(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
医療の分野においては、医用画像処理装置の表示部に表示された医用画像上の注目領域(臓器や病変等)をソフトウェアにより自動抽出し、抽出された領域の面積や体積を計測ないし解析し、それらの計測データないし解析データを診断や手術のための補助情報として利用する機会が増えている。
一例として、従来の肺気腫の診断においては、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン」に基づき肺気腫の領域と肺の正常な領域の比率を定量的に評価することが望ましい旨述べられている。これにより、肺気腫の症状を診断するシステムは、CT断層画像のCT値により肺領域内の肺気腫部と正常部とを選別し、肺気腫領域と正常領域との面積比率を算出して肺気腫の症状を評価していた。さらに、その評価値を参考データとして医師による肺気腫の症状診断が行われていた。
【0003】
従来の肺気腫の症状診断システムの基本動作は、
図8を参照して説明するとおよそ次のようなものである。
【0004】
図8のステップS801において解析処理を開始すると、ステップS802へ進み、肺領域の例えば1枚分(1レイヤ分)のCT画像データをシステム内のメモリに読み込む。CT画像データは画素データの集まりであり、個々の画素データは濃淡(画像濃度)を表わす値である。ただし、このデータは単純に輝度や明るさに対応するものではなく、「CT値」と呼ばれる医用画像値の一種である。例示的にCT値の概要を説明すると、この値は−1000〜+1000程度までの値をとる放射線による透過度を表わす値として位置付けられる。単位は一実施形態においてHU(ハンスフィールドユニット)である。そして、CT値が−1000(最低値)の場合は透過率100%の空気の状態に対応付けられCT画像上では真っ黒になるように表現される(コンピュータ上の画素値に対応付けられる)。そして、CT値がゼロ(原点)の場合は水の状態に対応付けられ、CT値が1以上の高い数値の場合は骨など固いものに対応付けられることとなる。一実施形態において、CT装置を使用する場合には、水がCT値ゼロとなり、空気がCT値マイナス1000となるように較正される。このようなCT値は、CT画像を構成する分布値とも言える。
【0005】
そして、ステップS803では、CT画像においてCT値に基づく肺野領域の抽出処理が行われる。一実施形態において、CT値が−600以下(未満)の画像領域が肺野領域とされる。次に、ステップS804へ進み、CT画像においてCT値に基づく肺気腫領域の抽出処理が行われる(肺気腫領域は病変領域の一例である)。一実施形態において、CT値が−960以下(未満)の画像領域が肺気腫領域とされる。
【0006】
次に、ステップS805へ進み、前ステップまでで抽出された肺野領域及び肺気腫領域から肺野領域における肺気腫領域の割合算出が行われる。この算出は面積や体積、それらの分布等の種々の観点から算出が行われる。また、肺野領域にあっても上肺・中肺・下肺といった構造ごとの算出も可能である(その他、右肺について上葉・中葉・下葉、左肺について上葉・下葉といった区分ごとの算出等の種々の区分・区域についての算出も可能である)。
【0007】
ステップS806では、前ステップまでで算出された情報に基づき色分け等の視覚的な処理を行ってシステムのディスプレイに表示させる。ステップS807では、全レイヤについての処理が完了したかどうかが判断され、Noの場合はステップS808へ進み次のレイヤへのインクリメント処理を行ってステップS802へ復帰するがYesの場合はステップS809へ進み処理を終了する。
【0008】
なお、ステップS806の処理は、例示的にステップS805とステップS807との間で実行したが、全レイヤの処理の完了後(つまり、ステップS807においてYesとなった直後)に実行されても良い。
【0009】
上述のような従来の実施状況を踏まえ、肺気腫の進行度を医師等が直感的に分かりやすく診断できるように表示等の支援をする医用画像診断支援方法等が提案されている(特許文献1)。
【0010】
すわなち、特許文献1には、全肺野領域を含む断層像から肺気腫領域を抽出するステップと、前記抽出した肺気腫領域に基づいて肺気腫の進行度を検出するステップと、前記断層像に基づいて全肺野領域内の肺気腫領域を表示する際に、前記検出した肺気腫の進行度に応じて前記肺気腫領域の色を変えて表示するステップと、を含むことを特徴とする医用画像診断支援方法等が開示されている。
【0011】
また、分枝構造と周辺構造とからなる被検体内構造物を表す3次元医用画像を用いた画像診断を行う際に、異常領域に対して必要十分な範囲の処置対象の領域を特定可能にする医用画像診断支援装置等が提案されている(特許文献2)。
【0012】
すなわち、特許文献2には、分枝構造と、該分枝構造の周辺の構造であって、該分枝構造と機能的に関連する周辺構造とを有する被検体内構造物を表す3次元医用画像から前記周辺構造の異常部分である異常周辺構造を検出する異常周辺構造検出手段と、前記3次元医用画像から前記分枝構造を抽出する分枝構造抽出手段と、前記抽出された分枝構造中の各点の位置情報に基づいて、前記異常周辺構造と機能的に関連する前記分枝構造中の部分を関連分枝構造として特定する関連分枝構造特定手段と、前記抽出された分枝構造中の各点の位置情報に基づいて、前記特定された関連分枝構造と機能的に関連する前記周辺構造中の部分を関連周辺構造として特定する関連周辺構造特定手段と、前記異常周辺構造、前記関連分枝構造、および、前記関連周辺構造を含む領域を表す画像であって、前記関連周辺構造を前記異常周辺構造に対する処置の対象領域として識別可能な態様で表した画像を、前記3次元医用画像から生成する画像生成手段とを備えたことを特徴とする医用画像診断支援装置等が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明にかかる医用画像診断支援システム等を実施するための形態について、図面を参照しながら詳述する。
【0020】
まず、
図1に、本発明の一実施形態にかかる医用画像診断支援システムのシステム構成例、及び当システムを構成する医用画像処理装置の機能ブロック構成例を示す。
図1において、医用画像診断支援システム10は、医用画像処理装置100と医用画像サーバ190とを含み、医用画像サーバ190へは図示しない医用画像撮像装置(CT装置、PET装置、SPECT装置、MRI装置等の撮像装置がある)で撮影された医用画像データが送信され、同サーバ190において保存管理される。
医用画像処理装置100は、典型的にはPC(パーソナルコンピュータ)やタブレット型端末装置等が採用され、コンピュータ処理の中心ユニットであるCPU等の中央処理装置101と、各種のハードウェア制御等を実行する制御部102と、画像を表示するためのディスプレイ等の画像表示部(ディスプレイ)103と、画像データやプログラム等を格納するSSD、ハードディスク(HDD)等の記憶部104と、データを一時保管するためのRAM等の主記憶部105と、マウスやペン等の指示部106と、画像処理をコマンド(後述)として指示するためのキーボード等の入力部107と、外部機器との通信を行うための通信I/F108とを備えている。
また、本装置100は、通信I/F108及びネットワーク199を介して医用画像サーバ190から3次元医用画像データを取得することができる。
図1において、ネットワーク199は、有線接続されるものとして説明されているが、無線LAN等による無線接続も可能である。
【0021】
なお、本発明の実施に必要なプログラムないしソフトウェアは、典型的には、PCやタブレット端末等の記憶部104におけるSSDないしHDD等にインストールないし記憶され、プログラムないしソフトウェアの実行時には、必要に応じて主記憶部105にその全部又は一部のソフトウェアモジュールとして読み出され、CPU101において演算実行される。
また、演算実行は必ずCPU等の中央処理部で行われる必要はなく、図示しないディジタルシグナルプロセッサ(DSP)等の補助演算装置を用いることもできる。
【0022】
画像表示部(ディスプレイ)103として、タッチパネル付きLCDが採用される場合には、タッチ入力パネル上でのタッチ入力位置座標が入力デバイスインタフェース(不図示)を介して医用画像処理装置としてのタブレット端末の処理系(CPU)へ送信され処理される。マルチタッチ入力パネルが採用される場合には、パネルに対する複数の接触点を同時に感知することができるよう構成することもできる。
【0023】
また、ここでは、本発明の理解の容易のために、3次元医用画像データとしてCTのスライス画像データを用いた場合について説明するが、もちろん本発明は特定のデータ形式に拘束されるものではなく、MRI等のスライス画像データを用いることもできる。
【0024】
(画像処理技術)
本発明の実施に必要な画像処理技術は、基本的に従前の要素技術(自動領域抽出、2値化、多値化、エッジ検出、領域判定、領域の重心判定、重なり判定等)が採用され、上述のソフトウェアプログラムとして主に医用画像処理装置100に実装される(一部のソフトウェアが医用画像サーバ190に実装される場合もある)。本発明の一実施形態にかかる医用画像処理装置(あるいは、医用画像診断支援システム全体として)の処理動作は、以上で説明したハードウェアの個々の動作、及び画像処理技術を実施するソフトウェアの連携動作によって実現されている。
【0025】
[第1の実施例]
図2を参照して、本発明の一実施形態における医用画像診断支援システム及び/又は同システムにおける医用画像処理装置の基本的な動作フロー例を説明する。ここで、「医用画像診断支援システム及び/又は同システムにおける医用画像処理装置」としたのは、上述したとおり、本発明の一実施形態にかかる医用画像処理装置あるいは医用画像診断支援システム全体としての処理動作は、
図1に示されたハードウェアの個々の動作、及び、画像処理技術等を実施するソフトウェアの連携動作によって実現されるものだからである。従って、本発明をソフトウェアプログラムの発明として考える場合にはこれらは本発明に影響を与えない範囲での諸々の事情による実装態様があり得る(以下、各実施例を説明するにあたり、同様)。
【0026】
図2のステップS201において解析処理を開始すると、ステップS202へ進み、肺領域の例えば1枚分(1レイヤ分)のCT画像データをシステム内のメモリに読み込む。CT画像データは画素データの集まりであり、個々の画素データは濃淡(画像濃度)を表わす「CT値」と呼ばれる医用画像値の一種である。
【0027】
そして、ステップS203では、CT画像においてCT値に基づく肺野領域の抽出処理が行われる。本発明の一実施形態において、CT値が−600以下(未満)の画像領域が肺野領域とされる。次に、ステップS204へ進み、CT画像においてCT値に基づく肺気腫領域の抽出処理が行われる(肺気腫領域は病変領域の一例である)。本発明の一実施形態において、CT値が−960以下(未満)の画像領域が第1段階として肺気腫領域とされる(但し、後述するステップS205において肺気腫領域は修正処理される)。
【0028】
ステップS205では、まず、前ステップ(ステップS204)で抽出された肺気腫領域判定について、そのサイズに関する基準値に基づき再判定を行う。すなわち、前ステップ(ステップS204)では肺気腫領域と判断された領域(小片)であっても所定のサイズ(一例として画素数が挙げられるが本発明はこれに限定されない。ディスプレイの解像度との関係に基づく面積に対応付けることも可能である。さらに、複数のCT画像レイヤから算出可能な肺気腫領域容積(体積)に対応付けることも可能である。以下、同様)以下(ないし未満)であるものについては、肺気腫領域ではなく正常領域として修正処理される。
【0029】
次に、ステップS206へ進み、前ステップまでで抽出された肺野領域及び肺気腫領域から肺野領域における肺気腫領域の割合算出が行われる。この算出は面積や体積、それらの分布等の種々の観点から算出が行われる。また、肺野領域にあっても上肺・中肺・下肺といった構造ごとの算出も可能である(その他、右肺について上葉・中葉・下葉、左肺について上葉・下葉といった区分ごとの算出等の種々の区分・区域についての算出も可能である)。
【0030】
ステップS207では、前ステップまでで算出された情報に基づき色分け等の視覚的な処理を行ってシステムのディスプレイに表示させる。ステップS208では、全レイヤについての処理が完了したかどうかが判断され、Noの場合はステップS209へ進み次のレイヤへのインクリメント処理を行ってステップS202へ復帰するが、Yesの場合はステップS210へ進む。
【0031】
ステップS210では、上述した肺気腫領域のサイズに関する基準値のほか、CT値に基づく肺野領域の抽出基準や肺気腫領域の抽出基準(同ステップ中の「設定条件」)に変更があったかどうかが判断される。
図4等を参照して後述するとおり、この基準値はユーザ操作(直接入力やGUI操作が含まれる)により簡便に変更可能である。
そして、ステップS210においてYesの場合は、ステップS205へ復帰し、既に抽出されている肺気腫領域の再修正処理がなされる。ステップS210においてNoの場合にはステップS211へ進み、本動作フローとしては終了する(つまり、アプリケーションの終了というわけではなく、他の処理待ちの状態となる場合も含まれる)。
【0032】
なお、ステップS207の処理は、例示的にステップS206とステップS208との間で実行したが、全レイヤの処理の完了後(つまり、ステップS208においてYesとなった直後であって、ステップS210の前)に実行されても良い。
【0033】
また、
図2において、ステップS210は、ステップS208においてYesとなった直後に実行されているが本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ステップS207とステップS208との間に実行されるように実装されても良い。その場合、ステップS208においてYesならば、
図8と同様に本動作フローとしては終了(待機状態を含む)とすることができる。
【0034】
この他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で処理フローの置換等が可能であることは言うまでもない。
【0035】
[第2の実施例]
図3に、本発明の一実施形態における医用画像診断支援システムにおける医用画像処理装置(PC)の表示画面例を示す。本実施例では、3次元医用画像を人体に対する3つの断面から生成及び表示し、これらの3次元医用画像を複数枚表示させることができる。一般に、3次元医用画像を多角的に観察するためには互いに直交するxyz座標軸のx軸を人の横幅方向(肩幅方向)、y軸を人の前後方向(胸と背中とを通る方向)、z軸を人の身長方向(頭部と足裏とを通る方向)にとることが多く、本実施例もこれに倣っている。なお、この時、xy平面をAxial面、xz平面をCoronal面、yz平面をSagittal面と呼ぶ。
【0036】
図3に示された各種断面については、Axial面の画像をAxial画像、Coronal面の画像をCoronal画像、Sagittal面の画像をSagittal画像と呼ぶこととし、同図では、これらの各断面は、3次元座標(Px,Py,Pz)を通過するよう設定されている。また、各断面画像は後述するユーザ操作により自由に各軸方向へ移動させたり、任意の領域を拡大・縮小させたりすることができる。同図においては、それぞれの断面における画像が、ディスプレイ上にAxial画像、Coronal画像、Sagittal画像として表示されている(なお、
図4〜
図5においても座標軸や断面画像についての考え方は同様である)。
【0037】
図3の画面300において、表示領域310には、患者情報(本発明はこれらに限定されるものではないが、一例としてIDや生年月日、性別等によって特定される)、検査情報(一例として、検査日や検査ファイルID等によって特定される)、及び診断スコア情報のそれぞれが、数値あるいはステータスバー上の色分け等によって表示されている。なお、同領域310においては、例示的に、1542cm
3の容積をもつ右肺の気腫比率は4.4%、1146cm
3の容積をもつ左肺の気腫比率は2.9%、左右平均での気腫比率は3.8%であることが読み取れる。
【0038】
表示領域320内には、左右肺のCoronal画像及び気腫率(診断スコア)等の視覚的情報が示されている。具体的には、領域321内に左右肺のCoronal画像が示され、スライドバー322に対するGUI操作(以下、単に操作ともいう)によってCoronal面の奥行方向に沿った前後移動が可能になっている。また、バー323a及び323bには、左右それぞれの肺に対する診断スコアが視覚的に表示されている。さらに、領域321内に表示されたスライス線324a〜324cは、それぞれ上肺・中肺・下肺のAxial断面に対応するスライス位置となっており、スライス線324aに対応する上肺の断面画像(Axial画像)が領域340に表示され、スライス線324bに対応する中肺の断面画像(Axial画像)が領域350に表示され、スライス線324cに対応する下肺の断面画像(Axial画像)が領域360に表示されている。
【0039】
そして、領域321内の左右肺のCoronal画像において、肺気腫領域と診断された領域は例示的に市松模様に加工されて表わされている(なお、実際のディスプレイ上には、視覚的に区別しやすい赤い領域として表示されている)。
【0040】
表示領域330内には、左右肺のSagittal画像が示されており、具体的には、領域331に右肺のSagittal画像が、領域332に左肺のSagittal画像が、それぞれ表わされている。また、スライドバー333に対する操作によって右肺のSagittal面の奥行方向に沿った前後移動が可能になっており、スライドバー334に対する操作によって左肺のSagittal面の奥行方向に沿った前後移動が可能になっている。
【0041】
さらに、領域331内に表示されたスライス線335a〜335cは、それぞれ上肺・中肺・下肺のAxial断面に対応するスライス位置となっており、スライス線335aに対応する上肺の断面画像(Axial画像)が領域340に表示され、スライス線335bに対応する中肺の断面画像(Axial画像)が領域350に表示され、スライス線335cに対応する下肺の断面画像(Axial画像)が領域360に表示されている。同様に、領域332内に表示されたスライス線336a〜336cは、それぞれ上肺・中肺・下肺のAxial断面に対応するスライス位置となっており、スライス線336aに対応する上肺の断面画像(Axial画像)が領域340に表示され、スライス線336bに対応する中肺の断面画像(Axial画像)が領域350に表示され、スライス線336cに対応する下肺の断面画像(Axial画像)が領域360に表示されている。
【0042】
そして、領域331及び332内の左右肺のSagittal画像において、肺気腫領域と診断された領域は例示的に市松模様に加工されて表わされている(なお、実際のディスプレイ上には、視覚的に区別しやすい赤い領域として表示されている)。
【0043】
表示領域340は、スライス線324a、335a、336aに対応する上肺の断面画像(Axial画像)であり、同領域左側に配置されたスライドバー341に対する操作によって同断面画像の奥行方向に沿った前後移動が可能になっている(なお、断面を前後移動すれば、対応するスライス線324a、335a、336aも自動的に移動する)。
同様に、表示領域350は、スライス線324b、335b、336bに対応する中肺の断面画像(Axial画像)であり、同領域左側に配置されたスライドバー351に対する操作によって同Axial画像の奥行方向に沿った前後移動が可能になっている(なお、断面を前後移動すれば、対応するスライス線324b、335b、336bも自動的に移動する)。
また、表示領域360は、スライス線324c、335c、336cに対応する下肺の断面画像(Axial画像)であり、同領域左側に配置されたスライドバー361に対する操作によって同Axial画像の奥行方向に沿った前後移動が可能になっている(なお、断面を前後移動すれば、対応するスライス線324c、335c、336cも自動的に移動する)。
【0044】
なお、表示領域340、350、360において、肺気腫領域は、例示的にそれぞれ市松模様に加工されて表わされている(実際のディスプレイ上には、視覚的に区別しやすい赤い領域として表示されている)が、
図3においてはそれら(市松模様)は確認しづらい。その場合には、
図4〜5に示される拡大表示をさせて(かつ、既に述べた「サイズに関する基準値」の変更等を行って)、より正確な診断を行うことが可能になっている。
【0045】
図4に、本発明の一実施形態における医用画像診断支援システムにおける医用画像処理装置の表示画面例を示す。画面400は、
図3の領域360を領域410に拡大表示させたものである。スライドバー430(及びノブ431)は、
図3のスライドバー(及びノブ)331に対応する。
【0046】
図4の領域410において、領域360では確認しづらかった肺気腫領域(市松模様の領域)が確認できるであろう。かかる色(画像処理)表示は、肺野領域、肺気腫領域、気管支領域別に表示させることもでき、それらの切り替え表示は、チェックボックス421〜423への操作によって行うことができる(
図4においては、気腫部チェックボックス422がオンにされており、同図領域410に示されるように市松模様の肺気腫領域が表示されている)。
【0047】
ボタン440は、諸設定条件についてデフォルト値にした場合の画像を表示させるためのボタンである。
【0048】
領域450には、肺野領域基準、肺気腫領域基準、及び本発明の特徴である通常の判断基準(CT値に基づく判断基準)では肺気腫領域とされる領域であっても正常領域に修正処理されるべき領域の面積(ないし体積)基準がそれぞれ変更可能に表示されている。
【0049】
肺野領域については、一実施形態においてCT値が−600以下(あるいは未満)の領域であることがボックス451に示されており、この基準値はボックス451内の編集操作により変更可能である。そして、変更が確定(例えばエンターキーが押されるなど)すると、変更条件に基づいて直ちに修正処理が実行され修正後の領域が表示される(
図2のステップS210においてYesとなり、ステップS205へ復帰してステップS207に至るまでの処理フローがこれに対応する。以下、条件変更の実施例について同様)。
【0050】
肺気腫(気腫部)領域については、一実施形態においてCT値が−600以下(あるいは未満)の領域中のさらにCT値が−900以下(未満)の領域あることがボックス452に示されており、この基準値はボックス452内の編集操作により変更可能である。そして、変更が確定(例えばエンターキーが押されるなど)すると、変更条件に基づいて直ちに修正処理が実行され修正後の領域が表示される。
また、ボックス452に示された基準値は、スライドバー(及びノブ)454においても視覚的に表示されており、ボックス452内の編集操作に替えて、スライドバー454中のノブの操作によっても基準値を変更することができる(その操作貸態様については、
図6Aを参照して後述する)。基準値変更が確定(例えばスライドさせたノブを離す等)すると、変更条件に基づいて直ちに修正処理が実行され修正後の領域が表示される。
【0051】
正常(再判定)領域については、一実施形態においてCT値が−600以下(あるいは未満)の領域中のさらにCT値が−900以下(未満)の領域あることが判定されても、その領域のサイズに関する基準値が所定値以下(未満)であれば正常領域に修正(再判定)されるべきものであるが、そのサイズに関する基準値がボックス453に示されており、この基準値はボックス453内の編集操作により変更可能である。そして、変更が確定(例えばエンターキーが押されるなど)すると、変更条件に基づいて直ちに修正処理が実行され修正後の領域が表示される。
また、ボックス453に示された基準値は、スライドバー(及びノブ)455においても視覚的に表示されており、ボックス453内の編集操作に替えて、スライドバー455中のノブの操作によっても基準値を変更することができる(その操作貸態様については、
図6Aを参照して後述する)。基準値変更が確定(例えばスライドさせたノブを離す等)すると、変更条件に基づいて直ちに修正処理が実行され修正後の領域が表示される。
さらに、ボックス453に示されたサイズに関する基準値は「6」であることが示されているが、その単位は例示的にディスプレイ上の画素数である。しかしながら、本発明はこれに拘束されるものではなく、同ディスプレイ上での画素ピッチとの関係では基準値6は面積にして2.36mm
2であることが、ボックス453の下部に示されていることに留意されたい。
【0052】
ボタン461は、デフォルト値をメモリ上に取得するためのボタンである。ボタン462は、現時点で設定されている値を保存するためのボタンである。ボタン463は、現時点での条件を他のレイヤ(例えば
図4には表示されていない他の断面データ)へ適用するためのボタンである。ボタン464は、画面400を閉じるためのボタンである。
なお、適用ボタン463は、
図7を参照して後述する実施形態を採用する場合には、自動処理されるので省略することができる。
【0053】
図5に、本発明の一実施形態における医用画像診断支援システムにおける医用画像処理装置の表示画面例を示す。画面500は、
図4の領域410中の矩形領域470を領域510に拡大表示させたものである。
【0054】
領域510において、肺気腫領域と判定されている小片領域511a、511b、511c等が確認できるであろう。なお、521〜523、530(及び531)、541は、
図4の421〜423、430(及び431)、461にそれぞれ対応する。
【0055】
医師等は、このように適宜他の断面領域へ移動させたり必要な領域を拡大縮小させたりしつつ、適用条件(領域450に示された各基準値である)を変更・反映させながら正確な領域抽出を進めていくことができる。
【0056】
次に、
図6A及び6Bを参照して、スライドバー操作及び当該操作に伴う条件等変更動作の具体例を説明する。
【0057】
図6Aには、
図4の領域450に示された正常領域判定の基準となるサイズに関する基準値ボックス453及びその変更スライドバー(及びノブ)455に対する一連の操作例が示されている。
【0058】
図6Aにおいて、同図(A)から同図(C)までに示されるように、指603によってスライドバー上のノブが602aから603cの位置までスライド移動されると、その移動に伴い、ボックス601aから601cに示されるように基準値が6→18→30と変更されている様子が分かる。
【0059】
図6Bには、
図3〜
図5に示された、ぞれぞれの断面において奥行方向に沿って前後移動させるためのスライドバー322、333、341、351、361、430(及び431)、530(及び531)の操作例が示されている。
【0060】
図6Bにおいて、同図(A)から同図(C)までに示されるように、指653によってスライドバー上のノブが651aから651cの位置までスライド移動されると、その移動に伴い、同図(D)に示される断面位置(スライス面)としては、P方向からみて下側へ向かってスライス面aからスライス面cへ向かう断面図が示されることとなる。
なお、スライドバー上のノブの移動の向きとスライス面の移動方向とは、実装上適宜対応付けられることは言うまでもない(ノブが651aから651cの位置までスライド移動されると、スライス面cからスライス面aへ向かう断面図を適宜示すようにも実装可能である)。
【0061】
図7に、本発明の他の実施形態における医用画像診断支援システム(及び/又は同システムにおける医用画像処理装置)の動作処理フローを説明する。本動作フローは、一例として、
図2のステップS210においてYesとなってステップS205へ復帰し、ステップS208に至るまでの処理フローを含む設定条件変更があった場合の代替フローである。
【0062】
図7のステップS701において処理が開始されると、ステップS702へ進み、設定条件の変更があったかどうかが判断される。同ステップにおいてNoの場合はステップS708へスキップするが、Yesの場合はステップS703へ進む。
【0063】
ステップS703では、新しい設定条件の読み込みが行われる。ステップS704では、既に抽出されている肺気腫領域について、新しい設定条件に基づき再判定が行われ修正処理がなされる。ステップS705では、未処理のレイヤがあってそ(れら)のレイヤに未抽出の肺気腫領域があるかどうかが判断され、Noの場合にはステップS706へ進み、全レイヤに対して新しい基準に基づく修正が適用され、Yesの場合にはステップS707へ進み、既抽出領域の全てのレイヤに対して新しい基準に基づく修正が適用され、それぞれステップS708へ進む。
【0064】
ステップS708では、解析ないし診断が終了したかどうかが判断され、Noの場合にはステップS702へ復帰するが、Yesの場合にはステップS709へ進み、本動作フローとしては終了する。
【0065】
(本発明の独自の構成による効果等)
以上のとおり、本発明の一実施形態においては、正常領域と判断されるべき微小な病変領域を正常領域と判断できるので病変による症状の評価の精度を上げることができ、また、病変領域と正常領域を選別する基準として、1枚のCT断層画像の場合には面積を用い、連続する複数枚のCT断層画像の場合には体積を用いるなどしてCT画像の構成状況に応じて適切な基準値を選ぶことができるので様々な診断シーンにおいて良好な作動を期待できる。さらに、CT断層画像による肺気腫の診断では、肺領域はCT値−600程度以下、肺の正常領域はCT値−600以下かつ−960以上、肺気腫領域はCT値−960程度以下とすることが多かったが、こうしたCT値のみによる判断では本来正常領域と判断されるべき領域が肺気腫領域に含まれてしまうことがあった。そこで、本発明の一実施形態にかかる「サイズ」に関する基準値を導入することで、本来正常と判断されるべき領域を正しくが正常領域として選別されることができ、肺気腫の診断評価精度が向上する。
【0066】
また、本発明の一実施形態においては、CT値により肺気腫領域と正常領域とを選別した後で、肺気腫のサイズが基準値より小さい場合には正常領域として再選別するが、CT断層画像の撮影条件や装置による差異などがあるので、サイズに関する基準値を一律に決定することは難しい。そこで本機能を導入することで、その画像に応じて最適な基準値を医師ごとに簡単に設定でき診断を進めていけるという効果がある。
さらに、肺気腫領域と正常領域とを選別するサイズに関する基準値を決める際に、微小な肺気腫領域の画像を直接操作により簡便に拡大・縮小およびスクロール等の移動をさせることでより、医師等が迅速かつ正確に判断できる情報を提供できるという効果がある。
【0067】
上記では、肺の正常領域はCT値−600以下とし、肺気腫領域をCT値−960としたが、本発明の一実施形態においては、MRI断層画像の画素値を利用することができる。MRI(磁気共鳴イメージング)断層画像の画素値はCT断層画像のCT値のように物質の種類により一定の値を示すことはないが、一連の断層画像においては、その部位に対応した画素値を示すので、例えば、空気の領域は同じような画素値を示す。体の外の空気の領域の画素値を参考にして肺気腫の領域を推定することができる。つまり、正常な肺より空気の領域に近い画素値を持つ画像領域が肺気腫領域であると推定することが出来る。
【0068】
本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された構成要件の全て及び/又は開示された全ての方法又は処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。
【0069】
また、本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、または類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一又は均等となる特徴の一例にすぎない。
【0070】
さらに、本発明は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本発明は、本明細書(特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に記載された全ての新規な特徴又はそれらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法又は処理のステップ、又はそれらの組合せに拡張することができる。
【解決手段】 医用画像サーバ及び医用画像診断支援装置を含む医用画像診断支援システムであって、医用画像撮像装置で撮像され、医用画像サーバを介して受信した医用画像を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された医用画像を断面画像として表示する断面画像表示部と、医用画像を形成する分布値となる医用画像値に基づいて医用画像の断面画像から全肺野領域を抽出し、さらに全肺野領域から病変領域を検出し、検出された病変領域に全肺野領域の他の領域とは異なる画像処理を施した医用画像を生成する領域画像生成処理部と、領域画像生成処理部が生成した医用画像を表示する表示部とを備え、領域画像生成処理部は、検出された1以上の病変領域のうち病変領域のサイズに関する基準値が予め設定した基準値よりも小さい場合には当該病変領域を正常領域として修正する。