【実施例1】
【0017】
本発明の第1の実施例について
図1〜
図6を用いて説明する。
図1は本発明の第1の実施例のティルティングパッド軸受装置断面図である。
【0018】
本発明の軸受は、回転軸1の径方向荷重を支持するジャーナル軸受である。また、本発明の軸受は、下半部のパッドは荷重を分担するため、給油孔又は給油ノズルを設けるが、上半部のパッドは荷重の分担に関与しないため、それらのパッドに対しては給油を行わない。
【0019】
図1に示すように、本実施例のティルティングパッド軸受は、回転軸1の外周面に対向するように回転軸1の周方向(上半側,下半側)に配置された複数のティルティングパッド2a及び2bと、複数のピボット3を介して複数のティルティングパッド2a及び2bを傾動(搖動)可能に支持する軸受ハウジング4とを備えている。
【0020】
回転軸の回転方向Aから見て、荷重を分担する下半部のティルティングパッド2bの前端部には、径方向に貫通する給油孔5が形成されている。軸受ハウジング4の外周側には、周方向に延在する導油溝6が形成されている。また、軸受ハウジング4には、各ティルティングパッド2bの給油孔5に対応して、導油溝6から径方向に貫通する導油孔7が形成されている。軸受ハウジング4の導油孔7とティルティングパッド2bの給油孔5は、導油管8を介して接続されている。軸受ハウジング4の導油溝6は、ケーシング9の導油孔10,配管11及びポンプ12を介してオイルタンク13に接続されている。そして、ポンプ12の駆動により、オイルタンク13で貯蔵された潤滑油が軸受ハウジング4の導油溝6に供給され、さらに、軸受ハウジング4の導油孔7,導油管8及びティルティングパッド2bの給油孔5を介して、ティルティングパッド2bの摺動面14に供給されるようになっている。ティルティングパッド2bの摺動面14に供給された潤滑油によりティルティングパッド2bと回転軸1との間に薄い流体膜を形成する。また、ティルティングパッド2bの摺動面に供給した潤滑油は、軸受装置の側面側に一部溢れ出て、溢れ出た潤滑油はオイルタンク13に回収される。
【0021】
給油孔5によりティルティングパッド2bと回転軸1の間に潤滑油を供給すると、潤滑油はせん断による摩擦で温度上昇を経て、回転軸1に連れ回りながら後続のティルティングパッド2aへと流れる。
【0022】
図2は比較例における上半部ティルティングパッドの摺動面上の油流れを示す摺動面展開図である。比較例では、軸受装置の側面側に潤滑油の排出を促進する構造が設けられていないものである。
【0023】
比較例の場合、上半部のティルティングパッド2aへ流入した高温油は、
図2に示すように排出されずに連れ回り、ティルティングパッド2aを通過して後続のティルティングパッド2bへと再度流れていき、軸受メタル温度の上昇を助長してしまう。
【0024】
そこで、本実施例では上半部のティルティングパッド2aへ流入した高温油の排油を促進して、軸受メタル温度の上昇を抑制するようにしている。
図3は、本発明の第1の実施例の構造を示すもので、荷重を分担しない上半部のティルティングパッド2aの摺動面に設けた、軸受装置の側面側に潤滑油を排出する潤滑油排出構造を示す。
図3は、上半部のティルティングパッド2aを下方から見た斜視図である。
【0025】
本発明の第1の実施例の場合、
図3に示すように、上半部ティルティングパッド2aの前端部は、周方向下流側(すなわち、図中矢印Aで示す回転軸1の回転方向)に向かうに従って摺動面が広がるような切り欠き15を有する。
【0026】
図4及び
図5を用いて、切り欠き15で構成された潤滑油排出構造による潤滑油の流れを説明する。
図4は本発明の第1の実施例における上半部ティルティングパッドの摺動面上の油流れを示す摺動面展開図、
図5は本発明の第1の実施例のティルティングパッド軸受装置軸方向断面図である。
【0027】
図4及び
図5に示すように潤滑油は軸受側面へと誘導され、高温油を排出する。それにより、軸受メタル温度の上昇を抑制できる。また、
図4に示すように、切り欠き部で構成された潤滑油排出構造を備えたティルティングパッド2aを通過する度に潤滑油が軸受側面から排出される。なお、下半側では潤滑油が溢れ出ているが、
図5ではその図示を省略している。本実施例では、下半側において見られるような潤滑油が溢れ出ることを排出とは言わない。積極的に潤滑油を軸受装置の側面側へ誘導し排出する作用を有するものを潤滑油排出構造という。
【0028】
この切り欠き15により軸受装置の側面側への潤滑油の排出を促進することができる。また、この切り欠き15は、潤滑油の流れに対して傾斜して形成されているので、潤滑油の流れを乱さないように、すなわち、潤滑油をスムースに排出できるように作用する。また、本実施例では、切り欠き15を上半部ティルティングパッド2aの両側に設けているが、片側にのみ設けても良い。また、切り欠き15の深さは、軸受装置の側面側への潤滑油の排出を効果的に促進できる程度とする。また、切り欠きは角部を全部カットした構造(貫通構造)でも良い。
【0029】
図6を用いて本実施例の効果を説明する。
図6は本発明の第1の実施例及び比較例(
図2)におけるティルティングパッド軸受メタルの摺動面温度を表す図である。
図6に示すように給油量を等しくした場合、比較例と比較して全体的に温度を低下させることができる。また、少量の油量で同等の軸受メタル温度が得られるということであり、その分給油量を削減することができる。すなわち、本実施例では、荷重分担に関与しないパッドにおいて高温油の排出を促進し、軸受メタルの温度上昇を抑制することで、軸受給油量の削減を可能とすることができる。
【0030】
また、上述の第1の実施例においては、ティルティングパッド2bに形成された給油孔5を介して、ティルティングパッド2bの摺動面14に潤滑油を供給する構成に適用した場合を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、
図7に示すように、隣り合うティルティングパッド2aと2b若しくは隣り合うティルティングパッド2bと2bの間に設けられた給油ノズル17を介して、ティルティングパッド2bの摺動面14に潤滑油を供給する構成に適用してもよい。このような変形例においても、上術の第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0031】
また、上述の第1の実施例においては、パッド枚数が6枚の場合を例にとって説明したが、これに限らない。すなわち、
図8に示すように、ティルティングパッド2b(
図8の左側及び右側のティルティングパッド2b)が下半部を超えて上半部に至る場合でも、回転軸1の下部に位置するティルティングパッド2bを挟む左右のティルティングパッド2b(
図8の左側及び右側のティルティングパッド2b)は荷重を分担しているため、給油孔又は給油ノズルにより給油を行う。その他のパッド枚数においても同様であり、このような変形例においても、上述の第1の実施例と同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0032】
本発明の第2の実施例について
図9を用いて説明する。
図9は本発明の第2の実施例の上半部のティルティングパッドを下方から見た斜視図である。
【0033】
図9に示すように、本実施例のティルティングパッド2aは、複数の排油溝18が周方向下流側(すなわち、図中矢印Aで示す回転軸1の回転方向)に向かうに従って、軸受両側面に向かって斜めに設けられており、さらに側面端部と連通(側面まで貫通)している。
【0034】
本実施例のようなティルティングパッド2aの場合、第1の実施例のように前端部の切り欠き15だけでなく、各排油溝において高温油を排出できるため、実施例1と比較してさらに給油量を削減可能である
その他の構成及び効果は第1の実施例と同様である。なお、本実施例においても、片側の側面に向かって斜めに複数の排油溝18を設けるようにしても良く、その場合にも同様の効果を得ることができる。また、排油溝18は1つでも良い。
【0035】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加,削除,置換をすることが可能である。