特許第6200716号(P6200716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200716
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】積層構造体および積層ユニット
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20170911BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20170911BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20170911BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   H01L23/36 D
   H02M7/48 Z
   H01L23/46 Z
   H05K7/20 N
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-154004(P2013-154004)
(22)【出願日】2013年7月24日
(65)【公開番号】特開2015-26653(P2015-26653A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田島 典拓
(72)【発明者】
【氏名】川井 洋介
(72)【発明者】
【氏名】今泉 浩夫
【審査官】 小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−140969(JP,A)
【文献】 特開2002−026215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/473
H02M 7/48
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュールと、該半導体モジュールに積層されて該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に積層し、積層方向に沿って前記半導体モジュールの両面に前記冷却管が配置される積層構造体であって、
前記冷却管は、
前記半導体モジュールとの接触部分が平板状をなす平板部を有する外装体と、
前記外装体が囲む内部空間を前記積層方向に沿って二つの領域に分割する仕切り板と、
前記二つの領域にそれぞれ設けられて前記積層方向の荷重を有する二つのばね部材と、
を備え、
前記ばね部材は、
前記平板部に当接するまたは接合される平板状のベース部と、
各々が前記ベース部から立ち上がって前記ベース部の同じ主面側に延在し、先端が前記仕切り板に接触して荷重を発生する複数の延在部と、
を有することを特徴とする積層構造体。
【請求項2】
半導体モジュールと、該半導体モジュールに積層されて該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に積層し、積層方向に沿って前記半導体モジュールの両面に前記冷却管が配置される積層構造体であって、
前記冷却管は、
前記半導体モジュールとの接触部分が平板状をなす外装体と、
前記外装体が囲む内部空間を前記積層方向に沿って二つの領域に分割する仕切り板と、
前記二つの領域にそれぞれ設けられて前記積層方向の荷重を有する二つのばね部材と、
を備え、
前記ばね部材は、
前記外装体に当接するまたは接合される平板状のベース部と、
各々が前記ベース部から立ち上がって前記ベース部の同じ主面側に延在し、先端が前記仕切り板に接触して荷重を発生する複数の延在部と、
を有し、
前記冷却管の中央部に位置する前記延在部の前記ベース部に対する高さが他の部分に位置する前記延在部の前記ベース部に対する高さよりも高いことを特徴とする積層構造体。
【請求項3】
前記冷却管は、
幅方向の両端部に形成され、前記ばね部材における荷重の発生に伴って変形したフランジ部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層構造体。
【請求項4】
前記ばね部材は、
前記複数の延在部が前記ベース部に対して立ち上がる方向が互いに揃っていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項5】
前記ばね部材は、
前記複数の延在部の一部が前記ベース部に対して立ち上がる方向が他の延在部と異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項6】
前記二つのばね部材がそれぞれ有する延在部は、
前記積層方向に沿って互いに他のばね部材の延在部と異なる位置で各ベース部から立ち上がっていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層構造体と、
前記積層構造体を収容する筐体と、
前記積層構造体を前記筐体に対して固定する固定部材と、
を備えたことを特徴とする積層ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールと該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に積層した積層構造体および該積層構造体を備えた積層ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体モジュールと該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に積層することによって構成される電力変換装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この電力変換装置は、半導体モジュールと冷却管の積層方向の端部に、積層方向に沿った押圧力を発生するばね部材と、このばね部材と積層構造との間に設けられ、積層方向に均一な押圧力を発生させるための当接プレートとを備える。このような構成を有する電力変換装置によれば、ばね部材の押圧力によって隣接する半導体モジュールと冷却管が密着するため、半導体モジュールを十分に冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−166820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、ばね部材と当接プレートが必要なことに加えて、ばね部材を電力変換装置の筐体に固定する固定ピンを設ける必要があるため、部品点数が増えて装置が大型化してしまうとともに、組み付けが難しいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、半導体モジュールの冷却性能を維持しつつ、小型化に好適であるとともに組み付けも容易な積層構造体および積層ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る積層構造体は、半導体モジュールと、該半導体モジュールに積層されて該半導体モジュールを冷却する冷却管とを交互に積層し、積層方向に沿って前記半導体モジュールの両面に前記冷却管が配置される積層構造体であって、前記冷却管は、前記半導体モジュールとの接触部分が平板状をなす外装体と、前記外装体が囲む内部空間を前記積層方向に沿って二つの領域に分割する仕切り板と、前記二つの領域にそれぞれ設けられて前記積層方向の荷重を有する二つのばね部材と、を備え、前記ばね部材は、前記外装体に当接するまたは接合される平板状のベース部と、各々が前記ベース部から立ち上がって前記ベース部の同じ主面側に延在し、先端が前記仕切り板に接触して荷重を発生する複数の延在部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る積層構造体は、上記発明において、前記冷却管は、幅方向の両端部に形成され、前記ばね部材における荷重の発生に伴って変形したフランジ部を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る積層構造体は、上記発明において、前記ばね部材は、前記複数の延在部が前記ベース部に対して立ち上がる方向が互いに揃っていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る積層構造体は、上記発明において、前記ばね部材は、前記複数の延在部の一部が前記ベース部に対して立ち上がる方向が他の延在部と異なることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る積層構造体は、上記発明において、前記二つのばね部材がそれぞれ有する延在部は、前記積層方向に沿って互いに他のばね部材の延在部と異なる位置で各ベース部から立ち上がっていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る積層構造体は、上記発明において、前記ばね部材は、前記冷却管の中央部に位置する前記延在部の前記ベース部に対する高さが他の部分に位置する前記延在部の前記ベース部に対する高さよりも高いことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る積層ユニットは、上記発明に記載の積層構造体と、前記積層構造体を収容する筐体と、前記積層構造体を前記筐体に対して固定する固定部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体モジュールの冷却性能を維持しつつ、小型化に好適であるとともに組み付けも容易な積層構造体および積層ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る積層構造体の要部の構成を示す正面図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係る積層構造体の要部の構成を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施の形態に係る積層構造体が備える冷却管の構成を示す斜視図である。
図4図4は、図3のA−A線断面図である。
図5図5は、図4の部分拡大図である。
図6図6は、図3のB−B線断面図である。
図7図7は、本発明の一実施の形態に係る積層構造体が備えるばね部材の構成を示す斜視図である。
図8図8は、ばね部材に荷重が発生する前後のばね部材の形状変化の概要を示す図である。
図9図9は、ばね部材に荷重が発生する前後のフランジ部の形状変化の概要を示す図である。
図10図10は、本発明の一実施の形態に係る積層ユニットの構成を示す部分断面図である。
図11図11は、本発明の一実施の形態の変形例1に係る積層構造体が備えるばね部材の構成を示す斜視図である。
図12図12は、本発明の一実施の形態の変形例2に係る積層構造体が備えるばね部材の要部の構成を示す図である。
図13図13は、本発明の一実施の形態の変形例3に係る積層構造体が備えるばね部材の要部の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」という)を説明する。なお、図面は模式的なものであって、各部分の厚みと幅との関係、それぞれの部分の厚みの比率などは現実のものとは異なる場合もあることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る積層構造体の要部の構成を示す正面図である。図2は、本実施の形態に係る積層構造体の要部の構成を示す斜視図である。これらの図に示す積層構造体1は、電気自動車およびハイブリッド自動車等に設けられ、バッテリの直流電力を交流電力に変換して交流モータに供給するインバータを備えたPCU(Power Control Unit)の一部を構成する。
【0017】
積層構造体1は、略直方体状をなす半導体モジュール2と、半導体モジュール2を冷却する冷却用媒体を流通し、半導体モジュール2に密着して積層される冷却管3と、を各々定められた数ずつ備える。積層構造体1では、積層方向に沿って隣り合う冷却管3の間に二つの半導体モジュール2が積層方向と直交する方向に並列に配置されている。図1に示す積層構造体1は、2つの半導体モジュール2を並列配置した層が9層あり、合計18個の半導体モジュール2が設けられるとともに、冷却管3が10個設けられている。なお、積層構造体1における半導体モジュール2と冷却管3の個数はあくまでも一例に過ぎない。また、一つの層で並列配置される半導体モジュール2の個数も一例に過ぎない。
【0018】
積層方向に沿って隣り合う冷却管3の長手方向の両端部同士は、円筒状をなす連結部材4によって連結されており、この連結部材4を介して隣り合う冷却管3の内部同士が連通している。
【0019】
積層方向の一方の端部(図1の下端部)に位置する冷却管3の長手方向の一端部(図1の左端部)には、外部から冷却用媒体を流入する流入管5が連結している。また、積層方向の一方の端部(図1の下端部)に位置する冷却管3の長手方向の他端部(図1の右端部)には、外部に対して冷却用媒体を流出する流出管6が連結している。
【0020】
積層方向の他方の端部(図1の上端部)に位置する冷却管3の積層方向端部側には、有底の円筒状をなす蓋部材7が設けられている。
【0021】
半導体モジュール2は、例えばIGBT(Insulated-Gate Bipolar Transistor)およびFWD(Free Wheeling Diode)の2種類のシリコンチップを並列に配置し、その両面に、導電スペーサを介してヒートスプレッダが設けられた構成を有している。
【0022】
図3は、冷却管3の構成を示す斜視図である。図4は、図3のA−A線断面図であり、一部を省略した図である。図5は、図4の部分拡大図である。図6は、図3のB−B線断面図である。以下、図3図6を参照して、冷却管3の構成を詳細に説明する。
【0023】
冷却管3は、略長円形の主面を有し扁平な形状をなす外装体31と、外装体31に囲まれた内部空間を外装体31の主面と平行な方向に貫通して該内部空間を二つの領域に分割する仕切り板32と、仕切り板32によって分割される二つの領域にそれぞれ設けられ、積層方向の荷重を発生する2つのばね部材33と、を有する。
【0024】
外装体31は、互いに平行な2つの平板を有し、各平板の表面で積層方向に隣り合う半導体モジュール2と密着する平板部311と、平板部311の短手方向(幅方向)の両端部に形成される2つのフランジ部312と、平板部311の長手方向の両端部に設けられ、連結部材4を介して他の冷却管3と内部空間同士を連通するための開口部313が平板部311の表面にそれぞれ形成された2つの連通部314と、を有する。開口部313には、円筒状の連結部材4がロウ付け等によって接合されている。また、開口部313と連結部材4との接合部にはダイヤフラム部が設けられており、積層方向に隣り合う冷却管3との間隔を変化させることが可能である。外装体31は、良好な熱伝導性を有するアルミニウム等の金属によって構成されている。
【0025】
仕切り板32は、二つのばね部材33と異なる表面で接触している。仕切り板32は、例えばSUS等の剛性の高い金属によって構成されている。仕切り板32はSUS以外の材料でも、強度的に問題がない材料であれば適用可能である。このような材料として、例えば熱伝導率が比較的低い材料を適用すれば、冷却管3を介して隣接する2つの半導体モジュール2の間の熱の行き来を抑制することができるのでより好ましい。
【0026】
図7は、ばね部材33の構成を示す斜視図である。ばね部材33は、平板状をなすベース部331と、ベース部331の縦横に沿って格子状に配置され、ベース部331から互いにほぼ同じに揃った方向へ立ち上がって帯状に延びる複数の延在部332と、を有する。図7に示す場合、1列に10個の延在部332が形成されたものが3列並べられているが、この行と列の数は一例に過ぎない。
【0027】
ベース部331は、外装体31の裏面に当接し、接触圧によって固定されている。なお、ベース部331を外装体31の裏面に対してロウ付け等によって接合してもよい。
【0028】
延在部332は、該延在部332がベース部331に対して延びる側をベース部331の上方とするとき、ベース部331の表面に対して下に凸な曲面をなす基端部332aと、ベース部331の表面に対して上に凸な曲面をなす先端部332bとを有する。先端部332bの先端における曲面の接線は、ベース部331と略平行である。延在部332の先端部332bは、仕切り板32に接触している。
【0029】
ばね部材33は、りん青銅、ばね鋼、銅、ステンレス、ニッケル、ニッケル合金などの導電性材料を用いて形成される。ばね部材33を製造する際には、例えばプレス成形のみで製造することができる。また、ばね部材33を製造する際には、1枚の平板をエッチング加工して延在部332の部分の形取りを行った後、この形取った延在部332の部分にプレス成形等の塑性加工を施すことによって延在部332をベース部331に対して立ち上がらせてもよい。
【0030】
冷却管3において、二つのばね部材33は、仕切り板32の中心を通過しかつ仕切り板32の表面と平行な平面に対して鏡像対称な位置関係にあるが、これは一例に過ぎない。例えば、二つのばね部材33を、仕切り板32の中心に対して180度回転対称な位置関係となるように配置することも可能である。なお、鏡像対称性や180度回転対称性については、厳密に対称である場合のみならず、二つのばね部材33の一方を鏡像変換または180度回転したときに他方のばね部材33におおむね一致するような場合も含むものとする。
【0031】
また、延在部332の立ち上がる方向がベース部331の長手方向に沿った方向でなくてもよい。例えば、ベース部331の短手方向に沿った方向に延在部332が立ち上がるようにしてもよいし、ベース部331の主面を投影面とする平面視で長手方向および短手方向と平行ではない方向に延在部332が立ち上がるようにしてもよい。
【0032】
冷却管3の内部を流通する冷却用媒体は、例えば水、エチレングリコール系の不凍液を混入した水またはアンモニア等の自然冷媒、フロリナート等のフッ化炭素系冷媒、HCFC123、HFC134a等のフロン系冷媒、メタノールまたはアルコール等のアルコール系冷媒、およびアセトン等のケトン系冷媒のいずれかである。
【0033】
以上の構成を有する積層構造体1を形成する際には、複数の半導体モジュール2と複数の冷却管3を所定の規則にしたがって積層した後、積層した部分に外力を加えてばね部材33に荷重を発生させる。図8および図9は、この荷重が発生する前後における冷却管3の形状変化の概要を示す図である。具体的には、図8は、ばね部材33の形状変化の概要を示す図であり、図9は、フランジ部312の形状変化の概要を示す図である。積層部分に外力が加わると、図8に示すように、ばね部材33の延在部332がたわんで荷重を発生する。これにより、冷却管3の積層方向の厚さが小さくなる。このとき、フランジ部312は、冷却管3の積層方向の厚さの減少に追従して、図9に示すように弾塑性変形を生じる。
【0034】
ばね部材33に荷重を発生させるための手段として、例えば帯状をなす金属製の束縛部材を用いることができる。この束縛部材を適用する場合、半導体モジュール2と冷却管3とを積層した後、積層した部分の一部に束縛部材を周回させ、所定の治具を用いてその束縛部材の両端部を接合することによって積層部分に所望の外力を加え、ばね部材33に荷重を発生させる。この際、冷却管3の長手方向の両端部にはダイヤフラム部が設けられているため、積層部分における冷却管3の厚さが小さくなるのに追従して、長手方向の両端部の厚さも薄くなる。なお、束縛部材は積層構造体1が完成した後に取り除いても構わない。
【0035】
図10は、以上の構成を有する積層構造体1を備えた積層ユニットの構成を示す部分断面図である。同図に示す積層ユニット100は、積層構造体1と、積層構造体1を収容する筐体11と、積層構造体1に当接して積層構造体1を筐体11に対して固定する固定部材12とを備える。図10に示す積層構造体1では、ばね部材33に荷重を発生させる手段として、上述した金属製の束縛部材に相当する束縛部材8を採用した場合を示している。
【0036】
積層構造体1では、冷却管3内部のばね部材33による荷重によって半導体モジュール2と冷却管3とが密着した状態になっているため、積層ユニット100を組み立てる際には、筐体11に積層構造体1を取り付けた後、固定部材12によって積層構造体1を筐体11に固定するだけでよい。したがって、積層ユニット100には、例えば板ばねと、板ばねを固定する固定ピンとを有し、板ばねおよび固定ピンを収容するためのスペースを設けることにより、積層構造体1を押圧して半導体モジュール2と冷却管3を密着させるような従来の構成は不要である。
【0037】
以上の構成を有する積層ユニット100は、半導体モジュール2に制御信号を送信する制御基板等とともにPCUを構成する。
【0038】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、冷却管3の内部にばね部材33を設け、ばね部材33に所望の荷重を発生させることで半導体モジュール2と冷却管3とを密着させているため、従来のように積層部分を押圧するための機構として、押圧用のばねを用いたり、筐体に押圧用の突起を設けたりすることなく、半導体モジュール2の冷却性能を向上させることができる。したがって、半導体モジュールの冷却性能を維持しつつ、小型化に好適であるとともに組み付けも容易な積層構造体および積層ユニットを提供することができる。
【0039】
また、本実施の形態によれば、冷却管3の幅方向の両端部に形成され、ばね部材33における荷重の発生に伴って変形したフランジ部312を有するため、半導体モジュール2と冷却管3の密着性を高めるために外力を加えた時、冷却管3の幅方向の端部も含めて冷却管3の厚さを略一様に薄くすることができる。
【0040】
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した一実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
【0041】
図11は、本実施の形態の変形例1に係る積層構造体が備えるばね部材の構成を示す斜視図である。同図に示すばね部材34は、ベース部341と、長手方向に沿って並べて配置され、同じ向きに立ち上がる第1延在部342と、長手方向に沿って並べて配置され、立ち上がる方向が第1延在部342と異なる第2延在部343とを有する。第1延在部342と第2延在部343は、ベース部341の短手方向に沿って交互に並べて配置されている。第1延在部342は、上述した延在部332と同様、基端部342aと、先端部342bとを有する。また、第2延在部343は、第1延在部342と同じ形状をなし、基端部343aと、先端部343bとを有する。
【0042】
本変形例1において、2枚のばね部材34を配置する際、仕切り板32の中心を通過しかつ仕切り板32の表面と平行な平面に対して鏡像対称となるように配置してもよいし、仕切り板32の中心に対して180度回転対称となるように配置してもよい。なお、本変形例1においても、鏡像対称性や180度回転対称性は、厳密に対称である場合のみならず、二つのばね部材33の一方を鏡像変換または180度回転したときに他方のばね部材33におおむね一致するような場合も含むものとする。
【0043】
図12は、本実施の形態の変形例2に係る積層構造体が備えるばね部材の要部の構成を示す図である。同図に示すばね部材35は、ベース部351と、延在部352とを有する。延在部352は、該延在部352がベース部351に対して延びる側をベース部351の上方とするとき、ベース部351の表面に対して下に凸な曲面をなす基端部352aと、ベース部351の表面に対して上に凸な曲面をなす先端部352bとを有する。
【0044】
先端部352bは、上に凸な曲面であってベース部351と平行な接線を有する部分からさらに延びている。このため、先端部352bは、仕切り板32と略線接触することとなる。このような構成を有するばね部材35は、冷却管3の内部で冷却用媒体が流通する際の抵抗を増加させたい場合に好適である。
【0045】
図13は、本実施の形態の変形例3に係る積層構造体が備えるばね部材の要部の構成を示す平面図である。ばね部材における延在部の別な配設態様を示す図であり、ばね部材のベース部と直交する方向から見た平面図である。同図に示すばね部材36は、ベース部361と、ベース部361から延びる複数の延在部362とを有する。延在部362は、ベース部361上で千鳥配置されている。なお、延在部362の形状は、上述したばね部材33の延在部332と同様である。
【0046】
なお、本発明において、冷却管が備える二つのばね部材がそれぞれ有する延在部は、半導体モジュールと冷却管の積層方向に沿って互いに他のばね部材の延在部と異なる位置で各ベース部から立ち上がるようにしてもよい。この場合には、仕切り板32に加わる面圧をより均一化することができる。
【0047】
また、本発明において、ばね部材が、冷却管の中央部に位置する延在部のベース部に対する高さが他の部分に位置する延在部のベース部に対する高さよりも高い構成を有していてもよい。この構成は、冷却管の中央部に積層方向の押圧力が多く加わって冷却管の積層方向の厚さを一様に保つのが困難な場合に特に有効である。
【0048】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲に記載された技術的思想を逸脱しない範囲内において設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 積層構造体
2 半導体モジュール
3 冷却管
4 連結部材
5 流入管
6 流出管
7 蓋部材
8 束縛部材
11 筐体
12 固定部材
31 外装体
32 仕切り板
33、34、35、36 ばね部材
100 積層ユニット
311 平板部
312 フランジ部
313 開口部
314 連通部
331、341、351、361 ベース部
332、352、362 延在部
332a、342a、343a、352a 基端部
332b、342b、343b、352b 先端部
342 第1延在部
343 第2延在部
図1
図2
図3
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