特許第6200720号(P6200720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アスモ株式会社の特許一覧

特許6200720ブラシレスモータ及びブラシレスモータの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200720
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ及びブラシレスモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20170911BHJP
   H02K 5/04 20060101ALI20170911BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   H02K1/18 D
   H02K1/18 C
   H02K5/04
   H02K15/02 D
【請求項の数】8
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-159014(P2013-159014)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-161200(P2014-161200A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2016年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-13505(P2013-13505)
(32)【優先日】2013年1月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】長尾 喜信
(72)【発明者】
【氏名】永冶 孝志
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−005198(JP,A)
【文献】 特開2011−142811(JP,A)
【文献】 特開2012−110212(JP,A)
【文献】 特開2001−218429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 5/04
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の継鉄を構成すると共に前記継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ前記継鉄構成部から前記継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部と、それぞれ前記ティース部に巻回された巻回部を複数有し、複数の相を構成する複数の巻線と、前記各コア構成部に一体化され前記ティース部と前記巻回部とを絶縁する絶縁部を複数有すると共に、環状に形成されかつ前記複数の絶縁部を連結しかつ各々の剛性が同一とされた連結部を有する複数のインシュレータと、を有するステータ本体と、
前記ステータ本体を該ステータ本体の径方向外側から覆う筒状に形成されていると共に、外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ前記複数のインシュレータの剛性及び前記複数の継鉄構成部と対向する部位の剛性の少なくともいずれかの剛性に対応する加工力が加えられることによって塑性変形部が形成されて前記ステータ本体と一体化され、かつ前記ステータ本体と一体化されることによって前記ステータ本体の真円度を調整するケースと、
を備えたブラシレスモータ。
【請求項2】
各々の前記連結部の板厚及び幅が調整されることで、各々の前記連結部の剛性が同一とされている請求項1記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
前記継鉄の径方向内側に配置された前記連結部ほどヤング率の低い材料が用いられて形成されることで、各々の前記連結部の剛性が同一とされている請求項1記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
前記継鉄の径方向外側に配置された前記連結部に該径方向外側に突出するリブを設けると共に、前記継鉄の径方向内側に配置された前記連結部の外周部に複数の切欠きを設けることで、各々の前記連結部の剛性が同一とされている請求項1記載のブラシレスモータ。
【請求項5】
各々の前記連結部の内外径及び前記継鉄の径方向に沿って切断した断面形状を同一とすると共に、各々の前記連結部が前記継鉄の軸方向に隣り合って配置されることで、各々の前記連結部の剛性が同一とされている請求項1記載のブラシレスモータ。
【請求項6】
環状の継鉄を構成すると共に前記継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ前記継鉄構成部から前記継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部と、それぞれ前記ティース部に巻回された巻回部を複数有し、複数の相を構成する複数の巻線と、前記各コア構成部に一体化され前記ティース部と前記巻回部とを絶縁する絶縁部を複数有すると共に、環状に形成されかつ前記複数の絶縁部を連結された状態で、その径方向に隣り合って配置された連結部を有する複数のインシュレータと、を有するステータ本体の外径を超える内径の円筒状に形成されたケースを、前記ステータ本体の径方向外側に配置するケース配置工程と、
前記ケースの外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ前記複数のインシュレータの連結部の剛性及び前記ケースの外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位の剛性の少なくともいずれかの剛性に対応する加工力を加えることによって塑性変形部を前記ケースの外周部に形成して前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させ、前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させることによって前記ステータ本体の真円度を調整するかしめ工程と、を有し、
前記かしめ工程において、インナ側に配置された前記連結部に接続された前記コア構成部の前記継鉄構成部と対向する部位に加えられる加工力に比して弱い加工力をアウタ側に配置された前記連結部に接続された前記コア構成部の前記継鉄構成部と対向する部位に加えるブラシレスモータの製造方法。
【請求項7】
環状の継鉄を構成すると共に前記継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ前記継鉄構成部から前記継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部と、それぞれ前記ティース部に巻回された巻回部を複数有し、複数の相を構成する複数の巻線と、前記各コア構成部に一体化され前記ティース部と前記巻回部とを絶縁する絶縁部を複数有すると共に、環状に形成されかつ前記複数の絶縁部を連結しかつ各々の剛性が同一とされた連結部を有する複数のインシュレータと、を有するステータ本体の外径を超える内径の円筒状に形成されたケースを、前記ステータ本体の径方向外側に配置するケース配置工程と、
前記ケースの外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ前記複数のインシュレータの連結部の剛性及び前記ケースの外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位の剛性の少なくともいずれかの剛性に対応する加工力を加えることによって塑性変形部を前記ケースの外周部に形成して前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させ、前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させることによって前記ステータ本体の真円度を調整するかしめ工程と、
を有するブラシレスモータの製造方法。
【請求項8】
環状の継鉄を構成すると共に前記継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ前記継鉄構成部から前記継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部と、それぞれ前記ティース部に巻回された巻回部を複数有し、複数の相を構成する複数の巻線と、を有するステータ本体の外径を超える内径の円筒状に形成されたケースを、前記ステータ本体の径方向外側に配置するケース配置工程と、
前記各コア構成部との接触圧力を検出するセンサを備えた芯金を前記ステータ本体の径方向内側に挿通する芯金セット工程と、
前記ケースの外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ前記センサの出力値に対応する加工力を加えることによって塑性変形部を前記ケースの外周部に形成して前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させ、前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させることによって前記ステータ本体の真円度を調整するかしめ工程と、
を有するブラシレスモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータ及びブラシレスモータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、周方向に複数のコア(分割コア)を配列させることによって構成されたステータコアを備えたブラシレスモータが開示されている。この文献に記載された技術について簡単に説明すると、分割コアには導電性の巻線が巻回されるティース部が設けられており、またティース部と巻線部(巻線におけるティース部に巻回された部位)との間には絶縁部が設けられている。さらに、絶縁部は、環状に形成された3つの連結部を介して連結されている。これにより、分割コアが連結部を介して3つのグループとなるように構成されている。そして、この3つのグループが一体化されることによってブラシレスモータのステータが構成されている。また、下記特許文献2には、ステータコアとケース(ヨーク)とを一体化させることによって構成されたステータが開示されている。当該ステータでは、ステータコアを有底円筒状に形成されたケース(ヨーク)内に配置して、ケースの外周部を当該ケースの径方向内側に向けて塑性変形させることによって、ステータコアとケースとを一体化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−110212号公報
【特許文献2】特開2011−142811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された構成では、各々の連結部の剛性が異なるため、分割コアの3つのグループが一体化された際に環状に配列された分割コアの真円度(ステータコアの真円度)が低下することが考えられる。また、上記特許文献2に記載された構成では、ケースを塑性変形させるための加工力にバラつきが生じると、当該ケース内に配置されたステータコアの真円度が低下することが考えられる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、ステータコアの真円度を向上させることができるブラシレスモータ及びブラシレスモータの製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係るブラシレスモータは、環状の継鉄を構成すると共に前記継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ前記継鉄構成部から前記継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部と、それぞれ前記ティース部に巻回された巻回部を複数有し、複数の相を構成する複数の巻線と、前記各コア構成部に一体化され前記ティース部と前記巻回部とを絶縁する絶縁部を複数有すると共に、環状に形成されかつ前記複数の絶縁部を連結しかつ各々の剛性が同一とされた連結部を有する複数のインシュレータと、を有するステータ本体と、前記ステータ本体を該ステータ本体の径方向外側から覆う筒状に形成されていると共に、外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ前記複数のインシュレータの剛性及び前記複数の継鉄構成部と対向する部位の剛性の少なくともいずれかの剛性に対応する加工力が加えられることによって塑性変形部が形成されて前記ステータ本体と一体化され、かつ前記ステータ本体と一体化されることによって前記ステータ本体の真円度を調整するケースと、を備えている。
【0007】
請求項1記載の本発明では、ブラシレスモータのステータが、例えば、次の要領で製造される。先ず、各コア構成部を環状に配列することによってステータコアを形成すると共に巻線を各々の各ティース部に巻回することによりステータ本体を形成する。そして、ステータ本体の径方向外側に円筒状に形成されたケースを配置して、このケースの外周部に塑性変形部を形成することによってステータ本体とケースとを一体化する。以上の要領により、ブラシレスモータのステータが製造される。ここで、本発明では、ケースの外周部における複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ複数のインシュレータの剛性及び複数の継鉄構成部と対向する部位の剛性の少なくともいずれかの剛性に対応する加工力が加えられている。これにより、ケースにおける塑性変形部が形成された部位が継鉄構成部を押圧する押圧力が調整される。すなわち、本発明では、当該押圧力が調整されることによってステータ本体の真円度が調整され、これにより、ステータコアの真円度を向上させることができる。
また、ブラシレスモータのステータが、例えば、次の要領で製造される。先ず、各インシュレータの絶縁部にコア構成部を一体化して、複数のサブアッセンブリを形成する。続いて、この各サブアッセンブリの各ティース部に巻線を巻回して、複数のステータ構成部を形成する。この状態において、ステータ構成部は連結部によって連結されている。そして、この複数のステータ構成部を互いに組み付けてステータ本体を形成する。そして、ステータ本体の径方向外側に円筒状に形成されたケースを配置して、このケースの外周部に塑性変形部を形成することによってステータ本体とケースとを一体化する。以上の要領により、ブラシレスモータのステータが製造される。ここで、本発明では、ケースの外周部における複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ複数のインシュレータの連結部の剛性に対応する加工力が加えられている。これにより、ケースにおける塑性変形部が形成された部位が継鉄構成部を押圧する押圧力が調整される。すなわち、本発明では、前記押圧力が調整されることによってステータ本体の真円度が調整され、これにより、ステータコアの真円度を向上させることができる。
さらに、複数のインシュレータの各々の連結部の剛性が同一とされているため、一の塑性変形部を形成する際にケースに入力される加工力と、他の一の塑性変形部を形成する際にケースに入力される加工力とを同一にすることができる。これにより、本発明では、ステータ本体とケースとを一体化させる際の加工制御を容易にすることができる。
【0008】
請求項2記載の本発明に係るブラシレスモータは、請求項1記載のブラシレスモータにおいて、各々の前記連結部の板厚及び幅が調整されることで、各々の前記連結部の剛性が同一とされている。
【0009】
請求項2記載の本発明では、各々の連結部の剛性が同一とされているため、ステータ本体とステータケースとを一体化させる際の加工制御を容易にすることができる。
【0010】
請求項3記載の本発明に係るブラシレスモータは、請求項1記載のブラシレスモータにおいて、前記継鉄の径方向内側に配置された前記連結部ほどヤング率の低い材料が用いられて形成されることで、各々の前記連結部の剛性が同一とされている。
【0011】
請求項3記載の本発明では、各々の連結部の剛性が同一とされているため、ステータ本体とステータケースとを一体化させる際の加工制御を容易にすることができる。
【0012】
なお、各々の連結部の剛性が同一とされているとは、各々の連結部の剛性が完全に同一とされているものに限定されるものではない。各々の連結部の剛性は、上記の作用効果が得られる範囲内において多少異なっていても良い。
【0013】
請求項4記載の本発明に係るブラシレスモータは、請求項1記載のブラシレスモータにおいて、前記継鉄の径方向外側に配置された前記連結部に該径方向外側に突出するリブを設けると共に、前記継鉄の径方向内側に配置された前記連結部の外周部に複数の切欠きを設けることで、各々の前記連結部の剛性が同一とされている。
【0014】
請求項4記載の本発明では、各々の連結部の剛性が同一とされているため、ステータ本体とステータケースとを一体化させる際の加工制御を容易にすることができる。
【0015】
請求項5記載の本発明に係るブラシレスモータは、請求項1記載のブラシレスモータにおいて、各々の前記連結部の内外径及び前記継鉄の径方向に沿って切断した断面形状を同一とすると共に、各々の前記連結部が前記継鉄の軸方向に隣り合って配置されることで、各々の前記連結部の剛性が同一とされている。
【0016】
請求項5記載の本発明では、各々の連結部の剛性が同一とされているため、ステータ本体とステータケースとを一体化させる際の加工制御を容易にすることができる。また、連結部を継鉄の軸方向に隣り合って配置することができるため、ステータの径方向の小型化を図ることができる。
【0017】
請求項6記載の本発明に係るブラシレスモータの製造方法は、環状の継鉄を構成すると共に前記継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ前記継鉄構成部から前記継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部と、それぞれ前記ティース部に巻回された巻回部を複数有し、複数の相を構成する複数の巻線と、前記各コア構成部に一体化され前記ティース部と前記巻回部とを絶縁する絶縁部を複数有すると共に、環状に形成されかつ前記複数の絶縁部を連結された状態で、その径方向に隣り合って配置された連結部を有する複数のインシュレータと、を有するステータ本体の外径を超える内径の円筒状に形成されたケースを、前記ステータ本体の径方向外側に配置するケース配置工程と、前記ケースの外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ前記複数のインシュレータの連結部の剛性及び前記ケースの外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位の剛性の少なくともいずれかの剛性に対応する加工力を加えることによって塑性変形部を前記ケースの外周部に形成して前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させ、前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させることによって前記ステータ本体の真円度を調整するかしめ工程と、を有し、前記かしめ工程において、インナ側に配置された前記連結部に接続された前記コア構成部の前記継鉄構成部と対向する部位に加えられる加工力に比して弱い加工力をアウタ側に配置された前記連結部に接続された前記コア構成部の前記継鉄構成部と対向する部位に加える。
【0018】
請求項6記載の本発明では、上記のケース配置工程及びかしめ工程を経てブラシレスモータのステータが製造される。ここで、本発明では、かしめ工程において、ケースの外周部における複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ上記の加工力が加えられている。これにより、ケースにおける塑性変形部が形成された部位が継鉄構成部を押圧する押圧力が調整される。すなわち、本発明では、前記押圧力が調整されることによってステータ本体の真円度が調整され、これにより、各々の連結部の剛性に差異があったとしても、ステータコアの真円度を向上させることができる。
さらに、ケースにおける塑性変形部が形成された部位が各々のコア構成部を押圧した際に各連結部が変形することによる反力を考慮して、上記の加工力の強弱が調整されている。これにより、ケースとステータコアとが一体化された際に、コア構成部の配列が乱れることが抑制され、ひいてはステータコアの真円度を向上させることができる。
【0019】
請求項7記載の本発明に係るブラシレスモータの製造方法は、環状の継鉄を構成すると共に前記継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ前記継鉄構成部から前記継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部と、それぞれ前記ティース部に巻回された巻回部を複数有し、複数の相を構成する複数の巻線と、前記各コア構成部に一体化され前記ティース部と前記巻回部とを絶縁する絶縁部を複数有すると共に、環状に形成されかつ前記複数の絶縁部を連結しかつ各々の剛性が同一とされた連結部を有する複数のインシュレータと、を有するステータ本体の外径を超える内径の円筒状に形成されたケースを、前記ステータ本体の径方向外側に配置するケース配置工程と、前記ケースの外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ前記複数のインシュレータの連結部の剛性及び前記ケースの外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位の剛性の少なくともいずれかの剛性に対応する加工力を加えることによって塑性変形部を前記ケースの外周部に形成して前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させ、前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させることによって前記ステータ本体の真円度を調整するかしめ工程と、を有する。
【0020】
請求項7記載の本発明では、上記のケース配置工程及びかしめ工程を経てブラシレスモータのステータが製造される。ここで、本発明では、かしめ工程において、ケースの外周部における複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ上記の加工力が加えられている。これにより、ケースにおける塑性変形部が形成された部位が継鉄構成部を押圧する押圧力が調整される。すなわち、本発明では、前記押圧力が調整されることによってステータ本体の真円度が調整され、これにより、ステータコアの真円度を向上させることができる。
また、かしめ工程において、複数のインシュレータの各々の連結部の剛性が同一とされているステータ本体とケースとが一体化される。そのため、一の塑性変形部を形成する際にケースに入力される加工力と、他の一の塑性変形部を形成する際にケースに入力される加工力とを同一にすることができる。これにより、本発明では、かしめ工程の加工制御を容易にすることができる。
【0021】
請求項8記載の本発明に係るブラシレスモータの製造方法は、環状の継鉄を構成すると共に前記継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ前記継鉄構成部から前記継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部と、それぞれ前記ティース部に巻回された巻回部を複数有し、複数の相を構成する複数の巻線と、を有するステータ本体の外径を超える内径の円筒状に形成されたケースを、前記ステータ本体の径方向外側に配置するケース配置工程と、前記各コア構成部との接触圧力を検出するセンサを備えた芯金を前記ステータ本体の径方向内側に挿通する芯金セット工程と、前記ケースの外周部における前記複数の継鉄構成部と対向する部位にそれぞれ前記センサの出力値に対応する加工力を加えることによって塑性変形部を前記ケースの外周部に形成して前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させ、前記ケースと前記ステータ本体とを一体化させることによって前記ステータ本体の真円度を調整するかしめ工程と、を有している。
【0022】
請求項8記載の本発明では、上記のケース配置工程、芯金セット工程及びかしめ工程を経てブラシレスモータのステータが製造される。ここで、本発明では、コア構成部が芯金に当接すると、芯金に設けられたセンサが各コア構成部との接触圧力を出力する。この出力値に基づいてケースの外周部への加工力を調整することによってステータ本体の真円度が調整され、これにより、ステータコアの真円度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】本実施形態に係るブラシレスモータを示す平面図である。
図1B】本実施形態に係るステータを示す斜視図である。
図2A】U相のステータ構成部の斜視図である。
図2B】V相のステータ構成部の斜視図である。
図2C】W相のステータ構成部の斜視図である。
図2D】環状に配列されたコア構成部を拡大して示す拡大平面図である。
図3A図2A図2Cに示された複数のステータ構成部が互いに組み付けられる過程を示す斜視図である。
図3B図3Aよりも組み付けが進行した状態を示す斜視図である。
図4A】本実施形態に係るインシュレータの連結部を示す拡大断面図である。
図4B】第1変形例に係るインシュレータの連結部を示す拡大平面図及び拡大断面図である。
図4C】第2変形例に係るインシュレータの連結部を示す拡大断面図である。
図4D】第3変形例に係るインシュレータの連結部を示す拡大斜視図である。
図4E】第4変形例に係るインシュレータの連結部を示す拡大断面図である。
図5】芯金がステータコアの径方向内側に挿通された状態を示す縦断面図である。
図6A】芯金の可変コア保持部が拡径することによって該可変コア保持部の外周面が内側環状部の円弧面に当接した状態を示す縦断面図である。
図6B】芯金の可変コア保持部が拡径することによって該可変コア保持部の外周面が内側環状部の円弧面に当接した状態を示す平面図である。
図7】芯金が挿通されたステータコア及びステータケースがかしめ冶具にセットされた状態を示す縦断面図である。
図8図7に示された芯金、ステータコア、ステータケース及びかしめ冶具をステータコアの軸方向一方側から見た斜視断面図である。
図9】プレスによる加工力がかしめ冶具に作用した際の芯金、ステータコア、ステータケース及びかしめ冶具を示す縦断面図である。
図10A】プレスによる加工力がかしめ冶具に作用した際のステータコア及びステータケースを示す平面図である。
図10B図10Aの一点鎖線で囲まれた部分を拡大して示す拡大平面図である。
図11】芯金が取り外される際の芯金、ステータコア及びステータケースを示す縦断面図である。
図12A】変形例に係るステータにおける塑性変形部が形成された部位を拡大して示す図10Bに相当する拡大平面図である。
図12B】他の変形例に係るステータにおける塑性変形部が形成された部位を拡大して示す図10Bに相当する拡大平面図である。
図13】プレスによる加工力がかしめ冶具に作用した際のステータコア及びひずみを有するステータケースを示す図10Aに対応する平面図である。
図14】プレスによる加工力がかしめ冶具に作用した際のステータコア及び板厚のバラつきを有するステータケースを示す図10Aに対応する拡大平面図である。
図15】プレスによる加工力がかしめ冶具に作用した際のステータコア、ステータケース及び芯金を示す図10Aに対応する平面図である。
図16】周方向への位置にバラつきを有する複数のコア構成部を拡大して示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。なお、本実施形態のうち、後述する変形例(図4Bに示される本変形例から図4Eに示される第4変形例)及びステータの他の製造方法のうち図13から図15に示される製造方法までが本発明の実施形態に相当する。このため、後述する各々のインシュレータの連結部の剛性が同一でない部分に対応する図4Aに示される構成は参考例とする。
【0027】
図1Aに示されるように、本実施形態に係るブラシレスモータ60は、インナロータタイプのブラシレスモータであり、回転磁界を発生させるステータ10と、ステータ10の回転磁界によって回転するロータ50と、を有して構成されている。また、図1Bに示されるように、ステータ10は、ケースとしてのステータケース70と、U相のステータ構成部12U、V相のステータ構成部12V、及びW相のステータ構成部12Wを有するステータ本体11と、含んで構成されている。以下先ず、ステータケース70について説明し、次いでステータ構成部12U,12V,12W及びロータ50について説明し、最後にステータ10及びブラシレスモータ60の製造方法について説明する。
【0028】
(ステータケース70)
図1A及び図1Bに示されるように、ステータケース70は、薄肉の円筒状に形成されていると共に、軟磁性金属(一例として「鋼」「アルミ合金」「鋼合金」等)を用いてその周方向に沿って一体に形成されている。また、後述する塑性変形部72が形成される前のステータケース70の内径D1は、ステータコア20(環状に配列されたコア構成部14U,14V,14W)の外径D2を超える内径とされている。
【0029】
また、ステータケース70の外周面には、該ステータケース70の周方向に沿って等間隔に配置された複数の塑性変形部72(本実施形態では12箇所の塑性変形部72)が形成されている。この塑性変形部72がステータケース70に形成されることによって、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位の内径が減少し、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位とステータコア20とが当接する。これにより、ステータケース70とステータコア20とが一体化される、即ち、ステータケース70とステータ本体11とが一体化される構成である。
【0030】
また、塑性変形部72は、後に詳述する継鉄構成部22U,22V,22Wに形成された各々の凸部78U,78V,78Wと対向する部位に形成されている。
【0031】
(ステータ構成部12U,12V,12W)
図2Aに示されるように、U相のステータ構成部12Uは、複数のコア構成部14Uと、巻線16Uと、インシュレータ18Uを有して構成されている。複数のコア構成部14Uは、後述するV相の複数のコア構成部14Vと、W相の複数のコア構成部14Wとでステータコア20(いずれも図1A参照)を構成するものであり、それぞれ複数の継鉄構成部22Uと、複数のティース部24Uと、複数の芯金当接部25Uと、を有している。
【0032】
図2A及び図2Dに示されるように、複数の継鉄構成部22Uは、後述するV相の複数の継鉄構成部22Vと、W相の複数の継鉄構成部22Wとで継鉄40を構成するものであり、それぞれ円弧状に形成されている。複数のティース部24Uは、それぞれ継鉄構成部22Uに一体に形成されており、この継鉄構成部22Uから継鉄40の径方向内側に向けて突出されている。
【0033】
また、継鉄構成部22Uにおけるティース部24Uと対向する部位には、継鉄構成部22Uの径方向外側に向けて突出すると共に該継鉄構成部22Uの軸方向に延びる凸部78Uが形成されている。また、凸部78Uの中間部(継鉄構成部22Uの周方向の中間部)には、継鉄構成部22Uの径方向外側に向けて開放され、かつ継鉄構成部22Uの軸方向に沿って延びるU字溝状の凹部80Uが形成されている。
【0034】
また、ティース部24Uにおけるロータ50(図1A参照)と近接する側の端部には、該ロータ50の周方向に沿って(環状に配列されたマグネット54S,54Nに沿って)延出する芯金当接部25Uが設けられている。この芯金当接部25Uは、後述するV相の芯金当接部25Vと、W相の芯金当接部25Wとで内側環状部41を構成するものであり、それぞれの芯金当接部25U,25V,25Wのロータ50側の面は、該ロータ50を軸中心とする円弧面Rとされている。
【0035】
図2Aに示されるように、巻線16Uは、U相を構成しており、複数の巻回部26Uと、複数の渡り線28Uとを有している。複数の巻回部26Uは、それぞれ後述する絶縁部32Uを介してティース部24Uに集中的に巻回されており、複数の渡り線28Uによって互いに接続されている。渡り線28Uは、後述するインシュレータ18Uに形成された連結部34Uの外周面に沿って配線されている(巻き付けられている)。また、巻線16Uの両端側の端末部30Uは、ティース部24Uからステータ10の軸方向一方側(矢印Z1側)に導出されている。
【0036】
インシュレータ18Uは、樹脂製とされており、複数の絶縁部32Uと、連結部34Uとを一体に有している。複数の絶縁部32Uは、上述の複数のティース部24Uと同数設けられている。この複数の絶縁部32Uは、絶縁本体部32U1と延出部32U2を有している。絶縁本体部32U1は、上述の複数のコア構成部14Uの表面にそれぞれ一体成形や装着嵌合される等により一体化されており、コア構成部14Uに形成されたティース部24Uと巻回部26Uとを絶縁している。延出部32U2は、コア構成部14Uよりも径方向内側に位置されると共に、絶縁本体部32U1から継鉄40の軸方向一方側(Z1側)に沿って延出されている。
【0037】
連結部34Uは、複数の絶縁部32Uの軸方向一方側(Z1側)に設けられている。この連結部34Uは、リング状(環状に)形成されており、複数の絶縁部32U(より具体的には、複数の絶縁部32Uにおける延出部32U2の延出端部(Z1側の端部))を連結しており、コア構成部14Uよりも径方向内側に位置されている。この連結部34Uの外周面における複数の絶縁部32Uの間には、突起状の保持部36Uが径方向外側に向けて複数突出されている。この保持部36Uは、上述の渡り線28Uを連結部34Uの軸方向他方側(矢印Z2側)から保持している。また、連結部34Uにおける複数の絶縁部32Uの間には、軸方向他方側(矢印Z2側)に開口する切欠き38Uが複数形成されている。
【0038】
図2Bに示されるV相のステータ構成部12Vは、上述のU相のステータ構成部12Uと基本的な構成は同一とされている。つまり、このV相のステータ構成部12Vは、複数の継鉄構成部22Vと、複数のティース部24Vと、複数の芯金当接部25Vと、巻線16Vと、インシュレータ18Vを有して構成されている。複数の継鉄構成部22Vと、複数のティース部24Vと、複数の芯金当接部25Vと、巻線16Vと、インシュレータ18Vは、上述の複数の継鉄構成部22Uと、複数のティース部24Uと、複数の芯金当接部25Uと、巻線16Uと、インシュレータ18U(いずれも図2A参照)に相当するものである。また、凸部78V及び凹部80Vは、上述の凸部78U及び凹部80Uに相当するものである。なお、このV相のステータ構成部12Vにおいて、連結部34Vは、リング状に形成されると共に、上述のU相の連結部34U(図2A参照)よりも小径に形成されている。また、保持部36Vは、渡り線28Vを連結部34Vの軸方向一方側(矢印Z1側)から保持しており、且つ、コア構成部14Vよりも径方向内側に位置されている。
【0039】
図2Cに示されるW相のステータ構成部12Wも、上述のU相のステータ構成部12Uと基本的な構成は同一とされている。つまり、このW相のステータ構成部12Wは、複数の継鉄構成部22Wと、複数のティース部24Wと、複数の芯金当接部25Wと、巻線16Wと、インシュレータ18Wを有して構成されている。複数の継鉄構成部22Wと、複数のティース部24Wと、複数の芯金当接部25Wと、巻線16Wと、インシュレータ18Wは、上述の複数の継鉄構成部22Uと、複数のティース部24Uと、複数の芯金当接部25Uと、巻線16Uと、インシュレータ18U(いずれも図2A参照)に相当するものである。また、凸部78W及び凹部80Wは、上述の凸部78U及び凹部80Uに相当するものである。なお、このW相のステータ構成部12Wにおいて、連結部34Wは、リング状に形成されると共に、上述のV相の連結部34V(図2B参照)よりも小径に形成されている。また、連結部34Wからは上述の切欠き(図2Aの切欠き38U参照)が省かれている。また、保持部36Wは、渡り線28Wを連結部34Wの軸方向一方側(矢印Z1側)から保持しており、且つ、コア構成部14Wよりも径方向内側に位置されている。
【0040】
そして、図1Aに示されるように、この複数のステータ構成部12U,12V,12Wは、後に詳述する如く、互いに組み付けられた後に、その外周部からステータケース70に保持されることによってステータ10を構成している。また、このステータ10では、複数の継鉄構成部22U,22V,22Wによって環状の継鉄40が形成されている。
【0041】
さらに、継鉄40を構成する各々の継鉄構成部22U,22V,22Wに形成された凸部78U,78V,78Wは、該継鉄40の軸方向から見てその周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0042】
また、図3A図3B及び図4Aに示されるように、複数の連結部34U,34V,34Wは、継鉄40の径方向内側に径方向に間隙を有して配置されると共に、継鉄40と同軸上に設けられている。また、V相の保持部36Vは、U相の連結部34Uの内周面と嵌合されており、W相の保持部36Wは、V相の連結部34Vの内周面と嵌合されている。そして、これにより、複数の連結部34U,34V,34Wは、互いに径方向に離間した状態で保持されている。つまり、保持部36U,36V,36Wは、複数の連結部34U,34V,34Wの径方向間に設けられ、複数の連結部34U,34V,34Wを互いに径方向に離間した状態で保持する突起状のスペーサの役割も果たしている。
【0043】
また、U相の連結部34Uにおける保持部36U及び切欠き38Uが形成されていない部位の断面、V相の連結部34Vにおける保持部36V及び切欠き38Vが形成されていない部位の断面、及びW相の連結部34Wにおける保持部36W及び切欠き38Wが形成されていない部位の断面の形状及び断面積は同一とされている。これにより、U相の連結部34Uの剛性よりもV相の連結部34Vの剛性の方が高く、またV相の連結部34Vの剛性よりもW相の連結部の剛性の方が高くなっている。
【0044】
さらに、上述のように、複数の連結部34U,34V,34Wが継鉄40の径方向に間隙を有して配置された状態では、V相の渡り線28Vは、U相の連結部34Uに形成された切欠き38Uの内側を通過しており(切欠き38Uに収容されており)、W相の渡り線28Wは、U相の連結部34Uに形成された切欠き38Uと、V相の連結部34Vに形成された切欠き38Vの内側を通過している(切欠き38Uと切欠き38Vとに収容されている)。
【0045】
(ロータ50)
図1Aに示されるようにロータ50は、ステータ10の径方向内側に配置されていると共に、軸線回りに回転可能に支持された回転軸部52と、該回転軸部52の周方向に沿って配設されたマグネット54S,54Nと、を含んで構成されている。具体的には、回転軸部52は、棒状の鋼材に浸炭処理等の表面処理が施されることによって形成されており、また回転軸部52は、図示しない軸受部材により回転可能に支持されている。さらに、回転軸部52の回りには、その周方向に沿ってS極のマグネット54SとN局のマグネット54Nとが交互に配置されている。このマグネット54S,54Nは、支持部材56を介して回転軸部52に固定されている。
【0046】
(ステータ10及びブラシレスモータ60の製造方法)
次に、上記構成からなるステータ10及びブラシレスモータ60の製造方法について説明する。
【0047】
先ず、図2Aに示されるように、インシュレータ18Uの絶縁部32Uにコア構成部14Uを一体化して、インシュレータ18U及び複数のコア構成部14UからなるU相のサブアッセンブリ42Uを形成する。同様に、図2Bに示されるように、インシュレータ18Vの絶縁部32Vにコア構成部14Vを一体化して、インシュレータ18V及び複数のコア構成部14VからなるV相のサブアッセンブリ42Vを形成する。また、図2Cに示されるように、インシュレータ18Wの絶縁部32Wにコア構成部14Wを一体化して、インシュレータ18U及び複数のコア構成部14VからなるW相のサブアッセンブリ42Wを形成する。そして、このようにして、U相、V相、W相毎にサブアッセンブリ42U,42V,42Wを形成する(サブアッセンブリ形成工程)。
【0048】
続いて、図2Aに示されるように、U相のサブアッセンブリ42Uの各ティース部24Uに径方向外側から巻線16Uをフライヤ装置(図示せず)を用いて巻回して、サブアッセンブリ42Uに複数の巻回部26Uが形成されたU相のステータ構成部12Uを形成する。
【0049】
同様に、図2Bに示されるように、V相のサブアッセンブリ42Vの各ティース部24Vに径方向外側から巻線16Vを上述のフライヤ装置を用いて巻回して、サブアッセンブリ42Vに複数の巻回部26Vが形成されたV相のステータ構成部12Vを形成する。また、図2Cに示されるように、W相のサブアッセンブリ42Wの各ティース部24Wに径方向外側から巻線16Wを上述のフライヤ装置を用いて巻回して、サブアッセンブリ42Wに複数の巻回部26Wが形成されたW相のステータ構成部12Wを形成する。
【0050】
このとき、図2Aに示されるように、複数の渡り線28Uについては、連結部34Uの外周面に沿って配線する。また、この複数の渡り線28Uを突起状の保持部36Uによって連結部34Uの軸方向他方側(矢印Z2側)から保持する。同様に、図2Bに示されるように、複数の渡り線28Vについては、連結部34Vの外周面に沿って配線する。また、この複数の渡り線28Vを突起状の保持部36Vによって連結部34Vの軸方向一方側(矢印Z1側)から保持する。また、図2Cに示されるように、複数の渡り線28Wについては、連結部34Wの外周面に沿って配線する。また、この複数の渡り線28Wを突起状の保持部36Wによって連結部34Wの軸方向一方側(矢印Z1側)から保持する。
【0051】
また、図2Aに示されるように、巻線16Uの両端側の端末部30Uについては、ティース部24Uからステータ10の軸方向一方側(矢印Z1側)に導出させる。同様に、図2Bに示されるように、巻線16Vの両端側の端末部30Vについては、ティース部24Vからステータ10の軸方向一方側に導出させる。また、図2Cに示されるように、巻線16Wの両端側の端末部30Wについては、ティース部24Wからステータ10の軸方向一方側に導出させる。そして、このようにして、U相、V相、W相毎にステータ構成部12U,12V,12Wを形成する(ステータ構成部形成工程)。
【0052】
続いて、図3A図3Bに示されるように、W相のステータ構成部12Wに対し、V相のステータ構成部12Vを周方向に所定の角度ずらした状態で、V相のステータ構成部12Vを軸方向一方側(矢印Z1側)からW相のステータ構成部12Wに組み付ける。また、V相のステータ構成部12Vに対し、U相のステータ構成部12Uを周方向に所定の角度ずらした状態で、U相のステータ構成部12Uを軸方向一方側(矢印Z1側)からV相のステータ構成部12V及びW相のステータ構成部12Wに組み付ける。
【0053】
このとき、複数のコア構成部14U,14V,14Wが環状に配列されると共に、図2Dに示されるように、複数の継鉄構成部22U,22V,22Wの内周端はそれぞれ両側に隣り合う一対の継鉄構成部22U,22V,22Wの内周端に当接する(コア配列工程)。
【0054】
また、図3A図3Bに示されるように、V相の保持部36Vについては、U相の連結部34Uの内周面に嵌合し、W相の保持部36Wについては、V相の連結部34Vの内周面に嵌合する。そして、このようにして、複数の連結部34U,34V,34Wを突起状の保持部36U,36V,36Wによって互いに径方向に離間した状態で保持する。
【0055】
さらに、このときには、V相の渡り線28Vを、U相の連結部34Uに形成された切欠き38Uの内側に通過させ、W相の渡り線28Wを、U相の連結部34Uに形成された切欠き38Uと、V相の連結部34Vに形成された切欠き38Vの内側に通過させる。
【0056】
次に、ステータケース70とステータコア20(ステータ本体11)とを一体化させる工程について説明する。
【0057】
図5に示されるように、ステータケース70をステータコア20の径方向外側に配置させる即ち、ステータケース70をステータコア20の継鉄40に沿って配置される(ケース配置工程)。なお、塑性変形部72が形成される前のステータケース70の内径D1(図1A参照)は、ステータコア20外径D2(図1A参照)を超える内径とされているが、D1とD2との差は微小である。そのため、図5においては、ステータケース70の内径D1とステータコア20外径D2とが一致するように見えている。
【0058】
次いで、芯金100の可変コア保持部102をステータコア20の内側環状部41の内周側に挿通させ、図6A及び図6Bに示されるように、可変コア保持部102を拡径させることによって、可変コア保持部102の外周面を芯金当接部25U,25V,25Wの円弧面Rに当接させる。そして、可変コア保持部102を更に拡径させることによって継鉄40の外周面(継鉄構成部22U,22V,22Wに形成された凸部78U,78V,78W)をステータケース70の内周面に当接させる(芯金セット工程)。なお、可変コア保持部102をステータコア20の内側環状部41に挿通させる際の可変コア保持部102の外径は、内側環状部41の内径に対応して充分に縮径されている。
【0059】
ここで、芯金100の構成について簡単に説明すると、芯金100は環状に配列された12個の可変コア保持部102と、この可変コア保持部102を支持すると共に環状に配列された12個の可変コア保持部102をその径方向外側に拡径させる上側保持部104及び下側保持部106と、を主要な要素として構成されている。可変コア保持部102の外周面は芯金当接部25U,25V,25Wの円弧面Rに対応する円弧面状に形成されており、また可変コア保持部102の内周部はカム部102Aとされている。また、上側保持部104及び下側保持部106は円形板状に形成されており、また、上側保持部104及び下側保持部106の外周部にはそれぞれ傾斜面104A,106Aが形成されている。この上側保持部104の傾斜面104Aと下側保持部106の傾斜面106Aとの間に可変コア保持部102のカム部102Aが狭持されている。さらに、上側保持部104及び下側保持部106の周方向の中心部には貫通孔が形成されており、また、この貫通孔には軸部108が挿通されている。これにより、上側保持部104及び下側保持部106が軸部108に沿ってスライドすることが可能となっている。上側保持部104及び下側保持部106が軸部108に沿ってスライドし、上側保持部104と下側保持部106との間隔が狭められることによって、環状に配列された12個の可変コア保持部102が拡径する構成である。
【0060】
また、軸部108にはスプリング110が挿通されており、さらにスプリング110は下側保持部104を上側保持部106側に向けて付勢している。これにより、可変コア保持部102が所定の押圧力F1でコア構成部14U,14V,14Wを押圧している。また、塑性変形部72を形成するためにステータケース70の外周部に入力される押圧力が所定値を超えた際に、可変コア保持部102が縮径するように押圧力F1(スプリング110のイニシャル)が設定されている。なお、軸部108には、ステータコア20及びステータケース70に対する可変コア保持部102の位置決め等を行うための位置決め冶具112が取付けられている。
【0061】
次いで、図7及び図8に示されるように、ステータケース70、ステータコア20及び芯金100がかしめ冶具114にセットされる。
【0062】
ここで、かしめ冶具114について簡単に説明すると、かしめ冶具114は、ステータケース70、ステータコア20及び芯金100を支持する円筒状のベース部116と、ベース部116の上端部にその径方向に沿って移動可能に支持されかつベース部116の周方向に沿って等間隔に配置された12個のパンチ118と、パンチ118をベース部116の径方向内側に移動させるプレス部120と、を主要な要素として構成されている。ベース部116の上端部には、その周方向に沿って等間隔に配置されかつ該ベース部116の径方向に沿って延びる12個の凹溝(図示せず)が形成されている。この凹溝内にパンチ118が収容されることによってパンチ118がベース部116の径方向にスライドすることが可能となっている。また、パンチ118は、矩形ブロック状に形成されていると共に、その一端はステータケース70の外周面に当接する当接部とされている。また、図10Bに示されるように当接部には、ステータケース70及びステータコア20の軸方向から見て該ステータケース70及びステータコア20の径方向内側に向けて突出する一対の突起部118Aが設けられている。また、この一対の突起部118Aは、コア構成部14U,14V,14Wに設けられた凸部78U,78V,78Wと対向した状態において、凸部78U,78V,78Wに形成された凹部80U,80V,80Wを跨ぐように配置されている。図7及び図8に示されるように、パンチ118の他端は、プレス部120側に向けて該パンチ118の一端(当接部)側に傾斜する傾斜面118Bとされている。また、プレス部120は円筒状に形成されていると共に、該プレス部120の内周面におけるベース部116側の部位は、該ベース部側に向けて拡径するテーパ面120Aとされている。このテーパ面120Aがパンチ118の他端に形成された傾斜面118Bに当接し、プレス部120とベース部116との間隔が狭められることによって12個のパンチがベース部116の径方向内側に向けてスライドする構成である。
【0063】
図9図10A及び図10Bに示されるように、プレス部120にプレス機による加工力F2が入力されてパンチ118の突起部118Aがステータケース70の外周部を押圧することによって、ステータケース70の外周部に12個の塑性変形部72が該ステータケース70の周方向に沿って等間隔に形成される。これにより、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位が縮径され、該部位が各々のコア構成部14U,14V,14Wを押圧する。その結果、ステータケース70とステータコア20(ステータ本体11(図1B参照))とが一体化される(かしめ工程)。
【0064】
ここで、本実施形態では、U相の継鉄構成部22Uと対向する部位に塑性変形部72を形成する際にステータケース70に入力される加工力F3、V相の継鉄構成部22Vと対向する部位に塑性変形部72を形成する際にステータケース70に入力される加工力F4、及びW相の継鉄構成部22Wと対向する部位に塑性変形部72を形成する際にステータケース70に入力される加工力F5が、インシュレータ18U,18V,18Wの連結部34U,34V,34W(図1B参照)の剛性に応じて調整されている。具体的には、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位が各々のコア構成部14U,14V,14Wを押圧した際に、各コア構成部14U,14V,14Wが径方向内側に同じ距離移動するようにF3,F4及びF5が設定されている。より詳しく説明すると、各連結部34U,34V,34Wが変形することによる反力を考慮して、加工力F3よりも加工力F4の方が大きく、また、加工力F4よりも加工力F5の方が大きく設定されている。なお、これらの加工力F3,F4,F5は計算又は試作を行うことにより決定すればよい。
【0065】
以上説明した加工力F3,F4,F5とすることにより、ステータケース70とステータコア20とが一体化された際に、コア構成部14U,14V,14W(ステータ構成部12U,12V,12W)の配列が乱れることが抑制され、ひいてはステータコア20(ステータ本体11)の真円度が向上する。換言すると、上記の加工力F3,F4,F5が加えられることにより塑性変形部72が形成されたステータケース70は、ステータコア20(ステータ本体11)の真円度を調整する調整部材として機能している。
【0066】
次いで、図11に示されるように、ステータケース70、ステータコア20及び芯金100がかしめ冶具114から取外される。そして、スプリング110の張力を開放することによって可変コア保持部102が縮径されて、ステータコア20に挿通された芯金100が該ステータコア20から取外される。
【0067】
以上の工程を経てステータケース70とステータコア20(ステータ本体11)とが一体化され、前述したステータ10が構成される。そして、ステータ10の径方向内側にロータが配置されることによってブラシレスモータ60が製造される(ロータ配置工程)。
【0068】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0069】
図1Aに示されるように、本実施形態のブラシレスモータ60は、上記構成のロータ50、ステータコア20及びステータケース70を有して構成されている。巻線16に通電されてステータコア20及びステータケース70に回転磁界が生じることによってマグネット54S,54Nを有するロータ50が回転軸部52を軸中心として回転する。
【0070】
また、本実施形態では、ステータコア20が、上記構成の継鉄40、ティース部24及び内側環状部41を有して構成されており、またステータコア20はステータケース70と一体化されている。ここで、本実施形態では、内側環状部41におけるロータ50側の面(芯金当接部25U,25V,25Wの内周面)が、該ロータ50を軸中心とする円弧面Rとされている。そのため、この円弧面Rの内径に対応する芯金100(図5参照)を内側環状部41の径方向内側に配置した状態でステータケース70の外周部に塑性変形部72を形成することが可能となる。これにより、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位がステータコア20の継鉄40(凸部78U,78V,78W)を押圧したとしても、ステータコア20の内側環状部41の真円度が保たれる。
【0071】
さらに、本実施形態では、ステータコア20の継鉄構成部22U,22V,22Wに形成された凸部78U,78V,78Wとステータケース70の外周部に形成された塑性変形部72とが対向している。そのため、塑性変形部72がステータケース70の外周部に形成された際に、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位及びステータコア20の継鉄構成部22U,22V,22Wにおける凸部78U,78V,78Wが形成された部位に応力が集中する。これにより、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位とステータコア20の継鉄構成部22U,22V,22Wにおける凸部78U,78V,78Wが形成された部位との密着度が高まり、ステータケース70とステータコア20との固着力が向上する。
【0072】
また、本実施形態では、継鉄構成部22U,22V,22Wに形成された凸部78U,78V,78Wが継鉄40の軸方向から見て該継鉄40の周方向に沿って等間隔に配置されていると共に、ステータケース70に形成された塑性変形部72が継鉄40の軸方向から見て該継鉄40の周方向に沿って等間隔に配置されている。そのため、継鉄40はステータケース70にその周方向に沿って均等に押圧される。
【0073】
以上をまとめると、本実施形態のブラシレスモータ60では、ステータコア20の真円度及びステータケース70とステータコア20との固着力が向上されている。
【0074】
また、本実施形態では、継鉄構成部22U,22V,22Wに形成された凸部78U,78V,78Wがティース部24と対向する部位に配置されている。そのため、可変コア保持部102(図5参照)はパンチ118からステータケース70を介して入力される押圧力を垂直に支持することが可能となる。これにより、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位とステータコア20の継鉄構成部22U,22V,22Wにおける凸部78U,78V,78Wが形成された部位との密着度が向上する。その結果、本実施形態では、ステータケース70とステータコア20との固着力をより一層向上させることができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、ステータケース70の外周部に3の整数倍又は4の整数倍の個数(12個(箇所))の塑性変形部72が形成されている。そのため、ステータケース70によるステータコア20の支持力をステータケース70の周方向沿って均等にすることができると共に、塑性変形部72を形成するためのパンチ118をステータケース70の外周部に当接させる際の加工制御を容易にすることができる。
【0076】
また、本実施形態では、ステータコア20が12個のコア構成部14U,14V,14Wによる分割構造とされていると共に、ステータケース70の外周部に12個(箇所)の塑性変形部72が形成されている。これにより、ステータケース70による各々のコア構成部14U,14V,14Wの支持力を均等にすることができる。
【0077】
また、本実施形態のステータ10の製造方法では、ステータコア20の外径を超える内径の円筒状に形成されたステータケース70をステータコア20の継鉄40に沿って配置させるケース配置工程を経る。そのため、ステータケース70の内周面とステータコア20の外周面(凸部78U,78V,78W)とが摺接することによるバリの発生を抑制することができる。これにより、モータロック及び回路ショート等の不具合を抑制することができる。
【0078】
さらに、図6A図11に示されるように、本実施形態では、前述の芯金セット工程を経る。そして、ステータケース70の外周部に複数の塑性変形部72が形成されることによって、ステータケース70とステータコア20とが一体化されるかしめ工程を経る。ここで、本実施形態では、可変コア保持部102の外周面と芯金当接部25U,25V,25Wの円弧面Rとが当接した状態で、即ち、可変コア保持部102によって内側環状部41(芯金当接部25U,25V,25W)の真円度が確保された状態でステータケース70の外周面に塑性変形部72が形成される。そのため、ステータケース70の外周面に塑性変形部72を形成するための外力が加わったとしても、内側環状部41の真円度が保たれる。
【0079】
また、本実施形態では、ステータケース70の外周面に塑性変形部72を形成するための外力がパンチ118から入力されると、この外力は芯金100の可変コア保持部102によって支持される。すなわち、ステータケース70の外周面に塑性変形部72を形成するための外力が加わった際に、ステータコア20の内側環状部41が縮径しない。これにより、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位とステータコア20の継鉄40(凸部78U,78V,78W)との密着度が高まり、ステータケース70とステータコア20との固着力が向上する。
【0080】
以上をまとめると、本実施形態のステータの製造方法では、ステータコア20の真円度及びステータケース70とステータコア20との固着力を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、可変コア保持部102が拡径することによって該可変コア保持部102の外周面と芯金当接部25U,25V,25Wの円弧面Rとが当接した後に、可変コア保持部102が更に拡径することによってステータコア20の継鉄40の外周面(凸部78U,78V,78W)とステータケース70の内周面とが当接する。そして、継鉄40の外周面(凸部78U,78V,78W)とステータケース70の内周面とが当接した状態でステータケース70の外周面に塑性変形部72が形成される。これにより、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位とステータコア20の継鉄40(凸部78U,78V,78W)との密着度がより一層高まる。その結果、本実施形態では、ステータケース70とステータコア20との固着力をより一層向上させることができる。
【0082】
さらに、本実施形態では、ステータケース70の外周面に塑性変形部72を形成するための外力(押圧力)が所定値を超えると、可変コア保持部102が縮径するようにスプリング110のイニシャルが設定されている。これにより、本実施形態では、ステータケース70とステータコア20とを所望の固着力で一体化させることができる。
【0083】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果について説明する。
【0084】
図10Aに示されるように、本実施形態では、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位が各々のコア構成部14U,14V,14Wを押圧した際に各連結部34U,34V,34W(図1B参照)が変形することによる反力を考慮して、加工力F3,F4,F5が設定されている。これにより、ステータケース70とステータコア20とが一体化された際に、コア構成部14U,14V,14W(ステータ構成部12U,12V,12W)の配列が乱れることが抑制され、ひいてはステータコア20(ステータ本体11)の真円度を向上させることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、継鉄構成部22U,22V,22Wの凸部78U,78V,78Wに凹部80U,80V,80Wが形成されている例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、図12Aに示されるように、凹部80U,80V,80Wを凸部78U,78V,78Wに形成しない構成とすることもできる。このように、凹部80U,80V,80Wを凸部78U,78V,78Wに形成するか否かについては、該凸部78U,78V,78Wとステータケース70との接触圧等を考慮して適宜設定すればよい。
【0086】
また、本実施形態では、一対の突起部118Aを有するパンチを用いてステータケース70の外周部に塑性変形部72を形成した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図12Bに示されるように、先端側に向けて窄まるように形成されたパンチ122をステータケース70における凹部80U,80V,80Wと対向する部位に押圧することにより塑性変形部72を形成した構成とすることもできる。この場合、ステータケース70とステータコア20との固着力がより一層向上する。
【0087】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【0088】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例に係るステータついて説明する。なお、上記実施形態の構成と基本的に同様の構成については、先に説明した実施形態の構成と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0089】
図4Bに示されるように、本変形例に係るステータは、インシュレータ18U,18V,18Wの各々の連結部34U,34V,34Wの剛性が同一とされていることに特徴がある。具体的には、複数の連結部34U,34V,34Wのうち最も内径及び外径が大きく形成されているU相の連結部34Uは、その径方向の板厚(肉厚)がT1とされており、また、U相の連結部34Uにおける保持部36U及び切欠き38Uが形成されていない部位の軸方向の幅はW1とされている。
【0090】
さらに、U相の連結部34Uの径方向内側に配置された連結部34Vの径方向の板厚はT1よりも薄い板厚T2とされており、またV相の連結部34Vにおける保持部36V及び切欠き38Vが形成されていない部位の軸方向の幅はW1よりも狭い幅W2とされている。
【0091】
また、V相の連結部34Vの径方向内側に配置された連結部34Wの径方向の板厚はT2よりも薄い板厚T3とされており、またW相の連結部34Wにおける保持部36Wが形成されていない部位の軸方向の幅はW2よりも狭い幅W3とされている。
【0092】
以上説明したように、連結部34U,34V,34Wの板厚T1,T2,T3及び幅W1,W2,W3が調整されることによって各々の連結部34U,34V,34Wの剛性が同一とされている。
【0093】
また、上記変形例では、連結部34U,34V,34Wの板厚T1,T2,T3及び幅W1,W2,W3が調整されることによって各々の連結部34U,34V,34Wの剛性が同一とされている例について説明してきたが、他の方法によって各々の連結部34U,34V,34Wの剛性を同一とすることもできる。例えば、図4Cに示された第2変形例の如く、連結部34U,34V,34Wの材料をそれぞれ変更することによって各々の連結部34U,34V,34Wの剛性が同一となるように調整することもできる。第2変形例では、一例としてU相の連結部34Uの材料をアルミニウム合金とし、またV相の連結部34Vの材料をポリアセタールとし、さらにまたW相の連結部34Vの材料をポリアミド合成繊維とすることによって各々の連結部34U,34V,34Wの剛性が調整されている。換言すると、径方向内側に配置された連結部ほどヤング率の低い材料が用いられることによって各々の連結部34U,34V,34Wの剛性が調整されている。
【0094】
また、図4Dに示された第3変形例の如く、U相の連結部34Uの軸方向他方側(矢印Z2側)の端部に該連結部34Uの径方向外側に延出するリブ124を設けると共に、W相の連結部34Wの外周部に複数の切欠き126を設けることによって、即ち、各々の連結部34U,34V,34Wの断面形状を調整することによって各々の連結部34U,34V,34Wの剛性を調整することもできる。
【0095】
さらに、図4Eに示された第4変形例の如く、各々の連結部34U,34V,34Wの内外径同一とすると共に、各々の連結部34U,34V,34Wをその軸方向に隣り合って配置し、これに加えて各々の連結部34U,34V,34Wの断面形状を同一とすることによって各々の連結部34U,34V,34Wの剛性が同一となるように調整することもできる。また、当該連結部34U,34V,34Wの配置とした場合、ステータ10の径方向の小型化が図られる。
【0096】
(変形例の作用並びに効果)
以上の変形例に係るステータでは、インシュレータ18U,18V,18Wの各々の連結部34U,34V,34Wの剛性が同一とされているため、図10Aに示されるように、ステータケース70の外周部に塑性変形部72を形成するための加工力F3,F4,F5を同一の加工力とすることができる。これにより、本変形例では、ステータコア20(ステータ本体11)とステータケース70とを一体化させる際の加工制御を容易にすることができる。
【0097】
なお、上記変形例では、複数のインシュレータ18U,18V,18Wの各々の連結部34U,34V,34Wの剛性を同一とするために、図4B図4Eに示された構成を挙げたが、本発明はこれに限定されるものではない。各々の連結部34U,34V,34Wの剛性を同一とするために他の手法を用いてもよいし、また図4B図4Eに示された構成を適宜組み合せることによって各々の連結部34U,34V,34Wの剛性を同一としてもよい。
【0098】
また、上記実施形態及び変形例では、U相のステータ構成部12Uが連結部34Uに支持され、V相のステータ構成部12Vが連結部34Vに支持され、W相のステータ構成部12Wが連結部34Wに支持されている例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、一の連結部がU相のステータ構成部12U、V相のステータ構成部12V、及びW相のステータ構成部12Wを支持するように構成することもできる。すなわち、連結部が相毎に設けられていなくてもよい。
【0099】
(ステータ10の他の製造方法)
次に、図13図16を用いて前述のステータ10の他の製造方法について説明する。
【0100】
図13及び図14に示された製造方法は、前述のかしめ工程において、ステータケース70におけるパンチ118に押圧される部位の剛性を考慮して、各々のパンチ118からステータケース70の外周部に加えられる加工力が調整されていることに特徴がある。
【0101】
図13に示されるように、ステータケース70をその軸方向から見た形状が楕円状にひずんでいる場合にあっては、ステータケース70の外周部が長径方向から径方向内側に向けて押圧された際の当該押圧された部位P1の変位が、ステータケース70の外周部が短径方向から径方向内側に向けて押圧された際の当該押圧された部位P2の変位よりも小さい。換言すると、ステータケース70の長径方向の部位P1の剛性が当該ステータケース70の短径方向の部位P2の剛性よりも高くなっている。そのため、ステータケース70の長径方向の部位P1を押圧する加工力F6を短径方向の部位P2を押圧する加工力F9よりも大きく設定している。また、ステータケース70の長径方向の部位P1と短径方向の部位P2との中間部は、加工力F6よりも小さくかつ加工力F9よりも大きな加工力F7,F8で押圧するように調整されている。なお、上記の加工力F6,F7,F8,F9は、ステータケース70の形状のデータに基づいて決定されている。
【0102】
図14に示されるように、ステータケース70の肉厚がその周方向に沿って一定の肉厚とされていない場合にあっては、ステータケース70における厚肉とされた部位が径方向内側に向けて押圧された際の当該押圧された部位の変位が、ステータケース70における薄肉とされた部位が径方向内側に向けて押圧された際の当該押圧された部位の変位よりも小さい。換言すると、ステータケース70における厚肉とされた部位の剛性が当該ステータケース70における薄肉とされた部位の剛性よりも高くなっている。そのため、ステータケース70における厚肉とされた部位を押圧する加工力F6を薄肉とされた部位を押圧する加工力F7,F8,F9よりも大きく設定している。なお、上記の加工力F6,F7,F8,F9は、ステータケース70の各部の厚みのデータに基づいて決定されている。
【0103】
図15に示された製造方法では、コア構成部14U,14V,14Wの芯金当接部25U,25V,25Wとの接触圧力を検出するセンサ130を備えた芯金128を用いてステータ10が製造される。先ず、芯金128の構成について説明すると、当該芯金128は、円柱状に形成されたベース部132と、ベース部132の外周部に固定された12個のセンサ130と、を有して構成されている。また、12個のセンサ130は、ベース部132の周方向に沿って等間隔に配置されている。なお、センサ130はベース部132の径方向内側に向けて押圧されることによって信号を出力する圧力センサとされている。前述のケース配置工程を経た後に、上記の芯金128がステータ本体11の径方向内側に、すなわち、芯金当接部25U,25V,25Wによって囲まれた領域に挿通される(芯金セット工程)。そして、パンチ118の突起部118Aがステータケース70の外周部を押圧することによって、ステータケース70の外周部に12個の塑性変形部72が該ステータケース70の周方向に沿って等間隔に形成される(かしめ工程)。これにより、ステータケース70における塑性変形部72が形成された部位が縮径され、該部位が各々のコア構成部14U,14V,14Wを押圧すると共に各々のコア構成部14U,14V,14Wの芯金当接部25U,25V,25Wがそれぞれ各センサ130を押圧する。また、本実施形態では、各センサ130の出力値に基づいてパンチ118からステータケース70の外周部に加えられる加工力F6,F7,F8,F9が調整されている。なお、一例として本実施形態では、各々のセンサ130の出力値が同一となるように加工力F6,F7,F8,F9が調整されている。
【0104】
参考例として、図16に示された製造方法は、前述のかしめ工程において、コア構成部14U,14V,14Wの配列を考慮して、各々のパンチ118からステータケース70の外周部に加えられる加工力が調整されていることに特徴がある。具体的には、ステータケース70において基準円Sよりも径方向外側にオフセットしているコア構成部14U,14V,14Wと対向している部位に入力される加工力F5を、ステータケース70において基準円Sよりも径方向内側にオフセットしているコア構成部14U,14V,14Wと対向している部位に入力される加工力F3よりも大きく設定している。なお、ステータケース70において基準円Sとのオフセット量がないコア構成部14U,14V,14Wと対向している部位に入力される加工力F4は、加工力F5よりも小さくかつ加工力F3よりも大きな加工力とされている。
【0105】
以上説明した製造方法によれば、ステータケース70の各部の剛性、センサ130からの出力値及びコア構成部14U,14V,14Wの配列を考慮してパンチ118からステータケース70に加えられる加工力調整することにより、ステータコア20の真円度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0106】
11…ステータ本体,14U…コア構成部,14V…コア構成部,14W…コア構成部,16U…巻線,16V…巻線,16W…巻線,18U…インシュレータ,18V…インシュレータ,18W…インシュレータ,22U…継鉄構成部,22V…継鉄構成部,22W…継鉄構成部,24U…ティース部,24V…ティース部,24W…ティース部,26U…巻回部,26V…巻回部,26W…巻回部,32U…絶縁部,32V…絶縁部,32W…絶縁部,34U…連結部,34V…連結部,34W…連結部,40…継鉄,128…芯金,130…センサ,F3,F4,F5,F6,F7,F8,F9…加工力
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16