール 8ml添加してボールミル(遊星型、フリッチュジャパン(株)製P−5)で15分間混合した後、窒素雰囲気下、700℃で1時間焼成して、二次電池用負極活物質L(Ti2Nb1029=100質量%、炭素の量=3.1質量%)を得た。
【0060】
[実施例11]
大気焼成温度を1000℃とした以外、実施例10と同様にして二次電池用負極活物質M(Ti2Nb1029=100質量%、炭素の量=2.8質量%)を得た。
【0061】
[実施例12]
大気焼成温度を1200℃とした以外、実施例10と同様にして二次電池用負極活物質N(Ti2Nb1029=100質量%、炭素の量=2.8質量%)を得た。
【0062】
[実施例13]
窒素雰囲気下における焼成温度を800℃とした以外、実施例10と同様にして二次電池用負極活物質O(Ti2Nb1029=100質量%、炭素の量=2.8質量%)を得た。
【0063】
[実施例14]
グルコース添加量を0.12gとした以外は、実施例10と同様にして二次電池用負極活物質P(Ti2Nb1029=100質量%、炭素の量=2.0質量%)を得た。
【0064】
[実施例15]
グルコース添加量を0.36gとした以外は、実施例10と同様にして二次電池用負極活物質Q(Ti2Nb1029=100質量%、炭素の量=4.1質量%)を得た。
【0065】
[実施例16]
500mLポリ容器に、水200mLを入れ、そこに塩化ニオブ(三津和化学薬品(株)製、純度99.9%)27.016g(Ti/Nbモル比が0.2に相当)を入れ、30分攪拌して、塩化ニオブを完全に溶解させたニオブ化合物水溶液X4を得た。次に、このニオブ化合物水溶液X4に酸化チタン(アナターゼ型、関東化学(株)製、純度98.5%)1.622gを添加し、30分攪拌した後、pHが8.2になるまでアンモニア水を添加して、チタンニオブ酸化物前駆体を含む懸濁物Y4を得た。得られた懸濁物I4を、ブフナー漏斗で固液分離した後、吸引ろ過を継続したまま100mLの水を漏斗内のケーキにかけて洗浄した。
次いで、得られたケーキを80℃の恒温乾燥機で1時間乾燥し、固形分としてチタンニオブ酸化物前駆体を得た後、得られた前駆体を大気雰囲気下、1000℃で6時間焼成して、チタンニオブ酸化物(Ti2Nb1029)を得た。
その後は、実施例10と同じにして、二次電池用負極活物質R(Ti2Nb1029=100質量%、炭素の量=2.7質量%)を得た。
【0066】
[比較例3]
酸化チタン 0.811g、酸化ニオブ 6.645gを、遊星ボールミル(フリッチュジャパン(株)製P−5)で10分間混合を行い、混合物S(Ti/Nbモル比が0.2に相当)を得た。
得られた混合物Sを、大気雰囲気炉にて1100℃で12時間焼成して、チタンニオブ酸化物Sを得た。得られたチタンニオブ酸化物S 3gに、グルコース 0.240g(負極活物質中における炭素原子換算量で3質量%に相当)、水2g、及びエタノール 8ml添加して遊星ボールミルで15分間混合した後、窒素雰囲気下、700℃で1時間焼成して、二次電池用負極活物質S(Ti2Nb1029:TiO2=87:13、炭素の量=2.7質量%)を得た。
【0067】
[比較例4]
大気雰囲気炉焼成で得られたチタンニオブ酸化物Sを、再び遊星ボールミル処理を同条件で行った後、大気雰囲気炉にて1200℃で12時間焼成して、チタンニオブ酸化物粉末を得た。その後は、比較例3と同様にして、二次電池用負極活物質T(Ti2Nb1029=100質量%、炭素の量=2.7質量%)を得た。
【0068】
《充放電特性の評価》
実施例及び比較例で得られた二次電池用負極活物質、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を質量比85:10:5の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、負極スラリーを調製した。
得られた負極スラリーを厚さ20μmの銅箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80 ℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、負極とした。
次いで、φ15mmに打ち抜いたLi箔を対極とし、電解液としてエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比3:7の割合で混合した混合溶媒にLiPF6を1 mol/Lの濃度で溶解したものを用い、セパレータに高分子多孔フィルム(ポリプロピレン製)を用いて、露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
【0069】
作成した各リチウム二次電池について、気温30℃環境下、充電条件を電流1CA(387mA/g)、電圧3Vの定電流充電とし、放電条件を1CA(387mA/g)、終止電圧1Vの定電流定電圧放電として、0.2CAおよび3CAにおける放電容量を測定(測定装置:北斗電工(株)製 HJ−1001SD8)した。
結果を表1及び表2に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】