特許第6200570号(P6200570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200570
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】機能性化粧板
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/16 20060101AFI20170911BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20170911BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170911BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20170911BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B32B5/16
   B32B9/00 A
   B32B27/00 E
   B32B33/00
   B01J35/02 J
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-224312(P2016-224312)
(22)【出願日】2016年11月17日
(65)【公開番号】特開2017-94732(P2017-94732A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2015-225792(P2015-225792)
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀野 克年
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和紘
(72)【発明者】
【氏名】安江 大孝
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−509806(JP,A)
【文献】 特開2005−248332(JP,A)
【文献】 特開昭63−019202(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0148424(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
E04F 13/00−15/22
D06N 1/00−7/06
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層とからなり、
前記表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)が、明度(L)−白色度(Br)プロット図において(L,Br)=(45.9,27.0)、(94.2,20.0)、(93.9,73.2)の3点を結ぶ線分により囲まれる領域に含まれ、
前記表層樹脂層上に可視光応答型光触媒が存在することを特徴とする機能性化粧板。
【請求項2】
前記表層樹脂層の前記明度(L)及び前記白色度(Br)が、明度(L)−白色度(Br)プロット図において(L,Br)=(45.9,27.0)、(85.2,21.3)、(93.9,73.2)の3点を結ぶ線分により囲まれる領域に含まれる請求項1に記載の機能性化粧板。
【請求項3】
前記表層樹脂層上には、セラミック粒子が露出して配置され、
前記可視光応答型光触媒は、前記セラミック粒子の露出面上に担持されている請求項1又は2に記載の機能性化粧板。
【請求項4】
前記セラミック粒子は、酸化アルミニウム含有粒子である請求項3に記載の機能性化粧板。
【請求項5】
前記表層樹脂層の表面にシリコーン樹脂層又は過酸化チタン層が形成され、前記シリコーン樹脂層又は前記過酸化チタン層上に前記可視光応答型光触媒が担持されている請求項1又は2に記載の機能性化粧板。
【請求項6】
前記表層樹脂層の表面には、耐酸化性樹脂層が形成され、その上に前記可視光応答型光触媒が担持されている請求項1又は2に記載の機能性化粧板。
【請求項7】
前記可視光応答型光触媒は、複数の粒子が凝集した凝集体である請求項1〜6のいずれか1項に記載の機能性化粧板。
【請求項8】
前記可視光応答型光触媒は、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、炭素ドープチタニア触媒、又は、酸化タングステンである請求項1〜7のいずれか1項に記載の機能性化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、メラミン化粧板等の化粧板に、光触媒などの機能性物質を添加もしくは塗布することで、防汚性、抗菌性等の機能性を付与した機能性化粧板が提供されている。
【0003】
特許文献1には、化粧板用の表面紙にシリコーン樹脂含浸表面紙を積層し、熱圧成形後、光触媒コーティング剤を塗布してなる防汚性化粧板が開示されている。
【0004】
特許文献2には、紙の表面に抗菌性金属を担持させたカルシウム系セラミックス焼成物粉末よりなる抗菌剤を添加した不飽和ポリエステル樹脂を塗布することで抗菌性ポリエステル化粧板を得る製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−276117号公報
【特許文献2】特開平07−304619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された化粧板や特許文献2に記載された抗菌性ポリエステル化粧板では、表面近傍に固定化されている機能材が可視化されることによって化粧板の意匠性が損なわれることがあった。そのため、表面近傍に機能性物質を固定化させた機能性化粧板においては、意匠性と機能性の両立が困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、良好な意匠性を保ちつつ、機能性物質の機能を充分に発揮することができる機能性化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の機能性化粧板は、基板と、上記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層とからなり、上記表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)が、明度(L)−白色度(Br)プロット図において(L,Br)=(45.9,27.0)、(94.2,20.0)、(93.9,73.2)の3点を結ぶ線分により囲まれる領域に含まれ、上記表層樹脂層上に機能性物質が存在していることを特徴とする。
【0009】
本発明の機能性化粧板は、表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)が所定の範囲内となるよう調整されているため、機能性物質として、鮮やかさを発現させる可視領域の波長を吸収するような光触媒(例えばTiO)を表層樹脂層上に担持しても、機能性化粧板が白っぽく色あせた印象となること(白化ともいう)を防止できる。
【0010】
本明細書において、表層樹脂層の明度(L)は、JIS Z 8730(2009)に規定されるL表色系における明度Lであり、白色度(Br)はイルミナントD65を用いて測定された白色度(D65白色度ともいう)である。
【0011】
本発明の機能性化粧板では、上記表層樹脂層の上記明度(L)及び上記白色度(Br)が、明度(L)−白色度(Br)プロット図において(L,Br)=(45.9,27.0)、(85.2,21.3)、(93.9,73.2)の3点を結ぶ線分により囲まれる領域に含まれることが望ましい。
【0012】
本発明の機能性化粧板において、上記表層樹脂層上には、セラミック粒子が露出して配置され、上記機能性物質は、上記セラミック粒子の露出面上に担持されていることが望ましい。
機能性物質がセラミック粒子の露出面上に担持されていると、機能性物質は表層樹脂層に直接接触しない。このため、機能性物質による表層樹脂層の劣化を防ぐことができ、表層樹脂層の変色や表層樹脂層の劣化等に起因する機能性物質の脱落を防止することができる。また、機能性物質がセラミック粒子の露出面上に担持されていると、機能性物質の表層樹脂層中への埋没がなく、機能性化粧板表面上に露出されているので、抗菌性、抗ウィルス性等、機能性物質としての本来の機能を発揮することができ、その効果を長期間維持することができる。
【0013】
本発明の機能性化粧板において、セラミック粒子は、機能性物質の等電点よりも高い等電点となる粒子であることが好ましい。ここで等電点とは、溶液の水素イオン濃度を変化させたとき、溶質となる粒子の正と負の電荷が全体としてゼロになり、電場をかけても移動しないような状態で、粒子全体の電荷平均が0となるときの水素イオン指数であり、その値をpHとして表す。この等電点は物質により規定される値であり、その一例として、機能性物質の等電点はpH5〜6であるものが多く、それに対して、セラミック粒子は、機能性物質の等電点よりも高い等電点となるものを用いることができる。特に、セラミック粒子の等電点がpH7以上であることがより望ましい。なお、等電点の測定方法としては、電気泳動法(JIS R1638)により行うことができる。
【0014】
セラミック粒子としては、具体的には、セリウム、ジルコニウム、ストロンチウム、アルミニウム、珪素、鉄、コバルト、銅、クロム、ニッケル、錫、カドミウム、マグネシウム、マンガン、タングステン、バナジウム、イットリウムなどから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属酸化物あるいは金属水和物の粒子、酸化アルミニウム含有粒子、シリカ含有粒子、珪藻土からなるセラミック粒子を用いることができる。また、等電点に関し、アルミナ(Al)の等電点は、pH:7.4〜9.2、ベーマイト(AlOOH)の等電点は、pH7.7〜9.4、カドミウム水酸化物(Cd(OH))の等電点は、pH10.5以上、酸化カドミウム(CdO)の等電点は、pH7.7、鉄水和物(Fe(OH))の等電点は、pH12、酸化鉄(Fe)の等電点は、pH12、酸化銅(CuO)の等電点は、pH9.5、銅水和物(Cu(OH))の等電点は、pH7.7である。これらの成分を複合化し、セラミック粒子としての等電点が、機能性物質の等電点よりも高いことが望ましい。上記したセラミック粒子を構成する化合物のなかでは、特に酸化アルミニウム含有粒子を用いることが望ましい。
【0015】
セラミック粒子は、菌やウィルスを引き寄せやすいという作用を有する。そもそも、菌やウィルスは、タンパク質や脂肪を含んでいるため、アニオン物質であり、アニオン物質は、その対極であるカチオン物質に引き寄せられるという性質を有する。つまり、機能性化粧板の表層に存在する菌やウィルスは、セラミック粒子に引き寄せられ、セラミック粒子に担持された機能性物質により、菌やウィルスを減少させることができ、また、菌やウィルスが増殖しないので、抗菌や抗ウィルスの効果を得やすくなる。
【0016】
また、セラミック粒子は、表層樹脂層上に配置された機能性物質を一定間隔で担持しやすいという性質を有する。このように、セラミック粒子は、機能性物質の担持を一定間隔にさせ、菌やウィルスを引き寄せるという効果があり、抗菌や抗ウィルス効果を向上させることができる。機能性物質に、菌やウィルスが接触すると、機能性物質は、菌やウィルスを全分解させるか、又は、一部を損傷させることができるので、菌やウィルスを減少させることができる。
上記した効果は、セラミック粒子に機能性物質を担持させることにより得られる。
【0017】
本発明の機能性化粧板では、セラミック粒子として、酸化アルミニウム含有粒子を用いることが望ましい。また、セラミック粒子として、具体的には、アルミナ又はアルミン酸ストロンチウムのいずれかからなる粒子を用いることが望ましい。アルミナは、セラミック粒子の中で最も利用しやすい上に、上記で説明した菌やウィルスを減少させる作用を効率的に利用することができる。また、アルミン酸ストロンチウムは、蓄光作用があるので、光がない環境下でも菌やウィルスを減少させる作用を長時間持続させることができる。
【0018】
本発明の機能性化粧板において、上記表層樹脂層の表面にシリコーン樹脂層又は過酸化チタン層が形成され、上記シリコーン樹脂層又は上記過酸化チタン層上に上記機能性物質が担持されていてもよい。
【0019】
本発明の機能性化粧板では、上記表層樹脂層の表面には、耐酸化性樹脂層が形成され、その上に上記機能性物質が担持されていることが好ましい。
耐酸化性樹脂層を構成する材料としては、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上が望ましい。
機能性物質が光触媒である場合に、光触媒の作用によって表層樹脂層が劣化することを防止できるからである。
【0020】
本発明の機能性化粧板において、上記機能性物質は、複数の粒子が凝集した凝集体であることが望ましい。
【0021】
本発明の機能性化粧板において、上記機能性物質は、可視光応答型光触媒であることが望ましい。
【0022】
本発明の機能性化粧板において、上記可視光応答型光触媒は、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、炭素ドープチタニア触媒、又は、酸化タングステンであることが望ましい。特に、可視光応答型光触媒の等電点は、pH5〜6であることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の機能性化粧板では、表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)が所定の範囲内に調整されているため、機能性物質として、鮮やかさを発現させる可視領域の波長を吸収するような光触媒を表層樹脂層上に担持しても、機能性化粧板が白化することを防止できる。そのため、良好な意匠性を保ちつつ、機能性物質の機能を充分に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る機能性化粧板を模式的に示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の機能性化粧板を構成する表層樹脂層がとりうる明度(L)及び白色度(Br)の範囲を模式的に可視化した明度(L)−白色度(Br)プロット図である。
図3図3は、本発明の他の実施形態に係る機能性化粧板を模式的に示す概略断面図である。
図4図4は、本発明の実施例に係る機能性化粧板の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の機能性化粧板について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る機能性化粧板を模式的に示す概略断面図である。
【0026】
本発明の機能性化粧板1は、基板11と基板11の表面上に積層されるメラミン樹脂等からなる表層樹脂層12とからなり、表層樹脂層12の上に機能性物質14が配置された構造を有するものである。
【0027】
本発明の機能性化粧板において、表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)は、明度(L)−白色度(Br)プロット図において(L,Br)=(45.9,27.0)、(94.2,20.0)、(93.9,73.2)の3点を結ぶ線分により囲まれる領域に含まれている。
表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)が上記条件を満たすため、機能性物質として、鮮やかさを発現させる可視領域の波長を吸収するような光触媒(例えばTiO)を表層樹脂層上に担持しても、機能性化粧板が白化することを防止できる。
【0028】
なお、本発明の機能性化粧板における表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)は、表層樹脂層上に機能性物質が存在していない状態の明度(L)及び白色度(Br)である。
【0029】
本発明の機能性化粧板を構成する表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)の関係について図2を用いて説明する。
図2は、本発明の機能性化粧板を構成する表層樹脂層がとりうる明度(L)及び白色度(Br)の範囲を模式的に可視化した明度(L)−白色度(Br)プロット図である。
図2は、明度(L)を横軸に、白色度(Br)を縦軸にプロットする散布図(単にプロット図ともいう)であり、該プロット図中には直線a1−a2、直線b1−b2、直線c1−c2によって、三角形ABCが形成されている。そして、本発明の機能性化粧板を構成する表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)は、当該三角形ABCの中に存在する。
直線a1−a2を示す式はBr=−0.145L+33.70であり、直線b1−b2を示す式はBr=0.960L+16.97であり、直線c1−c2を示す式はBr=−177.3L+16721.66である。三角形ABCの内部(線上を含む)に明度(L)及び白色度(Br)が存在するための条件は、以下の式(1)、式(2)、式(3)を満たすことである。
Br≧−0.145L+33.70 (1)
Br≦0.960L+16.97 (2)
Br≦−177.3L+16721.66 (3)
表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)が上記条件を満たさない場合には、その表面に機能性物質を担持させた場合に、機能性化粧板が白化する傾向がある。
【0030】
本発明の機能性化粧板においては、表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)が明度(L)−白色度(Br)プロットにおいて(L,Br)=(45.9,27.0)、(85.2,21.3)、(93.9,73.2)の3点を結ぶ線分により囲まれる領域に含まれることが望ましい。
【0031】
図2に示すプロット図中には直線a1−a2、直線b1−b2、直線c’1−c’2によって、三角形ABC’が形成されている。そして、本発明の機能性化粧板を構成する表層樹脂層の望ましい明度(L)及び白色度(Br)は、当該三角形ABC’の中に存在する。
直線a1−a2を示す式はBr=−0.145L+33.70であり、直線b1−b2を示す式はBr=0.960L+16.97であり、直線c’1−c’2を示す式はBr=5.89L−480.58である。三角形ABC’の内部(線上を含む)に明度(L)及び白色度(Br)が存在するための条件は、以下の式(1)、式(2)、式(4)を満たすことである。
Br≧−0.145L+33.70 (1)
Br≦0.960L+16.97 (2)
Br≧5.89L−480.58 (4)
【0032】
本発明の機能性化粧板において、表層樹脂層の色度(a)は、特に限定されないが、−10〜+30であることが望ましく、−5〜+25であることがより望ましく、−1〜+20であることがさらに望ましい。
本発明の機能性化粧板において、表層樹脂層の色度(b)は、特に限定されないが、−5〜+40であることが望ましく、0〜+35であることがより望ましく、+3〜+30であることがさらに望ましい。
なお、色度(a)及び色度(b)は、それぞれ、JIS Z 8730(2009)に規定されるL表色系におけるクロマネティクス指数a及びbである[まとめて色度(a,b)ともいう]。
【0033】
本発明の機能性化粧板を構成する表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)を調整する方法は、特に限定されないが、例えば、表層樹脂層を構成するパターン紙として、明度(L)−白色度(Br)プロット図において(L,Br)=(45.9,27.0)、(94.2,20.0)、(93.9,73.2)の3点を結ぶ線分により囲まれる領域に含まれているものを用いる方法が挙げられる。
この場合、表層樹脂層を構成する樹脂として透明なものを用いることで、表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)として、パターン紙の明度(L)及び白色度(Br)をそのまま利用することができる。
【0034】
また、表層樹脂層を構成する樹脂に顔料などを添加することにより着色して、表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)が、明度(L)−白色度(Br)プロット図において(L,Br)=(45.9,27.0)、(94.2,20.0)、(93.9,73.2)の3点を結ぶ線分により囲まれる領域に含まれるように調整してもよい。
【0035】
なお、表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)測定には、測色計(例えばスガ試験機株式会社製 携帯分光測色計 CC−m)を用いることができる。
【0036】
なお、既に表層樹脂層上に機能性物質や後述するセラミック粒子が担持されている機能性化粧板の場合には、表層樹脂層のうち機能性物質が存在していない領域(φ4mm以上の領域であることが望ましい)を探し出し、当該領域の明度(L)及び白色度(Br)を測色計で測定することにより、機能性物質が存在していない表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)を測定することができる。
また、表層樹脂層上に存在する機能性物質及びセラミック粒子等をブラスト、エッチング、研磨などの手段によって除去した後に、表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)を測定してもよい。
また、表層樹脂層上にシリコーン樹脂層又は過酸化チタン層が形成されている場合、シリコーン樹脂層又は過酸化チタン層上から測定した明度(L)及び白色度(Br)を表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)とする。
本発明において明度(L)および白色度(Br)を調整する方法としては、(1)表層樹脂層を構成する樹脂の明度、白色度を調整する方法、(2)表層樹脂層が樹脂含浸紙である場合は、樹脂を含浸させる前の紙に所望の明度、白色度の染料インク、顔料インクをスクリーン印刷やグラビア印刷などで印刷するか、樹脂を含侵させる紙に顔料(酸化チタン、炭酸カルシウム、亜鉛華、黄鉛など)を抄き込んで所望の明度、白色度に調整する方法、(3)耐酸化性樹脂層を形成する場合は、耐酸化性樹脂層の明度、白色度を調整する方法、(4)表層樹脂層上にセラミック粒子や過酸化チタンを固定する場合は、セラミック粒子や過酸化チタンの担持量や担持密度を調整する方法、などがある。
【0037】
本発明の機能性化粧板に使用する基板は、特に限定されるものではなく、一般的に機能性化粧板に使用されるコア紙やマグネシアセメント等の不燃基材等を使用することができる。コア紙は単独でもよく複数枚のコア紙を積層した積層体としてもよい。コア紙の枚数は特に限定されないが、1〜20枚とすることができる。コア紙としては、例えば、水酸化アルミニウム抄造紙を使用することができる。コア紙には、フェノール樹脂を含浸させることができる。また、コア紙とマグネシアセメント不燃基材を積層させて基板とすることもできる。
【0038】
マグネシアセメント不燃基材は、単独で使用することにより、又は、コア紙の中心部に積層して配置させることにより基板を構成することができる。マグネシアセメント不燃基材は、酸化マグネシウム(MgO)と塩化マグネシウム(MgCl)を混合し、さらに骨材と水を加えて混練し、板状に成形することにより製造されるものである。骨材としては、ロックウール、グラスウール等の無機質繊維、ウッドチップ、パルプ等の有機質繊維を用いることができる。また、マグネシアセメント不燃基材の強度を高めるため、中間層として網目状等に形成されたガラス繊維層を設けることができる。
【0039】
複数又は単数のコア紙及び/又はマグネシアセメント不燃基材からなる基板表面上に表層樹脂層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法で行うことができる。例えば、基板の片面又は両面にメラミン樹脂含浸紙を積層し、熱圧成形する方法を用いることができる。上記方法を用いると、メラミン樹脂含浸紙のメラミン樹脂がコア紙に浸透し、そこで硬化反応が進行して、コア紙に対するメラミン樹脂含浸紙の接着力が発現する。
また、本発明の機能性化粧板を構成する表層樹脂層に用いることができる樹脂としては、メラミン樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、グアナミン樹脂などが挙げられる。これらの中では、メラミン樹脂を用いることが望ましい。
【0040】
メラミン樹脂は、透光性などの光学的、視覚的特性を損なうことなく、寸法安定性や靭性を改善した樹脂である。メラミン樹脂としては、メラミン及びその誘導体をモノマーとする樹脂であれば公知のものを採用することができる。また、メラミン樹脂は、単一のモノマーからなる樹脂であってもよく、複数のモノマーからなる共重合体であってもよい。メラミンの誘導体としては、例えば、イミノ基やメチロール基、メトキシメチル基、ブトキシメチル基等のアルコキシメチル基などの官能基を有する誘導体が挙げられる。また、メチロール基を有するメラミン誘導体に低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物をモノマーとして用いることができる。モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロール基を有する誘導体(以下、「メチロール化メラミン」という。)を架橋剤としてメラミンと共重合させてなるメラミン樹脂を用いることができる。
【0041】
メラミン樹脂含浸紙は、パターン紙にメラミン樹脂を所定の含浸率で含浸させた後、加熱、乾燥させることにより作製される。メラミン樹脂をパターン紙に含浸させるには、溶媒として、例えば、ホルムアルデヒド水溶液を使用したメラミン樹脂含有溶液中にパターン紙を浸漬することにより行うことができる。また、メラミン樹脂含浸紙に曲げ加工性を付与するために、メラミン樹脂と共に可塑剤を含む溶液を含浸させることができる。可塑剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、アセトグアナミン、パラトルエンスルフォン酸アミド、尿素等を使用することができる。パターン紙としては、例えばチタン紙が用いられる。パターン紙の坪量は、パターン紙の厚みや重さを考慮して80〜150g/mとすることができる。加熱、乾燥の温度は、パターン紙にメラミン樹脂を強固に固着させるために100〜150℃に設定することができる。
【0042】
本発明の機能性化粧板において、表層樹脂層上には、セラミック粒子が露出して配置され、機能性物質は、セラミック粒子の露出面上に担持されていることが望ましい。
【0043】
表層樹脂層上にセラミック粒子が露出して配置されている場合の表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)とは、表層樹脂層上に露出して配置されたセラミック粒子の露出面に機能性物質が担持されていない状態の、表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)である。
表層樹脂層上にセラミック粒子が露出して配置されている場合、セラミック粒子の粒子径や表層樹脂層上に配置するセラミック粒子の量等を変更することによっても、表層樹脂層の明度(L)及び白色度(Br)を調整することができる。
【0044】
機能性物質がセラミック粒子の露出面上に担持されていると、機能性物質は表層樹脂層に直接接触しない。このため、機能性物質による表層樹脂層の劣化を防ぐことができ、表層樹脂層の変色や表層樹脂層の劣化等に起因する機能性物質の脱落を防止することができる。また、機能性物質がセラミック粒子の露出面上に担持されていると、機能性物質の表層樹脂層中への埋没がなく、機能性化粧板表面上に露出されているので、抗菌性、抗ウィルス性等、機能性物質としての本来の機能を発揮することができ、その効果を長期間維持することができる。
セラミック粒子としては、機能性物質の等電点より高い等電点を有し、機能性物質を担持することができる粒子であれば特に限定されないが、酸化アルミニウム含有粒子であることが望ましい。セラミック粒子としては、具体的には、アルミナ又はアルミン酸ストロンチウムのいずれかからなる粒子を用いることが望ましい。
【0045】
図3は、本発明の他の実施形態に係る機能性化粧板を模式的に示す概略断面図である。
図3に示す機能性化粧板2は、基板11と基板11の表面上に積層されるメラミン樹脂等からなる表層樹脂層12を有し、セラミック粒子15が表層樹脂層12上に露出して配置され、機能性物質14がセラミック粒子15の露出面上に担持された構造を有するものである。
【0046】
本発明の機能性化粧板において、セラミック粒子の平均粒子径は0.1〜55μmであることが望ましく、0.5〜5μmであることがより望ましい。セラミック粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、セラミック粒子が表層樹脂層に埋まり易くなり、機能性物質がセラミック粒子に担持されにくくなる傾向にあり、セラミック粒子の平均粒子径が55μmを超えると、セラミック粒子が脱落したり、表層樹脂層に凹凸が形成されたりするため、機能性化粧板の外観及び意匠性に不具合が生じる傾向にある。セラミック粒子の平均粒子径が0.5〜5μmであると、機能性物質としての機能性が発揮されて、機能性化粧板の外観及び意匠性においても問題とならない。
【0047】
本発明の機能性化粧板において、上記セラミック粒子は、上記表層樹脂層表面に対して5〜30%の面積率で露出して存在することが望ましい。
セラミック粒子が、表層樹脂層表面に対して5%以上の面積率で露出していると、機能性物質を充分に担持させることができるため、菌やウィルスを減少させる作用を充分に発揮させることができる。また、セラミック粒子が、表層樹脂層表面に対して30%以下の面積率で露出していると、機能性物質を担持するセラミック粒子が表層樹脂層に強固に接合され脱落しにくくなるため、菌やウィルスを減少させる作用を充分に持続させることができる。
図3を用いて、セラミック粒子の露出部の面積率の算定の基礎となる面積部を説明する。
本発明の機能性化粧板おける面積率とは、図3における表層樹脂層全体の表面積Dに対する、その上にセラミック粒子15が露出して存在する表層樹脂層の合計の表面積Eの割合を意味する。セラミック粒子が、上記表層樹脂層表面に対して面積率で5%未満しか露出しないと、機能性物質の機能性が充分に発揮できない傾向にある。
【0048】
本発明の機能性化粧板において、機能性物質は、抗菌性、抗ウィルス性、抗アレルゲン性、消臭性等の機能を有する機能材であることが望ましい。例えば、抗菌性、抗ウィルス性の機能性物質としては、可視光応答型光触媒が挙げられる。この可視光応答型光触媒の具体例としては、例えば、酸化チタンに白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族、鉄、銅などを担持させたものなどが挙げられる。
本発明の機能性化粧板において、可視光応答型光触媒は、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、炭素ドープチタニア触媒、又は、酸化タングステンであることが望ましく、銅担持チタニア触媒であることがより望ましい。銅担持チタニア触媒としては、例えば、特開2006−232729号公報に記載されたCuO/TiO(重量%比)=1.0〜3.5の範囲で銅を含有するアナターゼ型酸化チタン、特開2012−210557号公報に記載された亜酸化銅(酸化銅(I):CuO)と酸化チタンとが複合化した光触媒組成物、特開2013−166705号公報に記載された一価銅化合物及び二価銅化合物を含む混合物を表面に担持した酸化チタン、並びに、国際公開第2013/094573号に記載された結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有する銅及びチタン含有組成物などが挙げられる。
【0049】
本発明の機能性化粧板においては、機能性物質の一次粒子が凝集した凝集体が表層樹脂層上に担持されていることが望ましい。機能性物質の一次粒子が凝集した凝集体が表層樹脂層上に担持されていると、細菌やウィルスが機能性物質の一次粒子間にトラップされるため、細菌やウィルスを失活させやすい。特に、飛沫細菌やウィルスを含む気流、液流などの流体が機能性化粧板の表面に接触する場合には、これらの飛沫細菌やウィルスは、運動エネルギーを持っているため、機能性物質と充分に反応する前に、化粧板表面から離脱してしまうが、機能性物質の一次粒子が凝集した凝集体が表層樹脂層上に担持されている機能性化粧板では、機能性物質の凝集体が表層樹脂層上に担持されているため、機能性物質の一次粒子間に細菌やウィルス等をトラップして、充分な反応時間を確保でき、機能性物質の一次粒子が単独で表層樹脂層上に担持されている場合に比べて、抗菌、抗ウィルス効果に優れる。
さらに、機能性物質として光触媒(酸化チタン)を用いた場合は、当該光触媒の凝集体は親水性であり、細菌やウィルスを含む水等の液体が、毛管現象により光触媒粒子の隙間に吸い込まれやすくなるため、液中の細菌やウィルスを確実に失活させることができる。
また、機能性物質を凝集させておくことで、機能を低下させることなく、白化を抑制しやすくなる。このため、機能性物質の量を増やしたり、機能性物質担持層の厚さを厚くしたりしても、白化を防止できる。
一次粒子の平均粒子径は、10nm〜200nmが望ましい。一次粒子が凝集した凝集体の平均粒子径は、50nm〜2000nmが望ましく、50nm〜1000nmが最適である。凝集粒子の平均粒子径が大きくなりすぎると、光触媒の表面に充分に酸素や水が接触せず、光触媒表面に酸素ラジカルなどの活性種が発生しにくくなると考えられるからである。また、凝集粒子の平均粒子径が小さすぎてもウィルスのトラップ効果や白化抑制効果が低下してしまうと考えられるからである。
平均粒子径は、電子顕微鏡で撮影した画像から任意の10点の一次粒子もしくは凝集粒子の粒子径(直径)を測定し、平均値を求める。
【0050】
本発明の機能性化粧板において、機能性物質の担持量(存在量)は、0.01〜2.20g/mであることが望ましく、0.03〜2.20g/mであることがより望ましい。機能性物質が凝集体の場合は、担持量が2.20g/m以下であれば、白化は生じない。また、0.01g/m以上であればウィルスを失活させることができ、0.03g/m以上であればインフルエンザウィルスやノロウィルスなどのウィルスを失活させることができる。
機能性物質の担持量は、0.03〜0.21g/mであることがより望ましい。機能性物質を凝集させなくてもこの範囲であれば、インフルエンザウィルスやノロウィルスなどのウィルスを失活させることができ、かつ白化を防止できるからである。
なお、表層樹脂層上に存在する機能性物質の量(存在量)は、熱濃硫酸および溶解アルカリ塩などを用いて、機能性化粧板の表面から機能性物質を溶出させ、得られた溶出液を用いて、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光法で分析することにより算出できる。
【0051】
本発明の機能性化粧板においては、無機ゾルの乾燥体を介して機能性物質がセラミック粒子上に担持されていることが望ましい。無機ゾルの乾燥体を介して機能性物質を固定化することにより、機能性物質をより強固に固定化することができる。無機ゾルとしては、シリカゾル、アルミナゾル、シリカ−アルミナゾル、チタニアゾル等を用いることができ、中でもシリカゾルを用いることが望ましい。シリカゾルを用いることにより、機能性物質とセラミック粒子との密着性を向上させることができ、機能性物質の脱落が抑制され、機能性が維持される。
【0052】
本発明の機能性化粧板において、表層樹脂層は、シリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有していてもよい。シリコーン樹脂としては、例えば、シリコーンレジン、変性シリコーンオイル等を用いることができる。変性シリコーンオイルとしては、分子内に1個以上の官能基を有するシリコーンオイルを用いることができる。官能基を導入する位置は特に限定されず、ポリシロキサン主鎖の片末端、両末端あるいは側鎖のいずれの位置に導入してもよい。また、官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、メトキシ基、ヒドラジノ基、エポキシ基、メタクリル基、カルボキシル基、カルビノール基等を導入することができる。
【0053】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基といった官能基を持ったものが望ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、ジアリルジメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
本発明の機能性化粧板では、表層樹脂層の表面にシリコーン樹脂層又は過酸化チタン層が形成され、そのシリコーン樹脂層又は過酸化チタン層上に機能性物質が担持されていてもよい。上記機能性物質は、複数の粒子が凝集した凝集体であることがより望ましい。
表層樹脂層の表面にシリコーン樹脂層又は過酸化チタン層が形成されていると、セラミック粒子を設けた場合と同様に、機能性物質は表層樹脂層に直接接触しない。このため、機能性物質による表層樹脂層の劣化を防ぐことができ、表層樹脂層の変色や表層樹脂層の劣化等に起因する機能性物質の脱落を防止することができる。
【0055】
本発明の機能性化粧板において、シリコーン樹脂層を構成するシリコーン樹脂としては、表層樹脂層に含有されるシリコーン樹脂と同じものを用いることができる。
本発明の機能性化粧板において、シリコーン樹脂層の厚さは、50〜1000μmであることが望ましく、100〜500μmであることがより望ましい。シリコーン樹脂層の厚さを上記範囲とすることにより、表層樹脂層上に機能性物質を密着することができ、機能性物質の特性が充分に発揮される。
【0056】
本発明の機能性化粧板において、過酸化チタン層を構成する過酸化チタンは、アモルファス型過酸化チタンであることが望ましい。アモルファス型過酸化チタンは、常温ではアモルファスの状態でアナターゼ型酸化チタンには結晶化していない。アモルファス型過酸化チタンを含むゾルを用いて過酸化チタン層を形成する場合、密着性に優れ、成膜性が高く、均一で平坦な薄膜を作製することができ、かつ、乾燥後の被膜は水に溶けないという優れた性質を有している。
【0057】
本発明の機能性化粧板において、過酸化チタン層の厚さは、0.1〜500μmであることが望ましい。過酸化チタン層の厚さを上記範囲とすることにより、表層樹脂層上に機能性物質を密着させることができ、機能性物質の特性が充分に発揮される。特に、過酸化チタン層の厚さが0.2μm〜200μmであることが密着性の観点から最適である。
【0058】
本発明の機能性化粧板では、上記表層樹脂層の表面には、耐酸化性樹脂層が形成され、その上に上記機能性物質が担持されていることが好ましい。
耐酸化性樹脂層を構成する材料としては、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1種以上が望ましい。
機能性物質が光触媒である場合に、光触媒の作用によって表層樹脂層が劣化することを防止できるからである。
【0059】
次に、本発明の機能性化粧板の製造方法について説明する。
最初に、複数又は単数のコア紙及び/又はマグネシアセメント不燃基材等からなる基板表面上に表層樹脂層を形成する。上記基板やその製造方法、上記表層樹脂層については、本発明の機能性化粧板の説明において説明したので、ここでは省略する。
【0060】
本発明の機能性化粧板においても説明したが、基板表面上に表層樹脂層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法で行うことができる。具体的な表層樹脂層の形成方法としては、例えば、コア紙の積層体からなる基板の片面又は両面にメラミン樹脂等の樹脂含浸紙を積層する積層工程と、メラミン樹脂等の樹脂含浸紙が積層された基板を熱圧成形する熱圧成形工程を含む方法が挙げられる。上記方法を用いると、メラミン樹脂含浸紙のメラミン樹脂がコア紙に浸透し、そこで硬化反応が進行して、コア紙に対するメラミン樹脂含浸紙の接着力が発現する。
このとき、表層樹脂層を構成する紙のうち最も外側に配置されるものの明度(L)及び白色度(Br)が、明度(L)−白色度(Br)プロットにおいて(L,Br)=(45.9,27.0)、(85.2,21.3)、(93.9,73.2)の3点を結ぶ線分により囲まれる領域に含まれるようにすることが望ましい。
【0061】
熱圧成形する際の加熱条件としては、機能性化粧板の温度を125〜150℃とすることができ、加圧条件としては、1.96〜9.80MPa(20〜100kg/cm)とすることができる。温度が125℃未満の場合又は圧力が1.96MPa未満の場合には、基板に対する樹脂含浸紙の密着性が不足し、剥離が発生しやすくなる。一方、温度が150℃を超える場合又は圧力が9.80MPaを超える場合には、亀裂が発生するおそれがある。
【0062】
表層樹脂層表面に、セラミック粒子を固定する方法としては、例えば、セラミック粒子を含むスプレー液を表層樹脂層表面に吹き付け、乾燥後、熱圧着する方法をとることができる。上記方法により、樹脂表面上にセラミック粒子を露出して固定させることができる。上記工程の後、セラミック粒子が配置された基板を、機能性物質を含む溶液中に浸漬することにより、機能性物質をセラミック粒子の露出面上に担持させることができる。機能性物質を含む溶液を、セラミック粒子が配置された表層樹脂層上に塗布することにより、機能性物質をセラミック粒子の露出面上に担持させてもよい。
【0063】
本発明の機能性化粧板の製造方法においては、セラミック粒子を表層樹脂層表面に熱圧着する際、セラミック粒子吹き付け面と熱圧着プレス面との間にポリエチレンテレフタレート(PET)からなる離形クッション材を介在させて行うことができる。これによって、セラミック粒子が表層樹脂層内に埋没するのを防止することができ、表層樹脂層の表面上に露出して固定することができる。
【0064】
本発明の機能性化粧板の他の製造方法としては、転写フィルムにセラミック粒子を含むスプレー液を吹き付け、次いで、表層樹脂層を有する基板の樹脂表面に、転写フィルムのセラミック粒子付着面を対向させて、セラミック粒子を熱転写する方法が挙げられる。また、樹脂フィルムの表面を粗化し、この粗化面にセラミック粒子を担持した後、セラミック粒子の担持面がメラミン樹脂等の樹脂含浸紙に接するように当該樹脂フィルムを積層し、加熱加圧して樹脂を硬化させた後、樹脂フィルムを除去することでセラミック粒子を表層樹脂層に転写することが望ましい。樹脂フィルムの表面は、コロナ放電、サンドブラスト、スクラッチ処理から選ばれる少なくとも1種以上の方法で粗化されることが望ましい。
樹脂フィルムの粗化面は、JIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.05〜50μmであることが望ましく、0.1〜10μmが好適である。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種以上の材質が望ましい。
【0065】
表層樹脂層にシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有させる際には、メラミン樹脂溶液中に、シリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含ませることによって、表層樹脂層にシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含浸する方法を用いることができる。
【0066】
表層樹脂層にシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有させることで、セラミック粒子を埋没させずに固定化させることができる。さらに、菌やウィルスなどを含む汚染水が親水性のセラミック粒子や機能性物質に引き寄せられやすくなり、機能性が発現しやすくなる。特に、表層樹脂層にメラミン樹脂を用いた場合には、上記の作用、効果を得やすい。
【0067】
また、機能性物質を無機ゾルの乾燥体でセラミック粒子の表層に固定化する方法としては、表層樹脂層上にセラミック粒子が固定化された基板を、機能性物質及び無機ゾルを含む溶液中に含浸し、乾燥させる方法や、機能性物質及び無機ゾルを含む溶液をセラミック粒子が固定化された表層樹脂上に塗布し、乾燥する方法などが挙げられる。
無機ゾルの乾燥体を介して機能性物質をセラミック粒子上に担持することにより、機能性物質の固定化を補強することができる。無機ゾルとしてはシリカゾル、アルミナゾル、シリカ−アルミナゾル、チタニアゾル等を用いることができ、シリカゾルを用いることが望ましい。
【0068】
機能性物質を凝集させるために、機能性物質を含む溶液には、凝集剤を含んでいてもよい。凝集剤により、コロイド状の機能性物質を凝集させることができるからである。凝集剤としては、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(Aldrich Chemical Company,Inc製)及びアニオン性ポリアクリルアミド(ハイホルダー351 栗田工業株式会社製)などを使用することができる。
また、凝集剤を使用しなくても、前述したセラミック粒子の隙間に機能性物質の溶液が溜まり、これが乾燥することでセラミック粒子の隙間に機能性物質が凝集担持されていてもよい。
【0069】
シリコーン樹脂層を表層樹脂層上に形成する方法としては、例えば、シリコーン樹脂を含むゾル溶液等を表層樹脂層上に塗布し、乾燥させる方法や、シリコーン樹脂シートを表層樹脂層上に貼り付ける方法等が挙げられる。シリコーン樹脂シートを表層樹脂層上に貼り付ける方法としては、例えば、まず、シリコーン樹脂を含むゾル溶液等を平滑なガラス板上に塗布し、乾燥させた後、乾燥体であるシリコーン樹脂シートをガラス板から剥離させて表層樹脂層上に貼り付ける方法等が挙げられる。なお、シリコーン樹脂シートを得るとき、ゾル溶液を塗布する前のガラス板に剥離剤を塗布しておいてもよい。
【0070】
過酸化チタン層は、例えば、過酸化チタンを含むゾルを表層樹脂層上に塗布または吹き付け、250℃未満で乾燥固化させることにより形成することができる。過酸化チタンを含むゾルがバインダとして機能するため、過酸化チタン層を介して、機能性物質を表層樹脂層上に強固に固定化することができる。その結果、機能性物質の脱落を防止することができる。
また、本発明の機能性化粧板の製造方法においては、酸化アルミニウムの表層にシリカゾルなどの無機バインダを介して光触媒を結合させることができるが、光触媒と無機バインダの混合液をスプレーにて吹き付け、無機バインダを乾燥、硬化させた後、アルコールなどの洗浄液を吹き付けて酸化アルミニウム以外の表層樹脂層に付着した光触媒を除去することができる。光触媒や無機バインダは樹脂表面とは密着しないため、アルコールなどで簡単に除去することができる。また、アルコールを染み込ませたマイクロファイバークロスなどの布などで光触媒をふき取ってもよい。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
(一次メラミン含浸工程)
所定の色彩が印刷された厚さ0.2〜0.3mmのロール紙を、メラミン樹脂溶液中に浸漬させた。溶液の温度20℃、浸漬時間2分となるように、ロール紙を溶液中に浸漬しながら通過させることにより、ロール紙にメラミン樹脂を含浸させた。なお、ロール紙の移動速度は、10〜20cm/秒であった。
(乾燥工程)
メラミン樹脂溶液中を通過したロール紙は、乾燥機(ESPEC社製、OVEN PH−201)により、温度100℃、乾燥時間30秒となるように乾燥させた。
【0072】
(二次メラミン含浸工程)
乾燥工程を経たロール紙を、メラミン樹脂溶液中に浸漬させた。溶液の温度20℃、浸漬時間30分となるように、ロール紙を溶液中に浸漬しながら通過させることにより、メラミン樹脂をロール紙に含浸させた。なお、ロール紙の移動速度は、10〜20cm/秒であった。
(乾燥・切断工程)
メラミン溶液中を通過したロール紙は、乾燥機(ESPEC社製、OVEN PH−201)により、温度100℃、乾燥時間2時間となるように乾燥させた。乾燥後、910mm×1820mmに切断した。
【0073】
(アルミナ粒子スプレー工程)
平均粒子径0.5μmのγアルミナ粒子とエタノールからなるスプレー液を調製した。スプレー液を常温でスプレーに充填させて、切断したメラミン樹脂含浸紙に吹き付けた。
(乾燥工程)
アルミナ粒子を吹き付けたメラミン樹脂含浸紙を乾燥機(ESPEC社製、OVEN PH−201)により、温度110℃、乾燥時間2分となるように乾燥させた。
【0074】
(組合せ工程)
厚み0.3〜0.4mmのフェノール樹脂含浸コア紙を4枚積層し、その上に、上記工程により得られたアルミナ粒子を吹き付けたメラミン樹脂含浸紙をアルミナ粒子吹き付け面が外面となるように積層し、プレス機のプレス面とメラミン樹脂含浸紙のアルミナ粒子吹き付け面との間にPETからなる離形クッション材を介在させて、温度143℃、プレス圧80kg/cm、プレス時間(昇温時間を含む)50分で熱圧着した。これにより、メラミン樹脂含浸層上にアルミナ粒子が露出して固定された表層樹脂層が得られた。
【0075】
(明度及び白色度の測定)
得られる表層樹脂層の明度(L)、白色度(Br)及び色度(a,b)を、スガ試験機株式会社製 携帯分光測色計 CC−mを用いて測定した。測定結果を表1に示す。
【0076】
(光触媒担持工程)
平均粒子径100nmのCuO−TiOの光触媒を水に分散したスラリー(固形分濃度25重量%)と、シリカゾル(SiO濃度:3重量%)とを、4.5:5.5の重量割合(固形分重量)で含むメタノール混合溶液(光触媒濃度0.05重量%)を調製した。上記工程で得られたアルミナ粒子が表面に露出して配置されたメラミン樹脂含浸層を表面に有する化粧板に、スプレーを用いて上記メタノール混合溶液を塗布し、25℃で12時間乾燥させることにより、シリカゾルの乾燥体を介してアルミナ粒子上に上記光触媒が担持された機能性化粧板の製造を完了した。
機能性化粧板に担持された光触媒の固形分重量は、0.11g/mであった。
【0077】
(実施例2〜実施例10、比較例1〜比較例5)
(一次メラミン含浸工程)で用いるロール紙に印刷する色彩を変更して明度(L)、白色度(Br)及び色度(a,b)を適宜変更するほかは、実施例1と同様の手順で機能性化粧板の製造を完了する。明度(L)、白色度(Br)及び色度(a,b)の値を表1に示す。なお、光触媒の固形分重量は、0.11g/mである。
実施例1〜10及び比較例1〜5は同じ条件で光触媒を担持させており、実施例1の光触媒の担持量の測定結果を、各実施例及び各比較例の担持量とする。
【0078】
(外観の評価)
実施例1〜実施例10及び比較例1〜比較例5の機能性化粧板について、その外観を目視で観察し、意匠性が損なわれていないかどうかを下記の基準で判断する。結果を表1及び図2に示す。
○:白化が確認されず、意匠性が損なわれていない。
△:若干の白化が確認されるが、意匠性が損なわれていない。
×:白化が確認されるため、意匠性が損なわれている。
図2にプロットされた各実施例及び比較例に係る点のうち、上記白色度度合いの評価で白化が確認できなかったものを○、白化が確認されたものを×として示している。
なお、図2に示すグラフ中の○で示す点は、実施例1〜10の明度(L)及び白色度(Br)をプロットした点であり、×で示す点は、比較例1〜5の明度(L)及び白色度(Br)をプロットした点である。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から、実施例1〜実施例10に係る機能性化粧板では、意匠性を損なうことなく充分な量の機能性物質を担持させることができることがわかった。
【0081】
(機能性物質の凝集による白化抑制の確認)
(実施例11〜20)
(一次メラミン含浸工程)〜(組合せ工程)までを実施例1〜10と同様に行って得られる、メラミン樹脂含浸層上にアルミナ粒子が露出して固定された表層樹脂層を持つ化粧板に、次の組成の光触媒溶液を用いて光触媒を担持させる。
平均粒子径100nmのCuO−TiOの光触媒を凝集剤であるポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを0.05重量%含む水に分散したスラリー(固形分濃度:25重量%)と、シリカゾル(SiO濃度:3重量%)とを、4.5:5.5の重量割合(固形分重量)で含むメタノール混合溶液(光触媒濃度0.05重量%)を調製する。
上記工程で得られるアルミナ粒子が表面に露出して配置されたメラミン樹脂含浸層を表面に有する化粧板に、スプレーを用いて上記メタノール混合溶液を塗布し、25℃で12時間乾燥させることにより、アルミナ粒子上に上記光触媒の凝集体が担持される。このスプレー工程を20回繰り返して機能性化粧板の製造を完了する。機能性化粧板に担持された光触媒の固形分重量は、2.20g/mである。
実施例11〜実施例20の機能性化粧板について、実施例1〜実施例10の機能性化粧板と同様の基準で外観を評価すると、白化は確認されない。
また実施例11の機能性化粧板について、倍率2万倍での走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。図4では、直径100nm程度の機能性物質が凝集していることが確認できる。
【0082】
(試験例1〜10)
(一次メラミン含浸工程)〜(組合せ工程)までを実施例1〜10と同様に行って得られる、メラミン樹脂含浸層上にアルミナ粒子が露出して固定された表層樹脂層を持つ化粧板に、実施例1の光触媒溶液を用いて光触媒を担持させる。光触媒溶液を実施例1と同じ条件で20回塗布する。光触媒は凝集しておらず、一次粒子が分散した状態で担持される。機能性化粧板に担持された光触媒の固形分重量は、2.20g/mである。
試験例1〜試験例10の機能性化粧板について、実施例1〜実施例10の機能性化粧板と同様の基準で外観を評価すると、若干の白化が確認されるが意匠性を損なわないものである。
【0083】
実施例11〜20及び試験例1〜10について、明度(L)、白色度(Br)及び色度(a,b)の値を表2に示す。なお、実施例11〜20及び試験例1〜10の光触媒の担持量は、実施例1の担持工程を20回繰り返しているので、実施例1の20倍とする。
【0084】
【表2】
【0085】
(実施例21〜30)
実施例11〜20と同様であるが、スプレー工程を2回繰り返して乾燥硬化させた後、エタノールを染み込ませた布で余剰の光触媒のふき取りを行い、機能性化粧板の製造を完了する。機能性化粧板に担持された光触媒の固形分重量は、0.21g/mである。
実施例11〜20で使用した化粧板と同じ化粧板であるため、明度(L)、白色度(Br)及び色度(a,b)の値は、実施例11〜20とそれぞれ同じ値である。白化について実施例1〜実施例10の機能性化粧板と同様の基準で外観を評価すると、白化は確認されない。
本発明の明度(L)、白色度(Br)の範囲では、当然ながら、実施例11〜20よりも低密度で光触媒を担持させた場合であっても白化は生じないのである。
【0086】
表2に示すように、光触媒の担持量が多い場合には、光触媒を凝集させて担持させることで、白化防止効果が期待できる。
【符号の説明】
【0087】
1、2 機能性化粧板
11 基板
12 表層樹脂層
14 機能性物質
15 セラミック粒子
D 表層樹脂層全体の表面積
E セラミック粒子が露出して存在する表層樹脂層の合計の表面積
図1
図2
図3
図4